プリンタおよびプリンタシステム
【課題】印刷する情報を選びやすくしたプリンタを提供する。
【解決手段】プリンタ10は、情報を印刷する印刷ユニット120と、複数の情報の光学像を投影する投射ユニット220と、投射ユニット220による複数の光学像の投影中に印刷対象情報を指示する信号を受け、当該信号が指示する情報を印刷ユニット120に印刷させる制御手段101とを備える。
【解決手段】プリンタ10は、情報を印刷する印刷ユニット120と、複数の情報の光学像を投影する投射ユニット220と、投射ユニット220による複数の光学像の投影中に印刷対象情報を指示する信号を受け、当該信号が指示する情報を印刷ユニット120に印刷させる制御手段101とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷紙に画像などを印刷するプリンタが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−192600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パソコンやプリンタのモニタに表示した複数の情報から印刷する情報を選択して印刷する場合、表示される個々の情報が小さいので、印刷する情報を選びにくいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明によるプリンタは、情報を印刷する印刷ユニットと、複数の情報の光学像を投影する投射ユニットと、投射ユニットによる複数の光学像の投影中に印刷対象情報を指示する信号を受け、当該信号が指示する情報を印刷ユニットに印刷させる制御手段とを備えることを特徴とする。
(2)請求項1に記載のプリンタにおいて、複数の情報は画像データであり、投射ユニットは、複数の画像データを用いてそれぞれ再生した複数の光学像を並べて投影することが好ましい。
(3)請求項1に記載のプリンタにおいて、複数の情報は画像データであり、投射ユニットは、複数の画像データを用いてそれぞれ再生した複数の光学像を順に投影することが好ましい。
(4)請求項2または3に記載のプリンタはさらに、複数の画像データを蓄積する画像蓄積手段を備えてもよい。この場合の投射ユニットは、画像蓄積手段に蓄積されている画像データから再生した複数の光学像を投影することが好ましい。
(5)請求項4に記載のプリンタにおいて、画像蓄積手段は、印刷ユニットが印刷した画像データを蓄積することが好ましい。
(6)請求項1〜5のいずれか一項に記載のプリンタはさらに、印刷対象を指示する信号を発する操作部材を備えてもよい。この場合の制御手段は、操作部材からの信号を受けて印刷ユニットに情報を印刷させることが好ましい。
(7)請求項1〜5のいずれか一項に記載のプリンタにおいて、制御手段は、外部機器からの信号を受けて印刷ユニットに情報を印刷させることが好ましい。
(8)請求項1〜5のいずれか一項に記載のプリンタはさらに、撮像して画像信号を出力する撮像素子と、画像信号の変化を検出する画像変化検出手段と、画像信号の変化が検出された領域に応じて印刷対象情報を指示する信号を発する印刷対象指示手段とを備えてもよい。この場合の制御手段は、印刷対象指示手段からの信号を受けて印刷ユニットに情報を印刷させることが好ましい。
(9)請求項8に記載のプリンタにおいて、撮像素子は、投射ユニットが投影中の複数の光学像を撮像することが好ましい。
(10)本発明によるプリンタシステムは、撮像した画像信号を送信する電子カメラと、被印刷体に情報を印刷する印刷ユニット、複数の情報の光学像を投影する投射ユニット、電子カメラから送信された画像信号の変化を検出する画像変化検出手段、画像信号の変化が検出された領域に応じて印刷対象を指示する信号を発する印刷対象指示手段、および投射ユニットによる複数の光学像の投影中に印刷対象指示手段からの信号を受け、当該信号が示す情報を印刷ユニットに印刷させる制御手段を有するプリンタと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、印刷する情報を選びやすくしたプリンタ、プリンタシステムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
(第一の実施形態)
図1は、本発明の第一の実施形態によるプリンタを説明する図である。図1(a)および図1(b)において、プリンタ10は本体11と、カバー12と、出力紙トレイ13とを有する。本体11内には、プリンタユニット120が配設されている。カバー12は印刷紙14のトレイを兼用し、図1(a)に示す使用位置と図1(b)に示す収納位置との間で回動軸Oを中心に回動自在に構成される。
【0008】
図1(a)に示す使用位置において、カバー12にセットされた印刷紙14が不図示の給紙機構によって一枚ずつ下方へ送出され、プリンタユニット120へ給紙される。プリンタユニット120は印刷紙14に印刷し、印刷後の印刷紙14を出力紙トレイ13へ排出する。
【0009】
本体11にはプロジェクタ(投射ユニット220)も設けられている。図1(a)の使用位置において、投射ユニット220はカバー12にセットされている印刷紙14の上に光学像を投射するように構成される。印刷紙14がカバー12にセットされていない場合には、投射ユニット220がカバー12上に光学像を投射するため、カバー12の表面(投射面)は略白色に構成されている。
【0010】
投射ユニット220から画像が投射されるカバー12の面12aには、印刷紙14の大きさより僅かに小さな開口が形成されている。したがって投射ユニット220から射出された投射像は、印刷紙14に直接投射される。また、通常カバー12には複数の印刷紙14が収納されており、印刷が開始されると印刷紙14のうち面12aに一番近い印刷紙14が、印刷の進み具合に応じて徐々に本体11に引き込まれる。なお、カバー12に印刷紙14がなくなってしまった場合には、カバー12の面12aと対向する面12b上に投射像が投射される。なお、開口を設けずに投射像をカバー12の面12aに投射しても構わない。
【0011】
図2は、図1のプリンタ10の構成を説明するブロック図である。図2において、プリンタ10にはプリンタユニット120と、投射ユニット220と、CPU101と、メモリ102と、操作部材103と、外部インターフェイス(I/F)回路104と、液晶表示器105と、ハードディスクドライブ(HDD)106と、電源回路107とが備えられ、着脱可能なメモリカード150が実装される。
【0012】
CPU101は、制御プログラムに基づいて、プリンタ10を構成する各部から入力される信号を用いて所定の演算を行うなどして、プリンタ10の各部に対する制御信号を送出することにより、プリンタ10の印刷動作および投影動作をそれぞれ制御する。なお、制御プログラムはCPU101内の不図示の不揮発性メモリに格納される。
【0013】
メモリ102はCPU101の作業用メモリとして使用される。操作部材103は押下操作されたボタン、操作されたスイッチに対応する操作信号をCPU101へ送出する。メモリカード150は不揮発性メモリによって構成され、CPU101の指示によりデータの書き込み、保存および読み出しが可能である。
【0014】
外部インターフェイス回路104は、CPU101の指示により不図示のケーブルまたは無線通信ユニットを介して外部機器(電子カメラ100、パーソナルコンピュータなど)との間でコマンドおよびデータを送受信する。
【0015】
ハードディスクドライブ(HDD)106は、CPU101の指示によりデータの書き込み、保存および読み出しが可能である。ハードディスクドライブ(HDD)106の記録容量はメモリカード150の記録容量に比べて大きいので、プリンタ10に対して印刷が指示された画像ファイルなどを多数保存できる。電源回路107は、たとえば、AC/DC変換回路などで構成され、商用電源をプリンタ10内の各部で必要な直流電源に変換し、変換後の電圧をプリンタ内各部へ供給する。
【0016】
液晶表示器105は、CPU101の指示により画像やテキストなどの情報を表示する。テキスト情報は、プリンタ10の動作状態、操作メニュー、メッセージなどである。
【0017】
プリンタユニット120は、モータ群121、プリンタヘッド122、印刷制御回路123、およびセンサ群124を含む。モータ群121は、給排紙用のモータおよびプリンタヘッド122を駆動するモータなどを含む。プリンタヘッド122は、給送された印刷紙14に印字および印画を行うインクノズルを含む。印刷制御回路123は、CPU101からの指示により、モータ群121およびプリンタヘッド122へ制御信号を送出する。センサ群124は、印刷紙14の有無、印刷紙14の給送位置、インク残量などを検出する各センサを含み、それぞれの検出信号を印刷制御回路123へ出力する。
【0018】
投射ユニット220は、投影光学系221、液晶パネル222、LED光源223、および投射制御回路224を含む。LED光源223は、供給電流に応じた明るさで液晶パネル222を照明する。液晶パネル222は、投射制御回路224からの駆動信号に応じて光像を生成する。投影光学系221は、液晶パネル222から射出される光像を印刷紙14またはカバー12へ向けて投射する。投射制御回路224は、CPU101からの指示により、LED光源223および液晶パネル222へ制御信号を送出する。CPU101は、カバー12が図1(b)に示す収納位置にある場合、投射ユニット220を投射させない。
【0019】
本実施形態では、液晶パネル222として図3に示すように反射型の液晶パネルを使用する。液晶パネル222として透過型の液晶パネルを使用しても構わない。なお、液晶パネル222の代わりにDMDを使用することもできる。
【0020】
CPU101は、投射ユニット220が投射する投射像の台形歪みを補正するための台形歪み補正処理も行う。投射ユニット220の投射時には、台形補正処理を施した投影データを投射制御回路224へ送出する。
【0021】
プリンタ10は、画像やテキストの印刷を行う。画像は、装着されたメモリカード150に記録されている画像ファイルの再生画像、外部インターフェイス回路104を介して外部機器から送信された画像ファイルの再生画像、およびハードディスクドライブ(HDD)106内に蓄積されている画像ファイルの再生画像のうち、指示された画像を印刷する。テキストは、メモリカード150に記録されているテキスト情報や、外部機器から送信されたテキスト情報などを印刷する。
【0022】
投射ユニット220の詳細について、図3および図4を参照して説明する。図3は、投射ユニット220の光学系を拡大した図である。図4は、図3の光学系を左側から見た図であり、投影光学系21を省略してある。
【0023】
投射ユニット220の光学系は、1辺が約10mmの略正方形を底面とする四角柱形状のモジュール(以降モジュールと呼ぶ)として構成される。モジュールは長手方向を縦(上下)に配設され、熱伝導性の高い金属で構成された本体11(図1)のシャシー15とその底面(下面)が接合される。なお、図3および図4は、内部構成をわかりやすく図示するために、四角柱の長手方向のサイズを実際より長く表している。
【0024】
モジュールには、白色LED223(LED基板230)と、集光光学系224と、偏光板225と、PBS(偏光ビームスプリッタ)ブロック226と、液晶パネル222と、投影光学系221とが含まれる。上記部材のうち、投影光学系221を除く部材はシェル部材231内に一体化構成される。具体的には、アルミ製薄板部材を折り曲げ加工した部材231の下部開放面に、LED基板230が配設される。LED基板230はアルミ基板で構成され、当該基板の絶縁層上に形成されているパターン上に、発光素子であるLED223が実装される。
【0025】
シェル部材231にはさらに、集光光学系224およびPBSブロック226が接着される。PBSブロック226は、入射光軸に対して45度の角度をなす偏光分離部226aを2つの三角プリズムで挟んだ偏光ビームスプリッタである。PBSブロック226の面226bには、たとえば、黒色処理などの無反射処理が施される。
【0026】
PBSブロック226の下側面(集光光学系224側の面)には偏光板225が配設され、PBSブロック226の上側面には反射型液晶素子(LCOS)によって構成される液晶パネル222が配設される。
【0027】
シャシー15は本体11のフレームを構成する。シャシー15およびLED基板230間は、発熱部材(本実施形態ではLED基板30)からの熱伝導をよくするように面接合される。具体的には、シャシー15の面およびLED基板30間に熱伝導性が高い充填材を充填したり、熱伝導性シール部材を挟んだりする。効率よい熱伝導経路を形成することで、投射ユニット220の温度上昇が抑えられている。
【0028】
上記構成のモジュールにおいて、不図示のハーネスおよびパターンを介してLED基板230上のLED223に駆動電流が供給される。LED223は、駆動電流に応じた明るさの光を集光光学系224へ向けて射出する。集光光学系224はLED光を略平行光にして偏光板225へ入射させる。偏光板225は入射光を直線偏光に変換(または抽出)し、変換(または抽出)後の偏光光をPBSブロック226へ向けて射出する。
【0029】
PBSブロック226へ入射された偏光光束(たとえばP偏光)は、PBSブロック226を透過して液晶パネル222を照明する。液晶パネル222は、赤、緑、青のフィルターが形成された複数の画素から構成され、カラーの画像を生成するように駆動されている。液晶パネル222の液晶層を透過する光は、液晶パネル222へ入射されると当該液晶層を上向きに進行し、液晶パネル222の反射面で反射された後、液晶層を下向きに進行して液晶パネル222から射出され、PBSブロック226へ再度入射される。電圧が印加された液晶層は位相板として機能するので、PBSブロック226へ再度入射される光は、S偏光である変調光とP偏光である非変調光との混合光である。PBSブロック226は、再入射された光束のうちS偏光成分である変調光のみを偏光分離部226aで反射(折り曲げる)し、左方の投影光学系221へ向けて投影光として射出する。
【0030】
<メイン処理>
以下、図5のフローチャートを参照して印刷動作の流れを説明する。図5は、CPU101で行われるメイン処理を例示するフローチャートである。図5による処理は、プリンタ10のメインスイッチがオンされると起動する。
【0031】
図5のステップS51において、CPU101は、モード選択を行ってステップS52へ進む。プリンタ10は静止画印刷モードと動画印刷モードとを有する。CPU101は、操作部材103から静止画モードを指示する操作信号が入力されると静止画モードに設定し、動画モードを指示する操作信号が入力されると動画モードに設定する。
【0032】
<静止画モード>
静止画モードに設定した場合を説明する。ステップS52において、CPU101は、操作部材103からの操作信号によって指示されたフォルダ(メモリカード150内、外部機器から送信されたデータを記憶したメモリ102内、またはハードディスクドライブ(HDD)106内に作成されている)内に格納されている静止画像ファイル(たとえば、拡張子を「.JPG」で示す形式)について、それぞれのサムネイル画像を投射ユニット220に投射させてステップS53へ進む。具体的には、各サムネイル画像のデータを読出してメモリ102上の所定領域に展開し、展開後のデータを投射制御回路224へ送出するとともに、投射制御回路224に投射を指示する。
【0033】
図7は、カバー12にセットされた印刷紙14上の投射像を例示する図である。図7において、複数のサムネイル画像が並べて投射されている。サムネイル画像が9画像以上存在する場合は、投射ページを切換えて9画像ずつ投射する。CPU101は、操作部材103(たとえば十字キー)からの操作信号によって指示された位置のサムネイル画像に重ねてカーソルを(図7において太い枠)を投射させる。なお、同時に投射するサムネイル画像の数は、例示した9画像に限らず、4画像でも20画像でもよい。
【0034】
CPU101は、1画像ずつの投射を指示する操作信号が操作部材103から入力されると、図8に例示する投射像に切換える。図8によれば、いずれか1つの静止画像ファイルに対応するサムネイル画像が、大きく引き延ばして投射されている。CPU101は、操作部材103(たとえば十字キー)からの操作信号に応じて、投射するサムネイル画像を順に切換える。CPU101は、1画面当たり9画像の投射を指示する操作信号が操作部材103から入力されると、再び図7に例示する投射像に切換える。
【0035】
ステップS53において、CPU101は、選択操作されたか否かを判定する。CPU101は、操作部材103(たとえばOKボタン)からの操作信号が入力されるとステップS53を肯定判定してステップS54へ進み、OKボタンからの操作信号が入力されない場合にはステップS53を否定判定してステップS59へ進む。
【0036】
ステップS54において、CPU101は、選択画像を投射ユニット220に投射させてステップS55へ進む。具体的には、図7に例示する投射像を投射中の場合、OKボタンからの操作信号が入力された時点でカーソルが重ねられているサムネイル画像に対応する画像ファイルの本画像を選択画像とする。また、図8に例示する投射像を投射中の場合は、OKボタンからの操作信号が入力された時点で投射中のサムネイル画像に対応する画像ファイルの本画像を選択画像とする。CPU101は、選択画像、すなわち印刷対象画像とする本画像データを読出してメモリ102上の所定領域に展開し、展開後のデータを投射制御回路224へ送出するとともに、投射制御回路224に投射を指示する。
【0037】
図9は、カバー12にセットされた印刷紙14上の投射像を例示する図である。図9において、印刷紙の大きさを示す枠91と、印刷範囲を示す枠92とがそれぞれ投影内容に含められ、投射像のサイズは印刷サイズより小さく制御されている。CPU101は、プリンタユニット120で用いられる印刷条件(たとえば、用紙サイズ、印刷倍率、印刷位置(印刷紙の余白)、印刷色の色合い、印刷の濃淡など)を投射像で再現するように、投射条件を投射制御回路224に指示する。なお、投射像による印刷条件の再現は、上記項目のうち、指示された項目のみを再現してもよい。
【0038】
CPU101は、印刷紙14がカバー12にセットされていない、印刷紙14の給送異常、インク残量低下などを示す信号を印刷制御回路123から受信した場合、選択画像に代えて、または選択画像に重ねて、印刷に関する警告情報を投射させる。投射像に含める警告情報は、メッセージでもマークでもよい。
【0039】
ステップS55において、CPU101は、印刷条件を変更する操作が行われたか否かを判定する。CPU101は、操作部材103(たとえばMENUボタン)からの操作信号が入力されるとステップS55を肯定判定してステップS56へ進み、MENUボタンからの操作信号が入力されない場合にはステップS55を否定判定してステップS57へ進む。
【0040】
ステップS56において、CPU101は、操作部材103からのMENU操作信号に応じて印刷条件の変更情報を印刷制御回路123へ送信し、ステップS57へ進む。なお、ステップS55を否定判定した場合、印刷制御回路123はデフォルトの印刷条件を用いるため、印刷制御回路123への情報送信は不要である。
【0041】
ステップS57において、CPU101は、印刷指示操作が行われたか否かを判定する。CPU101は、操作部材103(たとえばOKボタン)から操作信号が入力されるとステップS57を肯定判定してステップS58へ進み、OKボタンから操作信号が入力されない場合にはステップS57を否定判定してステップS51へ戻る。
【0042】
ステップS58において、CPU101は印刷処理を行ってステップS59へ進む。印刷処理の詳細については後述する。ステップS59において、CPU101は、終了指示されたか否かを判定する。CPU101は、操作部材103から終了を指示する操作信号が入力された場合にステップS59を肯定判定して図5による処理を終了し、操作部材103から終了を指示する操作信号が入力されない場合にはステップS59を否定判定してステップS51へ戻る。
【0043】
<印刷処理>
静止画モードにおける印刷処理の詳細について、図6に例示するフローチャートを参照して説明する。図6のステップS61において、CPU101は、印刷制御回路123に印刷開始を指示してステップ62へ進む。具体的には、選択画像としてメモリ102上の所定領域に展開されている本画像データを印刷制御回路123へ送出する。
【0044】
ステップS62において、CPU101は、投射制御回路224へ黒画像の投射を指示してステップS63へ進む。これにより、図9に例示した投射像が一旦ブラックアウトされ、印刷情報(選択画像)を含まない状態になる。なお、黒以外の色(たとえば青色)の投射でもよい。ステップS63において、CPU101は選択画像の先頭1ライン分の投射を行うように投射制御回路224へ指示してステップS64へ進む。1ライン分の投射幅は、プリンタユニット120によって印刷紙14に印刷される1ライン分の印刷幅と略等しく制御する。
【0045】
ステップS64において、CPU101は、1ラインの印刷が終了したか否かを判定する。CPU101は、印刷制御回路123から1ライン分の印刷終了を示す信号が入力されるとステップS64を肯定判定してステップS65へ進み、1ライン分の印刷終了を示す信号が入力されない場合にはステップS64を否定判定し、当該判定処理を繰り返す。
【0046】
ステップS65において、CPU101は、投射中の選択画像について、次の1ラインを加えた投射を行うように投射制御回路224へ指示してステップS66へ進む。これにより、投射像に含まれる印刷情報(選択画像)が1ライン分広くなる。
【0047】
ステップS66において、CPU101は、さらに1ラインの印刷が終了したか否かを判定する。CPU101は、印刷制御回路123から次の1ライン分の印刷終了を示す信号が入力されるとステップS66を肯定判定してステップS67へ進み、1ライン分の印刷終了を示す信号が入力されない場合にはステップS66を否定判定し、当該判定処理を繰り返す。
【0048】
ステップS67において、CPU101は、選択画像について全ラインを投射中か否かを判定する。CPU101は、投射制御回路224から全ライン分を投射中である(すなわち、投射像に印刷情報全体を含めている)ことを示す信号が入力されるとステップS67を肯定判定してステップS68へ進み、全ラインを投射中であることを示す信号が入力されない場合にはステップS67を否定判定してステップS65へ戻る。
【0049】
図10は、1ラインずつ広げられる投射像を例示する図である。プリンタユニット120における印刷速度に同期して、投射像に含まれる選択画像が先頭ラインから1ラインずつ加えられ、選択画像の範囲が徐々に広げられる。選択画像の範囲の広がりに伴い、投射像に含まれるブラックアウト領域は徐々に縮小される。
【0050】
図6のステップS68において、CPU101は印刷終了か否かを判定する。CPU101は、全ライン分を印刷し、印刷紙14の排紙終了を示す信号が印刷制御回路123からが入力されるとステップS68を肯定判定し、投射制御回路224へ投射終了(LED223の消灯)を指示して図6による処理を終了する。CPU101は、全ラインの印刷終了および排紙終了を示す信号が入力されない場合にはステップS68を否定判定し、当該判定処理を繰り返す。
【0051】
<動画モード>
動画モードに設定した場合を説明する。CPU101は、図5のステップS52において、操作部材103からの操作信号によって指示されたフォルダ(メモリカード150内、外部機器から送信されたデータを記憶したメモリ102内、またはハードディスクドライブ(HDD)106内に作成されている)内に格納されている動画像ファイル(たとえば、拡張子を「.MOV」で示す形式)について、それぞれの動画を構成する複数のコマを代表する画像(たとえば先頭画像)を投射ユニット220に投射させる。
【0052】
図11は、カバー12にセットされた印刷紙14上の投射像を例示する図である。図11において、複数の動画像ファイルについての代表画像が並べて投射されている。代表画像(すなわち動画ファイル)が9以上存在する場合は、投射ページを切換えて9画像ずつ投射する。CPU101は、操作部材103(たとえば十字キー)からの操作信号によって指示された位置の代表画像に重ねてカーソルを(図11において太い枠)を投射させる。同時に投射する代表画像の数は、例示した9つに限らなくともよい。
【0053】
また、静止画モードの場合と同様に、1画像ずつの投射を指示する操作信号が操作部材103から入力されると、図8と同様の投射像に切換える。すなわち、いずれか1つの動画像ファイルに対応する代表画像を大きく引き延ばして投射する。この場合のCPU101は、操作部材103(たとえば十字キー)からの操作信号に応じて、投射する代表画像を順に切換える。CPU101はさらに、1画面当たり9画像の投射を指示する操作信号が操作部材103から入力されると、再び図11に例示する投射像に切換える。
【0054】
動画モードでは、選択されている動画像ファイルを投射ユニット220で動作再生(投射)させながら、プリンタユニット120に当該動画像ファイルの代表画像を印刷させる。
【0055】
図12は、動画モード時に図5のステップS54において投射される印刷紙14上の投射像を例示する図である。図12において、印刷紙の大きさを示す枠と、印刷範囲を示す枠とがそれぞれ投射内容に含められ、投射像のサイズは印刷サイズより小さく制御されている。CPU101は、プリンタユニット120で用いられる印刷条件(たとえば、用紙サイズ、印刷倍率、印刷位置(印刷紙の余白)、印刷色の色合い、印刷色の濃淡など)を投射像で再現するように、投射条件を投射制御回路224に指示する。なお、投射像による印刷条件の再現は、上記項目のうち、指示された項目のみを再現してもよい。
【0056】
<印刷処理>
動画モードにおける印刷処理の詳細について、図13に例示するフローチャートを参照して説明する。図13のステップS71において、CPU101は、印刷(投射)対象として選択された動画像ファイルの動画再生の開始を投射制御回路224へ指示してステップS72へ進む。具体的には、メモリ102上の所定領域に動画像ファイルを構成するコマ画像を順次展開し、先頭コマの画像データから順に投射制御回路224へ送出する(たとえば、フレームレート30コマ/秒)。これにより、投射ユニット220が先頭コマから順に動画再生を開始する。
【0057】
ステップS72において、CPU101は印刷制御回路123に代表画像の印刷を指示してステップS73へ進む。具体的には、メモリ102上の所定領域に展開されている代表画像データを印刷制御回路123へ送出する。
【0058】
ステップS73において、CPU101は、動画再生が終了したか否かを判定する。CPU101は、投射制御回路224から最終コマの投射終了を示す信号が入力されるとステップS73を肯定判定してステップS74へ進み、最終コマの投射終了を示す信号が入力されない場合にはステップS73を否定判定し、当該判定処理を繰り返す。
【0059】
ステップS74において、CPU101は印刷終了か否かを判定する。CPU101は、代表画像を印刷し、印刷紙14の排紙終了を示す信号が印刷制御回路123からが入力されるとステップS74を肯定判定し、投射制御回路224へ投射終了(LED223の消灯)を指示して図13による処理を終了する。CPU101は、印刷終了および排紙終了を示す信号が入力されない場合にはステップS74を否定判定し、当該判定処理を繰り返す。
【0060】
以上説明した第一の実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。
(1)プリンタ10にプリンタユニット120および投射ユニット220を備え、プリンタユニット120が印刷対象画像を印刷開始する前に、印刷対象画像を投射ユニット220に投影させる(ステップS54)ようにした。これにより、操作者は、大きな投射像から印刷画像(印刷対象画像)の詳細を事前に確認した上で、プリンタ10に印刷させるか否かを決定できる。
【0061】
(2)投射ユニット220は、印刷中の印刷紙14上でなく、カバー12(またはセットされている印刷紙14の上)に印刷対象画像を投影する。投射される面と印刷される面とが異なるので、プリンタユニット120による印刷前はもちろん、印刷中も印刷後も投射ユニット220による投影を継続することができる。また、印刷紙14は白色が多いので、色地の上に投影する場合に比べて色合いの確認が容易である。
【0062】
(3)投射像をプリンタ10の筐体の一部を構成するカバー12に向けて投影するので、専用の投射スクリーンを設ける必要がない。カバー12は回動軸Oを軸に収納位置(図1(b))へ回動するように構成したので、コンパクトに収納できる。
【0063】
(4)投射ユニット220による投射像のサイズをプリンタユニット120による印刷範囲より小さく制御したので、投射像が印刷紙14の実サイズからはみ出すおそれがない。
(5)投射ユニット220が投影する光学像に印刷紙14の範囲を示す枠、およびプリンタユニット120による印刷範囲を示す枠をそれぞれ含めるようにしたので、投射像によって印刷余白を事前に確認することができる。
【0064】
(6)投射ユニット220による投射像の投射条件を、プリンタユニット120で用いられる印刷条件(用紙サイズ、印刷倍率、印刷位置、印刷色の色合い、印刷の濃淡)を再現するように制御したので、投射像によって印刷画像(印刷状況)を事前に確認することができる。
【0065】
(7)プリンタユニット120による印刷中は、印刷の進行状態を示す光学像(たとえば、印刷対象画像の範囲が徐々に広がる投射像)を投射ユニット220から投影するようにした(ステップS62〜ステップS67)。これにより、操作者は、投射像によって印刷進行状態を知ることができる。
【0066】
(8)プリンタユニット120による印刷中に投射ユニット220から投影する投射像は、印刷開始後一旦ブラックアウトさせてから、プリンタユニット120の印刷進行にともなって1ライン分印刷するごとに投射ユニット220から投影する印刷対象画像の範囲を1ライン分広げるように制御したので、どこまで印刷が進んだかをリアルタイムに示すことができる。
【0067】
(9)プリンタユニット120による印刷が終了すると、投射ユニット220による投影を終了するように制御したので、印刷終了を確実に知らせることができる。
(10)プリンタユニット120による印刷中に投射ユニット220から投影する投射像に、印刷紙14の給送異常、インク残量低下などを示す警告情報を含めるようにしたので、異常発生の旨をただちに知らせることができる。
【0068】
(11)プリンタ10にプリンタユニット120および投射ユニット220を備え、投射ユニット220が複数のサムネイル画像を投影中に指示された画像を、プリンタユニット120に印刷させるようにした(ステップS52〜ステップS58)。これにより、操作者は、大きく投影された複数の画像を見ながら印刷対象画像を指示できる。
【0069】
(12)投射ユニット220は、複数の画像データを用いて再生した複数のサムネイル画像を並べて投影するようにしたので、操作者は、大きく投影された複数の画像を一度に見ながら印刷対象画像を指示できる。
【0070】
(13)投射ユニット220は、複数の画像データを用いて再生した複数のサムネイル画像を大きく引き延ばし、1画像ずつ順番に投影するようにしたので、操作者は、大きく投影された画像を順番に確認しながら印刷対象画像を指示できる。
【0071】
(14)プリンタ10にハードディスクドライブ(HDD)106を設け、この中に蓄積されている画像データを用いて再生した複数のサムネイル画像を投影するようにしたので、操作者は、数多くの画像の中から印刷対象画像を指示できる。
【0072】
(15)プリンタ10が過去に印刷した画像データをハードディスクドライブ(HDD)106に蓄積するようにしたので、印刷するたびに外部からプリンタ10へ画像データを読み込ませる必要がなくなり、簡単に再印刷を行うことができる。
【0073】
(16)操作部材103からの操作信号によって印刷対象画像の指示を受けるようにしたので、操作者は、大きく投影された画像を順番に確認しながら操作部材103を操作し、プリンタ10に印刷対象画像を直接指示できる。
【0074】
(17)電子カメラ100からの操作信号によって印刷対象画像の指示を受けるようにしたので、操作者は、大きく投影された画像を順番に確認しながら電子カメラ100の操作部材を操作し、プリンタ10から離れた位置から印刷対象画像を指示できる。
【0075】
(18)プリンタユニット120および投射ユニット220を備えるプリンタ10は、動画像ファイルの画像を印刷または投影する動画印刷モードと、静止画像ファイルの画像を印刷または投影する静止画印刷モードとを有し、選択された印刷モードに応じてプリンタユニット120および投射ユニット220を制御するようにした。これにより、静止画、動画にかかわらず、適切に画像をアウトプットさせることができる。
【0076】
(19)プリンタ10は、指示された印刷対象画像が動画像ファイルに含まれる場合は動画印刷モードを、指示された印刷対象画像が静止画像ファイルに含まれる場合には静止画印刷モードを、それぞれ自動的に選択するようにした。これにより、印刷対象画像に応じて印刷モードを選択する操作を不要にすることができる。
【0077】
(20)動画印刷モードの場合、投射ユニット220によって印刷対象画像として指示された動画像を再生投射したので、動画像を投射像としてアウトプットできる。また、プリンタユニット120によって印刷対象画像として指示された動画像の代表画像を印刷したので、動画像の1コマを印刷画像としてアウトプットできる。
【0078】
(21)印刷指示を受けてから(ステップS57を肯定判定)プリンタユニット120が印刷を始めるようにしたので、操作者が投影画像を確認している途中で印刷処理が始まることがない。
【0079】
(変形例1)
図5のフローチャートは、印刷対象の画像が1画像ずつ選択され、選択された画像を1画像ずつ印刷する場合の処理の流れを例示したものである。この代わりに、印刷対象の画像選択を複数画像まとめて行うようにし、選択された複数の画像をまとめて印刷するようにしてもよい。
【0080】
(変形例2)
静止画モードの場合、上述した動作の他に以下の動作を行う構成にしてもよい。CPU101は、ステップS51のモード選択処理の中で静止画モードに設定する際、操作部材103からの操作信号に応じて静止画モード1〜静止画モード3のいずれか1つをさらに選択、設定する。
【0081】
静止画モード1は、上述した図5および図6で示す態様の動作を行うモードである。静止画モード2は、プリンタユニット120における印刷中に投射ユニット220による投射を行わないモードである。具体的には、図6のステップS61において印刷制御回路123に印刷開始を指示した後は、ステップS62からステップS67までの処理をスキップし、ステップS68において印刷終了が判定されるまで投射ユニット220に投射を停止させる。
【0082】
静止画モード3は、いわゆる「スライドショー」投射を行う動作モードである。このモードを選択したCPU101は、選択された画像を1画像ずつ所定時間ごとに投射ユニット220で順次投射させ、プリンタユニット120による印刷は行わない。
【0083】
なお、画像ファイルのExif情報の中に適用する動作モードを示す情報を記録しておき、その記録情報にしたがって当該画像ファイルに対する動作の態様を決定するようにしてもよい。この場合には、静止画モード1〜静止画モード3の中から適用する動作モードを選択、設定する操作を不要にできる。
【0084】
変形例2によれば、静止画印刷モードを静止画モード1〜静止画モード3の3通りに分類し、いずれか1つを選択可能に構成したので、投射像としてアウトプットしたり、印刷画像としてアウトプットしたり、アウトプットの態様を選ぶことができる。
【0085】
静止画モード3では、選択された画像を1画像ずつ順番に投射ユニット220で投射させるので、操作者が所望する画像のみを投射像として続けてアウトプットさせることができる。
【0086】
(変形例3)
動画モードの場合にも、上述した動作の他に以下の動作を行う構成にしてもよい。CPU101は、ステップS51のモード選択処理の中で動画モードに設定する際、操作部材103からの操作信号に応じて動画モード1〜動画モード3のいずれか1つをさらに設定する。
【0087】
動画モード1は、上述した図5および図13で示す態様の動作を行うモードである。動画モード2は、選択されている動画像ファイルを投射ユニット220で動作再生(投射)させるのみで、プリンタユニット120による印刷を行わない動作モードである。具体的には、図13においてステップS72およびステップS74をスキップし、ステップS71およびステップS73のみを実行する。
【0088】
動画モード3は、選択されている動画像ファイルを投射ユニット220で動作再生(投射)させながら、動画再生中の印刷指示(操作部材103からの操作信号)に応じて、操作信号の発生タイミングを挟む前後所定コマずつの画像を、プリンタユニット120に印刷させる動作モードである。
【0089】
動画モード3における印刷処理の詳細について、図14に例示するフローチャートを参照して説明する。図14のステップS81において、CPU101は、印刷(投射)対象として選択された動画像ファイルの動画再生の開始を投射制御回路224へ指示してステップS82へ進む。これにより、投射ユニット220が先頭コマから順に動画再生を開始する。
【0090】
ステップS82において、CPU101は、動画再生中に印刷コマが指示された否かを判定する。CPU101は、操作部材103から操作信号が入力されるとステップS82を肯定判定してステップS83へ進み、操作信号が入力されない場合にはステップS82を否定判定してステップS86へ進む。
【0091】
ステップS83において、CPU101は、印刷制御回路123に所定コマ(たとえば8コマ)分の画像の印刷を指示してステップS84へ進む。具体的には、メモリ102上の所定領域に展開されている直近の4コマ(投影済み)の画像データと、直後にメモリ102上に展開される4コマ(投影前)の画像データを印刷制御回路123へ順に送出する。これにより、プリンタユニット120が印刷コマ指示(印刷開始指示)タイミングを挟む前後4コマの画像を印刷する。
【0092】
ステップS84において、CPU101は、動画再生が終了したか否かを判定する。CPU101は、投射制御回路224から最終コマの投射終了を示す信号が入力されるとステップS84を肯定判定してステップS85へ進み、最終コマの投射終了を示す信号が入力されない場合にはステップS84を否定判定し、当該判定処理を繰り返す。
【0093】
ステップS85において、CPU101は印刷終了か否かを判定する。CPU101は、計8コマ分の画像を印刷し、印刷紙14の排紙終了を示す信号が印刷制御回路123からが入力されるとステップS85を肯定判定し、投射制御回路224へ投射終了(LED223の消灯)を指示して図14による処理を終了する。CPU101は、印刷終了および排紙終了を示す信号が入力されない場合にはステップS85を否定判定し、当該判定処理を繰り返す。
【0094】
ステップS82を否定判定して進むステップS86において、CPU101は、動画再生が終了したか否かを判定する。CPU101は、投射制御回路224から最終コマの投射終了を示す信号が入力されるとステップS86を肯定判定し、投射制御回路224へ投射終了(LED223の消灯)を指示して図14による処理を終了する。ステップS86を肯定判定するのは印刷コマが指示されなかった場合である。CPU101は、最終コマの投射終了を示す信号が入力されない場合にはステップS86を否定判定し、ステップS82へ戻って印刷コマ指示を待つ。
【0095】
変形例3によれば、動画印刷モードを動画モード1〜動画モード3の3通りに分類し、いずれか1つを選択可能に構成したので、投射像としてアウトプットしたり、印刷画像としてアウトプットしたり、アウトプットの態様を選ぶことができる。
【0096】
動画モード3では、投射ユニット220から動画像を再生投射中に印刷コマ指示されたタイミングを挟んで直前直後の計8コマをプリンタユニット120で印刷させるようにしたので、操作者が所望するカットを含むように、印刷画像を複数アウトプットさせることができる。
【0097】
なお、画像ファイルのExif情報の中に適用する動作モードを示す情報を記録しておき、その記録情報にしたがって当該画像ファイルに対する動作の態様を決定するようにしてもよい。この場合には、動画モード1〜動画モード3の中から適用する動作モードを選択、設定する操作を不要にできる。
【0098】
(変形例4)
静止画モード1では、プリンタユニット120による印刷状況に応じて投射ユニット220による投射像が含む印刷情報(選択画像)を1ラインずつ広げる(図10)ようにした。これとは逆に、プリンタユニット120による印刷状況に応じて投射ユニット220による投射像が含む印刷情報(選択画像)を1ラインずつ減じるようにしてもよい。この場合、印刷開始当初は選択画像の全体を含めて投射しておき、プリンタユニット120における印刷速度に同期して、投射像に含む印刷情報(選択画像)を下方へ1ラインずつシフトさせるとともに、投射像の上方から1ラインずつブラックアウトさせる。シフトおよびブラックアウト領域の広がりに伴い、投射像に含まれる印刷情報(選択画像)は徐々に狭まる。変形例4によれば、投射されている印刷情報(選択画像)が印刷紙14とともに本体11に吸い込まれるように見える一方で、印刷された印刷紙14が出力紙トレイ13へ徐々に排出されるので、操作者は、投射されている選択画像が印刷出力に変化するかのように感じながら、どこまで印刷が進んだかをリアルタイムに知ることができる。
【0099】
(変形例5)
投射ユニット220による投射像が含む印刷情報(選択画像)を、プリンタユニット120による印刷進行状態に応じて変化させることに加え、投射像が含む印刷情報(選択画像)をパンもしくはチルト、またはズームアップ、ズームダウンさせるエフェクトを加えるようにしてもよい。印刷に要する時間が所定時間より長い場合には、エフェクトを加えて投射像を変化させることにより、印刷所要時間が長いことを操作者に知らせた上で、変化のある投射像を提供して操作者を飽きさせないようにする。
【0100】
(変形例6)
CPU101が投射ユニット220による投射像の台形歪みを電子的に補正する例を説明したが、プリンタユニット120による印刷時に生じる振動に起因する投影像の揺れも電子的に補正してもよい。一般に、プリンタヘッド122が印刷ライン方向に移動する場合や印刷紙14を給送する場合にプリンタ10は振動する。CPU101は、この振動によって生じる印刷紙14上の投射像の揺れを抑えるように投射画像を補正する。具体的には、メモリ102上の所定領域に展開された画像データの位置を示す座標情報を、プリンタヘッド122の移動速度、移動量、移動方向、および印刷紙14の給送状態に同期させて所定量ずらす。これにより、画像データがメモリ空間において電子的にシフトする。CPU101は、このように印刷時の揺れ補正処理を施した投影データを投射制御回路224へ送出し、投射像の揺れが操作者に与える不快感を抑える。
【0101】
(変形例7)
複数並べて投射したサムネイル画像(図7)または代表画像(図11)の中から印刷対象画像を選択するための選択操作の検出を、操作部材103からの操作信号を用いて行う代わりに、電子カメラ100からの操作信号を用いて行ってもよい。図2の電子カメラ100は、十字キーやメニュースイッチの操作信号をプリンタ10へ無線送信する機能を有する。プリンタ10のCPU101は、外部インターフェイス(I/F)回路104を介して受信される操作信号に応じて印刷対象画像を選択する。電子カメラ100を携帯する操作者は、プリンタ10と離れた位置から印刷対象画像を選択できる。なお、電子100からプリンタ10への操作信号の送信は、有線送信しても構わない。
【0102】
(第二の実施形態)
プリンタに撮像機能を持たせ、プリンタが撮像した画像を用いて印刷対象画像を選択するための操作検出を行う構成としてもよい。図15は、カメラユニット320を搭載するプリンタ10Aの構成を説明するブロック図である。図2に例示したブロック図と同じ構成には共通の符号を付して説明を省略する。CPU101Aは、プリンタユニット120および投射ユニット220の制御に加え、カメラユニット320の制御も行う。
【0103】
カメラユニット320は撮像光学系331、撮像素子322および撮像制御回路323を有し、CPU101Aからの指示に応じて投射ユニット220による投射像を撮像する。撮像光学系321および撮像素子322は、たとえば図1(a)、図1(b)における投射ユニット220の近傍に並べて配設される。
【0104】
撮像光学系321は、撮像素子322の撮像面上に被写体像(本例の場合はカバー12にセットされた印刷紙14上の投射像)を結像させる。撮像素子322としては、CCDやCMOS撮像素子などが用いられる。撮像制御回路323は、CPU101Aからの指示により撮像素子322を駆動制御するとともに、内蔵する画像変化検出回路(不図示)で撮像画像の変化を検出する。具体的には、所定間隔ごと(たとえば15コマ/秒)に撮像素子322から出力される撮像画像について、時間的に連続するフレーム画像間の画像データの差の有無を判定する。
【0105】
プリンタ10Aの操作者は、サムネイル画像(代表画像)を投射中に印刷紙14と投射ユニット220との間の空間に手をかざし、投射光束の一部を遮る。これにより、新たに撮像されるフレーム画像には操作者の手が含まれるため、前フレーム画像との間に差異が生じる(画像が変化する)。
【0106】
撮像制御回路323は、撮像画像を複数の領域(投射中のサムネイル画像に対応させるのが好ましい)に分割し、各分割領域ごと(ブロックと呼ぶ)に最新フレーム画像と前フレーム画像との差異が所定値を超えるか否かを判定する。撮像制御回路323は、フレーム間の差異が所定値を超えるブロックを検出すると、その状態がたとえば0.5秒以上継続されるか否かをチェックする。撮像制御回路323は、検出したブロックについて、その後の少なくとも連続する8フレーム分の撮像画像について、同一ブロック内で継続して変化が発生したと判断した場合には(すなわち、同一ブロックで0.5秒以上継続して手が撮像されていれば)、印刷対象画像が指示されたと判定し、当該ブロックを示す信号をCPU101Aへ送出する。
【0107】
ブロックを示す信号を受信したCPU101Aは、投射制御回路224へ指示した投射像(図7に例示した複数の画像)と、撮像制御回路323から送信された信号とを対比させて印刷対象画像を検出する。たとえば、撮像制御回路323からの信号が投射画面の左下ブロックを示している場合、CPU101Aは、投射ユニット220へ投射させている左下のサムネイル画像(代表画像)を選択画像とする。
【0108】
一方、撮像制御回路323が検出したブロックについて、その後の連続する7フレームの間に同一ブロック内で変化が発生しなくなったと判断した場合には(すなわち、0.5秒経過する前に同一ブロックで手が撮像されなくなれば)、印刷対象画像が指示されていないと判定し、CPU101Aへ信号送出を行わない。
【0109】
以上説明した第二の実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。
(1)投射ユニット220を有するプリンタ10Aにカメラユニット320を備え、投射ユニット220による投射像を、カメラユニット320で所定間隔ごとに撮像させる。プリンタ10Aは、撮像されるフレーム画像に手が含まれることによって生じる画像の変化を検出し、画像選択操作が行われたことを判定する。これにより、操作者は、投射像を見ながら投射光束を遮る(カメラユニット320に写る)ように手をかざすことによってプリンタ10Aへ指示を送ることができる。
【0110】
(2)プリンタ10Aは、投射ユニット220から複数のサムネイル画像が並ぶ光学像を投影し、上記(1)のように画像の変化を検出したブロックと投射像とを対比し、検出ブロックに対応する位置に投影されているサムネイル画像を印刷対象画像とする。操作者は、投射されている複数のサムネイル画像のうち印刷させたい画像を視標として利用し、手をかざす空間の目安にできる。さらに、ブロック単位で画像の変化を検出するようにしたので、画像の全域について検出する場合に比べて演算量を少なくすることができる。
【0111】
(3)検出ブロックに0.5秒以上継続して手などが撮像された場合に印刷対象画像が指示されたと判定したので、誤ってカメラユニット320の前に手を出した場合でも、ただちに誤判定してしまうことがない。
【0112】
(変形例8)
カメラユニット320を具備しないプリンタ10と電子カメラ100とを組み合わせて、第二の実施形態と同様の選択操作検出を行う構成にしてもよい。図16は、この場合のプリンタシステムの構成を説明するブロック図である。プリンタ10と電子カメラ100とが外部インターフェイス回路104を介して有線接続されている。
【0113】
電子カメラ100は、投射ユニット220による投射像を撮像する向きにセットされる。電子カメラ100はさらに、所定間隔ごと(たとえば15コマ/秒)に撮像した画像データを、プリンタ10へ逐次送信する。
【0114】
プリンタ10のCPU101は、電子カメラ100から送信される画像について、時間的に連続するフレーム画像間の画像データの差の有無を判定することにより、第二の実施形態と同様に、印刷対象画像の選択操作を検出する。
【0115】
変形例8によれば、カメラユニット320を具備しないプリンタ10と電子カメラ100とを組み合わせることにより、操作者がかざした手の位置を検出して印刷対象画像を選択するプリンタシステムを提供できる。
【0116】
(変形例9)
本発明は、スキャナ機能を備えるプリンタにも適用できる。図17は、変形例9によるプリンタ10Bを説明する図である。プリンタ10Bは本体11Bと、カバー12Bと、出力紙トレイ13Bと、給紙トレイ15Bとを有する。本体11B内には、プリンタユニット120Bおよびスキャナユニット400Bが配設されている。カバー12Bはスクリーンを兼用し、図17に示す開位置と、カバー12Bを閉じた収納位置との間で回動軸Oを中心に回動自在に構成される。
【0117】
図17において、給紙トレイ15Bにセットされた印刷紙14が不図示の給紙機構によって一枚ずつプリンタユニット120Bへ給紙される。プリンタユニット120Bは印刷紙14に印刷し、印刷後の印刷紙14を出力紙トレイ13Bへ排出する。
【0118】
スキャナユニット400Bは、ラインセンサユニット401を有する。ラインセンサユニット401は、ガラスで構成される原稿載置面16Bに載置された原稿(不図示)を照明するランプ、およびレンズアレイ(ともに不図示)を含み、矢印方向に移動しながら原稿の読み取りを行う。カバー12Bは、原稿読み取り時に原稿(不図示)を覆うように収納位置へ閉じられる。
【0119】
スキャナユニット400Bにはさらに、プロジェクタ(投射ユニット220B)および反射ミラー403も設けられている。投射ユニット220Bは、スキャナユニット400B未使用時(ラインセンサユニット401が図17で示す待機位置に位置する状態)に、開状態のカバー12Bへ向けて光学像を投射するように構成される。投射光束は、反射ミラー403で折り曲げられた後、カバー12Bの向きへ進む。カバー12Bは、投射時に開位置に開けられている。
【0120】
変形例9によれば、投射ユニット220Bが原稿カバー12Bに光学像を投影するので、投射される面と印刷される面とが異なり、プリンタユニット120Bによる印刷前はもちろん、印刷中も印刷後も投射ユニット220Bによる投影を継続することができる。さらに、専用の投射スクリーンを設ける必要もなく、カバー12Bを回動軸Oを軸に回動させて、コンパクトに収納できる。
【0121】
(変形例10)
図18は、変形例10によるプリンタ10Cを説明する図である。プリンタ10Cは本体11Cと、カバー12Cと、カバー12Dと、出力紙トレイ13Bと、給紙トレイ15Bとを有する。本体11C内には、プリンタユニット120Bおよびスキャナユニット400Cが配設されている。カバー12Cは、図18に示す開位置と、カバー12Cを閉じた収納位置との間で回動軸Oを中心に回動自在に構成される。カバー12Dは、背面投射用の透光スクリーンであり、カバー12Cと原稿載置面16Cとの間で回動軸Oを中心に回動自在に構成される。
【0122】
図18において、給紙トレイ15Bにセットされた印刷紙14が不図示の給紙機構によって一枚ずつプリンタユニット120Bへ給紙される。プリンタユニット120Bは印刷紙14に印刷し、印刷後の印刷紙14を出力紙トレイ13Bへ排出する。
【0123】
スキャナユニット400Cは、ラインセンサユニット401を有する。ラインセンサユニット401は図17の場合と同様である。カバー12Cおよび12Dは、原稿読み取り時に原稿(不図示)を覆うように閉じられる。
【0124】
スキャナユニット400Cにはさらに、プロジェクタ(投射ユニット220C)も設けられている。投射ユニット220Cは、スキャナユニット400Cが非使用時(ラインセンサユニット401が図18で示す待機位置に位置する状態)に、原稿載置面16C上に位置する閉状態のカバー12Dへ向けて光学像を背面投射するように構成される。カバー12Cは、投射時に開位置に開けられている。
【0125】
変形例10によれば、投射ユニット220Cが原稿載置面16上に位置するカバー12Dに光学像を背面から投影するので、投射される面と印刷される面とが異なり、プリンタユニット120Bによる印刷前はもちろん、印刷中も印刷後も投射ユニット220Cによる投影を継続することができる。さらに、背面投射像は周囲が明るくても確認しやすい。
【0126】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明は上記実施形態の構成に何ら限定されるものではない。第一の実施形態、第二の実施形態、変形例1〜変形例10の構成は、それぞれを適宜組合わせて構成しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】第一の実施形態によるプリンタを説明する図であり、(a)はカバーの使用位置を示す図、(b)はカバーの収納位置を示す図である。
【図2】プリンタの構成を説明するブロック図である。
【図3】投射ユニットの光学系を拡大した図である。
【図4】図3の光学系を左側から見た図である。
【図5】CPUで行われるメイン処理を例示するフローチャートである。
【図6】静止画モードにおける印刷処理の詳細を例示するフローチャートである。
【図7】静止画モードにおける印刷紙上の投射像を例示する図である。
【図8】静止画モードにおける印刷紙上の投射像を例示する図である。
【図9】静止画モードにおける印刷紙上の投射像を例示する図である。
【図10】1ラインずつ広げられる投射像を例示する図である。
【図11】動画モードにおける印刷紙上の投射像を例示する図である。
【図12】動画モードにおける印刷紙上の投射像を例示する図である。
【図13】動画モードにおける印刷処理の詳細を例示するフローチャートである。
【図14】動画モードにおける印刷処理の詳細を例示するフローチャートである。
【図15】カメラユニットを搭載するプリンタの構成を説明するブロック図である。
【図16】プリンタシステムの構成を説明するブロック図である。
【図17】変形例9によるプリンタを説明する図である。
【図18】変形例10によるプリンタを説明する図である。
【符号の説明】
【0128】
10、10A、10B、10C…プリンタ
11、11B、11C…本体
12、12B、12C、12D…カバー
14…印刷紙
100、101A…電子カメラ
101、101A…CPU
120、120B…プリンタユニット
220、220B、220C…投射ユニット
320…カメラユニット
400B、400C…スキャナユニット
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
印刷紙に画像などを印刷するプリンタが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2006−192600号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
パソコンやプリンタのモニタに表示した複数の情報から印刷する情報を選択して印刷する場合、表示される個々の情報が小さいので、印刷する情報を選びにくいという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
(1)本発明によるプリンタは、情報を印刷する印刷ユニットと、複数の情報の光学像を投影する投射ユニットと、投射ユニットによる複数の光学像の投影中に印刷対象情報を指示する信号を受け、当該信号が指示する情報を印刷ユニットに印刷させる制御手段とを備えることを特徴とする。
(2)請求項1に記載のプリンタにおいて、複数の情報は画像データであり、投射ユニットは、複数の画像データを用いてそれぞれ再生した複数の光学像を並べて投影することが好ましい。
(3)請求項1に記載のプリンタにおいて、複数の情報は画像データであり、投射ユニットは、複数の画像データを用いてそれぞれ再生した複数の光学像を順に投影することが好ましい。
(4)請求項2または3に記載のプリンタはさらに、複数の画像データを蓄積する画像蓄積手段を備えてもよい。この場合の投射ユニットは、画像蓄積手段に蓄積されている画像データから再生した複数の光学像を投影することが好ましい。
(5)請求項4に記載のプリンタにおいて、画像蓄積手段は、印刷ユニットが印刷した画像データを蓄積することが好ましい。
(6)請求項1〜5のいずれか一項に記載のプリンタはさらに、印刷対象を指示する信号を発する操作部材を備えてもよい。この場合の制御手段は、操作部材からの信号を受けて印刷ユニットに情報を印刷させることが好ましい。
(7)請求項1〜5のいずれか一項に記載のプリンタにおいて、制御手段は、外部機器からの信号を受けて印刷ユニットに情報を印刷させることが好ましい。
(8)請求項1〜5のいずれか一項に記載のプリンタはさらに、撮像して画像信号を出力する撮像素子と、画像信号の変化を検出する画像変化検出手段と、画像信号の変化が検出された領域に応じて印刷対象情報を指示する信号を発する印刷対象指示手段とを備えてもよい。この場合の制御手段は、印刷対象指示手段からの信号を受けて印刷ユニットに情報を印刷させることが好ましい。
(9)請求項8に記載のプリンタにおいて、撮像素子は、投射ユニットが投影中の複数の光学像を撮像することが好ましい。
(10)本発明によるプリンタシステムは、撮像した画像信号を送信する電子カメラと、被印刷体に情報を印刷する印刷ユニット、複数の情報の光学像を投影する投射ユニット、電子カメラから送信された画像信号の変化を検出する画像変化検出手段、画像信号の変化が検出された領域に応じて印刷対象を指示する信号を発する印刷対象指示手段、および投射ユニットによる複数の光学像の投影中に印刷対象指示手段からの信号を受け、当該信号が示す情報を印刷ユニットに印刷させる制御手段を有するプリンタと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、印刷する情報を選びやすくしたプリンタ、プリンタシステムを提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面を参照して本発明を実施するための最良の形態について説明する。
(第一の実施形態)
図1は、本発明の第一の実施形態によるプリンタを説明する図である。図1(a)および図1(b)において、プリンタ10は本体11と、カバー12と、出力紙トレイ13とを有する。本体11内には、プリンタユニット120が配設されている。カバー12は印刷紙14のトレイを兼用し、図1(a)に示す使用位置と図1(b)に示す収納位置との間で回動軸Oを中心に回動自在に構成される。
【0008】
図1(a)に示す使用位置において、カバー12にセットされた印刷紙14が不図示の給紙機構によって一枚ずつ下方へ送出され、プリンタユニット120へ給紙される。プリンタユニット120は印刷紙14に印刷し、印刷後の印刷紙14を出力紙トレイ13へ排出する。
【0009】
本体11にはプロジェクタ(投射ユニット220)も設けられている。図1(a)の使用位置において、投射ユニット220はカバー12にセットされている印刷紙14の上に光学像を投射するように構成される。印刷紙14がカバー12にセットされていない場合には、投射ユニット220がカバー12上に光学像を投射するため、カバー12の表面(投射面)は略白色に構成されている。
【0010】
投射ユニット220から画像が投射されるカバー12の面12aには、印刷紙14の大きさより僅かに小さな開口が形成されている。したがって投射ユニット220から射出された投射像は、印刷紙14に直接投射される。また、通常カバー12には複数の印刷紙14が収納されており、印刷が開始されると印刷紙14のうち面12aに一番近い印刷紙14が、印刷の進み具合に応じて徐々に本体11に引き込まれる。なお、カバー12に印刷紙14がなくなってしまった場合には、カバー12の面12aと対向する面12b上に投射像が投射される。なお、開口を設けずに投射像をカバー12の面12aに投射しても構わない。
【0011】
図2は、図1のプリンタ10の構成を説明するブロック図である。図2において、プリンタ10にはプリンタユニット120と、投射ユニット220と、CPU101と、メモリ102と、操作部材103と、外部インターフェイス(I/F)回路104と、液晶表示器105と、ハードディスクドライブ(HDD)106と、電源回路107とが備えられ、着脱可能なメモリカード150が実装される。
【0012】
CPU101は、制御プログラムに基づいて、プリンタ10を構成する各部から入力される信号を用いて所定の演算を行うなどして、プリンタ10の各部に対する制御信号を送出することにより、プリンタ10の印刷動作および投影動作をそれぞれ制御する。なお、制御プログラムはCPU101内の不図示の不揮発性メモリに格納される。
【0013】
メモリ102はCPU101の作業用メモリとして使用される。操作部材103は押下操作されたボタン、操作されたスイッチに対応する操作信号をCPU101へ送出する。メモリカード150は不揮発性メモリによって構成され、CPU101の指示によりデータの書き込み、保存および読み出しが可能である。
【0014】
外部インターフェイス回路104は、CPU101の指示により不図示のケーブルまたは無線通信ユニットを介して外部機器(電子カメラ100、パーソナルコンピュータなど)との間でコマンドおよびデータを送受信する。
【0015】
ハードディスクドライブ(HDD)106は、CPU101の指示によりデータの書き込み、保存および読み出しが可能である。ハードディスクドライブ(HDD)106の記録容量はメモリカード150の記録容量に比べて大きいので、プリンタ10に対して印刷が指示された画像ファイルなどを多数保存できる。電源回路107は、たとえば、AC/DC変換回路などで構成され、商用電源をプリンタ10内の各部で必要な直流電源に変換し、変換後の電圧をプリンタ内各部へ供給する。
【0016】
液晶表示器105は、CPU101の指示により画像やテキストなどの情報を表示する。テキスト情報は、プリンタ10の動作状態、操作メニュー、メッセージなどである。
【0017】
プリンタユニット120は、モータ群121、プリンタヘッド122、印刷制御回路123、およびセンサ群124を含む。モータ群121は、給排紙用のモータおよびプリンタヘッド122を駆動するモータなどを含む。プリンタヘッド122は、給送された印刷紙14に印字および印画を行うインクノズルを含む。印刷制御回路123は、CPU101からの指示により、モータ群121およびプリンタヘッド122へ制御信号を送出する。センサ群124は、印刷紙14の有無、印刷紙14の給送位置、インク残量などを検出する各センサを含み、それぞれの検出信号を印刷制御回路123へ出力する。
【0018】
投射ユニット220は、投影光学系221、液晶パネル222、LED光源223、および投射制御回路224を含む。LED光源223は、供給電流に応じた明るさで液晶パネル222を照明する。液晶パネル222は、投射制御回路224からの駆動信号に応じて光像を生成する。投影光学系221は、液晶パネル222から射出される光像を印刷紙14またはカバー12へ向けて投射する。投射制御回路224は、CPU101からの指示により、LED光源223および液晶パネル222へ制御信号を送出する。CPU101は、カバー12が図1(b)に示す収納位置にある場合、投射ユニット220を投射させない。
【0019】
本実施形態では、液晶パネル222として図3に示すように反射型の液晶パネルを使用する。液晶パネル222として透過型の液晶パネルを使用しても構わない。なお、液晶パネル222の代わりにDMDを使用することもできる。
【0020】
CPU101は、投射ユニット220が投射する投射像の台形歪みを補正するための台形歪み補正処理も行う。投射ユニット220の投射時には、台形補正処理を施した投影データを投射制御回路224へ送出する。
【0021】
プリンタ10は、画像やテキストの印刷を行う。画像は、装着されたメモリカード150に記録されている画像ファイルの再生画像、外部インターフェイス回路104を介して外部機器から送信された画像ファイルの再生画像、およびハードディスクドライブ(HDD)106内に蓄積されている画像ファイルの再生画像のうち、指示された画像を印刷する。テキストは、メモリカード150に記録されているテキスト情報や、外部機器から送信されたテキスト情報などを印刷する。
【0022】
投射ユニット220の詳細について、図3および図4を参照して説明する。図3は、投射ユニット220の光学系を拡大した図である。図4は、図3の光学系を左側から見た図であり、投影光学系21を省略してある。
【0023】
投射ユニット220の光学系は、1辺が約10mmの略正方形を底面とする四角柱形状のモジュール(以降モジュールと呼ぶ)として構成される。モジュールは長手方向を縦(上下)に配設され、熱伝導性の高い金属で構成された本体11(図1)のシャシー15とその底面(下面)が接合される。なお、図3および図4は、内部構成をわかりやすく図示するために、四角柱の長手方向のサイズを実際より長く表している。
【0024】
モジュールには、白色LED223(LED基板230)と、集光光学系224と、偏光板225と、PBS(偏光ビームスプリッタ)ブロック226と、液晶パネル222と、投影光学系221とが含まれる。上記部材のうち、投影光学系221を除く部材はシェル部材231内に一体化構成される。具体的には、アルミ製薄板部材を折り曲げ加工した部材231の下部開放面に、LED基板230が配設される。LED基板230はアルミ基板で構成され、当該基板の絶縁層上に形成されているパターン上に、発光素子であるLED223が実装される。
【0025】
シェル部材231にはさらに、集光光学系224およびPBSブロック226が接着される。PBSブロック226は、入射光軸に対して45度の角度をなす偏光分離部226aを2つの三角プリズムで挟んだ偏光ビームスプリッタである。PBSブロック226の面226bには、たとえば、黒色処理などの無反射処理が施される。
【0026】
PBSブロック226の下側面(集光光学系224側の面)には偏光板225が配設され、PBSブロック226の上側面には反射型液晶素子(LCOS)によって構成される液晶パネル222が配設される。
【0027】
シャシー15は本体11のフレームを構成する。シャシー15およびLED基板230間は、発熱部材(本実施形態ではLED基板30)からの熱伝導をよくするように面接合される。具体的には、シャシー15の面およびLED基板30間に熱伝導性が高い充填材を充填したり、熱伝導性シール部材を挟んだりする。効率よい熱伝導経路を形成することで、投射ユニット220の温度上昇が抑えられている。
【0028】
上記構成のモジュールにおいて、不図示のハーネスおよびパターンを介してLED基板230上のLED223に駆動電流が供給される。LED223は、駆動電流に応じた明るさの光を集光光学系224へ向けて射出する。集光光学系224はLED光を略平行光にして偏光板225へ入射させる。偏光板225は入射光を直線偏光に変換(または抽出)し、変換(または抽出)後の偏光光をPBSブロック226へ向けて射出する。
【0029】
PBSブロック226へ入射された偏光光束(たとえばP偏光)は、PBSブロック226を透過して液晶パネル222を照明する。液晶パネル222は、赤、緑、青のフィルターが形成された複数の画素から構成され、カラーの画像を生成するように駆動されている。液晶パネル222の液晶層を透過する光は、液晶パネル222へ入射されると当該液晶層を上向きに進行し、液晶パネル222の反射面で反射された後、液晶層を下向きに進行して液晶パネル222から射出され、PBSブロック226へ再度入射される。電圧が印加された液晶層は位相板として機能するので、PBSブロック226へ再度入射される光は、S偏光である変調光とP偏光である非変調光との混合光である。PBSブロック226は、再入射された光束のうちS偏光成分である変調光のみを偏光分離部226aで反射(折り曲げる)し、左方の投影光学系221へ向けて投影光として射出する。
【0030】
<メイン処理>
以下、図5のフローチャートを参照して印刷動作の流れを説明する。図5は、CPU101で行われるメイン処理を例示するフローチャートである。図5による処理は、プリンタ10のメインスイッチがオンされると起動する。
【0031】
図5のステップS51において、CPU101は、モード選択を行ってステップS52へ進む。プリンタ10は静止画印刷モードと動画印刷モードとを有する。CPU101は、操作部材103から静止画モードを指示する操作信号が入力されると静止画モードに設定し、動画モードを指示する操作信号が入力されると動画モードに設定する。
【0032】
<静止画モード>
静止画モードに設定した場合を説明する。ステップS52において、CPU101は、操作部材103からの操作信号によって指示されたフォルダ(メモリカード150内、外部機器から送信されたデータを記憶したメモリ102内、またはハードディスクドライブ(HDD)106内に作成されている)内に格納されている静止画像ファイル(たとえば、拡張子を「.JPG」で示す形式)について、それぞれのサムネイル画像を投射ユニット220に投射させてステップS53へ進む。具体的には、各サムネイル画像のデータを読出してメモリ102上の所定領域に展開し、展開後のデータを投射制御回路224へ送出するとともに、投射制御回路224に投射を指示する。
【0033】
図7は、カバー12にセットされた印刷紙14上の投射像を例示する図である。図7において、複数のサムネイル画像が並べて投射されている。サムネイル画像が9画像以上存在する場合は、投射ページを切換えて9画像ずつ投射する。CPU101は、操作部材103(たとえば十字キー)からの操作信号によって指示された位置のサムネイル画像に重ねてカーソルを(図7において太い枠)を投射させる。なお、同時に投射するサムネイル画像の数は、例示した9画像に限らず、4画像でも20画像でもよい。
【0034】
CPU101は、1画像ずつの投射を指示する操作信号が操作部材103から入力されると、図8に例示する投射像に切換える。図8によれば、いずれか1つの静止画像ファイルに対応するサムネイル画像が、大きく引き延ばして投射されている。CPU101は、操作部材103(たとえば十字キー)からの操作信号に応じて、投射するサムネイル画像を順に切換える。CPU101は、1画面当たり9画像の投射を指示する操作信号が操作部材103から入力されると、再び図7に例示する投射像に切換える。
【0035】
ステップS53において、CPU101は、選択操作されたか否かを判定する。CPU101は、操作部材103(たとえばOKボタン)からの操作信号が入力されるとステップS53を肯定判定してステップS54へ進み、OKボタンからの操作信号が入力されない場合にはステップS53を否定判定してステップS59へ進む。
【0036】
ステップS54において、CPU101は、選択画像を投射ユニット220に投射させてステップS55へ進む。具体的には、図7に例示する投射像を投射中の場合、OKボタンからの操作信号が入力された時点でカーソルが重ねられているサムネイル画像に対応する画像ファイルの本画像を選択画像とする。また、図8に例示する投射像を投射中の場合は、OKボタンからの操作信号が入力された時点で投射中のサムネイル画像に対応する画像ファイルの本画像を選択画像とする。CPU101は、選択画像、すなわち印刷対象画像とする本画像データを読出してメモリ102上の所定領域に展開し、展開後のデータを投射制御回路224へ送出するとともに、投射制御回路224に投射を指示する。
【0037】
図9は、カバー12にセットされた印刷紙14上の投射像を例示する図である。図9において、印刷紙の大きさを示す枠91と、印刷範囲を示す枠92とがそれぞれ投影内容に含められ、投射像のサイズは印刷サイズより小さく制御されている。CPU101は、プリンタユニット120で用いられる印刷条件(たとえば、用紙サイズ、印刷倍率、印刷位置(印刷紙の余白)、印刷色の色合い、印刷の濃淡など)を投射像で再現するように、投射条件を投射制御回路224に指示する。なお、投射像による印刷条件の再現は、上記項目のうち、指示された項目のみを再現してもよい。
【0038】
CPU101は、印刷紙14がカバー12にセットされていない、印刷紙14の給送異常、インク残量低下などを示す信号を印刷制御回路123から受信した場合、選択画像に代えて、または選択画像に重ねて、印刷に関する警告情報を投射させる。投射像に含める警告情報は、メッセージでもマークでもよい。
【0039】
ステップS55において、CPU101は、印刷条件を変更する操作が行われたか否かを判定する。CPU101は、操作部材103(たとえばMENUボタン)からの操作信号が入力されるとステップS55を肯定判定してステップS56へ進み、MENUボタンからの操作信号が入力されない場合にはステップS55を否定判定してステップS57へ進む。
【0040】
ステップS56において、CPU101は、操作部材103からのMENU操作信号に応じて印刷条件の変更情報を印刷制御回路123へ送信し、ステップS57へ進む。なお、ステップS55を否定判定した場合、印刷制御回路123はデフォルトの印刷条件を用いるため、印刷制御回路123への情報送信は不要である。
【0041】
ステップS57において、CPU101は、印刷指示操作が行われたか否かを判定する。CPU101は、操作部材103(たとえばOKボタン)から操作信号が入力されるとステップS57を肯定判定してステップS58へ進み、OKボタンから操作信号が入力されない場合にはステップS57を否定判定してステップS51へ戻る。
【0042】
ステップS58において、CPU101は印刷処理を行ってステップS59へ進む。印刷処理の詳細については後述する。ステップS59において、CPU101は、終了指示されたか否かを判定する。CPU101は、操作部材103から終了を指示する操作信号が入力された場合にステップS59を肯定判定して図5による処理を終了し、操作部材103から終了を指示する操作信号が入力されない場合にはステップS59を否定判定してステップS51へ戻る。
【0043】
<印刷処理>
静止画モードにおける印刷処理の詳細について、図6に例示するフローチャートを参照して説明する。図6のステップS61において、CPU101は、印刷制御回路123に印刷開始を指示してステップ62へ進む。具体的には、選択画像としてメモリ102上の所定領域に展開されている本画像データを印刷制御回路123へ送出する。
【0044】
ステップS62において、CPU101は、投射制御回路224へ黒画像の投射を指示してステップS63へ進む。これにより、図9に例示した投射像が一旦ブラックアウトされ、印刷情報(選択画像)を含まない状態になる。なお、黒以外の色(たとえば青色)の投射でもよい。ステップS63において、CPU101は選択画像の先頭1ライン分の投射を行うように投射制御回路224へ指示してステップS64へ進む。1ライン分の投射幅は、プリンタユニット120によって印刷紙14に印刷される1ライン分の印刷幅と略等しく制御する。
【0045】
ステップS64において、CPU101は、1ラインの印刷が終了したか否かを判定する。CPU101は、印刷制御回路123から1ライン分の印刷終了を示す信号が入力されるとステップS64を肯定判定してステップS65へ進み、1ライン分の印刷終了を示す信号が入力されない場合にはステップS64を否定判定し、当該判定処理を繰り返す。
【0046】
ステップS65において、CPU101は、投射中の選択画像について、次の1ラインを加えた投射を行うように投射制御回路224へ指示してステップS66へ進む。これにより、投射像に含まれる印刷情報(選択画像)が1ライン分広くなる。
【0047】
ステップS66において、CPU101は、さらに1ラインの印刷が終了したか否かを判定する。CPU101は、印刷制御回路123から次の1ライン分の印刷終了を示す信号が入力されるとステップS66を肯定判定してステップS67へ進み、1ライン分の印刷終了を示す信号が入力されない場合にはステップS66を否定判定し、当該判定処理を繰り返す。
【0048】
ステップS67において、CPU101は、選択画像について全ラインを投射中か否かを判定する。CPU101は、投射制御回路224から全ライン分を投射中である(すなわち、投射像に印刷情報全体を含めている)ことを示す信号が入力されるとステップS67を肯定判定してステップS68へ進み、全ラインを投射中であることを示す信号が入力されない場合にはステップS67を否定判定してステップS65へ戻る。
【0049】
図10は、1ラインずつ広げられる投射像を例示する図である。プリンタユニット120における印刷速度に同期して、投射像に含まれる選択画像が先頭ラインから1ラインずつ加えられ、選択画像の範囲が徐々に広げられる。選択画像の範囲の広がりに伴い、投射像に含まれるブラックアウト領域は徐々に縮小される。
【0050】
図6のステップS68において、CPU101は印刷終了か否かを判定する。CPU101は、全ライン分を印刷し、印刷紙14の排紙終了を示す信号が印刷制御回路123からが入力されるとステップS68を肯定判定し、投射制御回路224へ投射終了(LED223の消灯)を指示して図6による処理を終了する。CPU101は、全ラインの印刷終了および排紙終了を示す信号が入力されない場合にはステップS68を否定判定し、当該判定処理を繰り返す。
【0051】
<動画モード>
動画モードに設定した場合を説明する。CPU101は、図5のステップS52において、操作部材103からの操作信号によって指示されたフォルダ(メモリカード150内、外部機器から送信されたデータを記憶したメモリ102内、またはハードディスクドライブ(HDD)106内に作成されている)内に格納されている動画像ファイル(たとえば、拡張子を「.MOV」で示す形式)について、それぞれの動画を構成する複数のコマを代表する画像(たとえば先頭画像)を投射ユニット220に投射させる。
【0052】
図11は、カバー12にセットされた印刷紙14上の投射像を例示する図である。図11において、複数の動画像ファイルについての代表画像が並べて投射されている。代表画像(すなわち動画ファイル)が9以上存在する場合は、投射ページを切換えて9画像ずつ投射する。CPU101は、操作部材103(たとえば十字キー)からの操作信号によって指示された位置の代表画像に重ねてカーソルを(図11において太い枠)を投射させる。同時に投射する代表画像の数は、例示した9つに限らなくともよい。
【0053】
また、静止画モードの場合と同様に、1画像ずつの投射を指示する操作信号が操作部材103から入力されると、図8と同様の投射像に切換える。すなわち、いずれか1つの動画像ファイルに対応する代表画像を大きく引き延ばして投射する。この場合のCPU101は、操作部材103(たとえば十字キー)からの操作信号に応じて、投射する代表画像を順に切換える。CPU101はさらに、1画面当たり9画像の投射を指示する操作信号が操作部材103から入力されると、再び図11に例示する投射像に切換える。
【0054】
動画モードでは、選択されている動画像ファイルを投射ユニット220で動作再生(投射)させながら、プリンタユニット120に当該動画像ファイルの代表画像を印刷させる。
【0055】
図12は、動画モード時に図5のステップS54において投射される印刷紙14上の投射像を例示する図である。図12において、印刷紙の大きさを示す枠と、印刷範囲を示す枠とがそれぞれ投射内容に含められ、投射像のサイズは印刷サイズより小さく制御されている。CPU101は、プリンタユニット120で用いられる印刷条件(たとえば、用紙サイズ、印刷倍率、印刷位置(印刷紙の余白)、印刷色の色合い、印刷色の濃淡など)を投射像で再現するように、投射条件を投射制御回路224に指示する。なお、投射像による印刷条件の再現は、上記項目のうち、指示された項目のみを再現してもよい。
【0056】
<印刷処理>
動画モードにおける印刷処理の詳細について、図13に例示するフローチャートを参照して説明する。図13のステップS71において、CPU101は、印刷(投射)対象として選択された動画像ファイルの動画再生の開始を投射制御回路224へ指示してステップS72へ進む。具体的には、メモリ102上の所定領域に動画像ファイルを構成するコマ画像を順次展開し、先頭コマの画像データから順に投射制御回路224へ送出する(たとえば、フレームレート30コマ/秒)。これにより、投射ユニット220が先頭コマから順に動画再生を開始する。
【0057】
ステップS72において、CPU101は印刷制御回路123に代表画像の印刷を指示してステップS73へ進む。具体的には、メモリ102上の所定領域に展開されている代表画像データを印刷制御回路123へ送出する。
【0058】
ステップS73において、CPU101は、動画再生が終了したか否かを判定する。CPU101は、投射制御回路224から最終コマの投射終了を示す信号が入力されるとステップS73を肯定判定してステップS74へ進み、最終コマの投射終了を示す信号が入力されない場合にはステップS73を否定判定し、当該判定処理を繰り返す。
【0059】
ステップS74において、CPU101は印刷終了か否かを判定する。CPU101は、代表画像を印刷し、印刷紙14の排紙終了を示す信号が印刷制御回路123からが入力されるとステップS74を肯定判定し、投射制御回路224へ投射終了(LED223の消灯)を指示して図13による処理を終了する。CPU101は、印刷終了および排紙終了を示す信号が入力されない場合にはステップS74を否定判定し、当該判定処理を繰り返す。
【0060】
以上説明した第一の実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。
(1)プリンタ10にプリンタユニット120および投射ユニット220を備え、プリンタユニット120が印刷対象画像を印刷開始する前に、印刷対象画像を投射ユニット220に投影させる(ステップS54)ようにした。これにより、操作者は、大きな投射像から印刷画像(印刷対象画像)の詳細を事前に確認した上で、プリンタ10に印刷させるか否かを決定できる。
【0061】
(2)投射ユニット220は、印刷中の印刷紙14上でなく、カバー12(またはセットされている印刷紙14の上)に印刷対象画像を投影する。投射される面と印刷される面とが異なるので、プリンタユニット120による印刷前はもちろん、印刷中も印刷後も投射ユニット220による投影を継続することができる。また、印刷紙14は白色が多いので、色地の上に投影する場合に比べて色合いの確認が容易である。
【0062】
(3)投射像をプリンタ10の筐体の一部を構成するカバー12に向けて投影するので、専用の投射スクリーンを設ける必要がない。カバー12は回動軸Oを軸に収納位置(図1(b))へ回動するように構成したので、コンパクトに収納できる。
【0063】
(4)投射ユニット220による投射像のサイズをプリンタユニット120による印刷範囲より小さく制御したので、投射像が印刷紙14の実サイズからはみ出すおそれがない。
(5)投射ユニット220が投影する光学像に印刷紙14の範囲を示す枠、およびプリンタユニット120による印刷範囲を示す枠をそれぞれ含めるようにしたので、投射像によって印刷余白を事前に確認することができる。
【0064】
(6)投射ユニット220による投射像の投射条件を、プリンタユニット120で用いられる印刷条件(用紙サイズ、印刷倍率、印刷位置、印刷色の色合い、印刷の濃淡)を再現するように制御したので、投射像によって印刷画像(印刷状況)を事前に確認することができる。
【0065】
(7)プリンタユニット120による印刷中は、印刷の進行状態を示す光学像(たとえば、印刷対象画像の範囲が徐々に広がる投射像)を投射ユニット220から投影するようにした(ステップS62〜ステップS67)。これにより、操作者は、投射像によって印刷進行状態を知ることができる。
【0066】
(8)プリンタユニット120による印刷中に投射ユニット220から投影する投射像は、印刷開始後一旦ブラックアウトさせてから、プリンタユニット120の印刷進行にともなって1ライン分印刷するごとに投射ユニット220から投影する印刷対象画像の範囲を1ライン分広げるように制御したので、どこまで印刷が進んだかをリアルタイムに示すことができる。
【0067】
(9)プリンタユニット120による印刷が終了すると、投射ユニット220による投影を終了するように制御したので、印刷終了を確実に知らせることができる。
(10)プリンタユニット120による印刷中に投射ユニット220から投影する投射像に、印刷紙14の給送異常、インク残量低下などを示す警告情報を含めるようにしたので、異常発生の旨をただちに知らせることができる。
【0068】
(11)プリンタ10にプリンタユニット120および投射ユニット220を備え、投射ユニット220が複数のサムネイル画像を投影中に指示された画像を、プリンタユニット120に印刷させるようにした(ステップS52〜ステップS58)。これにより、操作者は、大きく投影された複数の画像を見ながら印刷対象画像を指示できる。
【0069】
(12)投射ユニット220は、複数の画像データを用いて再生した複数のサムネイル画像を並べて投影するようにしたので、操作者は、大きく投影された複数の画像を一度に見ながら印刷対象画像を指示できる。
【0070】
(13)投射ユニット220は、複数の画像データを用いて再生した複数のサムネイル画像を大きく引き延ばし、1画像ずつ順番に投影するようにしたので、操作者は、大きく投影された画像を順番に確認しながら印刷対象画像を指示できる。
【0071】
(14)プリンタ10にハードディスクドライブ(HDD)106を設け、この中に蓄積されている画像データを用いて再生した複数のサムネイル画像を投影するようにしたので、操作者は、数多くの画像の中から印刷対象画像を指示できる。
【0072】
(15)プリンタ10が過去に印刷した画像データをハードディスクドライブ(HDD)106に蓄積するようにしたので、印刷するたびに外部からプリンタ10へ画像データを読み込ませる必要がなくなり、簡単に再印刷を行うことができる。
【0073】
(16)操作部材103からの操作信号によって印刷対象画像の指示を受けるようにしたので、操作者は、大きく投影された画像を順番に確認しながら操作部材103を操作し、プリンタ10に印刷対象画像を直接指示できる。
【0074】
(17)電子カメラ100からの操作信号によって印刷対象画像の指示を受けるようにしたので、操作者は、大きく投影された画像を順番に確認しながら電子カメラ100の操作部材を操作し、プリンタ10から離れた位置から印刷対象画像を指示できる。
【0075】
(18)プリンタユニット120および投射ユニット220を備えるプリンタ10は、動画像ファイルの画像を印刷または投影する動画印刷モードと、静止画像ファイルの画像を印刷または投影する静止画印刷モードとを有し、選択された印刷モードに応じてプリンタユニット120および投射ユニット220を制御するようにした。これにより、静止画、動画にかかわらず、適切に画像をアウトプットさせることができる。
【0076】
(19)プリンタ10は、指示された印刷対象画像が動画像ファイルに含まれる場合は動画印刷モードを、指示された印刷対象画像が静止画像ファイルに含まれる場合には静止画印刷モードを、それぞれ自動的に選択するようにした。これにより、印刷対象画像に応じて印刷モードを選択する操作を不要にすることができる。
【0077】
(20)動画印刷モードの場合、投射ユニット220によって印刷対象画像として指示された動画像を再生投射したので、動画像を投射像としてアウトプットできる。また、プリンタユニット120によって印刷対象画像として指示された動画像の代表画像を印刷したので、動画像の1コマを印刷画像としてアウトプットできる。
【0078】
(21)印刷指示を受けてから(ステップS57を肯定判定)プリンタユニット120が印刷を始めるようにしたので、操作者が投影画像を確認している途中で印刷処理が始まることがない。
【0079】
(変形例1)
図5のフローチャートは、印刷対象の画像が1画像ずつ選択され、選択された画像を1画像ずつ印刷する場合の処理の流れを例示したものである。この代わりに、印刷対象の画像選択を複数画像まとめて行うようにし、選択された複数の画像をまとめて印刷するようにしてもよい。
【0080】
(変形例2)
静止画モードの場合、上述した動作の他に以下の動作を行う構成にしてもよい。CPU101は、ステップS51のモード選択処理の中で静止画モードに設定する際、操作部材103からの操作信号に応じて静止画モード1〜静止画モード3のいずれか1つをさらに選択、設定する。
【0081】
静止画モード1は、上述した図5および図6で示す態様の動作を行うモードである。静止画モード2は、プリンタユニット120における印刷中に投射ユニット220による投射を行わないモードである。具体的には、図6のステップS61において印刷制御回路123に印刷開始を指示した後は、ステップS62からステップS67までの処理をスキップし、ステップS68において印刷終了が判定されるまで投射ユニット220に投射を停止させる。
【0082】
静止画モード3は、いわゆる「スライドショー」投射を行う動作モードである。このモードを選択したCPU101は、選択された画像を1画像ずつ所定時間ごとに投射ユニット220で順次投射させ、プリンタユニット120による印刷は行わない。
【0083】
なお、画像ファイルのExif情報の中に適用する動作モードを示す情報を記録しておき、その記録情報にしたがって当該画像ファイルに対する動作の態様を決定するようにしてもよい。この場合には、静止画モード1〜静止画モード3の中から適用する動作モードを選択、設定する操作を不要にできる。
【0084】
変形例2によれば、静止画印刷モードを静止画モード1〜静止画モード3の3通りに分類し、いずれか1つを選択可能に構成したので、投射像としてアウトプットしたり、印刷画像としてアウトプットしたり、アウトプットの態様を選ぶことができる。
【0085】
静止画モード3では、選択された画像を1画像ずつ順番に投射ユニット220で投射させるので、操作者が所望する画像のみを投射像として続けてアウトプットさせることができる。
【0086】
(変形例3)
動画モードの場合にも、上述した動作の他に以下の動作を行う構成にしてもよい。CPU101は、ステップS51のモード選択処理の中で動画モードに設定する際、操作部材103からの操作信号に応じて動画モード1〜動画モード3のいずれか1つをさらに設定する。
【0087】
動画モード1は、上述した図5および図13で示す態様の動作を行うモードである。動画モード2は、選択されている動画像ファイルを投射ユニット220で動作再生(投射)させるのみで、プリンタユニット120による印刷を行わない動作モードである。具体的には、図13においてステップS72およびステップS74をスキップし、ステップS71およびステップS73のみを実行する。
【0088】
動画モード3は、選択されている動画像ファイルを投射ユニット220で動作再生(投射)させながら、動画再生中の印刷指示(操作部材103からの操作信号)に応じて、操作信号の発生タイミングを挟む前後所定コマずつの画像を、プリンタユニット120に印刷させる動作モードである。
【0089】
動画モード3における印刷処理の詳細について、図14に例示するフローチャートを参照して説明する。図14のステップS81において、CPU101は、印刷(投射)対象として選択された動画像ファイルの動画再生の開始を投射制御回路224へ指示してステップS82へ進む。これにより、投射ユニット220が先頭コマから順に動画再生を開始する。
【0090】
ステップS82において、CPU101は、動画再生中に印刷コマが指示された否かを判定する。CPU101は、操作部材103から操作信号が入力されるとステップS82を肯定判定してステップS83へ進み、操作信号が入力されない場合にはステップS82を否定判定してステップS86へ進む。
【0091】
ステップS83において、CPU101は、印刷制御回路123に所定コマ(たとえば8コマ)分の画像の印刷を指示してステップS84へ進む。具体的には、メモリ102上の所定領域に展開されている直近の4コマ(投影済み)の画像データと、直後にメモリ102上に展開される4コマ(投影前)の画像データを印刷制御回路123へ順に送出する。これにより、プリンタユニット120が印刷コマ指示(印刷開始指示)タイミングを挟む前後4コマの画像を印刷する。
【0092】
ステップS84において、CPU101は、動画再生が終了したか否かを判定する。CPU101は、投射制御回路224から最終コマの投射終了を示す信号が入力されるとステップS84を肯定判定してステップS85へ進み、最終コマの投射終了を示す信号が入力されない場合にはステップS84を否定判定し、当該判定処理を繰り返す。
【0093】
ステップS85において、CPU101は印刷終了か否かを判定する。CPU101は、計8コマ分の画像を印刷し、印刷紙14の排紙終了を示す信号が印刷制御回路123からが入力されるとステップS85を肯定判定し、投射制御回路224へ投射終了(LED223の消灯)を指示して図14による処理を終了する。CPU101は、印刷終了および排紙終了を示す信号が入力されない場合にはステップS85を否定判定し、当該判定処理を繰り返す。
【0094】
ステップS82を否定判定して進むステップS86において、CPU101は、動画再生が終了したか否かを判定する。CPU101は、投射制御回路224から最終コマの投射終了を示す信号が入力されるとステップS86を肯定判定し、投射制御回路224へ投射終了(LED223の消灯)を指示して図14による処理を終了する。ステップS86を肯定判定するのは印刷コマが指示されなかった場合である。CPU101は、最終コマの投射終了を示す信号が入力されない場合にはステップS86を否定判定し、ステップS82へ戻って印刷コマ指示を待つ。
【0095】
変形例3によれば、動画印刷モードを動画モード1〜動画モード3の3通りに分類し、いずれか1つを選択可能に構成したので、投射像としてアウトプットしたり、印刷画像としてアウトプットしたり、アウトプットの態様を選ぶことができる。
【0096】
動画モード3では、投射ユニット220から動画像を再生投射中に印刷コマ指示されたタイミングを挟んで直前直後の計8コマをプリンタユニット120で印刷させるようにしたので、操作者が所望するカットを含むように、印刷画像を複数アウトプットさせることができる。
【0097】
なお、画像ファイルのExif情報の中に適用する動作モードを示す情報を記録しておき、その記録情報にしたがって当該画像ファイルに対する動作の態様を決定するようにしてもよい。この場合には、動画モード1〜動画モード3の中から適用する動作モードを選択、設定する操作を不要にできる。
【0098】
(変形例4)
静止画モード1では、プリンタユニット120による印刷状況に応じて投射ユニット220による投射像が含む印刷情報(選択画像)を1ラインずつ広げる(図10)ようにした。これとは逆に、プリンタユニット120による印刷状況に応じて投射ユニット220による投射像が含む印刷情報(選択画像)を1ラインずつ減じるようにしてもよい。この場合、印刷開始当初は選択画像の全体を含めて投射しておき、プリンタユニット120における印刷速度に同期して、投射像に含む印刷情報(選択画像)を下方へ1ラインずつシフトさせるとともに、投射像の上方から1ラインずつブラックアウトさせる。シフトおよびブラックアウト領域の広がりに伴い、投射像に含まれる印刷情報(選択画像)は徐々に狭まる。変形例4によれば、投射されている印刷情報(選択画像)が印刷紙14とともに本体11に吸い込まれるように見える一方で、印刷された印刷紙14が出力紙トレイ13へ徐々に排出されるので、操作者は、投射されている選択画像が印刷出力に変化するかのように感じながら、どこまで印刷が進んだかをリアルタイムに知ることができる。
【0099】
(変形例5)
投射ユニット220による投射像が含む印刷情報(選択画像)を、プリンタユニット120による印刷進行状態に応じて変化させることに加え、投射像が含む印刷情報(選択画像)をパンもしくはチルト、またはズームアップ、ズームダウンさせるエフェクトを加えるようにしてもよい。印刷に要する時間が所定時間より長い場合には、エフェクトを加えて投射像を変化させることにより、印刷所要時間が長いことを操作者に知らせた上で、変化のある投射像を提供して操作者を飽きさせないようにする。
【0100】
(変形例6)
CPU101が投射ユニット220による投射像の台形歪みを電子的に補正する例を説明したが、プリンタユニット120による印刷時に生じる振動に起因する投影像の揺れも電子的に補正してもよい。一般に、プリンタヘッド122が印刷ライン方向に移動する場合や印刷紙14を給送する場合にプリンタ10は振動する。CPU101は、この振動によって生じる印刷紙14上の投射像の揺れを抑えるように投射画像を補正する。具体的には、メモリ102上の所定領域に展開された画像データの位置を示す座標情報を、プリンタヘッド122の移動速度、移動量、移動方向、および印刷紙14の給送状態に同期させて所定量ずらす。これにより、画像データがメモリ空間において電子的にシフトする。CPU101は、このように印刷時の揺れ補正処理を施した投影データを投射制御回路224へ送出し、投射像の揺れが操作者に与える不快感を抑える。
【0101】
(変形例7)
複数並べて投射したサムネイル画像(図7)または代表画像(図11)の中から印刷対象画像を選択するための選択操作の検出を、操作部材103からの操作信号を用いて行う代わりに、電子カメラ100からの操作信号を用いて行ってもよい。図2の電子カメラ100は、十字キーやメニュースイッチの操作信号をプリンタ10へ無線送信する機能を有する。プリンタ10のCPU101は、外部インターフェイス(I/F)回路104を介して受信される操作信号に応じて印刷対象画像を選択する。電子カメラ100を携帯する操作者は、プリンタ10と離れた位置から印刷対象画像を選択できる。なお、電子100からプリンタ10への操作信号の送信は、有線送信しても構わない。
【0102】
(第二の実施形態)
プリンタに撮像機能を持たせ、プリンタが撮像した画像を用いて印刷対象画像を選択するための操作検出を行う構成としてもよい。図15は、カメラユニット320を搭載するプリンタ10Aの構成を説明するブロック図である。図2に例示したブロック図と同じ構成には共通の符号を付して説明を省略する。CPU101Aは、プリンタユニット120および投射ユニット220の制御に加え、カメラユニット320の制御も行う。
【0103】
カメラユニット320は撮像光学系331、撮像素子322および撮像制御回路323を有し、CPU101Aからの指示に応じて投射ユニット220による投射像を撮像する。撮像光学系321および撮像素子322は、たとえば図1(a)、図1(b)における投射ユニット220の近傍に並べて配設される。
【0104】
撮像光学系321は、撮像素子322の撮像面上に被写体像(本例の場合はカバー12にセットされた印刷紙14上の投射像)を結像させる。撮像素子322としては、CCDやCMOS撮像素子などが用いられる。撮像制御回路323は、CPU101Aからの指示により撮像素子322を駆動制御するとともに、内蔵する画像変化検出回路(不図示)で撮像画像の変化を検出する。具体的には、所定間隔ごと(たとえば15コマ/秒)に撮像素子322から出力される撮像画像について、時間的に連続するフレーム画像間の画像データの差の有無を判定する。
【0105】
プリンタ10Aの操作者は、サムネイル画像(代表画像)を投射中に印刷紙14と投射ユニット220との間の空間に手をかざし、投射光束の一部を遮る。これにより、新たに撮像されるフレーム画像には操作者の手が含まれるため、前フレーム画像との間に差異が生じる(画像が変化する)。
【0106】
撮像制御回路323は、撮像画像を複数の領域(投射中のサムネイル画像に対応させるのが好ましい)に分割し、各分割領域ごと(ブロックと呼ぶ)に最新フレーム画像と前フレーム画像との差異が所定値を超えるか否かを判定する。撮像制御回路323は、フレーム間の差異が所定値を超えるブロックを検出すると、その状態がたとえば0.5秒以上継続されるか否かをチェックする。撮像制御回路323は、検出したブロックについて、その後の少なくとも連続する8フレーム分の撮像画像について、同一ブロック内で継続して変化が発生したと判断した場合には(すなわち、同一ブロックで0.5秒以上継続して手が撮像されていれば)、印刷対象画像が指示されたと判定し、当該ブロックを示す信号をCPU101Aへ送出する。
【0107】
ブロックを示す信号を受信したCPU101Aは、投射制御回路224へ指示した投射像(図7に例示した複数の画像)と、撮像制御回路323から送信された信号とを対比させて印刷対象画像を検出する。たとえば、撮像制御回路323からの信号が投射画面の左下ブロックを示している場合、CPU101Aは、投射ユニット220へ投射させている左下のサムネイル画像(代表画像)を選択画像とする。
【0108】
一方、撮像制御回路323が検出したブロックについて、その後の連続する7フレームの間に同一ブロック内で変化が発生しなくなったと判断した場合には(すなわち、0.5秒経過する前に同一ブロックで手が撮像されなくなれば)、印刷対象画像が指示されていないと判定し、CPU101Aへ信号送出を行わない。
【0109】
以上説明した第二の実施形態によれば、以下の作用効果が得られる。
(1)投射ユニット220を有するプリンタ10Aにカメラユニット320を備え、投射ユニット220による投射像を、カメラユニット320で所定間隔ごとに撮像させる。プリンタ10Aは、撮像されるフレーム画像に手が含まれることによって生じる画像の変化を検出し、画像選択操作が行われたことを判定する。これにより、操作者は、投射像を見ながら投射光束を遮る(カメラユニット320に写る)ように手をかざすことによってプリンタ10Aへ指示を送ることができる。
【0110】
(2)プリンタ10Aは、投射ユニット220から複数のサムネイル画像が並ぶ光学像を投影し、上記(1)のように画像の変化を検出したブロックと投射像とを対比し、検出ブロックに対応する位置に投影されているサムネイル画像を印刷対象画像とする。操作者は、投射されている複数のサムネイル画像のうち印刷させたい画像を視標として利用し、手をかざす空間の目安にできる。さらに、ブロック単位で画像の変化を検出するようにしたので、画像の全域について検出する場合に比べて演算量を少なくすることができる。
【0111】
(3)検出ブロックに0.5秒以上継続して手などが撮像された場合に印刷対象画像が指示されたと判定したので、誤ってカメラユニット320の前に手を出した場合でも、ただちに誤判定してしまうことがない。
【0112】
(変形例8)
カメラユニット320を具備しないプリンタ10と電子カメラ100とを組み合わせて、第二の実施形態と同様の選択操作検出を行う構成にしてもよい。図16は、この場合のプリンタシステムの構成を説明するブロック図である。プリンタ10と電子カメラ100とが外部インターフェイス回路104を介して有線接続されている。
【0113】
電子カメラ100は、投射ユニット220による投射像を撮像する向きにセットされる。電子カメラ100はさらに、所定間隔ごと(たとえば15コマ/秒)に撮像した画像データを、プリンタ10へ逐次送信する。
【0114】
プリンタ10のCPU101は、電子カメラ100から送信される画像について、時間的に連続するフレーム画像間の画像データの差の有無を判定することにより、第二の実施形態と同様に、印刷対象画像の選択操作を検出する。
【0115】
変形例8によれば、カメラユニット320を具備しないプリンタ10と電子カメラ100とを組み合わせることにより、操作者がかざした手の位置を検出して印刷対象画像を選択するプリンタシステムを提供できる。
【0116】
(変形例9)
本発明は、スキャナ機能を備えるプリンタにも適用できる。図17は、変形例9によるプリンタ10Bを説明する図である。プリンタ10Bは本体11Bと、カバー12Bと、出力紙トレイ13Bと、給紙トレイ15Bとを有する。本体11B内には、プリンタユニット120Bおよびスキャナユニット400Bが配設されている。カバー12Bはスクリーンを兼用し、図17に示す開位置と、カバー12Bを閉じた収納位置との間で回動軸Oを中心に回動自在に構成される。
【0117】
図17において、給紙トレイ15Bにセットされた印刷紙14が不図示の給紙機構によって一枚ずつプリンタユニット120Bへ給紙される。プリンタユニット120Bは印刷紙14に印刷し、印刷後の印刷紙14を出力紙トレイ13Bへ排出する。
【0118】
スキャナユニット400Bは、ラインセンサユニット401を有する。ラインセンサユニット401は、ガラスで構成される原稿載置面16Bに載置された原稿(不図示)を照明するランプ、およびレンズアレイ(ともに不図示)を含み、矢印方向に移動しながら原稿の読み取りを行う。カバー12Bは、原稿読み取り時に原稿(不図示)を覆うように収納位置へ閉じられる。
【0119】
スキャナユニット400Bにはさらに、プロジェクタ(投射ユニット220B)および反射ミラー403も設けられている。投射ユニット220Bは、スキャナユニット400B未使用時(ラインセンサユニット401が図17で示す待機位置に位置する状態)に、開状態のカバー12Bへ向けて光学像を投射するように構成される。投射光束は、反射ミラー403で折り曲げられた後、カバー12Bの向きへ進む。カバー12Bは、投射時に開位置に開けられている。
【0120】
変形例9によれば、投射ユニット220Bが原稿カバー12Bに光学像を投影するので、投射される面と印刷される面とが異なり、プリンタユニット120Bによる印刷前はもちろん、印刷中も印刷後も投射ユニット220Bによる投影を継続することができる。さらに、専用の投射スクリーンを設ける必要もなく、カバー12Bを回動軸Oを軸に回動させて、コンパクトに収納できる。
【0121】
(変形例10)
図18は、変形例10によるプリンタ10Cを説明する図である。プリンタ10Cは本体11Cと、カバー12Cと、カバー12Dと、出力紙トレイ13Bと、給紙トレイ15Bとを有する。本体11C内には、プリンタユニット120Bおよびスキャナユニット400Cが配設されている。カバー12Cは、図18に示す開位置と、カバー12Cを閉じた収納位置との間で回動軸Oを中心に回動自在に構成される。カバー12Dは、背面投射用の透光スクリーンであり、カバー12Cと原稿載置面16Cとの間で回動軸Oを中心に回動自在に構成される。
【0122】
図18において、給紙トレイ15Bにセットされた印刷紙14が不図示の給紙機構によって一枚ずつプリンタユニット120Bへ給紙される。プリンタユニット120Bは印刷紙14に印刷し、印刷後の印刷紙14を出力紙トレイ13Bへ排出する。
【0123】
スキャナユニット400Cは、ラインセンサユニット401を有する。ラインセンサユニット401は図17の場合と同様である。カバー12Cおよび12Dは、原稿読み取り時に原稿(不図示)を覆うように閉じられる。
【0124】
スキャナユニット400Cにはさらに、プロジェクタ(投射ユニット220C)も設けられている。投射ユニット220Cは、スキャナユニット400Cが非使用時(ラインセンサユニット401が図18で示す待機位置に位置する状態)に、原稿載置面16C上に位置する閉状態のカバー12Dへ向けて光学像を背面投射するように構成される。カバー12Cは、投射時に開位置に開けられている。
【0125】
変形例10によれば、投射ユニット220Cが原稿載置面16上に位置するカバー12Dに光学像を背面から投影するので、投射される面と印刷される面とが異なり、プリンタユニット120Bによる印刷前はもちろん、印刷中も印刷後も投射ユニット220Cによる投影を継続することができる。さらに、背面投射像は周囲が明るくても確認しやすい。
【0126】
以上の説明はあくまで一例であり、本発明は上記実施形態の構成に何ら限定されるものではない。第一の実施形態、第二の実施形態、変形例1〜変形例10の構成は、それぞれを適宜組合わせて構成しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】第一の実施形態によるプリンタを説明する図であり、(a)はカバーの使用位置を示す図、(b)はカバーの収納位置を示す図である。
【図2】プリンタの構成を説明するブロック図である。
【図3】投射ユニットの光学系を拡大した図である。
【図4】図3の光学系を左側から見た図である。
【図5】CPUで行われるメイン処理を例示するフローチャートである。
【図6】静止画モードにおける印刷処理の詳細を例示するフローチャートである。
【図7】静止画モードにおける印刷紙上の投射像を例示する図である。
【図8】静止画モードにおける印刷紙上の投射像を例示する図である。
【図9】静止画モードにおける印刷紙上の投射像を例示する図である。
【図10】1ラインずつ広げられる投射像を例示する図である。
【図11】動画モードにおける印刷紙上の投射像を例示する図である。
【図12】動画モードにおける印刷紙上の投射像を例示する図である。
【図13】動画モードにおける印刷処理の詳細を例示するフローチャートである。
【図14】動画モードにおける印刷処理の詳細を例示するフローチャートである。
【図15】カメラユニットを搭載するプリンタの構成を説明するブロック図である。
【図16】プリンタシステムの構成を説明するブロック図である。
【図17】変形例9によるプリンタを説明する図である。
【図18】変形例10によるプリンタを説明する図である。
【符号の説明】
【0128】
10、10A、10B、10C…プリンタ
11、11B、11C…本体
12、12B、12C、12D…カバー
14…印刷紙
100、101A…電子カメラ
101、101A…CPU
120、120B…プリンタユニット
220、220B、220C…投射ユニット
320…カメラユニット
400B、400C…スキャナユニット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を印刷する印刷ユニットと、
複数の情報の光学像を投影する投射ユニットと、
前記投射ユニットによる前記複数の光学像の投影中に印刷対象情報を指示する信号を受け、当該信号が指示する情報を前記印刷ユニットに印刷させる制御手段とを備えることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプリンタにおいて、
前記複数の情報は画像データであり、
前記投射ユニットは、前記複数の画像データを用いてそれぞれ再生した複数の光学像を並べて投影することを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
請求項1に記載のプリンタにおいて、
前記複数の情報は画像データであり、
前記投射ユニットは、前記複数の画像データを用いてそれぞれ再生した複数の光学像を順に投影することを特徴とするプリンタ。
【請求項4】
請求項2または3に記載のプリンタにおいて、
複数の画像データを蓄積する画像蓄積手段をさらに備え、
前記投射ユニットは、前記画像蓄積手段に蓄積されている画像データから再生した複数の光学像を投影することを特徴とするプリンタ。
【請求項5】
請求項4に記載のプリンタにおいて、
前記画像蓄積手段は、前記印刷ユニットが印刷した画像データを蓄積することを特徴とするプリンタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のプリンタにおいて、
前記印刷対象を指示する信号を発する操作部材をさらに備え、
前記制御手段は、前記操作部材からの前記信号を受けて前記印刷ユニットに情報を印刷させることを特徴とするプリンタ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のプリンタにおいて、
前記制御手段は、外部機器からの前記信号を受けて前記印刷ユニットに情報を印刷させることを特徴とするプリンタ。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のプリンタにおいて、
撮像して画像信号を出力する撮像素子と、
前記画像信号の変化を検出する画像変化検出手段と、
前記画像信号の変化が検出された領域に応じて前記印刷対象情報を指示する信号を発する印刷対象指示手段とをさらに備え、
前記制御手段は、前記印刷対象指示手段からの前記信号を受けて前記印刷ユニットに情報を印刷させることを特徴とするプリンタ。
【請求項9】
請求項8に記載のプリンタにおいて、
前記撮像素子は、前記投射ユニットが投影中の前記複数の光学像を撮像することを特徴とするプリンタ。
【請求項10】
撮像した画像信号を送信する電子カメラと、
被印刷体に情報を印刷する印刷ユニット、複数の情報の光学像を投影する投射ユニット、前記電子カメラから送信された前記画像信号の変化を検出する画像変化検出手段、前記画像信号の変化が検出された領域に応じて前記印刷対象を指示する信号を発する印刷対象指示手段、および前記投射ユニットによる前記複数の光学像の投影中に前記印刷対象指示手段からの前記信号を受け、当該信号が示す情報を前記印刷ユニットに印刷させる制御手段を有するプリンタと、
を備えることを特徴とするプリンタシステム。
【請求項1】
情報を印刷する印刷ユニットと、
複数の情報の光学像を投影する投射ユニットと、
前記投射ユニットによる前記複数の光学像の投影中に印刷対象情報を指示する信号を受け、当該信号が指示する情報を前記印刷ユニットに印刷させる制御手段とを備えることを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプリンタにおいて、
前記複数の情報は画像データであり、
前記投射ユニットは、前記複数の画像データを用いてそれぞれ再生した複数の光学像を並べて投影することを特徴とするプリンタ。
【請求項3】
請求項1に記載のプリンタにおいて、
前記複数の情報は画像データであり、
前記投射ユニットは、前記複数の画像データを用いてそれぞれ再生した複数の光学像を順に投影することを特徴とするプリンタ。
【請求項4】
請求項2または3に記載のプリンタにおいて、
複数の画像データを蓄積する画像蓄積手段をさらに備え、
前記投射ユニットは、前記画像蓄積手段に蓄積されている画像データから再生した複数の光学像を投影することを特徴とするプリンタ。
【請求項5】
請求項4に記載のプリンタにおいて、
前記画像蓄積手段は、前記印刷ユニットが印刷した画像データを蓄積することを特徴とするプリンタ。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のプリンタにおいて、
前記印刷対象を指示する信号を発する操作部材をさらに備え、
前記制御手段は、前記操作部材からの前記信号を受けて前記印刷ユニットに情報を印刷させることを特徴とするプリンタ。
【請求項7】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のプリンタにおいて、
前記制御手段は、外部機器からの前記信号を受けて前記印刷ユニットに情報を印刷させることを特徴とするプリンタ。
【請求項8】
請求項1〜5のいずれか一項に記載のプリンタにおいて、
撮像して画像信号を出力する撮像素子と、
前記画像信号の変化を検出する画像変化検出手段と、
前記画像信号の変化が検出された領域に応じて前記印刷対象情報を指示する信号を発する印刷対象指示手段とをさらに備え、
前記制御手段は、前記印刷対象指示手段からの前記信号を受けて前記印刷ユニットに情報を印刷させることを特徴とするプリンタ。
【請求項9】
請求項8に記載のプリンタにおいて、
前記撮像素子は、前記投射ユニットが投影中の前記複数の光学像を撮像することを特徴とするプリンタ。
【請求項10】
撮像した画像信号を送信する電子カメラと、
被印刷体に情報を印刷する印刷ユニット、複数の情報の光学像を投影する投射ユニット、前記電子カメラから送信された前記画像信号の変化を検出する画像変化検出手段、前記画像信号の変化が検出された領域に応じて前記印刷対象を指示する信号を発する印刷対象指示手段、および前記投射ユニットによる前記複数の光学像の投影中に前記印刷対象指示手段からの前記信号を受け、当該信号が示す情報を前記印刷ユニットに印刷させる制御手段を有するプリンタと、
を備えることを特徴とするプリンタシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2008−80521(P2008−80521A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−259985(P2006−259985)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】
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