説明

プリテンショナ装置

【課題】装置をリセットすることが可能な改良されたプリテンショナ装置を提供する。
【解決手段】シリンダチャンバ内に配置され、インレット15を通じてシリンダチャンバの第1の部分13aに印加される圧力によって後退方向に移動できるピストン部材9と、自動車安全装置にプレテンションを付与するためにピストン部材9に接続されるとともに自動車安全装置の部品に接続できる接続部材5と、ピストン部材9をロックするためのロック手段25、27、29とを備える。ロック手段25、27、29は、ピストン部材9が後退方向と反対の方向の所定の加速度レベルを超える加速度に晒されるときにピストン部材9をロックするように構成され、ピストン部材9が後退方向と反対の方向の所定の加速度レベル未満の加速度に晒されるときに前記ピストン部材9がロックされるのを防止するために保持手段11がシリンダチャンバ内に配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダチャンバ内に配置され、インレットを通じて前記シリンダチャンバの第1の部分に印加される圧力によって後退方向に移動できるピストン部材と、自動車安全装置にプレテンションを付与するためにピストン部材に接続されるとともに自動車安全装置の部品に接続できる接続部材と、ピストン部材をロックするためのロック手段とを備える、自動車安全装置で用いるプリテンショナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
前記タイプのプリテンショナ装置は、例えばシートベルトにプレテンションを付与して衝突時のベルトウェビングにおける緩みをなくすために、自動車において幅広く使用される。時として、そのようなプリテンショナ装置は、衝突が起こらないときであっても作動される場合がある。すなわち、シートベルトの望ましくないプレテンション付与が行なわれる場合がある。
米国特許第5871235号は、シートベルトシステム用のプリテンショナ装置を開示している。しかしながら、この装置の欠点は、ひとたび作動されると装置をリセットすることが不可能である或いは少なくとも非常に困難で且つ面倒であるという点である。したがって、前述したような望ましくない作動の場合には、そのようなプリテンショナ装置を新たなプリテンショナ装置と交換する必要があり、費用がかかるとみなされる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5871235号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、前述した欠点を克服して、改良されたプリテンショナ装置を提供することである。以下の要約および説明から明らかなこの目的および他の目的は、添付の請求項に係るプリテンショナ装置によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、シリンダチャンバ内に配置され、インレットを通じて前記シリンダチャンバの第1の部分に印加される圧力によって後退方向に移動できるピストン部材と、自動車安全装置にプレテンションを付与するためにピストン部材に接続されるとともに自動車安全装置の部品に接続できる接続部材と、ピストン部材をロックするためのロック手段とを備える、自動車安全装置で用いるプリテンショナ装置であって、前記ロック手段が、ピストン部材が前記後退方向と反対の方向の所定の加速度レベルを超える加速度に晒されるときにピストン部材をロックするようになっており、ピストン部材が前記後退方向と反対の方向の前記所定の加速度レベル未満の加速度に晒されるときに前記ピストン部材がロックされるのを防止するために保持手段がシリンダチャンバ内に配置される、プリテンショナ装置が提供される。
【0006】
保持要素により、ピストン部材を後退位置から簡単且つ滑らかな態様で戻すことができるようになる。したがって、リセット可能なプリテンショナ装置が提供される。
【0007】
例えば衝突前制動事象中に、ピストン部材が加速度を受ける。
【0008】
所定の加速度レベルは、好ましくは約0.8gであり、より好ましくは約1.2gであり、最も好ましくは約1.5gである。したがって、所定のレベルは、例えば衝突前制動事象中に不適切にロックされることを回避するように適合されてもよい。つまり、そのようなレベルの利点は、衝突前制動事象中のプリテンショナ装置が不適切にロックされることを回避でき、それにより、衝突前制動が行なわれる場合であっても車両安全装置にプレテンションを付与できるという点である。
【0009】
ロック手段は、前記後退方向で見て直径が増大する第1のピストン部材部分と、シリンダの内壁面と、ピストン部材が前記後退方向と反対の方向の加速度に晒されるときにくさび留めされるように第1のピストン部材部分とシリンダの内壁面との間に配置されるロック本体とを備えることが好ましい。したがって、プリテンショナ装置のピストン部材を後退位置に機械的にロックすることができる。そのため、ピストン部材の後退位置での非常に強固で且つ信頼できるロックを達成できる。
【0010】
ロック手段のロバスト(頑丈)性を向上させるために、ロック本体が複数のボールから形成されるのが好ましい。
【0011】
保持手段は、ピストン部材が前記後退方向と反対の方向の所定の加速度レベル未満の加速度に晒されるときに前記ロック本体が第1のピストン部材部分と内壁面との間にくさび留めされるのを防止するために接続部材に配置される保持要素を備えることが好ましい。したがって、ロックの動きを保持要素によって制限できるため、ノイズ低減を達成できる。更に、ロック本体がくさび留めされるおそれを伴わなければ、シリンダが任意の方向に装着されてもよい。
【0012】
保持要素は、ピストン部材が前記後退方向と反対の方向の所定の加速度レベルを超える加速度に晒されるときに変形するようになっており、それにより、前記ロック本体を第1のピストン部材部分とシリンダの内壁面との間にくさび留めできることが好ましい。
【0013】
1つの実施形態では、保持要素が前記ピストン部材に摺動可能に配置され、保持要素の前記後退方向の移動が接続部材に配置されるストッパ要素によって制限され、前記保持手段は、保持要素とピストン部材との間に配置される弾性要素を更に備え、弾性要素の作用によって保持要素がストッパ要素に押し付けられる。
【0014】
ピストン部材は、第1の動作モードでは、前記インレットを介して圧縮ガス源から第1のチャンバ部分に供給される圧力によって後退方向に移動できることが好ましい。
【0015】
ピストン部材は、第2の動作モードでは、前記インレットを介して火工用ガス発生器から第1のチャンバ部分に供給される圧力によって後退方向に移動できることが好ましい。
【0016】
ピストン部材は、第3の動作モードでは、第2のインレットを介して圧縮ガス源から第2のチャンバ部分に供給される加圧ガスによって前記後退方向と反対の方向に移動できることが好ましい。
【0017】
ここで、本発明の実施形態を示す添付の概略図を参照して、本発明を更に詳しく説明する。

【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】シートベルトシステムの一部に接続される本発明の一実施形態に係るプリテンショナ装置を示している。
【図2a】図1のプリテンショナ装置の断面図を示している。
【図2b】ピストン部材が後退位置へ移動される図1のプリテンショナ装置の断面図を示している。
【図2c】ピストン部材が後退位置でロックされる図1のプレテンショナを示している。
【図3a】本発明の第2の実施形態に係るプリテンショナ装置を断面図で示している。
【図3b】ピストン部材が後退位置から後退方向と反対の方向へ移動する最中の図3aのプリテンショナ装置を断面図で示している。
【図3c】ピストン部材が後退位置でロックされる図3aのプレテンショナを示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、シートベルトバックル3に接続される本発明の一実施形態に係るプリテンショナ装置1を示している。プリテンショナ装置1の接続部材5が、自動車用のシートベルトシステムの一部を形成するシートベルトバックル3に接続される。あるいは、本発明の一実施形態に係るプリテンショナ装置がシートベルトアンカーポイントに接続されてもよい。
【0020】
図2aは、プリテンショナ装置1を断面図で示している。プリテンショナ装置1は、シリンダ7と、ピストン部材9と、ピストン部材9に接続される接続部材5と、ロック手段と、保持手段11とを備える。ピストン部材9はシリンダ7のシリンダチャンバ13内に摺動可能に配置され、該シリンダチャンバ13は2つのチャンバ部分13a、13bを備える。シリンダ7には第1のガスインレット15が設けられ、該ガスインレット15を通じて圧力をチャンバ部分13aに印加することができる。ピストン部材9は、チャンバ部分13aに印加される圧力によって、後退方向とも称される第1の方向Rに移動できる。この実施形態では、シリンダ7に第2のガスインレット17が更に設けられ、該ガスインレット17を通じて圧力をチャンバ部分13bに印加することができる。ピストン部材9は、第2のチャンバ部分13bに印加される圧力によって、伸長方向Eとも称される後退方向Rと反対の第2の方向に移動できる。ピストン部材9の伸長方向の移動は、接続部材5に対して伸長方向で加えられる力によっても可能である。
【0021】
ピストン部材9は、円柱フランジ部分9aと、後退方向で見て直径が増大する部分9bとを有する。ピストン部材は、ピストン部材のフランジ部9aに配置されるOリング等の封止手段によってシンリンダ7の内壁面27と封止関係を成している。この実施形態では、フランジ部分9aに外周溝19が形成され、該外周溝19はOリング封止21を受ける。フランジ部分9aの外径は、ピストン部材9がシリンダ7に沿って摺動できるようにするためにシリンダ7の内径よりも僅かに小さい。封止手段21は、ピストン部材のフランジ部分9aと内側円筒壁との間の気密嵌合を確保する。
【0022】
ロック手段は、ピストン部材部分9bの表面25と、シリンダ7の内壁面27と、ロック本体とを備える。この実施形態において、ロック本体は、部分9bとシリンダの内壁面25との間の空間内に配置される複数のロッキングボール29から形成される。あるいは、ロック本体がリング形状要素であってもよい。
【0023】
保持手段11は、この実施形態では変形可能なスリーブ31である保持要素を備える。スリーブ31の一端31aは、接続部材5にロックされる要素33に接続される。したがって、スリーブ31は、接続部材5が移動されるときにスリーブが移動されるような態様で配置される。変形可能なスリーブ31の部位31bは、部分9bと内側円筒壁との間に形成される空間内に配置されるとともに、ロック本体29と接触する。部位31bは、ロッキングボール29と接触するストッパ面32を有する(図2a参照)。要素33は、インレット17を要素33によって覆うことができないような態様で配置される。
【0024】
図2aに示される状態では、スリーブ31は、シリンダ7の方向とは無関係に、ロッキングボール29がピストン部材9に対して軸方向に移動されるのを防止する。したがって、スリーブ31は、シリンダ7が水平に向けられる場合であってもピストン部材部分9bと内側円筒壁との間でボール29がくさび留めされないようにする。つまり、スリーブ31は、変形されない限り、シリンダ7の軸方向で見て、ピストン部材9がロックされないような態様でピストン部材部分9bに対するロック本体29の位置を制御するようになっている。保持要素のこの形態は、ボール29の動きがスリーブ31の表面32によって制限されることからノイズを減らすことができるという利点を有する(図2a参照)。
【0025】
このように、ロック本体29の動きが保持要素31によって制限されるため、例えば車両の通常の運転状態中にノイズ低減を達成できる。また、プリテンショナ装置1は、ロック本体29がくさび留めされるおそれを伴わなければ任意の方向に装着されてもよい。
【0026】
前述したように、ピストン部材9、したがって接続部材5は、ガスインレット15を通じてシリンダ部13aに印加される圧力に応じて後退位置へと軸方向に移動させることができる。インレット15は2つの異なるガス源に接続されるのが好ましい。この実施形態では、ガスインレット15は、圧縮空気を収容する第1のガス源(図示せず)と、当該技術分野において知られる種類の火工用ガス発生器の形態を成す第2のガス源(図示せず)とに対して接続される。それにより、プリテンショナ装置1は2つのプレテンション動作モードで動作できる。第1の動作モードは衝突前動作モードに対応し、また、第2の動作モードは衝突中動作モードに対応する。第1のプレテンション動作モードでは、第1のガス源から供給される圧縮空気によって圧力がシリンダチャンバ部分13aに印加される。第2のプレテンション動作モードでは、火工用ガス発生器から供給されるガスによって圧力がシリンダチャンバ部分13aに印加される。このように、第1および第2の動作モードのいずれにおいても、圧力がインレット15を通じて印加される。あるいは、シリンダ7には、チャンバ部分13aへのガス供給のための更なるガスインレットが設けられてもよい。このとき、チャンバ部分13aへのガス供給のための2つの別個のガスインレットが第1および第2のガス源にそれぞれ接続されてもよい。
【0027】
接続部材5は、ピストン部材9が移動されるときに接続部材5が移動されるような態様およびその逆の態様でピストン部材9に接続される。接続部材5は、図1に示されるようなシートベルトバックル3などの自動車安全システムの一部に接続できる。したがって、ピストン部材9の後退方向の移動が、シートベルトバックル移動によるシートベルト装置のプレテンション付与に対応してもよい。
【0028】
第2のガスインレット17は、伸長方向Eのピストン部材移動のための、例えばプリテンショナ装置をリセットする及び/又はシートベルトバックルを差し出すための圧縮空気を収容するガス源に接続される。言うまでもなく、このためには接続部材が特定の剛性を有する必要がある。つまり、プリテンショナ装置1は、差し出しモードとも称される第3の動作モードを有する。差し出しモードでは、伸長方向でのシートベルトバックル3の移動により、シートベルトバックル3が車両搭乗者に更にアクセスしやすくなる。言うまでもなく、第3の動作モードは、ピストン部材9を後退位置からリセットするために利用されてもよい。
【0029】
予期される衝突を示す衝突前センサなどのセンサからのトリガ信号に基づいて、第1のガス源、すなわち、空気圧ガス源から供給されるガスによって、圧力が第1のチャンバ部分13aに印加される。空気圧源からチャンバ13aに印加される圧力に起因して、ピストン部材9が後退位置へ移動される。
【0030】
衝突が起こることを示す衝突中センサなどのセンサからのトリガ信号に基づいて、第2のガス源、すなわち、火工用ガス発生器から供給されるガスによって、圧力が第1のチャンバ部分13aに印加される。火工用ガス発生器からチャンバ部分13aに印加される圧力に起因して、ピストン部材9が後退位置へ移動される。
【0031】
このように、トリガ信号の実際のタイプに応じて、プリテンショナ装置1は、第1の動作モードまたは第2の動作モードで動作される。
【0032】
図2bでは、プリテンショナ装置1のピストン部材9が後退位置へ移動されてしまっている。ピストン部材がトリガ信号を受けるときに衝突が起こらない場合或いはほんの軽い衝突しか起こらない場合には、ピストン部材9は、圧力が第1のチャンバ部分13aからインレット15を通じて引き出されると同時に、インレット17を通じて第2のチャンバ13bに印加される圧力によって戻されてもよい。あるいは、搭乗者は、ガスがインレット15を通じて引き出されると同時に、接続部材5が接続される自動車安全装置の一部を手で引っ張ることができる。
【0033】
他方で、衝突が起こる場合には、ピストン部材を後退位置でロックすることが望ましい。衝突時、接続部材5はシートベルトバックル3を介して加速度に晒される。プリテンショナ装置1のロック手段は、接続部材5が後退方向と反対の方向、すなわち、引き出し方向の所定のレベルを超える加速度に晒されると、ピストン部材9をロックするようになっている。この実施形態では、所定の値が約1.5gである。
【0034】
図2cを参照して、後退位置でのピストン部材9のロックについて説明する。1.5gを超える引き出し方向の加速度aに晒されると、スリーブ31が接続部材5を介してロック本体29に押し付けられる。ロック本体29の質量慣性に起因して、ロック本体がピストン部材9に対して移動される。その結果、スリーブ31が変形される。スリーブの変形後、該スリーブは、ロック本体29が円筒内壁と部分9bの表面25との間でくさび留めされるのをもはや防止しない。つまり、スリーブ変形は、ロック本体29をくさび留めできるようにし、それにより、ピストン部材9を後退位置でロックできるようにする。このとき、ピストン部材9は引き出し方向Eの移動が防止される。図2cは、ピストン部材9が後退位置でロックされるときのプリテンショナ装置1を示している。
【0035】
例えば衝突前制動事象中に不適切にロックされることを回避するため、スリーブ31は、接続部材5がこの場合には約1.5gである所定のレベルを超えない加速度に晒されるときに変形しないようになっている。したがって、スリーブ31の特性は、どの加速度レベルでピストン部材9がロックされるのかを決定する。
【0036】
ピストン部材9は、接続部材5が後退方向と反対の方向の特定の力であって所定の保持力を超える力に晒されさえすればロックされる。加速度aが所定のレベルを下回り且つ力Fが保持力を下回るときには、接続部材は、ピストン部材を初期位置にリセットするために伸長方向に再び移動できてもよい。保持力は、部分9bの形状やロック手段を形成する構成要素の材料などの要因によって決定される。
【0037】
前述したように、スリーブ31の変形を引き起こすためには、接続部材が少なくともこの場合には1.5gである引き出し方向Eの所定の加速度に晒される必要がある。スリーブ31は、変形されると、ロック本体29が円筒内壁と部分9bの表面25との間でくさび留めされることをもはや防止せず、ピストン部材9を後退位置でロックさせることができる。ピストン部材9は、ロックされる前に、伸長方向Eに僅かな移動を行ない、この移動は、スリーブの伸長方向の圧縮に対応する。この最初の伸長方向での僅かな移動の後、ロッキングボール29が部分9bと内側円筒壁との間でくさび留めされ、その結果、図2cに示されるようにピストン部材9が後退位置でロックされる。すなわち、接続部材5の更なる移動が防止される。
【0038】
前述したように、接続装置5は、この場合にはシートベルトシステムのシートベルトバックル3に接続される。したがって、図2cに示されるように、ピストン部材9のロックを引き起こす加速度は、衝突状況においてシートベルトにより拘束される車両搭乗者によって生じる。
【0039】
なお、チャンバ13a内の圧力は、ピストン部材9が後退位置から伸長方向に移動されることをある程度まで防止する。圧力は、例えば、衝突前制動事象中に後退位置からの移動を防止するのに十分である。しかしながら、圧力は、衝突時にピストン部材9を後退位置にロックするのに十分ではない。
【0040】
本発明の第2の実施形態に係るプリテンショナ装置101を図3aに示す。第1の実施形態に開示されるほぼ全ての特徴が、同様の或いは同じ特徴を特定する参照符号を伴って第2の実施形態にも存在する。この言及に関して、記述は、異なる特徴を説明することに焦点を合わせる。プリテンショナ装置101は、この実施形態の保持手段が変形できない保持要素131とスプリング35の形態を成す弾性要素とを備えているという点で異なっている。この実施形態において、スリーブ131はその変形を回避するために補強される。変形不可能なスリーブ131は、スリーブとピストン部材9との間の相対的な移動を可能にするために接続部材5に対して摺動可能に配置される。スプリング35がピストン部材9とスリーブ131の一部131aとの間に配置され、それにより、スプリング要素35のスプリング力に起因してスリーブ131が要素33に押し付けられる。スリーブ131のためのストッパ要素を形成する要素33は接続部材5にロックされる。スリーブ131には、封止手段を受けるための外周溝37が設けられる。この場合、スリーブ131と内側円筒壁との間の気密嵌合を形成するために、溝37内にOリング39が受けられる。スリーブ131と接続部材5との間で気密嵌合を行なうために、更なるOリング41がスリーブ131に配置される。プリテンショナ装置101にはチャンネル43が更に設けられ、このチャンネルを通じてガスを第2のチャンバ部分13bから第1のチャンバ部分13aへと排出できる。
【0041】
この実施形態では、搭乗者がシートベルトバックル3を引っ張ることによってピストン部材9を後退位置から戻すことができない。この場合、ピストン部材は、圧力が第1のチャンバ部分13aから引き出されると同時に第2のチャンバ部分13bに印加される圧力によってのみ後退位置から戻すことができる。そのような圧力はスリーブ131をロッキングボール29に接触させ、それにより、接続部材5が伸長方向に移動されるときにロッキングボールがくさび留めされるのが防止される。このように、ピストン部材9の伸長方向の移動前に、ボールがくさび留めされないようにスリーブ131が伸長方向に移動される必要がある。スリーブの伸長方向の移動中に弾性要素が圧縮される。
【0042】
図3bは、チャンバ部分13bに印加される圧力によって引き起こされる伸長方向でのピストン部材移動の最中におけるプリテンショナ装置1を示している。スプリング35が圧縮されると、保持要素131はボール29がくさび留めされるのを防止する。すなわち、ピストン部材9の伸長方向Eの移動が許容される。したがって、この実施形態において、保持要素131は、ピストン部材の伸長方向の移動が可能になる前に、それがロック本体29を保持する位置へと移動される必要がある。
【0043】
衝突が起こる場合、接続部材5は、図3cに示されるように、ロック手段にピストン部材を後退位置でロックさせる加速度aに晒される。保持手段13は変形されない。
【0044】
請求項に規定される本発明の概念から逸脱することなく本発明の前述した実施形態を当業者によって修正して変更できることは言うまでもない。
【0045】
例えば、ロック本体がリングである別の実施形態では、保持要素が、円形プレートと該プレートから延びる多数の脚とを備える要素から形成されてもよく、脚は、部分9bと内側円筒壁との間に形成される空間内に配置され、したがって、所定の加速度レベル未満の加速度においてロック本体がくさび留めされるようになるのが抑制される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダチャンバ(13)内に配置され、インレット(15)を通じて前記シリンダチャンバ(13)の第1の部分(13a)に印加される圧力によって後退方向に移動できるピストン部材(9)と;ピストン部材(9)に接続され、自動車安全装置の部品(3)に接続でき、自動車安全装置にプレテンションを付与する接続部材(5)と;ピストン部材(9)をロックするためのロック手段(25、27、29)と;を備える、自動車安全装置で用いるプリテンショナ装置(1)において、
前記ロック手段(25、27、29)は、ピストン部材(9)が前記後退方向と反対方向への所定の加速度レベルを超える加速度に晒されるときにピストン部材(9)をロックするように構成され、
ピストン部材(9)が前記後退方向と反対方向への前記所定の加速度レベル未満の加速度に晒されるときに前記ピストン部材(9)がロックされるのを防止するために保持手段(11)がシリンダチャンバ(13)内に配置されることを特徴とする、プリテンショナ装置(1)。
【請求項2】
前記所定のレベルが約0.8gである、請求項1に記載のプリテンショナ装置(1)。
【請求項3】
ロック手段(25、27、29)は、前記後退方向で見て直径が増大するピストン部材部分(9b)と、シリンダ(7)の内壁面(27)と、ピストン部材(9)が前記後退方向と反対の方向の前記所定の加速度レベル未満の加速度に晒されるときにくさび留めされるようにピストン部材部分(9b)とシリンダ(7)の内壁面(25)との間に配置されるロック本体(29)とを備える、請求項1または2に記載のプリテンショナ装置(1)。
【請求項4】
前記ロック本体(29)が複数のボールから形成される、請求項3に記載のプリテンショナ装置(1)。
【請求項5】
保持手段(11)は、ピストン部材(9)が前記後退方向と反対の方向の所定の加速度レベル未満の加速度に晒されるときに前記ロック本体(29)がピストン部材部分(9b)と内壁面(27)との間にくさび留めされるのを防止するために接続部材(5)に配置される保持要素(31、131)を備える、請求項3または4に記載のプリテンショナ装置(1)。
【請求項6】
前記保持要素(31)は、ピストン部材(9)が前記後退方向と反対の方向の所定の加速度レベルを超える加速度に晒されるときに変形するように構成され、それにより、前記ロック本体(29)をピストン部材部分(9b)と内壁面(27)との間にくさび留めできる、請求項5に記載のプリテンショナ装置(1)。
【請求項7】
前記保持要素(31)が前記ピストン部材(9)に摺動可能に配置され、保持要素(31)の前記後退方向の移動が接続部材(5)に配置されるストッパ要素(33)によって制限され、前記保持手段は、保持要素(31)とピストン部材(9)との間に配置される弾性要素(35)を更に備え、弾性要素(35)の作用によって保持要素(31)がストッパ要素(33)に押し付けられる、請求項5に記載のプリテンショナ装置(1)。
【請求項8】
ピストン部材(9)は、第1の動作モードでは、前記インレット(15)を介して圧縮ガス源から第1のチャンバ部分(13a)に供給される圧力によって後退方向に移動できる、請求項1〜7のいずれか一項に記載のプリテンショナ装置(1)。
【請求項9】
ピストン部材(9)は、第2の動作モードでは、前記インレット(15)を介して火工用ガス発生器から第1のチャンバ部分(13a)に供給される圧力によって後退方向に移動できる、請求項1〜8のいずれか一項に記載のプリテンショナ装置(1)。
【請求項10】
ピストン部材(9)は、第3の動作モードでは、第2のインレット(17)を介して圧縮ガス源から第2のチャンバ部分(13b)に供給される加圧ガスによって前記後退方向と反対の方向に移動できる、請求項1〜9のいずれか一項に記載のプリテンショナ装置(1)。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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