説明

プリント基板及び基板検証方法

【課題】基板の厚さ方向の誤差を簡易に検証することができるプリント基板及び基板検証方法を提供する。
【解決手段】プリント基板は、電源層1に挟まれた2層の信号線層4,5を持つ多層のプリント基板であって、2対のパターン導体10a,10b,11a,11bを信号線層4,5にわたって対角に配置する。対角に配置された1対のパターン導体に差動電圧を与え、他の1対のパターン導体に現れる差動電圧を測定することで、基板の厚さ方向の誤差の有無を判別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、複数の信号層からなるプリント基板及び基板検証方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高周波信号の伝送線路においてインピーダンスをコントロールすることにより、回路上にて最大のエネルギーで信号伝搬を行うことができる。インピーダンスは多くのパラメーター(伝送線路の幅と厚さ、基材の誘電率と厚さ等)から成り立つことから、通常、インピーダンスのテストは、プリント基板と同時に同じパネル上に製造されるテストクーポンで行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−152499号公報
【特許文献2】特開2001−15925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、従来のテストクーポンでは良品・不良品の識別はできても、その原因が基板材料の基材そのものによるものか、積層またはパターン形成(エッチング)の失敗によるものか区別できなかった。
【0005】
本実施形態の目的は、基板の厚さ方向の誤差を簡易に検証することができるプリント基板及び基板検証方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本実施形態の第1の態様は、電源層に挟まれた2層の信号線層を持つ多層のプリント基板であって、2対のパターン導体を前記2層にわたって対角に配置するプリント基板を提供する。
【0007】
また、本実施形態の第2の態様は、前記第1の態様に係るプリント基板の基板検証方法であって、対角に配置された1対のパターン導体に差動電圧を与え、他の一対のパターン導体に現れる差動電圧を測定することで、基板の厚さ方向の誤差の有無を判別する基板検証方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態に係るプリント基板の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら本実施形態に係るプリント基板及び基板検証方法を説明する。
【0010】
図1に本実施形態に係るプリント基板の断面図を示す。
【0011】
一般に多層基板は、銅箔(電源層)1を両面に貼りつけたコア材2でPP(プリプレグ)材3を挟み圧力をかけ接着して製造する。パターン導体10a,10b,11a,11bは、接着前にエッチングされ必要な部分のみをコア材2の上に残しPP材3と接着される。
【0012】
図1において、面4及び5は、コア材2とPP材3との接合面である。コア材2の厚みは製造前後で変わらないが、PP材3は接着及び上層境4または下層境5の面にて銅箔がPP材3にめり込むにより実質的な厚みが変化する。
【0013】
ここで、2対の差動パターンを層違いに配置する。パターン導体10aとパターン導体10bが1対目、パターン導体11aとパターン導体11bが2対目である。パターン導体10aとパターン導体11bを上層境4に配置し、パターン導体10bとパターン導体11aを下層境5に配置する。
【0014】
パターン導体の大きさは、配置するパターン導体のペア10a,10bのインピ−ダンスを決定することにより決定する。一方、配置する位置は、パターン導体11bからみて、パターン導体10aと10bの電気的なカップリング量が等しくなる位置に配置する。同様に、パターン導体11aからみて、パターン導体10aと10bの電気的なカップリング量が等しくなる位置に配置する。すなわち、上層のコア材2と下層のコア材2が同じものであれば、その位置関係は対称になる。
【0015】
また、これにより、パターン導体のペア11a,11bのインピ−ダンスが決定する。必要であれば、それぞれのペアのインピーダンスを調整することで、パターン導体10aとパターン導体10bの距離がほぼ同じになる最適な位置関係になるように調整をすることができる。位置はPP材3の厚みと差動パターンのインピーダンスに依存する。
【0016】
次に、このように構成されたプリント基板の動作について説明する。
[1:基板が良品の場合]
パターン導体のペア10a,10bは、差動動作であるので、仮に差動として観察される電圧をVa、パターン導体10aに現れる電圧をVM10a、パターン導体10bに現れる電圧をVM10bとすると、
Va=VM10a−VM10b …(式1−1)
となる。
【0017】
ただし、パターン導体10aにはパターン導体11aと11bの双方からの電気的カップリングが存在するので、パターン導体11aからのカップリング電圧をVC11a、パターン導体11bからのカップリング電圧をVC11bとし、本来パターン導体10aに印加された差動電圧をV10aとすると、
VM10a=V10a+VC11a+VC11b …(式1−2)
となる。
【0018】
同様に、パターン導体11bからのカップリング電圧を考えると、
VM10b=V10b+VC11a+VC11b …(式1−3)
となる。
【0019】
その結果、(式1−1)の差動電圧Vaは、(式1−2)と(式1−3)から、以下のように表すことができる。
Va=(V10a+VC11a+VC11b)−(V10b+VC11a+VC11b)
=V10a−V10b+(VC11a+VC11b)−(VC11a+VC11b)
=V10a−V10b …(式1−4)
この結果、カップリングの影響は排除され、Vaは他方の差動ペアの影響を受けなくなる。そのためV10aとV10bが0の場合、他方のペアにどのような電圧を印加してもVaは0のままである。以上が良品の場合である。
【0020】
[2:基板が不良品の場合]
PP材3の厚さが何かの理由により想定した厚さと異なっていた場合、すなわち、パターン導体10aとパターン導体11aとの距離が変化している場合を考える。なお、パターン導体10aとパターン導体10bとの距離は変わらない。
【0021】
この場合に、カップリング変化により変動する電圧をα、βとすると、
VM10a=V10a+(VC11a+α)+VC11b …(式2−1)
となる。
【0022】
同様に、
VM10b=V10b+VC11a+(VC11b+β) …(式2−2)
となる。
【0023】
したがって、(式1−1)の差動電圧Vaは、(式2−1)と(式2−2)から、以下のように表すことができる。
Va=(V10a+VC11a+α+VC11b)−(V10b+VC11a+VC11b+β)
=V10a−V10b+α−β …(式2−3)
この結果、V10aとV10bが0の場合でも、Vaには、PP材3の厚さが規定の値より変化することにより(α−β)の電圧が現れることになる。
【0024】
なお、パターン導体のペア11a、11bに差動電圧を与えた場合、β=−αであるから2αの電圧が現れ、同相電圧を与えた場合、β=αであるから、電圧は現れない。つまり、パターン導体11a,11bのペアに差動電圧を与え、パターン導体10a,10bに現れる差動電圧を測定することによって、PP材3の厚さが規定の値であるか否かを容易に判別することができる。
【0025】
また、パターン導体10aは、パターン導体11aと11bとのカップリング量が同じになるように配置してあるので、(式1−2)においてVC11aとVC11bは等しいので良品である。VC11aは厚みに影響され、VC11bはパターン形成による影響を受ける。つまり、VC11aとVC11bを測定することにより、不良の原因が厚さであるかパターン形成によるものであるかを判別することができる。
【0026】
パターン導体11aに電圧を与え、パターン導体11bに電圧を与えない場合のVM10a(VC11a)が厚みのカップリング量を表し、パターン導体11bに電圧を与えパターン導体11aに電圧を与えない場合のVM11a(VC11b)パターン形成のカップリング量を表す。
【0027】
したがって、上記の不良品の例では、VC11aが異常値であれば厚みの不良、VC11bが正常値であればパターン形成は正常となる。これにより厚みの不良か、パターン形成の不良かを識別することができる。
【0028】
以上述べたように、本実施形態に係るプリント基板では、2対の差動線を対角上に配置し、相互干渉を平衡させる構造にする。このように構成することで、基材自体の影響を排除し差動パターンの厚みまたは距離の誤差による干渉を計測することにより基板の厚さ方向の誤差を簡易に検証することが可能となる。
【0029】
なお、いくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0030】
1…銅箔(電源層)、2…コア材、3…プリプレグ材、4…接合面(上層境)、5…接合面(下層境)、10a,10b,11a,11b…パターン導体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源層に挟まれた2層の信号線層を持つ多層のプリント基板であって、2対のパターン導体を前記2層にわたって対角に配置することを特徴とするプリント基板。
【請求項2】
請求項1記載のプリント基板の基板検証方法であって、対角に配置された1対のパターン導体に差動電圧を与え、他の一対のパターン導体に現れる差動電圧を測定することで、基板の厚さ方向の誤差の有無を判別することを特徴とする基板検証方法。

【図1】
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