説明

プリンタ

【課題】印字ヘッドまたはプラテンローラを退避させる動作の操作荷重を軽減できるプリンタを提供する。
【解決手段】テープ/チューブプリンタ1Aは、サーマルヘッド7とプラテンローラ6との間にチューブ51等を挟持すると共に、サーマルヘッド7をプラテンローラ6から退避させるヘッド移動機構11を備える。ヘッド移動機構11は、サーマルヘッド7を移動させるヘッドスライダ12と、ヘッドスライダ12を移動させるヘッド移動カム13と、ヘッド移動カム13を回転させて、ヘッドスライダ12を移動させるヘッド移動レバー14を備える。ヘッドスライダ12は、サーマルヘッド7をプラテンローラ6に対して近づける方向及び離す方向に移動させる第1のスライダ15と、第1のスライダ15を移動させる第2のスライダ16と、サーマルヘッド7をプラテンローラ6に押圧するバネ17Aを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、印刷ヘッドとプラテンが対向配置され、印刷ヘッドまたはプラテンを退避させて印字媒体をセットできるようにしたプリンタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、印字媒体として長尺状のテープまたは長尺状のチューブを選択に設定して印字を行えるようにしたプリンタが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このようなプリンタは、印字媒体を搬送するプラテンローラと、印刷を行うサーマルヘッド等の印刷ヘッドが対向配置される構成で、印字媒体の装着時は、プラテンローラあるいは印刷ヘッドを退避させて、プラテンローラと印刷ヘッドの間に印字媒体を装着するような構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−027240号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
印刷ヘッドとプラテンローラが対向配置されるプリンタでは、サーマルヘッドと印刷ヘッドを押圧するバネを備え、サーマルヘッドと印刷ヘッドの間に印字媒体を押圧している。従来のプリンタでは、サーマルヘッドと印刷ヘッドを押圧するバネに抗して、サーマルヘッドまたは印刷ヘッドを退避させる構成となっている。このため、サーマルヘッドまたは印刷ヘッドを退避させる動作の全域に亘り、操作荷重が大きくなる。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、サーマルヘッドまたは印刷ヘッドを退避させる動作の操作荷重を軽減できるプリンタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するため、本発明は、長尺状の印字媒体を走行させる搬送手段と、搬送手段と対向して配置され、搬送手段で搬送される印字媒体に印字を行う印字手段と、印字手段または搬送手段を離接する方向に移動させ、印字手段または搬送手段を退避させると共に、印字手段と搬送手段との間に印字媒体を挟持させる移動手段と、印字手段または搬送手段を離接する方向に移動させる操作を受ける操作手段と、操作手段の動作を移動手段に伝達する伝達手段とを備え、移動手段は、印字手段と搬送手段が離接する方向に沿って移動し、印字手段または搬送手段を移動させる第1の移動部材と、第1の移動部材の移動方向に沿って移動する第2の移動部材と、第2の移動部材に対する第1の移動部材の変位で弾性変形し、印字手段と搬送手段を押圧する押圧手段と、押圧手段で押圧される第1の移動部材と第2の移動部材の変位を規制し、第1の移動手段と第2の移動手段を連動させて移動させる位置規制部材とを備えたプリンタである。
【0008】
本発明のプリンタは、操作手段の操作で印字手段と搬送手段の間に印字媒体を押圧する動作では、第2の移動部材に対して第1の移動部材が変位することで、押圧手段が弾性変形して印字手段と搬送手段が押圧される。これにより、操作手段に押圧手段による操作荷重が掛かる。
【0009】
一方、操作手段の操作で印字手段または搬送手段を移動させる動作では、押圧手段により押圧される第1の移動部材と第2の移動部材の変位が位置規制部材で規制され、第1の移動手段と第2の移動手段が連動して一体的に移動する。
【0010】
これにより、操作手段の操作で印字手段と搬送手段の間に印字媒体を押圧する動作、及び押圧を解除する動作では、操作手段に押圧手段による操作荷重が掛かる。これに対し、操作手段の操作で印字手段または搬送手段を退避させる動作、及び印字手段と搬送手段の間に印字媒体を挟持する動作では、操作手段に押圧手段による操作荷重が掛からない。従って、操作手段の全ストローク中で、操作荷重が掛かる領域を減らすことができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明のプリンタよれば、操作手段の操作で印字手段または搬送手段を退避させる動作、及び印字手段と搬送手段の間に印字媒体を挟持する動作で、操作手段に押圧手段による操作荷重が掛からず、操作荷重を軽減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施の形態のテープ/チューブプリンタの構成の一例を示す斜視図である。
【図2】本実施の形態のテープ/チューブプリンタの構成の一例を示す平面図である。
【図3】本実施の形態のテープ/チューブプリンタの一例を示す外観斜視図である。
【図4】本実施の形態のテープ/チューブプリンタに備えられるヘッド移動機構の構成及び動作の一例を示す側面図である。
【図5】本実施の形態のヘッド移動機構の構成及び動作の一例を示す斜視図である。
【図6】本実施の形態のヘッド移動機構の構成及び動作の一例を示す斜視図である。
【図7】本実施の形態のヘッド移動機構の構成及び動作の一例を示す斜視図である。
【図8】押圧力の調整機構を備えた本実施の形態のヘッド移動機構の構成及び動作の一例を示す側面図である。
【図9】押圧力の調整機構を備えた本実施の形態のヘッド移動機構の構成及び動作の一例を示す斜視図である。
【図10】押圧力の調整機構を備えた本実施の形態のヘッド移動機構の構成及び動作の一例を示す斜視図である。
【図11】押圧力の調整機構を備えた本実施の形態のヘッド移動機構の構成及び動作の一例を示す斜視図である。
【図12】本実施の形態のヘッドスライダの一例を示す斜視図である。
【図13】本実施の形態のヘッドスライダの一例を示す斜視図である。
【図14】本実施の形態のヘッドスライダの一例を示す斜視図である。
【図15】本実施の形態のテープ/チューブプリンタの変形例を示すヘッド移動機構の側面図である。
【図16】本実施の形態のテープ/チューブプリンタの他の変形例を示すヘッド移動機構の側面図である。
【図17】本実施の形態のテープ/チューブプリンタの他の変形例を示すヘッド移動機構の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、本発明のプリンタの一例としてのテープ/チューブプリンタの実施の形態について説明する。
【0014】
<本実施の形態のテープ/チューブプリンタの構成例>
図1は、本実施の形態のテープ/チューブプリンタの構成の一例を示す斜視図、図2は、本実施の形態のテープ/チューブプリンタの構成の一例を示す平面図、図3は、本実施の形態のテープ/チューブプリンタの一例を示す外観斜視図である。
【0015】
また、図4は、本実施の形態のテープ/チューブプリンタに備えられるヘッド移動機構の構成及び動作の一例を示す側面図、図5〜図7は、本実施の形態のヘッド移動機構の構成及び動作の一例を示す斜視図である。更に、図8は、押圧力の調整機構を備えた本実施の形態のヘッド移動機構の構成及び動作の一例を示す側面図、図9〜図11は、押圧力の調整機構を備えた本実施の形態のヘッド移動機構の構成及び動作の一例を示す斜視図である。
【0016】
本実施の形態のテープ/チューブプリンタ1Aは、図3に示すように、表示部10aと操作部10bを備えた筐体10cの内部に、選択的にセットされるチューブまたはテープ等の長尺状の印字媒体に印刷を行う機構を備える。以下の例では、主にチューブ51に印字を行う例を中心に説明する。
【0017】
テープ/チューブプリンタ1Aは、印字媒体に所定の印刷処理を行う機構として、図1及び図2に示すように、チューブ51と図示しないテープカセットが選択的にセットされるカセットホルダ部2と、インクリボンカセット3がセットされるリボンホルダ部4を備える。カセットホルダ部2とリボンホルダ部4は例えば樹脂の一体成形品で、例えば金属板で構成されるロアプレート5aに取り付けられる。
【0018】
テープ/チューブプリンタ1Aは、カセットホルダ部2にセットされたチューブ51、または、カセットホルダ部2にセットされた図示しないテープカセットから繰り出されたテープを搬送するプラテンローラ6と、プラテンローラ6で搬送されるチューブ51または図示しないテープに印字を行うサーマルヘッド7を備える。
【0019】
プラテンローラ6は搬送手段の一例で、図示しないモータの駆動力が伝達されて回転する。ここで、プラテンローラ6を駆動する図示しないモータの駆動力は、インクリボンカセット3のインクリボン3aを巻き取るリール3bを駆動する巻取り軸にも伝達され、プラテンローラ6の回転と、インクリボン3aの送りが同期して行われる。
【0020】
サーマルヘッド7は印字手段の一例で、発熱体が設けられる部位がプラテンローラ6の円周面に対向して配置される。テープ/チューブプリンタ1Aは、サーマルヘッド7がプラテンローラ6に対して近づく方向と離れる方向に移動可能な構成、または、プラテンローラ6がサーマルヘッド7に対して近づく方向と離れる方向に移動可能な構成を備え、チューブ51及びテープ等の印字媒体がサーマルヘッド7に押圧される。
【0021】
テープ/チューブプリンタ1Aは、サーマルヘッド7のスライド動作または回転動作等により、サーマルヘッド7がプラテンローラ6に対して近づく方向と離れる方向に移動可能な構成である。テープ/チューブプリンタ1Aは、本例では、枠部7aに支持されるサーマルヘッド7が、軸7bを支点とした回転動作で、プラテンローラ6の円周面に対して近づく方向と離れる方向に移動可能に構成される。
【0022】
サーマルヘッド7は、軸7bを支点とした矢印a1方向への回転動作で、プラテンローラ6の円周面に対して近づく方向に移動する。これにより、サーマルヘッド7とプラテンローラ6との間にインクリボン3aとチューブ51あるいは図示しないテープが挟持され、チューブ51またはテープに印刷が可能な状態となる。
【0023】
また、サーマルヘッド7は、軸7bを支点とした矢印a2方向への回転動作で、プラテンローラ6の円周面に対して離れる方向に移動して退避し、チューブ51またはテープのセットが可能な状態となる。
【0024】
次に、プラテンローラ6に対してサーマルヘッド7を移動させる構成について説明する。テープ/チューブプリンタ1Aは、サーマルヘッド7をプラテンローラ6に押圧させることで、サーマルヘッド7とプラテンローラ6との間に挟持されるチューブ51等の印字媒体をサーマルヘッド7に押圧させると共に、サーマルヘッド7をプラテンローラ6から退避させるヘッド移動機構11Aを備える。
【0025】
ヘッド移動機構11Aは、図4〜図11に示すように、サーマルヘッド7を移動させるヘッドスライダ12と、ヘッドスライダ12を移動させるヘッド移動カム13と、ヘッド移動カム13を回転させて、ヘッドスライダ12を移動させるヘッド移動レバー14を備える。
【0026】
図12〜図14は、本実施の形態のヘッドスライダの一例を示す斜視図である。ヘッドスライダ12は移動手段の一例で、サーマルヘッド7をプラテンローラ6に対して近づける方向及び離す方向に移動させる第1のスライダ15と、第1のスライダ15を移動させる第2のスライダ16と、サーマルヘッド7をプラテンローラ6に押圧するバネ17Aを備える。
【0027】
第1のスライダ15と第2のスライダ16は、本例では軸7bを支点とした回転動作で移動するサーマルヘッド7に対し、プラテンローラ6に近づくサーマルヘッド7の動き、及びプラテンローラ6から離れるサーマルヘッド7の動きに沿った直線動作で移動可能に構成される。
【0028】
第1のスライダ15は第1の移動部材の一例で、サーマルヘッド7を押圧するヘッド押圧部15aと、ヘッド移動カム13に押圧されると共に、バネ17Aを介して第2のスライダ16を押圧する第1のカム押圧部15bと、バネ17Aにより押圧される第1のスライダ15と第2のスライダ16の位置を規制する位置規制部材としての突き当て部15cを備える。
【0029】
第1のスライダ15は、サーマルヘッド7の動きに沿った移動方向に対する一方の端部に、移動方向に対して立ち上がる突状のヘッド押圧部15aが形成され、他方の端部に、移動方向に対して立ち上がる面を有した第1のカム押圧部15bが形成される。
【0030】
第1のスライダ15は、本例では金属の板材で構成され、底面部15dの一方の端部が上方に折り曲げられる形態でヘッド押圧部15aが形成され、他方の端部が上方に折り曲げられる形態で第1のカム押圧部15bが形成される。
【0031】
第1のスライダ15は、ヘッド押圧部15aと第1のカム押圧部15bの間の底面部15dに開口部15eが形成され、第1のスライダ15の移動方向に沿った開口部15eの一方の端面で突き当て部15cが形成される。
【0032】
また、第1のスライダ15は、プラテンローラ6の軸受6aが挿入される軸穴部15fが、第1のスライダ15の移動方向に沿った長穴形状で底面部15dに形成される。更に、第1のスライダ15は、底面部15dの一方の側部が上方に折り曲げられる形態で側面部15gが形成され、図2に示すチューブ51等の印字媒体を全切り(フルカット)する後述するフルカット機構とサーマルヘッド7の進退動作を連動させるピンが挿入されるガイド穴部15hが、第1のスライダ15の移動方向に沿った長穴形状で側面部15gに形成される。
【0033】
第2のスライダ16は第2の移動部材の一例で、ヘッド移動カム13に押圧される第2のカム押圧部16aと、バネ17Aにより押圧される第1のスライダ15と第2のスライダ16の位置を規制する位置規制部材としての突き当て突部16bを備える。
【0034】
第2のスライダ16は、サーマルヘッド7の動きに沿った移動方向に対する一方の端部に、移動方向に対して立ち上がる突き当て突部16bが形成され、他方の端部に、移動方向に対して立ち上がる面を有した第2のカム押圧部16aが形成される。
【0035】
第2のスライダ16は、本例では金属の板材で構成され、底面部16cの一方の端部が上方に折り曲げられる形態で突き当て突部16bが形成され、他方の端部が上方に折り曲げられる形態で第2のカム押圧部16aが形成される。また、第2のスライダ16は、移動方向を規制するガイド穴部16dが、第2のスライダ16の移動方向に沿った長穴形状で底面部16cに形成される。このように、第1のスライダ15と第2のスライダ16が、金属の板材の折り曲げ加工で構成されることで、部品のコストを抑えることができる。
【0036】
ヘッドスライダ12は、第1のスライダ15の開口部15eに第2のスライダ16の突き当て突部16bが挿入され、第1のスライダ15の開口部15eから、第2のスライダ16の突き当て突部16bが突出する。
【0037】
これにより、第1のスライダ15の第1のカム押圧部15bの一方の面と、第2のスライダ16の突き当て突部16bが対向する。また、第1のスライダ15の第1のカム押圧部15bの他方の面と、第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aが対向する。
【0038】
第1のスライダ15は、軸穴部15fにプラテンローラ6の軸受6aが挿入されて、ロアプレート5a等に支持される。また、第2のスライダ16は、第1のスライダ15の開口部15eに突き当て突部16bが挿入され、ガイド穴部16dに図示しないガイドピンが挿入されて、ロアプレート5a等に支持される。
【0039】
これにより、第1のスライダ15は、プラテンローラ6に対して離接するサーマルヘッド7の動きに沿った直線動作でスライド移動可能に支持され、プラテンローラ6に近づくサーマルヘッド7の動きに沿った矢印b1方向と、プラテンローラ6から離れるサーマルヘッド7の動きに沿った矢印b2方向に移動可能である。
【0040】
また、第2のスライダ16は、第1のスライダ15の移動方向に沿ってスライド移動可能に支持され、プラテンローラ6に近づくサーマルヘッド7の動きに沿った矢印b1方向と、プラテンローラ6から離れるサーマルヘッド7の動きに沿った矢印b2方向に移動可能である。
【0041】
バネ17Aは押圧手段の一例で、圧縮コイルバネで構成され、第1のスライダ15の第1のカム押圧部15bの一方の面と、第2のスライダ16の突き当て突部16bの間に取り付けられる。
【0042】
ヘッドスライダ12は、第1のスライダ15の第1のカム押圧部15bと第2のスライダ16の突き当て突部16bの間隔が広がる方向にバネ17Aにより押圧され、第2のスライダ16の突き当て突部16bが、第1のスライダ15の突き当て部15cに押圧されて、第1のスライダ15と第2のスライダ16の位置が規制される。
【0043】
ヘッドスライダ12は、第1のスライダ15のヘッド押圧部15aが、サーマルヘッド7の裏面側で枠部7aに対向して配置され、図2に示すように、引っ張りコイルバネで構成されるバネ12aで、第1のスライダ15のヘッド押圧部15aとサーマルヘッド7が連結される。
【0044】
これにより、サーマルヘッド7をプラテンローラ6に対して近づける矢印b1方向に第1のスライダ15が移動すると、ヘッド押圧部15aでサーマルヘッド7がプラテンローラ6方向に押され、サーマルヘッド7が軸7bを支点とした矢印a1に示す回転動作でプラテンローラ6に押圧される。
【0045】
また、サーマルヘッド7をプラテンローラ6に対して離す矢印b2方向に第1のスライダ15が移動すると、バネ12aを介してヘッド押圧部15aでサーマルヘッド7がプラテンローラ6から離れる方向に引かれ、サーマルヘッド7が軸7bを支点とした矢印a2に示す回転動作でプラテンローラ6から退避する。
【0046】
ヘッド移動カム13は伝達手段の一例で、ロアプレート5aに取り付けられたサイドプレート5bに、軸13aを介して回転可能に支持され、第1のスライダ15の第1のカム押圧部15bと、第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aの間に配置される。
【0047】
ヘッド移動レバー14は操作手段の一例で、サイドプレート5bに軸を介して回転可能に支持される。ヘッド移動カム13はギア部13bを備え、ヘッド移動レバー14はギア部13bと噛み合うギア部14aを備えて、ヘッド移動レバー14の回転動作でヘッド移動カム13が回転する。
【0048】
ヘッド移動機構11Aは、ヘッド移動レバー14の動作で回転するヘッド移動カム13のカム面の変位でヘッドスライダ12を構成する第1のカム押圧部15b及び第2のカム押圧部16aが押圧され、サーマルヘッド7をプラテンローラ6に押圧する動作、及びサーマルヘッド7をプラテンローラ6から退避させる動作が行われる。
【0049】
ヘッド移動機構11Aは、ヘッド移動カム13で第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aが押圧されると、サーマルヘッド7がプラテンローラ6に近づく矢印b1方向にヘッドスライダ12が移動し、図4(a)、図5、図8(a)及び図9に示すように、サーマルヘッド7が押圧位置に移動する。
【0050】
すなわち、ヘッドスライダ12は、ヘッド移動カム13で第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aが押圧されると、バネ17Aで第1のスライダ15が押圧され、第2のスライダ16と連動して第1のスライダ15が矢印b1方向に移動する。
【0051】
これにより、第1のスライダ15のヘッド押圧部15aでサーマルヘッド7がプラテンローラ6方向に押され、サーマルヘッド7とプラテンローラ6の間にチューブ51等の印字媒体とインクリボンが挟持される。
【0052】
そして、サーマルヘッド7とプラテンローラ6の間にチューブ51等が挟持された状態で、第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aが押圧されると、第1のスライダ15に対して第2のスライダ16が矢印b1方向に移動してバネ17Aが圧縮され、プラテンローラ6との間にチューブ51等を挟持したサーマルヘッド7が、バネ17Aの力でプラテンローラ6に押圧される。
【0053】
また、ヘッド移動機構11Aは、ヘッド移動カム13で第1のスライダ15の第1のカム押圧部15bが押圧されると、サーマルヘッド7がプラテンローラ6から離れる矢印b2方向にヘッドスライダ12が移動し、図4(c)、図7、図8(c)及び図11に示すように、サーマルヘッド7が退避位置に移動する。
【0054】
すなわち、ヘッドスライダ12は、ヘッド移動カム13で第1のスライダ15の第1のカム押圧部15bが押圧されると、ヘッド押圧部15aでサーマルヘッド7がプラテンローラ6から離れる方向に引かれ、サーマルヘッド7がプラテンローラ6から退避する。また、バネ17Aで第2のスライダ16が押圧され、第1のスライダ15と連動して第2のスライダ16が移動する。
【0055】
本例では、ヘッド移動レバー14の回転動作に対し、ヘッドスライダ12の移動量を可変とすることで、サーマルヘッド7のプラテンローラ6に対する押圧力を可変とする押圧力調整手段を備え、チューブ51等の印字媒体に対する押圧力を調整可能としている。
【0056】
このため、ヘッド移動カム13は、回転動作の中心からの距離が変化すると共に、サーマルヘッド7を押圧位置と退避位置で保持する所定の面で構成される第1のカム面13cと、第1のカム面13cと異なる距離で変化すると共に、サーマルヘッド7を押圧位置と退避位置で保持する所定の面で構成される第2のカム面13dを備える。ヘッド移動カム13は、第1のカム面13cに対して第2のカム面13dが回転動作による変位量が小さい面で構成され、第1のカム面13cと第2のカム面13dが、軸13aに沿って並列して形成される。
【0057】
ヘッド移動機構11Aは、ヘッド移動カム13の第1のカム面13cと第2のカム面13dのどちらかを選択して、第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aを押圧できるようにするため、ヘッド移動カム13が軸13aに沿って移動可能に構成される。
【0058】
ヘッド移動機構11Aは、ヘッド移動カム13を軸13aに沿って移動させる操作レバーと、ヘッド移動カム13の移動を規制するストッパを備える。ヘッド移動カム13は、第1のカム面13cが第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aと対向する位置、または、第2のカム面13dが第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aと対向する位置で、ストッパにより軸13aに係止されて、軸方向に沿った移動が規制される。
【0059】
また、ヘッド移動カム13は、ストッパによる係止が解除されることで、第1のカム面13cが第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aと対向する位置、または、第2のカム面13dが第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aと対向する位置に、操作レバーの操作により軸方向に沿った移動が可能になる。
【0060】
ヘッド移動機構11Aは、図4及び図5〜図7に示すように、第1のカム面13cが第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aと対向する位置にヘッド移動カム13を移動させると、ヘッド移動レバー14の動作によるヘッド移動カム13の回転方向に応じて、第1のカム面13cが第1のスライダ15の第1のカム押圧部15b、または、第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aを押圧する。
【0061】
また、ヘッド移動機構11Aは、図8及び図9〜図11に示すように、第2のカム面13dが第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aと対向する位置にヘッド移動カム13を移動させると、ヘッド移動レバー14の動作によるヘッド移動カム13の回転方向に応じて、第2のカム面13dが第1のスライダ15の第1のカム押圧部15b、または、第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aを押圧する。
【0062】
ヘッド移動機構11Aは、第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aを、ヘッド移動カム13の第1のカム面13cで押圧する場合の方が、第2のカム面13dで押圧する場合より、第2のスライダ16の移動量が長くなる。
【0063】
これにより、図4(a)及び図5に示すように、ヘッド移動カム13の第1のカム面13cを第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aに対向する位置として、ヘッド移動カム13の動作でサーマルヘッド7を押圧位置に移動させると、第1のスライダ15に対して第2のスライダ16が移動することにより圧縮されるバネ17Aの変形量が大きくなり、チューブ51等の印字媒体に対する押圧力が強くなる。
【0064】
一方、図8(a)及び図9に示すように、ヘッド移動カム13の第2のカム面13dを第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aに対向する位置として、ヘッド移動カム13の動作でサーマルヘッド7を押圧位置に移動させると、第1のスライダ15に対して第2のスライダ16が移動することにより圧縮されるバネ17Aの変形量が少なくなり、チューブ51等の印字媒体に対する押圧力が弱くなる。
【0065】
次に、チューブ51等の印字媒体をガイドする構成について説明する。テープ/チューブプリンタ1Aは、プラテンローラ6にチューブ51等の印字媒体をセットする際のガイドとなるプラテンガイド18を備える。本例では、プラテンローラ6に近づくサーマルヘッド7の動き、及び、プラテンローラ6から離れるサーマルヘッド7の動きに連動して、プラテンガイド18が移動する機構を備える。
【0066】
プラテンガイド18は、第1のスライダ15の開口部15eから突出する第2のスライダ16の突き当て突部16bに取り付けられ、プラテンローラ6の下部に配置されると共に、第2のスライダ16と一体にスライド移動する。プラテンガイド18は、本例では、プラテンローラ6の軸を避けるために、先端側が2分割された形状である。
【0067】
プラテンガイド18は、プラテンローラ6からサーマルヘッド7を退避させるヘッドスライダ12の移動により、プラテンローラ6の下部からプラテンローラ6の周面より突出する。また、プラテンガイド18は、プラテンローラ6にサーマルヘッド7を押圧するヘッドスライダ12の移動により、プラテンローラ6の下部へプラテンローラ6の周面から退避する。
【0068】
テープ/チューブプリンタ1Aは、チューブ51等の印字媒体の搬送方向に対してプラテンローラ6の上流側にチューブガイド機構21を備える。チューブガイド機構21は、サーマルヘッド7の上流側で、プラテンローラ6の円周面に対してチューブ51を押圧するガイドローラ22と、ガイドローラ22の上流側でプラテンローラ6に送り込まれるチューブ51をガイドするチューブガイド23を備える。
【0069】
ガイドローラ22は、プラテンローラ6の円周方向に対してサーマルヘッド7の対向位置より上流側に配置される。これにより、チューブ51がガイドローラ22とプラテンローラ6との間、及びサーマルヘッド7とプラテンローラ6との間に挟み込まれると、サーマルヘッド7とガイドローラ22との間でプラテンローラ6の円周面に巻き付けられることで、管状のチューブ51が潰されて、サーマルヘッド7とプラテンローラ6との間で略平面状となる。
【0070】
チューブガイド23は、カセットホルダ部2に形成されたガイド部24に配置される。チューブガイド23は、例えば薄板状の金属のバネ材で構成された押圧プレートを備え、ガイド部24に立設されたガイド板とガイド部24の底面にチューブ51を押圧することで、プラテンローラ6に送り込まれるチューブ51の径方向の位置を規制する。
【0071】
チューブガイド機構21は、退避レバー21aと図示しないリンク機構で連結され、退避レバー21aの操作で、ガイドローラ22がプラテンローラ6から退避して、ガイドローラ22とプラテンローラ6との間にチューブセット用の空間が形成される。また、チューブガイド23がガイド部24から退避して、ガイド部24との間にチューブセット用の空間が形成される。
【0072】
ここで、ガイドローラ22及びチューブガイド23を退避させると、退避レバー21aがカセットホルダ部2の中間付近に位置して、テープカセットを誤って装着できないようにしてある。
【0073】
次に、チューブ51等の印字媒体を切断する構成について説明する。テープ/チューブプリンタ1Aは、チューブ51等の印字媒体の搬送方向に対してプラテンローラ6の下流側に、ハーフカット機構8とフルカット機構9を備える。ハーフカット機構8は、刃部とホルダを有したカッター81と、カッター81と対向する受け台82を備える。
【0074】
ハーフカット機構8は、カッター81が受け台82に対して近づく方向と離れる方向に移動可能に構成され、カッター81と受け台82の間にチューブ51またはテープを挟んでハーフカットが行われる。ハーフカットとは、切断対象物がチューブ51の場合、円周方向の一部を除いてカットした状態である。これにより、外力を加えることで、連続したチューブ51を容易に切断することができる。
【0075】
図示しないが、切断対象物が剥離紙付きのテープの場合、表面側の印字テープは切断し、裏面側の剥離紙は切断しない状態である。これにより、テープを曲げることで、印字テープを剥離紙から一枚ずつ容易にはがすことができる。
【0076】
ハーフカット機構8は、カッター81を駆動するためモータ83と、カッター81に駆動力を伝達するカッターレバー84と、モータ83の駆動力をカッターレバー84に伝達するギア群85を備える。
【0077】
カッターレバー84は、軸84aを支点に回転可能に取り付けられ、カッターレバー84の一端に設けられたカッター押圧部84bで、カッターレバー84の回転動作がカッター81に伝達される。また、カッターレバー84は、ギア群85を構成するギア85aに設けられたボス85bが挿入される円弧状の長穴84cが形成される。ギア85aは、回転軸に対して偏芯した位置にボス85bが設けられる。
【0078】
これにより、モータ83の駆動力がギア群85を介してギア85aに伝達され、ギア85aが回転すると、ボス85bの軌跡とカッターレバー84の長穴84cの形状により、カッターレバー84は、軸84aを支点に双方向に往復する回転動作を行う。カッターレバー84の往復する回転動作はカッター81に伝達され、カッター81は、受け台82に近づく方向と離れる方向に往復するスライド動作を行う。
【0079】
ハーフカット機構8は、受け台82の上部にストローク調整レバー86を備える。ストローク調整レバー86は、受け台82の上部に回転自在に取り付けられ、回転動作により変位するカム面を備える。カッター81は、上端側がストローク調整レバー86のカム面に当接し、下端側が受け台82に当接する。これにより、ストローク調整レバー86の回転動作でカムを変位させることで、カッター81の刃部と受け台82の隙間が調整される。
【0080】
フルカット機構9は、プラテンローラ6と、ハーフカット機構8を構成するカッター81及び受け台82との間に、刃部を有したカッター90を備える、また、フルカット機構9は、カッター90を作動させるレバー91と、レバー91の動作をカッター90に伝達する図示しない伝達機構を備える。レバー91は、図3に示す操作レバー10dで操作される。
【0081】
<本実施の形態のテープ/チューブプリンタの動作例>
次に、本実施の形態のテープ/チューブプリンタ1Aの動作について説明する。まず、テープ/チューブプリンタ1Aにチューブ51をセットする動作について説明する。チューブ51をテープ/チューブプリンタ1Aにセットするには、カセットホルダ部2に図示しないテープカセットを装着していない状態で、チューブガイド機構21の退避レバー21aを操作して、ガイドローラ22およびチューブガイド23を退避させる。
【0082】
ガイドローラ22を退避させると、ガイドローラ22とプラテンローラ6との間に空間が形成される。また、チューブガイド23を退避させると、ガイド部24のガイド板と底面との間に空間が形成される。
【0083】
また、ヘッド移動レバー14を操作して、サーマルヘッド7をプラテンローラ6から退避させる。チューブ51等に対する押圧力を強くする設定では、図4(a)及び図5に示すように、ヘッド移動カム13は、第1のカム面13cが第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aに対向する位置にセットされる。
【0084】
第1のカム面13cが第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aに対向する位置にセットされたヘッド移動カム13で押圧位置に移動しているサーマルヘッド7を退避させるには、図4(a)及び図5に示す状態から、ヘッド移動レバー14を矢印c2方向に回転させる。
【0085】
ヘッド移動レバー14を矢印c2方向に回転させると、ギア部14aとヘッド移動カム13のギア部13bの噛み合いで、ヘッド移動カム13が矢印d2方向に回転する。第1のカム面13cで第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aを押圧しているヘッド移動カム13が矢印d2方向に回転すると、圧縮されているバネ17Aが弾性変形で復元する力で、第2のスライダ16が矢印b2方向に移動する。
【0086】
第2のスライダ16が矢印b2方向に移動すると、図4(b)及び図6に示すように、第2のスライダ16の突き当て突部16bが、第1のスライダ15の突き当て部15cに当接する。
【0087】
ヘッド移動レバー14には、サーマルヘッド7を押圧位置に移動させた第2のスライダ16の突き当て突部16bが、第1のスライダ15の突き当て部15cに当接するまで、圧縮されていたバネ17Aのバネ力による力が掛かる。
【0088】
第2のスライダ16の突き当て突部16bが、第1のスライダ15の突き当て部15cに当接した状態から、更にヘッド移動レバー14を矢印c2方向に回転させると、ヘッド移動カム13の第1のカム面13cが、第1のスライダ15の第1のカム押圧部15bを押圧する。
【0089】
第1のスライダ15の第1のカム押圧部15bがヘッド移動カム13に押圧されると、第1のスライダ15が矢印b2方向に移動することにより第1のカム押圧部15bでバネ17Aが押圧され、バネ17Aが第2のスライダ16の突き当て突部16bを押圧する。
【0090】
バネ17Aは、第2のスライダ16に摩擦力等以外の負荷が掛からない状態では、ヘッド移動カム13の動作で第1のスライダ15の第1のカム押圧部15bが押圧される力で圧縮しない程度のバネ力を有している。
【0091】
これにより、第1のスライダ15の第1のカム押圧部15bがヘッド移動カム13に押圧されると、第2のスライダ16の突き当て突部16bが、バネ17Aの力で第1のスライダ15の突き当て部15cに押圧された状態が保持され、サーマルヘッド7がプラテンローラ6から離れる矢印b2方向に、第1のスライダ15と第2のスライダ16が連動して一体的にスライド移動する。
【0092】
第1のスライダ15と第2のスライダ16が矢印b2方向に移動すると、バネ12aを介して第1のスライダ15のヘッド押圧部15aでサーマルヘッド7がプラテンローラ6から離れる方向に引かれ、サーマルヘッド7が軸7bを支点とした矢印a2に示す回転動作で、図4(c)及び図7に示すようにプラテンローラ6から退避する。
【0093】
チューブ51等に対する押圧力を弱くする設定では、図8(a)及び図9に示すように、ヘッド移動カム13は、第2のカム面13dが第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aに対向する位置にセットされる。
【0094】
第2のカム面13dが第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aに対向する位置にセットされたヘッド移動カム13で押圧位置に移動しているサーマルヘッド7を退避させるには、図8(a)及び図9に示す状態から、ヘッド移動レバー14を矢印c2方向に回転させる。
【0095】
ヘッド移動レバー14を矢印c2方向に回転させると、第2のカム面13dで第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aを押圧しているヘッド移動カム13が矢印d2方向に回転する。ヘッド移動カム13が第2のカム面13dで第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aを押圧している状態では、図8(b)及び図10に示すように、第2のスライダ16の突き当て突部16bが、バネ17Aの力で第1のスライダ15の突き当て部15cに当接しており、ヘッド移動レバー14にバネ17Aの力が掛からない。
【0096】
更にヘッド移動レバー14を矢印c2方向に回転させると、ヘッド移動カム13の第2のカム面13dが、第1のスライダ15の第1のカム押圧部15bを押圧する。
【0097】
第1のスライダ15の第1のカム押圧部15bがヘッド移動カム13に押圧されると、上述したように、第2のスライダ16の突き当て突部16bが、バネ17Aの力で第1のスライダ15の突き当て部15cに押圧された状態が保持され、サーマルヘッド7がプラテンローラ6から離れる矢印b2方向に、第1のスライダ15と第2のスライダ16が連動して一体的にスライド移動する。
【0098】
第1のスライダ15と第2のスライダ16が矢印b2方向に移動すると、バネ12aを介して第1のスライダ15のヘッド押圧部15aでサーマルヘッド7がプラテンローラ6から離れる方向に引かれ、サーマルヘッド7が軸7bを支点とした矢印a2に示す回転動作で、図8(c)及び図11に示すようにプラテンローラ6から退避する。
【0099】
サーマルヘッド7を押圧位置から退避位置まで移動させる動作では、サーマルヘッド7を押圧位置に移動させた第2のスライダ16の突き当て突部16bが、第1のスライダ15の突き当て部15cに当接するまで、圧縮されていたバネ17Aにより、ヘッド移動レバー14を矢印c2方向に回転させる力が掛かる。
【0100】
一方、第2のスライダ16の突き当て突部16bが、バネ17Aの力で第1のスライダ15の突き当て部15cに当接した状態では、第1のスライダ15と第2のスライダ16が連動して一体的にスライド移動し、ヘッド移動レバー14にバネ17Aの力が掛からない。
【0101】
これにより、サーマルヘッド7を押圧位置から退避位置まで移動させる動作では、第2のスライダ16の突き当て突部16bが第1のスライダ15の突き当て部15cに当接し、サーマルヘッド7のプラテンローラ6に対する押圧が解除された後は、ヘッド移動レバー14にバネ17Aの力が掛からず、バネ17Aの力に抗するような強い力を要することなく、軽い力でヘッド移動レバー14を操作できる。
【0102】
さて、サーマルヘッド7を退避位置に移動させる動作で、ヘッドスライダ12と連動してプラテンガイド18が矢印b2方向に移動する。これにより、サーマルヘッド7を退避位置に移動させると、図4(c)、図7、図8(c)及び図11に示すように、プラテンガイド18がプラテンローラ6の下部においてプラテンローラ6の周面より突出する。
【0103】
以上の動作で、チューブ51の走行経路となるチューブガイド23とガイド部24との間、ガイドローラ22とプラテンローラ6との間、及びサーマルヘッド7とプラテンローラ6との間が開放され、チューブ51のセットが可能な状態となる。
【0104】
チューブ51は図2に示す経路でセットされる。チューブ51のセット時には、上述したように、プラテンローラ6の下部においてプラテンローラ6の周面よりプラテンガイド18が突出しているので、チューブ51がプラテンローラ6の下側に入り込むことが防止される。また、プラテンガイド18の動作は、ヘッド移動レバー14が操作されることによるサーマルヘッド7の退避動作と連動しているので、プラテンガイド18を移動させるための別の操作が不要で、操作が容易である。
【0105】
次に、退避レバー21aを操作して、ガイドローラ22およびチューブガイド23を図2に示すセット位置に移動させる。ガイドローラ22をセット位置に移動させると、チューブ51はガイドローラ22とプラテンローラ6との間に挟み込まれる。また、チューブガイド23をセット位置に移動させると、チューブ51はチューブガイド23とガイド部24との間に挟み込まれ、径方向の位置が規制される。
【0106】
次に、サーマルヘッド7とプラテンローラ6との間にチューブ51とインクリボンを挟み込むため、ヘッド移動レバー14を矢印c1方向に回転させる。チューブ51等に対する押圧力を強くする設定では、上述したように、ヘッド移動カム13は、第1のカム面13cが第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aに対向する位置にセットされる。
【0107】
第1のカム面13cが第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aに対向する位置にセットされたヘッド移動カム13で退避位置に移動しているサーマルヘッド7を押圧位置に移動させるには、図4(c)及び図7に示す状態から、ヘッド移動レバー14を矢印c1方向に回転させる。
【0108】
ヘッド移動レバー14を矢印c1方向に回転させると、ギア部14aとヘッド移動カム13のギア部13bの噛み合いで、ヘッド移動カム13が矢印d1方向に回転する。サーマルヘッド7が退避位置に移動している状態では、第2のスライダ16の突き当て突部16bが、バネ17Aの力で第1のスライダ15の突き当て部15cに当接しており、ヘッド移動レバー14にバネ17Aの力が掛からない。
【0109】
更にヘッド移動レバー14を矢印c1方向に回転させると、ヘッド移動カム13の第1のカム面13cが第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aを押圧する。第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aがヘッド移動カム13の第1のカム面13cに押圧されると、第2のスライダ16が矢印b1方向に移動することにより突き当て突部16bでバネ17Aが押圧され、バネ17Aが第1のスライダ15の第1のカム押圧部15bを押圧する。
【0110】
バネ17Aは、第1のスライダ15に摩擦力等以外の負荷が掛からない状態でも、ヘッド移動カム13の動作で第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aが押圧される力で圧縮しない程度のバネ力を有している。
【0111】
これにより、第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aがヘッド移動カム13の第1のカム面13cに押圧されると、第2のスライダ16の突き当て突部16bが、バネ17Aの力で第1のスライダ15の突き当て部15cに押圧された状態が保持され、サーマルヘッド7がプラテンローラ6に近づく矢印b1方向に、第1のスライダ15と第2のスライダ16が連動して一体的にスライド移動する。
【0112】
第1のスライダ15と第2のスライダ16が矢印b1方向に移動すると、第1のスライダ15のヘッド押圧部15aでサーマルヘッド7がプラテンローラ6方向に押され、サーマルヘッド7が軸7bを支点とした矢印a1に示す回転動作でプラテンローラ6に押圧され、図4(b)及び図6に示すように、サーマルヘッド7とプラテンローラ6との間にチューブ51等が挟持される。
【0113】
図4(b)及び図6に示すように、サーマルヘッド7とプラテンローラ6との間にチューブ51等が挟持された状態から、更にヘッド移動レバー14を矢印c1方向に回転させると、矢印d1方向に回転するヘッド移動カム13の第1のカム面13cの変位により、第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aが矢印b1方向に押圧される。これに対し、サーマルヘッド7がプラテンローラ6に押圧されているので、第1のスライダ15は、矢印b1方向に移動しない。
【0114】
これにより、サーマルヘッド7を押圧位置に移動させると、図4(a)及び図5に示すように、第1のスライダ15に対して第2のスライダ16が矢印b1方向に移動してバネ17Aが圧縮され、プラテンローラ6との間にチューブ51等を挟持したサーマルヘッド7が、バネ17Aの力でプラテンローラ6に押圧される。
【0115】
そして、ヘッド移動カム13の第1のカム面13cは、矢印d1方向に回転する動作における変位量が大きいので、第1のスライダ15に対して第2のスライダ16が移動することにより圧縮されるバネ17Aの変形量が大きくなり、チューブ51等の印字媒体に対する押圧力が強くなる。
【0116】
チューブ51等に対する押圧力を弱くする設定では、上述したように、ヘッド移動カム13は、第2のカム面13dが第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aに対向する位置にセットされる。
【0117】
第2のカム面13dが第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aに対向する位置にセットされたヘッド移動カム13で退避位置に移動しているサーマルヘッド7を押圧位置に移動させるには、図8(c)及び図11に示す状態から、ヘッド移動レバー14を矢印c1方向に回転させる。
【0118】
ヘッド移動レバー14を矢印c1方向に回転させると、ヘッド移動カム13が矢印d1方向に回転する。サーマルヘッド7が退避位置に移動している状態では、第2のスライダ16の突き当て突部16bが、バネ17Aの力で第1のスライダ15の突き当て部15cに当接しており、ヘッド移動レバー14にバネ17Aの力が掛からない。
【0119】
更にヘッド移動レバー14を矢印c1方向に回転させると、ヘッド移動カム13の第2のカム面13dが第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aを押圧する。第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aがヘッド移動カム13の第2のカム面13dに押圧されると、上述したように、第2のスライダ16の突き当て突部16bが、バネ17Aの力で第1のスライダ15の突き当て部15cに押圧された状態が保持され、サーマルヘッド7がプラテンローラ6に近づく矢印b1方向に、第1のスライダ15と第2のスライダ16が連動して一体的にスライド移動する。
【0120】
第1のスライダ15と第2のスライダ16が矢印b1方向に移動すると、第1のスライダ15のヘッド押圧部15aでサーマルヘッド7がプラテンローラ6方向に押され、サーマルヘッド7が軸7bを支点とした矢印a1に示す回転動作でプラテンローラ6に押圧され、図8(b)及び図10に示すように、サーマルヘッド7とプラテンローラ6との間にチューブ51等が挟持される。
【0121】
図8(b)及び図10に示すように、サーマルヘッド7とプラテンローラ6との間にチューブ51等が挟持された状態から、更にヘッド移動レバー14を矢印c1方向に回転させると、サーマルヘッド7が押圧位置に移動し、図8(a)及び図9に示すように、プラテンローラ6との間にチューブ51等を挟持したサーマルヘッド7がプラテンローラ6に押圧される。
【0122】
そして、ヘッド移動カム13の第2のカム面13dは、矢印d1方向に回転する動作における変位量が小さいので、チューブ51等の印字媒体に対する押圧力が弱くなる。
【0123】
サーマルヘッド7を退避位置から押圧位置まで移動させる動作では、第2のスライダ16の突き当て突部16bが、バネ17Aの力で第1のスライダ15の突き当て部15cに当接した状態では、第1のスライダ15と第2のスライダ16が連動して一体的にスライド移動し、ヘッド移動レバー14にバネ17Aの力が掛からない。
【0124】
一方、サーマルヘッド7とプラテンローラ6との間にチューブ51等が挟持された状態から、ヘッド移動レバー14を更に矢印c1方向に回転させると、ヘッド移動カム13の変位で圧縮されるバネ17Aが復元しようとする力で、ヘッド移動レバー14を矢印c2方向に戻そうとする力が掛かる。
【0125】
これにより、サーマルヘッド7を退避位置から押圧位置まで移動させる動作では、サーマルヘッド7とプラテンローラ6との間にチューブ51等が挟持されるまでは、ヘッド移動レバー14にバネ17Aの力が掛からず、バネ17Aの力に抗するような強い力を要することなく、軽い力でヘッド移動レバー14を操作できる。
【0126】
また、変位量の異なる第1のカム面13cと第2のカム面13dを有したヘッド移動カム13を備え、ヘッドスライダ12の第2のカム押圧部16aを押圧するカム面を切り替える押圧力の調整機構を構成することで、チューブ51の材質や直径等に応じて適切な押圧力が得られる。
【0127】
これにより、プラテンローラ6で搬送されるチューブ51のすべり等による搬送不良の発生、及び、サーマルヘッド7で印字される文字や数字等の情報のかすれ等による印字不良の発生を防止できる。
【0128】
そして、押圧力を調整する機構を備えた構成でも、サーマルヘッド7を退避位置から押圧位置まで移動させる動作では、サーマルヘッド7とプラテンローラ6との間にチューブ51等が挟持されるまでは、ヘッド移動レバー14にバネ17Aの力が掛からず、押圧力を強くする設定でも、ヘッド移動レバー14の操作荷重を軽減できる。
【0129】
さて、サーマルヘッド7でチューブ51等をプラテンローラ6との間に挟み込む動作で、ヘッドスライダ12と連動してプラテンガイド18が矢印b1方向に移動する。これにより、サーマルヘッド7でチューブ51等をプラテンローラ6との間に挟み込むと、図4(a)、図5、図8(a)及び図9に示すように、プラテンガイド18が、プラテンローラ6の周面より退避する。
【0130】
これにより、サーマルヘッド7とプラテンガイド18が当接することはない。また、サーマルヘッド7とプラテンローラ6との間にチューブ51等を挟持するまでの間、サーマルヘッド7の移動時にはプラテンガイド18がプラテンローラ6の下側に突出しているので、サーマルヘッド7でチューブ51等をプラテンローラ6との間に挟み込む動作で、チューブ51等がプラテンローラ6の下側に入り込んで、チューブ詰まり等の印字不可能な状態となることを防ぐ。
【0131】
以上の動作で、チューブ51はチューブガイド機構21においてはチューブガイド23とガイド部24との間に挟み込まれ、走行方向に対して上下左右の双方で位置決めを行った状態で保持される。
【0132】
また、図2に示すように、チューブ51はガイドローラ22とプラテンローラ6との間およびサーマルヘッド7とプラテンローラ6との間に挟み込まされることで、サーマルヘッド7の上流側の走行経路でチューブ51がプラテンローラ6に巻き付けられる。このように、チューブ51のプラテンローラ6に対する巻き付け角度を多くして、チューブ51に十分な搬送力が伝達されるようにすると共に、管状のチューブ51がサーマルヘッド7とプラテンローラ6との間では平面状となるようにしている。
【0133】
次に、印字動作について説明する。なお、サーマルヘッド7とプラテンローラ6による印字動作は周知であるので、詳細な説明は省略するが、図示しないモータでプラテンローラ6を回転駆動することでチューブ51を走行させながら、サーマルヘッド7でチューブ51に印字を行う。
【0134】
上述したように、チューブ51はチューブガイド機構21においてチューブガイド23によって走行方向に対して上下左右の双方で位置決めを行った状態で保持される。
【0135】
これにより、印字のためのチューブ51の走行時に、プラテンローラ6に送り込まれる前のチューブ51の上下方向の移動が抑えられ、印字位置ずれの発生を抑えることができる。
【0136】
印字が行われたチューブ51はサーマルヘッド7とプラテンローラ6との間から排出され、必要に応じてハーフカット機構8でハーフカットされる。ハーフカット機構8では、所定のタイミングでモータ83の回転駆動が開始され、モータ83の駆動力がギア群85を介してギア85aに伝達される。
【0137】
ギア85aが回転すると、ボス85bの軌跡とカッターレバー84の長穴84cの形状により、カッターレバー84は、軸84aを支点に双方向に往復する回転動作を行う。カッターレバー84の往復する回転動作はカッター81に伝達され、カッター81は、受け台82に近づく方向と離れる方向に往復するスライド動作を行う。
【0138】
そして、図示しないセンサ等でカッターレバー84がホームポジションに戻ったことを検出すると、モータ83の駆動を停止する。以上の動作で、チューブ51がハーフカットされる。
【0139】
印字が行われ、必要に応じてハーフカットされたチューブ51は、所定の印字が終了するとサーマルヘッド7の駆動およびプラテンローラ6の回転駆動が停止されて、走行が停止する。そして、フルカット機構9で切断される。
【0140】
フルカット機構9は、図3に示す操作レバー10dが操作されることで、図2等に示すレバー91が作動し、レバー91の動作がカッター90に伝達されて、チューブ51が切断される。
【0141】
<本実施の形態のテープ/チューブプリンタの変形例>
図15は、本実施の形態のテープ/チューブプリンタの変形例を示すヘッド移動機構の側面図である。変形例のテープ/チューブプリンタでは、ヘッド移動機構11Bは、バネ17Bとして引っ張りコイルバネを用いる。バネ17Bは、第1のスライダ15の第1のカム押圧部15bと、第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aの間に取り付けられる。
【0142】
ヘッドスライダ12は、第1のスライダ15の第1のカム押圧部15bと第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aの間隔が近づく方向にバネ17Bにより押圧され、第2のスライダ16の突き当て突部16bが、第1のスライダ15の突き当て部15cに押圧されて、第1のスライダ15と第2のスライダ16の位置が規制される。
【0143】
これにより、変形例のヘッド移動機構11Bでも、サーマルヘッド7を押圧位置から退避位置まで移動させる動作では、第2のスライダ16の突き当て突部16bが第1のスライダ15の突き当て部15cに当接し、サーマルヘッド7のプラテンローラ6に対する押圧が解除された後は、ヘッド移動レバー14にバネ17Bの力が掛からない。また、サーマルヘッド7を退避位置から押圧位置まで移動させる動作では、サーマルヘッド7とプラテンローラ6との間にチューブ51等が挟持されるまでは、ヘッド移動レバー14にバネ17Bの力が掛からない。
【0144】
図16は、本実施の形態のテープ/チューブプリンタの他の変形例を示すヘッド移動機構の側面図である。他の変形例のテープ/チューブプリンタでは、ヘッド移動機構11Cは、第1のカム押圧部16eと第2のカム押圧部16aの両方を、第2のスライダ16に備える。
【0145】
第1のカム押圧部16eと第2のカム押圧部16aの両方を、第2のスライダ16に備えた構成では、サーマルヘッド7が図16(a)に示す押圧位置にある状態から、退避位置へ移動させるためヘッド移動レバー14を矢印c2方向に回転させると、ヘッド移動カム13が矢印d2方向に回転し、圧縮されているバネ17Aが弾性変形で復元する力で、第2のスライダ16が矢印b2方向に移動する。
【0146】
第2のスライダ16が矢印b2方向に移動すると、図16(b)に示すように、第2のスライダ16の突き当て突部16bが、第1のスライダ15の突き当て部15cに当接する。
【0147】
第2のスライダ16の突き当て突部16bが、第1のスライダ15の突き当て部15cに当接した状態から、更にヘッド移動レバー14を矢印c2方向に回転させると、ヘッド移動カム13が、第2のスライダ16の第1のカム押圧部16eを押圧する。
【0148】
第2のスライダ16の第1のカム押圧部16eがヘッド移動カム13に押圧されると、第2のスライダ16が矢印b2方向に移動することにより、突き当て突部16bで第1のスライダ15の突き当て部15cが押圧される。これにより、サーマルヘッド7がプラテンローラ6から離れる矢印b2方向に、第1のスライダ15と第2のスライダ16が連動して一体的にスライド移動する。
【0149】
第1のスライダ15と第2のスライダ16が矢印b2方向に移動すると、第1のスライダ15のヘッド押圧部15aでサーマルヘッド7がプラテンローラ6から離れる方向に引かれ、図16(c)に示すようにプラテンローラ6から退避する。
【0150】
サーマルヘッド7が図16(c)に示す退避位置にある状態から、押圧位置へ移動させるためヘッド移動レバー14を矢印c1方向に回転させると、ヘッド移動カム13が矢印d1方向に回転する。サーマルヘッド7が退避位置に移動している状態では、第2のスライダ16の突き当て突部16bが、バネ17Aの力で第1のスライダ15の突き当て部15cに当接しており、ヘッド移動レバー14にバネ17Aの力が掛からない。
【0151】
更にヘッド移動レバー14を矢印c1方向に回転させると、ヘッド移動カム13が第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aを押圧する。第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aがヘッド移動カム13に押圧されると、第2のスライダ16が矢印b1方向に移動することにより突き当て突部16bでバネ17Aが押圧され、バネ17Aが第1のスライダ15の押圧部15iを押圧する。
【0152】
第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aがヘッド移動カム13に押圧されると、第2のスライダ16の突き当て突部16bが、バネ17Aの力で第1のスライダ15の突き当て部15cに押圧された状態が保持され、サーマルヘッド7がプラテンローラ6に近づく矢印b1方向に、第1のスライダ15と第2のスライダ16が連動して一体的にスライド移動する。
【0153】
第1のスライダ15と第2のスライダ16が矢印b1方向に移動すると、第1のスライダ15のヘッド押圧部15aでサーマルヘッド7がプラテンローラ6方向に押され、図16(b)に示すように、サーマルヘッド7とプラテンローラ6との間にチューブ51等が挟持される。
【0154】
図16(b)に示すように、サーマルヘッド7とプラテンローラ6との間にチューブ51等が挟持された状態から、更にヘッド移動レバー14を矢印c1方向に回転させると、矢印d1方向に回転するヘッド移動カム13の変位により、第2のスライダ16の第2のカム押圧部16aが矢印b1方向に押圧される。これに対し、サーマルヘッド7がプラテンローラ6に押圧されているので、第1のスライダ15は、矢印b1方向に移動しない。
【0155】
これにより、サーマルヘッド7を押圧位置に移動させると、図16(a)に示すように、第1のスライダ15に対して第2のスライダ16が矢印b1方向に移動してバネ17Aが圧縮され、プラテンローラ6との間にチューブ51等を挟持したサーマルヘッド7が、バネ17Aの力でプラテンローラ6に押圧される。
【0156】
このように、第1のカム押圧部16eと第2のカム押圧部16aの両方を、第2のスライダ16に備えた他の変形例のヘッド移動機構11Cでも、サーマルヘッド7を押圧位置から退避位置まで移動させる動作では、第2のスライダ16の突き当て突部16bが第1のスライダ15の突き当て部15cに当接し、サーマルヘッド7のプラテンローラ6に対する押圧が解除された後は、ヘッド移動レバー14にバネ17Aの力が掛からない。また、サーマルヘッド7を退避位置から押圧位置まで移動させる動作では、サーマルヘッド7とプラテンローラ6との間にチューブ51等が挟持されるまでは、ヘッド移動レバー14にバネ17Aの力が掛からない。
【0157】
なお、各実施の形態のヘッド移動機構は、移動部材として、直線動作でスライド移動する第1のスライダ15と第2のスライダ16で構成されるヘッドスライダ12を備える構成としたが、回転動作を行う2つの部材で移動部材を構成しても良い。
【0158】
図17は、本実施の形態のテープ/チューブプリンタの他の変形例を示すヘッド移動機構の側面図である。他の変形例のテープ/チューブプリンタでは、ヘッド移動機構11Dは、サーマルヘッド7をプラテンローラ6に対して近づける方向及び離す方向に移動させる第1の移動部材31と、第1の移動部材31を移動させる第2の移動部材32と、サーマルヘッド7をプラテンローラ6に押圧するバネ33を備える。
【0159】
また、第1の移動部材31及び第2の移動部材32を移動させるヘッド移動カム34と、ヘッド移動カム34を回転させて、第1の移動部材31及び第2の移動部材32を移動させる図示しないヘッド移動レバーを備える。
【0160】
第1の移動部材31と第2の移動部材32は、軸7bを支点とした回転動作で移動するサーマルヘッド7に対し、プラテンローラ6に近づくサーマルヘッド7の動き、及びプラテンローラ6から離れるサーマルヘッド7の動きに沿った軸35を支点とした回転動作で移動可能に構成される。
【0161】
第1の移動部材31は、サーマルヘッド7を押圧するヘッド押圧部31aと、バネ33により押圧される第1の移動部材31と第2の移動部材32の位置を規制する突き当て部31bを備える。
【0162】
第2の移動部材32は、ヘッド移動カム34に押圧される第1のカム押圧部32aと、ヘッド移動カム34に押圧されると共に、バネ33を介して第1の移動部材31を押圧する第2のカム押圧部32bと、バネ33により押圧される第1の移動部材31と第2の移動部材32の位置を規制する突き当て突部32cを備える。
【0163】
ヘッド移動機構11Dでは、サーマルヘッド7が図17(a)に示す押圧位置にある状態から、退避位置へ移動させるため、図示しないヘッド移動レバーが操作され、ヘッド移動カム34が矢印e2方向に回転すると、圧縮されているバネ33が弾性変形で復元する力で、第2の移動部材32が矢印f2方向に回転する。
【0164】
第2の移動部材32が矢印f2方向に回転すると、第2の移動部材32の突き当て突部32cが、第1の移動部材31の突き当て部31bに当接する。
【0165】
第2の移動部材32の突き当て突部32cが、第1の移動部材31の突き当て部31bに当接した状態から、更にヘッド移動カム34が矢印e2方向に回転すると、ヘッド移動カム34が第2の移動部材32の第1のカム押圧部32aを押圧する。
【0166】
第2の移動部材32の第1のカム押圧部32aがヘッド移動カム34に押圧されると、第2の移動部材32が矢印f2方向に回転することにより、突き当て突部32cで第1の移動部材の突き当て部31bが押圧される。これにより、サーマルヘッド7がプラテンローラ6から離れる矢印b2方向に、第1の移動部材31と第2の移動部材32が連動して一体的に回転する。
【0167】
第1の移動部材31と第2の移動部材32が矢印f2方向に回転すると、第1の移動部材31のヘッド押圧部31aでサーマルヘッド7がプラテンローラ6から離れる方向に引かれ、サーマルヘッド7が矢印a2方向に回転して、図17(b)に示すようにプラテンローラ6から退避する。
【0168】
サーマルヘッド7が図17(b)に示す退避位置にある状態から、押圧位置へ移動させるため、図示しないヘッド移動レバーが操作されると、ヘッド移動カム34が矢印e1方向に回転する。サーマルヘッド7が退避位置に移動している状態では、第2の移動部材32の突き当て突部32cが、バネ33の力で第1の移動部材31の突き当て部31bに当接しており、ヘッド移動レバーにバネ33の力が掛からない。
【0169】
更にヘッド移動カム34が矢印e1方向に回転すると、ヘッド移動カム34が第2の移動部材32の第2のカム押圧部32bを押圧する。第2の移動部材32の第2のカム押圧部32bがヘッド移動カム34に押圧されると、第2の移動部材32が矢印f1方向に回転することにより第2のカム押圧部32bでバネ33が押圧され、バネ33が第1の移動部材31を押圧する。
【0170】
第2の移動部材32の第2のカム押圧部32bがヘッド移動カム34に押圧されると、第2の移動部材32の突き当て突部32cが、バネ33の力で第1の移動部材31の突き当て部31bに押圧された状態が保持され、サーマルヘッド7がプラテンローラ6に近づく矢印f1方向に、第1の移動部材31と第2の移動部材32が連動して一体的に回転する。
【0171】
第1の移動部材31と第2の移動部材32が矢印f1方向に回転すると、第1の移動部材31のヘッド押圧部31aでサーマルヘッド7がプラテンローラ6方向に押されて矢印a1方向に回転し、サーマルヘッド7とプラテンローラ6との間に図示しないチューブ等が挟持される。
【0172】
サーマルヘッド7とプラテンローラ6との間にチューブ等が挟持された状態から、更にヘッド移動カム34が矢印e1方向に回転すると、第2の移動部材32の第2のカム押圧部32bが矢印f1方向に押圧される。これに対し、サーマルヘッド7がプラテンローラ6に押圧されているので、第1の移動部材31は、矢印b1方向に回転しない。
【0173】
これにより、サーマルヘッド7を押圧位置に移動させると、図17(a)に示すように、第1の移動部材31に対して第2の移動部材32が矢印f1方向に回転してバネ33が圧縮され、プラテンローラ6との間にチューブ等を挟持したサーマルヘッド7が、バネ33の力でプラテンローラ6に押圧される。
【0174】
このように、移動部材が回転動作を行う他の変形例のヘッド移動機構11Dでも、サーマルヘッド7を押圧位置から退避位置まで移動させる動作では、第2の移動部材32の突き当て突部32cが第1の移動部材31の突き当て部31bに当接し、サーマルヘッド7のプラテンローラ6に対する押圧が解除された後は、ヘッド移動レバーにバネ33の力が掛からない。
【0175】
また、サーマルヘッド7を退避位置から押圧位置まで移動させる動作では、サーマルヘッド7とプラテンローラ6との間にチューブ等が挟持されるまでは、ヘッド移動レバーにバネ33の力が掛からない。ヘッド移動レバーの操作荷重を低減できる。
【0176】
従って、テープ/チューブプリンタの構成に応じて、移動部材が直線動作を行う構成、または、回転動作を行う構成で操作荷重を軽減できるヘッド移動機構を実現できるので、設計の自由度を向上させることができる。
【0177】
なお、各実施の形態のヘッド移動機構は、プラテンローラ6がサーマルヘッド7に対して近づく方向と離れる方向に移動可能な構成を備えても良い。また、印字媒体として、長尺状のテープまたはチューブが選択的にセットされるプリンタについて説明したが、サーマルヘッド等の印字媒体と、プラテンローラ等の搬送手段の間に印字媒体を挟持すると共に、印字手段と搬送手段が離接する方向に移動する構成を備えるものであれば、他のプリンタにも適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0178】
本発明は、印字媒体のセット時に、サーマルヘッド等の印字媒体、またはプラテンローラ等の搬送手段を退避させる構成を備えたプリンタに適用される。
【符号の説明】
【0179】
1A・・・テープ/チューブプリンタ、6・・・プラテンローラ、7・・・サーマルヘッド、11A〜11D・・・ヘッド移動機構、12・・・ヘッドスライダ、13・・・ヘッド移動カム、14・・・ヘッド移動レバー、15・・・第1のスライダ、15a・・・ヘッド押圧部、15b・・・第1のカム押圧部、15c・・・突き当て部、16・・・第2のスライダ、16a・・・第2のカム押圧部、16b・・・突き当て突部、17A・・・バネ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺状の印字媒体を走行させる搬送手段と、
前記搬送手段と対向して配置され、前記搬送手段で搬送される前記印字媒体に印字を行う印字手段と、
前記印字手段または前記搬送手段を離接する方向に移動させ、前記印字手段または前記搬送手段を退避させると共に、前記印字手段と前記搬送手段との間に前記印字媒体を挟持させる移動手段と、
前記印字手段または前記搬送手段を離接する方向に移動させる操作を受ける操作手段と、
前記操作手段の動作を前記移動手段に伝達する伝達手段とを備え、
前記移動手段は、前記印字手段と前記搬送手段が離接する方向に沿って移動し、前記印字手段または前記搬送手段を移動させる第1の移動部材と、
前記第1の移動部材の移動方向に沿って移動する第2の移動部材と、
前記第2の移動部材に対する前記第1の移動部材の変位で弾性変形し、前記印字手段と前記搬送手段を押圧する押圧手段と、
前記押圧手段で押圧される前記第1の移動部材と前記第2の移動部材の変位を規制し、前記第1の移動手段と前記第2の移動手段を連動させて移動させる位置規制部材と
を備えたことを特徴とするプリンタ。
【請求項2】
前記伝達手段は、前記操作手段の動作による回転で変位するカム面を有した移動カムを備え、
前記移動手段は、
前記印字手段または前記搬送手段を退避させる前記操作手段の動作で変位する前記移動カムに押圧され、前記印字手段または前記搬送手段を退避させる方向に前記第1の移動部材と前記第2の移動部材を移動させる力を受ける第1のカム押圧部と、
前記印字手段と前記搬送手段との間に前記印字媒体を挟持させる前記操作手段の動作で変位する前記移動カムに押圧され、前記印字手段と前記搬送手段との間に前記印字媒体を挟持させる方向に前記第1の移動部材と前記第2の部材を移動させる力を受ける第2のカム押圧部と
を備えたことを特徴とする請求項1記載のプリンタ。
【請求項3】
前記第1の移動部材及び前記第2の移動部材は、前記印字手段と前記搬送手段が離接する方向に沿って直線動作でスライド移動可能に支持され、
前記位置規制部材は、前記押圧手段で押圧されて変位する前記第1の移動部材と前記第2の移動部材を当接させる突き当て部を備えた
ことを特徴とする請求項1または2記載のプリンタ。
【請求項4】
前記移動手段は、前記第1の移動部材に前記第1のカム押圧部が形成され、前記第2の移動部材に前記第2のカム押圧部が形成される
ことを特徴とする請求項1、2または3記載のプリンタ。
【請求項5】
前記移動手段は、前記第2の移動部材に前記第1のカム押圧部と前記第2のカム押圧部が形成される
ことを特徴とする請求項1、2または3記載のプリンタ。
【請求項6】
前記伝達手段は、前記操作手段の動作による回転で変位するカム面を有した移動カムを備え、
前記移動カムは、変位量の異なる第1のカム面と第2のカム面が形成され、前記移動手段の移動量を異ならせる押圧力調整手段を備えた
ことを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載のプリンタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2011−230429(P2011−230429A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104517(P2010−104517)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000006301)マックス株式会社 (1,275)
【Fターム(参考)】