説明

プラズマ成膜システム及びその運転方法

【課題】簡易な構成で、プラズマとターゲット及び/又は基板との間の距離を制御することにより、効率よくスパッタすることができ、基板に所望の膜厚を形成することができるプラズマ成膜システムを提供することを目的とする。
【解決手段】カソード15と、アノード46と、カソード15とアノード46との間を流れるプラズマをシート状に変形するシートプラズマ変形機構110と、ターゲット37及び基板33と、を有するプラズマ成膜装置101と、ターゲット37とアノード46との間の電圧を検出する第1電圧検出器102と、ターゲット37をプラズマが流れる方向に対して垂直方向に移動させる第1駆動機構104と、制御装置106と、を備え、制御装置106は、第1電圧検出器102で検出された電圧値に基づき第1駆動機構104を駆動させることによりターゲット37の位置を調整する、プラズマ成膜システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ成膜システム及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマ成膜装置は、プラズマガンから発生されたプラズマをイオン源として用いて成膜する装置である。このような成膜装置では、発生されたプラズマの状態により、基板に形成される薄膜の精度等が異なるため、プラズマの状態(プラズマ密度情報)を測定するプローブが開示されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に開示されているプローブは、プローブの先端をプラズマと接するようにセットし、その先端からプラズマに高周波パワー(電力)を供給し、高周波パワーの反射量測定をすることにより、プラズマ密度情報を測定するものである。
【0004】
また、このようなプローブを用いて、成膜前にターゲット表面近傍のプラズマ密度を測定し、この測定されたプラズマ密度と予め設定されたTS距離等のデータベースに当てはめて、最適なTS距離等を制御するスパッタリング装置が開示されている(例えば、特許文献2)。
【特許文献1】特開2000−100599号公報
【特許文献2】特開2004−27264号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に開示されているようなプローブでは、装置内の圧力、水分量や装置内に供給されるガス流量等の測定条件によって、プラズマ密度が変わる。このため、特許文献2に開示されているようなスパッタリング装置では、これらの測定条件と、測定されたプラズマ密度と、に対応する最適なTS距離等をデータベース化する必要があり、制御が複雑になるという問題があった。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、簡易な構成で、プラズマの状態を判定することにより、ターゲット及び/又は基板とプラズマとの間の距離を制御することができるプラズマ成膜システム及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために本発明に係るプラズマ成膜システムは、放電によりプラズマを発生させるカソードを有するプラズマガンと、前記発生したプラズマを受けるアノードと、前記カソードと前記アノードとの間を流れる前記プラズマをシート状に変形するシートプラズマ変形機構と、前記シート状のプラズマを挟んで対抗するように設けられたターゲット及び基板と、を有するプラズマ成膜装置と、前記ターゲットと前記アノードとの間の電圧を検出する第1電圧検出器と、前記ターゲットを前記プラズマが流れる方向に対して垂直方向に移動させる第1駆動機構と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記第1電圧検出器で検出された電圧に基づき、前記第1駆動機構を駆動させることにより前記ターゲットと前記プラズマとの距離を調整する。
【0008】
これにより、簡易な構成で、プラズマとターゲットとの間の距離を制御することができる。
【0009】
本発明に係るプラズマ成膜システムでは、前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記第1電圧検出器で検出された電圧が第1閾値よりも小さいと、前記第1駆動機構を駆動させることにより前記ターゲットと前記プラズマとの距離を大きくしてもよい。
【0010】
本発明に係るプラズマ成膜システムでは、前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記第1電圧検出器で検出された電圧が第1閾値よりも大きいと、前記第1駆動機構を駆動させることにより前記ターゲットと前記プラズマとの距離を小さくしてもよい。
【0011】
本発明に係るプラズマ成膜システムでは、前記基板と前記アノードとの間の電圧を検出する第2電圧検出器と、前記基板を前記プラズマが流れる方向に対して垂直方向に移動させる第2駆動機構と、を備え、前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記第2電圧検出器で検出された電圧に基づき、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を調整してもよい。
【0012】
これにより、簡易な構成で、プラズマとターゲット及びプラズマと基板との間の距離を制御することができる。
【0013】
本発明に係るプラズマ成膜システムでは、前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記第2電圧検出器で検出された電圧が第2閾値よりも小さいと、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を大きくしてもよい。
【0014】
本発明に係るプラズマ成膜システムでは、前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記第2電圧検出器で検出された電圧が第2閾値よりも大きいと、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を小さくしてもよい。
【0015】
また、本発明に係るプラズマ成膜システムは、放電によりプラズマを発生させるカソードを有するプラズマガンと、前記発生したプラズマを受けるアノードと、前記カソードと前記アノードとの間を流れる前記プラズマをシート状に変形するシートプラズマ変形機構と、前記シート状のプラズマを挟んで対抗するように設けられたターゲット及び基板と、を有するプラズマ成膜装置と、前記基板と前記アノードとの間の電圧を検出する第2電圧検出器と、前記基板を前記プラズマが流れる方向に対して垂直方向に移動させる第2駆動機構と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記第2電圧検出器で検出された電圧に基づき、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を調整する。
【0016】
これにより、簡易な構成で、プラズマと基板との間の距離を制御することができる。
【0017】
本発明に係るプラズマ成膜システムでは、前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記第2電圧検出器で検出された電圧が第2閾値よりも小さいと、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を大きくしてもよい。
【0018】
本発明に係るプラズマ成膜システムでは、前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記第2電圧検出器で検出された電圧が第2閾値よりも大きいと、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を小さくしてもよい。
【0019】
また、本発明に係るプラズマ成膜システムの運転方法は、放電によりプラズマを発生させるカソードを有するプラズマガンと、前記発生したプラズマを受けるアノードと、前記カソードと前記アノードとの間を流れる前記プラズマをシート状に変形するシートプラズマ変形機構と、前記シート状のプラズマを挟んで対抗するように設けられたターゲット及び基板と、を有するプラズマ成膜装置と、前記ターゲットを前記プラズマが流れる方向に対して垂直方向に移動させる第1駆動機構と、を備え、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記ターゲットと前記アノードとの間の電圧に基づき、前記第1駆動機構を駆動させることにより前記ターゲットと前記プラズマとの距離を調整する。
【0020】
これにより、簡易な構成で、プラズマとターゲットとの間の距離を制御することができる。
【0021】
本発明に係るプラズマ成膜システムの運転方法では、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記ターゲットと前記アノードとの間の電圧が第1閾値よりも小さいと、前記第1駆動機構を駆動させることにより前記ターゲットと前記プラズマとの距離を大きくしてもよい。
【0022】
本発明に係るプラズマ成膜システムの運転方法では、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記ターゲットと前記アノードとの間の電圧が第1閾値よりも大きいと、前記第1駆動機構を駆動させることにより前記ターゲットと前記プラズマとの距離を小さくしてもよい。
【0023】
本発明に係るプラズマ成膜システムの運転方法では、前記基板を前記プラズマが流れる方向に対して垂直方向に移動させる第2駆動機構を備え、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記基板と前記アノードとの間の電圧に基づき、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を調整してもよい。
【0024】
これにより、簡易な構成で、プラズマとターゲット及びプラズマと基板との間の距離を制御することができる。
【0025】
本発明に係るプラズマ成膜システムの運転方法では、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記基板と前記アノードとの間の電圧が第2閾値よりも小さいと、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を大きくしてもよい。
【0026】
本発明に係るプラズマ成膜システムの運転方法では、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記基板と前記アノードとの間の電圧が第2閾値よりも大きいと、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を小さくしてもよい。
【0027】
また、本発明に係るプラズマ成膜システムの運転方法は、放電によりプラズマを発生させるカソードを有するプラズマガンと、前記発生したプラズマを受けるアノードと、前記カソードと前記アノードとの間を流れる前記プラズマをシート状に変形するシートプラズマ変形機構と、前記シート状のプラズマを挟んで対抗するように設けられたターゲット及び基板と、を有するプラズマ成膜装置と、前記基板を前記プラズマが流れる方向に対して垂直方向に移動させる第2駆動機構と、を備え、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記基板と前記アノードとの間の電圧に基づき、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を調整する。
【0028】
これにより、簡易な構成で、プラズマと基板との間の距離を制御することができる。
【0029】
本発明に係るプラズマ成膜システムの運転方法では、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記基板と前記アノードとの間の電圧が第2閾値よりも小さいと、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を大きくしてもよい。
【0030】
本発明に係るプラズマ成膜システムの運転方法では、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記基板と前記アノードとの間の電圧が第2閾値よりも大きいと、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を小さくしてもよい。
【0031】
また、本発明に係るプラズマ成膜システムは、放電によりプラズマを発生させるカソードを有するプラズマガンと、前記発生したプラズマを受けるアノードと、前記カソードと前記アノードとの間を流れる前記プラズマをシート状に変形するシートプラズマ変形機構と、前記シート状のプラズマを挟んで対抗するように設けられたターゲット及び基板と、を有するプラズマ成膜装置と、前記カソードと前記アノードとの間に電圧を印加する電源と、前記ターゲットと前記アノードとの間の電圧、又は前記基板と前記アノードとの間の電圧の少なくともいずれか一方の電圧を検出する電圧検出器と、制御装置と、を備え、前記制御装置は、前記電圧検出器で検出された電圧の変化率に基づき、前記電源によって前記カソードと前記アノードとの間に印加する電圧値を変更する。
【0032】
これにより、簡易な構成で、グロー放電からアーク放電への移行を的確に行うことができる。
【0033】
本発明に係るプラズマ成膜システムでは、前記ターゲットと前記アノードとの間の電圧を検出する第1電圧検出器を備え、前記制御装置は、前記第1電圧検出器で検出された電圧の変化率に基づき、前記電源から前記カソードと前記アノードとの間に印加する電圧値を変更してもよい。
【0034】
本発明に係るプラズマ成膜システムでは、前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間でグロー放電が発生している状態で、前記第1電圧検出器で検出された電圧の変化率が第1GA閾値以下になると、前記電源によって前記カソードと前記アノードとの間に印加する電圧値を変更してもよい。
【0035】
本発明に係るプラズマ成膜システムでは、前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間でグロー放電が発生している状態で、前記第1電圧検出器で検出された電圧の変化率が第1GA閾値以下になると、前記電源によって前記カソードと前記アノードとの間に印加する電圧値を変更し、前記カソードと前記アノードとの間でアーク放電が発生している状態で、前記第1電圧検出器で検出された電圧の変化率が第1AF閾値以下になると、前記プラズマ成膜装置の成膜動作を開始させてもよい。
【0036】
これにより、簡易な構成で、グロー放電からアーク放電への移行を的確に行うことができ、また、アーク放電により発生したプラズマが安定してから成膜動作を行うことができる。
【0037】
本発明に係るプラズマ成膜システムでは、前記基板と前記アノードとの間の電圧を検出する第2電圧検出器を備え、前記制御装置は、前記第2電圧検出器で検出された電圧の変化率に基づき、前記電源から前記カソードと前記アノードとの間に印加する電圧値を変更してもよい。
【0038】
本発明に係るプラズマ成膜システムでは、前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間でグロー放電が発生している状態で、前記第2電圧検出器で検出された電圧の変化率が第2GA閾値以下になると、前記電源によって前記カソードと前記アノードとの間に印加する電圧値を変更してもよい。
【0039】
本発明に係るプラズマ成膜システムでは、前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間でグロー放電が発生している状態で、前記第2電圧検出器で検出された電圧の変化率が第2GA閾値以下になると、前記電源によって前記カソードと前記アノードとの間に印加する電圧値を変更し、前記カソードと前記アノードとの間でアーク放電が発生している状態で、前記第2電圧検出器で検出された電圧の変化率が第2AF閾値以下になると、前記プラズマ成膜装置の成膜動作を開始してもよい。
【0040】
本発明に係るプラズマ成膜システムでは、前記ターゲットと前記アノードとの間の電圧を検出する第1電圧検出器と前記基板と前記アノードとの間の電圧を検出する第2電圧検出器を備え、前記制御装置は、前記第1電圧検出器で検出された電圧の変化率及び前記第2電圧検出器で検出された電圧の変化率に基づき、前記電源から前記カソードと前記アノードとの間に印加する電圧値を変更してもよい。
【0041】
本発明に係るプラズマ成膜システムでは、前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間でグロー放電が発生している状態で、前記第1電圧検出器で検出された電圧の変化率が第1GA閾値以下、又は、前記第2電圧検出器で検出された電圧の変化率が第2GA閾値以下になると、前記電源によって前記カソードと前記アノードとの間に印加する電圧値を変更してもよい。
【0042】
本発明に係るプラズマ成膜システムでは、前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間でグロー放電が発生している状態で、前記第1電圧検出器で検出された電圧の変化率が第1GA閾値以下、又は、前記第2電圧検出器で検出された電圧の変化率が第2GA閾値以下になると、前記電源によって前記カソードと前記アノードとの間に印加する電圧値を変更し、前記カソードと前記アノードとの間でアーク放電が発生している状態で、前記第1電圧検出器で検出された電圧の変化率が第1AF閾値以下、又は、前記第2電圧検出器で検出された電圧の変化率が第2AF閾値以下になると、前記プラズマ成膜装置の成膜動作を開始させてもよい。
【0043】
また、本発明に係るプラズマ成膜システムの運転方法は、放電によりプラズマを発生させるカソードを有するプラズマガンと、前記発生したプラズマを受けるアノードと、前記カソードと前記アノードとの間を流れる前記プラズマをシート状に変形するシートプラズマ変形機構と、前記シート状のプラズマを挟んで対抗するように設けられたターゲット及び基板と、を有するプラズマ成膜装置と、前記カソードと前記アノードとの間に電圧を印加する電源と、を備え、前記ターゲットと前記アノードとの間の電圧の変化率、又は前記基板と前記アノードとの間の電圧の変化率の少なくともいずれか一方の電圧値の変化率に基づき、前記電源によって前記カソードと前記アノードとの間に印加する電圧値を変更する。
【0044】
これにより、簡易な構成で、グロー放電からアーク放電への移行を的確に行うことができる。
【0045】
本発明に係るプラズマ成膜システムの運転方法では、前記ターゲットと前記アノードとの間の電圧の変化率に基づき、前記電源から前記カソードと前記アノードとの間に印加する電圧値を変更してもよい。
【0046】
本発明に係るプラズマ成膜システムの運転方法では、前記カソードと前記アノードとの間でグロー放電が発生している状態で、前記ターゲットと前記アノードとの間の電圧の変化率が第1GA閾値以下になると、前記電源によって前記カソードと前記アノードとの間に印加する電圧値を変更してもよい。
【0047】
本発明に係るプラズマ成膜システムの運転方法では、前記カソードと前記アノードとの間でグロー放電が発生している状態で、前記ターゲットと前記アノードとの間の電圧の変化率が第1GA閾値以下になると、前記電源によって前記カソードと前記アノードとの間に印加する電圧値を変更し、前記カソードと前記アノードとの間でアーク放電が発生している状態で、前記ターゲットと前記アノードとの間の電圧の変化率が第1AF閾値以下になると、前記プラズマ成膜装置の成膜動作を開始させてもよい。
【0048】
これにより、簡易な構成で、グロー放電からアーク放電への移行を的確に行うことができ、また、アーク放電により発生したプラズマが安定してから成膜動作を行うことができる。
【0049】
本発明に係るプラズマ成膜システムの運転方法では、前記基板と前記アノードとの間の電圧の変化率に基づき、前記電源から前記カソードと前記アノードとの間に印加する電圧値を変更してもよい。
【0050】
本発明に係るプラズマ成膜システムの運転方法では、前記カソードと前記アノードとの間でグロー放電が発生している状態で、前記基板と前記アノードとの間の電圧の変化率が第2GA閾値以下になると、前記電源によって前記カソードと前記アノードとの間に印加する電圧値を変更してもよい。
【0051】
本発明に係るプラズマ成膜システムの運転方法では、前記カソードと前記アノードとの間でグロー放電が発生している状態で、前記基板と前記アノードとの間の電圧の変化率が第2GA閾値以下になると、前記電源によって前記カソードと前記アノードとの間に印加する電圧値を変更し、前記カソードと前記アノードとの間でアーク放電が発生している状態で、前記基板と前記アノードとの間の電圧の変化率が第2AF閾値以下になると、前記プラズマ成膜装置の成膜動作を開始させてもよい。
【0052】
本発明に係るプラズマ成膜システムの運転の方法では、前記ターゲットと前記アノードとの間の電圧の変化率及び前記基板と前記アノードとの間の電圧の変化率に基づき、前記電源から前記カソードと前記アノードとの間に印加する電圧値を変更してもよい。
【0053】
本発明に係るプラズマ成膜システムの運転方法では、前記カソードと前記アノードとの間でグロー放電が発生している状態で、前記ターゲットと前記アノードとの間の電圧の変化率が第1GA閾値以下、又は、前記基板と前記アノードとの間の電圧の変化率が第2GA閾値以下になると、前記電源によって前記カソードと前記アノードとの間に印加する電圧値を変更してもよい。
【0054】
本発明に係るプラズマ成膜システムの運転方法では、前記カソードと前記アノードとの間でグロー放電が発生している状態で、前記ターゲットと前記アノードとの間の電圧の変化率が第1GA閾値以下、又は、前記基板と前記アノードとの間の電圧の変化率が第2GA閾値以下になると、前記電源によって前記カソードと前記アノードとの間に印加する電圧値を変更し、前記カソードと前記アノードとの間でアーク放電が発生している状態で、前記ターゲットと前記アノードとの間の電圧の変化率が第1AF閾値以下、又は、前記基板と前記アノードとの間の電圧の変化率が第2AF閾値以下になると、前記プラズマ成膜装置の成膜動作を開始させてもよい。
【発明の効果】
【0055】
本発明のプラズマ成膜システム及びその運転方法によれば、簡易な構成で、プラズマとターゲット及び/又は基板との間の距離を制御することにより、効率よくスパッタすることが可能となり、基板に所望の膜厚を形成することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0056】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照しながら説明する。
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施の形態1に係るプラズマ成膜システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【0057】
まず、本実施の形態1に係るプラズマ成膜システムの構成について説明する。
【0058】
図1に示すように、本実施の形態1に係るプラズマ成膜システム100は、シートプラズマ成膜装置101、第1電圧検出器102、第1駆動機構104、第2駆動機構105、制御装置106、主電源107、第1バイアス電源108及び第2バイアス電源109を有している。
【0059】
シートプラズマ成膜装置101は、プラズマガン1とアノード46を有しており、プラズマガン1には、カソード15が設けられている。そして、カソード15は、直流電源からなる主電源107の負極と抵抗体18(図2参照)を介して電気的に接続されており、また、アノード46は、主電源107の正極と接続されている。これにより、主電源107からカソード15にマイナス電圧が印加され、プラズマが発生する。
【0060】
また、シートプラズマ成膜装置101は、カソード15で発生したプラズマをアノード46側に移動させ、かつ、シート状に変形させるシートプラズマ変形機構110を有している。さらに、シートプラズマ成膜装置101には、シート状に変形させたプラズマ(以下、シートプラズマという)を挟んで対抗するように、基板33を保持するための基板ホルダ34とターゲット37を保持するためのターゲットホルダ38が設けられている。
基板ホルダ34には、プラズマの流れに対して垂直方向に基板ホルダ34を移動させるための第2駆動機構105が接続されており、また、基板ホルダ34には、第2バイアス電源109が電気的に接続されている。なお、第2駆動機構105は、公知のものを使用しており、例えば、ボールネジとベローズを組み合わせてアクチュエータにより駆動させることができる。
ターゲットホルダ38には、プラズマの流れに対して垂直方向にターゲットホルダ38を移動させるための第1駆動機構104が接続されており、また、ターゲットホルダ38には、第1バイアス電源108が電気的に接続されている。さらに、ターゲットホルダ38は、第1電圧検出配線111aを介して第1電圧検出器102の一方の検出端子と接続されており、第1電圧検出器102の他方の検出端子は、第1電圧検出配線111bを介してアノード46と接続されている。なお、第1駆動機構104は、公知のものを使用しており、例えば、ボールネジとベローズを組み合わせてアクチュエータにより駆動させることができる。
第1電圧検出器102は、ターゲット37とアノード46の間の電位差(電圧)を検出し、その電圧情報は、制御装置106に入力される。第1電圧検出器102は、ここでは、一般的なテスタを使用しているが、例えば、コンパレータを利用したアナログ電圧検出方法を使用してもよい。
制御装置106は、マイコン等のコンピュータによって構成されており、CPU等からなる演算処理部、メモリ等からなる記憶部、モニター等の表示部、カレンダー機能を有する時計部及びキーボード等の操作入力部(いずれも図示せず)を有している。演算処理部は、記憶部に格納された所定の制御プログラムを読み出し、これを実行することにより、プラズマ成膜システム100に関する各種の制御を行う。また、演算処理部は、記憶部に記憶されたデータや操作入力部から入力されたデータを処理する。そして、特に、第1電圧検出器102にて検出された電圧情報に基づいて第1駆動機構104を制御し、シートプラズマに対するターゲット37とシートプラズマとの間の距離を調整する。ターゲット37とシートプラズマとの間の距離の調整動作については後述する。
【0061】
次に、シートプラズマ成膜装置101について、図2及び図3を参照しながら詳細に説明する。
【0062】
図2は、図1に示したプラズマ成膜システム100のシートプラズマ成膜装置101の構成を示す模式図である。図3は、図2に示したシートプラズマ成膜装置101のIII−III線に沿った断面を示す模式図である。なお、図3においては、一部を省略している。また、図2及び図3において、シートプラズマ成膜装置101の構造における方向を、便宜上、三次元直交座標系のX軸、Y軸及びZ軸の方向で表わす。
【0063】
図2に示すように、シートプラズマ成膜装置101は、YZ平面において略十字形状をなしており、Z軸方向から見て順番に、プラズマガン1と、Z軸方向の軸を中心とした円筒状の非磁性(例えばステンレス製やガラス製)のシートプラズマ変形室2と、Y軸方向の軸を中心とした円筒状の非磁性(例えばステンレス製)の成膜室3と、Z軸方向の軸を中心とした円筒状の非磁性(例えばステンレス製)のアノード室4と、を有している。なお、プラズマガン1、シートプラズマ変形室2、成膜室3及びアノード室4は、互いに気密状態を保って連通されている。
【0064】
プラズマガン1は、減圧可能な放電空間12を有しており、プラズマガン1の一方の端部には、放電空間12を塞ぐようにフランジ11が設けられている。フランジ11には、フランジ11の中心部を気密的に貫通して、Z軸に沿って延びるように、タンタル(Ta)で構成された円筒状の補助陰極13が配設されている。補助陰極13の基端は、図示されないアルゴン(Ar)ガスタンクと適宜な配管により接続されており、補助陰極13の先端からArガスが放電空間12内に供給される。また、補助陰極13の先端近傍の外周面には、6ホウ化ランタン(LaB6)で構成された円環状の主陰極14が設けられている。補助陰極13と主陰極14によって、カソード15が構成されている。カソード15は、直流電源からなる主電源107の負極と抵抗体18を介して電気的に接続されている。
【0065】
プラズマガン1には、補助陰極13と同軸状にZ軸に沿って延びるように、補助陰極13よりも径の大きいモリブデン(Mo)、又は、タングステン(W)で構成された円筒状の保護部材16が、フランジ11に気密的に配設されている。保護部材16の先端には、タングステンで構成された円環状の窓部材17が設けられている。この保護部材16と窓部材17により、カソード15が保護される。
【0066】
プラズマガン1は、一対の円環状の中間電極19、20を有している。これらの中間電極19、20はそれぞれ、主電源107と適宜の抵抗体51、52を介して電気的に接続され、所定のプラス電圧が中間電極19、20に印加される。これにより、カソード15で発生したアーク放電が維持され、プラズマガン1の放電空間12には、荷電粒子(ここではAr+と電子)の集合体としてのプラズマが形成される。
【0067】
プラズマガン1の周囲には、磁力の強さをコントロールできる環状の第1電磁コイル21が、プラズマガン1の周壁を取り囲むように設けられている。この第1電磁コイル21に電流を流すことにより、プラズマガン1の放電空間12には、コイル磁界及び中間電極19、20による電界に基づく磁束密度のZ軸方向の勾配が形成される。このような磁束密度のZ軸方向の勾配により、プラズマを構成する荷電粒子は、この放電空間からZ軸方向に運動するよう、磁力線の回りを旋回しながらZ軸方向に進み、これらの荷電粒子の集合体としてのプラズマが、略等密度分布してなる円柱状のプラズマ(以下、円柱プラズマという)CPとして、シートプラズマ変形室2へ引き出される。
【0068】
プラズマガン1の他方の端部には、シートプラズマ変形室2が設けられており、シートプラズマ変形室2とプラズマガン1とは、適宜な手段により、気密的に、かつ、電気的に絶縁されて接続されている。
【0069】
シートプラズマ変形室2は、減圧可能な輸送空間26を有しており、また、シートプラズマ変形室2の適所には、バルブ22により開閉可能な真空ポンプ接続口23が設けられている。真空ポンプ接続口23には、図示されない真空ポンプ(例えば、ターボポンプ)が接続されている。この真空ポンプにより、真空引きされ、シートプラズマ変形室2の内部空間は、円柱プラズマCPを輸送可能なレベルの真空度にまで速やかに減圧される。
【0070】
また、シートプラズマ変形室2の周囲には、シートプラズマ変形室2(正確には、輸送空間26)を挟んで、互いに同極(ここではN極)が対向するようにして、Y軸方向に磁化され、かつ、X軸方向に延びる一対の角形の永久磁石24A、24Bが設けられている。
【0071】
また、永久磁石24A、24Bのカソード15に近い側には、環状の成形電磁コイル25(空心コイル)が、シートプラズマ変形室2の周面を囲むように配設されている。なお、成形電磁コイル25には、カソード15側をS極、アノード46側をN極とする向きの電流が通電されている。この永久磁石24A、24Bと成形電磁コイル25からシートプラズマ変形機構110が構成される。
【0072】
そして、成形電磁コイル25に電流を流すことにより、シートプラズマ変形室2の輸送空間26に形成されるコイル磁界と、永久磁石24A、24Bによりこの輸送空間26に形成される磁石磁界との相互作用により、シートプラズマ変形室2の輸送空間26を円柱プラズマCPがZ軸方向に移動する。この間に、円柱プラズマCPは、XZ平面に沿って拡がる、均一なシート状のプラズマ(以下、シートプラズマという)SPに変形される(図3参照)。このようにして変形されたシートプラズマSPは、成膜室3へ流入する。
【0073】
成膜室3のシートプラズマ変形室2近傍側の周面の中央部には、X軸方向に延びるスリット孔31が形成されている。このスリット孔31には、シートプラズマ変形室2と成膜室3の内部空間が連続するように、筒状のボトルネック部27が気密的に設けられている。なお、ボトルネック部27の高さ(Y軸方向寸法)及び長さ(Z軸方向寸法)並びに幅(X軸方向寸法)は、シートプラズマSPを適切に通過するように設計されている。また、スリット孔31の幅は、変形されたシートプラズマSPの幅よりも大きく形成されていればよく、適宜な大きさに設計される。これにより、シートプラズマSPを構成しない余分なアルゴンイオン(Ar+)と電子が、成膜室3に導入されるのを防止することができ、シートプラズマSPの密度を高い状態に保つことができる。
【0074】
成膜室3は、減圧可能な成膜空間32を有しており、成膜室3の内部(成膜空間32)には、シートプラズマSPを挟んで対抗するように、基板ホルダ34と、成膜材料としてのターゲット37と、が配設されている。基板ホルダ34は、基板33を保持しており、基板ホルダ34は、ホルダ部34aと支持部34bを有している。支持部34bは、底壁36を気密的に、かつ、進退自在に貫通し、第2駆動機構105と接続されており、Y軸方向(プラズマが流れる方向に対して垂直方向)に移動可能に構成されている。また、基板ホルダ34は、第2バイアス電源109と電気的に接続されており、第2バイアス電源109は、ホルダ部34aにシートプラズマSPに対して負のバイアス電圧を印加する。なお、基板ホルダ34の支持部34bと底壁36とは、絶縁されている。
【0075】
一方、ターゲット37は、ターゲットホルダ38に保持されており、該ターゲットホルダ38は、ホルダ部38aと支持部38bを有している。支持部38bは、天井壁39を気密的に、かつ、進退自在に貫通し、第1駆動機構104と接続されており、Y軸方向(プラズマが流れる方向に対して垂直方向)に移動可能に構成されている。また、ターゲットホルダ38は、第1バイアス電源108と電気的に接続されており、第1バイアス電源108は、ホルダ部38aにシートプラズマSPに対して負のバイアス電圧を印加する。なお、ターゲットホルダ38の支持部38bと天井壁39とは、絶縁されている。また、ここでは、ターゲットホルダ38と基板ホルダ33にバイアス電圧を印加するバイアス電源を別々に設けたが、これらを1つの共通のバイアス電源で構成してもよい。
【0076】
ターゲットホルダ38には、電圧検出配線111aを介して第1電圧検出器102の一方の検出端子が接続されており、第1電圧検出器102の他方の検出端子には、電圧検出配線111bを介してアノード46が接続されている。これにより、ターゲット37の電位(正確には、ターゲットホルダ38を介したターゲット37の電位)とアノード46の電位(正確には、アノード46を介したプラズマの電位)との差を、第1電圧検出器102で検出することができる。なお、ターゲット37とアノード46との間の電圧を検出するときには、第1バイアス電源108からターゲット37にバイアス電圧は印加されない。
【0077】
また、底壁36の適所には、バルブ40により開閉可能な真空ポンプ接続口41が設けられている。真空ポンプ接続口41には、図示されない真空ポンプが接続されている。この真空ポンプ(例えばターボポンプ)により真空引きされ、成膜空間32はスパッタリングプロセス可能なレベルの真空度にまで速やかに減圧される。
【0078】
成膜室3の外部には、磁力の強さをコントロールできる第2電磁コイル42及び第3電磁コイル43が、互いに対を成して成膜室3の周面を囲むように配設されている。第2電磁コイル42と第3電磁コイル43は、互いに異極同士(ここでは、第2電磁コイル42はN極、第3電磁コイル43はS極)を向かい合わせて設けられている。
【0079】
この第2電磁コイル42及び第3電磁コイル43に電流を流すことにより作られるコイル磁界(例えば5G〜300G程度)によって、シートプラズマSPの幅方向(X軸方向)は、成膜室3の成膜空間32を跨ぐようにZ軸方向に移動する間に、ミラー磁界として、その幅方向拡散を適切に抑えるように形状を整形される。
【0080】
また、成膜室3のアノード室4近傍側の周面の中央部には、X軸方向に延びるスリット孔44が形成されている。このスリット孔44には、成膜室3とアノード室4の内部空間が連続するように、筒状のボトルネック部45が気密的に設けられている。なお、ボトルネック部45の高さ(Y軸方向寸法)及び長さ(Z軸方向寸法)並びに幅(X軸方向寸法)は、ボトルネック部27と同様にシートプラズマSPを適切に通過するように設計されている。また、スリット孔44の高さ及び幅は、上述したスリット孔31と同様に構成されている。
【0081】
アノード室4の一方の端部は、ボトルネック部45と接続されており、他方の端部には、その内部空間を塞ぐようにアノード46が設けられている。アノード46は、主電源107の正極と電気的に接続されている。アノード46には、カソード15との間で適宜の正の電圧(例えば100V)が印加される。
【0082】
アノード46の裏面(カソード15から遠い方の面)には、アノード46側をS極、大気側をN極とした永久磁石47が配置されている。これにより、永久磁石47のN極から出てS極に入るXZ平面に沿った磁力線により、アノード46に向かうシートプラズマSPの幅方向(X軸方向)の拡散を抑えるようにシートプラズマSPが幅方向に収束され、シートプラズマSPの荷電粒子が、アノード46に適切に回収される。
【0083】
なお、本実施の形態では、プラズマガン1、シートプラズマ変形室2及びアノード室4のX軸方向の断面を、円形であると説明したが、これに限定されるものではなく、多角形等であってもよい。また、成膜室3のZ軸方向の断面を、円形であると説明したが、これに限定されるものではなく、多角形等であってもよい。
【0084】
次に、本実施の形態1に係るプラズマ成膜システム100の動作について説明する。
【0085】
まず、シートプラズマ成膜装置101の成膜室3内に、基板33とターゲット37が搬入される。そして、真空ポンプの真空引きにより、シートプラズマ成膜装置101を構成するプラズマガン1、シートプラズマ変形室2、成膜室3及びアノード室4内のそれぞれが真空状態になる。このとき、真空ポンプ接続口が2箇所に設けられているので、プラズマ成膜装置内の減圧を迅速に行うことができる。
【0086】
次に、プラズマガン1に設けられた補助陰極13の先端から、Arガスが放電空間12内に供給され、補助陰極13でグロー放電が行われる。このグロー放電により、補助陰極13の先端部分の温度が上昇すると、この熱で主陰極14が加熱されて高温になり、アーク放電が行われる。このようにして、カソード15からプラズマ放電誘発用熱電子が放出され、プラズマが発生する。発生したプラズマは、中間電極19、20による電界と電磁コイル21による磁界により、カソード15からアノード46側に引き出され、円柱状に成形される。そして、形成された円柱プラズマCPは、第1電磁コイル21によって形成される磁場の磁力線に沿ってシートプラズマ変形室2に導かれる。
【0087】
シートプラズマ変形室2に導かれた円柱プラズマCPは、一対の永久磁石24A、24Bと成形電磁コイル25から発生する磁場によってシート状に広がって(XZ平面に延びるように)、シートプラズマSPに変形される。このシートプラズマSPは、ボトルネック部27及びスリット孔31を通過して成膜室3に導かれる。
【0088】
成膜室3に導入されたシートプラズマSPは、第2電磁コイル42、第3電磁コイル43による磁場によって、幅方向の形状が整えられ、ターゲット37と基板33の間の空間にまで導かれる。ターゲット37には、ターゲットホルダ38を介して、シートプラズマSPに対して負のバイアス電圧が印加される。また、基板33にも、基板ホルダ34を介して、シートプラズマSPに対して負のバイアス電圧が印加される。ターゲット37が負にバイアスされることにより、Ar+イオンがターゲットを効率よくスパッタする。スパッタされたターゲット37を構成する原子は、垂直方向にシートプラズマSP中を通過し、このとき陽イオンにイオン化される。この陽イオンは、負にバイアスされた基板33上に堆積し、電子を受け取り、基板33を成膜する。
【0089】
そして、シートプラズマSPは、永久磁石47の磁力線により幅方向に収束され、アノード46が、シートプラズマSPを受ける。
【0090】
次に、本実施の形態1に係るプラズマ成膜システム100におけるシートプラズマ成膜装置101の放電移行動作について説明する。
【0091】
図4は、図1に示した制御装置106の記憶部に格納されたプラズマ成膜システム放電移行プログラムの内容を概略的に示すフローチャートである。なお、このプラズマ成膜システム放電移行プラグラムを遂行時には、第1バイアス電源108によってターゲット38にバイアス電源は印加されていない。
【0092】
まず、制御装置106の演算処理部は、主電源107にカソード15(正確には、補助陰極13)とアノード46との間にグロー放電を行うために必要な所定の電圧を印加する指令を出す(ステップS1)。これにより、補助陰極13でグロー放電が開始される。
【0093】
次に、制御装置106の演算処理部は、第1電圧検出器102で検出されたターゲット−アノード間電圧を取得し(ステップS2)、時計部から時間情報を取得する(ステップS3)。そして、演算処理部は、ステップS2で取得したターゲット−アノード間電圧とステップS3で取得した時間から、単位時間当たりの電圧の変化率を算出し(ステップS4)、このステップS4で算出した電圧変化率と、記憶部に記憶されているグロー放電時におけるターゲット−アノード間電圧の単位時間当たりの変化率の閾値(以下、第1GA閾値という)と、を比較する(ステップS5)。第1GA閾値よりも大きい場合には、グロー放電によって主陰極14が充分に加熱されていないと判定して、ステップS2〜ステップS5を繰り返す。一方、第1GA閾値以下である場合には、ステップS6に進む。
【0094】
ステップS6では、制御装置106の演算処理部は、主電源107にカソード15(正確には、主陰極14)とアノード46との間にアーク放電を行うために必要な所定の電圧を印加する(カソード15とアノード46との間に印加する電圧値を変更する)指令を出す。これにより、主陰極14でアーク放電が開始される。
【0095】
次に、制御装置106の演算処理部は、再び第1電圧検出器102で検出されたターゲット−アノード間電圧を取得し(ステップS7)、時計部から時間情報を取得する(ステップS8)。そして、演算処理部は、ステップS7で取得したターゲット−アノード間電圧とステップS8で取得した時間から、単位時間当たりの電圧の変化率を算出し(ステップS9)、このステップS9で算出した電圧変化率と、記憶部に記憶されているアーク放電時におけるターゲット−アノード間電圧の変化率の閾値(以下、第1AF閾値という)と、を比較する(ステップS10)。第1AF閾値よりも大きい場合には、アーク放電により発生したプラズマが安定していないと判定して、ステップS7〜ステップS10を繰り返す。一方、第1AF閾値以下である場合には、成膜開始可能と判定し、成膜動作を開始させ(ステップS11)、本プログラムを終了する。
【0096】
なお、第1GA閾値及び第1AF閾値は、予め実験等により主電源107から印加される電圧値と経過した時間から求められたものであり、これらの閾値の範囲は、例えば、−5V/分以上、5V/分以下である。
【0097】
次に、本実施の形態1に係るプラズマ成膜システム100におけるシートプラズマ成膜装置101のターゲット37とアノード46との電位差(ターゲット−アノード間電圧)の経時変化について説明する。
【0098】
図5は、図1に示したシートプラズマ成膜装置101のターゲット37とアノード46との電位差(ターゲット−アノード間電圧)の放電開始から成膜開始までの経時変化を示したグラフである。
【0099】
図5に示すように、時刻t0でグロー放電を開始(主電源107から補助陰極13に所定の電圧を印加)すると、ターゲット37とアノード46との間の電位差(ターゲット−アノード間電圧)は、急激に増加し、その後なだらかに増加する。つまり、主陰極14が充分加熱されてグロー放電が安定してくると、ターゲット−アノード間電圧の変化率が小さくなる。このため、本実施の形態のように、ターゲット−アノード間電圧の単位時間当たりの変化率をモニターすることにより、主陰極14が充分加熱されたか否か(グロー放電が安定したか否か)を的確に判断することができる。
【0100】
また、電圧変化率がグロー放電時における電圧変化率の閾値である第1GA閾値以下になり(時刻t1)、アーク放電を開始(主電源107から主陰極14に所定の電圧値を印加)すると、ターゲット37とアノード46との間の電位差(ターゲット−アノード間電圧)は、急激に増加し、その後なだらかに減少する。つまり、アーク放電により発生するプラズマが安定してくると、ターゲット−アノード間電圧の変化率が小さくなる。このため、本実施の形態のように、ターゲット−アノード間電圧の単位時間当たりの変化率をモニターすることにより、アーク放電によるプラズマの状態が安定か否かを的確に判断することができる。
【0101】
そして、図5に示すように、電圧変化率がアーク放電時における電圧変化率の閾値である第1AF閾値以下になる(時刻t2)と、プラズマが安定したと判定して、成膜動作が開始される。
【0102】
次に、本実施の形態1に係るプラズマ成膜システム100におけるシートプラズマ成膜装置101のターゲット37とシートプラズマSPとの距離(ターゲット37の位置)の調整動作について説明する。
【0103】
まず、制御装置106の演算処理部は、第1電圧検出部102からターゲット37とアノード46との間の電位差(以下、ターゲット−アノード間電圧という)情報を取得する。そして、演算処理部は、取得した電圧が、第1閾値内にある場合には、シートプラズマSPとターゲット37との距離が適正なものと判定する。
ここで、第1閾値とは、ターゲット37(成膜材料)の種類や基板33に形成する膜の厚みによって変化するものであり、予め実験で求められたものである。第1閾値の範囲は、例えば、−15V以上、−5V以下である。
【0104】
一方、取得した電圧が、第1閾値よりも大きい場合、演算処理部は、シートプラズマSPとターゲット37との間の距離が大きいと判定して、第1駆動機構104によって、シートプラズマSPとターゲット37との距離が小さくなるようにターゲット37を駆動する。他方、取得した電圧が、第1閾値よりも小さい場合、演算処理部は、シートプラズマSPとターゲット37との距離が小さいと判定して、第1駆動機構104によって、シートプラズマSPとターゲット37との距離が大きくなるようにターゲット37を駆動する。例えば、シートプラズマSPとターゲット37との距離が小さいと、シートプラズマSPとターゲット37との電位差が逆転するので、第1電圧検出器102で検出される電圧も正負が逆転する。
【0105】
これにより、アノード46を介してプラズマとターゲット37との間の電位差を検出し、この電位差を指標とすることで、シートプラズマSPとターゲット37との距離を的確に制御することが可能となり、効率よくスパッタすることができ、また、基板33に所望の膜厚を形成することが可能となる。
【0106】
このように、本実施の形態1に係るプラズマ成膜システムでは、プラズマとターゲット37との間の電圧(正確には、単位時間当たりの電圧の変化率)を検出することにより、グロー放電からアーク放電への移行を的確に行うことができ、また、アーク放電により発生したプラズマが安定してから成膜動作を行うことができるため、基板の汚染等が生じるおそれがない。
【0107】
次に、本実施の形態1に係るプラズマ成膜システム100の変形例について説明する。
【0108】
[変形例1]
本変形例1に係るプラズマ成膜システムでは、基本的構成は、実施の形態1に係るプラズマ成膜システム100と同じであるが、第1電圧検出器102に代えて第2電圧検出器103が設けられている点で異なる。
【0109】
第2電圧検出器103は、基板33とアノード46との間の電位差(以下、基板−アノード間電圧という)を検出し、検出した基板−アノード間電圧を制御装置106の演算制御部に入力する。
【0110】
アノード46とカソード15との間のグロー放電及びアーク放電時における基板−アノード間電圧の経時変化もターゲット−アノード間電圧の経時変化と同様の傾向を有する。このため、実施の形態1に係るプラズマ成膜システム100と同様に、本変形例においても、この基板−アノード間電圧の経時変化に基づいて、放電移行動作を的確に行うことができる。具体的には、制御装置106の演算制御部は、取得した基板−アノード間電圧の単位時間当たりの変化率と、この電圧変化率の閾値である第2GA閾値と、第2AF閾値と、に基づいて放電移行動作を行う。なお、第2GA閾値及び第2AF閾値は、予め実験等により主電源107から印加される電圧値と経過した時間から求められたものであり、これらの閾値の範囲は、例えば、−5V/分以上、5V/分以下である。
【0111】
これにより、グロー放電からアーク放電への移行を的確に行うことが可能となり、また、アーク放電により発生したプラズマが安定してから成膜動作を行うことが可能となる。
【0112】
また、制御装置106の演算制御部は、取得した基板−アノード間電圧が、第2閾値よりも大きいか、または第2閾値よりも小さいか、あるいは第2閾値内にあるかにより、シートプラズマSPと基板33との距離(基板33の位置)が適正なものとなるように第2駆動機構105によって基板33を駆動する。これにより、基板33に所望の膜厚を形成することが可能となる。
【0113】
ここで、第2閾値とは、ターゲット37(成膜材料)の種類や基板33に形成する膜の厚みによって変化するものであり、予め実験で求められたものであり、第2閾値の範囲は、例えば、−15V以上、−10V以下である。
(実施の形態2)
本発明の実施の形態2に係るプラズマ成膜システムは、基本的構成は、実施の形態1に係るプラズマ成膜システムと同じであるが、以下の点で異なる。
【0114】
図6は、本実施の形態2に係るプラズマ成膜システムの構成を模式的に示すブロック図である。なお、以下の説明では、図1と同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0115】
図6に示すように、本実施の形態2に係るプラズマ成膜システム100は、第1電圧検出器102と、第2電圧検出器103の両方の電圧検出器を備えている。第2電圧検出器103の一方の検出端子には、電圧検出配線112aを介して基板ホルダ34が接続されており、第2電圧検出器103の他方の検出端子には、電圧検出配線112bを介してアノード46が接続されている。
【0116】
これにより、基板33の電位(正確には、基板ホルダ34を介した基板33の電位)とアノード46の電位(正確には、アノード46を介したプラズマの電位)との差を、第2電圧検出器103で検出することができる。なお、基板33とアノード46との間の電圧を検出するときには、第2バイアス電源109から基板33にバイアス電圧は印加されない。
【0117】
次に、本実施の形態2に係るプラズマ成膜システム100におけるシートプラズマ成膜装置101の放電移行動作について説明する。
【0118】
本実施の形態2に係る制御装置106の記憶部に格納されたプラズマ成膜システム放電移行プログラムの各ステップは、図4に示したフローチャートと同様であるので、図4を参照して説明する。なお、実施の形態1と同様に、このプラズマ成膜システム放電移行プラグラムを遂行時には、第1バイアス電源108によってターゲット38にバイアス電源は印加されておらず、また第2バイアス電源109によって基板33にバイアス電源は印加されていない。
【0119】
まず、制御装置106の演算処理部は、主電源107にカソード15(正確には、補助陰極13)とアノード46との間にグロー放電を行うために必要な所定の電圧を印加する指令を出す(ステップS1)。これにより、補助陰極13でグロー放電が開始される。
【0120】
次に、制御装置106の演算処理部は、第1電圧検出器102で検出されたターゲット−アノード間電圧及び第2電圧検出器103で検出された基板−アノード間電圧を取得し(ステップS2)、時計部から時間情報を取得する(ステップS3)。そして、演算処理部は、ステップS2で取得した電圧とステップS3で取得した時間から、単位時間当たりの電圧変化率をそれぞれ算出し(ステップS4)、このステップS4で算出したそれぞれの電圧変化率(以下、ターゲット−アノード間電圧に基づく電圧変化率をターゲット電圧変化率といい、同様に、基板−アノード間電圧に基づく電圧変化率を基板電圧変化率という)と、記憶部に記憶されているグロー放電時におけるそれぞれの電圧変化率の閾値(以下、ターゲット電圧変化率の閾値を第1GA閾値といい、同様に、基板電圧変化率に基づく閾値を第2GA閾値という)と、を比較する(ステップS5)。
【0121】
ターゲット電圧変化率が第1GA閾値よりも大きく、かつ、基板電圧変化率が第2GA閾値よりも大きい場合には、グロー放電によって主陰極14が充分に加熱されていないと判定して、ステップS2〜ステップS5を繰り返す。一方、ターゲット電圧変化率が第1GA閾値以下である場合、又は、基板電圧変化率が第2GA閾値以下である場合には、ステップS6に進む。
【0122】
ステップS6では、制御装置106の演算処理部は、主電源107にカソード15(正確には、主陰極14)とアノード46との間にアーク放電を行うために必要な所定の電圧を印加する(カソード15とアノード46との間に印加する電圧値を変更する)指令を出す。これにより、主陰極14でアーク放電が開始される。
【0123】
次に、制御装置106の演算処理部は、再び第1電圧検出器102で検出されたターゲット−アノード間電圧及び第2電圧検出器103で検出された基板−アノード間電圧を取得し(ステップS7)、時計部から時間情報を取得する(ステップS8)。そして、演算処理部は、ステップS7で取得した電圧とステップS8で取得した時間から、単位時間当たりの電圧変化率をそれぞれ算出し(ステップS9)、このステップS9で算出した電圧変化率と、記憶部に記憶されているアーク放電時における電圧変化率の閾値(以下、ターゲット電圧変化率の閾値を第1AF閾値といい、同様に、基板電圧変化率に基づく閾値を第2AF閾値という)と、を比較する(ステップS10)。
【0124】
ターゲット電圧変化率が第1AF閾値よりも大きく、かつ、基板電圧変化率が第2AF閾値よりも大きい場合には、アーク放電により発生したプラズマが安定していないと判定して、ステップS7〜ステップS10を繰り返す。一方、ターゲット電圧変化率が第1AF閾値以下である場合、又は、基板電圧変化率が第2AF閾値以下である場合には、成膜開始可能と判定し、成膜動作を開始させ(ステップS11)、本プログラムを終了する。
【0125】
なお、第2GA閾値及び第2AF閾値は、予め実験等により主電源107から印加される電圧値と経過した時間から求められたものであり、これらの閾値の範囲は、例えば、−5V/分以上、5V/分以下である。また、ここでは、第1電圧検出器102及び第2電圧検出器103の両方で検出された電圧に基づいて、放電移行動作を行ったが、第1電圧検出器102又は第2電圧検出器103のいずれか一方で検出された電圧に基づいて、放電移行動作を行ってもよい。
【0126】
また、本実施の形態2に係るプラズマ成膜システム100におけるシートプラズマ成膜装置101の基板33及びターゲット37の位置の調整動作は、第1電圧検出器102で検出されたターゲット−アノード間電圧に基づいてターゲット37を第1駆動機構104で駆動し、第2電圧検出器103で検出された基板−アノード間電圧に基づいて基板33を第2駆動機構105で駆動する点が、実施の形態1に係るプラズマ成膜システム100と異なり、他の動作は同様である。
【0127】
このように、本実施の形態2に係るプラズマ成膜システムでは、プラズマとターゲット37及び基板33との間の電圧値(正確には、単位時間当たりの電圧値の変化率)を検出することにより、プラズマの状態を判定することができるので、グロー放電からアーク放電への移行を的確に行うことができ、また、アーク放電により発生したプラズマが安定してから成膜動作を行うことができるため、基板の汚染等が生じるおそれがない。また、この電位差を指標とすることで、シートプラズマSPとターゲット37及び基板33との間の距離を的確に制御することが可能となり、効率よくスパッタすることが可能となり、また、基板33に所望の膜厚を形成することが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明のプラズマ成膜システム及びその運転方法によれば、簡易な構成で、プラズマとターゲット及び/又は基板との間の距離を制御することにより、効率よくスパッタすることができ、基板に所望の膜厚を形成することができるプラズマ成膜システムとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明の実施の形態1に係るプラズマ成膜システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【図2】図1に示したプラズマ成膜システムにおけるシートプラズマ成膜装置の構成を示す模式図である。
【図3】図2に示したシートプラズマ成膜装置のIII−III線に沿った断面を示す模式図である。
【図4】図1に示した制御装置の記憶部に格納されたプラズマ成膜システム放電移行プログラムの内容を概略的に示すフローチャートである。
【図5】図1に示したシートプラズマ成膜装置のターゲットとアノードとの電位差(ターゲット−アノード間電圧)の放電開始から成膜開始までの経時変化を示したグラフである。
【図6】本発明の実施の形態2に係るプラズマ成膜システムの構成を模式的に示すブロック図である。
【符号の説明】
【0130】
1 プラズマガン
2 シートプラズマ変形室
3 成膜室
4 アノード室
11 フランジ
12 放電空間
13 補助陰極
14 主陰極
15 カソード
16 保護部材
17 窓部材
18 抵抗体
19 中間電極
20 中間電極
21 第1電磁コイル
22 バルブ
23 真空ポンプ接続口
24A 永久磁石
24B 永久磁石
25 成形電磁コイル
26 輸送空間
27 ボトルネック部
31 スリット孔
32 成膜空間
33 基板
34 基板ホルダ
34a ホルダ部
34b 支持部
36 底壁
37 ターゲット
38 ターゲットホルダ
38a ホルダ部
38b 支持部
39 天井壁
40 バルブ
41 真空ポンプ接続口
42 第2電磁コイル
43 第3電磁コイル
44 スリット孔
45 ボトルネック部
46 アノード
47 永久磁石
51 抵抗体
52 抵抗体
100 プラズマ成膜システム
101 シートプラズマ成膜装置
102 第1電圧検出器
103 第2電圧検出器
104 第1駆動機構
105 第2駆動機構
106 制御装置
107 主電源
108 第1バイアス電源
109 第2バイアス電源
110 シートプラズマ変形機構
111a 第1電圧検出配線
111b 第1電圧検出配線
112a 第2電圧検出配線
112b 第2電圧検出配線
CP 円柱プラズマ
SP シートプラズマ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電によりプラズマを発生させるカソードを有するプラズマガンと、前記発生したプラズマを受けるアノードと、前記カソードと前記アノードとの間を流れる前記プラズマをシート状に変形するシートプラズマ変形機構と、前記シート状のプラズマを挟んで対抗するように設けられたターゲット及び基板と、を有するプラズマ成膜装置と、
前記ターゲットと前記アノードとの間の電圧を検出する第1電圧検出器と、
前記ターゲットを前記プラズマが流れる方向に対して垂直方向に移動させる第1駆動機構と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記第1電圧検出器で検出された電圧に基づき、前記第1駆動機構を駆動させることにより前記ターゲットと前記プラズマとの距離を調整する、プラズマ成膜システム。
【請求項2】
前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記第1電圧検出器で検出された電圧が第1閾値よりも小さいと、前記第1駆動機構を駆動させることにより前記ターゲットと前記プラズマとの距離を大きくする、請求項1に記載のプラズマ成膜システム。
【請求項3】
前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記第1電圧検出器で検出された電圧が第1閾値よりも大きいと、前記第1駆動機構を駆動させることにより前記ターゲットと前記プラズマとの距離を小さくする、請求項1に記載のプラズマ成膜システム。
【請求項4】
前記基板と前記アノードとの間の電圧を検出する第2電圧検出器と、
前記基板を前記プラズマが流れる方向に対して垂直方向に移動させる第2駆動機構と、を備え、
前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記第2電圧検出器で検出された電圧に基づき、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を調整する、請求項1〜3に記載のプラズマ成膜システム。
【請求項5】
前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記第2電圧検出器で検出された電圧が第2閾値よりも小さいと、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を大きくする、請求項4に記載のプラズマ成膜システム。
【請求項6】
前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記第2電圧検出器で検出された電圧が第2閾値よりも大きいと、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を小さくする、請求項4に記載のプラズマ成膜システム。
【請求項7】
放電によりプラズマを発生させるカソードを有するプラズマガンと、前記発生したプラズマを受けるアノードと、前記カソードと前記アノードとの間を流れる前記プラズマをシート状に変形するシートプラズマ変形機構と、前記シート状のプラズマを挟んで対抗するように設けられたターゲット及び基板と、を有するプラズマ成膜装置と、
前記基板と前記アノードとの間の電圧を検出する第2電圧検出器と、
前記基板を前記プラズマが流れる方向に対して垂直方向に移動させる第2駆動機構と、
制御装置と、を備え、
前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記第2電圧検出器で検出された電圧に基づき、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を調整する、プラズマ成膜システム。
【請求項8】
前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記第2電圧検出器で検出された電圧が第2閾値よりも小さいと、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を大きくする、請求項7に記載のプラズマ成膜システム。
【請求項9】
前記制御装置は、前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記第2電圧検出器で検出された電圧が第2閾値よりも大きいと、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を小さくする、請求項7に記載のプラズマ成膜システム。
【請求項10】
放電によりプラズマを発生させるカソードを有するプラズマガンと、前記発生したプラズマを受けるアノードと、前記カソードと前記アノードとの間を流れる前記プラズマをシート状に変形するシートプラズマ変形機構と、前記シート状のプラズマを挟んで対抗するように設けられたターゲット及び基板と、を有するプラズマ成膜装置と、
前記ターゲットを前記プラズマが流れる方向に対して垂直方向に移動させる第1駆動機構と、を備え、
前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記ターゲットと前記アノードとの間の電圧に基づき、前記第1駆動機構を駆動させることにより前記ターゲットと前記プラズマとの距離を調整する、プラズマ成膜システムの運転方法。
【請求項11】
前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記ターゲットと前記アノードとの間の電圧が第1閾値よりも小さいと、前記第1駆動機構を駆動させることにより前記ターゲットと前記プラズマとの距離を大きくする、請求項10に記載のプラズマ成膜システムの運転方法。
【請求項12】
前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記ターゲットと前記アノードとの間の電圧が第1閾値よりも大きいと、前記第1駆動機構を駆動させることにより前記ターゲットと前記プラズマとの距離を小さくする、請求項10に記載のプラズマ成膜システムの運転方法。
【請求項13】
前記基板を前記プラズマが流れる方向に対して垂直方向に移動させる第2駆動機構を備え、
前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記基板と前記アノードとの間の電圧に基づき、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を調整する、請求項10〜12に記載のプラズマ成膜システムの運転方法。
【請求項14】
前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記基板と前記アノードとの間の電圧が第2閾値よりも小さいと、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を大きくする、請求項13に記載のプラズマ成膜システムの運転方法。
【請求項15】
前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記基板と前記アノードとの間の電圧が第2閾値よりも大きいと、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を小さくする、請求項13に記載のプラズマ成膜システムの運転方法。
【請求項16】
放電によりプラズマを発生させるカソードを有するプラズマガンと、前記発生したプラズマを受けるアノードと、前記カソードと前記アノードとの間を流れる前記プラズマをシート状に変形するシートプラズマ変形機構と、前記シート状のプラズマを挟んで対抗するように設けられたターゲット及び基板と、を有するプラズマ成膜装置と、
前記基板を前記プラズマが流れる方向に対して垂直方向に移動させる第2駆動機構と、を備え、
前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記基板と前記アノードとの間の電圧に基づき、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を調整する、プラズマ成膜システムの運転方法。
【請求項17】
前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記基板と前記アノードとの間の電圧が第2閾値よりも小さいと、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を大きくする、請求項16に記載のプラズマ成膜システムの運転方法。
【請求項18】
前記カソードと前記アノードとの間で前記プラズマが発生している状態で、前記基板と前記アノードとの間の電圧が第2閾値よりも大きいと、前記第2駆動機構を駆動させることにより前記基板と前記プラズマとの距離を小さくする、請求項16に記載のプラズマ成膜システムの運転方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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