説明

プリンテッドエレクトロニクスの非接触試験

基板(3)上にプリントされたエレクトロニックコンポーネントの非接触試験のための装置及び方法が提供される。試験回路(11)は所望のエレクトロニックコンポーネントと同時に基板(3)上にプリントされる。試験回路(11)は全光型であり、試験回路(11)に電気エネルギーを供給するための第1の領域(13)及び検出可能な、エレクトロニックコンポーネントの少なくとも1つの電気特性を示している、光信号を発生するための第2の領域(15)を有する。試験回路はeペーパーのような製品のプリントにおいて、実時間で用いられ、使用できないスクラップの製造を最小限に抑える。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の説明】
【0001】
本出願は2009年5月8日に出願された米国特許出願第12/437779号の恩典を主張する。この特許出願の明細書の内容並びに本明細書に挙げられる、刊行物、特許明細書及び特許出願明細書の開示の全体は本明細書に参照として含まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示は基板、例えば薄いガラス基板上のエレクトロニクスのプリントに関し、特に、そのような基板上のプリンテッドエレクトロニクスの非接触試験に関する。
【背景技術】
【0003】
eペーパーとしても知られる電子ペーパーは、近い将来に広く用いられるようになると期待される、新しいカテゴリーのディスプレイである。このディスプレイは反射モードで動作し、双安定である。すなわち、このディスプレイは2つの安定状態を有する。したがって、このディスプレイの使用電力は少なく、一般に表示を書き換えるためにしか電力を必要とせず、表示の維持にはほとんど電力を必要としない。
【0004】
eペーパーは、最も普通の形態の表示媒体である、通常の印刷紙と競合するから、eペーパーディスプレイは低コストでつくられなければならない。したがって、通常の印刷紙と同様に、eペーパーはプリントプロセスで作成される必要がある。詳しくは、eペーパーディスプレイに用いられるエレクトロニクスを作成するための製造プロセスは、個々のシート上のプリントプロセスであるかまたはウエブ上のプリントプロセス、例えばロール-ロールプロセスである必要がある。プリント速度は、eペーパーディスプレイに用いられるエレクトロニック回路の形成には、通常のインクではなく、エレクトロニックインクが用いられることを除き、新聞及び雑誌の作成に用いられる印刷速度と同様になり得ると考えられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
プリントによって高速でディスプレイを作成する上での主要な要件は、大量のディスプレイが極めて短時間に作成されることである。したがって、ディスプレイが良品であり、プロセスが制御状態にあるか否かを知るための方法が必要になる。プロセスが制御状態になければ、極めて短時間に大量のスクラップが作成されることになろう。したがって、ディスプレイが作成されているプロセスに関してプリンテッドエレクトロニクスの品質を知ることが極めて肝要である。本開示は広範な市場規模でのeペーパーディスプレイの採用の成功のために、この肝要な要件に対処する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様にしたがえば、基板3上のエレクトロニックコンポーネントのプリント品質を試験するための非接触方法において、
(A)基板上に、(i)エレクトロニニックコンポーネント、及び(ii)試験回路11をプリントするステップであって、この試験回路11は、
(a)試験回路11に電気エネルギーを供給するための第1の領域13、
(b)検出可能な、エレクトロニックコンポーネントの少なくとも1つの電気特性を示している、光信号を発生するための第2の領域15、及び
(c)第1の領域13と第2の領域を接続する回路、
を備えるものであるステップ、
(B)第1の領域13に電気エネルギーを供給するステップ,
(C)第2の領域15の検出可能な光信号を検出するステップ、
を含む非接触方法が開示される。
【0007】
第2の態様にしたがえば、エレクトロニックコンポーネントをプリントするための装置において、
(a)基板3上に、(i)エレクトロニックコンポーネント、及び(ii)試験回路11をプリントするためのデバイス、及び
(b)基板3の領域15からの、エレクトロニックコンポーネントの少なくとも1つの電気特性を示している、光を検出するための光検出器25、
を備える装置が開示される。
【0008】
第3の態様にしたがえば、(i)プリンテッドエレクトロニックコンポーネント、及び
(ii)試験回路11を有する基板3において、試験回路11が、
(a)試験回路11に電気エネルギーを供給するための第1の領域13、
(b)エレクトロニックコンポーネントの少なくとも1つの電気特性を示している、検出可能な光信号を発生するための第2の領域15、及び
(c)第1の領域13と第2の領域15を接続している回路、
を有する基板3が開示される。
【0009】
本開示の様々な態様の上記要約に用いられる参照数字は、読者の便宜のために過ぎず、本発明の範囲を限定する目的はなく、またそのように解されるべきではない。さらに敷衍して、上記の全般的説明及び以降の詳細な説明はいずれも本発明の例示に過ぎず、本発明の本質及び特質を理解するための概要または枠組みの提供が目的とされていることは当然である。
【0010】
本発明のさらなる特徴及び利点は以下の詳細な説明に述べられ、ある程度は、当業者にはその説明から明らかであろうし、本明細書に説明されるように本発明を実施することによって認められるであろう。添付図面は本発明のさらに深い理解を提供するために含められ、本明細書に組み入れられて、本明細書の一部をなす。本明細書及び図面に開示される本発明の様々な特徴がいずれかのまたは全ての組合せで用いられ得ることは当然である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は輸送ロール上を搬送されているプリンテッドフレキシブルウエブを示す略図である。ウエブは、プリントされた位置合せマーク、プリントされた位置合せグリッド線及びプリントされた試験回路を有し、システムは、位置合せセンサ、試験回路エネルギー源及びウエブ上にプリントされた制御/試験コンポーネントと相互作用するための試験回路センサを備える。
【図2】図2は、本明細書に開示される試験方法及び装置を用いることができる、マルチステーションプリントプロセスの略図である。
【図3】図3はCCDカメラによるウエブのスキャンを示す略図である。
【図4】図4は接触センサによるウエブのスキャンを示す略図である。
【図5】図5は接触センサを用いるセンサシステムを示す簡略なブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上述したように、本開示はプリンテッドエレクトロニックコンポーネントを試験するための非接触方法及び装置を提供する。本方法及び装置は、単一のコンポーネント、複数のコンポーネント及び/または回路全体を試験するために用いることができる。コンポーネントは、導体のように簡単であり得るし、あるいは、例えば動作しているデバイス全体のように、複雑になり得る。
【0013】
説明を容易にするため、以下の議論及び特許請求の範囲は「エレクトロニックコンポーネント」の試験に関し、「エレクトロニックコンポーネント」は、本明細書に開示される試験装置及び方法のいずれか特定の用途においておこり得る状況にしたがって、単一のエレクトロニックコンポーネント、複数のコンポーネント、またはコンポーネントからなる1つないしさらに多くの回路の試験に関して総称的に用いられる。また、以下の議論の内のいくらかはプリンテッドディスプレイデバイス、例えばeペーパーの試験に関するが、本方法及び装置が他の用途のために設計されたプリンテッドエレクトロニックコンポーネントを試験するためにも用いられ得ることは当然である。
【0014】
以下で詳細に説明されるように、一般的に言って、所望のエレクトロニックコンポーネントと同じ基板上にプリントされ、実際上、エレクトロニックコンポーネントの全てまたは一部を含むことができる、試験回路にプローブをあてて測定するための全光型システムが提供される。光パワーまたは現場の電池が試験回路に電力を供給するために用いられ、プリントプロセスが適切に稼働しているか否かを判定するために試験回路からの発光及び/または光特性の変化が用いられる。
【0015】
試験回路はエレクトロニックコンポーネントと同時にプリントされ、したがって同じプリント条件にかけられる。複数の試験回路が通常用いられ、エレクトロニック製品、例えばeペーパーが適切にプリントされたことを信頼を与えるサンプリングレートが得られる密度で、戦略的に配置される。試験回路は、エレクトロニックコンポーネントの動作及び製品の総機能を妨害しないであろう、基板の都合の良い区画に配置される。
【0016】
本発明の方法及び装置はディスプレイとの物理的接触を含まず、エレクトロニックコンポーネントに機械的な損傷を生じさせる可能性が全く無いという重要な利点を有する。無線周波数(RF)試験法の使用と比較して、光試験法は試験領域の面積がかなり小さくなり得るという利点を有する。無線波に基づく試験回路には、長波長の無線波エネルギーに応答するための比較的大きなアンテナ構造が必要であり、この結果の大きな試験領域面積が最終製品として用いるための残余面積を縮小させる。接触法と比較して、本明細書に開示される非接触試験法では、液滴によっておこり得るような、汚染及び、機械的プローブによっておこり得るような、プリンテッドエレクトロニクス製品の表面の摩耗による問題が回避される。
【0017】
ディスプレイがその上にプリントされる基板は、連続ウエブまたは個別シートの形態とすることができる。組成に関して、基板は、ガラス、プラスチック、積層ガラス−プラスチックまたはエレクトロニックコンポーネントを支持するに適するその他の材料からなることができる。基板は通常の印刷物と同等の柔軟性/可撓性を有することが好ましい。ウエブの場合、プリント工程は、高速グラビア印刷、フレキソ印刷、回転スクリーン印刷、おなはオフセット印刷のプロセスで新聞または雑誌を印刷するために用いられるような、ロール-ロールプリントプロセスを用いることができる。同様に、個別シートの基板の場合、印刷業界において従来用いられているタイプの大量印刷法を用いてシートにプリントすることができる。いずれの場合も、付加価値のついたスクラップの製造を回避または低減するためには実時間高速試験が肝要である。ウエブまたはシートのいずれの商業規模のプリントも、最小の労力により低コストで大量の製品をつくることができる。しかし、そのようなプロセスには常に、製品がつくられている間に試験が実時間で行われなければ、大量のスクラップが瞬時につくられてしまう危険がともなう。
【0018】
図1はウエブベースシステムにおいてエレクトロニックプリントを試験するための代表的なコンポーネントセットを示す。シートベース実施形態では、連続ウエブ上ではなく、個別にプリントされたシート上のエレクトニックコンポーネントを試験するために配置された同様のコンポーネントが用いられるであろう。図1に示されるように、プリントされたウエブ3は(搬送ローラーとしても知られる)輸送ロール5上を運ばれる。矢印17で示されるように、ロール5は、したがってウエブ3も、本図では反時計回りに回転する。
【0019】
ウエブ3上には、明解さのために図1には示されていない、ユーザに表示を提供するために用いられるであろう回路に加えて、様々な試験/制御コンポーネントがプリントされる。試験/制御コンポーネントの中に、位置合せマーク7,位置合せグリッド線9、並びに試験回路に電気エネルギーを供給する第1の領域13及び試験回路の、したがって試験回路の近傍でウエブ上にプリントされた電気回路の、少なくとも1つの電気的特性を示す検出可能な光信号を発生する第2の領域15を有する、試験回路11がある。第1の領域13は、例えばフォトダイオードのようなプリント光センサとすることができ、第2の領域15は、例えばLEDのような、プリントエネルギー放射体とすることができる。
【0020】
ウエブ3上にプリントされた試験/制御コンポーネントと相互作用するために用いられる様々なコンポーネントが、ロール5のまわりに配置される。すなわち、位置合せセンサ19が位置合せマーク7と位置合せされ、位置合せセンサ21が位置合せグリッド線9と位置合せされる。試験回路11に電力を供給するために、外部エネルギー源23(例えばLED)が第1の領域13に合わせられ、試験回路によって生成される試験情報を読み出すために、外部センサ25(例えばフォトダイオード)が第2の領域に合わせられる。以下で論じられるように、いくつかの実施形態において、試験回路は自身のための電力を内部で発生し、よって外部エネルギー源は用いられない。また、第2の領域15において光エネルギーを放射するのではなく、試験回路はその領域の光特性(例えば色)の変化を生じることもできる。そのような場合、第2の領域15は通常、光エネルギーを発生せず、したがって、外部センサに加えて、例えば外部センサ25によって検出される反射光を生じさせるため、光特性の検出を容易にするために光源を第2の領域15に合わせることが望ましいであろう。
【0021】
上記のコンポーネントに加えて、図1は、位置合せセンサ19,外部エネルギー源23,外部センサ25及び位置合わせセンサ21とそれぞれリード29〜35によって接続された、コンピュータ/信号プロセッサ27の使用も示す。コンピュータ/信号プロセッサはこれらのコンポーネントの動作を制御し、エレクトロニックプリントプロセスの状態を示すデータを受け取って解析する。
【0022】
一般的に言って、図1に示されるように、試験回路は外部光源からの光を用いて試験回路を動作させるための電力を発生する第1の領域(例えば光発電セグメント)及び検出器によって読み出される検出可能な光信号を試験回路が発生する第2の領域(読出セグメント)を有する。プリントできる様々な有機光発電システムが実証されており、本開示に関係して用いられ得るが、いくつかの実施形態においては、光発電電力源及び放射光信号のいずれも生成するために一般の材料セットを用いることが望ましいであろう。
【0023】
例えば、m-MTDATA及びTBADNのような複合電荷輸送/発光層を有するデバイスは、有機発光ダイオード(OLED)としてバイアス電圧の下で発光することが示されているが、有機光発電体(OPV)としてUV光に対する光発電応答も示す。ハンジー・ウエイ(Hanzhi Wei),ウエンリヤン・リー(Wenlian Li),ミンタオ・リー(Mingtao Li),ウエンミング・スー(Wenming Su),キ・ジン(Qi Xin),ジングア・ニウ(Zinghua Niu),ジキアン・ザン(Zhiqiang Zhang),ジジ・フー(Zhizhi Hu),「光発電性能を有する白色有機電界発光素子(White organic electroluminescent device with photovoltaic performance)」,Applied Surface Science,2006年1月15日,第252巻,第6号,p.2204〜2208を見よ。文献には同様の特性を示す他の系が説明されている。これらのタイプの系を用いれば、エレクトロニックコンポーネント、例えばeペーパーディスプレイ、及びそのコンポーネントのための1つないしさらに多くの試験回路を、費用のかかるプロセス工程を追加せずに、または材料層を追加せずに、構成することができる。
【0024】
上述したように、発光読取を用いるのではなく、いくつかの実施形態においては、試験回路の領域の特性の変化を読み取ることができる。例えば、読取はエレクトロクロミックディスプレイの色に基づくことができる。発光読取と同様に、試験回路の光特性の変化に基づく読取のためにプロセス工程を追加するかまたは材料層を追加する必要を最小限に抑えることが可能である。例えば、共通のデバイス構造が染料増感太陽電池デバイス及びエレクトロクロミックディスプレイデバイスに用いられており、デバイス間の原理的な違いは光発電吸収挙動またはエレクトロクロミック挙動のための染料の選択である。この共通構造を単プリント工程の追加、すなわち光発電用染料のためのプリント工程の追加とともに用いれば、製造診断及び最終デバイスへの電力供給のいずれのためにも用いることができる光発電セルを有するプリント基板の形成が可能になる。
【0025】
図1の回路を動作させるため、ウエブに沿う一地点において回路にエネルギーが注入され、この入力エネルギーへの回路の応答がウエブ上の第2の地点において検出される。試験回路の構造に依存して、
(1)試験回路が作動していることを保証するための較正試験、
(2)電極が開回路になっていないかまたは短絡していないことを保証するための導通試験、
(3)電極の実効導電能力を測定するための配線抵抗試験、及び/または
(4)回路内の誘電体の有効性を測定するための静電容量試験、
を含むが、これらには限定されない、様々な試験を実施することができる。
【0026】
特に、較正試験は検査回路への電力供給及び検査回路に対する測定値の読取りが十分であって、試験されるべきエレクトニックコンポーネントとは独立であることを保証するために実施することができる。基板上面の小部分しか試験回路が占めないことが通常は望ましいから、送受機能は一般に、相互間に最小の実用的間隔をおいて、隣接することが必要である。
【0027】
したがって、外部光源及び発光読取を用いる実施形態において、読取領域(第2の領域)が近接してプリントされている、基板上のプリントされた受光領域(第1の領域)に光が送られるであろう。賦活されると、受光領域は読取領域の動作に必要な電力を発生するであろう。読取領域がOLEDデバイスであれば、試験は通常、極めて迅速に完了し得る。読取領域がエレクトロクロミックであれば、出力は完全には発現しないかもしれないが、検出できる色の変化の開始があるであろう。
【0028】
電力供給ヘッド及び読取ヘッドの位置及び大きさは、一般に、用いられる読取システムのタイプに依存して、様々であろう。OLEDシステムに対しては、読取及び電力供給を同時に行うことができる。エレクトロクロミックシステムに対しては、基板上の光検出器区画をある長さの時間にわたって照射し、次いでエレクトロクロミック材料が色を変えるための時間をとるためにウエブをさらに下った読取領域においてデータをポーリングする必要があるから、入力パワー印加時間をさらに長くすることが必要になり得る。いずれの場合にも、OLEDデバイスが発光するかあるいはエレクトロルミネッセンスデバイスが着色すれば、較正は成功している。
【0029】
導通試験は、代表的なプリント配線に関して開回路がないことを保証するために用いられる。この試験に対し、光検出器電力供給区画及びOLED読取またはエレクトロクロミック読取は、この場合はそれぞれがある長さの導体で隔てられることを除いて、較正に関して上述した態様と同じとすることができる。応答が較正中に生じた応答と同じかまたは基本的に同じであれば、導体の導通は許容できる。導通を試験するための試験回路は様々な向きで配置することができ、様々な配線を試験することができる。試験される配線はエレクトロニックコンポーネントの一部とすることができるが、通常は、実際のエレクトロニックコンポーネントの一部ではなく、エレクトロニックコンポーネントのサンプルとなる試験用配線であろう。
【0030】
配線抵抗試験は、透明導体の抵抗が高すぎないことを保証するために行われることが最も多い。この場合、試験回路は導通配線に直列にプリントされたキャパシタを有する。回路は光検出器区画によって電力を供給され、配線の抵抗の大きさの測定値を与えるまでOLEDデバイスまたはエレクトロクロミックデバイスに電力を供給するには時間がかかる。この試験は、システムの起動及び停止を可能にするOLEDの高速応答のため、キャパシタと直列の抵抗の推定値として用いられるOLED読取に最も有効である。
【0031】
静電容量試験は基板上のプリントキャパシタの充電及び/または放電にかかる時間を決定することによって実施することができる。この試験は、プリントキャパシタが追加されていることを除いて、上述した導通試験と同様に実施することができる。静電容量を決定するため、長さが異なる2本の導電体をキャパシタに接続することができる。OLEDの点滅(充電及び放電)の周波数(さらに正確には点滅周波数+1)が、試験回路の抵抗と静電容量の積の推定値を与える。相異なる2つの線長に対して点滅周波数を決定することで、静電容量に対する値を得ることが可能になる。2つの線長は、例えば、一方は一方の線に電力を供給するため、他方は他方の線に電力を供給するための、2つの光検出器を基板上にプリントすることによって、別々にはたらかせることができる。
【0032】
静電容量が知られると、式K=Cd/Aを用いて、キャパシタの誘電材料の誘電率Kに対する値を決定することが可能である。ここで、Cは静電容量、dは誘電体の厚さ、Aはキャパシタのプレートの一方の面積である。誘電体の厚さは、例えば蛍光X線センサを用いて、あるいは材料の屈折率が分かっているとして光学厚さ測定により、決定することができる。いずれの厚さ測定も、市販装置を用いて基板に接触せずに実施することができる。静電容量の測定は誘電体の完全性に関する情報も提供することができる。すなわち、誘電体に短絡またはその他の損失源のような欠陥があれば、この測定で明らかにすることができる。
【0033】
図1においては、プリント回路に作動エネルギーを供給するために外部LEDが用いられ、発光してコンピュータ27に接続された外部フォトダイオードにエネルギーを戻すために内部プリントLED、例えばOLEDが用いられる。外部エネルギー源は、LEDの代わりに、半導体レーザとすることができる。しかし、LEDは一般に半導体レーザより頑丈で安価であるから、LEDがより適していることが多いであろう。さらに別形として、外部エネルギー源を低エネルギー光源で置き換えることができ、化学エネルギーを電気エネルギーに変換するオンボード電池を基板上にプリントして、低エネルギー源からの光によって作動されると試験回路に電力を供給するために用いることができる。あるいは、基板上にプリントされた直後に、または遅延後に、自動スタートするように、電池を構成することができる。外部検知デバイスに関し、システムのこのコンポーネントは、図1に示されるようなフォトダイオード、ラインスキャンCCD(以下を見よ)または、光エネルギーを検出することができる、その他のエレクトロニックコンポーネントとすることができる。
【0034】
非接触試験はプリント速度で実施される必要があるため及び、一般に、それぞれの測定に対してかなりのデータが必要であるため、システムの検出器領域にはかなり高速の応答時間が必要である。また、費用も常に問題であり、したがって、いくつかの実施形態において、検出器及び信号プロセッサには、特注ではなく、市販の装置が用いられる。
【0035】
試験回路からの光応答を読み取るために用いることができる検出器(センサ)のタイプは回路のRC特性に依存する。試験回路に入力されるエネルギーは様々な時間的波形を有することができ、それらの例には、インパルス関数、時間的にオン/オフされる一連のパルス(パルストレイン)及び正弦波がある。さらに別形として、プリント回路の自由共振周波数にあるパルストレインを入力し、共振出力の振幅を検出することによって、回路の品質を決定することができる。この場合、外部センサ及び付帯回路は単に、小振幅応答に対して0を、また許容できる応答に対して1を、出力することができよう。
【0036】
外部検知回路は上述したタイプの入力に対する回路の応答を測定する。特に、プリント回路の能力の有効な尺度を与えるため、外部センサは試験回路の出力エミッタのAC成分に応答しなければならない。kHz帯の自由共振を有するプリント回路もあれば、MHz帯の自由共振を有するプリント回路もある。A/Dコンバータを用いてそのような応答周波数の特徴を有効に表すためには、信号周波数の2倍以上のレートで信号をサンプリングするべきである。
【0037】
例えば、回路の自由共振周波数が1kHzであれば、回路の能力を正確に表すためには4kHz程度のサンプリングレートが適しているであろう。A/Dコンバータに取り付けられた光センサは安価のエレクトロニクスを用いてこのレートで容易にデータを提供できる。1000素子のラインスキャンCCDまたは接触型センサのようなスキャンセンサが用いられれば、デバイスは1秒間に4000回スキャンされる必要があり、総サンプリングレートは4MHzになるであろう。これは入手可能な装置で容易に達成できるが、一層費用がかかるであろう。しかし、そのようなラインスキャン方式は、試験回路密度が高い場合に有利であり得る。
【0038】
試験回路の周波数応答が、1kHzの代わりに、1MHz程度であり、A/Dコンバータに接続された信号センサが用いられれば、データはやはり市販装置で処理することができる。しかし、1000素子のCCDまたは接触型センサに対しては、サンプリングレートは4GHzに上がり、これを処理することはできるが、高価な装置が必要であろう。そのような費用を避けるため、10〜50素子のセンサを用いてデータレートを10〜50MHzに下げることができるであろう。そのようなデータレートは現在利用できる撮像システムを用いて容易に扱われる。
【0039】
試験回路のエネルギーエミッタは移動しているウエブ上にあるから、エミッタが外部センサと通信することができる時間ウインドウは狭く、このウインドウの幅は移動しているウエブの速度に反比例する。この時間的通信ウインドウは回路のRC時定数測定に関する別の限界を規定する。
【0040】
エミッタが1mmの距離に対して外部センサと通信し、ウエブが75mm/秒(3インチ/秒)で移動している場合を考える。この条件の下で通信ウインドウは13ミリ秒である。試験下の回路が、1ミリ秒がオンで1ミリ秒がオフの、入力パルストレインで励起され、これがたまたま回路測定に最適な周波数にあったとすれば、この時間的測定ウインドウでは約6パルスへの応答の測定しか可能にならない。しかし、試験下の回路が0.5MHzのレートのパルストレインで励起され、これが、やはり、たまたまその回路試験に最適な周波数であったとすれば、この通信ウインドウで6000パルスからの応答の測定が可能になるであろう。したがって、なされ得る測定には低周波数限界があると結論することができる。
【0041】
このことは、この試験回路のRC時間定数は比較的小さく、自由共振周波数はkHzレートより十分高いから、低速移動ウエブに対しては問題にならない。しかし、ウエブ速度が高くなるにつれて、時間的通信ウインドウは狭くなり、したがって試験回路はこの限界を念頭において設計されなければならない。
【0042】
図2は、本明細書に開示される試験方法及び装置を用いることができる、代表的なマルチステーションプリントプロセスを示す。本図において、矢印201はプリントされているウエブ203の搬送方向を示し、参照数字205,207及び209はそれぞれ第1,第2及び第3のプリントステーションを指し、それぞれのプリントステーションは、エレクトロニックインク槽211、プリントシリンダ213,ドクターブレード215,圧胴217及び乾燥器219を備える。
【0043】
図2の装置は、例えば以下のような態様を含む、様々な態様で稼働させることができる。第1の(主)プリントステーションにおいて、プリントシリンダ213の一回転毎に、離散位置合せマーク(例えば図1の参照数字7)がウエブの縁端にプリントされる。このマークはウエブ上の第1のプリントパターンを精確に検出するために用いられ得るスケールとしてはたらく。以降のプリントステーションにおいて位置合せセンサ(図示せず)がこのマークを検出することができ、第1のプリントパターンの位置に関する情報をプロセス制御システムに提供する。プロセス制御システムは、第1の(主)プリントシリンダに対して以降のプリントシリンダの回転位相角を調節するためにこの情報を用いることができる。このようにすれば、以降のプリント層のそれぞれを第1の(主)プリント層に精確に位置合せすることができる。位置合せマークは以降の層のそれぞれに対してもプリントすることができる(同じく、例えば、図1の参照数字7を見よ)。これらの追加のマークは、例えば層毎の位置合せが第1の(主)層に対する位置合せよりクリティカルである場合に、以降のプリント層を相互に調節するために用いることができる。
【0044】
離散位置合せマークに加えて連続位置合せグリッドパターン(例えば図1の参照数字9)も第1の(主)プリントステーションにおいてウエブ上にプリントすることができる。このグリッドパターンは、例えばプリントされたそれぞれの試験回路の始点を検出するために利用することができる。位置合せセンサ(例えば図1の参照数字21)は、プリントセンサ(例えば図1の参照数字13)が位置合せセンサの下を通るときにコンピュータ/信号プロセッサ(例えば図1の参照数字27)に信号を与えて、外部エネルギー源(例えば図1の参照数字23)にエネルギーを与え、よって試験回路(例えば図1の参照数字11)に電力を供給させることができる。連続位置合せグリッドは、外部センサ(例えば図1の参照数字25)を用いてプリントエネルギーエミッタ(例えば図1の参照数字15)からの出力信号をいつ待ち受けるべきかをコンピュータ/信号プロセッサに知らせるために、コンピュータ/信号プロセッサに第2の信号を与えることもできる。さらに、このグリッドパターンは、コンピュータによって集められ、解析されるデータをウエブに沿う試験回路の位置と関係付けることができるように、それぞれの試験パターンの位置にタグをつけるために用いることができる。すなわち、「良」及び「不良」の仕分け結果のマップを生成することができ、「不良」の結果に仕分けられたプリンテッドエレクトロニクスを以降で廃棄することが可能になる。
【0045】
図1に示されるエレクトロニック試験に加えて、プリンテッドエレクトロニック回路は形状寸法上のプリントきずについても試験することができる。例えば、エレクトロニックコンポーネントは適切な解像度で光学的にスキャンし、一連の画像解析ルールが、コンポーネントの標識構造形状が指定された許容範囲内でプリンタされているか否かを、また開回路も短絡もないことを、確認するためにスキャン画像に適用される。図3は、ウエブ305が輸送ロール307を通過している間に、照明源301及びウエブの一領域上に焦点が合わされた1台ないしさらに多くのカメラ303(例えば1台ないしさらに多くのCCDカメラ)を用いてそのような検査を実施するためのシステムを示す。カメラは、6インチ(15cm)〜12インチ(30cm)の視野からデータを集めるために作動距離が一般に6インチから2ないし3フィート(60ないし90cm)の範囲になるであろうレンズによってウエブの表面に焦点が合わされなければならない。いくつかの用途に対し、そのような作動距離は輸送(またはプリント)ロールの近くで許容されることが困難になり得るであろう。
【0046】
図4は、輸送(またはプリント)ロール周囲の利用できる空間が狭いという問題に対処するシステムを示す。このシステムは、図示されるように、ウエブ405に隣接して輸送ロール403上に配置される、接触型光センサ401を用いる(市販品であるからこのセンサは「接触型」センサと称されるが、本明細書で用いられるように、このセンサは実際には輸送(またはプリント)ロールと接触しない)。接触型センサは卓上スキャナ及びFAX機に広く用いられ、したがって容易に低コストで入手できる。また、接触型センサは取付面積が小さく、大きな空間を要さずにロール上に直接配置することが可能になる。
【0047】
接触型センサ401は、
(i)一列のセンサ、及び
(ii)ウエブの表面の像をセンサ列上に結ぶ一列の小さな分布屈折率レンズ(GIL)、
からなることができる。接触型センサはウエブの表面を照らすための光源、例えばLED列を収めることもできる。寸法に関し、接触型センサは1インチ×1インチ(25mm×25mm)より小さい断面を有することができ、ウエブの表面からほぼ0.05インチ(1.25mm)に配置することができる。市販のデバイスは4インチ〜10インチ(10cm〜25cm)のスキャン幅を有し、特注デバイスは20インチ(50cm)までをカバーできる。市販接触型センサは200ピクセル/インチ〜2400ピクセル/インチ(8ピクセル/mm〜96ピクセル/mm)の間の解像度を有する。
【0048】
図5は、
(i)形状寸法上のプリントきずを検出するための画像解析、及び
(ii)電気的欠陥を検出するための試験回路解析、
を実施するための統合システムのブロック図を示す。エンコーダ501,エンコーダインターフェース502及びコンピュータ503を用いて、システムは初めにウエブ速度及びプリント回路位置を決定する。この情報と、センサコントローラ505及び照明コントローラ506を用いて、輸送ロール509上のウエブ508の定常照射を維持するように接触型センサによって照明が与えられるように、接触型センサのスキャン速度が制御される。このようにしてつくられるウエブの像はコンピュータ503によって処理され、解釈されて、結果が格納媒体504に格納される。
【0049】
電気的試験を実施するため、ウエブ508上のプリントセンサが照明器の下を通ると、コンピュータが接触型センサの照明器を点灯させる。次いでウエブからの発光出力が接触型センサのフォトダイオードで読み取られ、得られたデータが解析のためにコンピュータ503に送られる。本実施形態及びその他の実施形態において、外部励起源、例えば接触型センサのLEDとプリントされた試験回路のエネルギー放射に対して異なる波長を用いることにより、大きな信号対雑音比を達成することができる。特に、このS/N比の増大は、試験回路のエネルギーエミッタによって発生される波長を有する光を透過させ、外部励起源によって発生される光を遮断する、フィルタを外部センサの前面に配置することにより達成することができる。
【0050】
物理的完全性の観点及び電気的な観点の両者からプリント回路を試験するために用いることができる様々な検出手法を表1に要約してある。表はeペーパーディスプレイの試験に関しているが、本明細書に説明される試験が他の目的のために用いられるウエブ及びシート上にプリントされた電気回路に実施できることは当然である。同様に、表1に挙げられているセンサ、エネルギー源及びエミッタは、例示的な、非限定的実施形態を表す。
【0051】
さらに敷衍すれば、当業者には本発明の範囲及び精神を逸脱しない様々な改変が上記開示から明白であろう。添付される特許請求の範囲は、本明細書に開示される特定の実施形態を、またこれらの実施形態の改変、変形及び等価物も、包含するとされる。
【表1】

【符号の説明】
【0052】
3 ウエブ
5 輸送ロール
7 位置合せマーク
9 位置合せグリッド線
11 試験回路
13 (試験回路の)第1の領域
15 (試験回路の)第2の領域
19,21 位置合せセンサ
23 外部エネルギー源
25 外部センサ
27 コンピュータ/信号プロセッサ
29,31,33,35 リード

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上のエレクトロニックコンポーネントのプリントを試験するための非接触方法において、
(A)基板上に(i)エレクトロニックコンポーネント、及び(ii)試験回路をプリントする工程であって、前記試験回路は、
(a)前記試験回路に電気エネルギーを供給するための第1の領域、
(b)検出可能な、前記エレクトロニックコンポーネントの少なくとも1つの電気特性を示している、光信号を発生するための第2の領域、及び
(c)前記第1の領域と前記第2の領域を接続する回路、
を有するものである工程、
(B)前記第1の領域において電気エネルギーを供給する工程、及び
(C)前記第2の領域の検出可能な光信号を検出する工程、
を含むことを特徴とする非接触方法。
【請求項2】
前記工程(B)が前記第1の領域において電気エネルギーに変換される光エネルギーで前記第1の領域を照射する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の非接触方法。
【請求項3】
前記工程(B)が前記第1の領域に貯蔵された化学エネルギーを電気エネルギーに変換する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の非接触方法。
【請求項4】
前記工程(C)が前記第2の領域において光エネルギーを放射する工程を含むことを特徴とする請求項1に記載の非接触方法。
【請求項5】
前記工程(C)が前記第2の領域における光吸収特性の変化を含むことを特徴とする請求項1に記載の非接触方法。
【請求項6】
エレクトニックコンポーネントをプリントするための装置において、
(a)基板上に、(i)エレクトロニックコンポーネント、及び(ii)試験回路をプリントするための装置、及び
(b)前記基板の一領域からの、前記エレクトロニックコンポーネントの少なくとも1つの電気特性を示している、光を検出するための光検出器、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項7】
前記光検出器が、前記試験回路の一部であるエネルギー源から前記試験回路によって発生される、前記領域からの光を検出することを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項8】
(a)前記装置が前記基板の前記領域を照射する光源をさらに備える、及び
(b)前記光検出器が、前記領域から反射されたか、または前記領域を透過した、前記光源からの光を検出する、
ことを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記装置が前記試験回路に電力を供給する光で前記基板の一部を照射する光源をさらに備えることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項10】
(i)プリントされたエレクトロニックコンポーネント及び(ii)プリントされた試験回路を有する基板において、前記試験回路が、
(a)前記試験回路に電気エネルギーを供給するための第1の領域、
(b)検出可能な、前記エレクトロニックコンポーネントの少なくとも1つの電気特性を示している、光信号を発生するための第2の領域、及び
(c)前記第1の領域と前記第2の領域を接続する回路、
を有することを特徴とする基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−526284(P2012−526284A)
【公表日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−509934(P2012−509934)
【出願日】平成22年5月5日(2010.5.5)
【国際出願番号】PCT/US2010/033650
【国際公開番号】WO2010/129627
【国際公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】