説明

プリンタ制御装置およびこれを備えたプリンタ

【課題】プリンタにおいてCPUの動作が不能となった場合においても、円滑なメンテナンスができるプリンタ制御装置を提供する。
【解決手段】印刷制御部5と、入力手段10と、画面表示手段18と、CPUと、メモリと、ハードディスクドライブとを備え、ハードディスクドライブには、画面表示手段18に表示する表示画面データが予め記録されており、画面表示手段は、操作画面制御プログラムとエラー表示画像データとを記憶したフラッシュROM13と、CPUのエラーを検出して、エラー情報を記録し、エラー検出情報を画面表示手段18に送信するエラー検出手段7を備え、画面表示手段18は、エラー検出情報を受信すると、該エラー検出情報に対応するエラー情報をハードディスクドライブから読み出して解析し、解析結果に応じたエラー表示画像データをフラッシュROM13から読み出して表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ制御装置およびこれを備えたプリンタに係り、特にCPU故障時の円滑な保守を可能にするプリンタ制御装置およびこれを備えたプリンタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、プリンタの構成のうち、ハードディスクドライブ(HDD)に関しては、比較的故障率が高いことが知られている。そのため、HDDをRAID構成として冗長性を持たせる技術が一般的に利用されている。
【0003】
また、全てのHDDが故障した場合でも、ROM上のプログラムを実行する構成とし、最低限の機能をユーザーに提供可能な構成が知られている(例えば特許文献1(特開2000−215008号公報)参照)。
【0004】
また、別の解決方法として、ストレージ装置上の異常が検出され、ブート不能と判断した際に、ネットワーク上からブートプログラムをダウンロードして動作する構成も知られている(例えば特許文献2(特開2007−028183号公報)参照)。
【0005】
また、更に別の解決方法として、ハードディスクと、不揮発性半導体メモリと、制御手段とを備え、ハードディスクに複数のプログラムを格納し、不揮発性半導体メモリに複数のプログラムのうちの一部のプログラムを格納し、ハードディスクから複数のプログラムをそれぞれメモリにロードして実行し、ハードディスク手段が故障したときは、不揮発性半導体メモリから複数のプログラムのうちの一部のプログラムをメモリにロードして実行する構成が知られている(例えば特許文献3(特開2007−280188号公報)参照)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このように、ハードディスクドライブに関しては、エラー時のリカバリ方法が種々知られている。
【0007】
一方で、プリンタの構成で重要部位となる制御装置のCPUにおいても不具合が発生することがある。CPUでハングアップが起きた場合、エラー発生認識が不可能となる他、そのエラー解析も不能となっていた。
【0008】
プリンタ制御は、CPU処理速度の向上により、1CPUにて周辺記憶装置を含むI/O、メモリ、ネットワーク等の処理を実行する。そのため、CPUが何らかの原因で故障すると、上記従来の技術に記載されているようなエラーログの記録や読み出し、操作パネル等へのエラー表示、代替プリンタへの情報転送等が全て出来なくなってしまう。特に、操作パネルについては、表示がフリーズしたままとなり、エラー発生認識及び解析ができない状態となってしまう。
【0009】
本発明の目的は、プリンタにおいてCPUの動作が不能となった場合においても、円滑なメンテナンスができるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1の手段は、ホストPCから送信される印刷情報に基づき印刷データを作成する印刷制御部と、ユーザーの入力を受け付ける入力手段と、画面表示手段と、CPUと、メモリと、ハードディスクドライブとを備えたプリンタ制御装置において、前記ハードディスクドライブには、前記画面表示手段に表示する表示画面データが予め記録されており、前記画面表示手段は、操作画面制御プログラムとエラー表示画像データとを記憶したフラッシュROMを備え、前記ハードディスクドライブから前記表示画面データを読み出して、前記メモリに展開して前記画面表示手段に送信して表示画面を切り替える画面切替手段と、前記CPUのエラーを検出して、該エラー情報を記録し、該エラー検出情報を前記画面表示手段に送信するエラー検出手段とを備え、前記画面表示手段は、前記エラー検出手段からエラー検出情報を受信すると、該エラー検出情報に対応するエラー情報を前記ハードディスクドライブから読み出して解析し、当該解析結果に応じたエラー表示画像データを前記フラッシュROMから読み出して表示することを特徴とする。
【0011】
本発明の第2の手段は前記第1の手段において、前記エラー検出手段は、更に、前記印刷制御部または前記ハードディスクドライブのエラーを検出して前記画面表示手段に送信することを特徴とする。
【0012】
本発明の第3の手段は前記第1の手段において、前記ハードディスクドライブは、プリンタ制御用ソフトウェア、ユーザー設定値、操作パネル画面データが記録されていることを特徴とする。
【0013】
本発明の第4の手段は前記第1の手段において、前記画面表示手段と前記入力手段とが一体となった操作パネルであることを特徴とする。
【0014】
本発明の第5の手段は前記第1の手段において、前記画面表示手段は、一定時間表示画面が切り換わらない状態が続いたことを検出すると、前記入力手段から擬似入力信号を前記印刷制御部に送信し、前記エラー検出手段は、該擬似入力信号に対する前記印刷制御部からの応答を検知しない場合、エラー検出と判断して処理を行うことを特徴とする。
【0015】
本発明の第6の手段はプリンタにおいて、前記プリンタ制御装置および印刷機構部を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、プリンタの操作パネルの表示に関わるCPUが故障しても、表示画面がフリーズすることなくエラー表示できるため、ユーザーに重要部品の故障を知らせ、保守員もエラー内容が把握でき、円滑な保守が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の実施例に係るプリンタシステムの全体構成を示したブロック図である。
【図2】エラー検出部におけるエラー処理を示すフローチャートである。
【図3】操作パネルにおける画面表示処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1は、プリンタシステムの全体構成を示したブロック図である。
【0019】
図1に示す様に、本実施例のプリンタシステムは、上位装置であるホストPC1と、プリンタエンジン2及びプリンタコントローラ20からなるプリンタとで構成される。
【0020】
プリンタコントローラ20は、コントローラ制御基板3、ハードディスクドライブ(HDD)8、メモリボード9、操作パネル10を備える。
【0021】
コントローラ制御基板3は、印刷データ受信制御部4、CPUを含む印刷制御部5、エラー検出部7、シリアル−パラレル変換制御部6を備える。なお、本実施例において、印刷制御部5は、CPUおよびHDD制御部を含むものとして説明するが、これに限られず、独立した制御部としても構わない。
【0022】
また、操作パネル10は、通信制御部11、RAM12、フラッシュROM13、パネル制御部14、タッチパネル制御部15、LCD表示制御部16、LCDコントラスト制御部17、LCD18を備える。
【0023】
エラー検出部7は、(1)印刷制御部5からの信号、(2)メモリボード9から出力されるメモリアクセス関連の信号、(3)操作パネル10からのタッチパネル処理信号及び表示データ送信処理信号、(4)HDD8からDMA転送によりデータを読み書きする際に出力されるDMA_REQ信号やDMA_ACK信号、等を、印刷制御部5を介して受信する。
【0024】
そして、エラー検出部7は、これらの各種信号の状態遷移をチェックすることにより、各部のエラーを検出し、且つ、当該エラー検出情報を操作パネル10に送信する。
【0025】
次に、エラー検出部7におけるエラー検出時の処理フローを説明する。図2は、エラー検出部7におけるエラー検出時の処理フローである。
【0026】
初めに、エラー検出部7において、ステップ101(以下、S101)で、CPU及びHDD制御を含む印刷制御部5、及び、HDD8において、エラーが生じていないかどうかをチェックする。エラーが検出されていない場合はチェックを繰り返し、エラーが検出された場合は、エラー情報をエラー検出部7自身に記録する(S102)。エラー検出部7は、操作パネル10に対し、エラー検出を送信する(S103)。
【0027】
次に、操作パネル10において、エラー検出部7からエラー検出情報が送信された場合の処理フローを示す。図3に、操作パネル10における画面表示処理のフローチャートを示す。
【0028】
操作パネル10は、エラー検出部7からエラー検出情報を受信する(S201)と、エラー情報(詳細情報)をエラー検出部7から読み出して解析する(S301)。
【0029】
次に、エラー情報解析結果に応じて、エラー表示画面データをフラッシュROM13から読み出し、LCD表示制御部16に送信する(S302)。
【0030】
LCD表示制御部16は、受信したエラー表示画面データをLCD18に書き込み、エラー画面を表示する(S303)。
【0031】
一方、S201において、エラー検出部7からエラー情報を受信しなかった場合は、印刷制御部4から表示データを一定時間内に受信したかどうか判定する(S202)。一定時間内に表示データを受信していれば、S201に戻り、エラー検出部7からのエラー情報受信の判定を繰り返す。
【0032】
しかし、画面表示の変化やタッチパネル操作や印刷動作でエラーが無い場合、印刷制御部5(即ち、CPUやHDD制御)にエラーが生じていないことは確認出来るが、上位装置であるホストPC1からの印刷命令が無いことで省エネルギーモード等になった場合には、表示画面は省エネルギーモードのまま変化せず、従って、表示データが一定時間内に送信されない。
【0033】
そのため、操作パネル10に、CPU故障時の自己診断機能を設けた。印刷制御部5から表示データを一定時間内に受信しない場合(S202)には、操作パネル10内のパネル制御部14は、タッチパネルが押されたような「擬似タッチパネル信号」を印刷制御部5に強制的に送信する(S203)。そして、エラー情報受信判定(S201)に戻る。
【0034】
ここで、送信された「擬似タッチパネル信号」により、印刷制御部5内でCPUによるタッチパネルからの入力処理が実行され、印刷制御部5からタッチパネル擬似信号に応答した信号が出力される。この信号は、自己診断用信号としてエラー検出部7に入力されており、もし、CPUが故障していれば信号は変化しないため、信号の状態遷移をチェックすることで、エラー検出部7にてCPUエラーの検出が可能となる。このように、自己診断機能により、もし、エラー検出部7で他の信号による検出ができないケースが生じても故障を検出できる。
【0035】
上記したように、本発明は、プリンタを制御する重要部位であるCPU(印刷制御部)が故障した際、これらの重要部位の故障を検出し、操作パネルにエラー内容を表示することで、重要部位の故障をユーザーに連絡し、円滑な保守を可能にするプリンタに関するものである。
【0036】
なお、エラー検出部7は、制御ソフトウェアを書き込み、RAM(メモリ)にダウンロードして起動させているHDD8について、HDD8が故障した場合もエラー表示ができない致命的な状態になるため、HDDエラーも含めてハードでエラー検出し、CPUエラーと同様に操作パネルにエラー表示する構成とすることが好ましい。
【0037】
上記したように、本発明では、ハードディスク及びメモリと入力手段と画面表示手段とホストPCから送信される印刷情報に基づき印刷データを作成する印刷制御部を備えたプリンタにおいて、ユーザーの入力を受け付ける前記入力手段により入力された情報に応じて表示画面データを前記ハードディスクから読み出し、前記メモリに展開して前記画面表示手段に送信し表示画面を切り換える手段と前記印刷制御部や前記ハードディスクのエラーを検出及びエラー情報を記録し、エラー検出を前記画面表示手段に送信するエラー検出手段と前記画面表示手段において、エラー検出手段からエラー検出を受信すると記録したエラー情報を読み出して解析し、解析結果に応じてエラー表示画像データをROMから読み出し表示する手段を備えることで、操作パネルの表示に関わるCPUやハードディスク及びハードディスク制御部品が故障しても、表示画面がフリーズすることなくエラー表示できるため、ユーザーに重要部品の故障を知らせ、保守員もエラー内容が把握でき、円滑な保守ができる。
【0038】
また、ハードディスクドライブに、プリンタ制御用ソフトウェア、ユーザー設定値、操作パネル画面データ、表示画像データ等を記録することで、操作パネルに表示画面データを持つ必要がなく、実装するメモリ容量も小さくすることができる。
【0039】
また、画面表示手段と入力手段とが一体となった操作パネルとすることで、入力手段と画面表示手段が一体化し、擬似入力信号を出力することができる。
【0040】
また、操作パネルに印刷制御部やハードディスクドライブが故障した時にエラー内容を表示するため、操作パネル制御プログラム、エラー表示用データ、エラー解析プログラム、及びエラー表示画面データをフラッシュROMに持たせることで、CPUやハードディスクの故障に関わることなくエラー解析及び表示ができる。
【0041】
また、省エネルギーモード等になり一定時間の間、表示画面が切り換わらない状態が続いた場合、画面表示手段は入力手段からあたかも入力があったような擬似入力信号を印刷制御部に送信し、印刷制御部が擬似入力信号に応答するか前記エラー検出手段にてチェックする自己診断機能により、省エネルギーモード中などで、従来のようにエラー検出部でエラーが検出できないケースに対しても、エラーを検出可能な構成とした。
【符号の説明】
【0042】
1:ホストPC(上位装置)、2:プリンタエンジン(印刷機構部)、3:コントローラ制御基板、4:印刷データ受信制御部、5:印刷制御部(CPUを含む)、6:パラレル・シリアル変換制御部、7:エラー検出部、8:ハードディスクドライブ、9:メモリボード、10:操作パネル、11:通信制御部、12:RAM、13:フラッシュROM、14:パネル制御部、15:タッチパネル制御部、16:LCD表示制御部、17:LCDコントラスト制御部、18:LCD、20:プリンタコントローラ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0043】
【特許文献1】特開2003−288196号公報
【特許文献2】特開2007−237472号公報
【特許文献3】特開2008−48208号公報
【特許文献4】特開平7−1800号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホストPCから送信される印刷情報に基づき印刷データを作成する印刷制御部と、ユーザーの入力を受け付ける入力手段と、画面表示手段と、CPUと、メモリと、ハードディスクドライブとを備えたプリンタ制御装置において、
前記ハードディスクドライブには、前記画面表示手段に表示する表示画面データが予め記録されており、前記画面表示手段は、操作画面制御プログラムとエラー表示画像データとを記憶したフラッシュROMを備え、
前記入力手段により入力された情報に応じて前記ハードディスクドライブから前記表示画面データを読み出して、前記メモリに展開して前記画面表示手段に送信して表示画面を切り替える画面切替手段と、
前記CPUのエラーを検出して、該エラー情報を記録し、該エラー検出情報を前記画面表示手段に送信するエラー検出手段とを備え、
前記画面表示手段は、前記エラー検出手段からエラー検出情報を受信すると、該エラー検出情報に対応するエラー情報を前記ハードディスクドライブから読み出して解析し、当該解析結果に応じたエラー表示画像データを前記フラッシュROMから読み出して表示することを特徴とするプリンタ制御装置。
【請求項2】
前記エラー検出手段は、更に、前記印刷制御部または前記ハードディスクドライブのエラーを検出して前記画面表示手段に送信することを特徴とする請求項1記載のプリンタ制御装置。
【請求項3】
前記ハードディスクドライブは、プリンタ制御用ソフトウェア、ユーザー設定値、操作パネル画面データが記録されていることを特徴とする請求項1記載のプリンタ制御装置。
【請求項4】
前記画面表示手段と前記入力手段とが一体となった操作パネルであることを特徴とする請求項1記載のプリンタ制御装置。
【請求項5】
前記画面表示手段は、一定時間表示画面が切り換わらない状態が続いたことを検出すると、前記入力手段から擬似入力信号を前記印刷制御部に送信し、
前記エラー検出手段は、該擬似入力信号に対する前記印刷制御部からの応答を検知しない場合、エラー検出と判断して処理を行うことを特徴とする請求項1記載のプリンタ制御装置。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか1項に記載のプリンタ制御装置および印刷機構部を備えたことを特徴とするプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−214932(P2010−214932A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67733(P2009−67733)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】