説明

プリンタドライバ装置、印刷システムおよびプリンタドライバプログラム

【課題】文書、画像などの原稿の作成、編集などを行う際に指定する印刷設定値が、当該原稿に係る印刷データの出力先である印刷装置により適正に受入可能であるか否かを利用者に意識させることなく、質が高く、利用者にとって利用価値が高い印刷物を作り出すことができるようにする。
【解決手段】複数機種の印刷装置に対応可能なプリンタドライバ7において、印刷装置が有する印刷設定値情報を印刷装置から取得し、原稿データに記述された印刷設定値と、印刷装置から取得した印刷設定値情報が示す印刷設定値とを比較する。この結果、両者に不一致があるときには、原稿データに記述された印刷設定値を、印刷装置から取得した印刷設定値情報が示す印刷設定値に変更するための所定の加工処理を原稿データに対して行いつつ、この原稿データを、印刷装置における印刷処理に適合する印刷データに変換する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばワードプロセッサ、画像作成装置、写真編集装置などの外部装置から出力された原稿データを印刷装置における印刷処理に適合する印刷データに変換するプリンタドライバ装置、プリンタドライバ装置および印刷装置を備えた印刷システム、およびプリンタドライバプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プリンタ、複合機などの印刷装置をコンピュータに接続して利用する場合、当該コンピュータのオペレーティングシステムに当該印刷装置専用のプリンタドライバを組み込む。プリンタドライバは、ドキュメントプロセッサにより生成された文書、画像などのデータである原稿データを印刷装置に適合する印刷データに変換する役割を担う(特許文献1参照)。なお、ドキュメントプロセッサは、例えばワードプロセッサ、画像作成装置、写真編集装置など、文書、画像などの作成、編集を行うことができる装置であり、アプリケーションソフトウェアプログラムをコンピュータにおいて実行することにより具現化されるものである。
【0003】
一般に広く普及しているプリンタドライバは、印刷装置の1機種にのみ対応する、1機種専用のプリンタドライバである。したがって、印刷装置の機種が異なれば、プリンタドライバも異なる。このため、コンピュータに新たな機種の印刷装置を接続する場合には、変更後の機種専用のプリンタドライバをオペレーティングシステムに組み込むのが通常である。
【0004】
また、1機種専用のプリンタドライバは、当該プリンタドライバが対応する1つの機種が有する印刷処理能力に適合するようにつくられている。このため、当該機種が適正に受け入れることができない印刷設定値が指定された原稿データを、ドキュメントプロセッサからプリンタドライバに入力すると、プリンタドライバは警告などを発する。ドキュメントプロセッサは、この警告を認識し、利用者が要求した印刷処理が適正に実行されない可能性がある旨を告げるメッセージなどをコンピュータのディスプレイに表示する。
【0005】
例えば、ドキュメントプロセッサから、印刷可能な最大用紙サイズがA4であるプリンタに対応するプリンタドライバに、A3の用紙サイズが指定された原稿データを入力したとする。この場合、A3は当該プリンタが適正に受け入れることができる用紙サイズではないので、このプリンタドライバは警告を発する。そして、ドキュメントプロセッサは、この警告を認識し、原稿を適正に印刷することができない可能性がある旨を告げるメッセージをコンピュータのディスプレイに表示する。
【特許文献1】特開平11−219265号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、現在、それぞれ異なる複数の機種に対応するプリンタドライバ(以下、これを「多機種対応型プリンタドライバ」という。)の開発が進められている。この多機種対応型プリンタドライバによれば、1つの多機種対応型プリンタドライバをコンピュータのオペレーティングシステムに組み込みさえすれば、当該コンピュータに接続された、機種の異なる複数の印刷装置を利用することが可能になる。
【0007】
例えば、企業のオフィス内に構築されたコンピュータネットワークに、機種の異なる複数の印刷装置が接続されている場合、当該コンピュータネットワークに接続された各パーソナルコンピュータに1つの多機種対応型プリンタドライバをインストールするだけで、機種の異なる複数の印刷装置を各パーソナルコンピュータにより利用することが可能になる。また、当該コンピュータネットワークに新たな機種の印刷装置を追加した場合に、各パーソナルコンピュータにプリンタドライバを別途インストールする必要がない。このように、多機種対応型プリンタドライバによれば、コンピュータネットワークシステムの管理、メンテナンスなどが容易になる。
【0008】
このような多機種対応型プリンタドライバでは、処理能力が異なる複数の機種に対応する必要がある。このため、多機種対応型プリンタドライバにより、各機種が適正に受け入れることの可能な印刷設定値のすべてを取り扱うことができるようにする必要がある。
【0009】
しかしながら、このような必要を満たす多機種対応型プリンタドライバを設計すると、多機種対応型プリンタドライバにおいて取り扱うことができる印刷設定値であるにもかかわらず、機種によっては、その印刷設定値を適正に受け入れることができない場合が生じ、これが原因して次のような不都合な事態を招くおそれがある。
【0010】
例えば、印刷可能な用紙サイズがA3、B4、A4およびB5である機種Aと、印刷可能な用紙サイズがA4およびB5である機種Bとがあり、これら機種Aおよび機種Bの双方に対応するように設計された多機種対応型プリンタドライバがあるとする。この多機種対応型プリンタドライバで取り扱うことができる用紙サイズはA3、B4、A4、B5である。利用者が、A3の用紙サイズを指定した文書を機種Bにより印刷する旨の指示をドキュメントプロセッサに与えると、この文書の原稿データがドキュメントプロセッサから多機種対応型プリンタドライバに入力される。このとき、A3の用紙サイズは、多機種対応型プリンタドライバにおいて取り扱うことができる用紙サイズである。したがって、多機種対応型プリンタドライバは、警告を発することなく、ドキュメントプロセッサから入力された原稿データに対して変換処理を行い、A3の用紙サイズが指定された印刷データ(印刷される画像のサイズもA3サイズである。)を生成する。そして、この印刷データは機種Bに向けて出力される。上述したとおり、機種Bが印刷可能な用紙サイズはA4およびB5であるので、機種Bが適正に受け入れることができる用紙サイズはA4およびB5のみである。このため、A3の用紙サイズが指定された印刷データを機種Bに入力すると、文書の一部しか印刷されないといった事態や、印刷が全く実行されないといった事態が起こり得る。
【0011】
もう1つ例をあげると、カラー印刷およびモノクロ印刷の双方が可能な機種Cと、モノクロ印刷のみが可能な機種Dとがあり、これら機種Cおよび機種Dの双方に対応するように設計された多機種対応型プリンタドライバがあるとする。この多機種対応型プリンタドライバは、カラー印刷を指定する旨の印刷設定値およびモノクロ印刷を指定する旨の印刷設定値を取り扱うことができる。利用者が、カラー印刷を指定した画像を機種Dにより印刷する旨の指示をドキュメントプロセッサに与えると、この画像の原稿データがワードプロセッサから多機種対応型プリンタドライバに入力される。このとき、多機種対応型プリンタドライバは、カラー印刷を指定する旨の印刷設定値を取り扱うことができるので、警告を発することなく、ドキュメントプロセッサから入力された原稿データに対して変換処理を行い、カラー印刷用の印刷データを生成する。そして、この印刷データは、モノクロ印刷のみが可能な機種Dに向けて出力される。この結果、色調(例えば濃淡のバランス)が崩れた画像が機種Dにより印刷されるといった事態が起こり得る。
【0012】
確かに、ドキュメントプロセッサで文書、画像などの原稿を作成、編集する際、あるいは当該原稿の印刷を指示する際に指定する印刷設定値が、当該原稿に係る印刷データの出力先である機種により適正に受入可能であるか否かを利用者が確認すれば、上述したような不都合な事態を避けることができる。しかし、このような煩雑な確認作業を利用者に強いることは好ましくない。
【0013】
本発明は例えば上述したような問題に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、文書、画像などの原稿を作成、編集する際、あるいは当該原稿の印刷を指示する際などに指定する印刷設定値が、当該原稿に係る印刷データの出力先である印刷装置により適正に受入可能であるか否かを利用者に意識させることなく、質が高く、利用者にとって利用価値が高い印刷物を作り出すことができるプリンタドライバ装置、印刷システムおよびプリンタドライバプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明のプリンタドライバ装置は、外部装置から出力された原稿データを印刷装置における印刷処理に適合する印刷データに変換するプリンタドライバ装置であって、指定された印刷設定値を含む原稿データを前記外部装置から受け取る原稿データ受取手段と、前記印刷装置が適正に受け入れることができる印刷設定値を示す印刷設定値情報を前記印刷装置から受け取る設定値情報受取手段と、前記原稿データ受取手段により受け取られた原稿データに含まれる印刷設定値と前記設定値情報受取手段により受け取られた印刷設定値情報が示す印刷設定値とが一致するか否かを判断する判断手段と、前記判断手段による判断結果に基づき、前記原稿データ受取手段により受け取られた原稿データを前記印刷装置における印刷処理に適合する印刷データに変換する変換手段とを備え、前記変換手段は、前記判断手段による判断の結果、前記原稿データ受取手段により受け取られた原稿データに含まれる印刷設定値と前記設定値情報受取手段により受け取られた印刷設定値情報が示す印刷設定値とが一致しないとき、前記原稿データ受取手段により受け取られた原稿データに含まれる印刷設定値を前記設定値情報受取手段により受け取られた印刷設定値情報が示す印刷設定値に変更するための所定の加工処理を前記原稿データまたは前記印刷データに対して行う。
【0015】
上述した本発明のプリンタドライバ装置において、前記所定の加工処理は、前記設定値情報受取手段により受け取られた印刷設定値情報が示す印刷設定値を前記印刷装置に設定することにより行われる印刷処理に適合するように、前記原稿データまたは前記印刷データに対応する画像を加工する処理であることが望ましい。
【0016】
また、上述した本発明のプリンタドライバ装置において、前記印刷設定値は印刷用紙の用紙サイズであり、前記所定の加工処理は、前記原稿データまたは前記印刷データに対応する画像を縮小し、または拡大する処理であることが望ましい。
【0017】
また、上述した本発明のプリンタドライバ装置において、前記印刷設定値は前記原稿データについてカラー印刷およびモノクロ印刷のいずれか一方を行うべき旨を指定する値であり、前記所定の加工処理は、前記原稿データまたは前記印刷データに対応する画像をカラー画像からモノクロ画像に変換する処理であることが望ましい。
【0018】
また、上述した本発明のプリンタドライバ装置において、前記印刷設定値は印刷の解像度であり、前記所定の加工処理は、前記原稿データまたは前記印刷データに対応する画像の解像度を変更する処理であることが望ましい。
【0019】
上記課題を解決するために、本発明の印刷システムは、印刷装置と、外部装置から出力された原稿データを前記印刷装置における印刷処理に適合する印刷データに変換するプリンタドライバ装置とを備えた印刷システムであって、前記印刷装置は、当該印刷装置が適正に受け入れることができる印刷設定値を示す印刷設定値情報を記憶する記憶手段と、前記プリンタドライバ装置から送信された要求指令を受信し、この要求指令に応じて、前記記憶手段に記憶された印刷設定値情報を前記プリンタドライバ装置に送信する通信手段と、前記プリンタドライバ装置により変換された印刷データに対応する画像を用紙に印刷する印刷処理を行う印刷手段とを備え、前記プリンタドライバ装置は、指定された印刷設定値を含む原稿データを前記外部装置から受け取る原稿データ受取手段と、前記印刷設定値情報の送信を要求する前記要求指令を前記印刷装置に送信し、これに応じて前記印刷装置から送信された印刷設定値情報を受け取る設定値情報受取手段と、前記原稿データ受取手段により受け取られた原稿データに含まれる印刷設定値と前記設定値情報受取手段により受け取られた印刷設定値情報が示す印刷設定値とが一致するか否かを判断する判断手段と、前記判断手段による判断結果に基づき、前記原稿データ受取手段により受け取られた原稿データを前記印刷装置における前記印刷処理に適合する印刷データに変換する変換手段とを備え、前記変換手段は、前記判断手段による判断の結果、前記原稿データ受取手段により受け取られた原稿データに含まれる印刷設定値と前記設定値情報受取手段により受け取られた印刷設定値情報が示す印刷設定値とが一致しないとき、前記原稿データ受取手段により受け取られた原稿データに含まれる印刷設定値を前記設定値情報受取手段により受け取られた印刷設定値情報が示す印刷設定値に変更するための所定の加工処理を前記原稿データまたは前記印刷データに対して行う。
【0020】
上記課題を解決するために、本発明のプリンタドライバプログラムは、指定された印刷設定値を含む原稿データを外部装置から受け取る原稿データ受取工程と、印刷装置が適正に受け入れることができる印刷設定値を示す印刷設定値情報を前記印刷装置から受け取る設定値情報受取工程と、前記原稿データ受取工程において受け取られた原稿データに含まれる印刷設定値と前記設定値情報受取工程において受け取られた印刷設定値情報が示す印刷設定値とが一致するか否かを判断する判断工程と、前記判断工程における判断結果に基づき、前記原稿データ受取工程において受け取られた原稿データを前記印刷装置における印刷処理に適合する印刷データに変換する変換工程とをコンピュータに実行させるためのプリンタドライバプログラムであって、前記変換工程では、前記判断工程における判断の結果、前記原稿データ受取工程において受け取られた原稿データに含まれる印刷設定値と前記設定値情報受取工程において受け取られた印刷設定値情報が示す印刷設定値とが一致しないとき、前記原稿データ受取工程において受け取られた原稿データに含まれる印刷設定値を前記設定値情報受取工程において受け取られた印刷設定値情報が示す印刷設定値に変更するために必要な所定の加工処理を前記原稿データまたは前記印刷データに対して行う。
【発明の効果】
【0021】
上述した本発明によれば、文書、画像などの原稿を作成、編集する際、あるいは当該原稿の印刷を指示する際などに指定する印刷設定値が、当該原稿に係る印刷データの出力先である印刷装置により適正に受入可能であるか否かを利用者に意識させることなく、質が高く、利用者にとって利用価値が高い印刷物を作り出すことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の印刷システムの実施形態を示している。図1中の印刷システム1は、コンピュータ2および互いに機種が異なる2台の印刷装置3、4を備えている。コンピュータ2と印刷装置3、4とは、例えばローカルエリアネットワークなどのコンピュータネットワーク5を介して相互に通信可能に接続されている。
【0023】
なお、印刷システム1には、複数のコンピュータ2を設けてもよいし、互いに機種の異なる3台以上の印刷装置を設けてもよい。また、印刷装置3、4をコンピュータ2にUSB(Universal Serial Bus)ケーブルなどを介して接続してもよい。
【0024】
コンピュータ2は、例えばパーソナルコンピュータ、サーバコンピュータなどである。コンピュータ2は、ドキュメントプロセッサプログラム、プリンタドライバプログラムおよびスプーラプログラムを実行することにより、ドキュメントプロセッサ6、プリンタドライバ7およびスプーラ8として機能する。
【0025】
ドキュメントプロセッサ6は、文書、画像などの作成および編集を行う装置であり、ワードプロセッシング機能、画像作成機能、写真編集機能などを備えている。利用者がコンピュータ2を操作し、ドキュメントプロセッサ6により文書、画像などを作成または編集する。そして、利用者が、この文書、画像などのデータを印刷装置3または4により印刷する旨の指示をドキュメントプロセッサ6に入力する。すると、ドキュメントプロセッサ6は、プリンタドライバ7を呼び出し、利用者が作成または編集した文書、画像などのデータをプリンタドライバ7に出力する。以下、ドキュメントプロセッサ6がプリンタドライバ7に出力する文書、画像などのデータを「原稿データ」という。
【0026】
また、利用者は、ドキュメントプロセッサ6により文書、画像を作成または編集する際、あるいは文書、画像の印刷指示を入力する際に、印刷を行う印刷装置、印刷用紙の用紙サイズ、印刷用紙の給紙元(給紙カセット、手差し)、印刷が完了した印刷用紙の排紙先、印刷の解像度、カラー/モノクロ(カラー印刷を行うか、モノクロ印刷を行うか)などを指定することができる。利用者によるこれらの指定は、印刷設定値として原稿データ中に記述される。なお、ドキュメントプロセッサ6は外部装置の具体例である。
【0027】
プリンタドライバ7は、ドキュメントプロセッサ6などから出力された原稿データを印刷装置3、4に適合する印刷データに変換する機能を備えた装置である。プリンタドライバ7は、それぞれ異なる複数の機種に対応する多機種対応型プリンタドライバである。プリンタドライバ7は少なくとも印刷装置3および4にそれぞれ対応する。なお、プリンタドライバ7はプリンタドライバ装置の具体例である。
【0028】
スプーラ8は、印刷装置3または4により印刷を行う際に、プリンタドライバ7から出力された印刷データを、コンピュータ2が有する外部記憶装置などに一時的に記憶し、この記憶した印刷データを、印刷装置3または4の印刷処理の進捗状況に応じて、印刷装置3または4に出力する装置である。
【0029】
図2はプリンタドライバ7の構成を示している。図2に示すように、プリンタドライバ7は、CPU(Central Processing Unit)11、ROM(Read Only Memory)12、RAM(Random Access Memory)13、外部記憶装置14および通信インタフェース15を備えている。なお、CPU11、ROM12、RAM13、外部記憶装置14および通信インタフェース15はコンピュータ2が有するハードウェア資源であるが、プリンタドライバプログラムがコンピュータ2において実行されることにより、これらのハードウェア資源がプリンタドライバ7の構成要素として機能するのである。
【0030】
ROM12にはプリンタドライバプログラムが記憶されている。CPU11はプリンタドライバプログラムをROM12から読み出し、これを実行することにより、原稿データ受取部21、設定値情報受取部22、判断部23、加工処理決定部24、印刷データ生成部25および総合制御部26として機能する。そして、CPU11は、これらの構成要素21ないし26を協働させることにより、コンピュータ2をプリンタドライバ7として機能させる。なお、原稿データ受取部21、設定値情報受取部22、判断部23はそれぞれ、原稿データ受取手段、設定値情報受取手段、判断手段の具体例である。加工処理決定部24および印刷データ生成部25は変換部27を構成し、変換部27は変換手段の具体例である。これら構成要素21ないし26の詳細については後述する。
【0031】
RAM13は、CPU11がプリンタドライバプログラムを実行する際に、作業メモリとして用いられる。外部記憶装置14は例えばハードディスクドライブである。通信インタフェース15は、プリンタドライバ7と印刷装置3、4との間で双方向の情報通信を行うための通信回路を備えている。
【0032】
図3は印刷装置3の構成を示している。印刷装置3は、例えばプリンタ、複合機などである。図3に示すように、印刷装置3は、通信制御部31、記憶部32、印刷部33および通信インタフェース34を備えている。
【0033】
通信制御部31は、印刷装置3とプリンタドライバ7との間の通信を制御する。記憶部32は例えば不揮発性の半導体記憶素子である。印刷部33は、プリンタドライバ7により生成された印刷データに対応する画像を用紙に印刷する印刷処理を行う。印刷部33は、印刷機構、画像を印刷するための用紙を収納するカセット、用紙搬送機構、印刷が完了して排出された用紙を置く排紙トレイなどを備えている。通信インタフェース34は印刷装置3とプリンタドライバ7との間の通信を行うための通信回路を備えており、通信制御部31の制御に従って動作する。なお、通信制御部31、記憶部32、印刷部33はそれぞれ、通信手段、記憶手段、印刷手段の具体例である。
【0034】
印刷装置3の記憶部32には、図4に示すような印刷設定値情報41が記憶されている。印刷設定値情報41は、印刷装置3が適正に受け入れることができる印刷設定値を示す。印刷装置3が適正に受け入れることができる印刷設定値は、印刷装置3の処理能力、すなわち印刷装置3の仕様に基づいて定められている。当該印刷設定値は、具体的には、用紙サイズ、給紙元、排紙先、解像度、カラー/モノクロなど印刷設定項目について、下記のように定められている。
用紙サイズ:A4、A5、A6、B5、B6、はがき
給紙元:カセット1(A4)、カセット2(B5)、手差し
排紙先:トレイ1
解像度:600×600dpi
カラー/モノクロ:モノクロ
なお、カセット1(A4)とは、用紙サイズがA4の用紙が収納されたカセットを意味する。また、カセット2(B5)とは、用紙サイズがB5の用紙が収納されたカセットを意味する。また、カラー/モノクロの印刷設定項目についての印刷設定値であるモノクロとは、モノクロ印刷のみが可能であることを意味する。
【0035】
一方、図1中の印刷装置4も、例えばプリンタ、複合機である。印刷装置4は、印刷装置3とほぼ同様に、図3に示すような構成要素を有する。ところが、印刷装置4は、印刷装置3と機種が異なり、印刷装置3と処理能力(仕様)が異なる。また、印刷装置4の記憶部にも印刷設定値情報が記憶されている。この印刷設定値情報は、印刷装置4が適正に受け入れることができる印刷設定値を示す。印刷装置4は印刷装置3と機種(処理能力)が異なるので、印刷装置4の記憶部に記憶された印刷設定情報が示す印刷設定値は、印刷装置3の記憶部に記憶された印刷設定情報41が示す印刷設定値と異なる。印刷装置4の記憶部に記憶された印刷設定値情報が示す印刷設定値は例えば下記の通りである。
用紙サイズ:A3、A4、A5、A6、B4、B5、B6、はがき
給紙元:カセット1(A4)、カセット2(B5)、カセット3(B4)、カセット4(A3)、手差し
排紙先:トレイ1、トレイ2(大型サイズの用紙用)
解像度:720×720dpi
カラー/モノクロ:カラー、モノクロ
印刷装置4は、印刷装置3よりも処理能力(仕様)が優れている。すなわち、印刷装置4の最大用紙サイズはA3であり、印刷装置3の最大用紙サイズであるA4を上回っている。また、印刷装置4は、A4、B5の用紙が収納されたカセット1、2に加え、B4、A3の用紙が収納されたカセット3、4を備えている。さらに、印刷装置4は、トレイ1に加え、B4、A3といった大型の用紙サイズの用紙を排出するためのトレイ2を備えている。さらに、印刷装置4の解像度は、印刷装置3の解像度を上回っている。さらに、印刷装置4は、モノクロ印刷だけでなく、カラー印刷も可能である。
【0036】
上述したように、プリンタドライバ7は、少なくとも印刷装置3と印刷装置4との双方に対応する多機種対応型プリンタドライバである。プリンタドライバ7は、少なくとも、印刷装置3、4がそれぞれ有する印刷設定値のすべてを取り扱うことができる。プリンタドライバ7が取り扱うことができる印刷設定値は例えば下記の通りである。
用紙サイズ:A3、A4、A5、A6、B4、B5、B6、はがき
給紙元:カセット1(A4)、カセット2(B5)、カセット3(B4)、カセット4(A3)、手差し
排紙先:トレイ1、トレイ2(大型サイズの用紙用)
解像度:720×720dpi
カラー/モノクロ:カラー、モノクロ
なお、本実施形態では、印刷装置4の処理能力が印刷装置3の処理能力を包含しているため、プリンタドライバ7が取り扱うことができる印刷設定値は、印刷装置4が有する印刷設定値情報が示す印刷設定値と同じである。しかし、印刷装置3が有し、印刷装置4が有しない処理能力がある場合には、プリンタドライバ7は、その印刷装置3のみが有する処理能力に対応する印刷設定値を取り扱うことができる。
【0037】
図5は、プリンタドライバ7および印刷装置3、4による印刷処理を示している。利用者が、ドキュメントプロセッサ6により、例えばカラフルな広告画像を編集し、この広告画像を印刷しようと思い、ドキュメントプロセッサ6に印刷指示を入力したとする。この印刷指示を入力する際に、利用者は、印刷を行う印刷装置として印刷装置3を指定したものの、用紙サイズとしてA3を指定し、給紙カセットとしてカセット4(A3)を指定し、排紙先としてトレイ2(大型サイズの用紙用)を指定し、解像度として720×720dpiを指定し、カラー/モノクロの印刷設定項目につきカラーを指定したとする(利用者のこれらの指定は印刷装置3の仕様から外れている)。これに応じ、ドキュメントプロセッサ6は、プリンタドライバ7を呼び出し、利用者により指定されたこれら印刷設定値が記述された原稿データを、プリンタドライバ7に向けて出力する。
【0038】
プリンタドライバ7の原稿データ受取部21は、利用者により指定された印刷設定値を含む原稿データをドキュメントプロセッサ6から受け取る(図5中のステップS1)。
【0039】
続いて、設定値情報受取部22が、印刷設定値情報41の送信を要求する要求指令を印刷装置3に送信する(ステップS2)。
【0040】
続いて、印刷装置3の通信制御部31が、プリンタドライバ7から送信された要求指令を受信し(ステップS3)、この要求指令に応じて、印刷装置3の記憶部32に記憶された印刷設定値情報41をプリンタドライバ7に送信する(ステップS4)。
【0041】
続いて、プリンタドライバ7の設定値情報受取部22は、印刷装置3から送信された印刷設定値情報41を受け取る(ステップS5)。
【0042】
続いて、プリンタドライバ7の判断部23が、ステップS1において受け取った原稿データに記述された印刷設定値と、ステップS5において受け取った印刷設定値情報41が示す印刷設定値とを印刷設定項目ごとに比較し(ステップS6)、両者が一致するか否かを印刷設定項目ごとに判断する(ステップS7)。
【0043】
上述した印刷装置3が有する印刷設定値情報41が示す印刷設定値(図4参照)と、利用者が印刷指示入力の際に指定した上述の印刷設定値とを見比べるとわかる通り、ステップS1において受け取った原稿データに記述された印刷設定値と、ステップS5において受け取った印刷設定値情報41が示す印刷設定値とは、用紙サイズ、給紙元、排紙先、解像度およびカラー/モノクロの印刷設定項目についてそれぞれ一致しない(ステップS7:NO)。この場合、加工処理決定部24は、ステップS1において受け取られた原稿データに記述された印刷設定値を、ステップS5において受け取られた印刷設定値情報41が示す印刷設定値に変更するための所定の加工処理を決定し、この決定した所定の加工処理を行う旨の指令を印刷データ生成部25に渡す(ステップS8)。
【0044】
続いて、印刷データ生成部25は、加工処理決定部24から渡された指令に従って、ステップS1において受け取られた原稿データに対する加工処理を行い、当該原稿データを印刷装置3における印刷処理に適合する印刷データに変換する(ステップS9)。
【0045】
ステップS8において決定され、ステップS9において実行される所定の加工処理は、ステップS1において受け取られた原稿データに記述された印刷設定値を、ステップS5において受け取られた印刷設定値情報41が示す印刷設定値に変更するための所定の加工処理である。具体的には、この所定の加工処理は、ステップS5において受け取られた印刷設定値情報41が示す印刷設定値を印刷装置3に設定することにより行われる印刷処理に適合するように、原稿データに対応する画像を加工する処理である。
【0046】
すなわち、原稿データに記述された用紙サイズと、印刷設定値情報41が示す用紙サイズとが一致しないときには、所定の加工処理は、原稿データに対応する画像を縮小し、または拡大する処理である。具体的には、原稿データに記述された用紙サイズが、印刷設定値情報41が示す最大用紙サイズを上回っている場合には、所定の加工処理は、原稿データに対応する画像を縮小する処理である。画像の縮小率は、原稿データに記述された用紙サイズと印刷設定値情報41が示す最大用紙サイズとの間の相違の程度により定める。一方、原稿データに記述された用紙サイズが、印刷設定値情報41が示す最小用紙サイズを下回っている場合には、所定の加工処理は、原稿データに対応する画像を拡大する処理である。画像の拡大率は、原稿データに記述された用紙サイズと印刷設定値情報41が示す最小用紙サイズとの間の相違の程度により定める。所定の加工処理により縮小または拡大された、原稿データに対応する画像のサイズは、印刷設定値情報41が示す用紙サイズ(最大用紙サイズまたは最小用紙サイズ)を印刷装置3に設定することにより行われる印刷処理に適合するサイズとなる。また、ステップS9では、この加工処理が行われると共に、原稿データに記述された用紙サイズに係る印刷設定値が、設定値情報41の示す用紙サイズ(最大用紙サイズまたは最小用紙サイズ)に係る印刷設定値に変更される。さらに、これに伴い、原稿データに記述された給紙元に係る印刷設定値および排紙先に係る印刷設定値も、変更後の用紙サイズに適合するように、必要に応じて変更される。
【0047】
例えば、原稿データに記述された用紙サイズがA3であり、印刷設定値情報41が示す最大用紙サイズがA4である場合には、所定の加工処理として、原稿データに対応する画像を縮小する処理が行われる。この縮小処理において画像の縮小率は、A3からA4への縮小であるので、70%に定められる。そして、この処理に伴い、原稿データに記述された用紙サイズに係る印刷設定値がA3からA4に変更され、さらに、原稿データに記述された給紙元に係る印刷設定値がカセット4からカセット1に変更され、原稿データに記述された排紙先に係る印刷設定値がトレイ2からトレイ1に変更される。
【0048】
また、原稿データに記述された解像度と、印刷設定値情報41が示す解像度とが一致しないときには、所定の加工処理は、原稿データに対応する画像の解像度を印刷設定値情報41が示す解像度に変更する処理である。所定の加工処理により解像度が変更された、原稿データに対応する画像の解像度は、印刷設定値情報41が示す解像度を印刷装置3に設定することにより行われる印刷処理に適合する解像度となる。また、ステップS9では、この加工処理が行われると共に、原稿データに記述された解像度に係る印刷設定値が、設定値情報41の示す解像度に係る印刷設定値に変更される。
【0049】
例えば、原稿データに記述された解像度が720×720dpiであり、印刷設定値情報41が示す解像度が600×600dpiである場合には、所定の加工処理として、原稿データに対応する画像の解像度を600×600dpiにする処理が行われる。そして、この処理に伴い、原稿データに記述された解像度に係る印刷設定値が720×720dpiから、600×600dpiに変更される。
【0050】
また、原稿データに記述されたカラー/モノクロの印刷設定項目に係る印刷設定値が、印刷設定値情報41が示すカラー/モノクロの印刷設定項目に係る印刷設定値と一致しないときには、所定の加工処理は、原稿データに対応する画像をカラー画像からモノクロ画像に変換する処理である。所定の加工処理によりカラーからモノクロに変換された、原稿データに対応する画像は、印刷設定値情報41が示す印刷設定値を印刷装置3に設定することにより行われる印刷処理に適合する画像となる。また、ステップS9では、この加工処理が行われると共に、原稿データに記述されたカラー/モノクロの印刷設定項目に係る印刷設定値が、設定値情報41の示すカラー/モノクロの印刷設定項目に係る印刷設定値に変更される。
【0051】
例えば、原稿データに記述されたカラー/モノクロの印刷設定項目に係る印刷設定値がカラーであり、印刷設定値情報41が示すカラー/モノクロの印刷設定項目に係る印刷設定値がモノクロである場合には、所定の加工処理として、原稿データに対応する画像をカラー画像からモノクロ画像に変換する処理が行われる。そして、この処理に伴い、原稿データに記述されたカラー/モノクロの印刷設定項目に係る印刷設定値がカラーからモノクロに変更される。
【0052】
原稿データに記述された印刷設定値と印刷設定値情報41が示す印刷設定値とが、用紙サイズ、給紙元、排紙先、解像度およびカラー/モノクロの印刷設定項目のうちの1つについて一致しない場合には、不一致の印刷設定値に係る1つの印刷設定項目に対応する1つの加工処理が行われる。一方、原稿データに記述された印刷設定値と印刷設定値情報41が示す印刷設定値とが、用紙サイズ、給紙元、排紙先、解像度およびカラー/モノクロの印刷設定項目のうちのいくつか、またはすべてについて一致しない場合には、不一致の印刷設定値に係る複数の印刷設定項目に対応する複数の加工処理が同時にまたは順次に行われる。そして、加工処理が行われた後、加工処理が施された原稿データが印刷データに変換される。変換後の印刷データには、原稿データに記述され、加工処理に伴い必要に応じて変更された印刷設定値が記述される。
【0053】
続いて、印刷データ生成部25は、ステップS9において変換した印刷データをスプーラ8に出力する(ステップS10)。そして、スプーラ8は、印刷データ生成部25から出力された印刷データを、印刷装置3における印刷処理の進捗状況に応じ、適宜、印刷装置3に向けて出力する。出力された印刷データは、コンピュータ2から印刷装置3に送信される。
【0054】
続いて、印刷装置3の通信制御部31は、コンピュータ2から送信された印刷データを受信し(ステップS12)、印刷装置3の印刷部33は、受信した印刷データに対して印刷処理を行う。すなわち、印刷部33は、当該印刷データに記述された印刷設定値に従い、当該印刷データに対応する画像を用紙に印刷する(ステップS13)。これにより、利用者がドキュメントプロセッサ6により編集したカラフルな広告画像が、70%縮小され、600×600dpiの解像度を有するモノクロ画像となってA4の用紙に印刷される。
【0055】
一方、利用者が上記広告画像の印刷指示を入力する際に、印刷を行う印刷装置として印刷装置4を指定し、用紙サイズとしてA3を指定し、給紙カセットとしてカセット4(A3)を指定し、排紙先としてトレイ2(大型サイズの用紙用)を指定し、解像度として720×720dpiを指定し、カラー/モノクロの印刷設定項目につきカラーを指定したとする(利用者のこれらの指定は印刷装置4の仕様をすべて満たしている)。
【0056】
この場合には、プリンタドライバ7の原稿データ受取部21がドキュメントプロセッサ6から原稿データを受け取った後(ステップS1)、設定値情報受取部22が、印刷設定値情報の送信を要求する要求指令を印刷装置4に送信し(ステップS2)、この要求指令に応じて印刷装置4から送信された印刷設定値情報を受け取る(ステップS3、S4、S5)。続いて、プリンタドライバ7の判断部23が、ステップS1において受け取られた原稿データに記述された印刷設定値と、ステップS5において受け取られた印刷設定値情報が示す印刷設定値とを印刷設定項目ごとに比較する(ステップS6)。この結果、いずれの印刷設定項目についても両者の印刷設定値が一致するので(ステップS7:YES)、印刷データ生成部25が、所定の加工処理を行うことなく、ステップS1において受け取られた原稿データを印刷装置4における印刷処理に適合する印刷データに変換し、スプーラ8に出力する(ステップS11、S10)。そして、印刷装置4は、印刷データをコンピュータ2から受信し、この印刷データに対応する画像を用紙に印刷する(ステップS12、S13)。これにより、利用者がドキュメントプロセッサ6により編集したカラフルな広告画像は、縮小も拡大もされずに、720×720dpiの解像度を有するカラー画像としてA3の用紙に印刷される。
【0057】
以上説明した通り、印刷システム1またはプリンタドライバ7によれば、原稿データに記述された印刷設定値が、当該原稿データについて印刷を行う印刷装置が有する印刷設定値情報が示す印刷設定値と一致しないとき、すなわち、当該原稿データに記述された印刷設定値が、当該原稿データについて印刷を行う印刷装置により適正に受入可能でないものであるときには、当該原稿データに記述された印刷設定値を、当該原稿データについて印刷を行う印刷装置が有する印刷設定値情報が示す印刷設定値に変更するための所定の加工処理を当該原稿データに対して行った後、当該原稿データを印刷データに変換する。この所定の加工処理は、当該原稿データについて印刷を行う印刷装置が有する印刷設定値情報が示す印刷設定値をこの印刷装置に設定することにより行われる印刷処理に適合するように、当該原稿データに対応する画像を加工する処理である。具体的には、所定の加工処理は、印刷設定値の不一致が用紙サイズについてである場合には、画像の縮小・拡大処理であり、印刷設定値の不一致が解像度についてである場合には、画像の解像度を変更する処理であり、また、印刷設定値の不一致がカラー/モノクロについてである場合には、カラー画像をモノクロ画像に変換する処理である。したがって、利用者が指定した印刷設定値が、当該原稿データについて印刷を行う印刷装置により適正に受入可能でないものである場合でも、質が高く、利用者にとって十分に利用価値が高い印刷物を作り出すことができる。
【0058】
確かに、印刷システム1によれば、例えば、利用者がA3の用紙サイズおよびカラー印刷を指定した原稿データを印刷装置3により印刷する場合、原稿データに対応する画像はA4の用紙に合うように縮小され、当該画像はカラーからモノクロに変換されて印刷される。この結果、A4の用紙にモノクロで印刷された画像は、利用者の要求を完全に満足させるものではない。しかし、原稿データに対応する画像の全体がA4の用紙にはみ出すことなく印刷され、かつ原稿データに対応する画像のカラーの色調が、その色調に対応するモノクロの色調で再現されているのであるから、利用者は、原稿の印刷結果を十分に把握することができる。原稿データに対応する画像の一部しか印刷されなかったり、原稿データに対応する画像の色調が崩れて印刷されたりする従来技術と比べると、印刷システム1により得られる原稿の印刷物は、質が高く、利用者にとって十分に利用価値が高いものである。例えば、カラフルな広告画像がプリンタドライバ7により縮小されてモノクロで印刷された場合、その印刷物は、広告画像の配色のチェックなどには用いることができないとしても、構図のチェックや、社内プレゼンテーション用の資料として用いることができる。
【0059】
また、所定の加工処理は、プリンタドライバ7により、原稿データに記述された印刷設定値と、印刷装置から取得した印刷設定値情報が示す印刷設定値との間に不一致があると判断された場合に自動的に決定され、自動的に実行される。したがって、利用者は、原稿の作成・編集時や印刷指示入力時に指定する印刷設定値が、印刷データの出力先である印刷装置により適正に受入可能なものであるか否かを確認しなくてもよい。また、利用者が指定した印刷設定値が、印刷データの出力先である印刷装置により適正に受入可能なものでなかったときに、利用者に対し、新たな指示入力の要求などが発せられることがない。
【0060】
以上より、印刷システム1またはプリンタドライバ7によれば、文書、画像などの原稿を作成、編集する際、あるいは当該原稿の印刷を指示する際などに指定する印刷設定値が、印刷データの出力先である印刷装置により適正に受入可能であるか否かを利用者に意識させることなく、質が高く、利用者にとって十分に利用価値が高い印刷物を作り出すことができる。
【0061】
なお、上述したプリンタドライバ7は、印刷設定値情報において、ある1つの印刷設定項目に係る印刷設定値が複数ある場合には、当該1つの印刷設定項目について、原稿データに記述された1つの印刷設定値を、印刷設定値情報が示す複数の印刷設定値とそれぞれ比較し、この結果、原稿データに記述された印刷設定値と一致するものが、印刷設定値情報が示す複数の印刷設定値の中にない場合に、原稿データに記述された当該印刷設定値と、印刷設定値情報が示す印刷設定値とが一致しないと判断する。しかし、この判断方法は一例にすぎない。本発明を実施するに当たり、他の判断方法を採用してもよい。例えば、ある1つの印刷設定項目について、原稿データに記述された1つの印刷設定値が、印刷設定値情報が示す複数の印刷設定値のうちの最大のものを上回っているか否かを調べ、原稿データに記述された1つの印刷設定値が、印刷設定値情報が示す複数の印刷設定値のうちの最大のものを上回っている場合に、両印刷設定値が一致しないと判断してもよい。具体例をあげれば、原稿データに記述された用紙サイズがA3で、印刷設定値情報が示す用紙サイズがA4、A5、A6、B5、B6、はがきである場合、原稿データに記述された用紙サイズ(A3)と、印刷設定値情報が示す最大用紙サイズ(A4)とを比較し、この結果、原稿データに記述された用紙サイズ(A3)が印刷設定値情報の示す最大用紙サイズ(A4)を上回っているので、原稿データに記述された用紙サイズと印刷設定値情報が示す用紙サイズとが一致しないと判断してもよい。
【0062】
また、上述した実施形態では、印刷設定項目の例として、用紙サイズ、給紙元、排紙先、解像度、カラー/モノクロをあげ、これらの印刷設定項目について印刷設定値の例をそれぞれあげたが、本発明における印刷設定項目および印刷設定値はこれらに限らない。他の印刷設定項目、または他の印刷設定値を追加してもよい。
【0063】
また、上述したプリンタドライバ7は、原稿データに対して所定の加工処理を施した後、原稿データを印刷データに変換するデータ変換処理を行う場合を例にあげたが、本発明において、所定の加工処理とデータ変換処理の順序はこれに限定されず、また、所定の加工処理とデータ変換処理とを同時に行ってもよい。
【0064】
また、上述したように、プリンタドライバ7が行う所定の加工処理として、画像の縮小・拡大処理、解像度変更処理、カラー−モノクロ変換処理の3つをあげたが、本発明における所定の加工処理はこれらに限らない。
【0065】
また、上述した印刷システム1では、原稿データに記述された印刷設定値が、当該原稿データについて印刷を行う印刷装置により適正に受入可能でないものであるときには、当該原稿データに対して所定の加工処理を行う。このような加工処理が行われたときには、加工処理が行われた旨を告げるメッセージなどをコンピュータ2のディスプレイなどに表示してもよい。例えば、「出力先の印刷装置における用紙サイズに合わせて文書・画像を縮小しました」といったメッセージを表示することにより、印刷システム1の自動的な振る舞いを利用者に十分に理解させることができ、印刷システム1のユーザビリティを高めることができる。
【0066】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うプリンタドライバ装置、印刷システムおよびプリンタドライバプログラムもまた本発明の技術思想に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】本発明の印刷システムの実施形態を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態であるプリンタドライバの構成を示すブロック図である。
【図3】印刷装置の構成を示すブロック図である。
【図4】印刷設定値情報の具体例を示す説明図である。
【図5】プリンタドライバおよび印刷装置による印刷処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0068】
1 印刷システム
2 コンピュータ
3、4 印刷装置
6 ドキュメントプロセッサ
7 プリンタドライバ
11 CPU
21 原稿データ受取部
22 設定値情報受取部
23 判断部
24 加工処理決定部
25 印刷データ生成部
27 変換部
31 通信制御部
32 記憶部
33 印刷部
41 印刷設定値情報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外部装置から出力された原稿データを印刷装置における印刷処理に適合する印刷データに変換するプリンタドライバ装置であって、
指定された印刷設定値を含む原稿データを前記外部装置から受け取る原稿データ受取手段と、
前記印刷装置が適正に受け入れることができる印刷設定値を示す印刷設定値情報を前記印刷装置から受け取る設定値情報受取手段と、
前記原稿データ受取手段により受け取られた原稿データに含まれる印刷設定値と前記設定値情報受取手段により受け取られた印刷設定値情報が示す印刷設定値とが一致するか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段による判断結果に基づき、前記原稿データ受取手段により受け取られた原稿データを前記印刷装置における印刷処理に適合する印刷データに変換する変換手段とを備え、
前記変換手段は、前記判断手段による判断の結果、前記原稿データ受取手段により受け取られた原稿データに含まれる印刷設定値と前記設定値情報受取手段により受け取られた印刷設定値情報が示す印刷設定値とが一致しないとき、前記原稿データ受取手段により受け取られた原稿データに含まれる印刷設定値を前記設定値情報受取手段により受け取られた印刷設定値情報が示す印刷設定値に変更するための所定の加工処理を前記原稿データまたは前記印刷データに対して行うことを特徴とするプリンタドライバ装置。
【請求項2】
前記所定の加工処理は、前記設定値情報受取手段により受け取られた印刷設定値情報が示す印刷設定値を前記印刷装置に設定することにより行われる印刷処理に適合するように、前記原稿データまたは前記印刷データに対応する画像を加工する処理であることを特徴とする請求項1に記載のプリンタドライバ装置。
【請求項3】
前記印刷設定値は印刷用紙の用紙サイズであり、前記所定の加工処理は、前記原稿データまたは前記印刷データに対応する画像を縮小し、または拡大する処理であることを特徴とする請求項1に記載のプリンタドライバ装置。
【請求項4】
前記印刷設定値は前記原稿データについてカラー印刷およびモノクロ印刷のいずれか一方を行うべき旨を指定する値であり、前記所定の加工処理は、前記原稿データまたは前記印刷データに対応する画像をカラー画像からモノクロ画像に変換する処理であることを特徴とする請求項1に記載のプリンタドライバ装置。
【請求項5】
前記印刷設定値は印刷の解像度であり、前記所定の加工処理は、前記原稿データまたは前記印刷データに対応する画像の解像度を変更する処理であることを特徴とする請求項1に記載のプリンタドライバ装置。
【請求項6】
印刷装置と、外部装置から出力された原稿データを前記印刷装置における印刷処理に適合する印刷データに変換するプリンタドライバ装置とを備えた印刷システムであって、
前記印刷装置は、
当該印刷装置が適正に受け入れることができる印刷設定値を示す印刷設定値情報を記憶する記憶手段と、
前記プリンタドライバ装置から送信された要求指令を受信し、この要求指令に応じて、前記記憶手段に記憶された印刷設定値情報を前記プリンタドライバ装置に送信する通信手段と、
前記プリンタドライバ装置により変換された印刷データに対応する画像を用紙に印刷する印刷処理を行う印刷手段とを備え、
前記プリンタドライバ装置は、
指定された印刷設定値を含む原稿データを前記外部装置から受け取る原稿データ受取手段と、
前記印刷設定値情報の送信を要求する前記要求指令を前記印刷装置に送信し、これに応じて前記印刷装置から送信された印刷設定値情報を受け取る設定値情報受取手段と、
前記原稿データ受取手段により受け取られた原稿データに含まれる印刷設定値と前記設定値情報受取手段により受け取られた印刷設定値情報が示す印刷設定値とが一致するか否かを判断する判断手段と、
前記判断手段による判断結果に基づき、前記原稿データ受取手段により受け取られた原稿データを前記印刷装置における前記印刷処理に適合する印刷データに変換する変換手段とを備え、
前記変換手段は、前記判断手段による判断の結果、前記原稿データ受取手段により受け取られた原稿データに含まれる印刷設定値と前記設定値情報受取手段により受け取られた印刷設定値情報が示す印刷設定値とが一致しないとき、前記原稿データ受取手段により受け取られた原稿データに含まれる印刷設定値を前記設定値情報受取手段により受け取られた印刷設定値情報が示す印刷設定値に変更するための所定の加工処理を前記原稿データまたは前記印刷データに対して行うことを特徴とする印刷システム。
【請求項7】
指定された印刷設定値を含む原稿データを外部装置から受け取る原稿データ受取工程と、
印刷装置が適正に受け入れることができる印刷設定値を示す印刷設定値情報を前記印刷装置から受け取る設定値情報受取工程と、
前記原稿データ受取工程において受け取られた原稿データに含まれる印刷設定値と前記設定値情報受取工程において受け取られた印刷設定値情報が示す印刷設定値とが一致するか否かを判断する判断工程と、
前記判断工程における判断結果に基づき、前記原稿データ受取工程において受け取られた原稿データを前記印刷装置における印刷処理に適合する印刷データに変換する変換工程とをコンピュータに実行させるためのプリンタドライバプログラムであって、
前記変換工程では、前記判断工程における判断の結果、前記原稿データ受取工程において受け取られた原稿データに含まれる印刷設定値と前記設定値情報受取工程において受け取られた印刷設定値情報が示す印刷設定値とが一致しないとき、前記原稿データ受取工程において受け取られた原稿データに含まれる印刷設定値を前記設定値情報受取工程において受け取られた印刷設定値情報が示す印刷設定値に変更するために必要な所定の加工処理を前記原稿データまたは前記印刷データに対して行うことを特徴とするプリンタドライバプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−67106(P2010−67106A)
【公開日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−234120(P2008−234120)
【出願日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】