説明

プリンタ装置およびその印刷方法

【課題】回路基板上に密集して露出形成された回路配線に対して、補うように回路配線を形成可能なプリンタ装置を提供する。
【解決手段】プリンタ装置は、回路基板50を支持するテーブルと、回路基板50に向けてインクを吐出する絶縁プリンタヘッド、導電プリンタヘッドとを有し、コントローラにより、絶縁プリンタヘッドの移動およびインク吐出を制御されて、回路基板50の表面における所定の回路形成領域を囲む外部領域に絶縁インクを吐出して回路形成領域を表面側に露出させて囲む絶縁パターン45aが形成されるとともに、導電プリンタヘッドの移動およびインク吐出を制御されて、絶縁パターン45aにおける回路形成領域に導電インクを付着させて回路配線54が形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクを付着させて印刷を施すプリンタ装置、およびその印刷方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記のプリンタ装置(インクジェットプリンタ)は、例えば印刷媒体とプリンタヘッドとを相対移動させる作動と、プリンタヘッドからインクを吐出させる作動とを組み合わせて行うことにより、シート状や平板状の印刷媒体に対して所望の画像を印刷できるように構成されている。このようなプリンタ装置は、印刷媒体とプリンタヘッドとの相対移動制御、およびプリンタヘッドにおけるインク吐出制御を高精度に行うことにより、微小なインク滴を印刷媒体上の制御どおりの位置に付着させて高品質な印刷が可能となっている。このプリンタ装置の特徴を活かして、例えばプリンタヘッドから導電性を備えた導電インクを吐出させて、回路基板に露出形成された回路配線の断線部分を補って繋ぐように付着させることにより、回路配線を修復する技術が近年開発されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0003】
上記の回路基板は、まず、電子部品が載置された状態でリフロー炉内において加熱されることにより、回路基板に形成された回路配線と電子部品とが接続されて表面実装される。表面実装後、断線した回路配線の有無等が検査装置を用いて検査されて、検査に合格した回路基板が良品として出荷され、一方、断線した回路配線があると判断された回路基板は廃棄処分されていた。このとき、例えば表面実装された電子部品は正常であっても一部の回路配線に欠陥がある場合には、正常な電子部品も一緒に廃棄処分されて、非常に無駄が多く環境への負荷も甚大であった。これに対し、断線した回路配線をプリンタ装置を用いて修復した場合、従来不良品として廃棄されていた回路基板を良品に再生することができるので、無駄を無くして環境に対する負荷も低減できるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−261228号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近、回路基板が搭載される電気機器の高機能化および小型化に伴い、回路基板においても電子部品を高密度に表面実装させたいという要望がある。このような回路基板は、例えば線幅が10μm程度の回路配線同士が、数μm程度の間隔をおいて密集して露出形成されて構成される。ところで、プリンタヘッドから導電インクを吐出させて回路基板に付着させる際、ミスト化しない範囲内でなるべくインクの液滴径が小さくなるように吐出制御を行っても、インク液滴は回路基板に付着して例えば約50μm程度の大きさに広がってしまう。そのため、断線部分に向けて導電インクを吐出させて付着させると、隣接する回路配線にまで導線性インクが広がって付着されることとなる。その結果、本来接続されてはならない隣接する回路配線同士が接続されて短絡の原因となり、回路基板の機能を確保できなくなる。このように、プリンタ装置を用いて、回路基板上に密集して露出形成された回路配線に対して、補うように回路配線を形成することが困難であるという課題があった。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、回路基板上に密集して露出形成された回路配線に対して、補うように回路配線を形成することが可能なプリンタ装置、およびその印刷方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明に係るプリンタ装置は、回路基板を支持する基板支持手段(例えば、実施形態におけるテーブル12)と、前記基板支持手段に支持された回路基板に対向した状態で前記回路基板に沿って移動自在に設けられて、前記回路基板に向けてインクを吐出するプリンタヘッドとを有するプリンタ装置であって、前記プリンタヘッドは、絶縁性を備えた絶縁インクを吐出する絶縁プリンタヘッドと、導電性を備えた導電インクを吐出する導電プリンタヘッドとを備えて構成されており、前記絶縁プリンタヘッドの移動およびインク吐出を制御して、前記基板支持手段に支持された回路基板に対して、前記回路基板の表面における所定の回路形成領域を囲む外部領域に絶縁インクを吐出して前記回路形成領域を表面側に露出させて囲む回路形成用絶縁パターン(例えば、実施形態における絶縁パターン45a)を形成する絶縁ヘッド制御部(例えば、実施形態におけるコントローラ43)と、前記導電プリンタヘッドの移動およびインク吐出を制御して、前記絶縁ヘッド制御部により制御されて形成された前記回路形成用絶縁パターンにおける前記回路形成領域に導電インクを付着させて回路配線を形成する導電ヘッド制御部(例えば、実施形態におけるコントローラ43)とを備える。
【0008】
上述のプリンタ装置において、前記絶縁ヘッド制御部は、前記回路形成用絶縁パターンとして、前記導電プリンタヘッドから吐出される導電インクの液滴径よりも小さな幅のスリット状の回路形成領域を露出させた回路形成用絶縁パターンを形成するように前記絶縁プリンタヘッドの移動制御およびインク吐出制御が可能であることが好ましい。
【0009】
また、前記基板支持手段に支持された回路基板において、前記回路基板に露出形成された回路配線の欠陥部の位置を検出する欠陥位置検出手段(例えば、実施形態における撮像装置47)を備え、前記回路形成用絶縁パターンとして、前記欠陥位置検出手段により検出された欠陥部を補って回路配線を繋ぐように回路形成領域が設けられた回路形成用絶縁パターンが形成されることが好ましい。
【0010】
本発明に係る印刷方法は、基板支持手段に支持された回路基板に対して、プリンタヘッドを対向させた状態で前記回路基板に沿って移動させながらインクを吐出させて印刷を施すプリンタ装置の印刷方法であって、前記プリンタヘッドは、絶縁性を備えた絶縁インクを吐出する絶縁プリンタヘッドと、導電性を備えた導電インクを吐出する導電プリンタヘッドとを備えて構成されており、前記基板支持手段に支持された回路基板に対して、前記回路基板の表面における所定の回路形成領域を囲む外部領域に絶縁インクを吐出して前記回路形成領域を表面側に露出させて囲む回路形成用絶縁パターンを形成する第1の工程と、前記第1の工程において形成された前記回路形成用絶縁パターンにおける前記回路形成領域に導電インクを付着させて回路配線を形成する第2の工程とを有する。
【0011】
また、前記第1の工程において、前記回路形成用絶縁パターンとして、前記導電プリンタヘッドから吐出される導電インクの液滴径よりも小さな幅のスリット状の回路形成領域を露出させた回路形成用絶縁パターンを形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係るプリンタ装置は、絶縁プリンタヘッドにより回路形成領域を表面側に露出させて囲む回路形成用絶縁パターンを形成し、導電プリンタヘッドにより回路形成領域に導電インクを付着させて回路配線を形成するように構成される。そのため、回路配線を形成する必要がある部分を露出させるとともに、回路配線が形成されてはならない部分を覆うように回路形成用絶縁パターンを形成することにより、導電インクの液滴径に関らず、回路基板上に密集して露出形成された回路配線に対して補うように回路配線を形成できる。
【0013】
なお、絶縁ヘッド制御部は、導電インクの液滴径よりも小さな幅のスリット状の回路形成領域を有した回路形成用絶縁パターンを形成するように、絶縁プリンタヘッドの移動制御およびインク吐出制御が可能であることが好ましい。このように構成すると、隣接する回路配線同士が導電インクの液滴径よりも近接して露出形成されている場合であっても、回路配線同士を短絡させることなく回路配線を形成できる。
【0014】
また、回路配線の欠陥部の位置を検出する欠陥位置検出手段を備え、欠陥部を補って回路配線を繋ぐように回路形成領域が設けられた回路形成用絶縁パターンが形成される構成が好ましい。この構成の場合、回路配線を形成する必要がある部分を欠陥位置検出手段により特定した上で、この部分を露出させた回路形成用絶縁パターンを形成することで、欠陥部を有した回路配線を確実に修復可能となる。
【0015】
本発明に係る印刷方法は、所定の回路形成領域を表面側に露出させて囲む回路形成用絶縁パターンを形成する第1の工程と、この回路形成用絶縁パターンにおける回路形成領域に導電インクを付着させて回路配線を形成する第2の工程とを有する。そのため、回路配線を形成する必要がある部分を露出させ、且つ、回路配線が形成されてはならない部分を覆うように回路形成用絶縁パターンを形成した上で、導電インクを付着させることができる。よって、導電インクの液滴径に関らず、回路基板上に密集して露出形成された回路配線に対して補うように回路配線を形成可能である。
【0016】
また、前記第1の工程において、導電インクの液滴径よりも小さな幅のスリット状の回路形成領域を有した回路形成用絶縁パターンを形成することが好ましい。この構成の場合、隣接する回路配線同士が導電インクの液滴径よりも近接して露出形成されている場合であっても、回路配線同士を短絡させることなく回路配線を形成できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明を適用したプリンタ装置の斜視図である。
【図2】上記プリンタ装置の制御系統図である。
【図3】回路基板の平面図である。
【図4】回路基板の平面図であって、(a)は絶縁マスクが印刷された状態を、(b)は図4(a)の部分拡大図をそれぞれ示す。
【図5】回路基板の平面図であって、回路形成領域に導電インクが付着された状態を示す。
【図6】回路配線を修復する際のフローチャートである。
【図7】別形態の絶縁マスクを示す平面図であって、(a)は導電インクが付着される前の状態を、(b)は導電インクが付着された状態をそれぞれ示す。
【図8】別形態の絶縁マスクを示す平面図であって、(a)は導電インクが付着される前の状態を、(b)は導電インクが付着された状態をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。まず、図1および2を参照しながら、本発明を適用したプリンタ装置1の構成について説明する。説明の便宜上、各図面において矢印方向でプリンタ装置1の前後、左右および上下方向を示し、以下この方向を用いて説明を行う。
【0019】
以下においては、図1に示すように、前後に移動可能となったガイドレール42に対して、左右に移動可能に絶縁プリンタヘッド45および導電プリンタヘッド46を搭載して構成されたプリンタ装置1に本発明を適用した構成例について説明する。なお、絶縁プリンタヘッド45および導電プリンタヘッド46をガイドレール42に搭載した構成以外にも、例えば多関節型ロボットアーム(スカラロボット)に搭載して移動させる構成も可能である。
【0020】
プリンタ装置1は、図1に示すように、下部に設けられたベースとしての機能を有する支持部2と、この支持部2の上に前後に移動自在に取り付けられた本体部3とを備える。支持部2は、複数の支持脚11、この支持脚11により水平に支持されて上面に平面状の支持面を有するテーブル12、およびテーブル12の左右端部に前後に延びて設けられた前後移動機構20,30から構成される。なお、支持部2に対して本体部3を移動させる構成は、例えば機械的に移動させる構成であっても、あるいは、1ライン幅のプリンタヘッドを電気的に走査させてプリント位置に移動させる構成であっても良い。
【0021】
なお、テーブル12の下側(裏側)には、減圧室(図示せず)が形成されており、テーブル12の上面に形成された支持面と減圧室とが、上下に貫通した複数の給排孔(図示せず)により連通されており、図示しない給排ブロワーにより、上記減圧室の空気を吸引したり減圧室に空気を送り込むことができるようになっている。これにより、例えば減圧室の空気を吸引して給排孔から減圧室へ空気を吸引することで、テーブル12の表面に載置された印刷対象物(回路基板50)をテーブル12に吸着固定できるようになっている。
【0022】
本体部3は、上記テーブル12の上方を跨いで左右に延びて形成されており、左右端部において前後移動機構20,30により前後移動可能に支持されている。前後移動機構20,30はそれぞれ本体部3の左右端部を支持するとともに前後移動させる機構であるが、両者が同期して作動され、テーブル12に対して本体部3を真っ直ぐ前後に移動させることができるようになっている。これら前後移動機構20,30は、例えば前後に延びて配設された無端リング状のベルト(図示せず)、およびこのベルトを回転駆動させる前後駆動モータ29,39を備えて構成される。なお、前後移動機構20,30の構成は、これに限定されることなく種々の周知技術を用いることが可能である。
【0023】
本体部3の内部には、左右に延びたガイドレール42が形成されており、このガイドレール42上にキャリッジ44が左右へ移動自在に取り付けられている。このキャリッジ44は、例えば左右に延びて配設された無端リング状のベルト(図示せず)、およびこのベルトを回転駆動させる左右駆動モータ49を備えて構成された左右移動機構により、ガイドレール42上を左右に移動される。なお、左右移動機構の構成は、これに限定されることなく種々の周知技術を用いることが可能である。
【0024】
キャリッジ44には、図示しない例えばイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラック等のカラー印刷用のプリンタヘッドに他に、絶縁プリンタヘッド45、導電プリンタヘッド46および撮像装置47が搭載されている。
【0025】
絶縁プリンタヘッド45は、その下面(テーブル12に対向した面)に多数の吐出ノズル(図示せず)が開口形成されており、この吐出ノズルから絶縁性を有した絶縁インクを下方に向けて吐出可能に構成されている。この絶縁インクとしては、回路基板50の表面に露出形成された回路配線52〜55(図3参照)と密着性の良いものが選択され、例えば紫外光(UV光)が照射されて硬化されるいわゆるUV硬化型のカチオン重合系インク、ラジカル重合系インク、あるいはカチオン−ラジカルハイブリッドインクを用いることが可能である。また、絶縁プリンタヘッド45は、解像度が例えば1200dpi程度(インク液滴径が例えば20μm程度)となった構成が好ましい。なぜならば、後述する絶縁マスク45aを形成する際に、この絶縁マスク45aの位置精度を確保しつつ輪郭を滑らかに形成できるからである。なお、UV硬化型のインクを用いて絶縁マスク45aを形成する場合には、UV硬化型のインクが付着された直後あるいは滲みが許容される所定時間内に、UV照射装置(図示せず)からのUV光を照射して硬化させることにより、絶縁マスク45aをマスクとしての機能を発揮し得るように形成する。
【0026】
導電プリンタヘッド46は、上記絶縁プリンタヘッド45と同様にその下面に多数の吐出ノズル(図示せず)が開口形成されており、この吐出ノズルから導電性を有した導電インクを下方に向けて吐出可能に構成されている。この導電インクとしては、例えば数nm〜数十nmの粒子径となったAg粒子を溶剤に溶かして構成されたものが用いられる。また、導電プリンタヘッド46の解像度は、例えば600dpiまたは300dpi程度となっており、吐出された導電インクがミスト化されにくくなっている。そのため、後述するように回路基板50に導電インクを付着させる際に、浮遊して周囲に付着に付着することがなく、短絡等の不具合が発生しにくくなっている。
【0027】
撮像装置47は、例えばCCD等の撮像素子(図示せず)を内蔵して構成されており、テーブル12に支持された印刷対象物(回路基板50)の表面を撮像可能となっている。
【0028】
本体部3の左部前面側には、操作スイッチ類や表示装置類等からなる操作部41が設けられている。本体部3の左端側内部にはコントローラ43が搭載されており、このコントローラ43は、図2に示すように、操作部41および各構成部材に対して信号やデータの送受信が可能に接続されている。これにより、コントローラ43は、操作部41からの操作信号に基づいて各構成部材に作動信号を出力して、作動制御を行う。また、コントローラ43には、各種のデータが記憶されたメモリ43aが内蔵されており、このメモリ43aにデータを記憶させたり、メモリ43aから記憶されたデータを読み出したりできるようになっている。
【0029】
以上ここまで、プリンタ装置1の構成について説明した。以下においては、例えば平板状の印刷媒体(図示せず)にカラー印刷を施す場合のプリンタ装置1の作動について説明する。なお、このときには、絶縁プリンタヘッド45および導電プリンタヘッド46を稼動させずに、カラー印刷用のプリンタヘッドを稼動させることにより印刷を施すようになっている。
【0030】
まず、テーブル12に印刷媒体を載置させた状態で給排ブロワーを稼動させて、印刷媒体をテーブル12に吸着固定させる。この状態で、本体部3(ガイドレール42)を前後に移動させる作動、キャリッジ44を左右に往復移動させる作動、およびカラー印刷用のプリンタヘッドから下方に向けてカラーインクを吐出させる作動を組み合わせて行いながら、印刷媒体の表面にカラーインクを付着させることにより、所望の印刷が施されるようになっている。このプリンタ装置1は、コントローラ43により、印刷媒体に対するカラー印刷用のプリンタヘッドの移動制御、およびカラー印刷用のプリンタヘッドにおけるインク吐出制御(吐出タイミングおよびインク滴の大きさ)が精度良く行われる構成となっているため、微小なカラーインク滴を印刷媒体上の制御どおりの位置に付着させて高品質な印刷が可能である。
【0031】
以上、平板状の印刷媒体に対してカラー印刷を施す際のプリンタ装置1の作動について説明した。上述のように、キャリッジ44には、絶縁プリンタヘッド45および導電プリンタヘッド46が搭載されているが、これは、微小なインク滴を印刷媒体上の制御どおりの位置に付着可能であるというプリンタ装置1の特徴を活かして、回路基板上に回路配線を形成する際に使用されるものである。最近においては、回路基板が搭載される電気機器の高機能化および小型化に伴い、例えば線幅が10μm程度の回路配線同士が、数μm程度の間隔をおいて密集して露出形成されて構成された回路基板が開発されている。本願発明に係るプリンタ装置1は、このような回路配線を有した回路基板に対しても、短絡等の不具合を発生させることなく確実に回路配線を形成できる構成を特徴構成としている。
【0032】
それでは、この特徴構成について、図3〜5を追加参照しながら図6に示すフローチャートに沿って以下に詳しく説明する。なお、以下においては、一部が欠けて断線した回路配線を繋ぐように修復形成する場合を例示して説明する。
【0033】
まず、図1に示す回路基板50について簡単に説明する。平板状の回路基板50の上側表面には、搭載される電子部品60に対応させて複数の回路配線が予め露出形成されている。この回路基板50に対して電子部品60が載置された後、リフロー炉内で加熱されることにより、回路配線と電子部品60とが半田接続される。そして、各回路配線が断線していないかを検査装置を用いて検査し、断線した回路配線がなく良品と判断された回路基板50は出荷され、一方、断線した回路配線があると判断された回路基板50がテーブル12上の所定位置に吸着固定される。このとき、例えば位置決め治具(図示せず)を用いることで、回路基板50をテーブル12上の所定位置に吸着固定できる。なお、回路基板50に露出形成された回路配線の形状データは、メモリ43aに予め記憶されている。
【0034】
そして、図6に示すステップS101において、前後駆動モータ29,39および左右駆動モータ49を駆動させて撮像装置47を回路基板50の上方に位置させて、回路基板50の表面画像が撮像される。取得された撮像データは、撮像装置47からコントローラ43に送信される。そして、コントローラ43において、予め記憶された回路配線の形状データと撮像装置47からの撮像データとが比較され、回路基板50における断線部分(欠陥部分)の位置およびその範囲が検出される。
【0035】
図3には、回路基板50に形成された複数の回路配線52〜55の一部を示している。回路配線52〜55は、高密度化等の要請から、例えば各線幅が10μm程度であって数μm程度の間隔をおいて露出形成されて構成されている。回路配線52〜55のうち、回路配線54は欠陥部54aによって断線されているが、上述のようにして、この欠陥部54aの位置およびその範囲がコントローラ43において検出される。なお、図3〜5においては、回路配線52〜55にハッチングを施して、分かりやすく図示している。
【0036】
ところで、導電プリンタヘッド46から吐出される導電インクの液滴径は例えば40μm程度であるため、導電インクをそのまま欠陥部54aに付着させると、付着した導電インクを介して回路配線54と回路配線52,53,55とが接続されて短絡の原因となる。そこで、ステップS102において、上記ステップS101で検出された欠陥部54aの位置および範囲に基づいて、絶縁マスク45aの形成領域が設定される。このとき、メモリ43aに記憶された回路配線の形状データが参照された上で、欠陥部54aの左右両端に位置した回路配線54および欠陥部54aを露出させる回路形成用スリット45bに対し、この回路形成用スリット45bの周囲を囲んで回路配線54以外の回路配線(図4(a)における回路配線52,53,55)を露出させないように覆う絶縁マスク45aが設定される。この絶縁マスク45aにより、回路配線を補って接続する必要がある欠陥部54aを露出させつつ、回路配線54と接続させてはならない回路配線52,53,55を覆うことができる。
【0037】
ステップS103に進み、コントローラ43により前後駆動モータ29,39、左右駆動モータ49および絶縁プリンタヘッド45の駆動が制御されて、上記ステップS102で設定された絶縁マスク45aの領域に対して絶縁インクが付着される。上記ステップS102において、回路基板50に付着した絶縁インクの広がる領域が予め考慮されて絶縁マスク45aの領域が設定されているので(図4(b)参照)、回路形成用スリット45bにより例えば回路配線53,55が露出されることがない。
【0038】
次にステップS104に進み、導電プリンタヘッド46から回路形成用スリット45bに向けて導電インクが吐出されて付着され、補修回路46aが形成される(図5参照)。このとき、導電インクの液滴径は回路形成用スリット45bよりも大きいが、回路配線52,53,55と直接接続されないように絶縁マスク45aが形成されているので、導電インクを介して回路配線52〜55が互いに短絡することがない。また、回路形成用スリット45bに対して導電インクが付着されることにより、露出された欠陥部54aに回路配線(補修回路)が形成されて、断線した回路配線54が繋がれて修復される。
【0039】
このように補修回路46aを形成した後、導電インクの特性に応じた乾燥時間だけ乾燥させた後、導電インクの特性に応じた焼結温度(例えば、150℃〜200℃程度)および焼結時間(例えば、20分〜2時間程度)で焼結させることにより、補修回路46aを回路基板50にしっかりと固着させ、このフローは終了する。以上説明したように、本発明に係るプリンタ装置1によれば、回路配線が密集して露出形成されて回路基板に対しても、短絡等の不具合を発生させることなく確実に回路配線を形成(修復)できる。そのため、従来不良品として廃棄されていた回路基板を良品として再生することができ、無駄を無くすとともに環境に対する負荷も低減できる。
【0040】
ところで、上述した絶縁マスク45aは、例えば図7(a)に示す絶縁マスク45cのように設定することも可能である。この絶縁マスク45cは、図7(b)に示すように、導電インクの液滴径(補修回路46aの前後幅)よりも若干大きい前後幅に設定されて、全体として絶縁インクによる印刷領域が小さくなっている。そのため、絶縁インクの消費量を減らしてランニングコストを低減しつつ、回路形成用スリット45dから露出された欠陥部54aに回路配線を形成できる。但し、導電インクの液滴径や着弾位置等がばらつきやすい場合には、このばらつきを考慮した上で、絶縁マスク45cの外方に位置した(絶縁マスク45cが形成されていない)回路基板50に対して導電インクが直接付着することがないように、絶縁マスク45cを予め大きく形成しておくことが好ましい。
【0041】
また、上述した絶縁マスク45aは、例えば図8(a)に示す絶縁マスク45eのように設定することも可能である。絶縁マスク45eは、回路配線54に隣接する回路配線53および回路配線55を覆うとともに、回路形成用スリット45fが左右に延びて設定されて回路配線54を露出させている。この絶縁マスク45eに対して、例えば図8(b)のように欠陥部54aのみに導電インクを付着させて補修回路46aを形成することにより、回路配線54を修復することができる。この絶縁マスク45eは、特に回路配線54に複数の欠陥部54aが存在する場合に有効である。すなわち、左右に延びて形成された絶縁マスク45eに対して、必要な箇所にのみに補修回路46aを形成すれば良い。よって、欠陥部54a毎に絶縁マスク45eを形成する必要がなく、絶縁マスク45eの設定および形成が簡易となる。さらに、この絶縁マスク45eを形成することにより、上述したような回路配線の部分的な修復のみならず、回路配線を新たに追加形成することも可能となる。
【0042】
上述の実施形態においては、カラー印刷用のプリンタヘッドに加えて、絶縁プリンタヘッド45および導電プリンタヘッド46を搭載することで、カラー印刷および回路配線印刷の両方が可能となったプリンタ装置1について説明した。本発明はこの構成に限定されることなく、例えばカラー印刷用のプリンタヘッドを搭載することなく絶縁プリンタヘッド45および導電プリンタヘッド46のみを搭載し、回路配線印刷に特化させた構成とすることも可能である。
【0043】
上述の実施形態において、本発明に係るプリンタ装置1を用いて回路配線の欠陥部を修復する場合を例示して説明したが、このような場合以外にも、例えば表面が傷付いた回路配線を撮像装置47で検出して修復することも可能である。
【0044】
また、上述の実施形態においては、回路基板50をテーブル12に吸着固定させておき、絶縁プリンタヘッド45および導電プリンタヘッド46(キャリッジ44を)を前後左右に移動させながらインクを吐出させる構成を例示して説明した。本発明はこの形態のプリンタ装置に限定して適用されるものではなく、例えば絶縁プリンタヘッド45および導電プリンタヘッド46を固定しておき、これらに対して回路基板50を前後左右に移動させる構成のプリンタ装置にも適用可能である。
【0045】
上述の実施形態において、絶縁インクとしては、例えばUV硬化型インク、水性ラテックスインク、透明または白色のソルベルトインク、またはカラーインクを用いることが可能である。一方、導電性インクとしては、例えばナノ銅やナノ銀等の導電性粒子の分散型水性溶剤インクや、加熱されることで金属析出して導電化する金属塩等の溶液からなる加熱導電化インクを用いることが可能である。
【符号の説明】
【0046】
1 プリンタ装置
12 テーブル(基板支持手段)
43 コントローラ(絶縁ヘッド制御部、導電ヘッド制御部)
45 絶縁プリンタヘッド
45a 絶縁パターン(回路形成用絶縁パターン)
46 導電プリンタヘッド
47 撮像装置(欠陥位置検出手段)
50 回路基板
54 回路配線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回路基板を支持する基板支持手段と、
前記基板支持手段に支持された回路基板に対向した状態で前記回路基板に沿って移動自在に設けられて、前記回路基板に向けてインクを吐出するプリンタヘッドとを有するプリンタ装置であって、
前記プリンタヘッドは、
絶縁性を備えた絶縁インクを吐出する絶縁プリンタヘッドと、導電性を備えた導電インクを吐出する導電プリンタヘッドとを備えて構成されており、
前記絶縁プリンタヘッドの移動およびインク吐出を制御して、前記基板支持手段に支持された回路基板に対して、前記回路基板の表面における所定の回路形成領域を囲む外部領域に絶縁インクを吐出して前記回路形成領域を表面側に露出させて囲む回路形成用絶縁パターンを形成する絶縁ヘッド制御部と、
前記導電プリンタヘッドの移動およびインク吐出を制御して、前記絶縁ヘッド制御部により制御されて形成された前記回路形成用絶縁パターンにおける前記回路形成領域に導電インクを付着させて回路配線を形成する導電ヘッド制御部とを備えたことを特徴とするプリンタ装置。
【請求項2】
前記絶縁ヘッド制御部は、前記回路形成用絶縁パターンとして、前記導電プリンタヘッドから吐出される導電インクの液滴径よりも小さな幅のスリット状の回路形成領域を露出させた回路形成用絶縁パターンを形成するように前記絶縁プリンタヘッドの移動制御およびインク吐出制御が可能であることを特徴とする請求項1に記載のプリンタ装置。
【請求項3】
前記基板支持手段に支持された回路基板において、前記回路基板に露出形成された回路配線の欠陥部の位置を検出する欠陥位置検出手段を備え、
前記回路形成用絶縁パターンとして、前記欠陥位置検出手段により検出された欠陥部を補って回路配線を繋ぐように回路形成領域が設けられた回路形成用絶縁パターンが形成されることを特徴とする請求項1または2に記載のプリンタ装置。
【請求項4】
基板支持手段に支持された回路基板に対して、プリンタヘッドを対向させた状態で前記回路基板に沿って移動させながらインクを吐出させて印刷を施すプリンタ装置の印刷方法であって、
前記プリンタヘッドは、絶縁性を備えた絶縁インクを吐出する絶縁プリンタヘッドと、導電性を備えた導電インクを吐出する導電プリンタヘッドとを備えて構成されており、
前記基板支持手段に支持された回路基板に対して、前記回路基板の表面における所定の回路形成領域を囲む外部領域に絶縁インクを吐出して前記回路形成領域を表面側に露出させて囲む回路形成用絶縁パターンを形成する第1の工程と、
前記第1の工程において形成された前記回路形成用絶縁パターンにおける前記回路形成領域に導電インクを付着させて回路配線を形成する第2の工程とを有したことを特徴とする印刷方法。
【請求項5】
前記第1の工程において、前記回路形成用絶縁パターンとして、前記導電プリンタヘッドから吐出される導電インクの液滴径よりも小さな幅のスリット状の回路形成領域を露出させた回路形成用絶縁パターンを形成すること特徴とする請求項4に記載の印刷方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−181775(P2011−181775A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−45876(P2010−45876)
【出願日】平成22年3月2日(2010.3.2)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】