説明

プリズムシートの欠点検査装置及びプリズムシートの欠点検査方法

【課題】
プリズムシートにおける欠点を精度よく検出することができる検査装置ならびに検査方法を提供する。
【解決手段】
被検査体であるプリズムシートに光を照射する光照射手段と、前記プリズムシートに対して前記光照射手段と反対面に配置され、前記プリズムシートを透過した透過光を受光する受光手段と、前記プリズムシートと前記受光手段との間に配置され、前記透過光を集光し前記受光手段に光を入射させる集光手段と、前記受光手段で受光した前記透過光の受光信号波形に基づき前記プリズムシートに存在する欠点を検出するデータ処理手段とを有するプリズムシートの欠点検査装置であって、前記光照射手段は、該光照射手段の長手方向が前記プリズムシートに繰り返し設けられたプリズム形状の繰り返し方向に平行となるように配置されてなり、さらに、前記集光手段の画角θ2が、前記プリズムシートがもつ光屈折特性によって定まる主屈折角θ1に対し、
2×θ1>θ2
であることを特徴とするプリズムシートの欠点検査装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリズムシートの欠点検査装置および検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリズムシートを製造する工程では、プリズム形状の形成不良や、異物の混入、付着、キズなどが発生し、製品品質上の不良品となり、良品であるプリズムシートが持つ光学特性と異なるため、このようなプリズムシートを出荷されることを避けなければならない。したがって、プリズムシートに発生する欠点を定量的に評価し、良品と不良品の判定をすることが望ましい。さらには、インラインでの検査を実施し短時間で定量評価を行う事が望ましい。
【0003】
しかしながら、プリズムシートの欠点検査を行う場合、プリズムシートに形成されたプリズム形状がプリズムシートに入射した光を複雑に反射または屈折させるため、プリズムシートを透過した光は、プリズムの断面形状に応じてある方向に強く透過する。また、プリズム形状が形成されている面に対して、多角的に光が入射すると、複雑な反射、屈折が起こる。そのため、単に光照射手段でプリズムシートに照射した光を反対面側に対向するように設けた集光手段によって集光し、受光手段で受光しても、得られる画像データは、同じプリズムシートの正常部分であってもシートの幅方向にわたって大きく異なり、一定の閾値で欠点の該非判定を行ったのでは、正常部分であっても欠点と判断してしまうことにもなりかねない。すなわち、精度の良く欠点検査を行うことが難しい。
【0004】
そこで、特許文献1に記載のプリズムシート表面に発生する欠点を検査する方法が知られている。
【0005】
特許文献1に記載の検査方法を、図面を用いて説明する。図10に特許文献1に記載の検査装置の構成を示す。特許文献1の検査装置は、ライン状光照射手段50、受光手段51、画像処理装置を含むプリズムシート1の幅方向に複数個配列された撮像素子52などからなる。また、ライン状光照射手段50と受光手段51は、プリズムシート1を挟んで対向配置されている。そして、この装置は、プリズムシート1の正常部分を透過して受光手段51に入射したときに得られる光の信号レベルが所定のレベル以下となるように、ライン状光照射手段50および受光手段51の長手方向をプリズムシート1の幅方向に対して所定の角度θだけ傾け、前記受光手段51が受光した光の信号レベルが所定の閾値を越えた場合にプリズムシート1に欠点があると判定する。より詳細に説明すると、受光手段51が受光した光の信号レベルが、θ=0近傍の場合と比較して、所定の割合となるときを所定の角度θとし、プリズムシート1に発生した欠点によって受光手段51が受光した光の信号レベルが所定の閾値を越えた場合に欠点があると判定する。
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載の方法は、プリズムシートに形成されたプリズムの断面形状による光の反射特性や屈折特性によって、プリズムシート1を強く透過する方向が変化しそれに応じて光の信号レベルも変化するため、製造するプリズムシートに形成されるプリズム形状の変更に応じて、所定の角度θを変更しなければならない問題があった。また、光照射手段の長手方向をプリズム形成方向に対して傾けることによって全体的な光量の増減は調整できるが、プリズムでの屈折による受光信号波形のシート幅方向の分布の調整はできない。つまり、受光手段の視野幅において均一な受光量分布が得られないので、視野幅全体について均一な感度での検査が困難という問題は解決しない。さらに、所定の角度で傾けたことにより、傾けない場合の検査範囲よりも狭くなるため、プリズムシートの検査幅が大きくなった場合には、受光手段並びにライン状光照射手段を多く設置しなければならず、欠点検査装置のコストが高くとなるという問題があった。
【特許文献1】特開平11-281590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、従来技術の上記問題を解決し、プリズムシートにおける欠点を精度よく検出することができる検査装置ならびに検査方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための本発明は、次の(1)〜(7)のいずれかに記載の構成を特徴とするものである。
(1) 被検査体であるプリズムシートに光を照射する光照射手段と、前記プリズムシートに対して前記光照射手段と反対面に配置され、前記プリズムシートを透過した透過光を受光する受光手段と、前記プリズムシートと前記受光手段との間に配置され、前記透過光を集光し前記受光手段に光を入射させる集光手段と、前記受光手段で受光した前記透過光の受光信号波形に基づき前記プリズムシートに存在する欠点を検出するデータ処理手段とを有するプリズムシートの欠点検査装置であって、前記光照射手段は、該光照射手段の長手方向が前記プリズムシートに繰り返し設けられたプリズム形状の繰り返し方向に平行となるように配置されてなり、さらに、前記集光手段の画角θ2が、前記プリズムシートがもつ光屈折特性によって定まる主屈折角θ1に対し、
2×θ1>θ2
であることを特徴とするプリズムシートの欠点検査装置。
(2) 前記光照射手段は、該光照射手段の長手方向において高指向性の光を照射するライン状光照射手段であることを特徴とする、前記(1)に記載のプリズムシートの欠点検査装置。
(3) 前記受光手段は、複数の光変換素子が1次元で配列されたラインセンサカメラであり、該複数の光変換素子の配列方向が前記光照射手段の長手方向と平行であることを特徴とする、前記(1)または(2)に記載のプリズムシートの欠点検査装置。
(4) 被検査体であるプリズムシートのプリズム形状が設けられている面側に光を照射し、前記プリズムシートを透過した透過光を集光手段により集光し、前記集光した光を受光手段によって受光し、前記受光した光の信号波形に基づき前記プリズムシートに存在する欠点を検出するプリズムシートの欠点検査方法であって、前記光照射手段を、該光照射手段の長手方向が前記プリズムシートに繰り返し設けられたプリズム形状の繰り返し方向に平行となるように配置し、さらに、前記集光手段の画角θ2が、前記プリズムシートがもつ光屈折特性によって定まる主屈折角θ1に対し、
2×θ1>θ2
となるようにすることを特徴とするプリズムシートの欠点検査方法。
(5) 前記光照射手段により、前記プリズムシートの法線方向から光照射手段の長手方向において高指向性の光を前記プリズムシートに照射することを特徴とする、前記(4)に記載のプリズムシートの欠点検査方法。
(6) 前記受光手段によって、前記光照射手段の長手方向に平行な1次元画像を取得することを特徴とする、前記(4)または(5)に記載のプリズムシートの欠点検査方法。
(7) 前記(1)〜(3)のいずれかに記載の装置または前記(4)〜(6)のいずれかに記載の方法によってプリズムシートの欠点を検出し、製造条件を制御することを特徴とするプリズムシートの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、以下に説明するとおり、複数台の検査装置を設置しなくてもプリズムシートに存在する欠点を全幅に亘って精度よく検出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照にしながら説明する。図1に、検査対象となるプリズムシートの斜視図を示す。図示するように、プリズムシート1はその製造時における図中矢印方向に走行するシートである。プリズムシート1は、一方の面(プリズム面13)に、例えば、底辺が50μm、高さ25μmの三角柱プリズム14を備えており、三角柱プリズム14が、走行方向に連続して繋がっているとともに、例えば、ピッチ50μmで走行方向に交差する方向に繰り返し形成されている。なお、他方の面(平滑面12)は、平滑面である。
【0011】
図2に本発明を実施するための検査装置の構成を示す斜視図を示す。また図3に、図2の検査装置を、プリズムシート1の走行方向から見た正面図を示す。本発明の検査装置は、光照射手段2、受光手段3、データ処理手段4、集光手段5を含む。
【0012】
光照射手段2は、プリズムシート1のプリズム面13側に、プリズムシート1から距離b離れた位置に配置されている。さらに、光照射手段2の長手方向とプリズムシート1のプリズム繰り返し方向とが平行となるように配置される。このとき、照射手段2の照射方向は、通常検出したい欠点の形状によってはプリズムシート面法線方向に対して傾けてもよい。
【0013】
光照射手段2はライン型照明が好ましく、光ファイバを線状に配置したものやロッド照明、LEDを線状に配置したものなどを用いることができる。
【0014】
また、光照射手段2から照射される光は、光照射手段2の長手方向について高指向性であることが好ましい。ここでの指向性とは、光照射手段2の光照射端の一点から出射される光の強度がその角度によって異なることを表している。したがって、高指向性を有する光とは、出射された箇所から周囲に均等に拡散せず、主に狭い角度の範囲内へ進む光のことを言う。具体的には、光照射手段2から照射される光の60%以上の光が、プリズムシートの法線方向を中心にした光の放射角度60°以内に進むことが好ましい。以下に、その評価方法を図11および図12を参照しながら説明する。
【0015】
図11は、光照射手段2の点Oから出射する光の輝度を、点Oを中心とした半径rの半円弧上の点R(当該点Rと点Oとを結ぶ線と点Oを通る出射面に対する法線とで角度φを形成)で測定し、光照射手段2から出射された光が高指向性であるかの判断を行う評価方法の原理図であり、図12は、光照射手段2の点Oから出射される光の輝度値を前記半円弧上の点Rで角度φを変化させて測定した時の輝度分布26を示す。
【0016】
図11に示すように、光照射手段2から出射される光の輝度を当該光照射手段2のある点を中心とした半円弧上の各点で測定することにより、光照射手段のある点から出射される光の強度分布27を求めることができる。すなわち、光照射手段2から照射される光は指向性により光の強度28がその角度によって異なるため、その角度の方向成分に進む光の輝度を測定することによって、点Oから出射される光の強度分布27を得ることができる。そして、角度φを横軸に、各φにおける輝度値を縦軸にして、図12に示すような光の輝度分布26を作成し、当該光の輝度分布26の面積(−90°〜90°の範囲内における輝度値の積分値)から求められる点Oから出射される光の全輝度値に対して、ある放射角度内における輝度分布の面積(−30°〜30°の範囲内における輝度値の積分値)から求められる当該放射角度内の輝度値の総和が占める割合を算出することで、点Oから出射される光量に対しある放射角度内に進む光量の割合を算出できる。すなわち、光照射手段2が出射する光の指向性について高指向性であるかを評価することができる。
【0017】
したがって、本発明においては、角度φを中心軸から−90°から90°まで10度ずつ変化させ、φ=0度で測定された光の輝度値を1とし、角度φにおける輝度分布を求め、得られた輝度分布から、点Oから出射された光の全輝度値と放射角度60度以下の輝度値の面積を求め、点Oから出射された全輝度値に対し放射角度60度内の輝度値の割合が60%以上となる高指向性の光を照射する光照射手段を用いることが好ましい。
【0018】
かかる光照射手段2としては、ライン状光照射手段が好ましく、かかるライン状光照射手段としては、ライン型ファイバー照明や、蛍光灯照明に集光レンズを取り付け、照明からの光をライン状に照射できるものを例示することができる。
【0019】
受光手段3は、プリズムシート1に対して光照射手段2と反対の面側に、プリズムシート1の表面に対向するように配置され、受光した光を電子データに変換するため光変換素子を含む。光変換素子としては、CCDやCMOSを好適に利用することができ、受光手段3としては、光変換素子が2次元に配列されたエリアセンサカメラや、光変換素子が1次元に配列されたラインセンサカメラを用いることができる。一般的に撮像視野幅方向の画素数を多くできるなどの理由から、ラインセンサカメラの方が好まく、かかるラインセンサカメラは、複数の光変換素子の配列方向が光照射手段2の長手方向と平行とになるように配置することが好ましい。かかかる構成により、光照射手段2の長手方向に平行な1次元画像を取得することができる。なお、受光手段3の光変換素子の数については、プリズムシート1の検査領域や検出したい欠点のサイズなどに応じて決定することができる。
【0020】
受光手段3の電子データ出力方式はデジタル、アナログどちらでもよい。デジタル方式の場合は、各変換素子の電子データをデジタル値に量子化して出力する。量子化する際は8ビットや10ビットのデジタル値に変換する。アナログ方式の場合は、各光変換素子の電子データを電圧に変換して出力する。この場合、後述するデータ処理手段4に受光手段3からのアナログデータをデジタルデータに変換する機能を備えていることが好ましい。
【0021】
次に、データ処理手段4について説明する。データ処理手段4は受光手段3と電気的に接続されており、受光手段3が撮像した画像データを入力でき、画像データに基づいて、プリズムシート1に発生する欠点を検出する。また、欠点を検出するだけでなく、画像データに基づいて欠点の大きさを分類したり、欠点の種類を分類することも好ましい。
【0022】
集光手段5は、受光手段3とプリズムシート1との間でプリズムシート1から距離a離れた位置に配置されており、透過光を集光し受光手段3に入射させる、すなわちプリズムシート1の表面の像を受光手段3の光変換素子に結像させる。集光手段5としては、例えば、ガラスで作られた、軸から離れるほど内側に屈折するように傾けた形状をもつ凸状のレンズや入射した光をある点に集光させることのできる凹状の湾曲面鏡などを用いることができる。
【0023】
ここで、θ2は、集光手段5において定まる画角を表す。このとき受光手段3は、画角θ2と、距離aによって決定される範囲11を撮像する。一方、光照射手段2からプリズムシート1の表面に入射した光は、プリズムシート1に形成されたプリズムの断面形状に応じてある方向に最も強く透過する。この方向とプリズムシート1の法線方向とが成す角度をθ1とし、主屈折角と呼ぶ。このとき、本発明においては、
2×θ1>θ2
となるように、θ2を調整する。このように構成することで、プリズムシート1の欠点を精度よく検出できる。
画角θ2を調整する方法としては、異なる画角を持つ複数のレンズを交換できる機構にしてもよいし、集光手段5をズームレンズにしてもよい。ズームレンズの場合、レンズを交換することなく、機械的に画角を調整することができる。
【0024】
次に、上記で示す構成によってプリズムシート1の欠点を精度よく検出できる原理について説明する。
【0025】
まず、図4に、受光手段3の画角θ2が主屈折角θ1の2倍以上の場合であって、光照射手段2から照射された指向性を持つ光20がプリズムシート1を主屈折角θ1によって屈折しながら透過し、透過した光が集光手段5によって集光され受光手段3に入射する場合の画像データの分布21を示す。角度θ3は、画角θ2の半分の角度であり、角度θ4は、受光手段3に入射するプリズムシート1の透過光と、受光手段3の中心を通るプリズムシート1の法線との間の角度で、受光手段が撮像するある1点の受光点角度である。また、画像データとは、プリズムシート表面を撮像したときの視野幅全体の受光量分布である。
【0026】
この図において、例えば、画角θ2が主屈折角θ1の2倍の場合を考える。受光手段3の中心を通るプリズムシート1の法線と交差するプリズムシート1上の点における受光点角度θ4は0度である。プリズムシート1を透過した光は、光20と同様に主屈折角θ1を中心とした指向性をもつため、プリズムシート1を透過した光の光量はθ4=0度の受光点で最小値となり、プリズムシート1を透過した光のうち最も少ない光量となる光が受光手段3へ入射する。一方、受光点角度θ4が角度θ3(すなわち画角θ2の半分の角度)と一致する受光点では、主屈折角θ1の方向成分の光、つまり、プリズムシート1を透過した光のうち最も大きな光量となる光が受光手段3へ入射する。したがって、得られる画像データの分布21には、プリズムシート1を透過した光の光量の最小値から最大値の値が含まれることになり、分布の幅が大きい。そのため例えば一定の閾値を設けて欠点を検出しようとする場合に、視野幅中央部では欠点と検出するようなものであっても、視野幅端部では欠点と判別することができず、視野幅方向で均一な精度が得られない。このとき、たとえ光量を上げたとしても図5に示す画像データは、値が全体的に底上げされるだけでプロファイル形状としては変わらない。したがって、光量を上げるだけでは視野幅全体にわたって均一な検査精度を得ることはできない。
【0027】
一方、図5に、受光手段3の画角θ2が主屈折角θ1の2倍よりも小さい、本発明にかかる態様を示す。図4の態様と同様に、受光手段3の中心を通るプリズムシート1の法線と交差するプリズムシート1上の点における受光点角度θ4は0度である。プリズムシート1を透過した光は主屈折角θ1を中心とした指向性をもつため、受光手段3が受光する受光量は、θ4=0度の受光点で最小値となり、プリズムシート1を透過した光のうち最も少ない光量となる光が受光手段3へ入射する。しかしながら、本発明にかかる態様においては、プリズムシート1を透過した光の光量の最大値が画像データの分布21には含まれない。すなわち、本発明にかかる態様においては、角度θ2が主屈折角θ1の2倍よりも小さいため、プリズムシート1を透過した光のうち最も大きな光量となる主屈折角θ1の方向成分の光は受光手段3へ入射しない。したがって、視野幅において、受光手段3が受光するプリズムシート1からの光の光量の分布幅が狭く、例えば一定の閾値を設けて欠点を検出しようとする場合に、視野幅に亘る精度の均一性を高めることができる。すなわち、精度の良い欠点検査を行う事ができる。
【0028】
次に、集光手段5の主屈折角θ1を算出する方法例について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図6に、プリズムのモデルを用いて、プリズムシートに繰り返し設けられたプリズム形状の繰り返し方向と垂直に交わるように配置された光照射手段2から照射された光が、プリズム形状の形成された面上の点Lからプリズム層16を透過し、スクリーン17上の点Nに投影される際の光経路22、ならびに、プリズムシート1が配設されていない場合に、同光照射手段2から照射された光がスクリーン17上の点Mに投影される際の光経路23を示す。15はプリズムシート1を構成するシート状フィルム、16はシート状フィルム上に頂角が90度であるプリズム形状が形成されたプリズム層、17はプリズムシート1のシート状フィルム平面と平行でかつプリズムシート1から距離c離れた位置に配置された、プリズムシート1を透過した光を投影するスクリーン、θ1は光照射手段2からプリズム形状が形成されたシート状フィルム15の面に対して垂直な光を照射したときの主屈折角である。
【0030】
光経路22によって投影される点Mおよび光経路23によって投影される点Nの光経路差は、シート状フィルム15に形成されたプリズム層による透過光の屈折によるものである。したがって、プリズムシート1を透過し指向性によって広がる光のうち光量が最大となる点を点Nとすると、点L、点Mおよび点Nの投影された位置関係によって主屈折角θ1を算出できる。点Mと点Nの距離をy、光照射手段から照射した光がプリズム層に入射する点と照射した光がスクリーンに投影される点との距離をxとすると、θ1、x、yの関係は次式のとおりとなる。
θ1=tan−1(y/x)
したがって、本発明においては、上述のようにプリズム形状の繰り返し方向と垂直に交わるように配置した光照射手段2によってプリズムシート1に光を照射し、プリズムシート1に形成されたプリズムの断面形状によって屈折する光をスクリーン17に投影し、その位置関係から主屈折角θ1を求める。
【0031】
本発明においては、上記のようにしてプリズムシートの主屈折角θ1を求め、θ1の2倍よりも小さくなるように、画角θ2を設定すればよい。そして、視野幅に亘る精度の均一性をさらに高めるためには、画角θ2をより小さく設定することも好ましい。また、光経路差を、光変換素子が1列に並んだラインセンサカメラを用いて、光が光変換素子に入射する位置から求めてもよい。
【0032】
次に図1〜図6によって説明した上記原理によって、受光手段3に入射したときに得られる画像データ値が、所定の閾値を越えた場合にプリズムシート1に欠点があると判定する原理について説明する。
【0033】
図7(A)は、正常なプリズムシート1に対して光を照射したときの光の経路、図7(B)はプリズムシート1に欠点があった場合の光の経路図を示す。図7(A)に示すように、光照射手段2からプリズムシート1の正常部分に入射し透過した光は、主に、プリズムシート1に形成されたプリズム形状によって決まる主屈折角θ1で光31および光32に分かれる。本発明の原理によれば、主屈折角θ1の2倍より画角θ2を小さく設定するため、光照射手段2で照射したほんとんどの光は、受光手段3に入射しない。すなわち、プリズムシート1の正常部分では、受光手段3によって受光できる受光量がシートの幅方向にわたって全体に少なく、その分布も従来技術に比べて狭い範囲におさめることができる。しかし、プリズムシート1にプリズム形状の不良やキズなどが発生した場合には、プリズムによる光の屈折・反射が起こりにくくなり、図7(B)に示すようにプリズムシート1を透過しても、屈折しない光33が発生する。その結果、この点からの受光手段3に入射する光の画像データは、正常な部分から入射する画像データよりも明らかに高くなり、データ処理装置によって、所定の閾値を越えた場合にプリズムシート1に欠点があると判定することができる。
【0034】
次に、光照射手段2から照射される光について、光照射手段2の長手方向に高指向性である場合に、検査性能が高い理由について説明する。
【0035】
図8は、正常なプリズムシート1に対して光照射手段2から高指向性の光が照射されたときの出射光強度分布24とプリズムシート1を透過した光の関係を示した図である。図9は、正常なプリズムシート1に対して光照射手段2から低指向性の光が照射されたときの出射光強度分布25とプリズムシート1を透過した光の関係を示した図である。
【0036】
光照射手段2から光を照射したとき、プリズムシート1上の点Aには、点Aから光照射手段2へおろした垂線と光照射手段2との交点Xからの光と、交点X周辺の点からの光とが入射し、点Aを透過した光の強度分布は、主屈折角θ1を中心とした指向性をもつ光強度分布となる。このとき、光照射手段2から照射される光が低指向性である場合、図9に示すように、点Aには交点Xからの光が多く入射するとともに、交点X周辺の点からの光も多く入射し、かかる光が高指向性である場合には、図8に示すように、前記点Aには交点Xからの光が多く入射するものの、交点X周辺の点からの光がほとんど入射しない。これは、受光手段3の撮像範囲の中央の点Bでも同様である。
【0037】
しかしながら、かかる指向性の程度の違いは、受光手段3の撮像範囲中央部において受光手段3による受光量の絶対量に実質的に差を生じるものではないものの、受光手段3の撮像範囲端部における受光手段3による受光量の絶対量に実質的な差を生じるものである。つまり、受光手段3の撮像範囲の中央の点Bでは、指向性の程度に関わらず、プリズムシート1を透過した光はほとんど受光手段3に入射しない。そのため、受光量の絶対量としてみれば、その差は大きくない。一方、受光手段3の撮像範囲端部においては、光照射手段2から照射される光が高指向性の場合、図8に示すように、点Aには交点X周辺の点からの光がほとんど入射しないものの、かかる光が低指向性の場合には図9に示すように、交点X周辺の点からの光も点Aに多く入射し、点Aを透過した光は、撮像範囲中央部に比べて多く受光手段3に到達する。したがって、受光手段3による受光量の差も大きい。
【0038】
そのため、照射手段2により高指向性の光を照射する場合には、低指向性の光を照射する場合に比べて、図4に示す画像データの分布21の幅を小さくすることができ、その結果、例えば一定の閾値を設けて欠点を検出しようとする場合に、視野幅方向全体に亘って検査感度をより均一化することができる。
【実施例】
【0039】
〔主屈折角θ1〕
プリズムシートに対して、プリズム形状繰り返し方向と垂直に交わるように配置した光照射手段から光を照射し、屈折した光をスクリーンに投影し、光照射手段からの光が入射するプリズム上の点Lとスクリーンとの距離x、スクリーン上における投影光と光照射手段からの直進光の延長線との距離yを測定し、次式に基づいて主屈折角θ1を求めた。
【0040】
θ1=tan−1(y/x)
なお、x、yの測定は、検査範囲となるプリズムシートの中央部と両端部において実施し、それぞれのx、yから求められたθ1の値の平均値をそのプリズムシートにおける主屈折角θ1とした。
【0041】
〔実施例1〕
図2に示す装置でプリズムシート1の欠点検査を行った。
【0042】
被検査体のプリズムシート1として、高さ25μm、頂角90°のプリズムがピッチ25μmで繰り返し設けられているものを用意した。また、かかるプリズムシート1の主屈折角θ1は、19°であった。
【0043】
光照射手段2は、水銀とハロゲン化金属(メタルハライド)の混合蒸気中のアーク放電による発光を利用したメタルハライド光源を用い、長手方向の幅が560mmのロッド状ラインファイバー照明とした。また、光照射手段2とプリズムシート1との距離bを1140mmとした。
【0044】
受光手段3は、光変換素子を7450個一列に配列したCCDラインセンサカメラとした。
また、電子データ出力形式を10ビットのデジタル値に変換するデジタル方式とした。
【0045】
集光手段5は、プリズムシート1と集光手段5との距離aが300mmとなる位置に配置されるように、受光手段3に取り付けることができ、かつ、画角θ2を21°とするカメラレンズを含むものとした。
【0046】
上記構成でプリズムシートを検査した結果、撮像範囲全面においてプリズムシート走行方向に発生した幅25μmのキズを検出することができた。
【0047】
〔比較例1〕
画角θ2を54°となるカメラレンズに変更した以外は実施例1と同様にして、同じプリズムシート1の欠点検査を行った。その結果、撮像範囲端部と撮像範囲中心の画像データ値に2倍以上の差が発生し、撮像範囲端部においてプリズムシートの走行方向に発生した幅25μmのキズ欠点を検出することができなかった。
【産業上の利用可能性】
【0048】
上記のような本発明によれば、プリズムシート上の欠点を精度よく検出できるので、かかる装置、方法によってプリズムシートの欠点を検出し、その結果を受けて製造条件を制御することで、生産効率を高めてプリズムシートを製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】被検査体となるプリズムシートの斜視図である。
【図2】本発明の検査装置の構成を示す斜視図である。
【図3】図2に示す検査装置をプリズムシートの走行方向から見た正面図である。
【図4】画角θ2が主屈折角θ1の2倍以上の場合の受光手段3による画像データの分布図である。
【図5】画角θ2が主屈折角θ1の2倍よりも小さい場合の受光手段3による画像データの分布図である。
【図6】プリズムシートを透過し、スクリーンに投影される光の経路図である。
【図7】正常なプリズムシートおよび欠点を有するプリズムシートに対して光を照射したときの光の経路図である。
【図8】正常なプリズムシート1に対して光照射手段2から高指向性の光が照射されたときの照射光強度分布図である。
【図9】正常なプリズムシート1に対して光照射手段2から低指向性の光が照射されたときの照射光強度分布図である。
【図10】特許文献1の検査装置の構成図である。
【図11】光照射手段の指向性を評価する方法の原理図である。
【図12】光照射手段の点Oから出射される光の輝度を角度φを変化させて測定したときの輝度分布図である。
【符号の説明】
【0050】

1 プリズムシート
2 光照射手段
3 受光手段
4 データ処理手段
5 集光手段
11 撮像範囲
12 プリズムシートの平滑面
13 プリズムシートのプリズム面
14 三角柱プリズム
15 シート状フィルム層
16 プリズム層
17 投影スクリーン
20 指向性を持つ光
21 画像データ分布
22 光照射手段からの光がプリズムシートを主屈折角で透過しスクリーンに投影される光経路
23 プリズムシートが配設されていない場合に、光照射手段からの光がスクリーンに投影される光経路
24 高指向性の光の出射強度分布
25 低指向性の光の出射強度分布
26 光照射手段上の点Oから出射される光の輝度分布
27 点0から出射される光の出射強度分布
28 光照射手段上のある点における光の強度
30 撮像範囲
31 屈折光
32 屈折光
33 直進光
50 ライン状光照射手段
51 受光手段
52 撮像素子
A プリズムシート上の点
B プリズムシート上の点
L 光照射手段から照射した光がプリズム層に入射する点
M 光照射手段から照射した光がスクリーンに投影される点
N 光照射手段から照射した光がプリズム層を透過し、スクリーンに投影される点
O 光照射手段上の光を照射する点
R 光照射手段上の点Oを中心とした半径rの半円弧上の点
X プリズムシート上の点Aから光照射手段2へおろした垂線と光照射手段2との交点
Y プリズムシート上の点Bから光照射手段2へおろした垂線と光照射手段2との交点
a プリズムシートと集光手段の距離
b プリズムシートと光照射手段の距離
c プリズムシート1と投影スクリーンとの距離
x 光照射手段から照射した光がスクリーンに投影される点と光照射手段から照射した光がプリズム層を透過しスクリーンに投影される点との距離
y 光照射手段から照射した光がプリズム層に入射する点と照射した光がスクリーンに投影される点との距離
θ 信号レベルが所定の割合となる所定の角度
θ1 主屈折角
θ2 集光手段の画角
θ3 画角θ2の半分の画角
θ4 受光点角度
φ 点Rと点Oとを結ぶ線と、点Oを通る出射面に対する法線とで形成される角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検査体であるプリズムシートに光を照射する光照射手段と、前記プリズムシートに対して前記光照射手段と反対面に配置され、前記プリズムシートを透過した透過光を受光する受光手段と、前記プリズムシートと前記受光手段との間に配置され、前記透過光を集光し前記受光手段に光を入射させる集光手段と、前記受光手段で受光した前記透過光の受光信号波形に基づき前記プリズムシートに存在する欠点を検出するデータ処理手段とを有するプリズムシートの欠点検査装置であって、前記光照射手段は、該光照射手段の長手方向が前記プリズムシートに繰り返し設けられたプリズム形状の繰り返し方向に平行となるように配置されてなり、さらに、前記集光手段の画角θ2が、前記プリズムシートがもつ光屈折特性によって定まる主屈折角θ1に対し、
2×θ1>θ2
であることを特徴とするプリズムシートの欠点検査装置。
【請求項2】
前記光照射手段は、該光照射手段の長手方向において高指向性の光を照射するライン状光照射手段であることを特徴とする、請求項1に記載のプリズムシートの欠点検査装置。
【請求項3】
前記受光手段は、複数の光変換素子が1次元で配列されたラインセンサカメラであり、該複数の光変換素子の配列方向が前記光照射手段の長手方向と平行であることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載のプリズムシートの欠点検査装置。
【請求項4】
被検査体であるプリズムシートのプリズム形状が設けられている面側に光を照射し、前記プリズムシートを透過した透過光を集光手段により集光し、前記集光した光を受光手段によって受光し、前記受光した光の信号波形に基づき前記プリズムシートに存在する欠点を検出するプリズムシートの欠点検査方法であって、前記光照射手段を、該光照射手段の長手方向が前記プリズムシートに繰り返し設けられたプリズム形状の繰り返し方向に平行となるように配置し、さらに、前記集光手段の画角θ2が、前記プリズムシートがもつ光屈折特性によって定まる主屈折角θ1に対し、
2×θ1>θ2
となるようにすることを特徴とするプリズムシートの欠点検査方法。
【請求項5】
前記光照射手段により、前記プリズムシートの法線方向から光照射手段の長手方向において高指向性の光を前記プリズムシートに照射することを特徴とする、請求項4に記載のプリズムシートの欠点検査方法。
【請求項6】
前記受光手段によって、前記光照射手段の長手方向に平行な1次元画像を取得することを特徴とする、請求項4または請求項5に記載のプリズムシートの欠点検査方法。
【請求項7】
請求項1〜3のいずれかに記載の装置または請求項4〜6のいずれかに記載の方法によってプリズムシートの欠点を検出し、製造条件を制御することを特徴とするプリズムシートの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2010−38715(P2010−38715A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201549(P2008−201549)
【出願日】平成20年8月5日(2008.8.5)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】