説明

プラズマ放電スイッチ及びそれを備えた電流駆動素子

【課題】プラズマ放電スイッチ及びそれを備えた電流駆動素子を提供する。
【解決手段】複数の放電セル114と,放電セル114の内部にプラズマ放電を起こすために,放電セル114ごとに対をなして設けられ,プラズマ放電中には,その間に電流が流れる第1電極121及び第2電極122と,を備え,放電セルの内部にプラズマ放電を発生消滅させて,第1電極121と第2電極122との間の電流の流れをスイッチングすることを特徴とするプラズマ放電スイッチが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,プラズマ放電スイッチ及びそれを備えた電流駆動素子に関する。
【背景技術】
【0002】
最近では,情報伝達媒体として平板表示装置(FPD:Flat Panel Display)が急速に発展しつつある。このようなFPDとしては,プラズマディスプレイパネル(Plasma Display Panel,以下PDPと言う),有機発光素子(Organic Light Emitting Device,以下OLEDと言う)ディスプレイ,液晶ディスプレイ(LCD:Liquid Crystal Display),電界放出ディスプレイ(FED:Field Emission Display)がある。
【0003】
PDPは,電気的放電を利用して画像を形成する装置であって,輝度や視野角のような表示性能に優れ,その使用が次第に増大しつつある。このようなPDPは,電極に印加される電圧によって,放電セルの内部でプラズマ放電が起こり,この放電過程で発生する紫外線によって,蛍光体が励起されて可視光を発散する。
【0004】
このようなPDPは,その放電形式によって,直流(Direct Current,以下DC)型と交流(Alternating Current,以下AC)型とに分類される。DC型PDPは,全ての電極が放電空間に露出される構造であって,対応電極間に電荷の移動が直接的になされる。AC型PDPは,少なくとも一つの電極が誘電体層で取り囲まれ,対応する電極間に直接的な電荷の移動がなされない代わりに,壁電荷によって放電が行われる。
【0005】
また,PDPは,電極の配置構造によって,対向放電型と面放電型とに分類される。対向放電型PDPは,対をなす二つの維持電極が,それぞれ上部基板と下部基板とに配置された構造であって,放電が基板に垂直な方向になされる。そして,面放電型PDPは,対をなす二つの維持電極が同じ基板に配置された構造であって,放電が基板に平行な方向になされる。
【0006】
図1には,従来の一般的な面放電型PDPが示されている。そして,図2Aには,図1に示したPDPをアドレス電極に直交する方向に切断した断面図が示されており,図2Bには,図1に示したPDPをアドレス電極に平行な方向に切断した断面が示されている。
【0007】
図1,図2A及び図2Bに示したように,従来のPDPは,一定間隔で相互対面する上部基板20と下部基板10とを備える。上部基板20と下部基板10との間の空間は,プラズマ放電の起こる放電空間となる。
【0008】
下部基板10の上部基板20側の面には,複数のアドレス電極11がストライプ状に配列されており,このアドレス電極11は,第1誘電体層12によって埋め込まれている。第1誘電体層12の上部基板20側の面には,放電空間を区画して放電セル14を形成し,この放電セル14の間の電気的・光学的干渉を防止する複数の隔壁13が,互いに所定間隔をおいて形成されている。そして,放電セル14の内面には,それぞれ赤色(R),緑色(G),青色(B)の蛍光体層15が所定の厚さで塗布されており,放電セル14の内部には,放電ガスが充填される。
【0009】
上部基板20は,可視光が透過される透明基板であって,主にガラスから形成され,隔壁13が形成された下部基板10に結合される。上部基板20の下部基板10側の面には,アドレス電極11と直交するストライプ状の維持電極21a,21bが対をなして形成されている。維持電極21a,21bは,可視光が透過されるように,主にITO(Indium Tin Oxide)のような透明な導電性材料からなる。そして,維持電極21a,21bのライン抵抗を減らすために,維持電極21a及び21bの下部基板10側の面には,金属材質からなるバス電極22a,22bが,維持電極21a,21bの幅より狭く形成されている。このような維持電極21a,21bとバス電極22a,22bとは,透明な第2誘電体層23によって埋め込まれている。第2誘電体層23の下部基板10側の面には,酸化マグネシウム(MgO)からなる保護膜24が形成されている。保護膜24は,プラズマ粒子のスパッタリングによる第2誘電体層23の損傷を防止し,2次電子を放出して放電電圧を低める役割を行う。
【0010】
このような構成を有するPDPの駆動は,アドレス放電のための駆動と維持放電のための駆動とに大別される。アドレス放電は,アドレス電極11と,一対の維持電極21a又は21bの何れか一つの電極との間で起こり,アドレス放電が発生した時に,壁電荷が形成される。次いで,維持放電は,一対の維持電極21a,21b間の電位差によって起こり,この維持放電によって発生する紫外線によって,蛍光体が励起されて可視光を発散する。
【0011】
一方,OLEDは,有機物質を利用して電気エネルギーを光エネルギーに変換する素子を称すものであって,アノード電極とカソード電極とからそれぞれ注入された正孔及び電子が有機分子で再結合して,励起子が発生しつつ発光がなされる素子である。このようなOLEDは,消費電力が少ない,厚さが薄い,応答速度が速いという長所がある。
【0012】
図3には,OLEDの概略的な構造を示す断面が示されている。図3に示したように,OLEDは,アノード電極31,発光層35及びカソード電極41が順次に積層される構造を有する。そして,このようなOLEDの駆動のためのスイッチング素子として,poly−Si TFT(Thin Film Transistor)アレイまたはa−Si TFTアレイのようなTFTアレイが使われる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかし,このようなTFTアレイは,製造工程が複雑であるため,高い製造コストを必要とするという問題点がある。また,poly−Si TFTアレイの場合には,均一性が低く,表示画面に斑が誘発されるという問題点があり,a−Si TFTアレイの場合には,a−Si TFTの寿命が短く,実際に適用し難いという問題点があった。
【0014】
そこで,本発明は,このような問題に鑑みてなされたもので,その目的とするところは,プラズマ放電のスイッチング特性及びデータ保存特性を利用した新規且つ改良されたプラズマ放電スイッチ及び,それを備えた新規且つ改良された電流駆動素子を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記課題を達成するために,本発明のある観点によれば,複数の放電セルと,放電セルの内部にプラズマ放電を起こすために,放電セルごとに対をなして設けられるものであって,プラズマ放電中には,その間に電流が流れる第1電極及び第2電極と,を備え,放電セルの内部に,プラズマ放電を発生消滅させて,第1電極と第2電極との間の電流の流れをスイッチングすることを特徴とする,プラズマ放電スイッチが提供される。
【0016】
かかる構成によれば,OLEDの駆動のためのスイッチング素子として,プラズマ放電スイッチを使用することが可能になる。すなわち,プラズマ放電が有するスイッチング特性及びデータ保存特性を利用して,各放電セルをOLEDのような電流駆動素子を駆動させるためのスイッチングアレイとして使用することが可能となり,従来のpoly−Si TFTアレイやa−Si TFTアレイを用いた場合に比べ,低コストの大面積スイッチングアレイを製作することが可能となる。
【0017】
上記プラズマ放電スイッチは,互いに対向して配置され,その間に上記放電セルを形成する第1基板及び第2基板をさらに備えていてもよい。
【0018】
上記プラズマ放電スイッチは,上記第1電極が上記第1基板上に形成され,上記第2電極が上記第2基板上に形成されていてもよい。
【0019】
上記プラズマ放電スイッチは,上記第1電極及び上記第2電極が,上記第1基板及び上記第2基板のうち何れか一つの基板上に形成されていてもよい。
【0020】
上記プラズマ放電スイッチは,上記放電セルごとにアドレス放電のためのアドレス電極をさらに設けていてもよい。このとき,アドレス電極は,上記第1基板上に形成され,上記第1電極及び上記第2電極は,アドレス電極と交差する方向に上記第2基板上に形成されていてもよい。
【0021】
上記アドレス電極,上記第1電極及び上記第2電極は,ITOで形成されていてもよい。
【0022】
上記放電セルの内部には,放電ガスが充填されていてもよい。
【0023】
上記課題を達成するために,本発明の別の観点によれば,複数の放電セルと,放電セルの内部にプラズマ放電を起こすために,放電セルごとに対をなして設けられるものであって,プラズマ放電中には,その間に電流通路が形成される第1電極及び第2電極と,を含むプラズマ放電スイッチを備え,プラズマ放電スイッチは,放電セルの内部に,プラズマ放電を発生消滅させて,第1電極と第2電極との間の電流の流れをスイッチングすることを特徴とする電流駆動素子が提供される。
【0024】
上記放電セルごとに,アドレス放電のためのアドレス電極がさらに設けられていてもよい。
【0025】
上記アドレス電極,上記第1電極及び上記第2電極は,ITOで形成されていてもよい。
【0026】
上記放電セルの内部には,放電ガスが充填されていてもよい。
【0027】
上記課題を達成するために,本発明のさらに別の観点によれば,互いに対向して配置される第1基板及び第2基板と,第1基板と第2基板との間に形成される複数の放電セルと,放電セルごとに設けられる一対の第1電極及び第2電極と,を備えるプラズマ放電スイッチと,第1基板と第2基板との間に,放電セルそれぞれに対応して形成されるものであって,その第1基板側には,第2電極が位置する複数の表示セルと,表示セルの第2基板上に形成される第3電極と,第2電極と第3電極との間に形成される有機発光層と,を備えるOLEDが提供される。
【0028】
上記放電セル及び上記表示セルは,同一平面上に形成されていてもよく,上記放電セルと,放電セルに対応する上記表示セルとは,相隣接して形成されていてもよい。
【0029】
上記第1基板と上記第2基板との間には,第1基板と第2基板との間の空間を区画して,上記放電セル及び上記表示セルを形成する複数の隔壁が設けられていてもよい。
【0030】
上記第2電極は,その一側が上記放電セルから上記表示セルの前記第1電極側の面まで延びて形成されていてもよい。
【0031】
上記第1電極は,上記第1基板上に形成され,上記第2電極は,上記第2基板上に形成されていてもよい。
【0032】
上記第1電極及び上記第2電極は,上記第2基板上に形成されていてもよい。
【0033】
上記放電セルごとに,アドレス放電のためのアドレス電極がさらに設けられていてもよい。このとき,アドレス電極は,上記第1基板上に形成され,上記第1電極及び上記第2電極は,アドレス電極と交差する方向に上記第2基板上に形成されていてもよい。
【0034】
上記アドレス電極,上記第1電極及び上記第2電極は,ITOで形成されていてもよい。
【0035】
上記課題を達成するために,本発明のさらに別の観点によれば,互いに対向して配置される第1基板及び第2基板と,第1基板と第2基板との間の第1基板側の空間に形成される複数の放電セルと,放電セルごとに設けられる一対の第1電極及び第2電極と,を備えるプラズマ放電スイッチと,放電セルそれぞれに対応して,第1基板と第2基板との間の第2基板側の空間に形成されるものであって,その第1基板側には,第2電極を備える複数の表示セルと,表示セルの下部の第2基板上に形成される第3電極と,第2電極と第3電極との間に形成される有機発光層と,を備えるOLEDが提供される。
【0036】
上記第1電極は,上記第2電極と交差する方向に上記第1基板上に形成されていてもよい。
【0037】
上記第1基板と上記第2基板との間には,上記第1基板と上記第2基板との間の空間を区画して,上記放電セル及び上記表示セルを形成する複数の隔壁が設けられていてもよい。
【0038】
上記第1電極及び上記第2電極は,ITOで形成されていてもよい。
【0039】
上記放電セルの内部には,放電ガスが充填されていてもよい。
【発明の効果】
【0040】
以上説明したように本発明によれば,放電セルにおけるプラズマ放電のスイッチング特性及びデータ保存特性を利用する,プラズマ放電スイッチ,及びそれを備えた電流駆動素子を製作することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に添付図面を参照しながら,本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお,本明細書及び図面において,実質的に同一の機能構成を有する構成要素については,同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0042】
(第1実施形態)
図4は,本発明の第1実施形態によるプラズマ放電スイッチを備えたOLEDの一部平面図である。図5は,図4のV−V’線に沿って切断した断面図であり,図6は,図4のVI−VI’線に沿って切断した断面図である。そして,図7は,図4に示したOLEDの概略的な構成図である。
【0043】
図4から図7に示したように,本実施形態によるOLEDは,複数のプラズマ放電スイッチと,プラズマ放電スイッチによって発光されて画像を表示する複数の表示セルと,を備える。
【0044】
上記プラズマ放電スイッチは,第1基板110と,第2基板120と,第1基板110と第2基板120との間に形成される複数の放電セル114と,放電セル114の内部にプラズマ放電を起こす放電電極と,を備える。
【0045】
そして,第1基板110と第2基板120との間には,それぞれの放電セル114に対応する複数の表示セルが形成される。ここで,表示セルは,放電セル114と同一平面上に形成され,互いに対応する放電セル114と表示セルとは,相隣接して形成されていてもよい。
【0046】
第1基板110及び第2基板120は,それぞれ上部基板及び下部基板であって,一定間隔をおいて互いに対向して配置される。このような第1基板110及び第2基板120は,可視光が透過されるように透明なガラスで出来ていてもよい。
【0047】
そして,第1基板110と第2基板120との間には,第1基板110と第2基板120との間隔を一定の距離に維持させ,第1基板110と第2基板120との間の空間を区画して放電セル114及び表示セルを形成する,複数の隔壁113が設けられる。そして,それぞれの放電セル114の内部には放電ガスが充填される。
【0048】
上記放電電極は,放電セル114ごとに,アドレス電極111と,一対の第1電極121及び第2電極122とを備える。アドレス電極111は,アドレス放電のための電極であって,第1基板110の第2基板120側の面に形成される。そして,第1電極121及び第2電極122は,維持放電のための電極であって,第2基板120の第1基板110側の面に,アドレス電極111と直交する方向に互いに平行に形成される。ここで,アドレス電極111,第1電極121及び第2電極122は,透明な導電性物質であるITOで出来ていてもよい。
【0049】
上記表示セルの第1基板110側には,第2電極122が位置する。このため,第2電極122は,その一側が第2基板120の第1基板110側の面から隔壁113の壁面に沿って,表示セルの上部まで延びて形成される。そして,第2基板120の,表示セルに対応する部分の第1基板110側の面には,第3電極123が形成される。第2電極122と第3電極123との間には有機発光層125が形成される。有機発光層125では,第2電極122と第3電極123との間に生じる所定の電圧差によって,第2電極122及び第3電極123から注入された正孔及び電子が結合して発光がなされる。ここで,第2電極122及び第3電極123はそれぞれ,例えば,アノード電極及びカソード電極であってもよい。
【0050】
以下では,上記のような構造のOLEDの動作過程を,図7と共に図8A,図8B,図9A及び図9Bを参照して説明する。
【0051】
図8Aは,プラズマ放電スイッチがオフになった状態での本発明の実施形態によるOLEDの等価回路図である。図8Aで,符号130は,プラズマ放電によって図7の第1電極121と第2電極122との間の電流の流れをスイッチングするプラズマ放電スイッチを表し,符号140は,プラズマ放電スイッチに電気的に連結される発光ダイオードを表す。そして,図8Bは,プラズマ放電スイッチがオフになった状態で,各電極に印加される電圧を示す図面である。
【0052】
図7,図8A及び図8Bに示したように,第1電極121と第3電極123との間に所定の電圧差Vが存在しても,アドレス電極111に電圧が印加されなければ,アドレス放電及び維持放電は起こらない。したがって,第1電極121と第2電極122との間では,電流が流れないので,プラズマ放電スイッチ130がオフ状態となる。そして,この状態では,第2電極122と第3電極123との間に電圧差が存在しないので,発光ダイオードは発光しなくなる。
【0053】
図9Aは,プラズマ放電スイッチがオンになった状態での本発明の実施形態によるOLEDの等価回路図である。そして,図9Bは,プラズマ放電スイッチがオンになった状態で各電極に印加される電圧を示す図面である。
【0054】
図7,図9A及び図9Bに示したように,第1電極121と第3電極123との間に所定の電圧差Vが存在する状態で,アドレス電極111に所定の電圧Vを印加すれば,放電セル114の内部では,アドレス放電が起こる。このようなアドレス放電によって,第1電極121と第2電極122との間では,維持放電が起こる。この維持放電によって,放電セル114の内部には電流通路が形成され,第1電極121と第2電極122との間に電流が流れるので,プラズマ放電スイッチ130は,オン状態となる。この状態で,第2電極122には,第1電極121を通じて所定の電圧が印加される。その結果,第2電極122と第3電極123との間には,電圧差が発生し,有機発光層125の内部に電子及び正孔が注入されて結合される。これにより,発光ダイオード140が発光する。そして,このように発生した可視光は,図6に示したように,第2基板120を通じて外部に出射され,画像を形成する。
【0055】
一方,上記プラズマ放電スイッチで,プラズマ放電で現れる励起粒子によるメモリ効果は,一般的な能動型スイッチングアレイのメモリ素子としての役割を担う。
【0056】
本実施形態では,放電セル114ごとにアドレス電極111と一対の第1電極121及び第2電極122とが設けられる場合を説明したが,これと違って,放電セル114ごとにプラズマ放電のための一対の第1電極及び第2電極を設けてもよい。このとき,第1電極は第1基板110上に,第2電極は第2基板120上にそれぞれ形成されていてもよく,また,第1電極及び第2電極は,第1基板110及び第2基板120のうち,何れか一つの基板上に形成されてもよい。
【0057】
(第2実施形態)
図10は,本発明の第2実施形態によるOLEDの断面図である。
【0058】
図10に示したように,本実施形態によるOLEDは,複数のプラズマ放電スイッチと,プラズマ放電スイッチによって発光されて画像を表示する複数の表示セルと,を備える。
【0059】
上記プラズマ放電スイッチは,互いに一定間隔をおいて対向するように配置される第1基板210,第2基板220と,第1基板210と第2基板220との間の,第1基板210側の空間に形成される複数の放電セル214と,放電セル214の内部に形成されるプラズマ放電のための放電電極と,を備える。
【0060】
一方,第1基板210と第2基板220との間の,第2基板220側の空間には,上記表示セルが放電セル214に対応して形成される。
【0061】
上記放電電極は,放電セル214ごとに設けられる一対の第1電極221及び第2電極222を含む。ここで,第1電極221は,第1基板210の第2基板220側の面に形成され,第2電極222は,上記表示セルの第1基板210側に,第1電極221と直交する方向に形成される。また,第1電極221および第2電極222は,透明な導電性物質のITOで出来ていてもよい。
【0062】
第1基板210と第2基板220との間には,第1基板210と第2基板220との間隔を一定の距離に維持させ,第1基板210と第2基板220との間の空間を区画して,放電セル214及び上記表示セルを形成する複数の隔壁213が設けられる。そして,それぞれの放電セル214の内部には,放電ガスが充填される。
【0063】
上記表示セルの第1基板210側には,前述したように,第2電極222が位置する。そして,表示セルの第2基板220側の,第2基板220の第1基板210側の面には,第3電極223が形成される。第2電極222と第3電極223との間には,有機発光層225が形成される。有機発光層225では,第2電極222と第3電極223との間に生じる電圧差によって,第2電極222及び第3電極223から注入された正孔及び電子が結合して発光がなされる。ここで,第2電極222及び第3電極223はそれぞれ,例えば,アノード電極及びカソード電極であってもよい。
【0064】
上記のような構造のOLEDで,第1電極221と第2電極222との間に所定の電圧を印加することで第1電極221と第2電極222との間にアドレス放電を発生させ,次いで,維持電圧を印加すれば,放電セル214の内部に放電が維持されるので,放電セル214の内部では,電流通路が形成されて第1電極221と第2電極222との間に電流が流れる。そして,このような電流の流れによって,第2電極222と第3電極223との間に所定の電圧差が生じた結果,有機発光層225の内部に電子及び正孔が注入されて結合することによって可視光が発生する。一方,第1電極221と第2電極222との間にアドレス放電が起こらなければ,放電セル214の内部ではプラズマ放電が発生しないので,第1電極221と第2電極222との間には電流が流れなくなる。これにより,有機発光層225は発光しなくなる。
【0065】
本実施形態では,プラズマ放電スイッチを備えたOLEDが説明されたが,本発明は,上記OLEDに限定されず,電流スイッチング素子として上記プラズマ放電スイッチを使用する多様な電流駆動素子に適用される。
【0066】
以上,添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について説明したが,本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば,特許請求の範囲に記載された範疇内において,各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり,それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明は,プラズマ放電を利用したスイッチング素子に関連した技術分野に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】従来のPDPの分離斜視図である。
【図2A】図1に示したPDPをアドレス電極と直交する方向に切断した断面図である。
【図2B】図1に示したPDPをアドレス電極と平行な方向に切断した断面図である。
【図3】従来のOLEDの概略的な断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態によるプラズマ放電スイッチを備えたOLEDの一部平面図である。
【図5】図4のV−V’線に沿って切断した断面図である。
【図6】図4のVI−VI’線に沿って切断した断面図である。
【図7】図4に示したOLEDの概略的な構成図である。
【図8A】プラズマ放電スイッチがオフになった状態での本発明の第1実施形態によるOLEDの等価回路図である。
【図8B】プラズマ放電スイッチがオフになった状態で各電極に印加される電圧を示す図面である。
【図9A】プラズマ放電スイッチがオンになった状態での本発明の第1実施形態によるOLEDの等価回路図である。
【図9B】プラズマ放電スイッチがオンになった状態で各電極に印加される電圧を示す図面である。
【図10】本発明の第2実施形態によるOLEDの断面図である。
【符号の説明】
【0069】
110,210 第1基板
111 アドレス電極
113,213 隔壁
114,214 放電セル
120,220 第2基板
121,221 第1電極
122,222 第2電極
123,223 第3電極
125,225 有機発光層
130 プラズマ放電スイッチ
140 発光ダイオード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の放電セルと;
前記放電セルの内部にプラズマ放電を起こすために,前記放電セルごとに対をなして設けられ,プラズマ放電中には,その間に電流が流れる第1電極及び第2電極と;
を備え,
前記放電セルの内部にプラズマ放電を発生消滅させて,前記第1電極と前記第2電極との間の電流の流れをスイッチングすることを特徴とする,プラズマ放電スイッチ。
【請求項2】
互いに対向して配置され,その間に前記放電セルを形成する,第1基板及び第2基板をさらに備えることを特徴とする,請求項1に記載のプラズマ放電スイッチ。
【請求項3】
前記第1電極は,前記第1基板上に形成され,前記第2電極は,前記第2基板上に形成されることを特徴とする,請求項2に記載のプラズマ放電スイッチ。
【請求項4】
前記第1電極及び前記第2電極は,前記第1基板及び前記第2基板のうち何れか一つの基板上に形成されることを特徴とする,請求項2に記載のプラズマ放電スイッチ。
【請求項5】
前記放電セルごとに,アドレス放電のためのアドレス電極がさらに設けられることを特徴とする,請求項2に記載のプラズマ放電スイッチ。
【請求項6】
前記アドレス電極は,前記第1基板上に形成され,前記第1電極及び前記第2電極は,前記アドレス電極と交差する方向に前記第2基板上に形成されることを特徴とする,請求項5に記載のプラズマ放電スイッチ。
【請求項7】
前記アドレス電極,前記第1電極及び前記第2電極は,ITOで形成されていることを特徴とする,請求項5または6に記載のプラズマ放電スイッチ。
【請求項8】
前記放電セルの内部には,放電ガスが充填されることを特徴とする,請求項1〜7のいずれかに記載のプラズマ放電スイッチ。
【請求項9】
複数の放電セルと;
前記放電セルの内部にプラズマ放電を起こすために,前記放電セルごとに対をなして設けられるものであって,プラズマ放電中には,その間に電流通路が形成される第1電極及び第2電極と;
を含むプラズマ放電スイッチを備え,
前記プラズマ放電スイッチは,前記放電セルの内部にプラズマ放電を発生消滅させて,前記第1電極と前記第2電極との間の電流の流れをスイッチングすることを特徴とする,電流駆動素子。
【請求項10】
前記放電セルごとに,アドレス放電のためのアドレス電極がさらに設けられることを特徴とする,請求項9に記載の電流駆動素子。
【請求項11】
前記アドレス電極,前記第1電極及び前記第2電極は,ITOで形成されていることを特徴とする,請求項9または10に記載のプラズマ放電スイッチ。
【請求項12】
前記放電セルの内部には,放電ガスが充填されることを特徴とする,請求項9〜11のいずれかに記載の電流駆動素子。
【請求項13】
互いに対向して配置される第1基板及び第2基板と,前記第1基板と前記第2基板との間に形成される複数の放電セルと,前記放電セルごとに設けられる一対の第1電極及び第2電極と,を備えるプラズマ放電スイッチと;
前記第1基板と前記第2基板との間に,前記放電セルのそれぞれに対応して形成されるものであって,その前記第1基板側には,前記第2電極を備える複数の表示セルと;
前記表示セルの第2基板上に形成される第3電極と;
前記第2電極と前記第3電極との間に形成される有機発光層と;
を備えることを特徴とする,有機発光素子。
【請求項14】
前記放電セル及び前記表示セルは,同一平面上に形成されることを特徴とする,請求項13に記載の有機発光素子。
【請求項15】
前記放電セルと,前記放電セルに対応する前記表示セルとは,相隣接して形成されることを特徴とする,請求項14に記載の有機発光素子。
【請求項16】
前記第1基板と前記第2基板との間には,前記第1基板と前記第2基板との間の空間を区画して,前記放電セル及び前記表示セルを形成する複数の隔壁が設けられることを特徴とする,請求項14または15に記載の有機発光素子。
【請求項17】
前記第2電極は,その一側が前記放電セルから前記表示セルの前記第1電極側の部分まで延びて形成されることを特徴とする,請求項14〜16のいずれかに記載の有機発光素子。
【請求項18】
前記第1電極は,前記第1基板上に形成され,前記第2電極は,前記第2基板上に形成されることを特徴とする請求項13〜17のいずれかに記載の有機発光素子。
【請求項19】
前記第1及び前記第2電極は,前記第2基板上に形成されることを特徴とする,請求項13〜17のいずれかに記載の有機発光素子。
【請求項20】
前記放電セルごとにアドレス放電のためのアドレス電極がさらに設けられることを特徴とする,請求項13〜19のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項21】
前記アドレス電極は,前記第1基板上に形成され,前記第1電極及び前記第2電極は,前記アドレス電極と交差する方向に前記第2基板上に形成されることを特徴とする,請求項20に記載の有機発光素子。
【請求項22】
前記アドレス電極,前記第1電極及び前記第2電極は,ITOで形成されていることを特徴とする,請求項20または21に記載のプラズマ放電スイッチ。
【請求項23】
前記放電セルには,放電ガスが充填されることを特徴とする請求項13〜22のいずれか1項に記載の有機発光素子。
【請求項24】
互いに対向して配置される第1基板及び第2基板と,前記第1基板と前記第2基板との間の前記第1基板側の空間に形成される複数の放電セルと,前記放電セルごとに設けられる一対の第1電極及び第2電極と,を備えるプラズマ放電スイッチと;
前記放電セルのそれぞれに対応して,前記第1基板と前記第2基板との間の前記第2基板側の空間に形成されるものであって,その前記第1基板側には,前記第2電極が位置する複数の表示セルと;
前記複数の表示セルの,前記第2基板上に形成される第3電極と;
前記第2電極と前記第3電極との間に形成される有機発光層と;
を備えることを特徴とする,有機発光素子。
【請求項25】
前記第1電極は,前記第2電極と交差する方向で前記第1基板上に形成されることを特徴とする,請求項24に記載の有機発光素子。
【請求項26】
前記第1基板と前記第2基板との間には,前記第1基板と前記第2基板との間の空間を区画して,前記放電セル及び前記表示セルを形成する複数の隔壁が設けられることを特徴とする,請求項24または25に記載の有機発光素子。
【請求項27】
前記第1電極及び前記第2電極は,ITOで形成されていることを特徴とする,請求項24〜26のいずれかに記載のプラズマ放電スイッチ。
【請求項28】
前記放電セルには,放電ガスが充填されることを特徴とする,請求項24〜27のいずれかに記載の有機発光素子。


【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2006−48052(P2006−48052A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−225958(P2005−225958)
【出願日】平成17年8月3日(2005.8.3)
【出願人】(590002817)三星エスディアイ株式会社 (2,784)
【Fターム(参考)】