説明

プラミペキソール又はその医薬品として許容される塩を含む放出が延長された錠剤調合物、その製造方法及びその使用

【課題】本発明の目的は、1日1回の経口投与に適する、プラミペキソール又はこの医薬品として許容される塩の放出が制御された錠剤組成物を提供することである。
【解決手段】本発明は、プラミペキソール又はその医薬品として許容される塩を、アルファ化したデンプン以外の少なくとも一つの水膨潤性ポリマーを含むマトリックス中に含む、放出が延長された錠剤調合物に向けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、プラミペキソール又はその医薬品として許容される塩を含む放出が延長された錠剤調合物、その製造方法及びその使用に向けられている。
【背景技術】
【0002】
(本発明の背景)
プラミペキソールは、公知のドーパミンD2受容体アゴニストである。プラミペキソールは、麦角誘導体医薬品、例えばブロモクリプチン又はペルゴリドとは構造的に異なる。
プラミペキソールは完全アゴニストであり、かつドーパミン受容体のドーパミンD2ファミリーに対する受容体選択性を有する点で、薬理学的に独特でもある。
プラミペキソールは、化学的には(S)−2−アミノ−4,5,6,7−テトラヒドロ−6−(プロピルアミノ)ベンゾチアゾールとして表され、かつ分子式C10173S及び相対分子量211.33を有する。化学式は以下のものである:
【化1】

【0003】
通常使用される塩形態が、プラミペキソールジヒドロクロライド一水和物である(分子式C1021Cl23OS;相対分子量302.27)。プラミペキソールジヒドロクロライド一水和物は、白色から灰色がかった白色、無味、結晶質の粉末である。融解は、296℃から301℃の範囲において、分解を伴って起こる。プラミペキソールは、一つのキラル中心を有するキラル化合物である。純粋な(S)−光学異性体は、合成の間の中間体の一つのキラル再結晶による合成方法から得られる。
プラミペキソールジヒドロクロライド一水和物は、高い溶解性の化合物である。水溶解性は、20mg/mlより高く、かつ緩衝媒体中の溶解性は、一般的に、pH2及びpH7.4の間で10mg/mlよりも高い。プラミペキソールジヒドロクロライド一水和物は、吸湿性ではなく、高い結晶性の性質のものである。製粉下において、該結晶の修飾(一水和物)は変化しない。プラミペキソールは、固形物状態において非常に安定であり、さらに溶液中でわずかに感受性である。
【0004】
プラミペキソールの即時放出性(IR)錠剤は、1997年に米国において最初に認可され、翌年以降数年の間に、欧州共同体(EU)、スイス、カナダ及び南アメリカ、加えて東欧、中近東及びアジア諸国において、市販の認可がされた。
プラミペキソールIR錠剤は、レボドパとの組み合わせにおいて、初期のパーキンソン病又は進行したパーキンソン病の徴候及び症状の治療用に、EU及び米国において指示されている。該IR錠剤は、一日3回摂取しなければならない。
薬物動態学的な観点から、プラミペキソールIR錠剤は、経口投与に引き続いて迅速かつ完全に吸収される。完全な生体利用効率は、90%より高く、及び最大の血漿濃度は、1から3時間で現れる。吸収速度は食糧摂取により減少するが、吸収の全体の程度は減少しない。プラミペキソールは、直線的な動態及び比較的小さい患者間における血漿レベルの変動をしめす。消失半減期(t1/2[h])は、若者における8時間から高齢者における12時間までで変動する。
【0005】
一般に知られているように、活性成分(群)の変更された放出は、推奨される日々の摂取量を削減することにより、患者の投与計画を単純にすることを許容し、患者の遵守性を向上させ、かつ有害事象、例えば高い血漿ピークに関する事象を弱める。放出が変更された医薬品製剤は、長期にわたり取り込まれた活性成分又は活性成分群の放出を調整し、及び制御された、延長された、持続した、遅延した、遅い又は延長した放出を有する調合物を含み、それにより、これらは、通常の投与形態、例えば溶液又は即座に溶解する投与形態によっては得ることができない、治療上の目標又は利便性の目標を達成する。
医薬品からの変更した又は延長した活性成分(群)の放出は、物理的又は化学的な絡み合いにより、イオン性又は結晶性の相互作用により、複合体形成により、水素結合又はファンデルワールス力により結合させて、溶解性、部分的に溶解性又は不溶性である、粘性の親水性ポリマーのネットワークである親水性のマトリックス中に、前記活性成分(群)を均一に埋め込むことにより達成されるであろう。前記親水性マトリックスは、水との接触により膨潤し、それにより保護ゲル層が作り出され、該活性成分(群)が、ポリマーネットワークを介して拡散することによるか、ゲル層の浸食によるか、ポリマーの溶解によるか又は前記放出メカニズムの組み合わせにより、適時に遅く、徐々に、継続的に放出される。
【0006】
しかしながら、プラミペキソールジヒドロクロライドの場合のように、医薬品が比較的高い溶解性を有するものである場合には、変更され、延長され又は持続した放出の適切な組み合わせ及び取扱適性を有する錠剤を調合することは、困難であることが立証された。
【0007】
プラミペキソールの放出が延長された錠剤組成物を提供する、先行技術において述べられたアプローチが多く存在する:
WO2004/010997は、錠剤を代表する固形物画分で、親水性ポリマー及び少なくとも約0.15kNcm-2、好ましくは少なくとも約0.175kNcm-2、より好ましくは少なくとも約0.2kNcm-2の引っ張り強度を有するデンプンを含むマトリックス中に分散された、プラミペキソールの水溶性塩を含む経口送達可能な錠剤の形態にある、放出が延長された医薬品組成物を記載する。その開示は、特にコーティング層を塗布する間の浸食に抵抗するため、高速錠剤化操作の間に充分な固さを生じる組成物を提供することに注力している。好ましい態様に従って、(a)錠剤の約35質量%から約50質量%の量のHPMCタイプ2208、(b)錠剤の約45質量%から約65質量%の、0.8の固形物画分で、少なくとも約0.15kNcm-2の引っ張り強度を有するアルファ化したデンプンを含むマトリックス中に分散された、約0.375、0.75、1.5、3又は4.5mgの量のプラミペキソールジヒドロクロライド一水和物を含むコアを有する、経口送達可能な錠剤の形態にある医薬品組成物を提供する:前記コアは、錠剤の約2質量%から7質量%を構成するコーティングで実質的に取り囲まれ、前記コーティングは、エチルセルロースベースの疎水性又は水不溶性成分、及び該エチルセルロースベースの成分の約10質量%から約40質量%の量のHPMCベースの細孔形成成分を含む。
【0008】
さらに、WO2004/010999は、プラミペキソール又はその医薬品として許容される塩の治療効量及び少なくとも一つの医薬品として許容される賦形剤を含む経口送達可能な医薬品組成物を開示し、前記組成物は以下の少なくとも1つを示す:(a)平均で約20%以下のプラミペキソールが、標準的な溶解試験において、該組成物の配置の後に、2時間の間で溶解する生体外における放出特性;(b)平均で20%吸収に至る時間が約2時間より長い及び/又は平均で40%吸収に至る時間が約4時間より長い、健康な成人に対する一回投与の経口投与に従う生体内におけるプラミペキソールの吸収特性。しかしながら、実際的な使用において、1日1回投与が指示され、延長され又は制御された放出特性を有するいかなる調合物も上記の要件を満たすと考えられ、該要件を前記特性に適合させるための一般的教示を欠いている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、1日1回の経口投与に適する、プラミペキソール又はこの医薬品として許容される塩の放出が制御された錠剤組成物を提供することである。さらなる目的は、pH値依存の又はpH値から独立の選択された放出特性に従って、活性成分の放出特性の調整を可能とする、1日中続く治療作用を提供し、かつ1日1回投与で患者の症状を治療することを患者に許容するであろう、プラミペキソール又はその医薬品として許容される塩を含む錠剤組成物を提供することである。さらには、該錠剤調合物の製造方法も提供される。
【課題を解決するための手段】
【0010】
(本発明の説明)
驚くべき事に、プラミペキソール又はその医薬品として許容される塩が、1日1回の放出が延長された(又は遅れた)錠剤として調合物において使用でき、かつ2つの代替的な調合成分が、pH値依存の又はpH値から独立の、異なる放出速度の種類を許容することが見出された。
本発明は、アルファ化したデンプン以外の少なくとも1つの水膨潤性ポリマーを含むマトリックス中に、プラミペキソール又はその医薬品として許容される塩を含む、放出が延長された錠剤調合物に関する。
好ましくは、本発明は、該マトリックスがアルファ化したデンプン以外の少なくとも2つの水膨潤性ポリマーを含み、かつ該少なくとも2つのポリマーの少なくとも1つがアニオン性ポリマーである放出が延長された錠剤調合物に関する。
【0011】
また、好ましいのは、該アニオン性ポリマーが、任意で架橋したアクリル酸ポリマー、メタクリル酸ポリマー、アルギン酸塩及びカルボキシメチルセルロースの群から選択される放出が延長された錠剤調合物である。
また、好ましいのは、該アニオン性ポリマーが、任意で架橋したアクリル酸ポリマーであり、かつ該マトリックス中における該任意で架橋したアクリル酸ポリマーの含有量が、約0.25wt%から約25wt%、好ましくは約0.5wt%から約15wt%、より好ましくは約1wt%から約10wt%の放出が延長された錠剤調合物である。
また、好ましいのは、該少なくとも2つのポリマーの少なくとも一つが、アルファ化したデンプン以外の実質的に中性のポリマーである放出が延長された錠剤調合物である。
また、好ましいのは、該実質的に中性のポリマーが、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される、放出が延長された錠剤調合物である。
特に好ましいのは、該実質的に中性のポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、かつ該マトリックス中におけるヒドロキシプロピルメチルセルロースの含有量が、約10wt%から約75wt%、好ましくは約25wt%から約65wt%である放出が延長された錠剤調合物である。
【0012】
特に好ましいのは、該マトリックスが以下を含む、放出が延長された錠剤調合物である:
(a)プラミペキソール又はその塩 約0.05から5wt%
(b)アニオン性水膨潤性ポリマー(群) 約0.25から25wt%
(c)中性水膨潤性ポリマー(群) 約10から75wt%
(d)さらなる賦形剤 加えて100wt%となる量
特に好ましいのは、プラミペキソール−ジヒドロクロライド一水和物、Hypromellose2208、トウモロコシデンプン、カルボマー941、コロイド状二酸化ケイ素及びステアリン酸マグネシウムから成る放出が延長された錠剤調合物である。
本発明の好ましい態様は、以下を含むマトリックス中において、プラミペキソール又はその医薬品として許容される塩を含む、放出が延長された錠剤調合物に関する:
(a)アルファ化したデンプン以外の少なくとも一つの水膨潤性ポリマー及び任意で賦形剤、結果として得られる錠剤は、pH1から7.5の範囲において、生体外におけるpH独立性の放出特性を提供する、又は
(b)少なくとも一つの水膨潤性アニオン性ポリマー及び任意で賦形剤、結果として得られる錠剤は、pH<4.5の範囲において、より速い放出特性を有するpH依存性の放出特性を、及びpH4.5から7.5の範囲において、より遅くかつさらにpH独立性の放出特性を提供する。
【0013】
最も好ましくは、本発明は、アルファ化したデンプン以外の少なくとも一つの水膨潤性ポリマー、好ましくは本質的に中性の水膨潤性ポリマー、アニオン性の水膨潤性ポリマー及び任意で賦形剤を含む放出が延長された錠剤調合物のマトリックスに関しており、該結果得られる錠剤は、pH<4.5の範囲においてより速い放出特性を有するpH依存性の放出特性を、及びpH4.5から7の範囲においてより遅くかつさらにpH独立性の放出特性を提供する。
【発明の効果】
【0014】
経口投与を意図する本発明に従う放出が延長された調合物は、生体外における処方のどの放出特性及びどのタイミングが、好ましくは1日1回投与で生体内における所望の血漿特性を達成するために最も適切であるかを選択し及び推定することを許容する。従って、いくつかの変形を有する調合成分が、一単位のマトリックス錠剤に対して開発され、換言すれば、異なる放出速度の種類を有する調合物が提供され、かつ異なるpH依存性が利用できる。これらの代替利用可能な調合物は患者に対する利点であり、該放出が延長された医薬品送達は、患者が1日1回投与で症状を治療することを許容し、それにより患者の利便性及び遵守性が増大するからである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明に従った直接圧縮製造方法の好ましい態様を説明するフローチャートである。
【図2】図2は、3つの異なるpH媒体中における、4質量%のcarbopol(登録商標)を含んだ本発明に従うマトリックス錠剤調合物の溶解特性を説明するグラフである。
【図3】図3は、それぞれcarbopol(登録商標)の0質量%、1質量%及び4質量%を含む、本発明に従う3つのマトリックス錠剤調合物の溶解特性を説明するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本明細書の前記又は後で用いる用語“生体外における放出特性”は、放出が延長された調合物からの活性成分の放出が起こることが可能な、生体外における実験に対して通常用いられるある種の液状媒体、換言すれば、例えば生体外における溶解媒体中においてだけでなく、体液又は擬似体液中において、より特には胃腸液中において得られる放出特性に向けられている。
【0017】
本発明の範囲内において、用語“延長された”放出は、即時放出と対照的に、該活性成分が、徐々に、長期間継続的に解放され、時により遅く又はより速く、pH値に依存し又はpH値から独立している放出であると理解されなければならない。特に、該用語は、該調合剤が経口投与の後直ちに活性成分の全ての投与量が放出されないこと、及び該調合物が、投与の頻度における減少を許容することを意図するものであり、遅い放出と互換可能である延長された放出に対する定義に従う。長期の作用、持続した放出又は変更した放出と同義的に用いられる、遅い放出又は延長された放出の投与形態は、通常の投与形態(例えば、溶液又は即時医薬品放出性の通常は固形の投与形態)として存在するものと比較して、投与頻度における削減又は患者の利便性又は治療的な性能における顕著な増加を許容する投与形態である。
pH独立性である放出特性は、該放出特性が、異なるpH媒体において実質的に同じであることを示す。
【0018】
本発明の教示に従い、放出が延長された錠剤調合物は、生体外において異なった放出特性を提供する。
本発明の放出が延長された錠剤は、膨潤性かつ部分的な浸食性ポリマーマトリックスを利用すると考える。考えられるメカニズムに基づいて、該放出特性は、生体外における放出特性の指数に対する時間の平方根に大体従うであろう。特別な態様に依存して、調合物a)は、pH1から7.5の範囲においてpH値から幅広く独立であり、及び調合物b)はpH<4.5を有する擬似胃液中においてより速いが、4.5から7.5の範囲におけるpH値からは独立している。広いpH独立性の放出特性が、投与量の急速放出及び食物効果のリスクを減少させるために有利であるのに対して、腸液におけるより遅い放出に対する擬似胃液におけるより速い放出は、投与形態からの負荷した投与効果が望まれる場合において利点となり得る。
【0019】
本発明に従って、“調合物a)”は、該マトリックスが上記定義したa)としての組成物を含む錠剤調合物であると理解し、かつ“調合物b)”が、該マトリックスが上記定義したb)としての組成物を含む錠剤調合物であると理解される。
本発明の水膨潤性ポリマーは、活性成分としてのプラミペキソール又はその塩を遅く放出する、放出が延長されたマトリックスを構成する、少なくとも一つの親水性水膨潤性ポリマーを表す。該ポリマーは、投与後に水性液体と接触して膨潤し、結果として粘性のある医薬品放出制御ゲル層となる。該ポリマーの粘度は、好ましくは150から100,000mPa.s(20℃における2%水性溶液の見掛け粘度)の範囲にある。
【0020】
該ポリマーの例は、実質的に中性の水膨潤性ポリマー又は水膨潤性アニオン性ポリマーである。
本発明の用語“実質的に中性の水膨潤性ポリマー”は以下を含む:
アルキルセルロース、例えばメチルセルロース;ヒドロキシアルキルセルロース、例えばヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシブチルセルロース;ヒドロキシアルキルアルキルセルロース、例えばヒドロキシエチルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロース;カルボキシアルキルセルロースエステル類;他天然、半合成又は合成のジ−、オリゴ−及びポリサッカライド類、例えばガラクトマンナン、トラガカント、寒天、グアールガム及びポリフルクタン;メタクリレートコポリマー;ポリビニルアルコール;ポリビニルピロリドン、ポリビニルピロリドンと酢酸ビニルのコポリマー;ポリビニルアルコール及びポリビニルピロリドンの組み合わせ;ポリアルキレンオキシド類、例えばポリエチレンオキシド並びにポリプロピレンオキシド並びにエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー、好ましくはセルロースエーテル誘導体、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース及びヒドロキシプロピルセルロース、より好ましくはヒドロキシプロピルメチルセルロース。
【0021】
本発明の用語“水膨潤性アニオン性ポリマー”は、アクリル酸ポリマー、メタクリル酸コポリマー、アルギン酸塩、カラギーナン、アカシア、キサンタン・ガム、キチン誘導体、例えばキトサン、カルメロースナトリウム、カルメロースカルシウム、好ましくはアクリル酸ポリマーを含む。
異なる粘度のヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが市場から入手可能である。本発明において好ましく使用されるヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)は、約3,500mPa・sから約100,000mPa・sの範囲、特に約4,000mPa・sから約20,000mPa・sの範囲の粘度、より特には、約6,500mPa・sから約15,000mPa・sの粘度(20℃での2%水性溶液の見掛け粘度)を有し、例えばhypromellose2208又は2206(DOW、Antwerp、Belgium)である。HPMCタイプ2208は、19−24質量%のメトキシ、及び4−12質量%のヒドロキシプロポキシ置換基を含む。
1,500mPa・s(20℃での1%水性溶液の見掛け粘度)より高い粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースが好ましく、特に約1500から約3000mPa・s、好ましくは4000から6500mPa・s(2%水性溶液)の範囲にある粘度を有するヒドロキシプロピルセルロースが好ましく、例えばKlucelシリーズ、例えばKlucel M(Hercules、Wilmington、USA)である。
【0022】
理論に拘束されることを望むものではないが、プラミペキソール又はその塩が親水性マトリックスから放出できる主なメカニズムは3つ存在すると考えられ、それは溶解、浸食及び拡散である。溶解性ポリマーのマトリックスネットワーク中に均一に分散された場合、プラミペキソール又はその塩は、溶解メカニズムにより放出されるであろう。該ネットワークは、消化管中において徐々に溶解し、それにより徐々にその負荷を放出する。該マトリックスポリマーは、徐々に該マトリックス表面から浸食され、そのうち同様にプラミペキソール又はその塩を放出する。プラミペキソールが、不溶性ポリマーで作られたマトリックス中に処理されている場合、プラミペキソールは拡散により放出されるであろう:胃腸液が、不溶性でスポンジのようなマトリックスに浸透し、次いで医薬品を負荷したバックアウト(back out)を拡散する。
従って、マトリックス、特に調合a)に従うマトリックスを構成する水膨潤性ポリマーは、主に、製剤の制御された薬物動態学的な放出特性を提供する。製剤中に処理された水膨潤性ポリマー(群)の量に依存して、該放出特性は調整でき、換言すれば、膨潤性ポリマーのより多い量は、放出が延長された効果をより延長し、逆の場合も同様である。好ましくは、本発明の調合物中における水膨潤性ポリマーの量は、約10から約80質量%まで変動する。
【0023】
加えて、ポリマー群の組み合わせを用いた場合、前記ポリマー群の割合も、製剤の放出特性に影響する。異なるポリマー群の組み合わせは、プラミペキソールが該マトリックスから放出されるメカニズムの異なる組み合わせの可能性を提供する。該組み合わせは、製剤の薬物動態学的な放出を自由に制御することを容易にする。例えば、1以上の水膨潤性ポリマー、特にヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを用いた場合、ヒドロキシプロピルメチルセルロースの質量パーセンテージは、25から約62%まで好ましくは変動する;ヒドロキシプロピルセルロースの質量パーセンテージは、0%及び約16%の間で好ましくは変動する。
ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースを含むマトリックスからのプラミペキソール又はその塩の放出は、一連の放出メカニズム群の組み合わせにより起こる。ヒドロキシプロピルセルロースと比較してヒドロキシプロピルメチルセルロースのより高い溶解性により、該ヒドロキシプロピルメチルセルロースは、該マトリックスから徐々に溶解しかつ浸食され、一方でヒドロキシプロピルセルロースは、主に拡散により活性成分を放出する、スポンジのようなマトリックス形成剤としてより機能するであろう。
【0024】
調合物a)に従う放出が延長された錠剤調合物は、pH独立性である。
従って、食物が関係する投与量の急速放出に直面するであろうという不利な点が避けられる。摂食した患者における食物が関係した投与量の急速放出の問題は、多くの要因、例えば胃の内容物、従って摂取された製剤に対し胃によって及ぼされる機械的力、加えて消化管の異なるpH領域によるものである。消化管において直面するpH値が、管の領域だけでなく食物の摂取と共に変動するため、放出が延長された調合物は、延長された放出特性を提供し、特に患者が絶食の状態であるか、又は摂食した状態であるかにかかわらず、投与量の急速放出を避けなければならない。
本発明に従って、該経口の放出が延長された調合物a)は、消化管を進むことに沿って、その薬物動態学的な放出特性を保持し、医薬品血漿濃度における望ましくない変動、又は完全な投与量の急速放出を避け、特に、消化管の異なる領域における投与量の急速放出を避ける。
【0025】
プラミペキソール又はその塩及び水膨潤性ポリマー(群)に加えて、本発明の調合物は、任意でさらに賦形剤、換言すれば医薬品として許容される調合剤を含み、該製剤の製造、圧縮性、外観及び味を改良しても良い。これら調合剤は、例えば希釈剤若しくはフィラー、流動促進剤、結合剤、造粒剤、アンチケーキング剤、滑剤、フレーバー、染料及び防腐剤を含む。本技術で公知である他の通常の賦形剤も含むことができる。
フィラーは、溶解性フィラー、例えばスクロース、ラクトース、特にラクトース一水和物、トレハロース、マルトース、マンニトール及びソルビトールから選択して良い。異なるグレードのラクトースが使用できる。本発明において好ましく使用されるラクトースの1つの種類は、ラクトース一水和物200メッシュ(DMV、Veghel、The Netherlands)である。他のラクトース一水和物、タイプDCL11のラクトース一水和物(DMV、Veghel、The Netherlands)も、好ましく使用できる。表記のDCLは、“直接圧縮のラクトース”(“Direct Compression Lactose”)を意味する。11の数は、製造の参照番号である。水溶解性活性成分の場合において、本発明において述べたような、より好ましい水不溶性フィラー、例えばアルファ化したデンプン以外のデンプン及びデンプン誘導体、例えばトウモロコシデンプン、バレイショデンプン、米デンプン又は小麦デンプン、微結晶セルロース、第二リン酸カルシウム二水和物及び無水第二リン酸カルシウム、好ましくはトウモロコシデンプンが、付加的に又は水溶解性フィラーの代わりに使用できる。フィラーの合計質量パーセンテージは、約5質量%と約75質量%の間で変動する。
【0026】
流動促進剤は、錠剤化の前及び間において粉末の流動特性を向上させ、及びケーキングを減少させるために使用できる。適切な流動促進剤は、コロイド状二酸化ケイ素、三ケイ酸マグネシウム、粉末化されたセルロース、タルク、第三リン酸カルシウム等を含む。コロイド状二酸化ケイ素が、流動促進剤として、錠剤の質量により最大で約2%、好ましくは約0.2%から約0.8%の量において好ましく含まれる。
滑剤は、例えばアッパーパンチ(“ピッキング”)又はロウワーパンチ(“スティッキング”)の表面に対する付着を防止する事により、錠剤の形成における器具からの錠剤の放出を促進するために使用できる。適切な滑剤は、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、菜種油、グリセリルパルミトステアレート、水素化した植物油、酸化マグネシウム、鉱油、ポロキサマー(poloxamer)、ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、安息香酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリルフマル酸ナトリウム、ステアリン酸、タルク、水素化した植物油、ステアリン酸亜鉛等を含む。
一態様において、ステアリン酸マグネシウムが、滑剤として、錠剤の質量により約0.1%から約1.5%、好ましくは約0.3%から約1%の量において含まれる。
【0027】
該マトリックス調合物中にさらに含まれても良い任意の調合剤の間で、薬剤、例えばポリビドン;コポビドン;デンプン;アカシア;ゼラチン;海草誘導体、例えばアルギン酸、アルギン酸のナトリウム塩及びカルシウム塩;有用な乾式又は湿式結合及び錠剤化特性を有する、セルロース、好ましくは微結晶セルロース、セルロース誘導体、例えばエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース;及び固結防止剤、例えばタルク及びステアリン酸マグネシウムを挙げることができる。
【0028】
本発明の好ましい態様に従って、代替のa)の放出が延長された錠剤調合物のマトリックスは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、例えばhypromellose、及びさらなる賦形剤を含み、又は本質的にこれらから成る。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの量は、10から75質量%、好ましくは25から65質量%、さらに好ましくは35から55質量%の範囲に好ましくある。さらなる賦形剤の量は、90から25質量%、好ましくは75から35質量%、さらに好ましくは65から45質量%の範囲に好ましくある。
表現“本質的に成る”とは、原則として、言及した必須の成分に加えて、他の成分の存在、該調合物の本質的な性質に影響しない他の成分の存在を排除しないと言う意味で理解される。
本発明のいくつかの態様において、pH依存性の放出特性が提供され、該錠剤からのプラミペキソール又はその塩の放出及び続く血流への吸収が、消化管に沿った投与形態の通過の間変動できる。従って、調合物b)は、pH<4.5の範囲では放出特性はより速いpH依存性放出特性、及びpH4.5から7.5の範囲においてはより遅くさらにpH独立性の放出特性を提供する。
【0029】
水膨潤性ポリマーに関する上記詳細並びに任意の賦形剤の選択及び種類は、調合物b)に対しても適用される。
さらに、アニオン性水膨潤性ポリマー、好ましくはアクリル酸ポリマーが、調合物b)において必須に存在し、該ポリマーは、高い分子量を有するアクリル酸ポリマーで知られる、カルボマー又はcarbopol(登録商標)シリーズから好ましく選択される。特に好ましいのは、例えばカルボマー941(carbopol(登録商標)71G、carbopol(登録商標)971)及びカルボマー934(carbopol(登録商標)974)である。該アクリル酸ポリマーは、0.25から25質量%、好ましくは0.5から15質量%、より好ましくは1から10質量%の範囲において好ましく存在する。
調合物b)のpH依存性は、アニオン性水膨潤性ポリマーの存在、特に好ましくは、pH4.5より高い酸性のpH範囲、及びアルカリ性のpH範囲におけるより広い範囲において膨潤する傾向にあるアクリル酸ポリマーの存在に起因する。
【0030】
アクリル酸の量の増加は、放出速度を減少させる。従って、アクリル酸ポリマーの量の調整は、所望の溶解特性をさらに調整する事を可能とする。0.25から25質量%の好ましい範囲にアクリル酸ポリマーの量を調整することにより、所望され、それぞれ適合する溶解特性が、ゲル形成剤、水膨潤性ポリマー、フィラー及び乾燥結合剤の異なる量及び/又は異なる種類から形成される多様な調合物のために調整でき、それぞれ維持できると言うさらなる利点が提供される。
本発明の好ましい態様に従い、放出が延長された錠剤調合物のマトリックスは、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アクリル酸ポリマー及びさらなる賦形剤を含み、又は本質的にこれらから成る。ヒドロキシプロピルメチルセルロースの量は、10から75質量%、好ましくは25から65質量%、より好ましくは35から55質量%の範囲に好ましくある。アクリル酸ポリマーの量は、上記と同じものが好ましい。付加的な賦形剤の量は、90から25質量%、好ましくは75から35質量%、さらに好ましくは65から45質量%の範囲に好ましくある。任意で、カルボキシメチルセルロースナトリウムが、5から50質量%、好ましくは10から40質量%、さらに好ましくは15から30質量%の範囲で好ましく存在する。
【0031】
活性成分としてのプラミペキソールまたはその医薬品として許容される塩は、患者の所望の治療に対して適切であるいかなる量において存在して良い。プラミペキソールの好ましい塩は、二塩酸塩、より好ましくは一水和物の形態にあるものである。通常の量は、約0.1から約5mgのプラミペキソール塩である。特に好ましい態様に従って、例えば、0.524mgの無水物ベースに対応する、0.750mgプラミペキソールジヒドロクロライド一水和物が、本発明に従う放出が延長された錠剤調合物において使用される。しかしながら、プラミペキソール又はその塩の量が、1回で投与されるべき錠剤の、1又は数個の、例えば1個から約4個において、1日投与を提供するために充分であることを唯一の条件として、治療のために適切な活性成分のいかなる他の量も使用して良い。好ましくは、全体の一日投与量は、単一の錠剤において送達される。錠剤あたり、約0.1から約10mg、又は組成物の約0.05質量%から約5質量%の、プラミペキソールジヒドロクロライド一水和物同等物として表現される、プラミペキソール塩の量が、一般的に適しているであろう。約0.2から約6mg、好ましくは約0.3から約5mgの好ましい量が、錠剤あたりに存在する。錠剤あたりの特定の投与量は、例えば、0.375、0.5、0.75、1.0、1.5、3.0及び4.5mgのプラミペキソールジヒドロクロライド一水和物を含む。治療効量を構成する量は、治療される病気、前記病気の重症度、及び治療される患者に従って変動する。
【0032】
本発明に従う放出が延長された錠剤調合物は、以下の組成を好ましく有する:
プラミペキソール又はその塩 0.05から5質量%
水膨潤性ポリマー(群) 10から75質量%
アクリル酸ポリマー 0から25質量%
任意のさらなる賦形剤(群) 加えて100wt%となる量。
従って、本発明の特に好ましい放出が延長された錠剤調合物は、以下から成る:
0.1から2質量%のプラミペキソール又はその塩;
25から65質量%のヒドロキシプロピルメチルセルロース;
0から40質量%のカルボキシメチルセルロースナトリウム;
0から75質量%のアルファ化したデンプン以外のトウモロコシデンプン;
0から15質量%のアクリル酸ポリマー、好ましくはカルボマー941;
0.5から50質量%の賦形剤、好ましくは、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸マグネシウム、ラクトース一水和物、マンニトール、微結晶セルロース、無水第二リン酸カルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン、コポビドン、タルク、マクロゴール、ドデシル硫酸ナトリウム、酸化鉄及び二酸化チタンから成る群より選択される賦形剤。
【0033】
本発明に従って、アルファ化したデンプン以外のデンプン、好ましくは存在する場合はトウモロコシデンプンが、同時にいくつかの機能、例えばフィラー及び流動促進剤等の機能を与える事ができる。しかしながら、本発明に従う錠剤調合物からは完全にデンプンを除くことが好ましく、デンプンは1以上の上記他の賦形剤(群)により置き換えられても良い。さらに、WO2004/010997の請求の範囲のような錠剤で表される、固形物画分で少なくとも約0.15kNcm-2の引っ張り強さを有するデンプンは、本発明に従って要求されない。
【0034】
本発明に従う錠剤調合物上には、いかなるコーティングも存在しないことが好ましい。
しかしながら、本発明の放出が延長された錠剤は、非機能的なコーティングを含んでも良い。非機能的なコーティングは、ポリマー成分、例えばHPMC、任意で他の成分、例えば1以上の流動化剤、着色剤等を含むことができる。本発明の文脈における用語“非機能的”は、該錠剤の放出特性に実質的な影響を全く有さず、及び該コーティングが他の有用な目的を果たす事を意味する。例えば、該コーティングは、錠剤に特徴のある外観を与え、充填及び輸送の間の摩滅に対する保護を与え、嚥下の容易さを向上させ、及び/又は他の利点を有する。非機能的なコーティングは、該錠剤の完全な被覆率を提供するために充分な量において適用されるべきである。典型的には、全体として錠剤の約1質量%から約10質量%、より典型的には約2質量%から5質量%の量が適切である。
【0035】
本発明の錠剤は、いかなる適切なサイズ及び形状、例えば円形、楕円形、多角形又は枕状の形状のものであって良く、及び任意で非機能的な表面の印を有しても良い。本発明に従い、放出が延長された錠剤は、白から灰色がかった白色で、かつ円形又は楕円形、両凸面の形状である事が好ましい。
本発明の錠剤は、関連情報、例えば投与量及び投与の情報、禁忌、安全上の注意、薬物間相互作用及び副作用に関するものを提供する添付文書を添えた容器中に充填することができる。
本発明は、さらに、本発明に従った放出が延長された錠剤調合物の、パーキンソン病及び合併症又はそれに伴う疾患の治療のための医療組成物の調製に対する使用に向けられる。
【0036】
さらに、本発明は、以下の工程を含む直接圧縮法を介した、放出が延長された錠剤調合物の製造方法に好ましく向けられる:
(1)プラミペキソール又はその医薬品として許容される塩を、ミキサー中で水膨潤性ポリマー(群)の一部及び/又はさらなる賦形剤(群)とプレブレンドすることにより、活性成分がプラミペキソール又はその医薬品として許容される塩である活性成分の粉砕物を製造し、ここでプラミペキソール又はその医薬品として許容される塩を、使用する前に製粉し、好ましくはピンミルにかける工程;
(2)工程(1)の活性成分の粉砕物、水膨潤性ポリマー(群)の主要部分及び/又は賦形剤を、ミキサー中でプレミックスして、プレ混合物を得る工程;
(3)任意で、ふるいを通してプレ混合物を乾燥ふるい分けして、粘着性の粒子を分離し、及び含有物の均一性を向上させる工程;
(4)工程(2)又は(3)のプレ混合物をミキサー中で混合し、任意で残りの賦形剤を該混合物に添加して、攪拌を継続する工程;及び
(5)適切な打錠機上で最終混合物を圧縮することにより、最終混合物を錠剤化して、マトリックス錠剤を製造する工程。
【0037】
従って、該錠剤は、プラミペキソールの放出が延長されたマトリックス錠剤の両方の種類に適用される直接圧縮法を介して製造される。この低い医薬品の負荷された調合物において、含有物の適正な均一さを達成するために、該活性成分は好ましくピンミルにかけられる。好ましくは、該ピンミルにかけられた医薬品物質の粒子径分布は、乾式ディスペンシングシステムを用いたレーザー回折によって測定したものとして、直径において、90%(V/V)の粒子画分が100μmより小さく、好ましくは90%(V/V)の粒子画分が75μmより小さいことにより特徴付けられる。
同様に、他の方法、例えば通常の湿式造粒法及び回転造粒を、プラミペキソール放出が延長された錠剤の製造に対して適用できる。湿式造粒法の場合、好ましくは、プラミペキソールは、適切なフィラー類、例えばアルファ化したデンプン以外のデンプン、微結晶セルロース、ラクトース一水和物又は無水第二リン酸カルシウム、及び活性成分を濃縮する吸湿剤、例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポビドン、コポビドン及びデンプンペーストと共に造粒し、乾燥し乾燥ふるい分けの後、ゲル形成賦形剤、例えば原理を遅らせると言われる前記のものの主要な画分と混合する。
回転造粒、又は換言すれば乾式造粒の場合、プラミペキソールと直接圧縮法において使用された賦形剤の一部のプレ混合物か、又は全ての賦形剤を含む完全な混合物を、通常のローラーコンパクター(rollar compactor)を通して処理し、リボンを形成し、次いで粒のためにふるいにかけ、最終的に他の賦形剤、例えば流動促進剤、滑剤及び防腐剤と混合する。
【0038】
図1は、例1及び2の放出が延長された錠剤の製造を例示的に示すフローチャートを参照して、該製造方法の好ましい態様を説明する。図1は、詳細な工程段階及び実施された処理中の制御を示す。
工程段階(1)は、活性成分の粉砕に向けられており、換言すれば、本発明の場合には、プラミペキソールの塩、プラミペキソールジヒドロクロライド一水和物のピンミルにかけられた品質におけるものを、ポリマーの一部、この場合においてはヒドロキシプロピルメチルセルロースの一部と、公知のミキサー中でプレブレンドする。フローチャート中において、タービュラーフリーフォールミキサー又はブレンダーを用いる。該混合時間は、数分であり、本発明の場合においては好ましくは10分である。
フローチャートに従った工程段階(2)において、プレミキシングが行われ、ここで該活性成分粉砕物及び水膨潤性ポリマー(群)の主要な部分及び賦形剤が、数分間プレミックスされ、プレ混合物を得る。本発明の場合において、主要な部分のヒドロキシプロピルメチルセルロース(hypromellose)、トウモロコシデンプン、カルボマー941及びコロイド状二酸化ケイ素が、上記タービュラーミキサー又はブレンダー中で、5分間プレミックスされる。
【0039】
続く工程段階(3)に従って、乾燥ふるい分けが任意で行われても良い。プレ混合物が、ふるい、例えば0.8mmメッシュサイズのふるいを通して手動でふるいにかけられ、粘着質の粒子を取り除き及び含有物の均一性を向上しても良い。
続く工程段階(4)において、主要な混合工程が行われ、これにより該成分が数分間、好ましくは5分間、ふるい分けの後に、タービュラーミキサー中で混合される。任意でさらなる賦形剤をこの時点で添加しても良く、該フローチャートにおいて、成分であるステアリン酸マグネシウムを、主要な混合物に対して添加し、さらに数分間、例えば3分間、タービュラーミキサー中における混合を行い(最終混合)、最終混合物を得る。
本発明に従う方法の工程段階(5)は、錠剤化である。該最終混合物を、適切な打錠機上で圧縮して、例えば長だ円形のマトリックス錠剤(ER錠剤=放出が延長された錠剤(xtended elease tablet))を製造する。所望の品質を制御及び維持するために、該得られたマトリックス錠剤は、続いて処理中の制御:錠剤質量、固さ、錠剤高さ及び破砕性にかけられる。
得られた本発明のプラミペキソールの放出が延長された錠剤は、次いで、例えば高密度ポリエチレン(HDPE)瓶中に充填しても良い。該瓶は、スクリューキャップでしっかりと閉じられ、適切なラベルがされ、全ての充填された及びラベルのされた活性は、cGMP規則に従って行われる。代替的に、ブリスター包装が使用でき、例えばアルミニウム/アルミニウムホイルブリスターが使用できる。
【0040】
図2は、本発明に従ったマトリックス錠剤調合物の溶解特性を説明するグラフを表す。
該マトリックス錠剤は、4質量%のcarbopol(登録商標)を含み、詳細な組成は例2において与えられる。3つのpHが異なる媒体、換言すれば0.05Mリン酸緩衝液、pH=6.8、n−x中、擬似胃液、pH=1.2、n=x中、及びMcIlvaine緩衝液、pH=4.5、n=x;(xは試験された単位の数を表す)中における該マトリックス錠剤の放出特性が示される。放出された活性成分の値パーセントは、時間(h)に対してプロットされる。
図3は、本発明に従う3つのマトリックス錠剤調合物の溶解特性を説明するグラフを表す。該マトリックス錠剤は、carbopol(登録商標)を全く含まない、1質量%又は4質量%のcarbopol(登録商標)をそれぞれ含み、詳細な組成は例1、2及び4において与えられる。該媒体は、0.05Mリン酸緩衝液であり、pH=6.8である。該放出された活性成分の値パーセントが、時間(h)に対してプロットされる。
【0041】
図2及び3は、carbopol(登録商標)が存在しない場合におけるpH1から7.5の範囲における生体外でのpH独立性の放出特性、及びcarbopol(登録商標)が存在する場合により速いpH<4.5の範囲における放出特性を示す。carbopol(登録商標)の量の増加は、放出速度を減少させる。
【0042】
本発明の利点は、多様性である:
本発明に従って、プラミペキソールまたはその塩を含む放出が延長された錠剤は、生体外における異なった放出特性を示すものとして利用できる。患者の要求、症状及び観察された臨床像に対してぴったり合わせた放出特性を選択することが可能である。
プラミペキソールに関する主な適応であるパーキンソン病は、年齢が進むにつれてより蔓延し、かつ記憶における衰えがしばしば伴う苦痛である。従って、プラミペキソール又はその塩の延長された又は遅い放出を提供する、本発明に従ったマトリックス錠剤は、要求される一日投与の量を減少することにより患者の投与計画を単純にし、かつ患者の遵守性、特に高齢者の患者に関する遵守性を向上することを許容する。本発明の放出が延長された錠剤調合物は、好ましくは1回で投与される一日投与量を提供する。
【0043】
さらに、本発明の錠剤は、両方の種類の放出が延長されたマトリックス錠剤に対して適用される、直接圧縮、湿式又は乾式造粒法を介して製造しても良い。
説明した本発明は、以下の種々の態様の例により説明され、本明細書から当業者に明確となる。しかしながら、該例及び記載は、単なる説明であることを意図し、本発明の範囲を制限するものとみなしてはならないことを、明確に指摘する。
【実施例】
【0044】

本発明に従って、プラミペキソールの放出が延長された錠剤が製造された。例の錠剤は、白色から灰色がかった白色、14×6.8mm長楕円形、両凸面の錠剤である。該錠剤は、経口で投与することを意図しており、及び半分に分割されないものとする。例におけるプラミペキソール錠剤は、無水ベースでの遊離のプラミペキソールの0.524mgに対応する、0.75mgのプラミペキソールジヒドロクロライド一水和物を含む。
【0045】
例1
本発明に従ったプラミペキソールの放出が延長された錠剤の質的及び量的な一態様が、表1において示される。
表1:プラミペキソールの放出が延長された錠剤の質的及び量的な組成
【表1】

【0046】
例2
本発明に従ったプラミペキソールの放出が延長された錠剤の質的及び量的な組成のさらなる態様が、表2において示される。
表2:プラミペキソールの放出が延長された錠剤の質的及び量的な組成
【表2】

【0047】
例3
例1及び2の2つのプラミペキソール錠剤調合物に対するバッチ組成が、表3において示される。最終混合物のバッチサイズは、2000錠剤のバッチサイズに対応する。
表3:プラミペキソール0.75mgER錠剤のバッチに対する組成
【表3】

【0048】
例4
以下の例は、1から7.5のpH範囲における独立性の放出特性を提供する調合物a)に対応する、プラミペキソール錠剤調合物を示す。







【表4】

【0049】
例5
以下の例6から14は、pH<4.5に対するより速い放出特性を提供する調合物b)に対応する、プラミペキソール錠剤調合物を示す。
【表5】

例6
【表6】

【0050】
例7
【表7】

例8
【表8】

【0051】
例9
【表9】


例10
【表10】

【0052】
例11
【表11】

例12
【表12】

【0053】
例13
【表13】

例14
【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラミペキソール又はその医薬品として許容される塩を、アルファ化したデンプン以外の少なくとも一つの水膨潤性ポリマーを含むマトリックス中に含む、放出が延長された錠剤調合物。
【請求項2】
該マトリックスが、アルファ化したデンプン以外の少なくとも2つの水膨潤性ポリマーを含み、かつ該少なくとも2つのポリマーの少なくとも1つが、アニオン性ポリマーである、請求項1の放出が延長された錠剤調合物。
【請求項3】
該アニオン性ポリマーが、任意で架橋したアクリル酸ポリマー、メタクリル酸ポリマー、アルギン酸塩及びカルボキシメチルセルロースの群より選択される、請求項2の放出が延長された錠剤調合物。
【請求項4】
該アニオン性ポリマーが、任意で架橋したアクリル酸ポリマーであって、かつ該任意で架橋したアクリル酸ポリマーの該マトリックス中における含量が、約0.25wt%から約25wt%、好ましくは約0.5wt%から約15wt%、より好ましくは約1wt%から約10wt%である、請求項3の放出が延長された錠剤調合物。
【請求項5】
該少なくとも2つのポリマーの少なくとも1つが、アルファ化したデンプン以外の実質的に中性のポリマーである、請求項2の放出が延長された錠剤調合物。
【請求項6】
該実質的に中性のポリマーが、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースから選択される、請求項5の放出が延長された錠剤調合物。
【請求項7】
該実質的に中性のポリマーがヒドロキシプロピルメチルセルロースであり、かつヒドロキシプロピルメチルセルロースの該マトリックス中における含量が、約10wt%から約75wt%、好ましくは約25wt%から約65wt%である、請求項6の放出が延長された錠剤調合物。
【請求項8】
該マトリックスが以下を含む、請求項5の放出が延長された錠剤調合物:
(a)プラミペキソール又はその塩 約0.05から5wt%
(b)アニオン性水膨潤性ポリマー(群) 約0.25から25wt%
(c)中性水膨潤性ポリマー(群) 約10から75wt%
(d)さらなる賦形剤 加えて100wt%となる量
【請求項9】
プラミペキソールジヒドロクロライド一水和物、Hypromellose2208、トウモロコシデンプン、カルボマー941、コロイド状二酸化ケイ素及びステアリン酸マグネシウムから成る、請求項5の放出が延長された錠剤調合物。
【請求項10】
以下を含むマトリックス中に、プラミペキソール又はその医薬品として許容される塩を含む、放出が延長された錠剤調合物:
(a)アルファ化したデンプン以外の少なくとも一つの水膨潤性ポリマー及び任意で賦形剤、結果得られる錠剤は、pH1から7.5の範囲において、生体外におけるpH独立性の放出特性を提供し、又は
(b)少なくとも一つの水膨潤性アニオン性ポリマー及び任意で賦形剤、結果得られる錠剤は、pH<4.5の範囲においてより速い放出特性を有するpH依存性の放出特性、及びpH4.5から7.5の範囲において、より遅い及びさらにpH独立性の放出特性を提供する。
【請求項11】
該マトリックスが、アルファ化したデンプン以外の少なくとも一つの水膨潤性ポリマー、水膨潤性アニオン性ポリマー及び任意で賦形剤を含み、該結果得られる錠剤が、pH<4.5の範囲においてより速い放出特性を有するpH依存性の放出特性、pH4.5から7の範囲において、より遅い及びさらにpH独立性の放出特性を提供する、請求項10に記載の放出が延長された錠剤調合物。
【請求項12】
プラミペキソール又はその医薬品として許容される塩の含有量が、1回で1日投与量を提供するために充分である、放出が延長された錠剤調合物。
【請求項13】
以下の工程を含む直接圧縮法を介した、請求項1から12のいずれか1項に記載する、放出が延長された錠剤調合物の製造方法:
(1)プラミペキソール又はその医薬品として許容される塩を、ミキサー中で水膨潤性ポリマー(群)の一部及び/又は賦形剤(群)とプレブレンドすることにより、活性成分がプラミペキソール又はその医薬品として許容される塩である活性成分の粉砕物を製造し、ここでプラミペキソール又はその医薬品として許容される塩を、使用する前に製粉し、好ましくはピンミルにかける工程;
(2)工程(1)の活性成分の粉砕物、水膨潤性ポリマー(群)の主要部分及び/又は賦形剤を、ミキサー中でプレミックスして、プレ混合物を得る工程;
(3)任意で、ふるいを通してプレ混合物を乾燥ふるい分けして、粘着性の粒子を取り除き、及び含有物の均一性を向上させる工程;
(4)工程(2)又は(3)のプレ混合物をミキサー中で混合し、任意で残りの賦形剤を該混合物に添加して、攪拌を継続する工程;及び
(5)適切な打錠機上で最終混合物を圧縮することにより、最終混合物を錠剤化して、マトリックス錠剤を製造する工程。
【請求項14】
以下の工程を含む湿式造粒法を介した、請求項1から12のいずれか1項に記載する、放出が延長された錠剤調合物の製造方法:
(1)プラミペキソール又はその医薬品として許容される塩を、ミキサー中で一部の賦形剤(群)とブレンドすることにより、活性成分がプラミペキソール又はその医薬品として許容される塩である活性成分の粉砕物を製造し、ここでプラミペキソール又はその医薬品として許容される塩を、使用する前に製粉し、好ましくはピンミルにかける工程;
(2)工程(1)の活性成分の粉砕物を、造粒液体、好ましくは水を添加することにより造粒する工程;
(3)工程(2)の粒を、流動床乾燥機又は乾燥オーブン中で乾燥する工程;
(4)工程(3)の乾燥した粒と、水膨潤性ポリマー(群)及び/又は賦形剤をミキサー中で混合して、最終的な混合物を得る工程;
(5)工程(4)の最終的な混合物を、適切な打錠機上で圧縮して錠剤化し、マトリックス錠剤を製造する工程。
【請求項15】
以下の工程を含む乾式造粒法を介した、請求項1から12のいずれか1項に記載する、放出が延長された錠剤調合物の製造方法:
(1)活性成分であるプラミペキソール又はその医薬品として許容される塩を、一部のフィラー又は全ての賦形剤と共にミキサー中で混合し、ここでプラミペキソール又はその医薬品として許容される塩を、使用する前に製粉し、好ましくはピンミルにかける工程;
(2)工程(1)の混合物を、適切なローラーコンパクター(rollar compactor)上で圧縮する工程;
(3)工程(1)の間に得られたリボンを、適切な粉砕又はふるい分け工程により減少させて小さな粒にする工程;
(4)任意で、工程(3)の粒を、残りの賦形剤と共にミキサー中で混合して、最終的な混合物を得る工程;
(5)工程(3)の粒、又は工程(4)の最終混合物を、適切な打錠機上で圧縮することにより錠剤化し、マトリックス錠剤を製造する工程。
【請求項16】
請求項1から12のいずれかに記載する放出が延長された錠剤調合物の、パーキンソン病及び合併症又はそれに付随する疾患の治療のための使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−126916(P2011−126916A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−62986(P2011−62986)
【出願日】平成23年3月22日(2011.3.22)
【分割の表示】特願2007−525278(P2007−525278)の分割
【原出願日】平成17年7月25日(2005.7.25)
【出願人】(503385923)ベーリンガー インゲルハイム インターナショナル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (976)
【Fターム(参考)】