説明

プラズマCVD装置

【課題】基板ホルダーの洗浄などのメンテナンス性と基板ホルダーに対する温度制御性とを共に向上したプラズマCVD装置を提供する。
【解決手段】基板を保持する基板ホルダー12と、前記基板を加熱するためのヒーターを含むヒーターパネル13とを備えたプラズマCVD装置において、前記基板ホルダー12と前記ヒーターパネル13とを取り外し可能に固定するための固定手段と、前記基板ホルダー12と前記ヒーターパネル13との間に介在されたギャップ16であって、前記ヒーターパネル13からの熱を前記基板ホルダー12に伝導させるためのガスを内部に含むためのギャップ16と、前記ギャップ16内に前記ガスを導入するためのガス導入口17と、前記ギャップ16内のガス圧力が放電空間15のガス圧力よりも大きくなるように、前記ガス導入口17を介して前記ギャップ16内に所定圧力のガスを供給するためのガス供給手段と、を備えたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板などに薄膜を形成するのに適したプラズマCVD装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプラズマCVD装置においては、図3(a)(b)のように、チャンバー内に基板を支持する基板ホルダーとヒーターを内蔵したヒーターパネルとを溶接などで互いを取り外し不能に接合するホルダー・ヒーター一体型に構成した装置と、チャンバー内に基板ホルダーとヒーターパネルとを互いに離れた位置に配置するホルダー・ヒーター分離型に構成した装置と、が存在していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−102744号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、図3(a)に示すようなホルダー・ヒーター一体型の装置においては、基板ホルダーに対する洗浄等のメンテナンスが難しいという問題があった。また、図3(b)に示すようなホルダー・ヒーター分離型の装置においては、基板ホルダーがヒーターパネルと離れているため、ヒーターと基板ホルダーとの間に大きな熱抵抗が存在し、この大きな熱抵抗によって基板ホルダー温度の応答性が悪くなってしまうという問題があった。また、この大きな熱抵抗の作用によってヒーターパネル温度と基板ホルダー温度とに大きな温度差が生じ易くなっているため、基板ホルダーの熱的な環境が変化して入熱量や抜熱量に変化があった場合には、ヒーターパネル温度と基板ホルダー温度との関係が一定に保たれ難くなってしまうという問題があった。特に、放電プラズマを利用したプロセッシング装置においては、プラズマを構成する粒子によって基板ホルダーが加熱されるが、放電電力が大きくなると基板ホルダーへの入熱量も増すため、この入熱量の増加によって容易に基板ホルダーが過熱し、プロセッシング対象の電子装置が破壊されてしまう場合すらあった。
【0005】
本発明はこのような従来技術の問題点に着目してなされたものであって、基板ホルダーに対するメンテナンス性と基板ホルダーに対する温度制御性とを共に向上させることができるプラズマCVD装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
以上のような課題を解決するためのプラズマCVD装置は、処理対象となる基板を保持する基板ホルダーと、前記基板ホルダーに対向するように配置されたヒーターパネルであって前記基板を加熱するためのヒーターを含むヒーターパネルと、を備えたプラズマCVD装置において、前記基板ホルダーと前記ヒーターパネルとを取り外し可能に固定するための固定手段と、前記基板ホルダーと前記ヒーターパネルとの間に介在されたギャップであって、前記ヒーターパネルからの熱を前記基板ホルダーに伝導させるためのガスを内部に含むためのギャップと、前記ギャップ内に前記ガスを導入するためのガス導入口と、前記ギャップ内のガス圧力がプラズマ放電空間のガス圧力よりも大きくなるように、前記ガス導入口を介して前記ギャップ内に所定圧のガスを供給するためのガス供給手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0007】
また、本発明によるプラズマCVD装置は、処理対象となる基板を保持する基板ホルダーと、前記基板ホルダーに対向するように配置されたヒーターパネルであって前記基板を加熱するためのヒーターを含むヒーターパネルと、を備えたプラズマCVD装置において、前記基板ホルダーと前記ヒーターパネルとを取り外し可能に固定するための固定手段と、前記基板ホルダーと前記ヒーターパネルとの間に介在されたギャップであって、前記ヒーターパネルからの熱を前記基板ホルダーに伝導させるためのガスを内部に含むためのギャップと、前記ギャップ内に前記ガスを導入するためのガス導入口と、前記ギャップ内のガス圧力を制御するためのガス圧力制御手段と、を備えたことを特徴とするものである。
【0008】
また、本発明によるプラズマCVD装置においては、前記ガス圧力制御手段は、前記ギャップ内のガス圧力がプラズマ放電空間のガス圧力よりも大きくなるように、前記ギャップ内へ供給されるガス圧力を制御するものである、ことが望ましい。
【0009】
また、本発明によるプラズマCVD装置においては、前記基板ホルダーの前記ヒーターパネル側の面及び前記ヒーターパネルの前記基板ホルダー側の面の少なくとも一方に、前記ギャップを形成するための凹部又は凹凸部が形成されている、ことが望ましい。
【0010】
また、本発明によるプラズマCVD装置においては、前記ガス導入口は前記ヒーターパネル側に配置されており、前記基板ホルダーの前記ヒーターパネル側の面又は前記ヒーターパネルの前記基板ホルダー側の面には、前記ガス導入口から前記ギャップ内に導入されたガスを前記ギャップの周辺部に導くための案内溝が形成されている、ことが望ましい。
【0011】
さらに、本発明によるプラズマCVD装置においては、前記基板ホルダーと前記ヒーターパネルとの間のギャップ長は、前記ギャップ内での所望の圧力における前記ギャップ内のガスの平均自由行程よりも大きなサイズに設定されている、ことが望ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、前記基板ホルダーと前記ヒーターパネルとを取り外し可能に固定すると共に両者の間にギャップ(隙間・空間)を介在させてその中に前記ヒーターパネルからの熱を前記基板ホルダーに伝導させるためのガスを存在させるようにしたので、基板ホルダーに対する洗浄等のメンテナンス性を向上させることができる(従来の基板ホルダーをヒーターパネルから取り外しできないタイプでは基板ホルダーのメンテナンス性が悪いという問題があった)と共に、基板ホルダーへの温度制御性を向上させることができる(従来の基板ホルダーをヒーターパネルから分離して配置したタイプでは基板ホルダーへの温度制御性が悪いという問題があった)。
【0013】
このように、本発明においては、基板ホルダーとヒーターパネルとを取り外し可能にして両者間にギャップを介在させるようにしながら、そのギャップの中に熱伝達に適したガスを存在させることにより、基板ホルダーに対する温度制御性を向上させるようにしている。このことを図3を参照してより詳しく説明すると、次のとおりである。
図3(a)は従来のホルダー・ヒーター一体型のプラズマCVD装置における熱の移動を示す模式図、図3(b)は従来のホルダー・ヒーター分離型のプラズマCVD装置における熱の移動を示す模式図である。図3において、図中の矢印は熱の移動を示している。図3(a)に示すホルダー・ヒーター一体型の場合は、熱的に一体化された金属の熱伝導により基板ホルダーを昇温させている。よって基板ホルダーからCH(チャンバー)内壁への熱移動やプラズマから基板ホルダーへの熱移動の影響を受けて基板ホルダーの温度が所望の温度より上昇または低下した場合でも、ホルダー・ヒーター間の熱抵抗が小さく基板ホルダーへの入熱(実線矢印)と基板ホルダーからの抜熱(点線矢印)の速度が速いので、ヒーターパネルの温度を調整することにより基板ホルダーの温度を適正に制御することができる。
しかし、図3(b)に示すホルダー・ヒーター分離型の場合は、基板ホルダーとヒーターパネルとの間の気体による熱伝導により基板ホルダーを昇温させている。よって、ヒーターパネルから基板ホルダーへの熱移動の他にプラズマから基板ホルダーへの熱移動の強い影響が有り、基板ホルダーの温度が所望の温度を超えてしまった場合に、ヒーターパネルの温度を調整しても、ホルダー・ヒーター間の熱抵抗が大きく基板ホルダーからの抜熱速度が遅いため所望のホルダー温度を維持できない(過昇温になる)という問題があった。
これに対して、本発明においては、前述のように、基板ホルダーとヒーターパネルとを分離型にしても、それらの間のギャップ内に熱伝達に適したガスを存在させているので、ホルダー・ヒーター間の熱抵抗を小さくして基板ホルダーへの入熱(実線矢印)と基板ホルダーからの抜熱(点線矢印)の速度を速くすることができる。したがって、本発明によれば、基板ホルダーの温度が所望の温度を超えてしまった場合でも、ヒーターパネルの温度を調整することにより、基板ホルダーの温度を所望の温度に維持する(過昇温を防ぐ)ことが可能になる。
【0014】
また、本発明において、前記ガス導入口から導入されるガスの圧力を調整して、前記ギャップ内のガス圧力が放電空間のガス圧力よりも大きくなるように、前記ギャップ内のガス圧力を制御するようにしたときは、前記ギャップ内に放電空間からのプリカーサが入り込むことを防止できるようになる。なお、この場合、前記ギャップ内のガス圧力を検出又は推測しこれに基づいて前記ギャップ内のガス圧力を制御するようにしたときは、前記ギャップ内のガス圧力をより正確に制御することができ、前記ヒーターパネルから前記基板ホルダーへの熱伝達を安定的に行うことができるようになる。
【0015】
また、本発明において、前記基板ホルダーの前記ヒーターパネル側の面又は前記ヒーターパネルの前記基板ホルダー側の面に、前記ギャップを形成するための凹部又は凹凸部と前記案内溝とを形成するようにしたときは、前記ガス導入口から前記ギャップ内に導入されたガス圧力と前記ギャップ周辺部との圧力が一定になるようになる。
【0016】
また、本発明において、前記基板ホルダーと前記ヒーターパネルとの間のギャップ長を、前記ギャップ内での所望の圧力における前記ガスの平均自由行程よりも大きなサイズに設定したときは、前記ヒーターパネルから前記基板ホルダーへの伝熱量が前記ギャップ内のガス圧力と関係なく一定となるので、前記ヒーターパネルから前記基板ホルダーへの伝熱量を安定的に制御できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例1によるプラズマCVD装置を示す模式図である。
【図2】(a)は図1の基板ホルダー12を示す底面図、(b)は前記基板ホルダー12のギャップ形成用の凹部12aを説明するための模式図((a)のB−B線断面を模式的に示す図)である。
【図3】(a)は従来のホルダー・ヒーター一体型のプラズマCVD装置における熱の移動を示す模式図、(b)は従来のホルダー・ヒーター分離型のプラズマCVD装置における熱の移動を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例1について述べるような形態である。
【実施例1】
【0019】
図1は本発明の実施例1によるプラズマCVD装置を示す模式図である。図1において、12は基板(図示せず)を支持する基板ホルダー(基板ホルダー12の図示上面に基板(図示せず)が支持されている)、13はヒーターを内蔵したヒーターパネル、14は前記基板ホルダー12上の基板と所定の空間を介して対向するように配置された電極板、15は前記基板と前記電極板14との間に形成される放電空間、16は前記基板ホルダー12と前記ヒーターパネル13との間に介在されたギャップ(隙間)、17は前記ギャップ16内に熱伝達に適した気体、例えば熱伝導率の高い水素ガスを導入するためのガス導入口(後述のガス供給支管18を流れる水素ガスを前記ギャップ16内に導入するためのガス導入口)、18は前記ガス導入口17に水素ガスを供給するためのガス供給支管(前記ヒーターパネル13の図示中央部を上下方向に挿通するガス供給支管)、19は前記ガス供給支管18に水素ガスを流入させるためのガス供給管、20は前記ガス供給管19の所定箇所に備えられ前記ガス供給管19内を流れる水素ガスの流量を制御するためのマスフローコントローラ(MFC)、21は前記ガス供給管19の所定箇所に備えられ前記ガス供給管19内の水素ガスの圧力を測定するための圧力計、22は前記ガス供給管19の図示右側の所定箇所に備えられ前記ガス供給管19内を流れる水素ガスの流量を絞るための絞り、である。
【0020】
なお、前記の基板ホルダー12、ヒーターパネル13、電極板14は図示しないチャンバー内に収容されている。また、前記ヒーターパネル13内の前記ギャップ16に近い場所には、前記ヒーターパネル13又は前記ギャップ16内の温度を検出するための熱電対23が備えられている。前記熱電対23は、前記ヒーターパネル13内の前記基板ホルダー12及びギャップ16に近接した場所に内蔵されている。
【0021】
次に、図2(a)は図1の基板ホルダー12を示す底面図、図2(b)は前記基板ホルダー12のギャップ形成用の凹部12aを説明するための模式図(図2(a)のB−B線断面を模式的に示す図)である。図2において、31は前記基板ホルダー12を前記ヒーターパネル13に取り外し可能になるよう取り付け固定するためのネジ穴である。
【0022】
前記基板ホルダー12の底面(前記ヒーターパネル13側の面)には、切削などにより例えば0.3mm(望ましくは約20μm〜2mmの範囲内)の高さ(図2(b)の符号C参照)を有する凹部12aが形成されている(図2(a)の斜線を付した部分も参照)。この凹部12aは、図1のギャップ16を形成するためのものである。本実施例1では、前記ヒーターパネル13の上面(基板ホルダー12に隣接する面)は平坦に形成されている。よって、本実施例1では、前記ギャップ16の前記基板ホルダー12と前記ヒーターパネル13との間の距離(ギャップ長)は0.3mm(望ましくは約20μm〜2mmの範囲内)となっている。なお、本実施例1では、前記ギャップ長は、前記ギャップ内での所望の圧力における水素ガスの平均自由行程よりも大きなサイズに設定するようにしている。こうすることにより、前記ヒーターパネル13から前記基板ホルダー12への熱移動量が前記ギャップ16内のガス圧力と関係なく一定となるので、前記ヒーターパネル13から前記基板ホルダー12への熱移動量を安定的に制御できるようになるからである。
【0023】
また、本実施例1では、前記ギャップ16は気密に封止はされていない。そのため、前記ガス導入口17から前記ギャップ16内への水素ガスの導入が継続されている間、前記の基板ホルダー12とヒーターパネル13との間の隙間からは前記導入されたガスが少しずつ前記ギャップ16外へ漏れ出るようになっている。本実施例1では、前記ギャップ16内へ継続的に導入されるガスの圧力を、前記マスフローコントローラ20と前記絞り22で制御することにより、前記ギャップ16内のガス圧力を一定に制御するようにしている。
【0024】
前記の図1で説明したように、前記ヒーターパネル13側には前記ガス導入口17が形成されている。このガス導入口17からの水素ガスは、前記ガス導入口17と対向する前記凹部12a(図2(a)の斜線を付した部分)の略中央部に流入される。本実施例1では、この前記凹部12aの略中央部を通る溝12bと、この溝12bと接続されており前記凹部12aの四方の周辺部を通る溝12cが形成されている。これらの溝12b,12cの幅は例えば1.0mm程度、深さは例えば0.5〜1.0mm程度である。本実施例1では、前記溝12b,12cが形成されることにより、前記ギャップ16の略中央部に流入された水素ガスは、前記溝12b,12cに沿って周辺部方向に移動し、前記ギャップ16内全体の圧力が一定になるようになっている。
【0025】
次に、本実施例1における基板ホルダー12に関わる熱の収支について説明する。
(1)基板ホルダーから電極板への伝熱量
基板ホルダーの温度を200℃と仮定する。電極板14の温度は電極ヒーターによって120℃から190℃程度に一定に保つ予定なので、ここでは電極板14の温度を150℃と仮定する。適応係数を1、完全な平行平板として簡単化する。放電空間15の圧力は水素100Paと仮定する。電極間隔は最も狭い場合(最も熱が逃げ易い場合)として15mmと仮定する。この場合は、基板ホルダー12から電極板14へは水素の通常の熱伝導で熱が移動すると考える。理科年表の数表から線形近似で水素の熱伝導率を外挿して、過酷に見積もって200℃時の水素の熱伝導率を求め、熱伝導率k=2.70E−1(W/mK)を得る。ここから単位面積あたりの伝熱量を求めると、伝熱量Q1=2.4E3(W/m)を得る。
【0026】
(2)熱的に平衡する為のヒーターパネル温度
基板ホルダー12とヒーターパネル13間は例えば0.3mmのギャップ16が存在しており、ギャップ16内には水素が導入されており圧力は150Paと仮定する(ギャップ16内にプリカーサが入り込まないように、ギャップ16内の圧力は放電空間15より10%程度以上は圧力を高くする)。この場合、ヒーターパネル13の温度を何度にすればヒーターパネル13から基板ホルダー12への伝熱量がQ1と同じになり熱的に平衡するのかを考える。つまり、ヒーターパネル13から基板ホルダー12への熱移動量がQ1と同じ2.4E3(W/m)になるためのヒーターパネル13の温度を求める。ギャップ長が短いので、熱伝導が自由分子流熱伝導になっている可能性がある。ここでは厳しい側に仮定をおき、自由分子流熱伝導による熱の移動量を元に、平衡するヒーターパネル13の温度を求める。その結果、ヒーターパネル13の温度が205℃の時に平衡するという結論になる。この程度の温度差なら十分に制御範囲と言える。但し、基板ホルダー12とヒーターパネル13の温度はほぼ同じといえる状況にはなりそうに無いので、熱電対23(図1参照)の取り付けに留意し、基板ホルダー12の温度を反映するような熱電対23の取付構造にする必要がある。
【0027】
以上に説明したように、本実施例1においては、前記基板ホルダー12と前記ヒーターパネル13とを取り外し可能なようにネジ31(図2(a)参照)で固定するようにしたので、従来のホルダー・ヒーター一体型の装置(図3参照)における基板ホルダーに対する洗浄等のメンテナンスが困難だという問題を解決することができる。また、本実施例1では、前記基板ホルダー12の底面側の凹部12aにより前記基板ホルダー12と前記ヒーターパネル13との間にギャップ16を形成し、このギャップ16内に例えば水素ガスなどの熱伝達に適したガスを導入するようにしたので、前記ヒーターパネル13から前記基板ホルダー12への熱移動量と、前記基板ホルダー12から前記電極板14等への熱移動量を平衡させることができ、温度制御性を向上させることができる。
【0028】
また、本実施例1においては、前記ギャップ16内のガス圧力が放電空間15内のガス圧力よりも大きくなるように、例えば放電空間15内のガス圧力の約10%かそれ以上のガス圧力となるように、前記ギャップ16内へ継続的に導入されるガスの圧力を制御するようにしている。よって、本実施例1においては、前記ギャップ16内に放電空間15からのプリカーサが入り込むことを防止できるようになる。
【0029】
また、本実施例1においては、前記基板ホルダー12の前記ヒーターパネル13側の面に、前記ギャップ16を形成するための凹部12aと前記溝12b,12cとを形成するようにしているので、前記ガス導入口17から前記ギャップ16内に導入されたガスの圧力を、前記ギャップ16の四方の周辺部を含む全体で同一圧力にすることができる。
【0030】
また、本実施例1においては、前記基板ホルダー12と前記ヒーターパネル13との間のギャップ長を、前記ギャップ内での所望の圧力における水素ガスの平均自由行程よりも大きなサイズに設定しているので、前記ヒーターパネル13から前記基板ホルダー12への伝熱量を前記ギャップ16内のガス圧力と関係なく一定とすることができ、前記ヒーターパネル13から前記基板ホルダー12への伝熱量を安定的に制御できるようになる。
【0031】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明は前記の実施例として述べたものに限定されるものではなく、様々な修正及び変更が可能である。例えば、前記実施例1においては、前記基板ホルダー12の前記ヒーターパネル13側の面に微小な高さの凹部12aを形成することにより前記基板ホルダー12と前記ヒーターパネル13との間にギャップを形成するようにしているが、本発明においてはこれに限られることなく、前記基板ホルダー12の前記面に、例えばフライス加工時に故意にカッターマークを残すことによりこれを、前記基板ホルダー12と前記ヒーターパネル13との間のギャップとみなしてもよい。また、本発明においては、前記基板ホルダー12の面ではなく、前記ヒーターパネル13の前記基板ホルダー12側の面に、前記ギャップを形成するための前記凹部又は凹凸部を形成するようにしてもよい。また、本発明においては、前記基板ホルダー12と前記ヒーターパネル13の互いに対向する面の双方に、前記ギャップを形成するための前記凹部又は凹凸部を形成するようにしてもよい。
【0032】
また、前記実施例1においては、前記ギャップ16は気密に封止することなく、前記ギャップ16内に水素ガスが継続的に導入されている間は前記の基板ホルダー12とヒーターパネル13との間の隙間からの前記ガスの前記ギャップ16外への多少の流出も差し支えないようになっている(この状態で前記ギャップ16内が所望の圧力に保たれている)が、本発明では、前記ギャップ16を気密に封止する(この場合は、前記ギャップ16内へのガスの導入は前記ギャップ16内が所望のガス圧力に達した時点で停止する)ようにしてもよい。
【0033】
また、前記実施例1においては、前記ギャップ16内が所望のガス圧力となるようにするため、前記ギャップ16内へ継続的に導入されるガス圧力を、前記ガス供給管19内を流れるガス流量を測定することに基づいて制御するようにしている(前記のガス供給管19に設置されるマスフローコントローラ20はガス流量センサを内蔵している)が、本発明においては、前記ガス供給管19内のガス流量や前記ギャップ16内のガス圧力を計測するセンサを備えることなく、例えばレギュレータを使用して予め設定したガス流量を継続的に前記ガス供給菅19内に導入することにより、前記ギャップ16内のガス圧力を所望の圧力に保持するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0034】
12 基板ホルダー
12a 凹部
12b,12c 溝
13 ヒーターパネル
14 電極板
15 放電空間
16 ギャップ
17 ガス導入口
18 ガス供給支管
19 ガス供給管
21 マスフローコントローラ
21 圧力計
22 しぼり
23 熱電対
31 ネジ穴(固定手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理対象となる基板を保持する基板ホルダーと、前記基板ホルダーに対向するように配置されたヒーターパネルであって前記基板を加熱するためのヒーターを含むヒーターパネルと、を備えたプラズマCVD装置において、
前記基板ホルダーと前記ヒーターパネルとを取り外し可能に固定するための固定手段と、
前記基板ホルダーと前記ヒーターパネルとの間に介在されたギャップであって、前記ヒーターパネルからの熱を前記基板ホルダーに伝導させるためのガスを内部に含むためのギャップと、
前記ギャップ内に前記ガスを導入するためのガス導入口と、
前記ギャップ内のガス圧力が放電空間のガス圧力よりも大きくなるように、前記ガス導入口を介して前記ギャップ内に所定量のガスを供給するためのガス供給手段と、を備えたことを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項2】
処理対象となる基板を保持する基板ホルダーと、前記基板ホルダーに対向するように配置されたヒーターパネルであって前記基板を加熱するためのヒーターを含むヒーターパネルと、を備えたプラズマCVD装置において、
前記基板ホルダーと前記ヒーターパネルとを取り外し可能に固定するための固定手段と、
前記基板ホルダーと前記ヒーターパネルとの間に介在されたギャップであって、前記ヒーターパネルからの熱を前記基板ホルダーに伝導させるためのガスを内部に含むためのギャップと、
前記ギャップ内に前記ガスを導入するためのガス導入口と、
前記ギャップ内のガス圧力を制御するためのガス圧力制御手段と、
を備えたことを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項3】
請求項2において、
前記ガス圧力制御手段は、前記ギャップ内のガス圧力が放電空間のガス圧力よりも大きくなるように、前記ギャップ内へ供給されるガスの圧力をマスフローコントローラーと絞りにより制御するものである、ことを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項4】
請求項1から3までのいずれかにおいて、
前記基板ホルダーの前記ヒーターパネル側の面及び前記ヒーターパネルの前記基板ホルダー側の面の少なくとも一方に、前記ギャップを形成するための凹部又は凹凸部が形成されている、ことを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれかにおいて、
前記ガス導入口は前記基板ホルダー又は前記ヒーターパネル側に配置されており、
前記基板ホルダーの前記ヒーターパネル側の面又は前記ヒーターパネルの前記基板ホルダー側の面には、前記ガス導入口から前記ギャップ内に導入されたガスを前記ギャップの周辺部に導くための案内溝が形成されている、ことを特徴とするプラズマCVD装置。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれかにおいて、前記基板ホルダーと前記ヒーターパネルとの間のギャップ長は、前記ギャップ内での所望の圧力における前記ガスの平均自由行程よりも大きなサイズに設定されている、ことを特徴とするプラズマCVD装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−26685(P2011−26685A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−176122(P2009−176122)
【出願日】平成21年7月29日(2009.7.29)
【出願人】(591097632)長州産業株式会社 (19)
【Fターム(参考)】