説明

プリント基板用コンテナ

【課題】 保持される部品が突出したプリント基板を安定して保持することができ、かつより軽量化されたプリント基板用コンテナを提供する。
【解決手段】 プリント基板への部品搭載をするため、及び/又は部品が搭載されたプリント基板をその工程内で搬送・保管に使用されるコンテナであって、底面溝付部材と直角に配置された斜面部に帯状の溝付部材を底面溝付部材の稜線と平行に可動配置したことを特徴とする。
前記可動配置が、曲がった線材と線材の輪との絡脱によって着脱がなされる面ファスナーであることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板へ部品を搭載する、工程内での搬送・保管に使用されるプリント基板用コンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
工程内での搬送・保管に一時的に使用されるプリント基板用ラックには、当初は、図3に示すように、平板11にプリント基板を狭持保持する溝12を設けたものがあったが、これは1端での支持であるために、プリント基板が傾くことがあり、さらに、プリント基板が湾曲するという問題があった。
【0003】
この問題を解決した形状として図4に示すようなプリント基板を保持する溝12を有する溝付立面部13と溝付底面部14が、直角に配置され、溝付底面部14が水平状態とされたものも知られていた(特許文献1参照)が、側面の押さえ板が無いことから、プリント基板が溝12からはずれた場合、ラックから落ちてしまうという問題があり、また、手搬送する場合の手を掛ける部分は底部とならざるを得ないので、搬送時にはプリント基板の脱落が起こるという不安もあった。
【0004】
一方、これらの欠点をなくした、側面の押さえ板15を取り付けた図5に示すラックは、溝12からプリント基板が外れてもラックから落下することもなく、また、側面の押さえ板15に手掛け用把手16が付けられ得るので搬送時も安定した状態を保つことができる(特許文献2参照)。
しかし、最近のプリント基板の高密度部品実装では、部品あるいはコネクターがプリント基板から厚み方向にはみ出すような場合が多くなっている。従来のプリント基板ラックでは一般に溝間隔が狭いので、プリント基板を溝に保持できず、収納できないという問題があった。
また最近のプリント基板では、外部との接続等を行うためにプリント基板の長手方向あるいは幅方向の端部、若しくは長手方向あるいは幅方向端部を越えて部品が実装されていることがあり、溝の山部分と部品が干渉し収納出来ないという問題が有った。
【0005】
さらに、基本的に溝付底面部14が水平状態とされたものでは、プリント基板の角への軽微な接触・干渉によってプリント基板がラックから脱落する事象も起こり易かったことから、底板を、水平面から外側上りに傾斜させて、プリント基板の落下を防ぐものも知られている(特許文献3、特許文献4、特許文献5参照)。なお、特許文献5では、プリント基板全体を箱に収納する様になっている。
また、このラックは手運搬を前提としていることから軽量化も求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公平4−38555号公報
【特許文献2】実開昭63−149591号公報
【特許文献3】実開昭61−188979号公報
【特許文献4】実公平4−40303号公報
【特許文献5】実用新案登録第3106484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、これらの欠点を改良するものであって、保持される部品が端部まであるいは突出して実装されたプリント基板を安定して保持することができ、かつより軽量化されたプリント基板用ラックを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のプリント基板用コンテナは、部品を搭載したプリント基板の搬送・保管用コンテナであって、天面とこれにつながる1側面の半ばが開放されたコンテナにおいて、L字部材の底面に溝を設けた底面溝付部材と、これと略直角に配置された斜面部材に帯状の溝付き部材を前記底面溝付部材と斜面部材の稜線と平行に可動配置し、L字部材の凸稜線部を前記コンテナの底面内側に、L字部材の底面端をコンテナの半ば開放された側面端に、斜面部端を半ば開放された側面の対向した側面にそれぞれ接触保持させたことを特徴としている。
前記帯状の溝付き部材の固定方法は、例えばフック状に曲がった線材と線材の輪との絡脱によって着脱が為される面ファスナー、あるいは両面テープによる粘着保持、あるいは斜面部材に設けたガイドレール上を摺動自在として取り付け適当なストッパーで固定することとされ、前記コンテナ及びL字部材、帯状溝付き部材を導電性プラスチックで構成すること、さらにコンテナの開放されていない側面1対の外側に、持ち運び用の把手を設けること、などが挙げられる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、
1.基板の大型化、重量化に伴い、L字だけでは支えきれない基板であっても、L字部分を4方から保持出来る構造になっていることから収納出来る、
2.コンテナの開放されていない側面に設けられた把手で搬送出来る事から、搬送中に基板に手を触れる事による基板上に搭載された部品の静電気破壊を防ぐ事が出来る、
3.コンテナを保管する際に、そのまま重ねることが出来る事から、場所を取らない、などの効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明のプリント基板用コンテナの基本形を示す説明図である。
【図2】本発明のプリント基板用コンテナの基本形において、帯状溝付き部を斜面から取り外した状態を現した状態を示す説明図である。
【図3】平板にプリント基板を狭持保持する溝を設けた従来のプリント基板用ラックの例を示す説明図である。
【図4】プリント基板を保持するために溝を設けた溝付立面部と溝付底面部とを備えた従来のプリント基板用ラックの例を示す説明図である。
【図5】側面に押さえ板を設けた従来のプリント基板用ラックの例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、搬送・保管されるプリント基板を傾斜させて載置することと、底面溝付部材と直角に配置された斜面部材に設ける溝部材を帯状の溝付部材とした上で、それを可動配置することができるようにしたことを基本としている。
以下、添付図面に基づき、本発明を詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明のプリント基板用コンテナの基本形を示す説明図である。図2は、本発明のプリント基板用コンテナの基本形において、帯状溝付き部を斜面から取り外した状態を現した状態を示す説明図である。
本発明のプリント基板用コンテナは、基本的に、図1に示すように、斜面部材1に帯状の溝付部材2を着脱自在に取り付けたものであり、プリント基板の角部への不用意な軽微な接触・干渉に対して耐久性があり、また、プリント基板の表面からはみ出した搭載部品の厚さより溝3の間隔を大きくしておくことにより、プリント基板が相互に干渉することなく、溝3で保持することが可能となるものである。
また底面溝付部材6に設けられた溝は適宜の箇所で途切れているが、プリント基板の端部に実装された部品との干渉を防ぐためである。
更に、斜面部材1には帯状の溝付部材2を任意の位置に張り付けることが出来るので、プリント基板の端部あるいは突出して実装された搭載部品を避けて溝付部材2を設置すれば搭載部品の取付け位置に係わらず支障なくプリント基板を保持することができる。
斜面部材1には、帯状の溝付部材2を着脱自在に取り付けるための面ファスナー4を設ける。面ファスナー4は、斜面部材1の全面でも差し支えないが、細幅のものとして、適宜の間隔を設けるようにしても良い。図示のものでは、両端と中央の3個としている。その長さ(高さ)も、想定される収納するプリント基板の大きさによっては、適宜とすることができる。
側板には、手掛け用把手5を設けておくことが望ましく、搬送時にこの把手5を持つことによって安全に移動することができる。
図2は、帯状の溝付き部材2を斜面から取り外した状態で現したものである。
【0013】
本発明のコンテナは導電性プラスチックダンボールからなるものであることが好ましく、そうすることによって、従来の射出成形によって成型されたものや、金属製に比較して軽量という特徴がある。このような導電性プラスチックダンボールとしては、従来、導電性を有しながら強度を有するものは試みられた例は知られていないが、PS+PEのアロイとすることで実現することができる。
溝3の形成には、プラスチックシートの真空成形を用いることが望ましい。
【0014】
プリント基板を挿入する溝3の幅は、プリント基板そのものの厚さに合わせることを基本とするが、プリント基板に実装される部品がプリント基板の端部に位置されることが想定される場合には、その厚さは実装される部品がプリント基板から突出する量に応じて設定され得る。
帯状溝付き部材2の幅は、10〜150mmの範囲で適宜設定され得る。現状の実装される部品によれば、30〜50mmとすることが好ましい。より狭幅とすることもでき、その場合には、帯状溝付き部材2を複数本用いればよい。
【0015】
溝3の深さは、格別制限はないが、2〜5mmの範囲であればプリント基板の安定な載置ができる。
溝3間の間隔は、プリント基板に実装される部品がプリント基板から突出する量に応じて設定され得るもので、5〜50mmの範囲で適宜設定され得る。現状の実装される電子部品によれば、15mm〜30mmとすることが現実的である。
帯状の溝付部材2の厚みは、プリント基板の長手方向あるいは幅方向に突出する部品の突出量より大きければ、帯状の溝付部材2をこの搭載部品の搭載位置を避けて斜面部材1に取り付けておけば、プリント基板の溝3への載置は全く問題なく行うことができる。この厚みは搭載部品のはみ出し量を勘案すると5mm〜50mmが好ましい。
斜面部材1に帯状の溝付部材2を着脱自在に取り付ける手段としては、面ファスナー(例えば、株式会社クラレから「面ファスナーマジックテープ」との登録商標で市販されている)を利用すること、粘着剤を利用すること、斜面部材1に設けたガイドレール上を摺動自在として取り付け適当なストッパーで固定すること、等が利用できる。
【0016】
帯状の溝付部材2を斜面部材1に取り付けるために、斜面部材1の適宜の場所に位置決め用のマーク等を付しておけば、底面溝付底面部材に平行に取り付けるのに便利である。
底面溝付底面部材の奥行きは、載置されるプリント基板の重心位置よりも外側にまで延びていることが必要である。
【符号の説明】
【0017】
1:斜面部材
2:帯状の溝付部材
3:(プリント基板を保持する)溝
4:面ファスナー
5:手掛け用把手
6:底面溝付部材

11:平板
12:(プリント基板を保持する)溝
13:溝付立面部
14:溝付底面部
15:(側面の)押さえ板
16:手掛け用把手

【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を搭載したプリント基板の搬送・保管用コンテナであって、天面とこれにつながる1側面の半ばが開放されたコンテナにおいて、
L字部材の底面に溝を設けた底面溝付部材と、これと略直角に配置された斜面部材に帯状の溝付き部材を前記底面溝付部材と斜面部材の稜線と平行に可動配置し、
L字部材の凸稜線部を前記コンテナの底面内側に、L字部材の底面端をコンテナの半ば開放された側面端に、斜面部端を半ば開放された側面の対向した側面にそれぞれ接触保持させた、
ことを特徴とするプリント基板用コンテナ。
【請求項2】
前記帯状の溝付き部材の固定方法がフック状に曲がった線材と線材の輪との系脱によって着脱が為される面ファスナーである請求項1に記載のプリント基板用コンテナ。
【請求項3】
前記帯状の溝付き部材の固定方法が粘着剤である請求項1に記載のプリント基板用コンテナ。
【請求項4】
前記帯状の溝付き部材の固定方法が斜面部材に設けたガイドレールである請求項1に記載のプリント基板用コンテナ。
【請求項5】
前記コンテナ及びL字部材、帯状溝付き部材を導電性プラスチックで構成した請求項1〜4のいずれかに記載のプリント基板用コンテナ。
【請求項6】
コンテナの開放されていない側面1対の外側に、持ち運び用の把手を設けた請求項1〜5のいずれかに記載のプリント基板用コンテナ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−241443(P2010−241443A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90010(P2009−90010)
【出願日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(504002300)信越ファインテック株式会社 (8)
【Fターム(参考)】