説明

プラズマディスプレイ装置

【課題】走査パルスを発生させるための電圧を、十分な安全性を確保しつつ少数の小型部品を用いて発生させる走査電極駆動回路を備えたプラズマディスプレイ装置を提供する。
【解決手段】走査電極と維持電極とからなる表示電極対を有する放電セルを複数備えたパネルと、走査電極に印加する維持パルスを発生する維持パルス発生回路と、走査電極に印加する走査パルスを発生する走査パルス発生回路と、維持パルスの高電圧側の電圧を発生する第1の電源回路47と、走査パルスの低電圧側の電圧を発生する第2の電源回路71と、その第2の電源回路71の出力に重畳され走査パルスの高電圧側の電圧を発生する第3の電源回路73と、その第3の電源回路73の出力電圧が所定の電圧範囲から外れたことを検出する異常電圧検出回路76とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルを用いた画像表示装置であるプラズマディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、「パネル」と略記する)として代表的な交流面放電型パネルは、対向配置された前面基板と背面基板との間に多数の放電セルが形成されている。前面基板上には、1対の走査電極と維持電極とからなる表示電極対が互いに平行に複数形成され、それら表示電極対を覆うように誘電体層および保護層が形成されている。背面基板上には、複数の平行なデータ電極と、それらを覆うように誘電体層と、さらにその上にデータ電極と平行に複数の隔壁とがそれぞれ形成され、誘電体層の表面と隔壁の側面とに蛍光体層が形成されている。そして、表示電極対とデータ電極とが立体交差するように前面基板と背面基板とが対向配置されて密封され、内部の放電空間には放電ガスが封入されている。ここで表示電極対とデータ電極とが対向する部分に放電セルが形成される。このような構成のパネルにおいて、各放電セル内でガス放電により紫外線を発生させ、この紫外線で赤色、緑色、青色の蛍光体を励起発光させてカラー表示を行っている。
【0003】
パネルを駆動する方法としてはサブフィールド法、すなわち、1フィールド期間を複数のサブフィールドに分割したうえで、発光させるサブフィールドの組み合わせによって階調表示を行う方法が一般的である。サブフィールドは、初期化期間、書込み期間および維持期間を有する。初期化期間では、各電極に初期化電圧を印加して、それに続く書込み動作に必要な壁電荷を形成する。書込み期間では、走査電極に走査パルスを印加するとともにデータ電極に書込みパルスを印加して、表示を行うべき放電セルにおいて書込み放電を起こす。そして維持期間では、走査電極および維持電極に交互に維持パルスを印加して、書込み放電を起こした放電セルにおいて維持放電を起こし、対応する放電セルの蛍光体層を発光させることにより画像表示を行う。
【0004】
プラズマディスプレイ装置には、このようにパネルの各電極に印加する駆動電圧波形を発生させるために電極駆動回路が設けられ、それらの電極駆動回路には多くの電圧源から各種の電圧が供給されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2006−201735号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特に走査電極駆動回路は、初期化期間における初期化波形電圧、書込み期間における走査パルス、維持期間における維持パルスと、複雑な駆動電圧波形を発生させる必要があり、走査電極駆動回路で用いる電圧の種類も多くなる。そのため走査電極駆動回路で用いる電圧のいくつかは走査電極駆動回路内部で生成する回路構成とすることが多い。しかしながら電源回路は回路構成部品が大型となる傾向があり、また安全性を考慮した設計が必要であるため、部品点数も多くなる。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みなされたものであり、走査パルスを発生させるための電圧を、十分な安全性を確保しつつ少数の小型部品を用いて発生させる走査電極駆動回路を備えたプラズマディスプレイ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明のプラズマディスプレイ装置は、走査電極と維持電極とからなる表示電極対を有する放電セルを複数備えたパネルと、走査電極に印加する維持パルスを発生する維持パルス発生回路と、走査電極に印加する走査パルスを発生する走査パルス発生回路と、維持パルスの高電圧側の電圧を発生する第1の電源回路と、走査パルスの低電圧側の電圧を発生する第2の電源回路と、第2の電源回路の出力に重畳され走査パルスの高電圧側の電圧を発生する第3の電源回路と、第3の電源回路の出力電圧が所定の電圧範囲から外れたことを検出する異常電圧検出回路とを備えたことを特徴とする。この構成により、走査パルスを発生させるための電圧を、十分な安全性を確保しつつ少数の小型部品を用いて発生させる走査電極駆動回路を備えたプラズマディスプレイ装置を提供することができる。
【0008】
また本発明の第2の電源回路は第1の電源回路の出力電圧に基づき負の電圧を発生させる反転型チョッパー方式のスイッチングレギュレーター回路であり、第3の電源回路は第1の電源回路の出力電圧に基づき第1の電源回路の出力電圧より低い電圧を発生させる降圧型チョッパー方式のスイッチングレギュレーター回路であってもよい。
【0009】
また本発明の異常電圧検出回路は、第3の電源回路の出力電圧が所定の電圧範囲の上限値を超えたことを検出する過大電圧検出部と、第3の電源回路の出力電圧が所定の電圧範囲の下限値に満たないことを検出する過小電圧検出部と、過大電圧検出部の出力と過小電圧検出部の出力との論理和を出力する論理和部とを有する構成であってもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、走査パルスを発生させるための電圧を、十分な安全性を確保しつつ少数の小型部品を用いて発生させる走査電極駆動回路を備えたプラズマディスプレイ装置を提供することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置について、図面を用いて説明する。
【0012】
(実施の形態)
図1は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置に用いるパネル10の分解斜視図である。ガラス製の前面基板21上には、走査電極22と維持電極23とからなる表示電極対24が複数形成されている。そして表示電極対24を覆うように誘電体層25が形成され、その誘電体層25上に保護層26が形成されている。背面基板31上にはデータ電極32が複数形成され、データ電極32を覆うように誘電体層33が形成され、さらにその上に井桁状の隔壁34が形成されている。そして、隔壁34の側面および誘電体層33上には赤色、緑色および青色の各色に発光する蛍光体層35が設けられている。
【0013】
これら前面基板21と背面基板31とは、微小な放電空間を挟んで表示電極対24とデータ電極32とが交差するように対向配置され、その外周部をガラスフリット等の封着材によって封着されている。そして放電空間には、例えばキセノンを含む放電ガスが封入されている。放電空間は隔壁34によって複数の区画に仕切られており、表示電極対24とデータ電極32とが交差する部分に放電セルが形成されている。そしてこれらの放電セルが放電、発光することにより画像が表示される。
【0014】
なお、パネル10の構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。
【0015】
図2は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置に用いるパネル10の電極配列図である。パネル10には、行方向に長いn本の走査電極SC1〜SCn(図1の走査電極22)およびn本の維持電極SU1〜SUn(図1の維持電極23)が配列され、列方向に長いm本のデータ電極D1〜Dm(図1のデータ電極32)が配列されている。そして、1対の走査電極SCi(i=1〜n)および維持電極SUiと1つのデータ電極Dj(j=1〜m)とが交差した部分に放電セルが形成され、放電セルは放電空間内にm×n個形成されている。
【0016】
次に、本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の動作について説明する。パネル10はサブフィールド法、すなわち1フィールド期間を複数のサブフィールドに分割し、サブフィールド毎に各放電セルの発光・非発光を制御することによって階調表示を行う。それぞれのサブフィールドは初期化期間、書込み期間および維持期間を有する。
【0017】
初期化期間では初期化放電を発生し、続く書込み放電に必要な壁電荷を各電極上に形成する。書込み期間では、発光させるべき放電セルで選択的に書込み放電を発生し壁電荷を形成する。そして維持期間では、維持パルスを表示電極対に交互に印加して、書込み放電を発生した放電セルで維持放電を発生させて発光させる。
【0018】
図3は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置のパネル10の各電極に印加する駆動電圧波形図であり、2つのサブフィールドの駆動電圧波形を示している。
【0019】
初期化期間の前半部では、データ電極D1〜Dmに電圧0(V)を印加し、維持電極SU1〜SUnに電圧0(V)を印加する。そして走査電極SC1〜SCnには電圧Vi1から電圧Vi2まで緩やかに上昇する上り傾斜波形電圧を印加する。
【0020】
この傾斜波形電圧が上昇する間に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUn、データ電極D1〜Dmとの間でそれぞれ微弱な初期化放電が起こりそれぞれの電極上に壁電圧が蓄積される。ここで、電極上の壁電圧とは電極を覆う誘電体層上、保護層上、蛍光体層上等に蓄積された壁電荷により生じる電圧を表す。
【0021】
初期化期間の後半部では、維持電極SU1〜SUnに正の電圧Ve1を印加し、走査電極SC1〜SCnには電圧Vi3から電圧Vi4まで緩やかに下降する下り傾斜波形電圧を印加する。すると、この傾斜波形電圧が下降する間に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUn、データ電極D1〜Dmとの間で再び微弱な初期化放電が起こり、各電極上の壁電圧は書込み動作に適した値に調整される。
【0022】
このようにして初期化期間では初期化放電を発生し、続く書込み放電に必要な壁電荷を各電極上に形成する。なお、図3の第2サブフィールドの初期化期間に示したように、初期化期間の前半部を省略してもよい。この場合には、直前のサブフィールドの維持期間に維持放電を行った放電セルで選択的に初期化放電が発生する。
【0023】
続く書込み期間では、維持電極SU1〜SUnに電圧Ve2を印加し、走査電極SC1〜SCnに電圧Vcを印加する。その後、走査電極SC1に負の電圧Vaの走査パルスを印加するとともに、データ電極D1〜Dmのうち1行目に発光させるべき放電セルのデータ電極Dk(k=1〜m)に正の電圧Vdの書込みパルスを印加する。すると1行目の放電セルのうち書込みパルスを印加した放電セルではデータ電極Dkと走査電極SC1との間で放電が発生し、この放電が走査電極SC1と維持電極SU1との放電に進展して書込み放電が発生する。こうして走査電極SC1上に正の壁電圧、維持電極SU1上に負の壁電圧を蓄積する書込み動作が行われる。一方、書込みパルスを印加しなかった放電セルでは書込み放電は発生しない。なお詳細は後述するが、電圧Vcは負の電圧Vaに正の電圧Vscnを重畳した電圧であるので、接地電位を基準とすると、電圧Vaおよび電圧Vscnの電圧値により正、負のいずれの電圧値にもなりうる。
【0024】
次に、2行目の走査電極SC2に走査パルスを印加するとともに、データ電極D1〜Dmのうち2行目に発光させるべき放電セルのデータ電極Dkに書込みパルスを印加する。すると2行目の放電セルで選択的に書込み放電が起こる。以上の書込み動作をn行目の放電セルに至るまで行う。
【0025】
続く維持期間では、維持電極SU1〜SUnに電圧0(V)を印加し、走査電極SC1〜SCnに電圧Vsusの維持パルスを印加する。すると書込み放電を起こした放電セルでは、走査電極SCi上と維持電極SUi上との電圧差に走査電極SCi上の壁電圧と維持電極SUi上の壁電圧との差が加算されたものとなり放電開始電圧を超える。そして、走査電極SCiと維持電極SUiとの間に維持放電が起こり、このとき発生した紫外線により蛍光体層35が発光する。このとき走査電極SCi上に負の壁電圧が蓄積され、維持電極SUi上に正の壁電圧が蓄積される。さらにデータ電極Dk上にも正の壁電圧が蓄積される。
【0026】
続いて走査電極SC1〜SCnに電圧0(V)を印加し、維持電極SU1〜SUnに電圧Vsusの維持パルスを印加する。すると書込み放電を起こした放電セルで再び維持放電が発生する。
【0027】
以下同様に、走査電極SC1〜SCnと維持電極SU1〜SUnとに交互に輝度重みに応じた数の維持パルスを印加し、表示電極対の電極間に電位差を与えることにより、書込み期間において書込み放電を起こした放電セルで維持放電が継続して行われる。
【0028】
そして、維持期間の最後には、走査電極SC1〜SCnに、電圧0(V)から電圧Vrに向かって緩やかに上昇する傾斜波形電圧を印加して、データ電極Dk上の正の壁電圧を残したまま、走査電極SCiおよび維持電極SUi上の壁電圧を消去する。
【0029】
続くサブフィールドの動作もほぼ同様であるため説明を省略する。
【0030】
なお、本実施の形態において用いる電源の各電圧値は、例えば、電圧Vi1=140(V)、電圧Vi2=390(V)、電圧Vi3=190(V)、電圧Vi4=−190(V)、電圧Vsus=190(V)、電圧Vr=190(V)、電圧Ve1=140(V)、電圧Ve2=150(V)、電圧Vd=70(V)である。また電圧Va=−200(V)、電圧Vscn=140(V)であり、したがって電圧Vc=−60(V)である。
【0031】
次に、本実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置の構成およびその動作について説明する。
【0032】
図4は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置40の回路ブロック図である。プラズマディスプレイ装置40は、パネル10、画像信号処理回路41、データ電極駆動回路42、走査電極駆動回路43、維持電極駆動回路44、タイミング発生回路45、電源回路46を備えている。
【0033】
画像信号処理回路41は、画像信号をパネル10で表示できる画素数および階調数の画像信号に変換し、さらにサブフィールドのそれぞれにおける発光・非発光をデジタル信号のそれぞれのビットの「1」、「0」に対応させた画像データに変換する。データ電極駆動回路42は、画像データを各データ電極D1〜Dmに対応する書込みパルスに変換し、各データ電極D1〜Dmに印加する。
【0034】
タイミング発生回路45は水平同期信号、垂直同期信号をもとにして、各回路ブロックの動作を制御する各種のタイミング信号を発生し、それぞれの回路ブロックへ供給する。また後述する異常信号SOSを入力すると画像表示動作を停止するタイミングパルスを発生し、プラズマディスプレイ装置40の動作を安全に停止させる。
【0035】
走査電極駆動回路43はタイミング信号に基づき駆動電圧波形を発生し走査電極SC1〜SCnを駆動する。維持電極駆動回路44はタイミング信号に基づき駆動電圧波形を発生し、維持電極SU1〜SUnを駆動する。
【0036】
電源回路46は、各回路ブロックに必要な各種の電圧を発生させ、それらを各回路ブロックに供給する。図4には、走査電極SC1〜SCnおよび維持電極SU1〜SUnに印加する維持パルスの高圧側の電圧を発生する第1の電源回路(以下、「VS電源」と略記する)47を図示している。
【0037】
次に、走査電極駆動回路43について説明する。図5は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置40の走査電極駆動回路43の回路ブロック図である。走査電極駆動回路43は、維持パルス発生回路50と、初期化波形発生回路55と、走査パルス発生回路60とを備え、走査パルス発生回路60のそれぞれの出力はパネル10の走査電極SC1〜SCnのそれぞれに接続されている。さらに走査電極駆動回路43は走査パルス電源回路70を備え、走査パルス発生回路60に負の電圧Vaと、負の電圧Vaに重畳された正の電圧Vscnとを供給する。
【0038】
維持パルス発生回路50は、走査パルス発生回路60の基準電位Aを電圧Vsusまたは接地電位にすることで、図3に示した維持パルス電圧を発生させる。初期化波形発生回路55は、初期化期間において走査パルス発生回路60の基準電位Aをランプ状に上昇または降下させ、図3に示した初期化波形電圧を発生させる。
【0039】
走査パルス発生回路60は、ダイオードD60と、コンデンサC60と、スイッチング素子Q61H1〜Q61Hnおよびスイッチング素子Q61L1〜Q61Lnと、スイッチング素子Q62とを備えている。
【0040】
ダイオードD60およびコンデンサC60はブートストラップ電源を構成し、スイッチング素子Q62がオンして基準電位Aが負の電圧Vaに等しくなったときにダイオードD60を介してコンデンサC60に電圧Vscnが充電される。
【0041】
スイッチング素子Q61H1〜Q61Hnおよびスイッチング素子Q61L1〜Q61Lnは、n本の走査電極SC1〜SCnのそれぞれに走査パルス電圧を印加するためのスイッチング素子である。そして書込み期間において、スイッチング素子Q62をオンにするとともに、スイッチング素子Q61Hiをオフ、スイッチング素子Q61Liをオンにすることで、スイッチング素子Q61Liを経由して走査電極SCiに負の電圧Vaの走査パルスを印加する。またスイッチング素子Q61Liをオフ、スイッチング素子Q61Hiをオンにすることで、スイッチング素子Q61Hiを経由して走査電極SCiに電圧Vcを印加する。
【0042】
なお、維持パルス発生回路50を動作させているときは、スイッチング素子Q62およびスイッチング素子Q61H1〜Q61Hnをオフ、スイッチング素子Q61L1〜Q61Lnをオンにすることにより、走査パルス発生回路60を経由して走査電極SC1〜SCnに維持パルス電圧を印加する。さらに初期化波形発生回路55を動作させているときは、スイッチング素子Q62をオフ、スイッチング素子Q61H1〜Q61Hnまたはスイッチング素子Q61L1〜Q61Lnのいずれかをオンにすることにより、走査パルス発生回路60を経由して走査電極SC1〜SCnに初期化波形電圧を印加する。
【0043】
走査パルス電源回路70は、走査パルスの低電圧側の電圧Vaを発生する第2の電源回路(以下、「VA電源」と略記する)71と、VA電源71の出力に重畳され走査パルスの高電圧側の電圧Vcを発生する第3の電源回路(以下、「VC電源」と略記する)73と、VC電源73の出力電圧が所定の電圧範囲から外れたことを検出する異常電圧検出回路76とを有する。
【0044】
図6は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置40の走査パルス電源回路70の回路図である。
【0045】
VA電源71は、発振回路72と、スイッチング素子Q72と、ダイオードD72と、インダクタL72と、コンデンサC72とを有し、いわゆる反転型チョッパー方式のスイッチングレギュレーター回路を構成する。そしてVS電源47の出力電圧Vsusに基づき負の電圧Vaを発生させる。発振回路72は一般に用いられているスイッチングレギュレーター用の発振回路であり、スイッチング素子Q72のオン・オフを制御して、ダイオードD72からインダクタL72を介してコンデンサC72に電力を蓄積し、負の電圧Vaを出力する。このように、チョッパー型スイッチングレギュレーター回路を用いることで、VA電源71を少数の小型部品を用いて構成することができる。
【0046】
VC電源73は、発振回路74と、スイッチング素子Q74と、ダイオードD74と、インダクタL74と、コンデンサC74とを有し、VA電源71の出力に重畳された降圧型チョッパー方式のスイッチングレギュレーター回路を構成する。そしてVS電源47の出力電圧Vsusに基づき、VS電源47の出力電圧Vsusよりも低い電圧Vcを発生させる。このように、VC電源73もVA電源71と同様に、チョッパー型スイッチングレギュレーター回路を用いて少数の小型部品で構成されている。なお、VC電源73の端子間(コンデンサC74の端子間)に発生する電圧は電圧Vscnであり、電圧Vcは電圧0(V)を基準としたときの電圧であって、
Vc=Va+Vscn
である。
【0047】
異常電圧検出回路76は、過大電圧検出部77と、過小電圧検出部78と、論理和部79とを有する。過大電圧検出部77はVC電源73の出力電圧Vcが所定の電圧範囲の上限値を超えたことを検出する。過小電圧検出部78はVC電源73の出力電圧Vcが所定の電圧範囲の下限値に満たないことを検出する。論理和部79は、過大電圧検出部77の出力と過小電圧検出部78の出力との論理和を異常信号SOSとしてタイミング発生回路45に出力する。すなわち異常電圧検出回路76は、VC電源73の出力電圧Vcを監視し、電圧Vcが所定の電圧範囲から逸脱した場合に異常信号SOSを発生し、タイミング発生回路45に出力する。
【0048】
本実施の形態におけるVA電源71およびVC電源73の構成は、上述したように、少数の小型部品を用いて比較的簡単に構成でき、かつ走査パルス発生回路60に適した優れた回路構成である。しかしその反面、なんらかの異常が発生した場合には、異常の状態により以下のような様々な異常電圧が出力される。なお各電圧の正常な値は、電圧Vsus=190(V)、電圧Va=−200(V)、電圧Vscn=140(V)であるものとして説明する。したがって電圧Vcの正常な値は−60(V)である。
【0049】
(異常モード1)
VA電源71のスイッチング素子Q72がオン状態で停止したと仮定すると、VS電源47からインダクタL72を介して接地電位へ過剰な電流が流れるためVS電源47の安全装置(図示せず)が働き、電圧Vsusの出力動作が停止する。したがって、電圧Va、電圧Vcともに電圧0(V)となる。
【0050】
(異常モード2)
VA電源71のスイッチング素子Q72がオフ状態で停止したと仮定すると、VA電源71の出力電圧Vaは電圧0(V)となり、それに重畳されたVC電源73の出力電圧Vcは電圧140(V)まで上昇する。
【0051】
(異常モード3)
VC電源73のスイッチング素子Q74がオン状態で停止したと仮定すると、電圧Vsusがそのまま出力されてVC電源73の出力電圧Vcが電圧190(V)まで上昇する。
【0052】
(異常モード4)
VC電源73のスイッチング素子Q74がオフ状態で停止したと仮定すると、電圧Vscn=電圧0(V)となり電圧Vcが電圧−200(V)まで低下する。
【0053】
本実施の形態においては、これら4つの異常モードのいずれの異常が発生した場合であっても、電圧異常を確実に検出し、プラズマディスプレイ装置40の動作を停止させる安全回路を備えている。
【0054】
図7は、本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置40の異常電圧検出回路76の回路図である。異常電圧検出回路76は、トランジスタQ91と、ツェナーダイオードD91、D92、D95と、ダイオードD93、D98、D99と、抵抗R91〜R96とを有する。そして、ツェナーダイオードD91、D92、ダイオードD93、トランジスタQ91および抵抗R91〜R94が過小電圧検出部78を構成し、ツェナーダイオードD91、D95、抵抗R95、R96が過大電圧検出部77を構成し、ダイオードD98、D99が論理和部79を構成している。なお本実施の形態においては、ツェナーダイオードD91のツェナー電圧は電圧44(V)、ツェナーダイオードD92のツェナー電圧は電圧36(V)、ツェナーダイオードD95のツェナー電圧は電圧5(V)である。
【0055】
次に異常電圧検出回路76の動作について詳細に説明する。図7において節点N1の電圧は電圧Vcである。以下、所定の電圧範囲を電圧−80(V)〜電圧−40(V)として、節点N1の電圧が正常な電圧−60(V)である場合、電圧−40(V)を超えた場合、電圧−80(V)未満になった場合のそれぞれについて各節点の電圧について説明する。
【0056】
節点N1の電圧が正常な電圧−60(V)である場合、ツェナーダイオードD91により電圧44(V)分レベルシフトされて、節点N2は電圧−16(V)となる。するとツェナーダイオードD95が順方向に導通して、節点N3は電圧0(V)となる。またツェナーダイオードD92の両端の電圧はツェナー電圧よりも低いために節点N4の電圧が上昇し、トランジスタQ91がオンする。すると節点N6は電圧0(V)となる。その結果、節点N7も電圧0(V)となり、異常信号SOSは「L」レベルとなる。
【0057】
なんらかの異常が発生して、節点N1の電圧が正常な電圧−40(V)を超えた場合は、ツェナーダイオードD91により電圧44(V)分レベルシフトされて、節点N2は電圧4(V)を超える。ツェナーダイオードD95のツェナー電圧が電圧5(V)であるので、節点N3は電圧4(V)〜電圧5(V)となり、ダイオードD99がオンして節点N7の電圧も上昇し、異常信号SOSは「H」レベルとなる。
【0058】
異常信号SOSが「H」レベルとなると、タイミング発生回路45は動作を停止させるタイミングパルスを発生し、プラズマディスプレイ装置40の動作を安全に停止させる。
【0059】
また、なんらかの異常が発生して、節点N1の電圧が正常な電圧−80(V)未満となった場合は、ツェナーダイオードD91により電圧44(V)分レベルシフトされて、節点N2は電圧−36(V)未満となる。するとツェナーダイオードD92により電圧36(V)分レベルシフトされて、節点N4は電圧0(V)となりトランジスタQ91はオフとなる。そのため節点N6は電圧5(V)となり、ダイオードD98がオンして節点N7の電圧も上昇し、異常信号SOSは「H」レベルとなる。
【0060】
異常信号SOSが「H」レベルとなると、タイミング発生回路45は動作を停止させるタイミングパルスを発生し、プラズマディスプレイ装置40の動作を安全に停止させる。
【0061】
このように本実施の形態においては、VS電源47の電圧Vsusをもとにして、負の電圧Vaを発生させるVA電源71、および負の電圧Vaに正の電圧Vscnを重畳した電圧Vcを発生させるVC電源73を、チョッパー型スイッチングレギュレーター回路を用いて少数の小型部品で構成している。さらに本実施の形態においては異常電圧検出回路76を備え、その異常電圧検出回路76は、VC電源73の出力電圧Vcが所定の電圧範囲の上限値を超えた場合、または下限値に満たない場合に異常信号SOSを発生しタイミング発生回路45に出力する。タイミング発生回路45は異常信号SOSを入力すると、画像表示動作を停止させるタイミングパルスを発生し、プラズマディスプレイ装置40の動作を安全に停止させる。このように構成することで、走査パルスを発生させるための電圧を、十分な安全性を確保しつつ少数の小型部品を用いて発生させることができる。
【0062】
なお、本実施の形態において示した具体的な各数値は、表示電極対数1080の42インチのパネルの特性に基づき設定したものであって、単に実施の形態の一例を示したものに過ぎない。本発明はこれらの数値になんら限定されるものではなく、パネルの特性やプラズマディスプレイ装置の仕様等に合わせて最適に設定することが望ましい。
【産業上の利用可能性】
【0063】
本発明は、走査パルスを発生させるための電圧を、十分な安全性を確保しつつ少数の小型部品を用いて発生させる走査電極駆動回路を備え、プラズマディスプレイ装置として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置に用いるパネルの分解斜視図
【図2】同プラズマディスプレイ装置に用いるパネルの電極配列図
【図3】同プラズマディスプレイ装置のパネルの各電極に印加する駆動電圧波形図
【図4】同プラズマディスプレイ装置の回路ブロック図
【図5】同プラズマディスプレイ装置の走査電極駆動回路の回路ブロック図
【図6】同プラズマディスプレイ装置の走査パルス電源回路の回路図
【図7】同プラズマディスプレイ装置の異常電圧検出回路の回路図
【符号の説明】
【0065】
10 パネル
22 走査電極
23 維持電極
24 表示電極対
32 データ電極
40 プラズマディスプレイ装置
41 画像信号処理回路
42 データ電極駆動回路
43 走査電極駆動回路
44 維持電極駆動回路
45 タイミング発生回路
46 電源回路
47 VS電源(第1の電源回路)
50 維持パルス発生回路
55 初期化波形発生回路
60 走査パルス発生回路
70 走査パルス電源回路
71 VA電源(第2の電源回路)
73 VC電源(第3の電源回路)
76 異常電圧検出回路
77 過大電圧検出部
78 過小電圧検出部
79 論理和部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
走査電極と維持電極とからなる表示電極対を有する放電セルを複数備えたプラズマディスプレイパネルと、
前記走査電極に印加する維持パルスを発生する維持パルス発生回路と、
前記走査電極に印加する走査パルスを発生する走査パルス発生回路と、
前記維持パルスの高電圧側の電圧を発生する第1の電源回路と、
前記走査パルスの低電圧側の電圧を発生する第2の電源回路と、
前記第2の電源回路の出力に重畳され前記走査パルスの高電圧側の電圧を発生する第3の電源回路と、
前記第3の電源回路の出力電圧が所定の電圧範囲から外れたことを検出する異常電圧検出回路とを備えたことを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項2】
前記第2の電源回路は前記第1の電源回路の出力電圧に基づき負の電圧を発生させる反転型チョッパー方式のスイッチングレギュレーター回路であり、前記第3の電源回路は前記第1の電源回路の出力電圧に基づき前記第1の電源回路の出力電圧より低い電圧を発生させる降圧型チョッパー方式のスイッチングレギュレーター回路であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項3】
前記異常電圧検出回路は、前記第3の電源回路の出力電圧が所定の電圧範囲の上限値を超えたことを検出する過大電圧検出部と、前記第3の電源回路の出力電圧が所定の電圧範囲の下限値に満たないことを検出する過小電圧検出部と、前記過大電圧検出部の出力と前記過小電圧検出部の出力との論理和を出力する論理和部とを有することを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−164677(P2010−164677A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−5478(P2009−5478)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】