説明

プラズマ流生成方法、プラズマ処理方法、プラズマ発生装置及びプラズマ処理装置

【課題】回転プラズマによるプラズマ処理を安定且つ制御可能にして、プラズマ処理の品質を向上させることのできるプラズマ流生成方法、プラズマ処理方法、プラズマ発生装置及びそれを用いたプラズマ処理装置を提供する。
【解決手段】4象限Z1〜Z4における各周波数は7、15、6、20Hzに設定されている。この周波数可変により、4分割された回転角領域におけるプラズマの回転速度を異ならせることができる。プラズマP2とP4の周回速度がプラズマP1とP3よりも速くなっているため、円軌道Cを描きながらプラズマP1からP2、P3、P4に周期的に変速回転する回転プラズマを照射して、第1象限Z1〜第4象限Z4において均一な成膜処理を施す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマ構成物質の供給源を陰極とし、前記陰極の前方又は周囲に陽極を設け、前記陰極と前記陽極間においてアーク放電を行って前記陰極表面から発生したプラズマを回転させたプラズマ流を生成するプラズマ流生成方法、前記回転させたプラズマ流によるプラズマ処理方法、前記プラズマ流を発生させるプラズマ発生装置及び前記プラズマ発生装置による発生プラズマを用いて成膜等のプラズマ処理を行うプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラズマ中で固体材料の表面に薄膜を形成したり、イオンを注入することにより、固体の表面特性が改善されることが知られている。金属イオンや非金属イオンを含むプラズマを利用して形成した膜は、固体表面の耐磨耗性・耐食性を強化し、保護膜、光学薄膜、透明導電性膜などとして有用なものである。特に、カーボンプラズマを利用した炭素膜はダイヤモンド構造とグラファイト構造からなるダイヤモンドライクカーボン膜(DLC膜という)として利用価値が高い。
【0003】
金属イオンや非金属イオンを含むプラズマを発生する方法として、真空アークプラズマ法がある。真空アークプラズマは、陰極と陽極の間に生起するアーク放電で形成され、陰極表面上に存在する陰極点から陰極材料が蒸発し、この陰極蒸発物質により形成されるプラズマである。また、雰囲気ガスとして反応性ガスを導入した場合には、反応性ガスも同時にイオン化される。前記反応性ガスと共に不活性ガス(希ガスという)を導入しても良いし、また前記反応性ガスに代えて前記不活性ガスを導入することもできる。このようなプラズマを用いて、固体表面への薄膜形成やイオンの注入を行って表面処理を行うことができる。
【0004】
一般に、真空アーク放電では、陰極点から陰極材料イオン、電子、陰極材料中性原子団(原子及び分子)といった真空アークプラズマ構成粒子が放出されると同時に、サブミクロン以下から数百ミクロン(0.01〜1000μm)の大きさのドロップレットと称される陰極材料微粒子も放出される。このドロップレットが被処理物表面に付着すると、被処理物表面に形成される薄膜の均一性が失われ、薄膜の欠陥を生じさせ、成膜等の表面処理結果に影響を与える。
【0005】
真空アークプラズマ法によるプラズマ処理装置は、例えば、本出願人が既に特開2008−91184号公報(特許文献1)に開示しているように、陰極とトリガ電極の間に電気スパークを生起し、陰極と陽極の間に真空アークを発生させてプラズマを生成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−91184号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記プラズマ処理装置においては、特許文献1に記載しているように、プラズマ輸送管路の断面周方向に偏向磁場を発生させて、陰極と陽極の間に発生した真空アークプラズマに印加し、プラズマを回転させながらプラズマ輸送管路を進行させて、回転プラズマビームを被処理物(ワーク)に照射し、拡散せずに効率的な成膜処理を行うにしている。
【0008】
図10は真空アークプラズマのビーム形態を模式的に示す。同図(10A)に示すように、プラズマビームPBのビーム断面は一般に真円ではなく、プラズマ密度分布に偏りが生じて拉げた略長円形断面になっている。即ち、プラズマ密度分布は、同図(10B)に示すように、短軸X方向に比べて長軸Yの方向に拡がった分布になっている。従って、ワークWに照射したときには、短軸X方向に比べて長軸Y方向のビームによる照射領域が大きくなる。
【0009】
従来のプラズマ流の回転制御は、円軌道を描きながら回転するプラズマ流を生成して、プラズマ進行方向の周りのプラズマの回転角領域のすべての領域においてプラズマの回転速度が等速となっていた。プラズマ密度分布が仮にX、Y方向に同等な正規分布をなす場合には、等速円軌道を描く回転プラズマにより、円周に沿って均一な成膜を行えるはずである。しかしながら、上記のようにプラズマ密度分布に偏りがあるため、ワークに照射したビーム照射量が円周に沿って異なってしまい、膜厚が不均一になる問題があった。この不均一の問題点を以下に詳述する。
【0010】
図12はプラズマビームを等速回転させたプラズマ回転の様子を模式的に示す。図示の回転プラズマは、円軌道Cを描きながらプラズマPB1からPB2、PB3、PB4と時計方向に回転している。円軌道Cの微小区間ΔRで各回転角領域を比較すると、等速円軌道下では微小区間ΔRでの照射時間が一定となるため、プラズマ密度分布の偏りによって、短軸X方向又は長軸Y方向に沿った領域での成膜の厚さが大きく異なっていた。
【0011】
図12において、プラズマPB1とPB3は、短軸X方向が軌道上にある回転角領域に位置し、互いに180°経て向きあった位置にある。プラズマPB2とPB4は、長軸Y方向が軌道上にある回転角領域に位置し、互いに180°経て向きあい、且つ、プラズマPB1とPB3とは90°ずれている。プラズマPB2とPB4がワークに照射されたときは、長軸Y方向に拡がったプラズマ密度分布によりプラズマ照射量が決まる。一方、プラズマPB1とPB3がワークに照射されたときは、長軸Y方向よりも狭い、短軸X方向のプラズマ密度分布によりプラズマ照射量が決まる。従って、円軌道Cを描きながらプラズマPB1からPB2、PB3、PB4に等速回転する回転プラズマを照射した場合には、プラズマPB1及びPB3と、プラズマPB2及びPB4とでは明確な成膜厚さの違いが生じた。勿論、円軌道C全体としても成膜箇所での厚さの斑が生じて、良好なプラズマ処理を行えなかった。かかる成膜厚さの斑はプラズマ密度分布の偏りの影響を受けてバラつくため、所望のプラズマ処理を実行するための回転プラズマ制御自体が困難となっていた。
【0012】
本発明の目的は、上記課題に鑑み、回転プラズマによるプラズマ処理を安定且つ制御可能にして、プラズマ処理の品質を向上させることのできるプラズマ流生成方法、プラズマ処理方法、プラズマ発生装置及びそれを用いたプラズマ処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の形態は、プラズマ構成物質の供給源を陰極とし、前記陰極の前方又は周囲に陽極を設け、前記アーク放電の発生により前記陰極と前記陽極間にアークプラズマを発生させ、回転磁場によりプラズマ進行方向の周りに回転させたプラズマ流を生成するプラズマ流生成方法において、前記プラズマ進行方向の周りのプラズマの回転角領域を2以上に分割し、それぞれの回転角領域におけるプラズマの回転速度を異ならせたプラズマ流生成方法である。
【0014】
本発明の第2の形態は、第1形態において、プラズマ流通経路に設けたX方向磁場を発生させ、且つ前記X方向と直交するY方向磁場を発生させて、前記回転角領域に応じてX方向磁場及び/又はY方向磁場を可変して、前記回転角領域におけるプラズマの前記回転速度を異ならせて、円軌道、楕円軌道又は螺旋軌道を描くプラズマ流を生成するプラズマ流生成方法である。
【0015】
本発明の第3の形態は、第1又は第2形態において、前記回転角領域を4n(n:正の整数)個に分割したプラズマ流生成方法である。
【0016】
本発明の第4の形態は、第1、第2又は第3形態に係るプラズマ流生成方法により生成したプラズマ流を被処理物に与えてプラズマ処理を行うプラズマ処理方法である。
【0017】
本発明の第5の形態は、第4形態において、前記被処理物の内周部と外周部に成膜するとき、前記回転速度の異なる回転角領域を備えたプラズマ流により、前記内周部と前記外周部における膜厚が異なるようにプラズマ処理を行うプラズマ処理方法である。
【0018】
本発明の第6の形態は、プラズマ構成物質の供給源を陰極とし、前記陰極の前方又は周囲に陽極を設け、前記アーク放電の発生により前記陰極と前記陽極間にアークプラズマを発生させ、プラズマ流を回転磁場によりプラズマ進行方向の周りに回転させるプラズマ発生装置において、前記プラズマ進行方向の周りのプラズマの回転角領域を2以上に分割し、それぞれの回転角領域におけるプラズマの回転速度を異ならせたプラズマ発生装置である。
【0019】
本発明の第7の形態は、第6形態において、プラズマ流通経路に設けたX方向磁場を発生するX方向磁場発生手段と、前記X方向と直交するY方向磁場を発生するY方向磁場発生手段とを備え、前記回転角領域に応じてX方向磁場及び/又はY方向磁場を可変して、前記回転角領域におけるプラズマの前記回転速度を異ならせて、円軌道、楕円軌道又は螺旋軌道を描くプラズマ流を発生するプラズマ発生装置である。
【0020】
本発明の第8の形態は、第6又は第7形態のいずれかにおいて、前記回転角領域を4n(n:正の整数)個に分割したプラズマ発生装置である。
【0021】
本発明の第9の形態は、第6、第7又は第8形態に係るプラズマ発生装置と、前記プラズマ発生装置により発生されたプラズマを輸送するプラズマ輸送管と、前記プラズマ輸送管から供給されるプラズマにより被処理物を処理するプラズマ処理部を有するプラズマ処理装置である。
【0022】
本発明の第10の形態は、第9形態において、前記被処理物の内周部と外周部に成膜するとき、前記回転速度の異なる回転角領域を備えたプラズマ流により、前記内周部と前記外周部における膜厚が異なるようにするプラズマ処理装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、上記課題につき鋭意研究した結果、プラズマ密度分布の偏りに起因して、単純な等速円軌道を描く回転プラズマ流では膜成長の均一化を達成できない点に着目してなされたものである。即ち、本発明の第1の形態によれば、前記プラズマ進行方向の周りのプラズマの回転角領域を2以上に分割し、それぞれの回転角領域におけるプラズマの回転速度を異ならせるので、従来の等速円軌道(図12参照)と異なり、プラズマ密度分布に偏りがあっても、分割された回転角領域でのプラズマ照射時間を可変して、成膜処理を安定的に制御することが可能となり、プラズマ処理の品質を向上させることができる。
【0024】
第2形態によれば、プラズマ流通経路に設けたX方向磁場を発生させ、且つ前記X方向と直交するY方向磁場を発生させて、前記回転角領域に応じてX方向磁場及び/又はY方向磁場を可変して、前記回転角領域におけるプラズマの前記回転速度を異ならせて、円軌道、楕円軌道又は螺旋軌道を描くプラズマ流を生成するので、プラズマの照射条件に応じた所望のプラズマ照射形態での成膜処理を行うことができる。
【0025】
本発明の第3の形態によれば、前記回転角領域を4n(n:正の整数)個に分割したので、例えば、プラズマ流通管路の外周にX方向磁場と、X方向と直交するY方向磁場を発生させる磁場発生手段を設けることにより、4n(n:正の整数)個に分割した夫々の回転角領域におけるプラズマの回転速度を異ならせて、プラズマ密度分布に偏りがあっても、多分割された回転角領域でのプラズマ照射時間を可変して、成膜処理を安定的に制御することができる。
【0026】
本発明の第4の形態によれば、第1、第2又は第3形態に係るプラズマ流生成方法により生成したプラズマ流を被処理物に与えてプラズマ処理を行うので、前記プラズマ流生成方法により各回転角領域における回転速度を異ならせた回転プラズマ流として前記被処理物にプラズマを照射して、成膜厚さに斑を生じさせることなく成膜処理を安定的に制御して高品質のプラズマ処理を行うことができる。
【0027】
本発明においては、多分割された回転角領域でのプラズマ照射時間を可変して、成膜処理を安定的に制御することができるので、被処理物全体に均質な成膜処理を行うことができるだけでなく、被処理物の内外周間でもプラズマ照射時間を可変して、成膜厚さに所望の高低差を正確に付与するプラズマ処理を一工程で行うことができる。即ち、本発明の第5の形態によれば、前記被処理物の内周部と外周部に成膜するとき、前記回転速度の異なる回転角領域を備えたプラズマ流により、前記内周部と前記外周部における膜厚が異なるようにするので、例えば、ハードディスクドライブ用のメディアを被処理物として、内周側のデータゾーンよりも耐久性が要求される外周側のロード・アンロードゾーンを厚く膜形成する場合に、従来では、ディスク全体を一旦成膜した後、再度外周部を厚く成膜する2工程を要するに対して、単一のプラズマ処理工程により内外周の成膜厚さに所望の高低差を高品質に付与するプラズマ処理を行うこともできる。
【0028】
本発明の第6の形態によれば、前記プラズマ進行方向の周りのプラズマの回転角領域を2以上に分割し、それぞれの回転角領域におけるプラズマの回転速度を異ならせるので、プラズマ密度分布に偏りがあっても、分割された回転角領域でのプラズマ照射時間を可変して、成膜処理を安定的に制御することができ、プラズマ処理の品質を向上させることのできるプラズマ発生装置の提供が可能となる。
【0029】
本発明の第7の形態によれば、プラズマ流通経路に設けたX方向磁場を発生するX方向磁場発生手段と、前記X方向と直交するY方向磁場を発生するY方向磁場発生手段とを備え、前記回転角領域に応じてX方向磁場及び/又はY方向磁場を可変して、前記回転角領域におけるプラズマの前記回転速度を異ならせて、円軌道、楕円軌道又は螺旋軌道を描くプラズマ流を発生するので、プラズマの照射条件に応じた所望のプラズマ照射形態での成膜処理を行うことのできるプラズマ発生装置の提供が可能となる。
【0030】
本発明の第8の形態によれば、前記回転角領域を4n(n:正の整数)個に分割したので、例えば、前記X方向磁場発生手段及び前記Y方向磁場発生手段に偏向磁場コイルを用い、前記偏向コイルの通電制御を周回位置で調整することにより、4n(n:正の整数)個に分割した夫々の回転角領域におけるプラズマの回転速度を異ならせて、プラズマ密度分布に偏りがあっても、多分割された回転角領域でのプラズマ照射時間を可変して、成膜処理の安定的制御が可能なプラズマ発生装置を実現することができる。
【0031】
本発明の第9の形態によれば、第6、第7又は第8形態に係るプラズマ発生装置によって、多分割された回転角領域に応じて照射時間を可変した回転プラズマを発生させ、前記プラズマ輸送管を経由して前記プラズマ処理部に供給して該回転プラズマによる成膜処理等を行えるので、高品質のプラズマ処理を行うことができる。
【0032】
本発明の第10の形態によれば、前記被処理物の内周部と外周部に成膜するとき、前記回転速度の異なる回転角領域を備えたプラズマ流により、前記内周部と前記外周部における膜厚が異なるようにするので、例えば、ハードディスクドライブ用のメディアを被処理物として、内周側のデータゾーンよりも耐久性が要求される外周側のロード・アンロードゾーンを厚く膜形成する場合に、従来では、ディスク全体を一旦成膜した後、再度外周部を厚く成膜する2工程を要するに対して、単一のプラズマ処理工程により内外周の成膜厚さに所望の高低差を高品質に付与するプラズマ処理を行えるプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の実施形態に係るプラズマ発生装置が設置されたプラズマ処理装置の断面概略構成図である。
【図2】前記プラズマ処理装置の制御ブロック図である。
【図3】プラズマ回転用磁場発生器37の構成及びプラズマ回転用磁場発生器37により発生される回転磁場を示す図である。
【図4】単純な円を描くための電流制御波形図及び円形リサージュ図である。
【図5】本実施形態の周波数可変によるパルス電流波形図である。
【図6】図5の4分割による円形リサージュ図である。
【図7】本発明に係る回転プラズマ制御の基本フローチャートである。
【図8】螺旋軌道用パルス電流の波形図及びそれによる螺旋軌道を描く回転プラズマのリサージュ図である。
【図9】別の螺旋軌道用パルス電流の波形図及びそれによる螺旋軌道を描く回転プラズマのリサージュ図である。
【図10】真空アークプラズマのビーム形態を模式的に示す図である。
【図11】プラズマ回転用磁場発生器37により生起される回転プラズマ流を説明するための図である。
【図12】従来のプラズマ回転の様子を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施形態に係るプラズマ発生装置及びプラズマ処理装置を添付図面に基づいて詳細に説明する。
【0035】
図1は本発明に係るプラズマ発生装置1が設置されたプラズマ処理装置の断面概略構成図である。プラズマ発生部4には、プラズマ構成物質の供給源を陰極(ターゲット)2とし、陰極2の前方側には筒状の陽極3が配設されている。プラズマ発生部4には、トリガ電極のストライカ5、アーク電源11、陰極プロテクタ12、プラズマ安定化磁界発生器(電磁コイル若しくは磁石)13を備えている。ストライカ5は陰極2に対し接近・後退可能に、回動自在に配設されている。真空雰囲気下で陰極2とストライカ5の間に電気スパークを生起し、陰極2と陽極3の間に真空アークを発生させてプラズマが生成される。
【0036】
本実施形態に係るプラズマ処理装置においては、本発明のプラズマ流生成方法により生成した回転プラズマ流をプラズマ処理室28に導入してプラズマ処理が行われる。かかる回転プラズマ流の生成は、陰極2と陽極3の間に発生させたプラズマを、プラズマ流通経路を通じてプラズマ処理室28のプラズマ流入口に配置した排出側縮径管27に導き、回転磁場を与えてプラズマ進行方向の周りに回転させて行われる。このとき、回転磁場制御により前記プラズマ進行方向の周りのプラズマの回転角領域を2以上に分割し、それぞれの回転角領域におけるプラズマの回転速度を異ならせた回転プラズマ流が生成され、破線C1に示すプラズマ流入口に向けてプラズマ処理室28内に導入される。回転プラズマ流の回転形態としては、回転磁場制御に応じて円軌道、楕円軌道又は螺旋軌道を描くプラズマ流を発生させることができ、プラズマの照射条件に応じた所望のプラズマ照射形態での成膜処理を行うことができる。
【0037】
陰極2は、プラズマ構成物質の供給源であり、その形成材料は、導電性を有する固体なら特に限定されず、金属単体、合金、無機単体、無機化合物(金属酸化物・窒化物)等を単独又は2種以上混合して用いることができる。陽極3の形成材料は、プラズマ温度でも蒸発せず、非磁性の材料で導電性物質を使用することができる。プラズマ発生部4における真空アーク放電によりターゲット材料イオン、電子、陰極材料中性粒子(原子及び分子)といった真空アークプラズマ構成粒子が放出されると同時に、サブミクロン以下から数百ミクロン(0.01〜1000μm)の大きさの陰極材料微粒子(以下「ドロップレットD」と称する)も放出される。生成されたプラズマは、プラズマ進行路6を進行し、屈曲部7において屈曲磁場発生器8、8により形成された磁場によって、連結進行路14に向け角度θ屈曲されて、連結進行路14へ進行する。このとき、ドロップレットDは、電気的に中性であり磁場の影響を受けないため、ドップレット進行路9を直進し、ドロップレット捕集部10に捕集される。なお、ドップレット進行路9等の各進行路の内壁には、ドロップレットDが衝突して付着するバッフル15、16、17、18及び26が設けられている。なお、プラズマ進行路6の始端側にはプラズマ進行磁場を発生させる磁場発生器19が設置されている。
【0038】
連結進行路14は内壁に複数個のバッフル16が設けられた管路からなり、プラズマ進行路20を形成する拡径管21に連接されている。連結進行路14には、拡径管21のプラズマ導入側始端21aに連接された導入側縮径管22が含まれ、連結進行路14中央の導入側縮径管22との段差部には、ドロプレット捕集用アパーチャー25が設けられている。連結進行路14の始端側及び導入側縮径管22には夫々、プラズマ進行磁場を発生させる磁場発生器23、24が設置されている。導入側縮径管22の内壁には複数個のバッフル26が設けられている。
【0039】
拡径管21のプラズマ排出側終端21bには、排出側縮径管27が連接されている。排出側縮径管27の出口はプラズマ処理室(プラズマ処理部)28に連結され、その連結部にはアパーチャー31が設けられている。排出側縮径管27には、プラズマ進行磁場を発生させる磁場発生器30及びプラズマ回転用磁場発生器37が設置されている。プラズマ処理室28内には、排出側縮径管27から導入されたプラズマが照射される位置に、被処理物29が設置されている。
【0040】
拡径管21は、内周管32と外周管33からなり、導入側縮径管22及び排出側縮径管27に対して傾斜配置されている。外周管33はプラズマ流の進行に関与せず、内周管32の保護部材である。内周管32は、絶縁リングなどの絶縁材を介して外周管33内に取着されて、内周管32と外周管33とは電気的に絶縁されている。内周管32の壁面には複数個のバッフル17が設けられている。外周管33の外周にはプラズマ進行磁場を発生させる直進磁場発生器36が設置されている。直進磁場発生器36は外周管33の外周の外周に巻回された電磁コイルから構成される。
【0041】
図1において、破線Aはプラズマの進行方向を示す。連結進行路14を通過したプラズマは導入側縮径管22を経てプラズマ進行路20の拡径管21内を進行する。このとき、残存するドロップレットDがバッフル17に衝突して付着し、除去される。更に、プラズマはプラズマ進行路20から屈曲して排出側縮径管27に導入され、破線C1に示すように、排出側縮径管27を通じてプラズマ処理室28に導入される。
【0042】
導入側縮径管14より拡径管21内に導入されたプラズマ流が拡径管21によるプラズマ進行路の拡径作用により拡散される。プラズマ流に混入しているドロップレットは直進するから、傾斜配置された拡径管21の管内壁面に衝突しながら拡散する。この拡散によりプラズマ流の中心部分ではドロップレットが減少し、プラズマ流体の外周に多くドロップレットが分布する状態に遷移する。この分布変化により、拡径管21前後の段差部34、35付近及び内周管32の内壁面に向かって、ドロップレットが衝突して付着、回収される。更に、プラズマ排出側終端21bに屈曲して連接された排出側縮径管27に排出される際、矢印B方向に直進するドロップレットがバッフル18に衝突して付着し、除去される。
【0043】
プラズマ処理室28には、ガス導入システム(図示せず)により必要に応じて反応性ガスが導入され、ガス排気システム(図示せず)により反応ガスやプラズマ流が排気される。なお、本実施形態では、プラズマ発生部4とプラズマ処理室28の間に複数に屈曲した進行路を設けてプラズマ流通経路を構成しているが、本発明はこれに限らず略L字状の進行路等を備えた各種プラズマ処理装置に適用することができる。
【0044】
図2は本実施形態のプラズマ処理装置の制御ブロック図を示す。図2では、主に、本発明に係るプラズマ回転に必要な制御回路を示し、ストライカ駆動制御回路、直進磁場制御回路等は省略している。
プラズマ処理装置の制御部はプログラマブルロジックコントローラ(PLC)100により構成されている。PLC100にはタッチパネルディスプレイ101が接続され、タッチパネルディスプレイ101により表示出力および設定入力が可能となっている。PLC100には、プラズマ回転制御プログラムが格納されており、そのプラズマ回転制御プログラムに基づき駆動制御されるパルスジェネレータ103が接続されている。パルスジェネレータ103のパルス出力はDCサーボアンプ103a、103bを介して振動磁場発生器37a及び振動磁場発生器37bに与えられる。また、PLC100には、直流安定化電源102が接続され、直流安定化電源102の電源出力は直進磁場発生器30に与えられる。
【0045】
図3は、プラズマ回転用磁場発生器37の構成及びプラズマ回転用磁場発生器37により発生される回転磁場を示す。
磁場発生器37は、X軸方向の振動磁場Bを発生させる振動磁場発生器37a及びY軸方向の振動磁場Bを発生させる振動磁場発生器37bからなり、これらの磁場発生器は拡径管21に対して、振動磁場Bと振動磁場Bが直交するように配設されている。Z軸方向の直進磁場Bは直進磁場発生器36により形成される。本発明の回転磁場発生手段の具体例として、振動磁場発生器37a及び振動磁場発生器37bの組合せが挙げられ、回転磁場は振動磁場Bと振動磁場Bの合成磁場からなる。振動磁場発生器37a及び振動磁場発生器37bは偏向磁場を発生させる電磁コイル(以下偏向コイルという。)からなる。また、直進磁場発生器30は排出側縮径管27の外周に巻回された電磁コイルから構成される。
【0046】
(3B)は、振動磁場発生器37aによる時刻tの振動磁場B(t)、振動磁場発生器37bによる時刻tの振動磁場B(t)及び時刻tの回転磁場B(t)の関係を示す。図3では、拡径管21におけるプラズマ流が通過する1つの位置に印加される磁場を示し、直進磁場Bは定常磁場としている。直進磁場を時間と共に変化させることもできる。時刻t=tにおける振動磁場B(t)及びB(t)から回転磁場B(t)が合成される。
【0047】
(3B)及び(3C)(時刻表記(t)を省略)に示すように、前記回転磁場Bと直進磁場Bから合成磁場Bが合成され、前記ドロップレット混合プラズマ9は、合成磁場Bの方向に屈曲されて前記排出側縮径管27を進行する。同様に、(3A)では、時刻t=tにおける振動磁場B(t)及びB(t)から回転磁場B(t)が合成される。即ち、時刻tがtからtに進むと、振動磁場B(t)、B(t)が振動磁場B(t)、B(t)に変化し、前記回転磁場B(t)がB(t)からB(t)へ回転する。従って、振動磁場発生器37a、37bに通電するパルス電流の位相差、振動数及び電流量を調整し、振動磁場B(t)、B(t)を制御することにより、所望の回転磁場B(t)を発生させることができる。尚、以下では時刻表記(t)を省略して、振動磁場B、B及び回転磁場Bと表記する。
【0048】
(3B)及び(3C)には、振動磁場B、B、直進磁場B、回転磁場Bと合成磁場Bの関係を示す。(3B)では、振動磁場Bの振幅BX0と振動磁場Bの振幅BY0が同じ値に設定され、位相差90°の振動磁場B、Bが同じ振動数で振動することにより、回転磁場Bが一定強度で回転する。従って、プラズマ流38は円形に回転しながら排出側縮径管27を進行する。(3C)の場合では、振幅BX0より振幅BY0が小さく設定され、(3B)と同様に、位相差90°の振動磁場B、Bを同じ振動数で振動させることにより、(3C)の回転磁場Bのベクトルは楕円形に回転する。
図11は排出側縮径管27内のプラズマ流38を模式的に示す。
排出側縮径管27内のプラズマ流38は上記回転磁場Bの回転作用を受けて湾曲しドロップレットを矢印39に示す壁側の方向に分離しながら回転プラズマ流となって、プラズマ処理室28への導入方向C1に向けて進行していく。
【0049】
図2に示すように、振動磁場発生器37a及び振動磁場発生器37bの電磁コイルへの通電制御は、夫々、パルスジェネレータ103により発生されたパルス信号に基づき通電量を可変するDCサーボアンプ103a、103bからの電流供給により行われる。パルスジェネレータ103は、PLC100によるプラズマ回転制御プログラムの実行に伴い、パルス信号を生成する。直進磁場発生器30の電磁コイルへの通電制御は、PLC100により駆動制御される直流安定化電源102からの電源供給により行われる。
【0050】
各偏向コイルには、DCサーボアンプ103a、103bを通じて、正弦波電流が供給される。正弦波電流の供給によるプラズマ回転制御の原理を以下に、簡単に説明する。
正弦波電流をAmsin2πft(Am:振幅、f:周波数、t:時間)で表すと、この正弦波電流を偏向コイルに流したとき、偏向コイルより形成される磁場は、2πf=nπのときに0であり、2πf=nπ/2のときにはnが奇数であれば1、偶数であれば−1となるように磁場の向きが変わる。図4の(4A)に示すように、例えば、各偏向コイルに、振幅が同じで位相の異なるsin2πft、cos2πft波形電流を与えると、プラズマ流はsin2πft、cos2πftのリサージュ図形、つまり、図4の(4B)に示すように、円形を描くように回転する。なお、既に問題点として掲げたように、周波数fを一定にして円軌道を描きながらプラズマを回転させた場合には、プラズマ進行方向の周りのプラズマの回転角領域のすべての領域においてプラズマの回転速度が等速となってしまう。
【0051】
本発明においては、プラズマの周回速度はDCサーボアンプ103a、103bからのパルス電流の周波数fにより決定されることに着眼し、プラズマ進行方向の周りのプラズマの回転角領域を2以上に分割し、それぞれの回転角領域におけるプラズマの回転速度を異ならせる電流制御を行う。前記回転角領域は4n(n:正の整数)個に分割して行われる。
【0052】
本実施形態は回転角領域を4分割した場合である。
図5は本実施形態の周波数可変によるパルス電流波形を示す。4象限Z1〜Z4における各周波数は7、15、6、20Hzに設定されている。この周波数可変設定により、4分割された回転角領域におけるプラズマの回転速度を異ならせることができる。従来では、いずれの象限においてもパルス電流の周波数fを一定値、例えば10Hzにしているため、上記のように、プラズマの回転速度が等速となっていたが、本実施形態によれば、分割された回転角領域でのプラズマ照射時間を可変して、プラズマ密度分布に偏りがあっても、成膜処理を安定的に制御することができ、プラズマ処理の品質を向上させることができる。
【0053】
図6は、図5の4分割によるリサージュ図形を示す。プラズマ流は円形を描くように回転するものの、4象限Z1〜Z4における回転速度が異なっている。つまり、第1象限Z1、第3象限Z3では周回速度が遅く、第2象限Z2、第4象限Z4では速い周回速度になっている。図6では、象限Z2、Z4の速い周回速度をドット表示で図示している。
【0054】
図6において、P1〜P4はプラズマ密度分布に偏りのあるプラズマ流の各象限における周回位置を示す。P1とP3は、短軸X方向が軌道上にある回転角領域に位置し、互いに180°経て向きあった位置にある。プラズマP2とP4は、長軸Y方向が軌道上にある回転角領域に位置し、互いに180°経て向きあい、且つ、プラズマP1とP3とは90°ずれている。プラズマP2とP4がワークに照射されたときは、長軸Y方向に拡がったプラズマ密度分布によりプラズマ照射量が決まる。一方、プラズマP1とP3がワークに照射されたときは、長軸Y方向よりも狭い、短軸X方向のプラズマ密度分布によりプラズマ照射量が決まる。本実施形態では、プラズマP2とP4の周回速度がプラズマP1とP3よりも速くなっているため、円軌道Cを描きながらプラズマP1からP2、P3、PB4に周期的に変速回転する回転プラズマを照射して、第1象限Z1〜第4象限Z4において均一な成膜処理を施すことができる。円軌道全体としても成膜箇所での厚さの斑が生じず、良好なプラズマ処理を行うことができる。しかも、プラズマ密度分布の偏りの影響を受けず、成膜厚さの斑を作ることなく、所望のプラズマ処理を実行するための回転プラズマ制御を周波数可変によって簡易に行うことができる。
【0055】
図7は本発明に係る回転プラズマ制御の基本フローチャートである。
本発明に係る回転プラズマ生成制御はPLC100及びPLC100により実行される周波数可変制御の実行プロセスにより構成される。
装置電源の入力により(ステップST1)、プラズマ処理に先立つ、回転プラズマの諸パラメータの設定処理を行う(ステップST2)。回転制御パラメータは周波数f及び振幅データからなる。振幅データは後述の多重軌道制御に必要となる。これらの諸パラメータが設定されていれば、回転プラズマにより被処理物への照射処理が実行可能になる(ステップST3)。
【0056】
回転制御パラメータの未設定の場合には、周波数fの設定を行う(ステップST4、ST5)。周波数fの設定に際しては、分割数4nに応じて各回転角領域の周波数を設定する。ついで、振幅データの設定に移り、多重軌道制御に応じて振幅データを入力設定する(ステップST6、ST7)。各種パラメータの設定にはタッチパネルディスプレイ101を用いて行うことができる。
【0057】
従来の等速回転プラズマでは、図12により説明したように、被処理物に成膜厚さの斑が生じていたが、本発明に係る回転プラズマの生成方法を用いれば、多重軌道を描く回転プラズマ制御を行って成膜の均質化を実現することができる。多重軌道を描く回転プラズマは、DCサーボアンプ103a、103bから各偏向コイルに供給されるパルス電流の振幅を時間変化させることにより生成することができる。
図8は螺旋軌道用パルス電流の波形及びそれによる螺旋軌道を描く回転プラズマのリサージュ図である。時間可変振幅のパルス電流を正弦波Am(t)sin2πft(Am(t):時間可変振幅、f:周波数、t:時間)で表すと、各偏向コイルに供給するX方向のパルス電流、Y方向のパルス電流は夫々、Ax(t)sin2πft、Ay(t)cos2πftとなる。図8の(8A)はAx(t)sin2πftの電流波形の1周期分を示し、繰り返しこの波形のパルス電流の供給が行われる。Ay(t)cos2πfのパルス電流も位相90°異なるだけで同様の波形で行われる。(8A)の場合には、振幅ピーク値の軌跡A1がαtで近似され、振幅は直線的に変化する。従って、Ax(t)sin2πft、Ay(t)cos2πfのパルス供給を上記周波数可変制御と共に行うと、周回速度が回転角領域で異なり、しかも螺旋軌道を描く回転プラズマを生成することができる。即ち、(8A)の時間可変振幅のパルス電流供給によって、図8の(8B)のリサージュ図に示すように、内外周を一定時間間隔で螺旋軌道に沿って回転していく回転プラズマを得ることができる。
【0058】
図9は別の螺旋軌道用パルス電流の波形及びそれによる螺旋軌道を描く回転プラズマのリサージュ図である。図9の(9A)は、(8A)と同様に、正弦波の電流波形の1周期分を示し、繰り返しこの波形のパルス電流の供給が行われる。(9A)の場合には、振幅ピーク値の軌跡A2がlogtで近似され、振幅は曲線的に変化する。従って、係る電流波形のAx(t)sin2πft、Ay(t)cos2πfのパルス供給を上記周波数可変制御と共に行うと、周回速度が回転角領域で異なり、しかも、図8の場合とは別の螺旋軌道を描く回転プラズマを生成することができる。即ち、(8B)の回転プラズマは内外周を一定時間間隔で螺旋軌道に沿って回転していくが、(9B)に示すように、外周側で濃密な螺旋軌道を描く回転プラズマを得ることができる。係る螺旋軌道を描く回転プラズマを用いれば、被処理物の内周部と外周部における膜厚が異なるように成膜形成することが可能になる。例えば、ハードディスクドライブ用のメディアを被処理物として、内周側のデータゾーンよりも耐久性が要求される外周側のロード・アンロードゾーンを厚く膜形成する場合に、従来では、ディスク全体を一旦成膜した後、再度外周部を厚く成膜する2工程を要するに対して、単一のプラズマ処理工程により、内外周の成膜厚さに所望の高低差を高品質に付与するプラズマ処理を行うことができる。
なお、振幅を曲線的に変化させるには、振幅ピーク値の軌跡をexp(t)で近似してもよい。
【0059】
本発明は、上記実施形態や変形例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想を逸脱しない範囲における種々変形例、設計変更などをその技術的範囲内に包含するものであることは云うまでもない。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、回転プラズマを用いたプラズマ処理の制御が可能になり、プラズマ処理の品質向上に寄与する。従って、例えば、プラズマ中で固体材料の表面に欠陥や不純物が格段に少ない高純度の薄膜を均質に形成したり、固体の表面特性を欠陥や不純物を付与することなく、均一に改質することができるので、固体表面における耐磨耗性・耐食性強化膜、保護膜、光学薄膜、透明導電性膜などを高品質かつ高精度に形成することができるプラズマ処理装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 プラズマ発生装置
2 陰極
3 陽極
4 プラズマ発生部
5 ストライカ
6 プラズマ進行路
7 屈曲部
8 屈曲磁場発生器
9 ドップレット進行路
10 ドロップレット捕集部
11 アーク電源
12 陰極プロテクタ
13 プラズマ安定化磁界発生器
14 連結進行路
15 バッフル
16 バッフル
17 バッフル
18 バッフル
19 磁場発生器
20 プラズマ進行路
21 拡径管
21a 始端
21b 始端
22 導入側縮径管
23 磁場発生器
24 磁場発生器
25 アパーチャー
26 バッフル
27 排出側縮径管
28 プラズマ処理室
29 被処理物
30 磁場発生器
31 アパーチャー
32 内周管
33 外周管
34 段差部
35 段差部
36 磁場発生器
37 磁場発生器
38 プラズマ流
39 矢印
100 PLC
101 タッチパネルディスプレイ
102 直流安定化電源
103 パルスジェネレータ
103a DCサーボアンプ
103b DCサーボアンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラズマ構成物質の供給源を陰極とし、前記陰極の前方又は周囲に陽極を設け、前記アーク放電の発生により前記陰極と前記陽極間にアークプラズマを発生させ、回転磁場によりプラズマ進行方向の周りに回転させたプラズマ流を生成するプラズマ流生成方法において、前記プラズマ進行方向の周りのプラズマの回転角領域を2以上に分割し、それぞれの回転角領域におけるプラズマの回転速度を異ならせたことを特徴とするプラズマ流生成方法。
【請求項2】
プラズマ流通経路に設けたX方向磁場を発生させ、且つ前記X方向と直交するY方向磁場を発生させて、前記回転角領域に応じてX方向磁場及び/又はY方向磁場を可変して、前記回転角領域におけるプラズマの前記回転速度を異ならせて、円軌道、楕円軌道又は螺旋軌道を描くプラズマ流を生成する請求項1に記載のプラズマ流生成方法。
【請求項3】
前記回転角領域を4n(n:正の整数)個に分割した請求項1又は2に記載のプラズマ流生成方法。
【請求項4】
前記請求項1、2又は3に記載のプラズマ流生成方法により生成したプラズマ流を被処理物に与えてプラズマ処理を行うことを特徴とするプラズマ処理方法。
【請求項5】
前記被処理物の内周部と外周部に成膜するとき、前記回転速度の異なる回転角領域を備えたプラズマ流により、前記内周部と前記外周部における膜厚が異なるようにプラズマ処理を行う請求項4に記載のプラズマ処理方法。
【請求項6】
プラズマ構成物質の供給源を陰極とし、前記陰極の前方又は周囲に陽極を設け、前記アーク放電の発生により前記陰極と前記陽極間にアークプラズマを発生させ、プラズマ流を回転磁場によりプラズマ進行方向の周りに回転させるプラズマ発生装置において、前記プラズマ進行方向の周りのプラズマの回転角領域を2以上に分割し、それぞれの回転角領域におけるプラズマの回転速度を異ならせたことを特徴とするプラズマ発生装置。
【請求項7】
プラズマ流通経路に設けたX方向磁場を発生するX方向磁場発生手段と、前記X方向と直交するY方向磁場を発生するY方向磁場発生手段とを備え、前記回転角領域に応じてX方向磁場及び/又はY方向磁場を可変して、前記回転角領域におけるプラズマの前記回転速度を異ならせて、円軌道、楕円軌道又は螺旋軌道を描くプラズマ流を発生する請求項6に記載のプラズマ発生装置。
【請求項8】
前記回転角領域を4n(n:正の整数)個に分割した請求項6又は7に記載のプラズマ発生装置。
【請求項9】
前記請求項6、7又は8に記載のプラズマ発生装置と、前記プラズマ発生装置により発生されたプラズマを輸送するプラズマ輸送管と、前記プラズマ輸送管から供給されるプラズマにより被処理物を処理するプラズマ処理部を有することを特徴とするプラズマ処理装置。
【請求項10】
前記被処理物の内周部と外周部に成膜するとき、前記回転速度の異なる回転角領域を備えたプラズマ流により、前記内周部と前記外周部における膜厚が異なるようにする請求項9に記載のプラズマ処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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