説明

プラテンローラの位置決め機構及びこれを備えたプリンタ

【課題】サーマルプリンタにおいて、印画時におけるプラテンローラとサーマルヘッドの接触位置を任意に調整することが可能なプラテンローラの位置決め機構を提供する。
【解決手段】本発明のプラテンローラの位置決め機構は、プラテンローラ1と、プラテンローラの接線方向に所定幅を有するサーマルヘッド9と、プラテンローラ1とサーマルヘッド9が対になって印画紙を挟圧するように、プラテンローラ1とサーマルヘッド9の相対位置を変化させる相対位置変化機構と、プラテンローラ1とサーマルヘッド9の挟圧時における接触位置を、所定幅方向において任意に調整する接触位置調整機構と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サーマルプリンタにおいてプラテンローラとサーマルヘッドの相対位置を位置決めする機構及びこれを備えたプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
サーマルプリンタは、サーマルヘッドとプラテンローラの間に感熱紙やインクシート等を挟み込み、サーマルヘッドとプラテンローラの圧力及び、サーマルヘッドの熱により、感熱紙の色を変化させたり、あるいはインクシートのインクを印画紙に転写することで印画を行う。
【0003】
ここで、サーマルヘッドとプラテンローラはプリンタの筐体に固定されているわけではなく、印画時以外には必要に応じてその相対位置が離反し、離反時に印画紙等は、サーマルヘッド及びプラテンローラから力を受けないため、自由に移動することが出来る。
【0004】
印画時に、プラテンローラはサーマルヘッドの熱を供給するヒータラインと、相対的に正しい位置関係で圧着される必要がある。つまり、ヒータラインとプラテンローラの回転軸は平行となり、ヒータラインはそのいずれの位置においても、プラテンローラと接していることが求められる。このような正しい位置関係でない場合、印画画像がかすれたり、その他の印画不良が生じ得る。
【0005】
このため、例えば特許文献1では、ヘッドがプラテンローラに圧着する際、ヘッドの位置に応じてプラテンローラの位置決めを行う構造のプリンタが提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2006−297682号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前述した特許文献1では、サーマルヘッドがプラテンローラに接近する際に、プラテンローラをサーマルヘッドに対して特定の位置に配置できるように、プラテンローラの設置位置にゆとりを持たせ、サーマルヘッドの歪みや位置変化にプラテンローラを追従させることで、サーマルヘッドとプラテンローラの相対位置の位置決めを行っている。又、印画時のサーマルヘッドとプラテンローラの位置関係は、機構により設定された特定の位置のみに限定される。
【0008】
サーマルプリンタでは、印画時にサーマルヘッドが発生した熱を放熱し、サーマルヘッドの温度を制御する必要があるため、サーマルヘッドと一体になった放熱部材を設け、常時放熱を行う。放熱効果を大きくしなければ印画時間の短縮を図ることが出来ないため、放熱部材の寸法及び重量は大きくなる。
【0009】
前述の通り、サーマルヘッドとプラテンローラの相対位置を離反させる必要がある。しかし、サーマルヘッドとこれに付設された重量のある放熱部材を駆動するには大きな駆動力が求められ、動作に時間もかかる。このため、サーマルヘッドを駆動してプラテンローラから離反させるとすれば、コストが増大し、印画時間短縮の観点からも望ましくない。
【0010】
又、印画時のサーマルヘッドとプラテンローラの接触位置は、プリンタ本体が設置されている環境温度やプリンタ内部の温度、使用する印画紙及びインクシート、印画画像の模様、色の濃度などにより、常に特定の位置が最適であるとは限らない。そのため、必要に応じて、印画時のサーマルヘッドとプラテンローラの相対位置関係を変化させることが出来れば、良質な印画を得ることが可能である。
【0011】
上記の課題に鑑み、本発明は、プラテンローラとサーマルヘッドの接触位置を任意に調整することが可能な、プラテンローラの位置決め機構及びこれを備えたプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のプラテンローラの位置決め機構は、プラテンローラと、プラテンローラの接線方向に所定幅を有するサーマルヘッドと、プラテンローラとサーマルヘッドが対になって印画紙を挟圧するように、プラテンローラとサーマルヘッドの相対位置を変化させる相対位置変化機構と、プラテンローラとサーマルヘッドの挟圧時における接触位置を、所定幅方向において任意に調整する接触位置調整機構と、を備える。
【発明の効果】
【0013】
本発明のプラテンローラの位置決め機構は、プラテンローラとサーマルヘッドの挟圧時における接触位置を、所定幅方向において任意に調整する接触位置調整機構を備える。プリンタ内外の温度や、印画紙、印画画像や色の濃度に応じてプラテンローラとサーマルヘッドの接触位置を任意に調整することにより、良質な印画を行う事が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(実施の形態1)
<全体構成>
実施の形態1におけるプラテンローラの位置決め機構は、サーマルプリンタの内部に設置され、プラテンローラの位置決めを行うものである。初めに、図5を用いて、実施の形態1におけるプラテンローラの位置決め機構の構成を説明する。図5は、実施の形態1におけるプラテンローラの位置決め機構の構成図である。図5には図示していないが、プラテンローラの位置決め機構の周囲に筐体があり、サーマルプリンタを構成する。
【0015】
実施の形態1におけるプラテンローラの位置決め機構は、プラテンローラ1と、プラテンローラ1を支持するプラテンユニット6と、サーマルヘッド9と、サーマルヘッド9を固定するヘッドベース10と、を備えている。
【0016】
プラテンローラ1は、プラテンユニット6に支持され、回動自在に設置されている。プラテンユニット6には、プリンタ筐体に設けられたガイド(図示せず)と嵌合したシャフト12が嵌入されており、シャフト12を軸として図5に示すc及びd方向に回動することが出来る。これにより、プラテンユニット6とシャフト12は、プラテンローラ1とサーマルヘッド9の相対位置を変化させる相対位置変化機構としての機能を有する。さらに、シャフト12は前記ガイドによって図5に示すa及びb方向に移動可能であり、これに従動してプラテンユニット6はa及びb方向に移動可能である。これにより、プラテンユニット6とシャフト12は、プラテンローラ1とサーマルヘッド9の接触位置を変化させる接触位置調整機構としての機能を有する。ここで、a及びb方向は、プラテンローラ1の接線方向で、サーマルヘッド9の表面に略平行な方向である。又、プラテンユニット6はばね14によりb方向に付勢されている。
【0017】
サーマルヘッド9は、プラテンローラ1の接線方向に所定幅を有しており、印画紙に熱を加えるためのヒータライン(図示せず)を内蔵している。
【0018】
ヘッドベース10は、プリンタの筐体(図示せず)等に固定されており、その上部にサーマルヘッド9を固定している。又、ヘッドベース10はサーマルヘッド9の熱を放熱する放熱板としての機能を有しており、プラテンローラ1やプラテンユニット6に比べて重い。すなわち、ヘッドベース10とサーマルヘッド9の相対位置は変化しない。
【0019】
さらに、プラテンローラ1とサーマルヘッド9の接触位置を変化させる接触位置変化機構として、実施の形態1のプラテンローラの位置決め機構は、プラテンユニット6に加えてレバー2、位置決め部材5、ヘッドベース位置決め部材10aを備えている。
【0020】
レバー2は、プラテンローラ1の回転軸を中心として回動する。レバー2の回動姿勢は位置決め部材5と、ヘッドベース位置決め部材10aによって決定される。位置決め部材5はプラテンユニット6に設置され、レバー2の接触部2aと当接する。レバー2の他端にはベアリング4が設けられ、ヘッドベース10上に固定されたヘッドベース位置決め部材10aと当接する。又、レバー2はばね15によって、接触部2aが位置決め部材5と当接する向きに付勢力を与えられている。
【0021】
なお、図5に示したようにプラテンローラ1はサーマルヘッド9の上方に位置することになる。すなわち、実施の形態1のサーマルプリンタにおいて、プラテンローラ1はサーマルヘッド9の上方に位置する。これにより、サーマルヘッド9を固定するヘッドベース10をプリンタの下方に設置することができ、プリンタの重心を下方にすることで安定性を高めることが出来る。さらに、プラテンローラ1が上方に移動して圧着する場合と比較して、安定してサーマルヘッド9と圧着することが出来る。
【0022】
すなわち、実施の形態1に係るプラテンローラの位置決め機構は、プラテンローラ1と、プラテンローラ1の接線方向に所定幅を有するサーマルヘッド9と、プラテンローラ1とサーマルヘッド9が対になって印画紙を挟圧するように、プラテンローラ1とサーマルヘッド9の相対位置を変化させる相対位置変化機構と、プラテンローラ1とサーマルヘッド9の挟圧時における接触位置を、所定幅方向において任意に調整する接触位置調整機構と、を備えている。これにより、プリンタ内外の温度や、印画紙、印画画像や色の濃度に応じてプラテンローラ1とサーマルヘッド9の接触位置を任意に調整することができ、良質な印画を行う事が可能である。
【0023】
次に、図5には示されていないプラテンユニット6に搭載される各構成要素について説明する。図3及び図4は、プラテンユニット6の構成を互いに異なった方向から示した斜視図である。プラテンユニット6には、プラテンローラ1と、位置決め部材5と、モータ7と、トルクリミッタ8が設置されている。プラテンローラ1及び位置決め部材5は回動自在である。
【0024】
モータ7は、プラテンローラの回動動力となるものであり、モータ7の回転トルクは、プラテンユニット6に設置された歯車群を介して、プラテンローラ1の回転軸上に設置されたトルクリミッタ8に伝わる。トルクリミッタ8の回転トルクはプラテンローラ1に伝わり、プラテンローラ1は回転する。
【0025】
又、プラテンユニット6の一端にはシャフト12(図示せず、図5参照)を貫通する長円穴6aが設けられている。
【0026】
<レバー2周辺部の構成>
次に、図1に沿ってレバー2の周辺部分についてさらに説明する。図1は、実施の形態1において、印画時にサーマルヘッド9とプラテンローラ1が圧着している状態を示している。図5と異なりプラテンユニット6は図示していない。
【0027】
レバー2は、プラテンローラ1の両端にベアリング3を介して回転自在に配置されている。
【0028】
すなわち、レバー2の回動中心となる所定軸はプラテンローラ1の回転軸であり、レバー2はプラテンローラ1の両端に、プラテンローラ1を回動自在にして嵌入される。レバー2の回動中心をプラテンローラ1の回転軸となるようにレバー2を設置することにより、レバー2とプラテンローラ1を独立してプラテンユニット6に設置した場合と比較して、省スペース化を図ることが出来る。さらに、レバー2をプラテンローラ1の両端に嵌入することとしたため、回動姿勢決定部材としての位置決め部材5、ヘッドベース位置決め部材10aをレバー2に合わせてプラテンローラ1の両端に設置すれば、左右のレバー2の回動姿勢を独立に設定することが出来る。これにより、これら各構成部品に製造上の寸法ばらつきがあったとしても、正確にプラテンローラー1とサーマルヘッド9の相対位置を設定することができる。
【0029】
次に、図2を用いて位置決め部材5の形状を説明する。位置決め部材5はおよそ円盤形状であるが、中心からの半径が円周の位置によって異なるカム形状をしている。例えば、位置決め部材5の円周上の位置5aにおける半径R5aは、位置5bの半径R5bより小さい。位置決め部材5は、モータ16(図4参照)の駆動力によって回動し、任意の回転角度をとることが出来る。
【0030】
すなわち、回動姿勢決定部材としての位置決め部材5は、回動角度を制御可能な偏心カムである。これにより、位置決め部材5の回転姿勢によってレバー2の回動姿勢を調整することが可能になる。
【0031】
<相対位置変化動作>
次に、実施の形態1のプラテンローラ位置決め機構の動作について説明する。印画時と非印画時とで、プラテンローラ1とサーマルヘッド9の相対位置は変化する。この相対位置変化動作について説明する。
【0032】
印画時には、外部からサーマルプリンタに給紙された印画紙13が、サーマルヘッド9とプラテンローラ1の間に挿入される。そして、プラテンローラ1がサーマルヘッド9に接触する位置に移動して、両者が印画紙13を挟圧することにより印画を行う。
【0033】
具体的には、プラテンユニット6が駆動手段(図示せず)によってシャフト12を軸に図5のd方向に回転し、プラテンローラ1はサーマルヘッド9と所定の圧力で圧着される。非印画時は、駆動手段(図示せず)によってプラテンユニット6をシャフト12を軸に図5のc方向に回転させることによって、プラテンローラ1をサーマルヘッド9から離反させる。
【0034】
すなわち、相対位置変化機構は、サーマルヘッド9を固定するヘッドベース10と、プラテンローラ1を支持し、プラテンローラ1がサーマルヘッド9と接触及び離間するように移動するプラテンユニット6と、を備える。プラテンユニット6及びプラテンローラ1はヘッドベース10と比較して軽量であるから、サーマルヘッド9をヘッドベース10と共に移動させるよりも小さい駆動力で、プラテンローラ1とサーマルヘッド9の相対位置を変化させ、プラテンローラ1の位置決めを行う事が出来る。
【0035】
より具体的には、プラテンユニット6は、プラテンローラ1と平行に設置されたシャフト12を備え、プラテンユニット6はシャフト12を軸に回動することによりプラテンローラ1とサーマルヘッド9の相対位置を変化させる。また後に詳述するように、シャフト12が所定幅方向(図5のa、b方向)に移動することにより、プラテンユニット6が所定幅方向へ移動する。プラテンユニット6が回動することによりプラテンローラ1をサーマルヘッド9に対して圧着又は離間させ、プラテンユニット6がシャフト12に従ってサーマルヘッド9の所定幅方向に移動することにより、プラテンローラ1とサーマルヘッド9の接触位置を調整することが出来る。
【0036】
<ヘッドベース位置決め部材10a>
次に、図5を用いて、印画時におけるベアリング4とヘッドベース位置決め部材10aの位置関係を説明する。印画時にはモータ7(図3参照)が回転し、モータ7の回転トルクがトルクリミッタ8を介してプラテンローラ1に与えられ、プラテンローラ1は図5のc方向に回転する。印画時にはプラテンローラ1とサーマルヘッド9は印画紙13を挟圧しているので、プラテンローラ1と印画紙13との間には摩擦力が生じ、この摩擦力によって印画紙13はa方向に駆動力を与えられ、a方向に移動する。
【0037】
プラテンローラ1から駆動力を与えられると同時に、印画紙13はグリップローラ(図示せず)からもa方向に駆動力を与えられる。プラテンローラ1とグリップローラの両者から与えられる駆動力によって、印画紙13はa方向に移動する。プラテンローラ1は印画紙13にa方向の駆動力を与えるため、プラテンローラ1自身はその反力を受け、a方向とは反対方向のb方向に、印画紙13に与えた力と同じ大きさの力を受ける。
【0038】
プラテンローラ1はプラテンユニット6に支持されているため、プラテンユニット6はプラテンローラ1からb方向の力を受ける。加えて、プラテンユニット6はばね14からもb方向に付勢力を受けている。プラテンユニット6は前述したようにa方向及びb方向に移動可能であるから、プラテンローラ1からの力とばね14の付勢力とによってb方向に移動する。しかし、レバー2の一端に設置されたベアリング4がヘッドベース10上のヘッドベース位置決め部材10aに当接することにより、移動は阻止される。
【0039】
レバー2はプラテンローラ1を回転軸として回転するが、回転中心にはベアリング3が組み込まれている。そのため、ベアリング4がヘッドベース位置決め部材10aに当接することによって、レバー2にヘッドベース位置決め部材10aからの押し付け反力が加わっても、プラテンローラ1の回動運動の自由度は阻害されない。
【0040】
又、レバー2がヘッドベース位置決め部材10aと当接する部分に設けられたベアリング4は回動自在であるから、プラテンユニット6のシャフト12を中心とする回動運動の自由度は阻害されない。
【0041】
すなわち、相対位置変化機構は、前記レバー2の第2の端部としてのヘッドベース位置決め部材10aと当接する部分に、ベアリング4を備えることとした。これにより、ベアリング4は回動自在であるから、レバー2がヘッドベース位置決め部材10aと当接していても、シャフト12を中心としたプラテンユニット6の回動運動の自由度は阻害されない。
【0042】
印画を終えると、駆動手段(図示せず)がプラテンユニット6をc方向に回転させることによって、サーマルヘッド9とプラテンローラ1を離反させる。この際にも、プラテンユニット6はばね14によってb方向に付勢されているため、レバー2はヘッドベース位置決め部材10aと当接した状態にあるが、レバー2の当接部にはベアリング4が設けられているため、プラテンユニット6のc方向の回動運動は阻害されない。さらにプラテンユニット6がc方向に回転すると、ベアリング4とヘッドベース位置決め部10aが離反する。しかし、この状態でプラテンユニット6は、ばね14の付勢力によってb方向へ移動しないようラッチ機構(図示せず)によって固定されている。すなわち、ラッチ機構は、レバー2の端部に設けられたベアリング4がヘッドベース位置決め部10aと当接しないようなプラテンユニット6の回動角度では、プラテンユニット6のb方向への移動を固定する。しかし、ベアリング4がヘッドベース位置決め部10aと当接するようなプラテンユニット6の回動角度では、プラテンユニット6のb方向への移動を阻害しない。これにより、位置決め部材5の回動姿勢制御に応じた、後述するサーマルヘッド9とプラテンローラ1の接触位置調整動作が可能となる。
【0043】
サーマルヘッド9とプラテンローラ1が離反状態から圧着状態に移動する際にも、ベアリング4はヘッドベース位置決め部材10aと当接するが、ベアリング4の回動性によって、プラテンユニット6のd方向の回動運動は阻害されない。
【0044】
以上のように、プラテンローラ1がサーマルヘッド9に接触する位置関係では、ベアリング4はヘッドベース位置決め部材10aに当接する。
【0045】
<接触位置調整動作>
次に、サーマルヘッド9とプラテンローラ1の接触位置を調整する接触位置調整動作について説明する。実施の形態1では、サーマルヘッド9とプラテンローラ1が接触する際、その接触位置を、プラテンローラ1の接線方向且つサーマルヘッド9の表面に平行な方向において調整する。図6は、レバー2、位置決め部材5、ヘッドベース10の位置関係を示している。
【0046】
図6において、レバー2の一端に構成されたベアリング4がヘッドベース10のヘッドベース位置決め部材10aに押し当てられたとき、レバー2は図6に示したe方向に力を加えられる。さらに、ばね15(図5参照)の付勢力によってもレバー2はe方向に力を加えられる。しかし、レバー2は自由に回転することは出来ず、レバー2の接触部2aが位置決め部材5に接する位置において回転を停止し、回転位置の姿勢(回動姿勢)が決定される。位置決め部材5はレバー2の接触部2aにより力を受けるが、その力によって回転することはない。
【0047】
すなわち、接触位置調整機構は、第1の端部としての接触部2aが回動姿勢決定部材としての位置決め部材5に当接するための付勢力をレバー2に与えるばねを備えることとした。これにより、レバー2の接触部2aを位置決め部材5に当接させて、レバー2の回動姿勢を決定することが出来る。
【0048】
図7は、図6と同様、レバー2、位置決め部材5、ヘッドベース10の位置関係を示した図であり、図6に示すレバー2は、図7に示したレバー2よりもe方向に回転した姿勢をとっている。位置決め部材5はモータ16により、任意の回転角を取ることができ、レバー2の回動姿勢の違いは、位置決め部材5の回転角に起因する。図6では、位置決め部材5は、半径の小さな位置5aにおいてレバー2と接しており、図7では、位置決め部材5は、半径の大きな位置5bにおいてレバー2と接している。このように、レバー2の姿勢は、レバー2の接触部2aが位置決め部材5のどの部分と接触するかによって決定され、位置決め部材5の回転角によってこれを決定することが出来る。
【0049】
レバー2の回動姿勢が変化すると、ヘッドベース位置決め部材10aとベアリング4の接する箇所と、プラテンローラ1との距離が変化する。この距離は図6ではXaであり、図7ではXbであり、Xa>Xbの関係である。つまり、レバー2がe方向に回転すると、ベアリング4はレバー2の回転中心から見て、相対的にa方向に移動する。しかし、ベアリング4が前述の通りヘッドベース位置決め部材10aに当接するように、プラテンユニット6がb方向に移動する。この結果、ベアリング4とヘッドベース位置決め部材10aの接する箇所と、レバー2の回転中心との、aまたはb方向の距離(図6におけるXa、図7におけるXb)は、位置決め部材5の回転位置に依存する。よって、位置決め部材5の回転角を調整することによりレバー2の姿勢が決定され、レバー2の姿勢によってレバー2の回転中心、すなわちプラテンローラ1とベアリング4との相対位置が決定される。
【0050】
前述の通り、印画時においてベアリング4は位置決め部材10aと当接状態にあり、位置決め部材10aとサーマルヘッド9はヘッドベース10に固定されているから、プラテンローラ1とサーマルヘッド9の接触位置が決定される。
【0051】
すなわち、接触位置調整機構は、サーマルヘッド9の所定幅方向に可動性を有し且つ付勢されたプラテンユニット6と、プラテンユニット6上の所定軸を中心として回動するレバー2と、プラテンユニット6上に固定され、レバー2の第1端部としての接触部2aと当接してレバー2の回動姿勢を決定する回動姿勢決定部材としての位置決め部材5と、ヘッドベース10上に固定され、レバー2の接触部2aとは他端の第2端部(ベアリング4の位置)とプラテンユニット6に加わる付勢力の下流側で当接するヘッドベース位置決め部材10aと、を備え、レバー2の回動姿勢に応じてプラテンユニット6が所定幅方向に移動することにより、プラテンローラ1とサーマルヘッド9の接触位置を調整する。これにより、回動姿勢決定部材としての位置決め部材5を回動させる小さな駆動力で、レバー2の回動姿勢を決定し、レバー2の回動姿勢によってプラテンユニット6のサーマルヘッド9における所定幅方向の位置を決定し、プラテンローラ1とサーマルヘッド9の接触位置を変化させることが可能となる。
【0052】
又、実施の形態1に係るプリンタは、上述したプラテンローラの位置決め機構を有する構成とする。これにより、プラテンローラ1とサーマルヘッド9の接触位置を変化させることが可能なプリンタを実現することが出来る。
【0053】
なお、以上の説明ではレバー2はプラテンローラ1の両端に嵌入され、プラテンローラ1の回転軸を中心に回動するとしたが、必ずしもその必要はなく、プラテンローラ1はレバー2とは無関係にプラテンユニット6に支持されていても良い。レバー2はプラテンユニット6に支持されていれば、レバー2の回動姿勢によってプラテンユニット6が移動し、プラテンローラ1とサーマルヘッド9の接触位置を変化させることが出来る。
【0054】
<効果>
実施の形態1に係るプラテンローラの位置決め機構は、プラテンローラ1と、プラテンローラ1の接線方向に所定幅を有するサーマルヘッド9と、プラテンローラ1とサーマルヘッド9が対になって印画紙を挟圧するように、プラテンローラ1とサーマルヘッド9の相対位置を変化させる相対位置変化機構と、プラテンローラ1とサーマルヘッド9の挟圧時における接触位置を、所定幅方向において任意に調整する接触位置調整機構と、を備えることとした。これにより、プリンタ内外の温度や、印画紙、印画画像や色の濃度に応じてプラテンローラ1とサーマルヘッド9の接触位置を任意に調整することができ、良質な印画を行う事が可能である。
【0055】
さらに、相対位置変化機構は、サーマルヘッド9を固定するヘッドベース10と、プラテンローラ1を支持し、プラテンローラ1がサーマルヘッド9と接触及び離間するように移動するプラテンユニット6と、を備える。プラテンユニット6及びプラテンローラ1はヘッドベース10と比較して軽量であるから、サーマルヘッド9をヘッドベース10と共に移動させるよりも小さい駆動力で、プラテンローラ1とサーマルヘッド9の相対位置を変化させ、プラテンローラ1の位置決めを行う事が出来る。
【0056】
又、接触位置調整機構は、サーマルヘッド9の所定幅方向に可動性を有し且つ付勢されたプラテンユニット6と、プラテンユニット6上の所定軸を中心として回動するレバーと、プラテンユニット6上に固定され、レバー2の第1端部としての接触部2aと当接してレバー2の回動姿勢を決定する回動姿勢決定部材としての位置決め部材5と、ヘッドベース10上に固定され、レバー2の接触部2aとは他端の第2端部とプラテンユニット6に加わる付勢力の下流側で当接するヘッドベース位置決め部材10aと、を備え、レバー2の回動姿勢に応じてプラテンユニット6が所定幅方向に移動することにより、プラテンローラ1とサーマルヘッド9の接触位置を調整する。これにより、回動姿勢決定部材としての位置決め部材5を回動させる小さな駆動力で、レバー2の回動姿勢を決定し、レバー2の回動姿勢によってプラテンユニット6のサーマルヘッド9における所定幅方向の位置を決定し、プラテンローラ1とサーマルヘッド9の接触位置を変化させることが可能となる。
【0057】
又、回動姿勢決定部材としての位置決め部材5は、回動角度を制御可能な偏心カムである。これにより、位置決め部材5の回転姿勢によってレバー2の回動姿勢を調整することが可能になる。
【0058】
さらに、レバー2の回動中心となる所定軸はプラテンローラ1の回転軸であり、レバー2はプラテンローラ1の両端に、プラテンローラ1を回動自在にして嵌入される。レバー2の回動中心をプラテンローラ1の回転軸となるようにレバー2を設置することにより、レバー2とプラテンローラ1を独立してプラテンユニット6に接地した場合と比較して、省スペース化を図ることが出来る。さらに、レバー2をプラテンローラ1の両端に嵌入することとしたため、回動姿勢決定部材としての位置決め部材5、ヘッドベース位置決め部材10aをレバー2に合わせてプラテンローラ1の両端に設置すれば、左右のレバー2の回動姿勢を独立に設定することが出来る。これにより、これら各構成部品に製造上の寸法ばらつきがあったとしても、正確にプラテンローラー1とサーマルヘッド9の相対位置を設定することができる。
【0059】
又、プラテンユニット6は、プラテンローラ1と平行に設置されたシャフト12を備え、プラテンユニット6はシャフト12を軸に回動することによりプラテンローラ1とサーマルヘッド9の相対位置を変化させ、シャフト12が所定幅方向に移動することにより、プラテンユニット6が所定幅方向へ移動する。プラテンユニット6が回動することによりプラテンローラ1をサーマルヘッド9に対して圧着又は離間させ、プラテンユニット6がシャフト12に従ってサーマルヘッド9の所定幅方向に移動することにより、プラテンローラ1とサーマルヘッド9の接触位置を調整することが出来る。
【0060】
さらに、接触位置調整機構は、第1の端部としての接触部2aが回動姿勢決定部材としての位置決め部材5に当接するための付勢力をレバー2に与えるばねを備えることとした。これにより、レバー2の接触部2aを位置決め部材5に当接させて、レバー2の回動姿勢を決定することが出来る。
【0061】
又、相対位置変化機構は、前記レバー2の第2の端部としてのヘッドベース位置決め部材10aと当接する部分に、ベアリング4を備えることとした。これにより、ベアリング4は回動自在であるから、レバー2がヘッドベース位置決め部材10aと当接していても、シャフト12を中心としたプラテンユニット6の回動運動の自由度は阻害されない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】実施の形態1の構成を示す斜視図である。
【図2】実施の形態1の位置決め部材の形状を示す正面図である。
【図3】実施の形態1のプラテンユニット周辺の構成を示した斜視図である。
【図4】実施の形態1のプラテンユニット周辺の構成を示した斜視図である。
【図5】実施の形態1の構成を示す側面図である。
【図6】実施の形態1の位置決め部材によるプラテンローラの位置決めの原理を示す図である。
【図7】実施の形態1の位置決め部材によるプラテンローラの位置決めの原理を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 プラテンローラ、2 レバー、3,4 ベアリング、5 位置決め部材、6 プラテンユニット、9 サーマルヘッド、10 ヘッドベース、10a ヘッドベース位置決め部材、12 シャフト。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラテンローラと、
前記プラテンローラの接線方向に所定幅を有するサーマルヘッドと、
前記プラテンローラと前記サーマルヘッドが対になって印画紙を挟圧するように、前記プラテンローラと前記サーマルヘッドの相対位置を変化させる相対位置変化機構と、
前記プラテンローラと前記サーマルヘッドの挟圧時における接触位置を、前記所定幅方向において任意に調整する接触位置調整機構と、を備えたプラテンローラの位置決め機構。
【請求項2】
前記相対位置変化機構は、前記サーマルヘッドを固定するヘッドベースと、
前記プラテンローラを支持し、前記プラテンローラが前記サーマルヘッドと接触及び離間するように移動するプラテンユニットと、を備えた請求項1に記載のプラテンローラの位置決め機構。
【請求項3】
前記接触位置調整機構は、前記所定幅方向に可動性を有し且つ付勢された前記プラテンユニットと、
前記プラテンユニット上の所定軸を中心として回動するレバーと、
前記プラテンユニット上に固定され、前記レバーの第1端部と当接して前記レバーの回動姿勢を決定する回動姿勢決定部材と、
前記ヘッドベース上に固定され、前記レバーの第2端部と前記プラテンユニットに加わる付勢力の下流側で当接するヘッドベース位置決め部材と、を備え、
前記レバーの回動姿勢に応じて前記プラテンユニットが前記所定幅方向に移動することにより、前記プラテンローラと前記サーマルヘッドの接触位置を調整する、請求項1又は2に記載のプラテンローラの位置決め機構。
【請求項4】
前記回動姿勢決定部材は、回動角度を制御可能な偏心カムである、請求項3に記載のプラテンローラの位置決め機構。
【請求項5】
前記レバーの回動中心となる前記所定軸は前記プラテンローラの回転軸であり、
前記レバーは前記プラテンローラの両端に、前記プラテンローラを回動自在にして嵌入される、請求項3又は4に記載のプラテンローラの位置決め機構。
【請求項6】
前記プラテンユニットは、前記プラテンローラと平行に設置されたシャフトを備え、
前記プラテンユニットは前記シャフトを軸に回動することにより前記プラテンローラと前記サーマルヘッドの相対位置を変化させ、
前記シャフトが前記所定幅方向に移動することにより、前記プラテンユニットが前記所定幅方向へ移動する、請求項3〜5のいずれかに記載のプラテンローラの位置決め機構。
【請求項7】
前記接触位置調整機構は、前記第1の端部が前記回動姿勢決定部材に当接するための付勢力を前記レバーに与えるばねをさらに備えた、請求項6に記載のプラテンローラの位置決め機構。
【請求項8】
前記相対位置変化機構は、前記レバーの第2の端部に設けられたベアリングをさらに備える、請求項6に記載のプラテンローラの位置決め機構。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載のプラテンローラの位置決め機構を有するプリンタ。
【請求項10】
前記プラテンローラは前記サーマルヘッドの上方に位置する、請求項9に記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−76263(P2010−76263A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−247295(P2008−247295)
【出願日】平成20年9月26日(2008.9.26)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】