説明

プリプレグ欠点検査方法、検査システム、およびプリプレグの製造方法

【課題】離型紙を用いてプリプレグを製造するに際し、プリプレグの離型紙が付着している側の欠点の位置や種類を特定し、検査時間の短縮や検査精度の向上を図ることができるプリプレグ欠点検査方法を提供すること。
【解決手段】離型紙に樹脂をコーティングした樹脂フィルムを、シート状に配列された炭素繊維束、または布状の炭素繊維の少なくとも片面に配置した後、該炭素繊維束中に樹脂を含浸させ、その後連続的に巻き上げてプリプレグを製造する工程に用いられる、プリプレグの離型紙側の欠点を検査する方法において、該少なくとも片面に配置される樹脂フィルムの繰出し部から樹脂含浸までの間に、該樹脂フィルム面に照射手段によって光を照射し、該樹脂フィルムからの反射光を受光手段により検出し、該受光手段により検出された反射光の信号と予め設定した閾値との比較によって樹脂フィルム面の欠点を検出、判定し、欠点をスジ欠点、異物欠点ならびに樹脂欠陥欠点に分類することを特徴とする、プリプレグ欠点検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、離型紙を用いてプリプレグを製造するに際し、離型紙側(裏面)の樹脂フィルム面の欠点を検出するプリプレグ欠点検査方法、プリプレグ裏面の欠点情報を次工程である検反工程に伝達するプリプレグ欠点検査システム、およびプリプレグ欠点検査方法ならびに検査システムを、その工程の一部とするプリプレグ製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、釣竿、ゴルフシャフト等のスポーツ・レジャー用・航空機・自動車・産業用機材等に強化繊維を用いた複合材料が数多く採用されている。これらの成形には強化繊維を引き揃えて熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグと呼ばれる成形材料を用い、それを多層積層した後硬化させている。これらの成形材料のうち、シート状のプリプレグや布状のプリプレグを生産する場合には、通常、熱硬化性樹脂と硬化剤及び必要に応じてコンポジット性能向上や粘度調整等の目的により熱可塑性樹脂を加えた樹脂混合物を離型紙上に一定量薄膜状に塗布した樹脂フィルムを作製する。そして、該樹脂フィルムの間に一定量の強化繊維を挟み込み、加熱および/または加圧により樹脂を強化繊維に含浸させている。
【0003】
強化繊維に樹脂を含浸させるプリプレグ製造工程では、樹脂の硬化物や離型紙の破片等が樹脂フィルムおよび/またはプリプレグに混入する「異物」や樹脂の転写不良等の欠点が発生する可能性があるが、これらを最小限とすることは、上述した複合材料の物性を左右する重要な要因である。これらプリプレグの欠点は、近年プリプレグの品質向上に対する要求が高まっていることから、それぞれの基準でばらつき無く区別して確実に検出し、修正するか製品から除外する必要に迫られている。
【0004】
また、これらプリプレグの欠点検出は、従来一般的に目視によってマニュアルで行われていたが、非常に集中力が要求される作業であるだけでなく、場合によっては欠点の判断に個人差が出る、見逃しを生じるなどの問題があった。近年、これらの問題の解決や省人化などを目的とした欠点検査自動化技術の導入が進んでおり、検査時間の短縮や検査精度の向上のため、種々の技術が提案されている。
【0005】
例えば、特許文献1には複数種類の欠点を区分して検出できるプリプレグの製造方法および装置が提案されている。この特許文献1による欠点検査方法はプリプレグに光を照射し、離型紙が剥離された後のプリプレグ上面の欠点検出を可能としている。しかしながら、この方法では、プリプレグ下側に離型紙が有る場合、その面に発生する欠点には原理的に対応できない。
【0006】
また、特許文献2にはプリプレグ製造工程における樹脂の転写状態を検査するプリプレグの製造装置と製造方法が提案されている。この特許文献2による樹脂転写状態検査方法は、離型紙上に塗布された樹脂が強化繊維に転写された後に剥離された離型紙上を検査することによってプリプレグ上面の樹脂転写状態を判定している。この方法では、樹脂の転写に関する状態が検出されるが、転写する前の樹脂フィルムに関する状態は直接検出することはできない。
【0007】
一方、樹脂混合物を離型紙に塗布する樹脂フィルム製造工程において、コーティングロール上で部分的に樹脂がなくなり、離型紙に樹脂がスジ状に欠落したり、離型紙上の樹脂が点状に欠落する等の塗布欠陥が発生する。これら樹脂の塗布欠陥は、それぞれスジ状のものを「スジ欠点」、点状のものを「樹脂欠陥欠点」などと呼ばれる。また、製造された樹脂フィルムを巻き上げるまでの間に、樹脂の硬化物、離型紙の破片等の「異物」が混入(「異物欠点」と呼ばれる)する可能性もある。これら樹脂フィルムの欠点は次工程であるプリプレグ製造工程で強化繊維に樹脂を転写させた後にも欠点となる可能性があるため、その寸法によって品種毎に欠点の基準が定められ、該基準に基づいて欠点の判定を行い、位置の記録もしくは修正もしくは製品から除外している。
【0008】
これらの欠点は、プリプレグの製造に用いられる樹脂フィルム製造工程、プリプレグ製造工程、検反工程が配列されたプリプレグ製造システムにおいて、樹脂フィルム製造工程で検出されることが知られている。
【0009】
例えば、特許文献3には樹脂フィルムの製造工程における、樹脂フィルム上の塗布欠陥を検出する樹脂フィルムの製造装置および製造方法が提案されている。この特許文献3による欠点検査方法は、樹脂フィルム製造工程において樹脂フィルム面上の塗布欠陥を検出している。
【0010】
しかしながら、樹脂フィルムの製造工程において、巻き上げ前に欠点検出したとしても、次のプリプレグ製造工程に提供するまでの経時変化や、フィルム巻き上げ工程の欠点検出以降巻き上げに至る間や、プリプレグ製造工程のフィルム解舒時に発生する異物等の欠点には原理的に対処できない問題があった。
【0011】
従来から、プリプレグの製造をホットメルト方式で行う場合、プリプレグの裏面には離型紙があるため、欠点の検出には、わざわざ離型紙を剥離して検査を行い、再度客先に出荷するため離型紙を付着させるが、これらの操作によってかえって欠点が増える可能性があり、不十分ながら表面からの検査に頼ることがあった。このため、裏面に生じた欠点は、場合によっては製品を使用するときに初めて検出されることがあり、改良が必要であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開平9−225939号公報
【特許文献2】特開平9−150416号公報
【特許文献3】特開平9−136323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、上記背景技術の問題点に鑑み、離型紙を用いてプリプレグを製造するに際し、検査時間の短縮や検査精度の向上を図ることができるプリプレグ欠点検査方法、特に、プリプレグの離型紙が付着している側の欠点の位置や種類を特定する方法、ならびに、かかる欠点の位置情報を後工程である検反工程に伝達するプリプレグ欠点検査システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係るプリプレグ欠点検査方法は、離型紙に樹脂をコーティングした樹脂フィルムを、シート状に配列された炭素繊維束、または布状の炭素繊維の少なくとも片面に配置した後、該炭素繊維束中に樹脂を含浸させ、その後連続的に巻き上げてプリプレグを製造する工程に用いられる、プリプレグの離型紙側の欠点を検査する方法において、該少なくとも片面に配置される樹脂フィルムの繰出し部から樹脂含浸までの間に、該樹脂フィルム面に照射手段によって光を照射し、該樹脂フィルムからの反射光を受光手段により検出し、該受光手段により検出された反射光の信号と予め設定した閾値との比較によって樹脂フィルム面の欠点を検出、判定し、欠点をスジ欠点、異物欠点ならびに樹脂欠陥欠点に分類することを特徴とする方法からなる。
【0015】
ここで、前記プリプレグを製造する工程には、含浸したプリプレグを離型紙とともに巻き取る工程が含まれており、前記樹脂フィルムの欠点検査を行った側の離型紙が前記含浸したプリプレグとともに巻き取られることが好ましく、さらに、前記プリプレグを製造する工程には、樹脂含浸を逐次2段以上で行う工程が含まれており、任意の樹脂フィルムの繰出し部から樹脂含浸までの間に、前記の方法で欠点検査が行われることが好ましい。
【0016】
上記欠点検査に用いられる閾値として、スジ欠点、異物欠点ならびに樹脂欠陥欠点の各々に対して予め、輝度、幅、長さ、および面積からなる群から選択される少なくともいずれかを設定し、反射光の信号と比較することによって欠点を分類することが好ましい。
【0017】
本発明に係るプリプレグ欠点検査方法は、検出された欠点位置を、マーキング装置にて下面離型紙の幅方向端部から所定の位置、より好ましくは幅方向端部から6〜21mmの位置にマーキングすることにより、プリプレグ欠点の種類、走行方向の位置を特定する方法であることが好ましい。
【0018】
また、前記照射手段が線状のブラックライトを光源としたものであって、該ブラックライトを、前記樹脂フィルムの走行方向に対して垂直に立てた面に対して面対称となり、かつ、該面と樹脂フィルム面からなる直線と平行になるように1対以上配し、該ブラックライトの入射角が40〜80°および100〜140°の範囲に各々1本以上設置することが好ましい。
【0019】
また、前記受光手段がCCDラインセンサカメラであって、該CCDラインセンサカメラを、前記樹脂フィルムの走行方向に対して垂直に立てた面から−5〜+5°の範囲に設置することが好ましく、さらに、前記CCDラインセンサカメラに紫外領域の光を除去する光学フィルターを備え付けることが好ましい。
【0020】
さらに本発明は、プリプレグ製造工程、および検反工程がこの順に配列されたプリプレグの製造システムに用いられる、プリプレグの離型紙側の欠点を検査するシステムにおいて、前記の方法によって、前記プリプレグの製造工程で検出された離型紙側欠点の位置情報と種類情報を検反工程に伝達し、検反工程における仕掛け情報を用いて演算することによって、検反工程における欠点位置を特定し、プリプレグの製造工程で検出された欠点が検反工程に現れる時にアラームを発生させる、および/または、速度を低下させる手段で欠点の確認を可能とするとともに、前記プリプレグの製造工程で検出された位置情報と種類情報と、検反工程で確認された欠点情報とを統合した欠点情報を検査結果として出力するプリプレグ欠点検査システムに用いることが好ましく、前記欠点の確認が行われた後に、予め設定された製品の処置基準に従いスプライスの処置、またはタグの貼付を行う工程を含むことも好ましい。
【0021】
本発明に係るプリプレグの製造方法は、前記プリプレグ欠点検査方法、またはプリプレグ欠点検査システムを、その工程の一部に含んでいることが好ましい。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、プリプレグを製造するに際し、炭素繊維に樹脂を含浸させる工程等で、プリプレグの離型紙側の樹脂フィルムに起因する欠点部分を確実に、各欠点基準に基づいた客観的な判定により自動的に検出し、欠点位置を正確に把握することができるため、検査時間の短縮のみならず、製品の品質が格段に向上する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明のプリプレグ欠点検査方法に用いられる欠点検査装置を備えた好ましいプリプレグ製造装置の構成図である。
【図2】図1に示したプリプレグ欠点検査方法に用いられる欠点検査装置の好ましい構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明の望ましい実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係るプリプレグ欠点検査方法に用いる装置を備えた好ましいプリプレグ製造装置の構成を示している。本実施形態では、離型紙に樹脂をコーティングした樹脂フィルムによってシート状に配列された炭素繊維束もしくは布状の炭素繊維を上下面から挟み込むか、または上面を離型紙または樹脂フィルム、下面を樹脂フィルムで挟み込み、その挟持状態を維持しながら加熱、加圧し、該炭素繊維束中に樹脂を含浸させた後、上面の離型紙のみを剥離し、連続的に巻き上げてプリプレグを製造する工程に、本発明に係るプリプレグ欠点検査方法が用いられており、より具体的には、下側樹脂フィルム繰出し面1に欠点検査装置2が設置され、下側樹脂フィルム繰出し面1の表面上の欠点を検出し、好ましくはプリプレグ3を巻き取るワインダー4の手前の位置にマーキング装置5が設置され、該検査装置で検出された欠点の時間方向位置を、該マーキング装置5でマーキングすることによりプリプレグ裏面の欠点位置を特定することができる。
【0026】
すなわち、本発明に係るプリプレグ欠点検査方法は、含浸したプリプレグを離型紙とともに巻き取る工程を備え、樹脂フィルムの欠点検査を行った側の離型紙が含浸したプリプレグとともに巻き取られる工程が含まれているプリプレグの製造工程に用いられていても良く、樹脂含浸を逐次2段以上で行う工程を備えているプリプレグの製造工程に用いられていても良い。この場合、プリプレグの欠点検査が、いずれの樹脂フィルムの繰出し部から樹脂含浸までの間で行われていれば良い。
【0027】
ここで、マーキング色や形状により欠点の種類を特定しても良い。ここでマーキングを行う部分は、プリプレグ下面の離型紙の端部から所定の位置であることが好ましく、その所定の位置が6〜21mmの位置であることがより好ましい。下限を6mmにすることによって離型紙外へのマーキングミスを防ぎやすく、上限を21mmにすることによってプリプレグ上への誤マーキングを防ぐことができる。マーキング装置は離型紙にマーキングできるものであれば特に限定されないが、ペン式を用いることが好ましい。
【0028】
マーキングの種類は、連続的に発生する場合は終了点のプリプレグ端の離型紙部分(耳部)にマーキングし、スポット的に発生する場合は、発生点のプリプレグ端の離型紙部分(耳部)にマーキングを行うことが好ましい。さらに、連続的に発生した欠点とスポット的に発生した欠点を区別するために、マーキングの長さを変えることが好ましい。連続的に発生する場合は、欠点長全体にマーキングすることも可能である。
【0029】
ワインダー4で巻き取られた製品のプリプレグは、離型紙側の欠点の位置情報、および好ましくは該欠点の種類情報とともに、プリプレグの製造工程の後工程である検反工程に伝達され、検反を実施する際に、欠点の位置情報からプリプレグの製造工程で検出された欠点(マーキングを行う場合は、マーキング部)が検反工程に現れる位置を演算して、この位置が検反工程に現れる時にアラーム6を発生させる、および/または、速度を低下させるなどの手段で欠点の確認を可能とする。そして、最終製品であるプリプレグに巻き上げる際には、製品の品種に固有の処置基準に基づいて、欠点部分を切り取るスプライス処理をしたり、プリプレグ端の離型紙部分(耳部)にタグを貼り付けたりすることなどで、プリプレグ裏面の欠点位置を正確に把握できるようになる。
【0030】
なお、検出された欠点情報について、最終的に出力される検査結果は、プリプレグ製造工程で検出された欠点情報(すなわち、上記位置情報、または位置情報および種類情報)と検反工程で確認された欠点情報とを統合したものを用いることが好ましい。
【0031】
このようにして、プリプレグの製造工程、および検反工程がこの順に配列されたプリプレグの製造システムにも本発明に係るプリプレグ欠点検査方法が好適に用いられ、プリプレグの製造システムに適したプリプレグ欠点検査システムを構築することができる。
【0032】
図2は、前記欠点検査装置1の好ましい構成を示したものである。本発明に係るプリプレグの欠点検査方法に用いる欠点検査装置は、樹脂フィルムに光を照射する照光手段と、樹脂フィルムからの反射光を検出する受光手段と、該受光手段により検出された反射光の信号と予め設定した閾値との比較により樹脂フィルム面欠点を検出、判定する欠点判定手段とを有するものである。なお、ここで説明される「反射光」とは、照光手段によって樹脂フィルムに照射された光の反射光そのもの、および照射された光によって新たに励起発光された光の少なくとも一方を含む光を意味する。
【0033】
かかる欠点判定手段は、製品の品種別に予め輝度、幅、長さ、面積などの閾値が設定される信号処理手段と、欠点の有無、およびその種類、位置ないしレベルについて、前記受光手段のスキャン方向の信号を時間軸方向に対して演算して判定する手段とからなることが好ましい。なお、ここで説明される欠点の種類には、樹脂の塗布欠陥のうち、離型紙に樹脂がスジ状に欠落した「スジ欠点」、点状に欠落した「樹脂欠陥欠点」、また、樹脂の硬化物、離型紙の破片等の異物の混入による「異物欠点」などが挙げられ、本発明では、例えば前記信号処理手段により、これらが分類されるように設計される。
【0034】
欠点検査装置2は、所定の速度で図の右方向に進行する樹脂フィルムの表面に対向する位置に、受光手段であるカメラ7が設置され、樹脂フィルム表面からの反射光を検出している。ここでカメラ7は、樹脂フィルムからの反射光を検出して、検出した反射光のレベルに応じた信号を発することができるセンサを備えたものであれば特に限定されず、代表的なものとしてCCDラインセンサカメラを使用できる。カメラ7は、樹脂フィルムの走行方向に対して垂直に立てた面から−5〜+5°の範囲に設置することが好ましい。一般的に紫外線領域の光は樹脂、特にプリプレグによく使用される130℃硬化や180℃硬化タイプのエポキシ樹脂に吸収されやすく、紫外光吸収により紫外光よりも長波長の励起発光をすることが知られている。この性質を利用して、離型紙上に樹脂を塗布した樹脂フィルムに紫外線を照射し、その反射光量を観測すると、塗布正常部分に対して塗布が不良および/または異物が付着している欠陥部分では励起発光量が低下する。このため塗布正常部分と欠陥部分では励起発光量に差が生じることから、この励起発光量を観測し、その出力差を検出することで樹脂塗布面の正常部分と欠陥部分とを判断することが可能である。また、樹脂フィルム面からの反射光の内、励起発光を強調させるために、光学フィルター8を備え付けることが好ましい。ここで、光学フィルターは紫外光波長をカットするために、300〜400nmの光をカットするものが好ましい。
【0035】
前記樹脂として、蛍光を発する添加剤を含んだエポキシ樹脂組成物が好ましく、中でも芳香族アミン系硬化剤を用いるエポキシ樹脂や、6員環を有するエポキシ樹脂を含んだ樹脂組成物がさらに好ましい。
【0036】
また、樹脂フィルムに向けて光を照射する照光手段としての光源9には、紫外光を発するものであれば特に限定されないが、線状のブラックライトを用いることが好ましく、該ブラックライトは樹脂フィルム面に対して垂直でかつ樹脂フィルムの走行方向に対して垂直に立てた面に対して面対称となるように1対以上を、樹脂フィルム幅全体を照射するように設置し、入射角が40〜80°および100〜140°の範囲に各々1本以上設置することが好ましい。入射角を樹脂フィルム面に対して40°以上とすることによって、光源出力が弱い場合においても反射光の光量を保持できるので好ましい。また角度が90°に近いほど、反射光は強くなるが、機械設置の関係上80°以下が好ましい。
【0037】
前記閾値の決定方法としては、例えば、まず基準となる欠点のサンプルを検査装置で読込み、該サンプルに対する輝度、幅、長さ、面積などの値から閾値を設定して、実工程で合わせ込みを行って決定すると良い。具体的には、まず離型紙の種類、樹脂の種類、樹脂目付、などの品種特定の情報によって輝度の閾値を決定する。次に幅と長さの情報からスジ状の欠点(上記「スジ欠点」に相当する)とその他欠点を区分し、面積情報を用いてその他欠点から、異物(上記「異物欠点」に相当する)と樹脂欠陥(上記「樹脂欠陥欠点」に相当する)を分けることで閾値を決定すると良い。
【0038】
また、本発明に係るプリプレグの欠点検査方法は、上述のとおり、プリプレグ製造工程において、プリプレグを離型紙とともに巻き取るに際して、欠点を検査する樹脂フィルムが、巻き取られる離型紙側に配されたものであることが好ましく、さらに、樹脂含浸を逐次2段以上で行うプリプレグ製造工程において、任意の樹脂フィルムの繰り出し部から樹脂含浸までの間に欠点検査を行うことが好ましい。とくに、2段で樹脂含浸を行う場合にあっては、1段目の含浸に用いられる樹脂フィルムの片側面または両側面、ないし、2段目の含浸に用いられる樹脂フィルムであって、含浸後も離型紙がプリプレグから巻き取られず、プリプレグとともに製品として巻き取られる側の樹脂フィルムのいずれか1以上に適用することが好ましい。
【0039】
本発明に係るプリプレグの欠点検査方法は、プリプレグ製造工程において、樹脂含浸後にプリプレグ表面上の欠点を検出する検査装置と、その前工程である樹脂フィルム製造工程において、樹脂フィルム面上の欠点を検出する検査装置と組み合わせて使用することが好ましい。
【0040】
以上のようなプリプレグ欠点検査方法、ないしプリプレグ欠点検査システムは、その工程の一部とするプリプレグの製造方法に用いることができる。かかる方法を用いて得られるプリプレグの幅には、特に制限がないが、500〜2000mmが好ましく、600mm以上であると、検査員による欠点検出に比較して、正確性に優れている。
【0041】
本発明に係るプリプレグ欠点検査方法、ないしプリプレグ欠点検査システムを用いて得られたプリプレグは、欠点検査に要する時間が短縮されるのみならず、製品の品質が格段に向上するため、釣竿、ゴルフシャフト等のスポーツ・レジャー用、航空機・自動車・風車を始めとした産業用等に好適に使用される。
【符号の説明】
【0042】
1 下側樹脂フィルム繰出し面
2 欠点検査装置
3 プリプレグ
4 ワインダー
5 マーキング装置
6 アラーム
7 カメラ
8 光学フィルター
9 光源

【特許請求の範囲】
【請求項1】
離型紙に樹脂をコーティングした樹脂フィルムを、シート状に配列された炭素繊維束、または布状の炭素繊維の少なくとも片面に配置した後、該炭素繊維束中に樹脂を含浸させ、その後連続的に巻き上げてプリプレグを製造する工程に用いられる、プリプレグの離型紙側の欠点を検査する方法において、該少なくとも片面に配置される樹脂フィルムの繰出し部から樹脂含浸までの間に、該樹脂フィルム面に照射手段によって光を照射し、該樹脂フィルムからの反射光を受光手段により検出し、該受光手段により検出された反射光の信号と予め設定した閾値との比較によって樹脂フィルム面の欠点を検出、判定し、欠点をスジ欠点、異物欠点ならびに樹脂欠陥欠点に分類することを特徴とする、プリプレグ欠点検査方法。
【請求項2】
前記プリプレグを製造する工程には、含浸したプリプレグを離型紙とともに巻き取る工程が含まれており、前記樹脂フィルムの欠点検査を行った側の離型紙が前記含浸したプリプレグとともに巻き取られる、請求項1のプリプレグ欠点検査方法。
【請求項3】
前記プリプレグを製造する工程には、樹脂含浸を逐次2段以上で行う工程が含まれており、任意の樹脂フィルムの繰出し部から樹脂含浸までの間に、請求項1または2に記載の方法で欠点検査が行われる、プリプレグの離型紙側欠点検査方法。
【請求項4】
スジ欠点、異物欠点ならびに樹脂欠陥欠点の各々に対して予め、輝度、幅、長さ、および面積からなる群から選択される少なくともいずれかの閾値を設定し、反射光の信号と比較することによって欠点を分類する、請求項1〜3のいずれかに記載のプリプレグ欠点検査方法。
【請求項5】
検出された欠点位置を、マーキング装置にて下面離型紙の幅方向の端部から所定の位置にマーキングすることにより、プリプレグ欠点の種類、走行方向の位置を特定する、請求項1〜4のいずれかに記載のプリプレグ欠点検査方法。
【請求項6】
前記照射手段が線状のブラックライトを光源としたものであって、該ブラックライトを、前記樹脂フィルムの走行方向に対して垂直に立てた面に対して面対称となり、かつ、該面と樹脂フィルム面からなる直線と平行になるように1対以上配し、該ブラックライトの入射角が40〜80°および100〜140°の範囲に各々1本以上設置する、請求項1〜5のいずれかに記載のプリプレグ欠点検査方法。
【請求項7】
前記受光手段がCCDラインセンサカメラであって、該CCDラインセンサカメラを、前記樹脂フィルムの走行方向に対して垂直に立てた面から−5〜+5°の範囲に設置する、請求項1〜6のいずれかに記載のプリプレグ欠点検査方法。
【請求項8】
前記CCDラインセンサカメラに紫外領域の光を除去する光学フィルターを備え付けた、請求項1〜7のいずれかに記載のプリプレグ欠点検査方法。
【請求項9】
プリプレグの製造工程、および検反工程がこの順に配列されたプリプレグの製造システムに用いられる、プリプレグの離型紙側の欠点を検査するシステムにおいて、請求項1〜8のいずれかに記載の方法によって、前記プリプレグの製造工程で検出された離型紙側の欠点の位置情報を、または該欠点の位置情報および種類情報をともに検反工程に伝達し、検反工程における仕掛け情報を用いて演算することによって、検反工程における欠点位置を特定し、プリプレグの製造工程で検出された欠点が検反工程に現れる時にアラームを発生させる、および/または、速度を低下させる手段で欠点の確認を可能とするとともに、前記プリプレグの製造工程で検出された位置情報、または位置情報および種類情報と、検反工程で確認された欠点情報とを統合した欠点情報を検査結果として出力することを特徴とするプリプレグ欠点検査システム。
【請求項10】
前記欠点の確認が行われた後に、予め設定された製品の処置基準に従いスプライスの処置、またはタグの貼付を行う工程を含む、請求項9に記載のプリプレグ欠点検査システム。
【請求項11】
請求項1〜8のいずれかに記載のプリプレグ欠点検査方法、または請求項9または10に記載のプリプレグ欠点検査システムが、その工程の一部に含まれているプリプレグの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−184929(P2012−184929A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46197(P2011−46197)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】