説明

プラットホームの転落防止装置

【課題】簡易、廉価な構成により乗客のプラットホームからの転落事故を防止しようとするものである。
【解決手段】プラットホーム1の列車待機位置の上方に、乗客8が保持し得る吊り手7を配置し、乗客8はこの吊り手7を保持することにより、プラットホーム1からの転落事故の発生を防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラットホームの転落防止装置に係るもので、簡易、廉価な構成により乗客のプラットホームからの転落事故を防止しようとするものである。
【背景技術】
【0002】
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−14805号
【特許文献2】特開2006−89008号公報
【特許文献3】特開2003−170826号公報 従来、乗客のプラットホームからの転落を防止する装置としては、特許文献1に示す如く、プラットホームの列車走行側に転落防止用の扉を配置し、列車への乗降時にのみ、この扉を開放し、列車待ちの場合は扉を閉めておくことにより転落事故を防止しようとする構成が知られている。また、特許文献2に示す如く、プラットホームの天井から手摺りを吊り下げ、この手摺りを駆動手段により長手方向又は上下方向に進退させることにより、乗客の列車への乗降と、列車待機時の転落事故を防止しようとする構成が知られている。また、特許文献3に示す如く、天井の長手方向に可動柵を揺動自在に設け、この可動柵を駆動手段により開閉駆動することにより、乗客の列車への乗降と、列車待機時の転落事故を防止しようとする構成が知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の発明の如く、プラットホームの列車走行側に転落防止用の扉を配置し、列車への乗降時にのみこの扉を開放し、列車待ちの場合は扉を閉めておくことにより転落事故を防止しようとする構成は、転落防止効果の点からは優れた構成であるが、設置のための時間と経費が莫大なものとなる欠点を有している。
【0005】
また、特許文献2、3に記載の発明は特許文献1に記載の発明に比較し、設置のための時間と経費が少なくなると推定されるが、それでも駆動装置を必須の条件としている為、設置には多大の経費と時間を必要とすることに変わりがない。また、特許文献2、3に記載の発明は、天井から吊り下げた手摺りや、可動柵を前後又は左右に進退揺動させるものである為、この進退揺動時にプラットホーム上の乗客と接触する可能性があり、新たな事故を発生させる危険性の高いものである。
【0006】
また、特許文献1〜3に示す如き、扉を開閉したり、柵を上下動したりするものに於いては、列車停止時に列車の乗降扉部分に対応して、乗客の出入口を形成しなければならないが、列車の乗降扉の形成間隔、乗降扉の幅等は、全ての列車で一定して居るものではなく、特に異なる経営会社が相互乗り入れしている路線に於いてはその違いが著しいものとなり、全ての列車の乗降扉に対応することは困難なものであった。
【0007】
そこで、本願発明は上述の如き課題を解決しようとするものであって、プラットホームの転落防止装置において、駆動機構等の動力を一切用いることがなく廉価な設置を可能とすると共に、設置後の安全性が高く、設置した装置による新たな事故を発生させる可能性をなくす事ができる。また、列車により設置位置や間隔の異なる乗降扉にも全く関係なく対応することを可能としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は上述の如き課題を解決するため、プラットホームの列車待機位置の上方に、乗客が保持し得る吊り手を配置して成るものである。プラットホーム上の乗客は吊り手を保持することにより安定した待機状態を確保することが出来る。
【0009】
また、吊り手の配置は、プラットホームの天井の下面に突出した吊り杆に、プラットホームと平行に支持杆を接続し、この支持杆に固定したものであっても良い。このように構成することにより、プラットホームの表面に支柱等の障害物を設置することなく吊り手を配置することが可能となる。
【0010】
また、吊り手の配置は、プラットホームの天井の下面に吊り下げ固定したものであっても良い。このように構成することにより、既存の構造物をそのまま利用した吊り手の配置が可能となり、廉価で簡易な吊り手の配置が可能となる。
【0011】
また、吊り手の配置は、プラットホームに支柱を配置し、この支柱間に設置した支持杆に固定したものであっても良い。このように構成することにより、プラットホーム上で屋根が形成されていない場所、即ち天井の存在しない場所に吊り手を設置する場合に特に有効なものである。
【0012】
また、吊り手の配置部には、下方向にエアーを噴出する噴出口を形成したものであっても良い。このように構成することにより、視覚が不自由な障害者の場合も、また、聴覚と視覚の双方が不自由な障害者でも吹き付けるエアーによって、吊り手の位置を容易に確認することができる。また、健常者でも注意散漫でうっかりしている場合にも、エアーと接触することにより注意を喚起されるものとなる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は上述の如く構成したものであり、プラットホームの列車待機位置の上方に、乗客が保持し得る吊り手を配置すると言う極めて簡易な構成により、乗客が吊り手を保持している限り、ある程度の衝撃が加えられた場合にも、乗客は自身を吊り手で支えることが可能となり、プラットホームからの転落事故を防止することが出来る。また、吊り手には駆動機構を接続する必要がないから従来例の転落防止機構に比較して廉価に設置が可能となる。また、吊り手は駆動機構に接続する必要がないから、柵、扉等の位置移動によって乗客を挟んだり、乗客に打撃を加えたりする虞も全くない。また、体の不自由な乗客、体調の悪い乗客に於いても吊り手を保持することにより安定的に体を保つことができ、めまい等により発生していた転落事故の防止にも有効なものとなる。また、眼の不自由な乗客が白杖でプラットホームの端や、待機位置を確認することは細心の注意が必要となり転落事故を生じやすいものであった。しかしながら、手や白杖を上げて吊り手を確認することは極めて容易であり、勘違い等も発生する余地がないから、眼の不自由な人の転落事故を大幅に減少させることが可能となる。また、プラットホームに入る列車によって乗降扉の形成間隔や幅が異なる場合にも、開閉部等を備えない本発明では何ら関係なく対応することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施例1を示す斜視図。
【図2】本発明の実施例2を示す斜視図。
【図3】本発明の実施例3を示す斜視図。
【図4】本発明の実施例4を示す斜視図。
【実施例1】
【0015】
本発明の実施例1を図1に於いて説明すると、(1)はプラットホームで、レール(2)の敷設面(3)から一定の高さを保って形成されている。そして、プラットホーム(1)の上面を被覆する天井(4)の下面に吊り杆(5)を下方に突出し、この吊り杆(5)に支持杆(6)をプラットホーム(1)の表面と平行に固定し、この支持杆(6)に吊り手(7)を固定配置している。このように構成することにより、プラットホーム(1)の表面に支柱等の障害物を設置することなく吊り手(7)を配置することが可能となる。この吊り手(7)は、乗客(8)が保持するリング部(10)と、このリング部(10)を支持杆(6)に接続するベルト(11)とから構成している。そして、この吊り手(7)は、プラットホーム(1)のレール(2)側の縁から内側であって、プラットホーム(1)上の乗客(8)が、列車の進入時にも安全を確保出来る位置の上面に設置する。
【実施例2】
【0016】
また、上記実施例1では、天井(4)の下面に吊り杆(5)を下方に突出し、この吊り杆(5)に支持杆(6)を固定し、この支持杆(6)に吊り手(7)を設置している。この方式は地上を走行する車両のプラットホーム(1)の如く、天井(4)が高く設置されている場合に有効であるが、地下鉄のように天井(4)が低い位置に設置されている場合には、図2に示す如く、吊り杆(5)、支持杆(6)等を介することなく、天井(4)に吊り手(7)を直接設置するものとしても良い。
【実施例3】
【0017】
また、上記の各実施例では天井(4)の下面に、吊り杆(5)、支持杆(6)を介して、又は直接、吊り手(7)を設置しているが、他の異なる実施例3では、図3に示す如く、プラットホーム(1)に支柱(12)を一定間隔ごとに固定配置し、この支柱(12)間に支持杆(6)を掛け渡して固定する。この支持杆(6)に吊り手(7)を吊り下げ、乗客(8)が容易に保持し得るものとする。このように形成することにより、プラットホーム(1)上で屋根が形成されていない場所、即ち天井(4)の存在しない場所に吊り手(7)を設置する場合に特に有効なものである。また、天井(4)の様々の設置物、例えば照明、駅名表示看板、列車名表示板等の影響を受けることなく、吊り手(7)を任意の場所に設置することが可能となる。また、吊り手(7)には、子供用吊り手(15)を接続し、子供や背の低い人用にも用いることができる。
【0018】
上記各実施例の如く形成することにより、プラットホーム(1)の列車待機位置の上方に、乗客(8)が保持し得る吊り手(7)を配置することができる。このような極めて簡易な構成により、乗客(8)は吊り手(7)をいつでも保持することができ、乗客(8)はこの吊り手(7)を保持している限り、故意に、又は誤って、或いは混雑時に、ある程度の衝撃が背面等から加えられた場合にも、乗客(8)は自身を吊り手(7)で支えることが可能となり、プラットホーム(1)からの転落事故を防止することが出来る。また、吊り手(7)には駆動機構を接続する必要がないから、従来例の転落防止機構に比較して廉価に設置が可能となる。また、吊り手(7)は駆動機構に接続する必要がないから、柵、扉等の位置移動によって乗客(8)を挟んだり、乗客(8)に打撃を加えたりする虞も全くない。
【0019】
また、体の不自由な乗客(8)、体調の悪い乗客(8)に於いても、吊り手(7)を保持することにより安定的に体を保つことができ、めまい等により発生していた転落事故の防止にも有効なものとなる。また、眼の不自由な乗客(8)が白杖でプラットホーム(1)の端や、待機位置を確認することは細心の注意が必要となり転落事故を生じやすいものであった。しかしながら、手や白杖を上げて吊り手を確認することは極めて容易であり、勘違い等も発生する余地がないから、眼の不自由な乗客(8)の転落事故を大幅に減少させることが可能となる。また、プラットホーム(1)に入る列車によって乗降扉の形成間隔や幅が異なる場合にも、開閉部等を備えない本発明では何ら関係なく全ての車両に対応することができるものとなる。
【実施例4】
【0020】
また、吊り手(7)の配置部には、図4に示す如く、下方向にエアー(13)を噴出する噴出口(14)を形成したものであっても良い。このように構成することにより、視覚が不自由な障害者の場合も、また、視覚と聴覚の双方が不自由な障害者でも吹き付けるエアー(13)によって、吊り手の位置を容易に確認することができる。また、健常者でも注意散漫でうっかりしている場合に、エアー(13)と接触することにより注意を喚起されるものとなる。このエアー(13)は、図4に示す如く吊り手(7)を固定した支持杆(6)にエアー(13)の噴出口(14)を形成し乗客(8)が位置する下方向に噴射する。このエアー(13)は常温であっても良いが、夏には冷却したもの、冬には加温したものを噴射すれば列車の待ち時間を快適なものとすることができる。また、上記実施例ではエアー(13)を支持杆(6)から噴出したが、リング部(10)に噴出口(14)を設けて噴出するものとしても良い。この場合は、エアー(13)の噴出が不快と感じる場合には、噴出口(14)を手で閉止することによりエアー(13)の噴出を停止することができるものとなる。
【符号の説明】
【0021】
1 プラットホーム
4 天井
5 吊り杆
6 支持杆
7 吊り手
12 支柱
13 エアー
14 噴出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームの列車待機位置の上方に、乗客が保持し得る吊り手を配置したことを特徴とするプラットホームの転落防止装置。
【請求項2】
吊り手の配置は、プラットホームの天井の下面に突出した吊り杆に、プラットホームと平行に支持杆を接続し、この支持杆に固定したことを特徴とする請求項1記載のプラットホームの転落防止装置。
【請求項3】
吊り手の配置は、プラットホームの天井の下面に吊り下げ固定したことを特徴とする請求項1記載のプラットホームの転落防止装置。
【請求項4】
吊り手の配置は、プラットホームに支柱を配置し、この支柱間に設置した支持杆に固定したことを特徴とする請求項1記載のプラットホームの転落防止装置。
【請求項5】
吊り手の配置部には、下方向にエアーを噴出する噴出口を形成したことを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のプラットホームの転落防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−56422(P2012−56422A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−200819(P2010−200819)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【特許番号】特許第4662389号(P4662389)
【特許公報発行日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(390019884)ジャパン・フィールド株式会社 (28)
【Fターム(参考)】