説明

プラズマ処理装置及びプラズマ処理方法

【課題】プラズマ処理により、被処理物を覆う被覆を被処理物表面の酸化を抑制しつつ選択的かつ高速で除去する。
【解決手段】被覆除去装置1は、大気圧プラズマ照射部15を備える。大気圧プラズマ照射部15は、不活性ガスの誘導結合型プラズマからなる一次プラズマ46を吹き出す放電管33と、第2の不活性ガスと反応性ガスの混合ガス領域と一次プラズマ46が衝突されることによりプラズマ化した混合ガスから成る二次プラズマ47を発生する混合器41を備える。二次プラズマ47がマスク22を介して線材2に照射され、反応熱により被覆4が炭化する。炭化した被覆は研磨部17A,17Bで除去される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被処理材から被覆を除去するためのプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
線材のポリイミド被覆除去方法としては、刃物やリユータにより物理的に削り落とす方法が知られている。しかし、この方法は被覆除去に長時間を要し効率的でない。また、燃焼ガスや放電で炭化されることでポリイミド被覆を除去する方法も知られている(特許文献1参照)。しかし、この方法では、線材の芯材が銅等の場合に表面の酸化を生じやすい。被覆除去時に銅等の芯材の表面が酸化していると、はんだ接合時の不具合の原因となる。芯材表面の酸化を防止するには、被覆除去に十分な時間をかける必要があり、高速での被覆除去が困難となる。
【0003】
特許文献2には、絶縁チャンバ内にガスを供給しつつ上下電極で高周波電力を供給して大気圧プラズマを発生させ、この大気圧プラズマに近接して被処理物を配置することで被覆を化学分解して除去する方法が記載されている。しかし、この方法では狭いチャンバ内に被処理物を配置する必要があり、被処理物の所望の箇所の被覆を選択的に除去することはできない。
【0004】
線材を電子回路や部品に接合する際には、一般に、はんだ漕に線材を直接浸漬させて被覆を剥離している。しかし、被覆が除去された部分の線材のはんだ漕内への溶出や、被覆残渣による接合不良等の不具合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−124931号公報
【特許文献2】特開2007−59305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、プラズマ処理により、被処理物を覆う被覆を被処理物表面の酸化を抑制しつつ選択的かつ高速で除去することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様は、有機材料からなる被覆を有する被処理物を保持する保持部と、第1の不活性ガスの誘導結合型プラズマからなる一次プラズマを吹き出す誘導結合型プラズマ発生部と、第2の不活性ガスと反応性ガスの混合ガス領域と前記一次プラズマとが衝突されることによりプラズマ化した混合ガスから成る二次プラズマを発生するプラズマ展開部とを有し、前記二次プラズマを前記被処理物に照射する大気圧プラズマ照射部と、前記大気圧プラズマ照射部との間に配置されて前記二次プラズマの前記被処理物に対する照射領域を制限するマスクと、前記被処理物に対して前記大気圧プラズマ照射部及び前記マスクとは反対側に配置された接地電極とを備える、プラズマ処理装置を提供する。
【0008】
誘導結合プラズマ発生部からの一次プラズマがプラズマ展開部中の第2の不活性ガスと反応性ガスの混合ガス領域に導入され、混合ガス中の第2の不活性ガスを励起して拡大した二次プラズマとする。そして、この二次プラズマが反応性ガスを構成する元素を活性化する。この二次プラズマ(大気圧プラズマ)の反応熱による温度上昇で二次プラズマを照射され被覆は高速で炭化して除去可能な状態となる。特に、接地電極を二次プラズマの照射側と反対側に配置したことで、二次プラズマの空間的なゆらぎが抑制されると共に、二次プラズマから被覆に入射する電子の方向性が安定するので、被覆の二次プラズマが照射された部位は高効率かつ高速で炭化する。二次プラズマの照射領域はマスクによって制限されるので、被処理物の所望の領域のみについて選択的に被覆を除去できる。
【0009】
被処理物が銅等の比較的酸化しやすい材料の場合には、前記第1及び第2の不活性ガスはArガスであり、前記反応性ガスはHである。
【0010】
反応ガスとしてH2ガスを採用することで、二次プラズマ(大気圧プラズマ)中から酸素が除外されるので、被処理物の酸化反応を抑制ししつ高速で被覆を炭化させることができる。
【0011】
被処理物がニッケル等の比較的酸化しにくい材料の場合には、前記第1及び第2の不活性ガスはArガスであり、前記反応性ガスはOである。これにより、高速で被覆を炭化させることができる。
【0012】
具体的には、プラズマ処理装置は、前記大気圧プラズマ処理部における前記二次プラズマの照射により炭化した前記被覆を除去する残渣除去部をさらに備える。
【0013】
さらに具体的には、前記被処理物は線材である場合、プラズマ処理装置は、前記保持部に保持される線材に対して張力を付与する張力付与部をさらに備える。
【0014】
本発明の第2の態様は、有機材料からなる被覆を有する被処理物に隣接して接地電極を配置し、第1の不活性ガスの誘導結合型プラズマからなる一次プラズマを発生させ、発生した一次プラズマを第2の不活性ガスと反応性ガスの混合ガスとに衝突させることによりプラズマ化した混合ガスから成る二次プラズマを発生させ、前記二次プラズマを前記接地電極とは反対側から前記被処理物の前記被膜に照射する、プラズマ処理方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のプラズマ処理装置及びプラズマ処理方法によれば、第1の不活性ガスの誘導結合型プラズマである一次プラズマと第2の不活性ガスと反応性ガスの混合ガスとを衝突させてプラズマ化される二次プラズマを発生させ、被処理物のうちマスクで規定された部分の被覆に対して接地電極とは反対側から照射する。そのため、被処理物表面の酸化を抑制しつつ被覆を選択的かつ高速で除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係る被覆除去装置の模式図。
【図2】大気圧プラズマ照射部の模式図。
【図3】混合器周辺の模式的な断面図。
【図4】冷却部の模式的な斜視図。
【図5】大気圧プラズマ照射部の保持部及びマスクの模式的な一部断面図。
【図6】研磨部の模式的な斜視図。
【図7】線材の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は本発明の実施形態に係る被覆除去装置(プラズマ処理装置)1を示す。この被覆除去装置1はプラズマ処理により被処理物の表面に被覆を除去するものである。本実施形態において、被覆除去の対象となる被処理物は図7に模式的に示す線材2である。この線材2は、本実施形態で銅製である2本の芯材3,3と、これらの芯材3,3を覆うポリイミド樹脂からなる被覆4を備える。芯材3,3の直径は例えば0.03mm以上0.1以下mm程度である。また、被覆4の厚みは例えば15μ以上30μm以下である。芯材3,3の材質は銅に限定されず、例えばニッケル等の他の金属でもよい。また、被覆4の材質はポリイミド等のイミド系樹脂に限定されず、他の有機材料でもよい。本実施形態では2本の芯材3,3を並設して配置し、その外周を被覆4で覆っているが、芯材は2本に限定されず1本あるいは3本以上の複数本であってもよい。また、本実施形態では芯材3自体は単体の線材であるが、芯材は複数の芯線で構成されるものでもよい。
【0018】
線材2は供給部11から巻き出され、被覆が除去された後に回収部12に巻き取られる。供給部11は、被覆除去処理前の線材2を巻き付けたドラム11aと、このドラム11aを線材2を巻き出す方向に回転駆動する駆動機構11bを備える。回収部12は被覆除去済みの線材を巻き付けるためのドラム12aと、このドラム12aを線材2を巻き取る方向に回転駆動する駆動機構12bを備える。
【0019】
供給部11に対して線材2の送り方向下流側に隣接する位置と、回収部12に対して線材2の送り方向上流側に隣接する位置には、線材2に張力を付与するための張力付与部13A,13Bが設けられている。これらの張力付与部13A,13Bは、それぞれ固定の支持軸13aに回転自在に支持された一対の固定ローラ13b,13bと、鉛直方向に延びるガイドレール13c上を移動自在な可動の支軸13dに回転自在に支持された可動ローラ13eを備える。可動ローラ13eは一対の固定ローラ13b,13b間に配置されている。固定ローラ13b,13bと可動ローラ13eに巻掛けられた線材2には、可動ローラ13eが昇降することで張力が付与される。線材2に適切な張力を付与できる限り、張力付与部13A,13Bの具体的な構成は特定に限定されない。
【0020】
供給部11側の張力付与部13Aから回収部12側の張力付与部13Bに到る線材2の経路には、冷却部14A、大気圧プラズマ照射部15、2個の研磨部17A,17B、及び冷却部14Bが順に設けられている。
【0021】
図4を併せて参照すると、冷却部14A,Bは台座14aの上に、例えばペルチエ素子で冷却される冷却部材14bを備える。冷却部材14bには貫通孔14cが形成れており、線材2は冷却部材14bからの直接又は間接的な熱伝達により冷却される。線材2を適切に冷却できる限り冷却部14の具体的な構成は特に限定されない。
【0022】
後述するように、大気圧プラズマ照射部15では線材2のマスク22の開口22aから露出する部分にプラズマが照射される。線材2のプラズマが照射された部分の熱は、線材2内に残る。大気圧プラズマ照射部15よりも線材2の送り方向上流側に配置された冷却部14Aは、線材2のプラズマが照射される部分からの熱が線材2の上流側へ伝わるのを抑制ないし低減する。その結果、線材2のプラズマが照射される部分から伝わる熱によって、プラズマが照射される部分よりも上流側の線材2において被覆4の炭化、被覆4の溶融ないし軟化による形状の不安定な部分の拡大を抑制できる。
【0023】
一方、大気圧プラズマ照射部15よりも線材2の送り方向下流側に配置された冷却部14Bは、線材2のプラズマが照射される部分からの熱が線材2の下流側へ伝わるのを抑制ないし低減する。その結果、線材2のプラズマが照射される部分から伝わる熱によって、プラズマが照射される部分よりも下流側の線材2において被覆4の炭化、被覆4の溶融ないし軟化による形状の不安定な部分の拡大を抑制できる。また、冷却部14Bは、後述するようにプラズマの照射により線材2の被覆が炭化された部分を冷却する。その結果、後述するように研磨部17A,17Bにおいて被覆4の炭化された部分が除去される際には線材2の温度は低下しているので、研磨部17A,17Bにおいて被覆4を除去することで剥き出しとなって直接空気に接触する芯材3が酸化するのを抑制できる。なお、プラズマ照射による線材2の温度上昇を適切に抑制できるのであれば、上流側の冷却部14Aと下流側の冷却部14Bのうちのいずれか一方のみを設けてもよい。
【0024】
大気圧プラズマ照射部15は、プラズマ照射装置20、保持部21、及びマスク22を備える。
【0025】
図3及び図5を参照すると、保持部21は、底壁21aと、この底壁21aから上方に延びる互いに対向する一対の側壁21b,21bを備える。個々の側壁21b,21bの上端には線材2を通過させるための切欠21cが形成されている。底壁21aには接地電極23が配置されている。接地電極23と保持部21を通過する線材2との隙間は0.5mm以上1mm以下程度に設定される。側壁21b,21bの上端にマスク22が取り付けられている。マスク22は絶縁性と耐熱性を有し、例えばセラミック材料からなる。マスク22の中央には線材2のうちプラズマ照射装置20からのプラズマが照射される領域を規定するための開口22aが設けられている。開口22aの幅は例えば2mm以上5mm以下程度に設定される。保持部21、マスク22、及び接地電極23の具体的な構造は図示のものに限定されない。なお、プラズマ照射時に図示しないクランプ機構等で線材2を保持して位置決めしてもよい。
【0026】
プラズマ照射装置20は保持部21の上方に配置され保持部21を通過する線材2のうちマスク22の開口22aを介して露出する部分にプラズマ(後述する二次プラズマ47)を照射する。プラズマ照射装置20については後に詳述する。
【0027】
研磨部17A,17Bは、後に詳述するように大気圧プラズマ照射部15で被覆4が選択的に炭化された部分を線材2を研磨し、芯材3,3から炭化した被覆4を除去する。一方の研磨部17Aは線材2の上側を研磨し、他方の研磨部17Bは線材2の下側を研磨するので研磨部17A,17Bは上下の姿勢が逆で配置される。図6を参照すると、研磨部17A,17Bはモータを含む駆動機構17a、駆動機構17aにより回転駆動される回転軸17b、及び回転軸17bに取り付けられた研磨材17cを備える。本実施形態における研磨材17cは円筒状に成型したフェルトである。研磨材17cに対向して柔軟性を有する材料(例えばウレタン、シリコン等)からなる受け部17dを備える台座7eを備える。線材2のうち大気圧プラズマ照射部15で被覆4が選択的に炭化された部分に回転する研磨材17cが当接し、それによって炭化した被覆4が除去される。線材2の研磨材17cが当接する側とは反対側は受部17dにより支持される。研磨材17cで除去された被覆4を吸引して回収する回収機構24が設けられている。研磨材17cの形状及び材質を含め研磨部17A,17Bの詳細は図示のものに限定されない。
【0028】
図1及び図2に概念的に示す制御装置25は、大気圧プラズマ照射部15(特にプラズマ照射装置20)を含む、被覆除去装置1全体の動作を制御する。
【0029】
図2及び図3を参照して、大気圧プラズマ照射部15のプラズマ照射装置20を説明する。
【0030】
プラズマ照射装置20は、固定のプラズマヘッド31に収容され、断面円形の反応空間32を形成する誘電体からなる円筒状の放電管(誘導結合型プラズマ発生部)33を備える。放電管33の外側には波線形状で平板型のアンテナ34が設けられている。アンテナ34には整合回路35を介して高周波電源36が接続されている。放電管33の上端側には、不活性ガスであるArガスを放電管33に供給する第1ガス源17Aが接続されている。
【0031】
プラズマヘッド31の下端側には混合器(プラズマ展開部)41が装着されている。混合器41は下端に開口(プラズマ噴出口42a)が形成された混合室42を備える。プラズマ噴出口42aが保持部21を通過する線材2の対象物2の上方に間隔をあけて位置している。この間隔は例えば0.5mm以上5mm以下に設定される。放電管33の下端は混合器41の混合室42内に進入している。また、混合室42の周壁部には、1個あるいは複数のガス供給口43が設けられている。これらのガス供給口43は、第2ガス源37Bに接続されている。第2ガス源37Bは、不活性ガスとしてのArガスと反応性ガスとしてのH2ガスとの混合ガス(Ar/H2ガス)を供給する。
【0032】
アンテナ34に対して整合回路35を介して高周波電源36から高周波電圧を印加され、それによって放電管33に高周波電界が印加される。放電管33の上端から反応空間32へ第1ガス源37Aが流量制御装置38Aを介してArガスを供給する。点火装置(図示せず)で高電圧を印加して点火することで、放電管33の下端から、Arガスがプラズマ化されたものであり、プラズマ密度が高く、高温の誘導結合型プラズマ(熱プラズマ)である一次プラズマ46が混合器41の混合室42へ吹き出される。
【0033】
第2ガス源37Bから流量制御装置38Bを経てAr/H2ガスがガス供給口43を介して混合室42に供給される。放電管33からの一次プラズマ46(Arプラズマ)が混合室42中のAr/H2ガス領域に導入され、混合ガス中の特にArガスを励起して混合ガスの二次プラズマ47(Arプラズマ)を発生させる。二次プラズマ47は、混合室42の全領域に展開し、プラズマ噴出口42aから下方に吹き出して線材2に照射される。
【0034】
次に、本実施形態の被覆除去装置1の動作を説明する。
【0035】
供給部11から回収部12に向けて線材2が間欠的に送られる。線材2には張力付与部13A,13Bにより安定した張力が付与され、しかも冷却部14で冷却されることで線材2の温度上昇が抑制されている。
【0036】
大気圧プラズマ照射部15に到達した線材2にはプラズマ照射装置20から二次プラズマ47が照射される。具体的に、線材2のうちマスク22の開口22aを介して露出している部分に選択的に二次プラズマ47が照射される。この二次プラズマ47の反応熱による温度上昇で二次プラズマ47を照射された被覆4は高速で炭化して除去可能な状態となる。特に、接地電極23を二次プラズマ47の照射側と反対側である下側に配置したことで、二次プラズマ47の空間的なゆらぎが抑制されると共に、二次プラズマ47から被覆4に入射する電子の方向性が安定するので、二次プラズマ47が照射された被覆4の部位は高効率かつ高速で炭化する。二次プラズマ47の照射領域はマスク22によって制限されるので、線材2の所望の領域のみについて選択的に被覆を除去できる。二次プラズマ47は線材2の下側や複数の芯材3,3の間の被覆4の領域まで回り込むので、線材2の上側だけでなく下側や複数の芯線3,3の間でも被覆4が炭化する。
【0037】
プラズマ照射装置20は例えば以下のような条件で動作する。まず、高周波電源36の電力は20W以上50W以下程度に設定される。また、第1ガス源37AのAr流量は50sccm以上100sccm以下程度に設定される。第2ガス源37BのAr/H2流量は100sccm以上400sccm以下程度に設定される。また、第2ガス源37BでのH2濃度は1%以上4%以下程度の範囲に設定される。さらに、プラズマ照射時間は5秒以上10秒以下程度の範囲に設定される。
【0038】
反応ガスとしてH2ガスを採用することで、二次プラズマ47中から酸素が除外されるので、銅製である芯材3の酸化を抑制ししつ高速で被覆4を炭化させることができる。
【0039】
大気圧プラズマ照射部15で炭化した被覆4のうち線材2の図において上側の部分は研磨部17Aで除去され、下側の部分は研磨部17Bで除去される。研磨部17A,17Bを通過した線材2は被覆4が選択に除去され、その部分では芯材3,3の表面が露出している。
【0040】
前述のように、大気圧プラズマ照射部15よりも線材2の送り方向上流側の冷却部14Aで大気圧プラズマ照射部15よりも上流側の線材2への熱伝達を低減することで、大気圧プラズマ照射部15よりも上流側の線材2において被覆4の炭化、被覆4の溶融ないし軟化による形状の不安定な部分の拡大を抑制できる。また、前述のように、大気圧プラズマ照射部15よりも線材2の送り方向下流側の冷却部14Bで大気圧プラズマ照射部15よりも下流側の線材2への熱伝達を抑制することで、大気圧プラズマ照射部15よりも下流側の線材2において被覆4の炭化、被覆4の溶融ないし軟化による形状の不安定な部分の拡大を抑制できる。さらに、前述のように、線材2のうち被覆4が大気圧プラズマ照射部15で炭化された部分は、冷却部14Bにより冷却されて温度が低下するので、研磨部17A,17Bにおいて被覆4を除去することで剥き出しとなって直接空気に接触する芯材3が酸化するのを抑制できる。
【0041】
以上のように、本実施形態の被覆除去装置1により、芯材3,3の酸化を抑制しつつ被覆4を選択的かつ高速で除去することができる。
【0042】
本発明は前記実施形態に限定されず、種々の変形が可能である。
【0043】
例えば、芯材3がニッケル等の比較的酸化しにくいものの場合、プラズマ照射装置20の第2ガス源17Bは、不活性ガスとしてのArガスと反応性ガスとしてO2ガスとの混合ガス(Ar/O2ガス)を供給するものに置換でき、この場合、より高速に線材2の被覆4を炭化させることができる。
【0044】
本発明は、導線等の線材に限定されず、配線部品、電子部品、部品端子、基板(プリント基板、シート基板、フィルム基板等)の導電路等の樹脂製の被覆層の剥離に適用できる。
【符号の説明】
【0045】
1 被覆除去装置(プラズマ処理装置)
2 線材
3 芯材
4 被覆
11 供給部
11a ドラム
11b 駆動機構
12 回収部
12a ドラム
12b 駆動機構
13A,13B 張力付与部
13a 支軸
13b 固定ローラ
13c ガイドレール
13d 支軸
13e 可動ローラ
14 冷却部
14a 台座
14b 冷却部材
14c 貫通孔
15 大気圧プラズマ照射部
17A,17B 研磨部
17a 駆動機構
17b 回転軸
17c 研磨材
17d 受部
17e 台座
20 プラズマ照射装置
21 保持部
21a 底壁
21b 側壁
21c 切欠
22 マスク
22a 開口
23 接地電極
24 回収機構
25 制御装置
31 プラズマヘッド
32 反応空間
33 放電管
34 アンテナ(誘導結合型プラズマ発生部)
35 整合回路
36 高周波電源
37A 第1ガス源
37B 第2ガス源
38A,38B 流量制御装置
41 混合器(プラズマ展開部)
42 混合室
42a プラズマ噴射口
43 ガス供給口
46 一次プラズマ
47 二次プラズマ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機材料からなる被覆を有する被処理物を保持する保持部と、
第1の不活性ガスの誘導結合型プラズマからなる一次プラズマを吹き出す誘導結合型プラズマ発生部と、第2の不活性ガスと反応性ガスの混合ガス領域と前記一次プラズマとが衝突されることによりプラズマ化した混合ガスから成る二次プラズマを発生するプラズマ展開部とを有し、前記二次プラズマを前記被処理物に照射する大気圧プラズマ照射部と、
前記大気圧プラズマ照射部との間に配置されて前記二次プラズマの前記被処理物に対する照射領域を制限するマスクと、
前記被処理物に対して前記大気圧プラズマ照射部及び前記マスクとは反対側に配置された接地電極と
を備える、プラズマ処理装置。
【請求項2】
前記第1及び第2の不活性ガスはArガスであり、前記反応性ガスはHである、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記第1及び第2の不活性ガスはArガスであり、前記反応性ガスはOである、請求項1に記載のプラズマ処理装置。
【請求項4】
前記大気圧プラズマ処理部における前記二次プラズマの照射により炭化した前記被覆を除去する残渣除去部をさらに備える、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項5】
前記被処理物は線材であり、
前記保持部に保持される線材に対して張力を付与する張力付与部をさらに備える、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載のプラズマ処理装置。
【請求項6】
有機材料からなる被覆を有する被処理物に隣接して接地電極を配置し、
第1の不活性ガスの誘導結合型プラズマからなる一次プラズマを発生させ、発生した一次プラズマを第2の不活性ガスと反応性ガスの混合ガスとに衝突させることによりプラズマ化した混合ガスから成る二次プラズマを発生させ、
前記二次プラズマを前記接地電極とは反対側から前記被処理物の前記被膜に照射する、プラズマ処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−182001(P2012−182001A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−43853(P2011−43853)
【出願日】平成23年3月1日(2011.3.1)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】