説明

プラント監視制御装置、その制御方法及びその制御プログラム

【課題】制御ブロックの構造及び定数の数を予め定めた条件下において指定されたモデルの構造を受け付け、当該指定された構造の定数のみを迅速に算出することで、モデル構造の設定及び当該設定に伴う各パラメータの算出を容易に行うことが可能なプラント監視制御装置、その制御方法及び制御プログラムを提供する。
【解決手段】表示制御手段61は、ユーザにモデル構造として定数G、T1、T2を選択させるために、選択可能とする所定数の定数(G、T1、T2、・・・の8定数)が予め決められたモデル構造を設定装置を介して表示させる。ユーザにより設定装置を介して定数G、T1、T2が選択されると、定数判定手段62は、この選択された定数G、T1、T2を受け付けて伝達関数を指定することでモデルを決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラントを監視し制御するプラント監視制御装置に係り、特に、モデル構造の設定及び当該設定に伴う各パラメータの算出を容易に行うことが可能な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、発電プラントや石油化学等の産業界におけるプラントを監視し、制御するプラント監視制御装置が使用されている。このプラント監視制御装置は、上記のようなプラントを安全に運転するために温度、圧力、流量等の種々のプロセス値を測定し表示することで、ユーザに対して当該プラントの監視状態を通知する。
【0003】
具体的には、プラント監視制御装置は、プラントを制御するために、当該プラントの主要な箇所に設けられたセンサを通じて種々のプロセス値を取得し、このプロセス値に基づいて当該プラントに対する操作量を演算し、出力する。つまり、プラント監視制御装置では、プラントの監視状態の通知だけでなく、プラントの動作制御のための操作量の演算も行われる。
【0004】
そのため、プラント監視制御装置から出力される当該操作量は、プラントが動作可能で、かつ、応答性に優れた値であることが必要とされる。プラントとして火力発電所を例に取ると、火力発電所から電力系統を通じて需要家に供給される電力量は要求に応じて刻々と変化するため、まず、当該電力量の指令値がプラント監視制御装置に送られる。そして、プラント監視制御装置において、当該指令値に基づき操作量を算出し、この操作量に基づいて火力発電所は、要求に応じて増減した電力量を電力系統を通じて需要家に出力する。
【0005】
上記のような操作量を出力するためにプラント監視制御装置では、プラントの応答性が高いモデルを採用する方式が一般的である。すなわち、このモデルを使用することで、プラント監視制御装置は、プラントが反応するであろう応答をモデルにより再現し、操作量を算出する。このようにモデルを採用する方法では、当該モデルを採用しない場合に比してプラントの応答性を良好に保つことが可能となる。
【0006】
ここで、プラント監視制御装置は、プラントを監視し制御することで安全に運転することを目的とするものであるから、上述した通り、当該プラントが動作可能で、かつ、応答性に優れた操作量を算出し出力する必要がある。そのため、このような目的を達成すべく、入力信号に対する出力信号の応答と実際の応答との誤差がより小さくなるモデルが従来から採用されている。
【0007】
プラントが応答するであろうモデルを作成する方法として、主に下記の2種類に大別される。第1に、プラントの容積や金属質量等から物理的に成立可能な構造を作成し、これをモデルとして採用する方法が挙がる。しかしながら、実際には、物理的に成立する誤差の少ない構造を作成することは困難であるため、通常はモデルを作成する方法として採用されない。
【0008】
第2に、プラントのモデル化範囲を事前に指定し、当該モデル化範囲の入出力の時間応答波形から、入力信号に対する出力信号の応答と実際の応答との誤差が最小になるような数理モデルを採用する方法(同定手法)が挙がる。なお、この誤差が最小となるような数理モデルを採用する方法が一般的に用いられている。
【0009】
例えば、数理モデルを採用する方法として、近似する遅れ系の次数を検出し、検出した次数のモデルに応じて各パラメータを設定する処理が提案されている(特許文献1参照。)。この場合、何次の遅れ系にするかもモデルを用いて数値解析により算出し、当該算出された次数に基づいて所定のモデルを使用することにより、応答誤差が小さくなるよう各パラメータの設定演算が行われている。
【0010】
また、出力信号に合うようなモデルの取得と応答誤差を小さくするための制御装置の調整制御は技術的に近い関係にあるので、応答精度を高めるべく当該制御装置の調整を自動化制御する処理も行われている(特許文献2参照。)。
【特許文献1】特開2005−258717号公報
【特許文献2】特開2005−31920号公報
【非特許文献1】「Matlabによる制御工学」ISBN4−501−31990−9 22頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、上記のような特許文献1に係る発明では、プラントの応答を正しく近似することを目的としているが、制御対象となる制御ブロックの構造を考慮してモデルを作成していない。特に、特許文献1に係る発明は、モデルの設定に当たり、近似すべき遅れ系が何次であるかの検出処理を行うため、各パラメータを算出するまでにかなりの時間を要してしまう。
【0012】
また、特許文献2に係る発明も、同様に制御ブロックの構造を考慮したモデルを採用しておらず、さらに、当該発明ではこの構造を1次遅れと無駄時間とに限定しており、各パラメータを算出する上で必ずしも精度が十分とはいえない。
【0013】
なお、一般に、入力信号に対する出力信号の応答と実際の応答との誤差を小さくするためには、次数の高い複雑なモデルの採用が望まれるが、モデルの次数が高い場合には次数の設定に労力を要し、それに伴い各パラメータの設定にも労力と時間を要してしまう。
【0014】
本発明は、上記のような課題を解消するために提案されたものであって、その目的は、遅れ・進み次数やゲインなどの制御ブロックの構造が当該制御ブロックの設計時に予め決まっていることを考慮して、この制御ブロックの構造及び定数の数を予め定めた条件下において指定されたモデルの構造を受け付け、当該指定された構造の定数のみを迅速に算出することで、モデル構造の設定及び当該設定に伴う各パラメータの算出を容易に行うことが可能なプラント監視制御装置、その制御方法及びその制御プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上述した目的を達成するために、本発明は、プラントを監視制御するための操作量をモデルを用いて算出するプラント監視制御装置において、ゲイン、遅れの時定数、進みの時定数、無駄時間を各定数とした伝達関数からなる前記モデルを作成するモデル作成装置と、前記モデル作成装置からの情報を表示し、かつ、ユーザから操作を受け付ける表示操作部と、を備え、前記モデル作成装置は、前記モデルを構成する所定の数の前記定数をユーザに選択可能な態様で前記表示操作部に表示する表示制御手段と、前記表示操作部に表示された前記定数が選択されると、この選択された定数による伝達関数をモデルとして指定する定数判定手段と、を備えたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、上記に示したプラント監視制御装置を制御方法及び制御プログラムの観点から把握した態様も包含する。
【発明の効果】
【0017】
以上のような本発明によれば、ゲイン、遅れの次数、進みの次数や無駄時間から構成される制御ブロックの構造が当該制御ブロックの設計時に予め決まっていることを考慮して、予め定めた所定の数の定数を有する伝達関数を表示させ、選択された定数に基づく伝達関数を指定することができるので、モデルの次数を検出する場合などと対比しても容易かつ迅速にモデルを設定することが可能となる。また、モデルの設定に伴い当該モデルを構成する各定数の値であるパラメータの算出も容易に行うことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
[本実施形態]
[1.構成]
次に、本実施形態に係るプラント監視制御装置の構成について、図1〜4を参照して以下に説明する。
【0019】
[1.1.全体構成]
まず、プラントと当該プラントを監視し制御するプラント監視制御装置の全体構成を図1を参照して説明する。図1の通り、プラント1には、当該プラント1の状態を観測するために複数のセンサ2が設けられており、当該センサ2を通じたプラント1のプロセス値である計測信号がプラント監視制御装置3へ送られる。
【0020】
プラント監視制御装置3内のデータ収集装置4は、プラント1に設置したセンサ2からの計測信号を時系列信号に変換し、プラントデータベース5に格納する。モデル作成装置6の具体的な構成は後述するが、このモデル作成装置6は、設定装置7から指示に基づいてモデルを作成し、このモデルとプラントデータベース5からの入出力信号とに基づいて、モデルを構成する各パラメータの値と、プラント1を制御する操作量である応答を算出する。
【0021】
設定装置7(「表示操作部」に相当する。)は、画面上において、ユーザからの操作を受け付けたり、モデル作成装置6からの出力を表示する。なお、ユーザから操作を受け付ける画面上のタッチパネルのほか、画面外の操作用のハードキーを設ける構成としても構わない。また、モデル作成装置6の出力を音声により通知することも可能である。
【0022】
[1.2.モデル作成装置の具体的な構成]
次に、上記モデル作成装置6の具体的な構成について、図2を参照して以下に説明する。なお、モデルの作成は、モデル化範囲の入力信号、出力信号、及びモデル構造が使用され、「モデル構造」とは、ゲイン、遅れ次数、進み次数、無駄時間等の定数により定義される。
【0023】
モデル作成装置6は、当該モデル作成装置6からの情報を設定装置7に表示させるために出力する表示制御手段61を備え、この表示制御手段61は、特に、図3に示すような8定数(ここでは、G、T1、T2、T3、T4、T5、T6、Lの8定数。)に限定したモデル構造を設定装置7に表示させる。また、当該表示制御手段61は、最低3定数(G、T1、T2の3定数)を表示させる必要がある。つまり、本実施形態では、設定装置7に表示させる伝達関数の構造は、定数が3〜8に限定する点を特徴とする。
【0024】
ここで、定数の最低数を3としたのは、十分な精度を維持したパラメータ計算を行う上で、最低限、ゲインと1,2次の遅れ時定数を勘案したなければならないからであり、また、定数の最高数を8としたのは、パラメータの算出に要する処理時間を実用的かつ迅速な範囲内に収めるためである。なお、設定装置7に表示させた当該モデル構造の各定数はユーザにより選択可能な態様となっている。
【0025】
また、モデル作成装置6は、設定装置7においてユーザにより選択された上記定数を受け付け、当該選択された定数に基づいて伝達関数を指定する定数判定手段62を有している。例えば、図3に示すように、設定装置7に表示されたモデル構造のうち定数G、T1、T2が選択された場合には、定数判定手段62は、当該定数G、T1、T2を受け付け、下記に示す伝達関数を指定する。
【0026】
[数1]

【0027】
また、設定していないパラメータの扱いは図4に示す通りであり、例えば、図3に示される設定装置7において定数T3はチェックされていないため、「T3=0」と扱われる。また、図4に示す通り、他のチェックされていない定数も同様であるから、「T3=0」「T4=0」「T5=0」「T6=0」「L=0」となり、下記の式が成立する。
【0028】
[数2]
1+T3s=1
1+T4s=1
1+T5s=1
1+T6s=1
-LS=1
【0029】
以上のことから、上記[数1]に示す伝達関数が成立する。特に、本実施形態では、表示制御手段61により設定装置7を介して表示させるモデル構造の定数を所定数(例えば6つ)に限定する点に特徴を有するため、この定数判定手段62もこの所定数に応じた条件下の定数を受け付け、当該条件内で伝達関数を指定する点に特徴を有する。
【0030】
また、モデル作成装置6は、上記定数判定手段62により指定された伝達関数を構成する各定数の値を受け付ける定数値受付手段63を備え、この定数値受付手段63は、設定装置7を通じてユーザにより入力された初期値としての定数値を受け付ける他、後述する更新後の定数値も受け付ける。
【0031】
さらに、定数値受付手段63により受け付けた定数値と、定数判定手段62により指定された伝達関数と、当該伝達関数に基づくモデル化範囲の入力信号と、に基づいてモデルによる応答を算出する応答算出手段64を有している。また、応答算出手段64により算出された応答と上記伝達関数に基づくモデル化範囲の入力信号に対応する出力信号とを対比することで、時系列に応じた誤差を算出する誤差算出手段65を有している。なお、モデル化範囲の入力信号に対応する出力信号はプラントデータベース5から取得している。この誤差算出手段65は、得られた応答と出力信号は同じ時間幅の信号であるため、例えば、サンプリング周期毎に誤差を計算して絶対値の合計としている。なお、誤差を表現する方法であればこのような算出方法に限定するものではない。
【0032】
また、誤差算出手段65により算出された誤差が所定の閾値以下であるか否かを判定する誤差判定手段66と、この誤差判定手段66により誤差が所定の閾値以下であると判定された場合に、定数値受付手段63が受け付けた定数値をモデルを構成するパラメータとして決定するパラメータ決定手段67を備えている。なお、当該モデルに基づく応答算出手段64により算出された応答は、上記パラメータと共に表示制御手段61を通じて設定装置7に出力される。
【0033】
また、モデル作成装置6は、誤差判定手段66により誤差が所定の閾値以下でないと判定された場合に、初期値を適当な値に更新する更新手段68を備えている。この更新に関しては、特に手法を限定するものではなく、例えば最適化手法を用いて演算を行うのが一般的である。
【0034】
[2.作用]
次に、本実施形態に係るプラント監視制御装置におけるモデルの作成及び当該モデルにより算出される応答の決定手順について、図5を参照して下記に説明する。なお、プラントデータベース5には、プラント1に設置された複数のセンサ2からの計測信号が記憶されているものとする。また、設定装置7に表示されるモデル構造は、図3に示すような8定数(G、T1、T2、・・・の8定数)のものを用いる。
【0035】
[2.1.実施例1]
実施例1では、ユーザにより設定装置7を介してモデル構造として定数G、T1、T2が選択された場合、すなわち、ゲインと遅れ次数が2次のモデル構造を指定する場合について説明する。なお、この場合、制御対象である制御ブロックは、例えば、図6に示されるような3定数の構成を有している。
【0036】
まず、表示制御手段61は、ユーザにモデル構造として定数G、T1、T2を選択させるために、上記図3に示すような、選択可能とする8定数(G、T1、T2、・・・の8定数)が予め決められたモデル構造を設定装置7を介して表示させる(STEP501)。ユーザにより設定装置7を介して定数G、T1、T2が選択されると、定数判定手段62は、この選択された定数G、T1、T2を受け付け(STEP502)、上記[数1]に示す伝達関数を指定する(STEP503)。
【0037】
一方で、ユーザは、設定装置7を介してこの伝達関数によるモデル構造のG、T1、T2の初期値を任意に設定し、定数値受付手段63がこの値を受け付ける(STEP504)。そして、応答算出手段64は、この初期値と、指定した上記伝達関数と、プラントデータベース5から取得した当該伝達関数に基づくモデル化範囲の入力信号と、から当該入力信号に対する応答を算出する(STEP505)。
【0038】
なお、この算出される応答は、プラントデータベース5から取得した入力信号と同じ時間幅を持った信号であり唯一に決まり、例えば、非特許文献1に記載されている手法を用いることで算出することが可能である。
【0039】
次に、誤差算出手段65は、応答算出手段64により算出された応答と、プラントデータベース5から取得した前記入力信号に対応する出力信号とを比較し、両者の誤差を算出する(STEP506)。そして、誤差判定手段66が、誤差算出手段65により算出された誤差が所定の閾値以下であるかを判定する(STEP507)。
【0040】
誤差判定手段66により前記誤差が所定の閾値以下であると判定された場合には(STEP507のYES)、パラメータ決定手段67は、定数値受付手段63で受け付けた定数値をモデルを構成するパラメータとして決定する(STEP508)。そして、この決定されたパラメータと応答算出手段64により算出された応答とが表示制御手段61により設定装置7に出力される(STEP509)。
【0041】
一方、誤差判定手段66により誤差が所定の閾値以下でないと判定された場合には(STEP507のNO)、更新手段68が、初期値に設定していた定数値を更新することで(STEP510)、上記STEP504〜STEP507までの処理が繰り返される。
【0042】
また、更新手段68が、定数G、T1、T2を最適化手法を用いて更新する場合には当該定数の上下限を設定することが可能である。例えば、入出力波形がいずれも温度を示し、ゲインGが下記範囲にあることがわかっている場合には当該制約を満たす範囲で定数G、T1、T2の値を決定する。
【0043】
[数3]
0.01<G<0.1
【0044】
また、更新手段68による初期値の更新に際し、上下限以外の制約を設けることも可能であり、例えば時定数T1とT2とが等しい場合に限定しても構わない。
[数4]
T1=T2
【0045】
上記[数3]に示すゲインGの制約を考慮して更新手段68による更新演算を行った場合のゲインG=0.077における時定数T1、T2の算出結果を図7に示す。なお、図7は、モデルの構造をゲインGと2次の遅れであるとした条件下(G、T1、T2を選択した場合)の算出結果を示している。
【0046】
ここで、図7(a)は、プラントデータベース5から取得した入力信号を示し、図7(b)は、プラントデータベース5から取得した当該入力信号に対応する出力信号と、得られたモデルによる応答算出手段64で算出した応答との関係を示している。また、図7(c)は、上記出力信号と応答算出手段64により算出された応答との誤差を示している。
【0047】
このことから、図7に示される通り、更新手段68により更新され、定数値受付手段63が受け付けた定数は、G=0.077、T1=101.6、T2=101.6であり、最大誤差=0.337、平均誤差=0.063553であることがわかる。
【0048】
[2.2.実施例2]
次に、ユーザにより設定装置7を通じて定数G、T1、T2、T4、Lの5定数が選択された場合の処理手順である実施例2について説明する。なお、実施例2は、それ以外の構成及び処理は実施例1と共通するため説明を省略する。また、制御対象である制御ブロックは、例えば、図8に示されるような5定数の構成を有する。
【0049】
まず、表示制御手段61は、ユーザにモデル構造として定数G、T1、T2、T4、Lを選択させるために、実施例1と同様に、選択可能とする所定数の定数が予め決められたモデル構造を設定装置7を介して表示させる(STEP501)。ユーザにより設定装置7を介して定数G、T1、T2、T4、Lが選択されると(図9)、定数判定手段62は、この選択された定数G、T1、T2、T4、Lを受け付け(STEP502)、下記に示す伝達関数を指定する(STEP503)。
【0050】
[数5]

【0051】
ここで、設定していないパラメータの扱いは図10に示すように「T3=0」「T4=0」「T5=0」「T6=0」「L=0」となり、下記の式が成立する。
【0052】
[数6]
1+T3s=1
1+T5s=1
1+T6s=1
【0053】
これ以降の処理は、実施例1と同様であり、図9に、プラントデータベース5から取得した入力信号と、当該入力信号に対応する出力信号と応答算出手段64により算出された応答の関係と、誤差算出手段65により算出された誤差と、を示している。当該図9に示される通り、更新手段68により更新され、定数値受付手段63が受け付けた定数は、G=0.076、T1=27.2、T2=117.7、T3=−72.4、 L=12.0であり、最大誤差=0.290、平均誤差=0.049281となる。
【0054】
[他の実施形態]
(a)本発明は、上記のような設定装置7上でユーザに対してモデル構造の定数を選択させる実施形態に限定するものではなく、制御対象である制御ブロックの定数を自動的に取得し、定数判定手段62により受け付けさせる実施形態も包含する。制御対象である制御ブロックの構成は、上述したように、設計時に予め決定されている場合が多いため、ユーザが選択するまでもなく、予め制御ブロックに対応させて定数を保持しておき、制御対象を検知することで当該制御ブロックの構成である定数を自動的に読出し、モデル作成装置6により受け付ける。これにより、プラント監視制御装置3の設定装置7を通じてユーザによりモデルの構造を選択させずとも、自動的に所望の各パラメータ、応答及び誤差を算出することができる。
【0055】
(b)また、本発明は、上記のような指定された単一のモデルに対する出力信号と応答との誤差を算出する実施形態に限定するものではなく、複数のモデルを比較して平均誤差を算出する実施形態も包含する。通常、モデル構造は設計時に決まっているが、例えば、上記図6に示すモデル構造から図8に示すようなモデル構造に設計変更が可能な場合もある。このような場合には、複数のモデル(図6と図8)を比較して平均誤差を算出した方がより高精度のモデル計算を行うことが可能となる。
【0056】
より詳細には、モデル作成装置6内に誤差対比手段を設け、上記実施例1と実施例2の処理を連続して実行し、図7、10の結果から、実施例1の平均誤差=0.063553と実施例2の平均誤差=0.049281を取得した場合、この誤差対比判定手段が上記平均誤差を対比することでより平均誤差がより小さい実施例2の計算結果を表示制御手段61を通じて設定装置7に出力する。これにより、最良のモデル構造を容易に設定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】本実施形態に係るプラント監視制御装置のシステム構成を示す全体図。
【図2】本実施形態に係るモデル作成装置の具体的な構成を示すブロック図。
【図3】本実施形態に係る設定装置の画面例(G、T1、T2を選択した場合)。
【図4】本実施形態に係るモデル構造設定時のアルゴリズム上の取り扱いを示す図。
【図5】本実施形態の実施例1に係るフローチャート。
【図6】本実施形態の実施例1に係る制御ブロックの構成図。
【図7】本実施形態の実施例1に係るプラント監視制御装置のモデル計算結果の一例を示す図。
【図8】本実施形態の実施例2に係る制御ブロックの構成図。
【図9】本実施形態の実施例2に係る設定装置の画面例(G、T1、T2、T4、L)。
【図10】本実施形態の実施例2に係るプラント監視制御装置のモデル計算結果の一例を示す図。
【符号の説明】
【0058】
1…プラント
2…センサ
3…プラント監視制御装置
4…データ収集装置
4…プラントデータベース
5…プラントデータベース
6…モデル作成装置
7…設定装置
61…表示制御手段
62…定数判定手段
63…定数値受付手段
64…応答算出手段
65…誤差算出手段
66…誤差判定手段
67…パラメータ決定手段
68…更新手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラントを監視制御するための操作量をモデルを用いて算出するプラント監視制御装置において、
ゲイン、遅れの時定数、進みの時定数、無駄時間を各定数とした伝達関数からなる前記モデルを作成するモデル作成装置と、
前記モデル作成装置からの情報を表示し、かつ、ユーザから操作を受け付ける表示操作部と、を備え、
前記モデル作成装置は、
前記モデルを構成する所定の数の前記定数をユーザに選択可能な態様で前記表示操作部に表示する表示制御手段と、
前記表示操作部に表示された前記定数が選択されると、この選択された定数による伝達関数をモデルとして指定する定数判定手段と、
を備えたことを特徴とするプラント監視制御装置。
【請求項2】
前記定数の最大数は8つであって、
この8つの定数は、ゲイン、1,2,3次の遅れ時定数、1,2,3次の進みの時定数、無駄時間であることを特徴とする請求項1に記載のプラント監視制御装置。
【請求項3】
前記定数の最小数は3つであって、
この3つの定数は、ゲイン、1,2次の遅れ時定数であることを特徴とする請求項1に記載のプラント監視制御装置。
【請求項4】
前記モデル作成装置は、
指定されたモデルの前記各定数の入力値に基づいて当該モデルにより前記操作量である応答信号を算出する応答信号算出手段と、
前記応答信号算出手段により算出された応答信号と当該指定されたモデル化範囲の実際の出力信号との誤差を算出する誤差算出手段と、
この当該誤差が閾値以下であるかを判定する誤差判定手段と、
前記誤差判定手段により前記誤差が閾値以下であると判定された場合に前記各定数の入力値を当該モデルのパラメータとして決定する決定手段と、
を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラント監視制御装置。
【請求項5】
前記モデル作成装置は、
最適化手法を用いて前記入力値を更新演算する更新手段を備え、
当該更新手段は、前記誤差判定手段により前記誤差が閾値以下でないと判定された場合に前記入力値を更新することを特徴とする請求項4に記載のプラント監視制御装置。
【請求項6】
前記入力値に上下限を設定することを特徴とする請求項5に記載のプラント監視制御装置。
【請求項7】
前記入力値に対して同一となる定数値を制約として設定することを特徴とする請求項5又は6に記載のプラント監視制御装置。
【請求項8】
プラントを監視制御するための操作量をモデルを用いて算出するプラント監視制御装置の制御方法において、
ゲイン、遅れの時定数、進みの時定数、無駄時間を各定数とした伝達関数からなる前記モデルを作成するモデル作成装置と、
前記モデル作成装置からの情報を表示し、かつ、ユーザから操作を受け付ける表示操作部と、を備え、
前記モデル作成装置は、
前記モデルを構成する所定の数の前記定数をユーザに選択可能な態様で前記表示操作部に表示する表示制御ステップと、
前記表示操作部に表示された前記定数が選択されると、この選択された定数による伝達関数をモデルとして指定する定数判定ステップと、
を実行することを特徴とするプラント監視制御装置の制御方法。
【請求項9】
ゲイン、遅れの時定数、進みの時定数、無駄時間を各定数とした伝達関数からなる前記モデルをコンピュータが作成するモデル作成装置と、前記モデル作成装置からの情報を表示し、かつ、ユーザから操作を受け付ける表示操作部とを備え、プラントを監視制御するための操作量を当該モデルを用いて算出するプラント監視制御装置の制御プログラムにおいて、
この制御プログラムはコンピュータに、
前記モデルを構成する所定の数の前記定数をユーザに選択可能な態様で前記表示操作部に表示する表示制御処理と、
前記表示操作部に表示された前記定数が選択されると、この選択された定数による伝達関数をモデルとして指定する定数判定処理と、
を実行させることを特徴とするプラント監視制御装置の制御プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−97501(P2010−97501A)
【公開日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−269074(P2008−269074)
【出願日】平成20年10月17日(2008.10.17)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】