説明

プリンタ装置及びプリンタ装置の画像形成方法

【課題】撮影者の意図と異なる画像がプリントされることを防止する。
【解決手段】プリンタ装置は、印刷対象とする画像データ、及びこの画像データに付加された、画像データに対する階調補正の可否を示すデータを読み込む読み込み手段と、階調補正の可否を示すデータより画像データに階調補正処理を行うか否かを判定する判定手段と、判定手段で階調補正処理を行うと判定した場合は、印刷対象とする画像データに対して階調補正を行い、判定手段で階調補正処理を行なわないと判定した場合は、印刷対象とする画像データへの階調補正を禁止する、という処理を制御する制御手段と、制御手段に基づいて処理された画像データを画像形成媒体上に画像として形成するプリント手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データに付加された撮影情報に基づいて、その画像データをプリントする際に自動的に行われる階調補正処理の実行を行うか否かを制御する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、電子カメラのAE(Auto Exposure :自動露出)機能では、被写体の反射する光の強さ(量)を測定し、その測定値から、被写体の反射率を18%(いわゆる標準反射率)と仮定した時の露出値を求め、その露出値に基づいて絞りやシャッタースピードなどを設定して自動的に露出を調整するようにしている。
【0003】
このように、電子カメラのAE機能では、被写体の反射率を18%と仮定した時の露出値を求めるように構成されているため、撮影された被写体によっては、得られた画像データの露出がアンダー気味になったりオーバー気味になったりすることがあった。例えば、被写体の大部分が反射率の高い白色の場合には、被写体に強い光が照射されていなくても、露出をアンダーにさせるような調整が行われ、逆に、被写体の大部分が反射率の低い黒色の場合には、被写体に強い光が照射されているとしても、露出をオーバーにさせるような調整が行われ、適正な露出調整が行われないことがあった。
【0004】
従って、例えばこのような画像データをプリントする場合には、ユーザはプリントする前に、電子カメラが備える画像処理機能やペイント系のソフトウェアが備える画像処理機能などを利用して、適正な露出補正(階調補正)を行う必要があり、ユーザの負担は大きかった。
【0005】
そこで、このようなユーザの負担を軽減するため、画像データをプリントする際に、プリンタ装置が、その画像データを解析して、先の白色や黒色の被写体を撮影したときのような階調補正が必要な画像データに対し、階調補正を自動的に実行し、適正な露出の画像がプリントされるように構成されたプリンタ装置が市場に流通するようになった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、画像データによっては、撮影者の意図により、例えば、撮影時にマニュアルモードにて絞りやシャッタースピードが設定されて撮影されたものや、露出補正されて撮影されたものや、スポット測光を利用して撮影されたものなど、意図的に非標準的な露出が指定されて撮影された画像データがある。
【0007】
このような画像データを上述のプリンタ装置でプリントする場合には、意図的に非標準的な露出が設定されて撮影された画像データに対しても、プリンタ装置にて自動的に階調補正が行われてしまい、撮影者の意図しない画像がプリントされてしまうという新たな問題を発生させた。
【0008】
本発明の課題は、上記実情に鑑み、撮影者により意図的に露出指定されて撮影された画像データをプリントするときに、自動階調補正処理を禁止するようにして、撮影者の意図と異なる画像がプリントされることを防止することができる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様に係るプリンタ装置は、印刷対象とする画像データ、及びこの画像データに付加された、画像データに対する階調補正の可否を示すデータを読み込む読み込み手段と、前記画像データのプリントを指示するプリント指示手段と、前記印刷対象とする画像データに階調補正処理を行う階調補正手段と、前記階調補正の可否を示すデータより画像データに階調補正処理を行うか否かを判定する判定手段と、前記判定手段で階調補正処理を行うと判定した場合は、前記印刷対象とする画像データに対して階調補正を行い、前記判定手段で階調補正処理を行なわないと判定した場合は、前記印刷対象とする画像データへの階調補正を禁止する、という処理を制御する制御手段と、前記制御手段に基づいて処理された画像データを画像形成媒体上に画像として形成するプリント手段と、を備えることを特徴とする。
【0010】
本発明の第2の態様に係るプリンタ装置は、上記第1の態様において、前記制御手段に基づいて処理制御された後に、画像データをプリントするための色変換処理を行う色変換手段を更に有する、ことを特徴とする。
【0011】
本発明の第3の態様に係るプリンタ装置は、上記1又は2の態様において、前記階調補正可否を示すデータは、撮影モードがマニュアルモードで撮影された旨の情報が含まれるとき、階調補正を禁止するデータとされたものである、ことを特徴とする。
【0012】
本発明の第4の態様に係るプリンタ装置は、上記1乃至3の何れか一つの態様において、前記階調補正可否を示すデータは、露出補正されて撮影された旨の情報、または、一部範囲を測光するスポット測光が指定されて撮影された旨の情報の少なくとも何れかが含まれるとき、階調補正を禁止するデータとされたものである、ことを特徴とする。
【0013】
本発明の第5の態様に係るプリンタ装置は、上記1乃至3の何れか一つの態様において、前記階調補正可否を示すデータは、撮影後に露出に関わる画像処理が施されたとき、階調補正を禁止するデータとされたものである、ことを特徴とする。
【0014】
本発明の第6の態様に係るプリンタ装置は、上記1乃至3の何れか一つの態様において、前記階調補正手段は、前記印刷対象とする画像データからヒストグラムを作成し、少なくとも該ヒストグラムから得られた前記画像データの最大値を用いて階調補正する、ことを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、上記のプリンタ装置の他、プリンタ装置の画像形成方法として構成することも可能である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、撮影者により意図的に露出指定されて撮影された画像データをプリントするときには、自動階調補正処理を禁止して、すなわち自動階調補正処理を行わずにプリントするようにしたため、撮影者の意図した画像と異なる画像がプリントされることを防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一の実施の形態を示す電子カメラの外観図であり、(a) はその後面図、(b) はその前面図である。
【図2】本発明の第一の実施の形態を示す電子カメラのシステム構成を示す図である。
【図3】本発明の第一の実施の形態に示す、レリースボタンが押されたときに実行される処理を示すフローチャートである。
【図4】撮影情報を構成する撮影モードの種類と露出モードの種類を示す図である。
【図5】本発明の第一の実施の形態に示す、プリント処理を示すフローチャートである。
【図6】自動階調補正処理フラグ判断テーブルを示す図である。
【図7】自動階調補正処理の一例を示すフローチャートである。
【図8】(a)は自動階調補正処理前のヒストグラムを示し、(b) は自動階調補正処理後のヒストグラムを示す図である。
【図9】第二の実施の形態に示す、レリースボタンが押されたときに実行される処理を示すフローチャートである。
【図10】第二の実施の形態に示す、プリント処理を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第三の実施の形態を示すプリンタ装置のシステム構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
図1(a),(b)は、本発明の第一の実施の形態を示す電子カメラの外観図であり、同図(a) はその後面図、同図(b) はその前面図を示している。この電子カメラは、インスタントフィルム用プリンタ(プリンタ部)を内蔵し、撮影した画像データをその場でプリントアウトできるように構成される、いわゆるインスタントフィルム現像機能付き電子カメラである。
【0019】
図1(a) に示すように、電子カメラ1はその後面に、画像表示LCD(Liquid Crystal Display)2、モードダイヤル3、パワーボタン4、ズームレバー5、十字キー6、スポット測光ボタン7、プリントボタン8などを備え、また、上面にはインスタントフィルム9を排出するフィルム排出口を有して構成されている。
【0020】
画像表示LCD2は、撮影した画像データやメモリカードに記録された画像データ、又はモニター画像などを表示する。
モードダイヤル3は、”P:プログラムモード(オートモード)”、”A:絞り優先モード”、”S:シャッタースピード優先モード”、及び”M:マニュアルモード”などの撮影モードや、”PR:プリントモード”などの各種モードを切り換えるためのダイヤルである。
【0021】
パワーボタン4は、電子カメラ1の電源をON/OFFするためのボタンである。
ズームレバー5は、ズームレンズをテレ側(T:望遠側)、若しくはワイド側(W:広角側)に駆動させるためのレバーである。
【0022】
十字キー6は、上下左右を指示するためのキーであり、例えば画像表示LCD2に表示されるメモリカードに記録された複数の画像データの中から所定の画像データを選択する際などに使用されるキーである。
【0023】
スポット測光ボタン7は、撮影時の測光方式としてスポット測光を指定するためのボタンである。
プリントボタン8は、十字キー6により選択された画像データや撮影した画像データ等をプリント指示するためのボタンである。
【0024】
インスタントフィルム9は、F(フィルム)電池と共にフィルムカートリッジに備えられ、このフィルムカートリッジは電子カメラ1から着脱可能に構成されている。
また図1(b) に示すように、電子カメラ1はその前面に、ズームレンズ10、レリースボタン11、ストロボ12、フィルムカートリッジ蓋13などを備えている。
【0025】
ズームレンズ10は、所定の範囲内で連続的に焦点距離を変更可能に構成されるレンズである。
レリースボタン11は、撮影を指示するためのボタンである。
【0026】
ストロボ12は、暗所での撮影時や逆光での撮影時などに、瞬間的に強い光を発生させ、被写体が暗く撮影されてしまうのを防ぐときなどに利用されるものである。
フィルムカートリッジ蓋13は、フィルムカートリッジの着脱時に開閉される蓋である。
【0027】
図2は、このような電子カメラ1のシステム構成を示す図である。同図に示すように、この電子カメラ1は、撮影に寄与する構成(カメラ部)とプリントに寄与する構成(プリンタ部)を一体にして構成されている。
【0028】
同図において、ズームレンズ系21、撮像素子22、撮像回路23、及びA/D(アナログ/デジタル)変換回路24で撮像部が構成されている。撮像部では、ズームレンズ系21によって結像された被写体像が撮像素子22によって光電変換され、その変換出力である画像信号が撮像回路23を介してA/D変換回路24に入力されるとそこでアナログ−デジタル変換されてデジタルデータである画像データが得られる。ここで、ズームレンズ系21に備えられているレンズは、レンズ駆動制御回路25により制御されているレンズ駆動部26により駆動され、被写体像のフォーカスの調整が行なわれる。
【0029】
シスコン(システムコントローラ)27は、CPU(中央演算処理装置)を備えて構成され、電子カメラ1を構成する各部を制御すると共に、画像データで示される画像の明暗・彩度・色合いなどを補正する各種の画像処理を行う。また、画像データからヒストグラムを作成するヒストグラム作成処理や、このヒストグラムに基づき画像データに階調補正を行う処理や、またプリントしようとする画像データとプリント後の画像の色ズレを補正するための色変換処理なども行う。
【0030】
ASIC(Application Specific Integrated Circuit )部28は、JPEG(Joint Photographic Experts Group)方式による画像データの圧縮処理及び伸張処理を行う。
RAM29は、画像データを一時的に蓄えるバッファメモリとして使用される他、シスコン27による各種処理のための作業用の記憶領域としても使用されるランダム・アクセス・メモリである。
【0031】
ROM30は、電子カメラ1を構成する各部の制御をシスコン27に備えられているCPUに行わせるための制御プログラムや、各種の処理のために必要な演算データや、後述する自動階調補正処理フラグ判断テーブルなどが予め格納されているリード・オンリ・メモリである。
【0032】
メモリI/F(インターフェース)31は、カードスロット32に挿入されたメモリカード33との間でデータの授受を行うためのインターフェース機能を提供するものであり、データの読み書きの可能な半導体メモリを備えて構成されるメモリカード33への画像データの書き込み、あるいはメモリカード33からの画像データの読み出しの処理が行なわれる。
【0033】
外部I/F(インターフェース)34は、外部入出力端子35に接続された外部機器、例えばパーソナルコンピュータ等との間でデータの授受を行うためのインターフェース機能を提供するものであり、外部機器への画像データや各種データなどの出力、あるいは外部機器からの画像データや各種データなどの入力処理が行われる。
【0034】
ビデオメモリ36はシスコン27での画像処理によって得られる表示用の画像データを一時的に保持しておくためのメモリであり、この画像データはその後ビデオメモリ36から読み出されてビデオ出力回路37に入力されてビデオ信号である画像信号に変換される。この画像信号が画像表示LCD2に入力されると画像が表示される。また、この画像信号はビデオアウト端子38を介して他の機器へ送出することも可能である。
【0035】
ラインメモリ39は、シスコン27での階調補正処理や色変換処理などの各種の画像処理によって得られるプリント用の画像データを1ラインデータ毎に保持しておくためのメモリである。
【0036】
LCS(Liquid Crystal Shutter:液晶シャッター)制御回路40は、ラインメモリ39に保持される1ラインの画像データを読み出し、これに基づいてLCS41を制御し、インスタントフィルム9に露光されるLED43の光量を制御する。
【0037】
フィルムカートリッジ9は、インスタントフィルム9及びF(フィルム)電池46などを備え、インスタントフィルム9は、F電池46を給電源として駆動制御回路44により制御されている駆動部45の駆動信号に基づき駆動されながら、LED43を光源としてLCS41を介して露光される。
【0038】
操作部47は、撮影者(ユーザ)により操作される、前述のモードダイヤル3、パワーボタン4、ズームレバー5、十字キー6、スポット測光ボタン7、プリントボタン8、レリースボタン11などにより構成され、撮影者(ユーザ)からの各種の指示を受け取ってシスコン27に伝えるためのものである。
【0039】
電源部48は、F電池46の電圧、カメラ電池49の電圧、若しくは外部電源端子50に入力された電力の電圧を制御してこの電子カメラ1の各部に電力を供給する。
ストロボ発光部51は、ストロボ12を使用する撮影の際にストロボ12を発光させるためのものである。
【0040】
次に、電子カメラ1のシスコン27に備えられているCPUによって行なわれる、本発明に関係する各種の制御処理について説明する。尚、これらの処理は、電子カメラ1のROM30に格納されている制御プログラムをCPUが読み取って実行することによって実現される。
【0041】
図3、図5、図7は、電子カメラ1のシスコン27で行なわれる制御処理の処理内容を示すフローチャートである。
図3は、レリースボタン11が押されたときに実行される処理を示すフローチャートである。同図において、レリースボタン11が押されて撮影指示が為されると、まず、撮像処理を行う(S301)。この撮像処理は、ズームレンズ系21によって結像された被写体像を撮像素子22により光電変換させ、その変換出力である画像信号を撮像回路23を介してA/D変換回路24に入力させ、そこでアナログ−デジタル変換させてデジタルデータである画像データを得る処理である。
【0042】
続いて、得られた画像データに対しホワイトバランス(WB)などの各種画像処理を施し(S302)、更に、記録するデータ量を少なくするために、ASIC部28によるJPEG圧縮処理を行わせる(S303)。
【0043】
続いて、この圧縮処理の終了した画像データに撮影情報を付加させるため、その画像データのファイルヘッダーに撮影情報として、撮影時の撮影モード及び露出モードを記録し(S304)、画像データとこれに付加された撮影情報(撮影モード及び露出モード)をメモリカード33に記録して(S305)、当該フローを終了する。
【0044】
尚、撮影情報において、撮影モードは、撮影時に撮影者によりモードダイヤル3が操作されることにより設定される。また、露出モードは、不図示の露出補正ボタン(+/−ボタン)が押されるか、若しくは、スポット測光ボタン7が押されることにより設定される。上述の露出補正ボタンは、”+”または”−”のボタンが押されることにより、例えば、”−3EV”、”−2EV”、”−1EV”、”0(補正なし)”、”+1EV”、”+2EV”、”+3EV”等の露出が指定されるものである。
【0045】
図4は、撮影情報を構成する撮影モードの種類と露出モードの種類を示す図である。同図に示すように、撮影モードは、”プログラムモード(オートモード)”、”絞り優先モード”、”シャッタースピード優先モード”、”マニュアルモード”の4種類の撮影モードがある。また、露出モードは、”露出補正無し”、”露出補正有り”、”スポット測光”の3種類の露出モードがある。撮影モードは、撮影者による撮影時のモードダイヤル3の操作により、”P:プログラムモード(オートモード)”が指定されたときに”オート”が、”A:絞り優先モード”が指定されたときに”絞り優先”が、”S:シャッタースピード優先モード”が指定されたときに”シャッター速度優先”が、”M:マニュアルモード”が指定されたときに”マニュアル”が設定される。また、露出モードは、上述の露出補正ボタンが操作されて、例えば”0”以外の露出が指定されたときは、露出モードとして”露出補正(露出補正有り)”が設定され、スポット測光ボタン7が押されたときには”スポット測光”が設定され、それ以外のとき、すなわち、露出に関わる指定が為されなかったときは、”補正無し(露出補正無し)”が設定される。
【0046】
次に、このようにしてメモリカード33に記録された画像データのプリント処理について説明する。
図5は、プリント処理を示すフローチャートである。尚、同図に示すフローは、モードダイヤル3が”プリントモード”に設定されているときに行われる処理である。
【0047】
同図において、まず、メモリカード33に記録されている1ファイル(画像データ及びそれに付加されたの撮影情報)を読み出し(S501)、画像表示LCD2にその画像データを表示する(S502)。尚、外部入出力端子35を介して外部機器から画像データを読み出しても良い。
【0048】
続いて、撮影者により十字キー6の左右キーが操作されたか否かを判断し(S503)、操作されたと判断したときは(S503が有り)、S501の処理に戻り、十字キー6の左右キーに基づいて、メモリカード33から次の1ファイルを読み出し、同様にその画像データを画像表示LCD2に表示する。一方、十字キー6が操作されていないと判断したときには(S503がなし)、プリントボタン8が押されたか否かを判断し(S504)、押されていないと判断したときには(S504がいいえ)S503の処理に戻る。
【0049】
このように、S501〜S504の処理は、撮影者が十字キー6の右左キーを操作して、プリントしようとする画像データを選択する(プリントボタン8が押される)までの間、繰り返される処理である。
【0050】
続いて、撮影者がプリントしようとする画像データを決定してプリントボタン8が押されたと判断したときには(S504が押下)、その決定された画像データに付加された撮影情報(撮影モード及び露出モード)とROM30に格納されている自動階調補正処理フラグ判断テーブルに基づいて、自動階調補正処理フラグをONにするかOFFにするかを判断し決定する処理を行う(S505)。
【0051】
図6は、ROM30に格納されている自動階調補正処理フラグ判断テーブルを示す図である。同図に示すテーブルは、撮影モードと露出モードの組み合わせにより、自動階調補正処理フラグをON(許可)するかOFF(禁止)するかを示したテーブルである。同図では、自動階調補正処理フラグがONされる撮影モードと露出モードの組み合わせに○を付し、自動階調補正処理フラグがOFFされる組み合わせに×を付して示している。すなわち、自動階調補正処理フラグをONにさせるための組み合わせは、撮影モードが”オート”で露出モードが”補正無し”のとき、又は撮影モードが”絞り優先”で露出モードが”補正無し”のとき、若しくは撮影モードが”シャッター速度優先”で露出モードが”補正無し”のときに自動階調補正処理フラグがONにされる。そして、それ以外の撮影モードと露出モードの組み合わせの場合には、自動階調補正処理フラグはOFFにされる。尚、撮影モードが”マニュアル”であったときは、露出モードの如何に問わず、自動階調補正処理フラグはOFFにされる。
【0052】
図5に戻り、このようにして自動階調補正処理フラグが決定されると、このフラグのON/OFFを判断する(S506)。この判断処理で、フラグがONであると判断したときには(S506がはい)、プリント指定された画像データに対し後述する自動階調補正処理を行い(S507)、更に、前述した色変換処理(プリント画像処理)(S508)を行い、実際にインスタントフィルム9にその画像データに基づく画像をプリントする処理を行って(S509)、当該フローを終了する。
【0053】
一方、S506の判断処理で、フラグがOFFであると判断したときには(S506がいいえ)、自動階調補正処理を禁止し、すなわち自動階調補正処理を行わずに、S508の処理に移行して画像データに色変換処理を行い、インスタントフィルム9にその画像データに基づく画像をプリントする処理を行って(S509)、当該フローを終了する。
【0054】
図7は、図5に示した自動階調補正処理(S507)の一例を示すフローチャートである。尚、本例では、画像データの各画素の階調値を、0(黒)〜中間色〜255(白)のデジタル値(8ビット)で表すように構成されている。従って同図に示す階調補正処理では、まずプリント指定された画像データのヒストグラムを作成し(S701)、このヒストグラムから階調値の最大値(MAX)を求め(S702)、この最大値(MAX)から、各画素の階調値を255/MAX倍して(S703)階調補正を行うようにし、画像データの階調分布が平均化されるように処理している。尚、自動階調補正処理は、上述した方法に限られず、その他の方法を利用して自動階調補正処理を行うようにしても良い。
【0055】
図8(a) は自動階調補正処理前のヒストグラムを示し、同図(b) は自動階調補正処理後のヒストグラムを示す図である。同図(a),(b) において、横軸は0(黒)〜中間調〜255(白)のデジタル値(8ビット)で示される階調値を示し、縦軸はその階調値の画素の頻度を示している。
【0056】
同図(a) に示すように、自動階調補正処理前の画像データのヒストグラムでは、濃度の濃い階調(暗め)の画素が多く分布している。また、同図(a) のMAXは階調値の最大値を示している。このMAX値から、上述したように、画像データの各画素の階調を255/MAX倍して階調補正処理を行うことにより、同図(b) に示すような画像データの階調分布が得られ、同図(a) に示すヒストグラムに比べて階調分布が平均化されたヒストグラムが得られる。
【0057】
以上、第一の実施の形態に示した電子カメラによれば、撮影時に、”M:マニュアルモード”が指定されたか、又は露出補正ボタンにより所定の露出が指定されたか、若しくはスポット測光ボタン7が押されたときなど、撮影者により意図的に露出が指定されたときには、自動階調補正処理フラグをOFFにし、自動階調補正を禁止してプリントするように処理するため、撮影者が意図的に非標準的な露出指定を行った画像データに誤って自動階調補正処理が施されて、撮影者の意図しない画像がプリントされることを防止することが可能になる。
【0058】
尚、第一の実施の形態において、例えば、撮影者(ユーザ)の操作により、一旦メモリカード33に記録された画像データが画像表示LCD2に表示され、その画像データに対し、撮影者の指示に基づく露出に関わる所定の画像処理が施されて再びメモリカードに記録されたときには、その記録の際に、プリント時のその画像データへの自動階調補正処理を禁止すべく、その画像データに付加される撮影情報として、撮影モード及び露出モード以外に、撮影後に露出に関わる画像処理が施された旨の情報を含むように構成しても良い。この情報を含む場合は、撮影モードと露出モードの種類にかかわらず、自動階調補正処理を禁止する旨の判定を行うように構成される。
【0059】
また、第一の実施の形態において、撮影した画像データをメモリカード33に記録せずにそのままプリントするように構成しても良い。
また、第一の実施の形態において、撮影情報は、撮影モードと露出モードから構成されるものであったが、その他の情報を含めるように構成しても良い。
【0060】
次に、本発明の第二の実施の形態について説明する。
上述の第一の実施の形態では、プリント時に自動階調補正処理フラグを判断し決定するように構成されていたが、第二の実施の形態では、撮影時に自動階調補正処理フラグを判断し決定するように構成したものである。
【0061】
図9は、第二の実施の形態に示す、レリースボタン11が押されたときに実行される処理を示すフローチャートである。尚、同図は、第一の実施の形態に示した図3のフローチャートに対応するものであり、異なる処理は、図3のS303の処理とS304の処理の間に自動階調補正処理フラグを判断し決定する処理を加えたものである。
【0062】
すなわち、図9において、レリースボタンが押されると、まず撮像処理を行い(S901)、得られた画像データにホワイトバランス(WB)などの画像処理を施し(S902)、これに更にASIC部28によるJPEG圧縮処理を行わせる(S903)。
【0063】
続いて、撮影時の撮影条件、すなわちモードダイヤル3による撮影モードの指定、露出補正ボタンによる露出指定、及びスポット測光ボタン7によるスポット測光の指定などに基づいて図4に示した撮影モード及び露出モードを決定し、この撮影モードと露出モード及びROM30に格納されている自動階調補正処理フラグ判断テーブル(図6参照)に基づき自動階調補正処理フラグをONにするかOFFにするかを判断し決定する処理を行う(S904)。
【0064】
続いて、S903の圧縮処理の終了した画像データに撮影情報を付加させるため、その画像データのファイルヘッダーに撮影情報として、決定された自動階調補正処理フラグを記録し(S905)、この画像データとこれに付加された撮影情報(自動階調補正処理フラグ)をメモリカード33に記録し(S906)、当該フローを終了する。尚、この自動階調補正処理フラグは、階調補正を禁止するか否かの判断(判定)結果を示す情報でもある。
【0065】
図10は、第二の実施の形態に示す、プリント処理を示すフローチャートである。尚、同図に示すフローは、第一の実施の形態に示した図5のフローチャートに対応するものであり、図5に示したフローのS505の処理、すなわち、自動階調補正処理フラグをONにするかOFFにするかを判断し決定する処理を省いたものである。
【0066】
すなわち、図10において、メモリカード33から画像データ及びそれに付加された撮影情報(自動階調補正処理フラグ)を読み出し(S1001)、画像データを画像表示LCD2に表示する(S1002)。続いて、撮影者により、十字キー6及びプリントボタン8が操作されて、所定の画像データがプリント指定されると(S1003がなし、S1004が押下)、撮影情報の自動階調補正処理フラグがONであるかOFFであるかを判断する(S1005)。この判断処理で、自動階調補正処理フラグがONであると判断したときには(S1005がはい)、例えば図7に示したような自動階調補正処理を画像データに施し(S1006)、更に色変換処理を行い(S1007)、実際にインスタントフィルム9にこの画像データに基づく画像をプリントする処理を行って(S1008)、当該フローを終了する。一方、自動階調補正処理フラグがOFFであると判断したときには(S1005がいいえ)、自動階調補正処理を禁止、すなわち自動階調補正処理を行わずにS1007の処理に移行して色変換処理(プリント画像処理)を行い(S1007)、実際にインスタントフィルム9にこの画像データに基づく画像をプリントする処理を行って(S1008)、当該フローを終了する。
【0067】
以上、第二の実施の形態に示した電子カメラによれば、画像データに付加される撮影情報を、自動階調補正処理フラグにしたことにより、プリント時に行われていた自動階調補正処理フラグを判断して決定する処理を行わなくても済むようになるため、プリント時に係る処理の負荷を軽減させることが可能になる。
【0068】
尚、第二の実施の形態において、撮影情報は、自動階調補正処理フラグから構成されるものであったが、その他の情報を含めるように構成しても良い。
次に、本発明の第三の実施の形態について説明する。
【0069】
図11は、本発明の第三の実施の形態を示すプリンタ装置のシステム構成を示す図である。同図に示すプリンタ装置は、図2に示した電子カメラにおいて、主にプリント処理に関わる構成を独立させたものである。従って、図2に示した構成と同一の機能を有するものについては同一の符号を付し、ここでは異なる構成についてのみ説明する。
【0070】
図11において、シスコン(システムコントローラ)127は、CPU(中央演算処理装置)を備えて構成され、プリンタ装置を構成する各部を制御すると共に、画像データで示される画像の明暗・彩度・色合いなどを補正する各種の画像処理を行う。また、画像データからヒストグラムを作成する処理やこのヒストグラムに基づく階調補正処理やプリント後の色ずれを防止するための色変換処理なども行う。
【0071】
ROM130は、プリンタ装置を構成する各部の制御をシスコン127に備えられているCPUに行わせるための制御プログラムや、各種の処理のために必要な演算データや、自動階調補正処理フラグ判断テーブル(図6参照)などが予め格納されているリード・オンリ・メモリである。
【0072】
操作部147は、ユーザにより操作される、各種のスイッチ群、例えば、パワースイッチ、画像データを選択・決定するためのスイッチ、プリント指示するためのスイッチなどにより構成され、ユーザからの各種の指示を受け取ってシスコン127に伝えるためのものである。
【0073】
電源部148は、F電池46の電圧、若しくは外部電源端子50に入力された電力の電圧を制御してこのプリンタ装置を構成する各部に電力を供給する。
このような構成のプリンタ装置は、メモリカード33に記録されているファイル(画像データとこれに付加された撮影情報を含む)、若しくは外部入出力端子に接続されている外部機器の記憶部に記録されているファイル(画像データとこれに付加された撮影情報を含む)などの中から、所定のファイルがユーザによりプリント指示されると、まず、そのファイルを読み出し、そのファイルの撮影情報(撮影モードと露出モード、図4参照)とROM130に格納されている自動階調補正処理フラグ判断テーブルに基づき自動階調補正処理フラグをONにするかOFFにするかを判断し決定する。ここで、自動階調補正処理フラグをONに決定したときには、読み出したファイルの画像データに対し自動階調補正処理を行った後にプリント処理を行うようにし、自動階調補正処理フラグをOFFに決定したときには、画像データへの自動階調補正処理を禁止して、すなわち自動階調補正処理を行わずにプリント処理を行うように処理する。
【0074】
尚、上述の撮影情報が付加された画像データのファイルは、例えば、第一の実施の形態に示した電子カメラ1により記録されたファイルであるか、若しくはその電子カメラ1において、撮影処理に関わる構成を独立させて構成された(プリント処理に関わる構成を省いて構成された)電子カメラにより記録されたファイルなどである。
【0075】
以上、第三の実施の形態に示したプリンタ装置によれば、プリント指示されたファイルの画像データに付加された撮影情報(撮影モード及び露出モード)に基づいてプリント時の自動階調補正処理を禁止するか否かを制御することが可能になる。
【0076】
尚、第三の実施の形態において、撮影情報を、撮影モード及び露出モードの代わりに自動階調補正処理フラグにするように構成しても良い。この場合、撮影情報として自動階調補正処理フラグが付加された画像データのファイルは、例えば、第二の実施の形態に示した電子カメラにより記録されたファイルであるか、若しくは、その電子カメラにおいて、撮影処理に関わる構成を独立させて構成された(プリント処理に関わる構成を省いて構成された)電子カメラにより記録されたファイルなどである。このように構成することで、ROM130に自動階調補正処理フラグ対応テーブルを格納する必要がないので、ROM130のメモリ容量を少なく構成でき、また、自動階調補正処理フラグをONするかOFFするかを判断し決定する処理を行わなくて済むので、プリント時に係る処理の負荷を軽減させることも可能になる。
【0077】
尚、上述の第一乃至第三の実施の形態では、プリント機構として、インスタントフィルム9にLCS41を介してLED43の光を露光してプリントする構成を示したが、例えば、インクジェット方式や感熱方式など、その他のプリント機構を備えるように構成しても良い。
【符号の説明】
【0078】
1 電子カメラ
2 画像表示LCD
3 モードダイヤル
4 パワーボタン
5 ズームレバー
6 十字キー
7 スポット測光ボタン
8 プリントボタン
9 インスタントフィルム
10 ズームレンズ
11 レリースボタン
12 ストロボ
13 フィルムカートリッジ蓋
21 ズームレンズ系
22 撮像素子
23 撮像回路
24 A/D変換回路
25 レンズ駆動部
26 レンズ駆動制御回路
27、127 シスコン
28 ASIC部
29 RAM
30、130 ROM
31 メモリI/F
32 カードスロット
33 メモリカード
34 外部I/F
35 外部入出力端子
36 ビデオメモリ
37 ビデオ出力回路
38 ビデオアウト端子
39 ラインメモリ
40 LCS制御回路
41 LCS
43 LED
44 駆動制御回路
45 駆動部
46 F電池
47、147 操作部
48、148 電源部
49 カメラ電池
50 外部電源入力端子
51 ストロボ発光部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷対象とする画像データ、及びこの画像データに付加された、画像データに対する階調補正の可否を示すデータを読み込む読み込み手段と、
前記画像データのプリントを指示するプリント指示手段と、
前記印刷対象とする画像データに階調補正処理を行う階調補正手段と、
前記階調補正の可否を示すデータより画像データに階調補正処理を行うか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段で階調補正処理を行うと判定した場合は、前記印刷対象とする画像データに対して階調補正を行い、前記判定手段で階調補正処理を行なわないと判定した場合は、前記印刷対象とする画像データへの階調補正を禁止する、という処理を制御する制御手段と、
前記制御手段に基づいて処理された画像データを画像形成媒体上に画像として形成するプリント手段と、
を備えることを特徴とするプリンタ装置。
【請求項2】
前記制御手段に基づいて処理制御された後に、画像データをプリントするための色変換処理を行う色変換手段を更に有する、
ことを特徴とする請求項1記載のプリンタ装置。
【請求項3】
前記階調補正可否を示すデータは、撮影モードがマニュアルモードで撮影された旨の情報が含まれるとき、階調補正を禁止するデータとされたものである、
ことを特徴とする請求項1又は2記載のプリンタ装置。
【請求項4】
前記階調補正可否を示すデータは、露出補正されて撮影された旨の情報、または、一部範囲を測光するスポット測光が指定されて撮影された旨の情報の少なくとも何れかが含まれるとき、階調補正を禁止するデータとされたものである、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のプリンタ装置。
【請求項5】
前記階調補正可否を示すデータは、撮影後に露出に関わる画像処理が施されたとき、階調補正を禁止するデータとされたものである、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のプリンタ装置。
【請求項6】
前記階調補正手段は、前記印刷対象とする画像データからヒストグラムを作成し、少なくとも該ヒストグラムから得られた前記画像データの最大値を用いて階調補正する、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載のプリンタ装置。
【請求項7】
プリンタ装置の画像形成方法であって、
印刷対象とする画像データ、及びこの画像データに付加された、画像データに対する階調補正の可否を示すデータを読み込み、
前記画像データのプリントを指示し、
前記階調補正の可否を示すデータより、画像データに階調補正処理を行うか否かを判定し、
階調補正処理を行うと判定した場合は、前記印刷対象とする画像データに対して階調補正を行い、階調補正処理を行なわないと判定した場合は、前記印刷対象とする画像データへの階調補正を禁止する、という処理を制御し、
前記制御に基づいて処理された画像データを画像形成媒体上に画像として形成する、
ことを特徴とする画像形成方法。



【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図1】
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【公開番号】特開2011−48392(P2011−48392A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−249448(P2010−249448)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【分割の表示】特願2000−350184(P2000−350184)の分割
【原出願日】平成12年11月16日(2000.11.16)
【出願人】(000000376)オリンパス株式会社 (11,466)
【Fターム(参考)】