説明

プラットホーム安全監視装置

【課題】ホーム柵扉に開口部を広くとると強度上の制約があり、また、ホーム柵扉付近にカメラのみ設置すると、ホーム柵扉が閉じている場合は、ホーム柵扉のホーム側から目視での状況確認が難くなるという課題がある。
【解決手段】前記ホーム柵扉に設置され、前記ホーム柵扉の閉動作に伴い前記ホーム柵扉と前記プラットホームの線路側端部との範囲を撮像する撮像装置と、前記ホーム柵扉のホーム側に表示されるように設置され、前記撮像装置により撮像された映像を表示する映像表示装置とを設けたものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、駅構内に設けられたプラットホームに設置されているホーム柵のホーム柵扉付近の状態を監視するプラットホーム安全監視装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のプラットホーム安全監視装置としては図6に示すようなものがある。図6はホーム柵のホーム柵扉付近をホーム側より見た正面図である。図6において、駅構内に設けられたプラットホーム1には利用客の安全を確保するためのホーム柵2が設置されている。そのホーム柵2には利用客が乗降する位置にホーム柵扉3が設置されており、ホーム柵戸袋4内には図示しないホーム柵扉3の扉駆動機構が配置され、その扉駆動機構によりホーム柵扉3が開閉されるようになっている。図6はホーム柵扉3が閉まった状態を示しており、扉駆動機構によりホーム柵扉3が開かれるとそのホーム柵扉3はホーム柵戸袋4内に収納されるようになっている。
【0003】
従来のホーム柵2のホーム柵扉3は鋼板で製作されており、ホーム柵扉3が閉じている時には、ホーム側Aから線路側Bを見た場合、視差によって、ホーム柵扉3と車両間のプラットホーム1床面が見えないという問題があった。ホーム柵扉3と車両間のプラットホーム1の床面が見えないという事は、ホーム柵扉3と車両間の間に、人が取り残されている(居残り者がいる)状況が目視で確認できない事を意味しており、安全上、問題があった。
【0004】
この問題を解決する為に、一般的には、ホーム柵扉3の鋼板に開口部を設け、図6に示すように、ガラスやアクリル等の透明の材質の透明体5,6を埋め込んでいた。このような透明体5,6を設けることにより、ホーム柵扉3と車両間の間に、人が取り残されている(居残り者がいる)状況を目視で確認することができる。このような方式は、実際のホーム柵扉3に多く採用されている。
【0005】
また、特開2001−354138号公報(駅内報知装置)に示すものがあるが、この装置は、列車の運行案内や混雑時の誘導案内、一般情報(企業CM、構内案内)表示用の映像装置をホーム柵扉に搭載するものであり、主目的は報知用であり、ホーム柵扉3と車両間の間に、人が取り残されている(居残り者がいる)状況を目視で確認するものではない。
【0006】
また、特許第3980305号公報(駅プラットホームの安全監視装置)に示すようなものがあるが、この装置は、カメラに支障物を検出する画像処理部を搭載し、ホーム居残り者などの支障物をホーム柵扉付近に設置したカメラが検出した際に、検出画像を遠隔の乗務員端末に送信し、遠隔の乗務員がホーム柵扉と車両間の間に、人が取り残されている(居残り者がいる)状況を確認するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−354138号公報
【特許文献2】特許第3980305号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した従来のプラットホーム安全監視装置においては、しかしながら、ホーム柵扉3
に開口部を広くとればとる程、視界を広く確保することができる反面、列車の通過風や自然風などに対する強度対策が必要となり、ホーム柵扉3に開口部を広くとるにはどうしても強度上の制約があり、十分な視界を確保する事ができないと言った問題があった。
【0009】
また、特許第3980305号公報に示すような装置においては、ホーム柵扉付近に、カメラのみが設置されているので、ホーム柵扉が閉じている場合は、ホーム柵扉のホーム側Aから目視での状況確認が難くなり、第3者によるホーム居残り者の発見及び救助が遅くなってしまうといった問題があった。
【0010】
この発明は上記のような課題を解決するためになされたものであり、ホーム柵扉の強度を保持したまま、ホーム柵扉と車両間の居残り者を、ホーム柵扉が閉まった状態で、ホーム側から直接目視にて確認することができるプラットホーム安全監視装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明に係わるプラットホーム安全監視装置は、前記ホーム柵扉に設置され、前記ホーム柵扉の閉動作に伴い前記ホーム柵扉と前記プラットホームの線路側端部との範囲を撮像する撮像装置と、前記ホーム柵扉のホーム側に表示されるように設置され、前記撮像装置により撮像された映像を表示する映像表示装置とを設けたものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明に係わるプラットホーム安全監視装置は、ホーム柵扉の強度を保持したまま、ホーム柵扉と車両間の居残り者を、ホーム柵扉が閉まった状態で、ホーム側から直接目視にて確認することができるプラットホーム安全監視装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】この発明の実施の形態1に係わるプラットホーム安全監視装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係わるプラットホーム安全監視装置をホーム側から見た状態を示す正面図である。
【図3】この発明の実施の形態1に係わるプラットホーム安全監視装置を線路側から見た状態を示す正面図である。
【図4】この発明の実施の形態1に係わるプラットホーム安全監視装置を示す断面図である。
【0014】
【図5】この発明の実施の形態2に係わるプラットホーム安全監視装置を示す断面図である。
【図6】従来のプラットホーム安全監視装置を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
実施の形態1.
以下、この発明の実施の形態1を図1ないし図4に基づいて説明する。図1はこの発明の実施の形態1に係わるプラットホーム安全監視装置の構成を示すブロック図である。図2はこの発明の実施の形態1に係わるプラットホーム安全監視装置をホーム側から見た状態を示す正面図である。図3はこの発明の実施の形態1に係わるプラットホーム安全監視装置を線路側から見た状態を示す正面図である。図4はこの発明の実施の形態1に係わるプラットホーム安全監視装置を示す断面図である。
【0016】
これら各図において、駅構内に設けられたプラットホーム1には利用客の安全を確保するため、プラットホーム1の線路側端部から所定位置にホーム柵2が設置されている。そ
のホーム柵2には利用客が乗降する位置に鋼板で構成されたホーム柵扉7が設置されている。そして、ホーム柵戸袋4内には図示しないホーム柵扉7を開閉駆動する扉駆動機構が配置され、その扉駆動機構によりホーム柵扉7が開閉されるようになっている。図2および図3はホーム柵扉7が閉まった状態を示しており、扉駆動機構によりホーム柵扉7が開かれるとそのホーム柵扉7はホーム柵戸袋4内に収納されるようになっている。
【0017】
8はホーム柵扉7の例えば上方側に設置され、ホーム柵扉7の閉動作に伴いホーム柵扉7とプラットホーム1の線路側端部との範囲を撮像する撮像装置であり、図は一例としてカメラにより構成された場合を示している。8aは撮像装置8による撮像範囲を示している。
【0018】
9はホーム柵扉7のホーム側に表示されるように設置され、カメラにより構成された撮像装置8により撮像された映像が信号ケーブル10を通して入力され、撮像装置8により撮像された映像を表示する映像表示装置である。
【0019】
11はホーム柵戸袋4内に設置され、ホーム柵扉7の開閉状態を検知する開閉リミットスイッチであり、12は開閉リミットスイッチ11からの検知信号により、カメラにより構成された撮像装置8および映像表示装置9に電源を供給する電源装置である。
【0020】
次に動作について説明する。まず、図示しない列車がプラットホーム1に入線し、利用客乗降の為、例えば、ホーム柵扉7が開いている場合は、開閉リミットスイッチ11からの検知信号は開信号として電源装置12に入力される。
【0021】
電源装置12は、開閉リミットスイッチ11からの入力信号が開信号であれば、カメラにより構成された撮像装置8および映像表示装置9への電源供給を停止する。
【0022】
これは、ホーム柵扉7が開いている時は、ホーム柵扉7とプラットホーム1の線路側端部との間のプラットホーム1床面が目視できる状態なので、映像表示装置9の表示は不要であり、省エネを図る為に電源供給を停止するとともに、映像表示装置9の寿命を延ばす為に行っている。
【0023】
次に、利用客の乗降が完了し、列車が発車する為、ホーム柵扉7が閉じている場合は、開閉リミットスイッチ11からの検知信号は閉信号として電源装置12へ入力される。
【0024】
電源装置12は、開閉リミットスイッチ11からの入力信号が閉信号であれば、カメラにより構成された撮像装置8および映像表示装置9への電源供給を行う。
【0025】
電源装置12により電源供給されたカメラにより構成された撮像装置8は、ホーム柵扉7とプラットホーム1の線路側端部との間のプラットホーム1床面の映像を撮像し、信号ケーブル10を通して、映像表示装置9へ映像信号を送る。
【0026】
撮像装置8から信号ケーブル10を通して送られてきた映像信号は、映像表示装置9に入力され、撮像装置8により撮像された映像を表示する。
【0027】
以上のように、この実施の形態1によれば、アクリルなどをホーム柵扉に埋め込む為に開口面積を強度ぎりぎりまで大きくとる必要がなく、ホーム柵扉7としての強度を保ったまま、ホーム柵扉7と車両間の居残り者を、ホーム柵扉7が閉まった状態で、ホーム側Aから映像表示装置9を通じて直接的に目視にて確認することができると言うメリットがある。
【0028】
なお、撮像装置8としてのカメラは、上下方向に回動させて撮像してもよく、広視野角のカメラとしても良い。
【0029】
また、開閉リミットスイッチ11からの検知信号は、ホーム柵扉7が閉じているときに閉信号として電源装置12へ入力され、電源装置12により、カメラにより構成された撮像装置8および映像表示装置9への電源供給を行う場合について述べたが、ホーム柵扉7が閉動作の開始と連動して開閉リミットスイッチ11からの検知信号を閉信号として電源装置12へ入力し、電源装置12により、カメラにより構成された撮像装置8および映像表示装置9への電源供給を行うようにしてもよく、同様の効果を奏する。
【0030】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係るプラットホーム安全監視装置を図5に基づいて説明する。図5はこの発明の実施の形態2に係わるプラットホーム安全監視装置を示す断面図である。
【0031】
上述した実施の形態1においては、カメラにより構成された撮像装置8がホーム柵扉7の上方側に設置されており、ホーム柵扉7の下方付近で死角が発生することが考えられる。このような場合は、図5に示すように、ホーム柵扉7の下方側にもカメラにより構成された撮像装置13を設置したものである。
【0032】
以上説明したような、この発明の実施の形態2によれば、撮像装置8による撮像範囲8aと撮像装置13による撮像範囲13aとにより、カメラ視野角での死角が無い様な構成にする事も可能であり、上述した実施の形態1よりも信頼性の高いプラットホーム安全監視装置を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
この発明は、ホーム柵扉の強度を保持したまま、ホーム柵扉と車両間の居残り者を、ホーム柵扉が閉まった状態で、ホーム側から直接目視にて確認することができるプラットホーム安全監視装置の実現に好適である。
【符号の説明】
【0034】
1 プラットホーム
2 ホーム柵
7 ホーム柵扉
8 撮像装置
9 映像表示装置
13 撮像装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラットホームの線路側端部から所定位置に設置されたホーム柵と、前記ホーム柵に設置されたホーム柵扉とを有するプラットホーム安全監視装置において、前記ホーム柵扉に設置され、前記ホーム柵扉の閉動作に伴い前記ホーム柵扉と前記プラットホームの線路側端部との範囲を撮像する撮像装置と、前記ホーム柵扉のホーム側に表示されるように設置され、前記撮像装置により撮像された映像を表示する映像表示装置とを設けたことを特徴とするプラットホーム安全監視装置。
【請求項2】
前記撮像装置は、前記ホーム柵扉が閉じたときに作動して前記ホーム柵扉と前記プラットホームの線路側端部との範囲を撮像することを特徴とする請求項1に記載のプラットホーム安全監視装置。
【請求項3】
前記撮像装置は、前記ホーム柵扉の上方側と下方側に設置されたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプラットホーム安全監視装置。
【請求項4】
前記撮像装置はカメラで構成されたことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のプラットホーム安全監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−162037(P2011−162037A)
【公開日】平成23年8月25日(2011.8.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−26435(P2010−26435)
【出願日】平成22年2月9日(2010.2.9)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】