説明

プリント基板の半田検査方法およびその装置

【課題】 従来の半田付け状態を検査するためにサブトラクション処理を行うと、吸収係数の差の情報が画像化されるために、信号成分が小さくなり相対的にノイズが大きくなる。そこで、このノイズを軽減するためには、長時間撮影による積算が有効であるが、検査時間が長くなるといった問題があった。
【解決手段】 撮影条件を変えて同一部分におけるプリント基板上の実装部品の第1、第2のX線画像からエネルギーサブトラクション処理によって第3の画像を得、前記第1または第2の画像から第3の画像を差し引いて回路パターンのみの第4の画像を得、該第4の画像を平滑化フィルタ処理を行ってノイズを除去して第5の画像を得、前記第1または第2の画像から第5の画像を差し引いて半田のみの第6の画像を得、この第6の画像から半田の良否を判定するようにしたプリント基板の半田検査方法である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はX線をプリント基板に照射して得られた画像から半田付け状態を検査する、特に、撮影画像に含まれるノイズを除去して高画質の画像から半田付け状態を検査するようにしたプリント基板の半田検査方法およびその装置に関する。
【0002】近年、基板の高密度化に伴い、プリント基板の面積を有効に利用するために、ICのリードに代えて本体の裏面にボール端子を備えたボールグリッドアレイ型やリードを本体の内方に折曲したJリード型のICが開発され、このICをプリント基板に半田付け実装したものが開発されている。
【0003】このようなICは外部からはボール端子やリードが見えないため、被検査対象をテレビカメラで撮影したり、被検査対象にレーザ光を照射する従来の方法では検査ができない。このような実装部品の半田付け状態を検査する方法としては、X線をプリント基板に照射して透過画像を得、この透過画像から半田付けの良否を判断する方法がある。
【0004】
【従来の技術】その一例として、本出願人会社が出願した特開平10−253550号公報に開示した方法がある。これはX線の照射条件を変えて2枚の画像を得、その後に、該2枚の画像をエネルギーサブトラクション処理によってプリント基板の半田付け部分のみを抽出し、この画像から半田付け状態の検査を行うものである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、前記したエネルギーサブトラクション処理を行うと、吸収係数の差の情報が画像化されるために、通常のX線画像に比べ信号成分が小さくなり相対的にノイズが大きくなる。そこで、このノイズを軽減するためには、長時間撮影による積算が有効であるが、検査時間が長くなるといった問題がある。
【0006】本発明は前記した問題点を解決せんとするもので、その目的とするところは、短時間の処理によってノイズを除去して高画質な画像を得、これにより半田付け検査を迅速、かつ、精度よく行えるプリント基板の半田検査方法およびその装置を提供せんとするにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明のプリント基板の半田検査方法は前記した目的を達成せんとするもので、その手段は、撮影条件を変えて同一部分におけるプリント基板上の実装部品の第1、第2のX線画像からエネルギーサブトラクション処理によって第3の画像を得、前記第1または第2の画像から第3の画像を差し引いて回路パターンのみの第4の画像を得、該第4の画像を平滑化フィルタ処理を行ってノイズを除去して第5の画像を得、前記第1または第2の画像から第5の画像を差し引いて半田のみの第6の画像を得、この第6の画像から半田の良否を判定するようにしたことを特徴とする。
【0008】また、前記回路パターンのノイズを除去するための平滑化フィルタ処理は、エッジの部分を除いて行い回路パターンのエッジ成分を残すように処理することが望ましい。
【0009】さらに、本発明のプリント基板の半田検査装置は、撮影条件を変えて同一部分におけるプリント基板上の実装部品の第1、第2のX線画像を記憶する画像メモリと、該画像メモリに記憶された前記第1、第2の画像からエネルギーサブトラクション処理を行って半田部分のみの第3の画像を得るエネルギーサブトラクション処理手段と、前記第1または第2の画像から前記第3の画像を差し引いて回路パターンのみの第4の画像を得る画像差分処理手段と、前記第4の画像に含まれているノイズを回路パターンにおけるエッジの成分を保ちながら除去する平滑化フィルタ処理手段と、前記第1または第2の画像から前記ノイズが除去された回路パターンの画像を差し引く差分処理手段とを具備したものである。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明に係るプリント基板の半田検査方法を図面と共に説明する。図1は本発明の装置を示すブロック図にして、1はX線発生器、2はX線透過画像読取装置、3はA/D変換器、4は前記X線発生器1からのX線量を変えて撮影した前記X線透過画像読取装置2よりの2枚の画像を記憶する画像メモリ、5は前記2枚の画像のエネルギーサブトラクション処理を行うエネルギーサブトラクション処理手段、6はエネルギーサブトラクション処理によって得られた画像と前記2枚の画像の何れかとの差分を行う画像差分処理手段、7はCPU、8は差分処理によって得られた画像中のノイズを除去するための平滑化フィルタ処理手段、9はフィルタ処理によってノイズが除去された回路パターンの画像を前記画像メモリに記憶されている2枚の何れかの画像から差し引く差分処理手段、10は該差分処理手段9によって得られた画像から半田付け状態の良否を判定する良否判定手段である。
【0011】なお、図1において11はプリント基板、12は該プリント基板11に半田付けして実装されたボールグリッド型のICである。
【0012】以下、前記した構成に基づく動作を図2のフローチャートと共に説明する。先ず、プリント基板11にIC12を実装した状態において、X線発生器1からX線を照射してX線透過画像を読取装置2において撮影する。この撮影された第1の画像(図3のa)はA/D変換器3を介して画像メモリ4に記憶される(ステップS1)。
【0013】次いで、X線発生器1の管電圧を変えるなどして照射条件を変えて前記撮影した部分にX線を照射して前記したと同様に画像メモリ4に第2の画像(図3のb)として記憶する(ステップS2)。
【0014】そして、前記第1および第2の画像とをエネルギーサブトラクション処理を行って第3の画像(図3のc)を得る(ステップS3)。次いで、エネルギーサブトラクション処理によって得られた第3の画像を、前記第1または第2の画像から差し引くことによって第4の画像(図3のd)、すなわち、半田部分以外の成分像(具体的にはプリント基板における回路パターン)を得る(ステップS4)。この時、第3の画像のゲインを調整して回路パターンのみの画像が得られるようにする。
【0015】ところで、前記エネルギーサブトラクション処理によって得られた画像は吸収係数の差の情報が画像化されているため、信号成分が小さくなり相対的にノイズが大きくなって、図3のcのようにノイズが乗っている。そこで、ステップS4の処理を行った図3のdに示す回路パターンの画像にもノイズが含まれている。
【0016】そこで、本発明にあっては、以下に述べる平滑化フィルタ処理(ステップS5)を行って、回路パターンに含まれているノイズを除去した第5の画像(図3のe)を得、その後に第2の画像(図3のaまたはb)から第5の画像を差し引くことによって(ステップS6)、ノイズが除去された半田部分のみの第6の画像(図3のf)が得られ、従って、この第6の画像から半田付け状態の判定(従来公知の手段によって)が行えるものである(ステップS7)。
【0017】以下、平滑化フィルタ処理について説明する。先ず、閾値を決定する。この閾値は図4に示す0層と1層の濃度値の差より低めの値としておくが、経験則から一般的にはノイズの標準偏差の2倍程度とする。この実施の形態では閾値を「5」とする。
【0018】図5(a)は図4におけるaの部分の濃度値を示し、除去したい画素(中心画素)の濃度値が「14」であり、その回りの濃度値が「14〜16」であるとすると、中心画素「14」から回りの濃度値を差し引いた値が「1〜2」の間であるので、前記した閾値「5」より小さいので平坦化する。
【0019】図5(b)は図4におけるbの部分の濃度値を示し、中心画素の濃度値「14」に対して左側の濃度値は「14〜15」であり、また、右側の濃度値が「2〜4」、すなわち、回路パターンのエッジ部分であるので、中心画素14に対して差し引いた値が閾値5より大きいため平坦化しない。
【0020】以下、同様にして回路パターンを横断する方向の全画素に対して処理を行うことにより、エッジが明確な回路パターンの第5の画像(図3e)が得られる。すなわち、ノイズを含まない回路パターンの画像が得られるので、前記第1あるいは第2の画像から第5の画像を差し引くことにより、図3のfに示すノイズを含まない半田部分のみの第6の画像が得られる。この時、第5の画像のゲインを調整して半田部分のみの画像が得られるようにする。
【0021】前記した平滑化フィルタ処理において、回路パターンのエッジ成分を保存するように処理したのは、ノイズ除去時にエッジ成分までもが平滑化されると、第1の画像または第2の画像から第5の画像を差し引くときに、第5の画像に写っている配線パターンのエッジのみが欠落した状態となり、本来現れてはならない配線のエッジ成分が画像に出現し、半田部分のみを正確に検査できないためである。
【0022】
【発明の効果】本発明は前記したように、撮影条件を変えて得た同一部分の2つの画像をエネルギーサブトラクション処理によって半田部分の画像を得、その後に前記2つの画像の何れかと前記半田部分のみの画像との差し引きを行って得た回路パターンのみの画像を平滑化フィルタ処理によってノイズを除去し、該ノイズが除去された画像と前記2つのうちの何れかの画像との差し引きを行ってノイズを含まない半田部分のみの画像を得るようにしたので、短時間の処理によってノイズを除去して高画質な画像を得、これにより半田付け検査を迅速に行える。
【0023】また、前記平滑化フィルタ処理を回路パターンのエッジを保存しながらノイズを除去することにより、雑音除去の際に重要な信号成分の欠落を抑え半田成分の画像が正確に得られるため、半田検査を精度よく行えるという効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のプリント基板の半田検査装置を示すブロック図である。
【図2】同上の動作を示すフローチャートである。
【図3】同上のフローチャートに基づいて処理を行っている画像の説明図である。
【図4】平滑化フィルタ処理を説明するための回路パターン部分を示す図である。
【図5】平滑化フィルタ処理の説明のための説明図である。
【符号の説明】
1 X線発生器
2 X線透過画像読取装置
3 A/D変換器
4 画像メモリ
5 エネルギーサブトラクション処理手段
6 画像差分処理手段
7 CPU
8 平滑化フィルタ処理手段
9 差分処理手段
10 良否判定手段
11 プリント基板
12 IC

【特許請求の範囲】
【請求項1】 撮影条件を変えて同一部分におけるプリント基板上の実装部品の第1、第2のX線画像からエネルギーサブトラクション処理によって第3の画像を得、前記第1または第2の画像から第3の画像を差し引いて回路パターンのみの第4の画像を得、該第4の画像を平滑化フィルタ処理を行ってノイズを除去して第5の画像を得、前記第1または第2の画像から第5の画像を差し引いて半田のみの第6の画像を得、この第6の画像から半田の良否を判定するようにしたことを特徴とするプリント基板の半田検査方法。
【請求項2】 前記回路パターンのノイズを除去するための平滑化フィルタ処理は、エッジの部分を除いて行い回路パターンのエッジ成分を残すようにしたことを特徴とする請求項1記載のプリント基板の半田検査方法。
【請求項3】 撮影条件を変えて同一部分におけるプリント基板上の実装部品の第1、第2のX線画像を記憶する画像メモリと、該画像メモリに記憶された前記第1、第2の画像からエネルギーサブトラクション処理を行って半田部分のみの第3の画像を得るエネルギーサブトラクション処理手段と、前記第1または第2の画像から前記第3の画像を差し引いて回路パターンのみの第4の画像を得る画像差分処理手段と、前記第4の画像に含まれているノイズを回路パターンにおけるエッジ成分を保ちながら除去する平滑化フィルタ処理手段と、前記第1または第2の画像から前記ノイズが除去された回路パターンの画像を差し引く差分処理手段と、を具備したことを特徴とするプリント基板の半田検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2001−82946(P2001−82946A)
【公開日】平成13年3月30日(2001.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−259970
【出願日】平成11年9月14日(1999.9.14)
【出願人】(000243881)名古屋電機工業株式会社 (107)
【Fターム(参考)】