プリント基板等の板状物品のプッシャー
【課題】高い信頼性を有すると共に耐久性に富むプリント基板等の板状の物品のプッシャーの提供。
【解決手段】物品のプッシャーは、薄鋼帯からなるプッシュ部材8をその内端部において固定して渦巻状に密着巻きした第1のリールR1と、帯状の定荷重ばね9をその内端部において該第1リールに固定しかつ前記プッシュ部材に重合させた態様で渦巻状に密着巻きすると共にその外端部を固定して渦巻状に密着巻きした第2のリールR2と、可逆モータと、該可逆モータの回転を前記第1リール及び第2リールに伝達するための歯車機構とからなる。そして前記可逆モータの正・逆回転に連携して噛合連動する前記歯車機構を介して前記第1リール及び第2リールをそれぞれ正・逆回転させ、前記定荷重ばね9と共に前記第1リールに密着巻きされた前記プッシュ部材8を水平方向に進退させることによりプリント基板等の板状の物品を水平方向に押し動かせるようになっている。
【解決手段】物品のプッシャーは、薄鋼帯からなるプッシュ部材8をその内端部において固定して渦巻状に密着巻きした第1のリールR1と、帯状の定荷重ばね9をその内端部において該第1リールに固定しかつ前記プッシュ部材に重合させた態様で渦巻状に密着巻きすると共にその外端部を固定して渦巻状に密着巻きした第2のリールR2と、可逆モータと、該可逆モータの回転を前記第1リール及び第2リールに伝達するための歯車機構とからなる。そして前記可逆モータの正・逆回転に連携して噛合連動する前記歯車機構を介して前記第1リール及び第2リールをそれぞれ正・逆回転させ、前記定荷重ばね9と共に前記第1リールに密着巻きされた前記プッシュ部材8を水平方向に進退させることによりプリント基板等の板状の物品を水平方向に押し動かせるようになっている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板等の板状の物品を水平方向に押し動かすプッシャーに係り、殊にスクリーン印刷前又は後のプリント基板を一時的に収納して保管する段積み式のプリント基板収納ラック内に一枚づつ収納したり、段状に収納されている複数枚のプリント基板を一枚づつ押し出したりするのに好適な板状物品のプッシャーに関するものである。
【0002】
この種のプッシャーとしては、下記特許文献に開示されているような、箱体の一側面にモータを取り付けるとともに、弾性板製のプッシュ部材をその内端部該箱体内に突出するモータの出力軸を固定して非密着型の渦巻き状に巻き込み、前記モータを2回転させることにより該プッシュ部の外端部を前記箱体の開口から進退させるようにしたものが知られている。
【特許文献1】特開昭57−23237号公報 この種のいわゆる渦巻型プッシャーにあっては、構造が簡単でコストを少なくできるという利点を有する反面、プッシュ部材の進退動作ないし板状物品の押し動作の際にプッシュ部材及びその先端部のプッシャー・ヘッドが上下左右に振動し、突き動かすべき板状物品の端面に的確に当接しなかったり、押し動作中に該板状物品から外れてしまうといった不都合な事態が発生し易く、信頼性に欠け、しかも耐久性に乏しいといった欠点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記の如き先行技術の有する不都合な点や欠点を解消し、高い信頼性を有し、かつ耐久性に富むプリント基板等の板状物品のプッシャーを提供することをその主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明に係る物品のプッシャーは、薄鋼帯からなるプッシュ部材をその内端部において固定して渦巻状に密着巻きした第1のリールと、帯状の定荷重ばねをその内端部において該第1リールに固定し、かつ前記プッシュ部材に重合させた態様で渦巻状に密着巻きすると共に、その外端部を固定して渦巻状に密着巻きした第2のリールと、可逆モータと、該可逆モータの回転を前記第1リール及び第2リールに伝達するための歯車機構とからなり、前記可逆モータの正・逆回転に連携して噛合連動する前記歯車機構を介して前記第1リール及び第2リールをそれぞれ正・逆回転させ、前記定荷重ばねと共に前記第1リールに密着巻きされた前記プッシュ部材を水平方向に進退させることによりプリント基板等の板状の物品を水平方向に押し動かせるようにしたことを特徴とするものである。
【0005】
また、本発明に係る物品のプッシャーは、上記のものにおいて、前記歯車機構はその最終段に互いに同一方向に回転せしめられる2つの歯車を備え、それらの歯車軸は前記第1リールの軸及び第2リールの軸にそれぞれ同軸的に直結されていることを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明に係る物品のプッシャーは、上記いずれかのものにおいて、前記可逆モータが正回転せしめられると、前記荷重ばねが前記第2リールに巻き取られ、これに伴って前記プッシュ部材が前進せしめられるように構成したことを特徴とするものである。
【0007】
そしてまた、本発明に係る物品のプッシャーは上記いずれかのものにおいて、前記プッシュ部材の進退動作のストロークを可変調整するためのフォトセンサ機構を備えていることを特徴とする物品のプッシャー。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記の如く構成されているので、それによれば、上記の如き先行技術の有する不都合な点や欠点を解消し、高い信頼性を有し、かつ耐久性に富むプリント基板等の板状物品のプッシャーを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態につき、その一実施例を示した添付図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は本発明の一実施例としてのプリント基板等の板状物品のプッシャーの全体斜視図であり、図中、1は縦長の取付板、Aは取付板1の一側下方部位に固定された可逆モータ、Bは該取付板の他側に装置された歯車機構、Cは可逆モータAが固定されている側の取付板1の上半部位に固定された横長のハウジング、Dは不図示の制御装置に接続され、後述するプッシュ部材8のストロークを可変調整するためのセンサ機構を構成するフォトセンサである。
【0011】
図示の例にあっては、上記歯車機構Bは、図1〜4及び8に示されているように、左右一対の側板2A、2Bと、該側板間にそれぞれ軸支された大径の歯車3及び該歯車3とその上方部分においてそれぞれ噛合する中間歯車としての前後一対のピニオン4、5とからなるギア・ユニット2と、上記ハウジングC内に収容され、かつ該ハウジングの左右両側壁C1、C2間にそれぞれ軸支された第1のリールR1及び第2のリールR2のリール軸10、11にそれぞれ同軸的に直結された軸6A、7Bを有し、最終段歯車として前記ギア・ユニット2のピニオン4、5とそれぞれ噛合する、前記大径の歯車3より小径で該ピニオン4、5より大径の互いに同一方向に回転する2つの歯車6、7とからなっており、該大径の歯車3は駆動歯車として前記可逆モータAの出力軸に連結されている。従って、該可逆モータAを正・逆回転させると、歯車機構Bはそれに連携して噛合連動し、前記第1リールR1及び第リールR2をそれぞれ正・逆回転させるようになっている。
【0012】
前記第1リールR1には、図7及び10に示すように、その巻取り部R1′にその内端部を押しねじ12で固定した薄鋼帯からなるアーチ型湾曲断面を有するプッシュ部材8が渦巻状に密着巻きされており、その外端部はハウジングCの前壁C3の下部に設けた横長の開口13を通して外方へ水平に導出されている。プッシュ部材8の外端部にはプリント基板、シリコンのウエーハ等の板状の物品の端面に当接して物品を押し動かすプッシャー・ヘッド8Aが取り付けられている。プッシュ部材8の材料としては、引っ張り強さが大きく、弾性限度の高いばね用のステンレス鋼帯を用いることが望ましい。
【0013】
また、前記第1リールR1には、その巻き取り部R2′に、その内端部を前記プッシュ部材8の内端部の内側に重合させた態様で後者の内端部と共に押しねじ12で共通に固定した帯状の定荷重ばね9が密着巻きされていると共に、その外端部において前記第2リールR2の巻取り部R2′に押ねじ14で固定され、渦巻状に密着巻きされている。
【0014】
図6、7及び10に示されているように、図示の例にあっては、第2リールR2の巻取り部R2′の外径は第1リールR1の巻取り部R1′の外径より小さくされている。また、定荷重ばね9の幅は、図9に示してあるように、ブッシュ部材8のそれより若干小さくされている一方、その進退時における蛇行を防止すべく、ハウジングCの前壁下部C3の横長開口13に連通させた該ハウジング内の断面凸状の通路13Aにおける上部の左右案内壁13A′、13A′によって案内されるようになっている。
【0015】
また、歯車機構Bは、図示の例にあっては、前記したように、ギア・ユニット2を含んでおり、該ギア・ユニット2は、大径歯車3の歯車軸3Aを軸心として所定の揺動角度範囲内において前後方向に揺動可能なように取り付けられている。14A、14Bは取付板1の下部に所定の間隔をおいて配設された前後一対のストッパー部材であり、15はギア・ユニット2の側板2Bの下端中央部に垂下突設された係合片で、ギア・ユニット2はこの係合片15がストッパー部材14A、14Bにそれぞれ係合することによってその揺動範囲が規制されるようになっている。
【0016】
図11及び12は上記の如く構成された本発明に係る物品のプッシャーを用いてプリント基板を段積み式のプリント基板収納ラックMに収納したり、該収納ラックから押し出して他の機器に供給したりする場合の使用例を図解したものであり、次にこの使用例での該プッシャーの作動について説明する。
【0017】
可逆モータAを起動して正回転させると、前記大径歯車3が該モータと同一の回転方向に回転駆動され、これに伴って、ギア・ユニット2が反時計方向に揺動し、その係合片15を介して前方のストッパー部材14Bに制止されるとともに、中間歯車としての前方のピニオン5が最終段歯車としての前方の歯車7に噛合して該歯車7を正回転させることになる。この歯車7が正回転すると、その回転は前記第リールR2に伝えられ、これを定荷重ばね9を巻き取る方向に回転させるとともに、これに伴って該2リールに巻き取られる定荷重ばね9の引っ張り作用により前記第1リールR1が該第2リールR2と同一の回転方向、すなわち、密着巻きされたプッシュ部材8を巻き戻す方向へ回転せしめられ、該プッシュ部材を巻き戻しながら前進させる(図10参照)。従って、プリント基板Pを段積み式のプリント基板収納ラックMに一枚づつ収納してやる場合には、本発明に係る上記プッシャーと該収納ラックMとの間に複数のプリント基板を積載した昇降台(図示してない)を配置し、該昇降台に積載されたプリント基板Pの端面に図11に示すようにプッシャー部材8のプッシャー・ヘッド8Aを当接させ、プッシャー部材8を前進させて、該収納ラック内に押し込んでやるようにすればよい。また、該収納ラック内に収納されているプリント基板Pをラック外に押し出して他の機器に供給してやるためには、図12に示すように、プッシュ部材8を伸長させ該基板を押し出してやればよい。
【0018】
上記のようにしてプッシュ部材8を前進させる場合、本発明においては、第1リールR1から第2リールR2に巻き取られる定荷重ばね9の引っ張り作用により該第1リールが回転せしめられ、これに伴って、該第1リールに密着巻きされたプッシュ部材8が緩むことなく、すなわち、密着巻きされた状態を保ちながら巻き戻される一方、定荷重ばね9は、普通のゼンマイと異なり、ばね定数の変化が極めて小さいため、プッシュ部材8は一定の速度を保って前進せしめられるとともに、前進時におけるプッシャー・ヘッド8Aの上下左右の振動が有効に防止される。
【0019】
次に、プッシュ部材8による押し動作が終了し、可逆モータAが逆回転せしめられると、これに連動してギア・ユニット2は前記とは反対の方向に揺動変位し、後方のピニオン4を後方の最終段歯車6に噛合させ、この歯車6を逆回転させる。この歯車6の回転は前記第1リールR1を図10において反時計方向、すなわち、伸長したプッシュ部材8を巻き込んで後退させる方向に回転させるため、この回転に伴って該プッシュ部材を後退させるとともに、第2リールR2に巻き込まれた定荷重ばね9を巻き戻して第1リールR1に巻き込んで元の状態に戻すことになる。この場合においても、定荷重バネ9の特性によりプッシュ部材8の後退速度は一定であり、その後退も上下左右の振動なく行われる。
【0020】
上述したように、プッシュ部材8は、その前進時のみならず後退時においても、定荷重ばね9の有する特性によりその移動速度が一定で、材料疲労の蓄積の原因となる上下左右の振動が有効に防止されるので、これを頻繁かつ反復的に前進後退させて使用してもそれによって容易に破壊するようなことはなく、従来のものに比して耐久性を一段と高めることが可能となる。
【0021】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は該実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の範囲内で、これに各種の改変を施して実施することができるものである。例えば、本実施例では第2リールの巻取り部の外径を第1リールの巻取り部の外径より小さくして示してあるが、両者を同径とする一方、歯車機構におけるギア・ユニットを揺動不能に固定するとともに、2つの中間ピニオンを2つの最終段歯車にそれぞれ常時噛合させるように構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明に係るプッシャーは上記の如く構成されているので、プリント基板用のプッシャーとしてのみならず、ウエーハその他各種の板状の物品を押し動かすための装置として広汎な用途に使用することが可能である。
。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例である物品のプッシャーの全体斜視図である。
【図2】上記プッシャーの側面図である。
【図3】一方の側板を取り外して示すギア・ユニットの斜視図である。
【図4】ギア・ユニットの斜視図である。
【図5】ハウジングの全体斜視図である。
【図6】一方の側壁を取り外して示すハウジングの斜視図である。
【図7】一部を縦断して示すハウジングの斜視図である。
【図8】図5とは反対側からみたハウジングの合体斜視図である。
【図9】一部を縦断して示すハウジングの拡大斜視図である。
【図10】薄鋼板からなる第1のリールと、帯状の定荷重ばねをその内端部において該第1のリールに固定し、かつ前記プッシュ部材に重合させた態様で渦巻状に密着巻きすると共に、その外端部を固定して渦巻状に密着巻きした第2リールの一部縦断拡大断面図である。
【図11】上記プッシャーの一使用例を示す斜視図である。
【図12】上記プッシャーの使用例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 取付板
A 可逆モータ
B 歯車機構
C ハウジング
D フォトセンサ
2 ギア・ユニット
R1 第1のリール
R2 第2のリール
8 プッシュ部材
8A プッシャー・ヘッド
9 定荷重ばね
P プリント基板
M プリント基板収納ラック
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板等の板状の物品を水平方向に押し動かすプッシャーに係り、殊にスクリーン印刷前又は後のプリント基板を一時的に収納して保管する段積み式のプリント基板収納ラック内に一枚づつ収納したり、段状に収納されている複数枚のプリント基板を一枚づつ押し出したりするのに好適な板状物品のプッシャーに関するものである。
【0002】
この種のプッシャーとしては、下記特許文献に開示されているような、箱体の一側面にモータを取り付けるとともに、弾性板製のプッシュ部材をその内端部該箱体内に突出するモータの出力軸を固定して非密着型の渦巻き状に巻き込み、前記モータを2回転させることにより該プッシュ部の外端部を前記箱体の開口から進退させるようにしたものが知られている。
【特許文献1】特開昭57−23237号公報 この種のいわゆる渦巻型プッシャーにあっては、構造が簡単でコストを少なくできるという利点を有する反面、プッシュ部材の進退動作ないし板状物品の押し動作の際にプッシュ部材及びその先端部のプッシャー・ヘッドが上下左右に振動し、突き動かすべき板状物品の端面に的確に当接しなかったり、押し動作中に該板状物品から外れてしまうといった不都合な事態が発生し易く、信頼性に欠け、しかも耐久性に乏しいといった欠点があった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上記の如き先行技術の有する不都合な点や欠点を解消し、高い信頼性を有し、かつ耐久性に富むプリント基板等の板状物品のプッシャーを提供することをその主たる目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記目的を達成するために、本発明に係る物品のプッシャーは、薄鋼帯からなるプッシュ部材をその内端部において固定して渦巻状に密着巻きした第1のリールと、帯状の定荷重ばねをその内端部において該第1リールに固定し、かつ前記プッシュ部材に重合させた態様で渦巻状に密着巻きすると共に、その外端部を固定して渦巻状に密着巻きした第2のリールと、可逆モータと、該可逆モータの回転を前記第1リール及び第2リールに伝達するための歯車機構とからなり、前記可逆モータの正・逆回転に連携して噛合連動する前記歯車機構を介して前記第1リール及び第2リールをそれぞれ正・逆回転させ、前記定荷重ばねと共に前記第1リールに密着巻きされた前記プッシュ部材を水平方向に進退させることによりプリント基板等の板状の物品を水平方向に押し動かせるようにしたことを特徴とするものである。
【0005】
また、本発明に係る物品のプッシャーは、上記のものにおいて、前記歯車機構はその最終段に互いに同一方向に回転せしめられる2つの歯車を備え、それらの歯車軸は前記第1リールの軸及び第2リールの軸にそれぞれ同軸的に直結されていることを特徴とするものである。
【0006】
また、本発明に係る物品のプッシャーは、上記いずれかのものにおいて、前記可逆モータが正回転せしめられると、前記荷重ばねが前記第2リールに巻き取られ、これに伴って前記プッシュ部材が前進せしめられるように構成したことを特徴とするものである。
【0007】
そしてまた、本発明に係る物品のプッシャーは上記いずれかのものにおいて、前記プッシュ部材の進退動作のストロークを可変調整するためのフォトセンサ機構を備えていることを特徴とする物品のプッシャー。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上記の如く構成されているので、それによれば、上記の如き先行技術の有する不都合な点や欠点を解消し、高い信頼性を有し、かつ耐久性に富むプリント基板等の板状物品のプッシャーを得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態につき、その一実施例を示した添付図面を参照して詳細に説明する。
【実施例1】
【0010】
図1は本発明の一実施例としてのプリント基板等の板状物品のプッシャーの全体斜視図であり、図中、1は縦長の取付板、Aは取付板1の一側下方部位に固定された可逆モータ、Bは該取付板の他側に装置された歯車機構、Cは可逆モータAが固定されている側の取付板1の上半部位に固定された横長のハウジング、Dは不図示の制御装置に接続され、後述するプッシュ部材8のストロークを可変調整するためのセンサ機構を構成するフォトセンサである。
【0011】
図示の例にあっては、上記歯車機構Bは、図1〜4及び8に示されているように、左右一対の側板2A、2Bと、該側板間にそれぞれ軸支された大径の歯車3及び該歯車3とその上方部分においてそれぞれ噛合する中間歯車としての前後一対のピニオン4、5とからなるギア・ユニット2と、上記ハウジングC内に収容され、かつ該ハウジングの左右両側壁C1、C2間にそれぞれ軸支された第1のリールR1及び第2のリールR2のリール軸10、11にそれぞれ同軸的に直結された軸6A、7Bを有し、最終段歯車として前記ギア・ユニット2のピニオン4、5とそれぞれ噛合する、前記大径の歯車3より小径で該ピニオン4、5より大径の互いに同一方向に回転する2つの歯車6、7とからなっており、該大径の歯車3は駆動歯車として前記可逆モータAの出力軸に連結されている。従って、該可逆モータAを正・逆回転させると、歯車機構Bはそれに連携して噛合連動し、前記第1リールR1及び第リールR2をそれぞれ正・逆回転させるようになっている。
【0012】
前記第1リールR1には、図7及び10に示すように、その巻取り部R1′にその内端部を押しねじ12で固定した薄鋼帯からなるアーチ型湾曲断面を有するプッシュ部材8が渦巻状に密着巻きされており、その外端部はハウジングCの前壁C3の下部に設けた横長の開口13を通して外方へ水平に導出されている。プッシュ部材8の外端部にはプリント基板、シリコンのウエーハ等の板状の物品の端面に当接して物品を押し動かすプッシャー・ヘッド8Aが取り付けられている。プッシュ部材8の材料としては、引っ張り強さが大きく、弾性限度の高いばね用のステンレス鋼帯を用いることが望ましい。
【0013】
また、前記第1リールR1には、その巻き取り部R2′に、その内端部を前記プッシュ部材8の内端部の内側に重合させた態様で後者の内端部と共に押しねじ12で共通に固定した帯状の定荷重ばね9が密着巻きされていると共に、その外端部において前記第2リールR2の巻取り部R2′に押ねじ14で固定され、渦巻状に密着巻きされている。
【0014】
図6、7及び10に示されているように、図示の例にあっては、第2リールR2の巻取り部R2′の外径は第1リールR1の巻取り部R1′の外径より小さくされている。また、定荷重ばね9の幅は、図9に示してあるように、ブッシュ部材8のそれより若干小さくされている一方、その進退時における蛇行を防止すべく、ハウジングCの前壁下部C3の横長開口13に連通させた該ハウジング内の断面凸状の通路13Aにおける上部の左右案内壁13A′、13A′によって案内されるようになっている。
【0015】
また、歯車機構Bは、図示の例にあっては、前記したように、ギア・ユニット2を含んでおり、該ギア・ユニット2は、大径歯車3の歯車軸3Aを軸心として所定の揺動角度範囲内において前後方向に揺動可能なように取り付けられている。14A、14Bは取付板1の下部に所定の間隔をおいて配設された前後一対のストッパー部材であり、15はギア・ユニット2の側板2Bの下端中央部に垂下突設された係合片で、ギア・ユニット2はこの係合片15がストッパー部材14A、14Bにそれぞれ係合することによってその揺動範囲が規制されるようになっている。
【0016】
図11及び12は上記の如く構成された本発明に係る物品のプッシャーを用いてプリント基板を段積み式のプリント基板収納ラックMに収納したり、該収納ラックから押し出して他の機器に供給したりする場合の使用例を図解したものであり、次にこの使用例での該プッシャーの作動について説明する。
【0017】
可逆モータAを起動して正回転させると、前記大径歯車3が該モータと同一の回転方向に回転駆動され、これに伴って、ギア・ユニット2が反時計方向に揺動し、その係合片15を介して前方のストッパー部材14Bに制止されるとともに、中間歯車としての前方のピニオン5が最終段歯車としての前方の歯車7に噛合して該歯車7を正回転させることになる。この歯車7が正回転すると、その回転は前記第リールR2に伝えられ、これを定荷重ばね9を巻き取る方向に回転させるとともに、これに伴って該2リールに巻き取られる定荷重ばね9の引っ張り作用により前記第1リールR1が該第2リールR2と同一の回転方向、すなわち、密着巻きされたプッシュ部材8を巻き戻す方向へ回転せしめられ、該プッシュ部材を巻き戻しながら前進させる(図10参照)。従って、プリント基板Pを段積み式のプリント基板収納ラックMに一枚づつ収納してやる場合には、本発明に係る上記プッシャーと該収納ラックMとの間に複数のプリント基板を積載した昇降台(図示してない)を配置し、該昇降台に積載されたプリント基板Pの端面に図11に示すようにプッシャー部材8のプッシャー・ヘッド8Aを当接させ、プッシャー部材8を前進させて、該収納ラック内に押し込んでやるようにすればよい。また、該収納ラック内に収納されているプリント基板Pをラック外に押し出して他の機器に供給してやるためには、図12に示すように、プッシュ部材8を伸長させ該基板を押し出してやればよい。
【0018】
上記のようにしてプッシュ部材8を前進させる場合、本発明においては、第1リールR1から第2リールR2に巻き取られる定荷重ばね9の引っ張り作用により該第1リールが回転せしめられ、これに伴って、該第1リールに密着巻きされたプッシュ部材8が緩むことなく、すなわち、密着巻きされた状態を保ちながら巻き戻される一方、定荷重ばね9は、普通のゼンマイと異なり、ばね定数の変化が極めて小さいため、プッシュ部材8は一定の速度を保って前進せしめられるとともに、前進時におけるプッシャー・ヘッド8Aの上下左右の振動が有効に防止される。
【0019】
次に、プッシュ部材8による押し動作が終了し、可逆モータAが逆回転せしめられると、これに連動してギア・ユニット2は前記とは反対の方向に揺動変位し、後方のピニオン4を後方の最終段歯車6に噛合させ、この歯車6を逆回転させる。この歯車6の回転は前記第1リールR1を図10において反時計方向、すなわち、伸長したプッシュ部材8を巻き込んで後退させる方向に回転させるため、この回転に伴って該プッシュ部材を後退させるとともに、第2リールR2に巻き込まれた定荷重ばね9を巻き戻して第1リールR1に巻き込んで元の状態に戻すことになる。この場合においても、定荷重バネ9の特性によりプッシュ部材8の後退速度は一定であり、その後退も上下左右の振動なく行われる。
【0020】
上述したように、プッシュ部材8は、その前進時のみならず後退時においても、定荷重ばね9の有する特性によりその移動速度が一定で、材料疲労の蓄積の原因となる上下左右の振動が有効に防止されるので、これを頻繁かつ反復的に前進後退させて使用してもそれによって容易に破壊するようなことはなく、従来のものに比して耐久性を一段と高めることが可能となる。
【0021】
以上、本発明の一実施例を図面を参照して詳細に説明したが、本発明は該実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載の範囲内で、これに各種の改変を施して実施することができるものである。例えば、本実施例では第2リールの巻取り部の外径を第1リールの巻取り部の外径より小さくして示してあるが、両者を同径とする一方、歯車機構におけるギア・ユニットを揺動不能に固定するとともに、2つの中間ピニオンを2つの最終段歯車にそれぞれ常時噛合させるように構成することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明に係るプッシャーは上記の如く構成されているので、プリント基板用のプッシャーとしてのみならず、ウエーハその他各種の板状の物品を押し動かすための装置として広汎な用途に使用することが可能である。
。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施例である物品のプッシャーの全体斜視図である。
【図2】上記プッシャーの側面図である。
【図3】一方の側板を取り外して示すギア・ユニットの斜視図である。
【図4】ギア・ユニットの斜視図である。
【図5】ハウジングの全体斜視図である。
【図6】一方の側壁を取り外して示すハウジングの斜視図である。
【図7】一部を縦断して示すハウジングの斜視図である。
【図8】図5とは反対側からみたハウジングの合体斜視図である。
【図9】一部を縦断して示すハウジングの拡大斜視図である。
【図10】薄鋼板からなる第1のリールと、帯状の定荷重ばねをその内端部において該第1のリールに固定し、かつ前記プッシュ部材に重合させた態様で渦巻状に密着巻きすると共に、その外端部を固定して渦巻状に密着巻きした第2リールの一部縦断拡大断面図である。
【図11】上記プッシャーの一使用例を示す斜視図である。
【図12】上記プッシャーの使用例を示す側面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 取付板
A 可逆モータ
B 歯車機構
C ハウジング
D フォトセンサ
2 ギア・ユニット
R1 第1のリール
R2 第2のリール
8 プッシュ部材
8A プッシャー・ヘッド
9 定荷重ばね
P プリント基板
M プリント基板収納ラック
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄鋼帯からなるプッシュ部材をその内端部において固定して渦巻状に密着巻きした第1のリールと、帯状の定荷重ばねをその内端部において該第1リールに固定し、かつ前記プッシュ部材に重合させた態様で渦巻状に密着巻きすると共に、その外端部を固定して渦巻状に密着巻きした第2のリールと、可逆モータと、該可逆モータの回転を前記第1リール及び第2リールに伝達するための歯車機構とからなり、前記可逆モータの正・逆回転に連携して噛合連動する前記歯車機構を介して前記第1リール及び第2リールをそれぞれ正・逆回転させ、前記定荷重ばねと共に前記第1リールに密着巻きされた前記プッシュ部材を水平方向に進退させることによりプリント基板等の板状の物品を水平方向に押し動かせるようにしたことを特徴とする物品のプッシャー。
【請求項2】
請求項1に記載の物品のプッシャーにおいて、前記歯車機構はその最終段に互いに同一方向に回転せしめられる2つの歯車を備え、それらの歯車軸は前記第1リールの軸及び第2リールの軸にそれぞれ同軸的に直結されていることを特徴とする物品のプッシャー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の物品のプッシャーにおいて、前記可逆モータが正回転せしめられると、前記荷重ばねが前記第2リールに巻き取られ、これに伴って前記プッシュ部材が前進せしめられるように構成したことを特徴とする物品のプッシャー。
【請求項4】
請求項1又は2又は3に記載の物品のプッシャーにおいて、前記プッシュ部材の進退動作のストロークを可変調整するためのフォトセンサ機構を備えていることを特徴とする物品のプッシャー。
【請求項1】
薄鋼帯からなるプッシュ部材をその内端部において固定して渦巻状に密着巻きした第1のリールと、帯状の定荷重ばねをその内端部において該第1リールに固定し、かつ前記プッシュ部材に重合させた態様で渦巻状に密着巻きすると共に、その外端部を固定して渦巻状に密着巻きした第2のリールと、可逆モータと、該可逆モータの回転を前記第1リール及び第2リールに伝達するための歯車機構とからなり、前記可逆モータの正・逆回転に連携して噛合連動する前記歯車機構を介して前記第1リール及び第2リールをそれぞれ正・逆回転させ、前記定荷重ばねと共に前記第1リールに密着巻きされた前記プッシュ部材を水平方向に進退させることによりプリント基板等の板状の物品を水平方向に押し動かせるようにしたことを特徴とする物品のプッシャー。
【請求項2】
請求項1に記載の物品のプッシャーにおいて、前記歯車機構はその最終段に互いに同一方向に回転せしめられる2つの歯車を備え、それらの歯車軸は前記第1リールの軸及び第2リールの軸にそれぞれ同軸的に直結されていることを特徴とする物品のプッシャー。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の物品のプッシャーにおいて、前記可逆モータが正回転せしめられると、前記荷重ばねが前記第2リールに巻き取られ、これに伴って前記プッシュ部材が前進せしめられるように構成したことを特徴とする物品のプッシャー。
【請求項4】
請求項1又は2又は3に記載の物品のプッシャーにおいて、前記プッシュ部材の進退動作のストロークを可変調整するためのフォトセンサ機構を備えていることを特徴とする物品のプッシャー。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−44825(P2006−44825A)
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−224947(P2004−224947)
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000209474)谷電機工業株式会社 (25)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年2月16日(2006.2.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年7月30日(2004.7.30)
【出願人】(000209474)谷電機工業株式会社 (25)
【Fターム(参考)】
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