説明

プリント基板

【課題】 中間タップを有し、かつ、巻き数の多いコイルを2層基板で実現する。
【解決手段】 プリント基板40において、a1(タップ41)からa2を介してc1(タップ42)に、螺旋状にパターンが展開され、c1(タップ42)からc2を介してb1(タップ43)に、螺旋状にパターンが展開されることによりコイルが形成されている。プリント基板40のA面およびB面のそれぞれのパターンが生成するコイルのインダクタンスは、内周側より外周側のほうが大きいため、プリント基板40におけるパターンは、A面からB面、B面からA面にパターンが移動するときに、内周と外周が入れ替わるように結線され、タップ42を、タップ41とタップ43の電気的な中点に備えることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、プリント基板に関し、特に、プリント基板上のパターンにより形成されるコイルにおいて、例えば、2層基板のような層の数の少ない基板でリアクタンスを改善し、更に中間タップを設けることができるようにしたプリント基板に関する。
【0002】
【従来の技術】プリント基板上で形成されるコイルのパターンの一例を図1に示す。プリント基板上で形成されるコイルは、図1に示されるように、タップ11に接続されたコイルの片側の端子(入力端子)a1から、内周側に向かって、プリント基板1に螺旋状にパターンを展開することによって実現される。ここで、端子a1の逆側の端子(出力端子)b1をタップ13に接続しようとした場合、コイルを形成するパターンを展開している面(A面)からパターンを導出することはできない(同一面内で、2つのパターンがそれぞれ接触しないように、一方のパターンが他方のパターンを飛び越えることはできない)ため、A面のコイルの端子a2から、スルーホールを介して、パターンを反対側の面(B面)に導出し、面Bにおいて、図中破線で示すパターンを形成し、スルーホールを介して、パターンを端子b1に接続する必要がある。すなわち、プリント基板1は2層(両面)基板として構成する必要がある。また、この場合、B面を利用して、コイルの中間の端子c2と端子c1とを接続することで、タップ12を用意することが可能となる。
【0003】このコイルのインダクタンスを改善しつつ、基板面積を小さく抑えようとした場合、図2に示すプリント基板20のように、2層基板のA面とB面の両方に、螺旋状のパターンを展開すればよい(すなわち、コイルの巻き数を多くすればよい)。しかしながら、図2の場合においては、コイルの両端が接続されるタップ21およびタップ22は容易に形成可能であるが、基板上のパターンのために、空中配線(例えば、ジャンパー線を用いた配線)を行わない限り、中間タップを形成することはできない。従って、小さな基板面積で、インダクタンスを改善し、更に、中間タップを設けようとした場合、プリント基板に中間タップ用のパターンを形成するために、更に1層加えて3層構造をとることにより、図3に示すプリント基板30のようにタップ31乃至タップ33を空中配線なしで搭載することが可能である。図3の例の場合、タップ31に接続された入力端子a1と、タップ33に接続された出力端子b1との間に中間端子a2が形成され、この中間端子a2が、端子c1を介して、タップ32に接続されている。
【0004】基板上に形成されたコイルを、例えば、無線通信や電磁結合非接触通信などに用いるアンテナの回路に用いる場合、送信側の電力終段回路はプッシュプル回路で構成されることが多く、送信電力をコイルに供給するためには、コイルに中間タップが形成されているほうが有利である。中間タップを有さないコイル(図2を用いて説明したプリント基板20)を用いた電磁結合非接触通信における送信装置の回路の例を図4に示す。
【0005】図4における信号源V1および信号源V2により、正逆相のドライブ信号が発信される。これらの信号は、トランジスタQ1およびトランジスタQ2により電力が増幅され、コンデンサC3により所定の通信周波数に共振される。コンデンサC1、コンデンサC2、および抵抗R1乃至抵抗R7の値は、回路の特性によって決められる。このトランジスタQ1およびトランジスタQ2のコレクタにかかる直流電圧は、チョークコイルL1およびチョークコイルL2を介して与えられ、チョークコイルL1とチョークコイルL2との接合点は、チョークコイルL3およびコンデンサC2によりデカップリングされる。出力される信号の輻射は、プリント基板2に対して垂直方向が最大となる。また、トランジスタQ3およびトランジスタQ4は、バッファリングのために用いられている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】以上説明したとおり、プリント基板上のパターンの展開により形成されるコイルを2層基板で実現しようとすると、図1を用いて説明したプリント基板1のように、中間タップを有し、インダクタンスを犠牲にしたコイル(巻き数の少ないコイル)を選択するか、大きなインダクタンスを得る場合には、図2を用いて説明したプリント基板20のように、中間タップを備えないコイルを選択しなくてはならない。中間タップを備えないコイルを、例えば、無線通信や電磁結合非接触通信における送信回路のアンテナに用いた場合、図4を用いて説明した回路のように、アンテナに対する電力供給のための外付けのチョークコイルL1およびチョークコイルL2が必要となり、コストアップや回路の規模拡大につながる。また、図3を用いて説明したプリント基板30のように、コイルのインダクタンスを改善しつつ中間タップを設けるために3層基板を用いた場合においては、基板の層の数の増加のために、基板コストが高くなってしまい、更に、基板厚の増加のため、例えばカード型などの薄型アンテナの実現が困難となる。
【0007】本発明はこのような状況に鑑みてなされたものであり、例えば、2層基板等の層の数が少ないプリント基板において、リアクタンスを改善し、更に中間タップを設けることを可能とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載のプリント基板は、プリント基板の一方の面と他方の面のそれぞれにおいて、コイルを形成する複数のパターンが、同心状に展開されていることを特徴とする。
【0009】請求項1に記載のプリント基板においては、プリント基板の一方の面と他方の面のそれぞれにおいて、コイルを形成する複数のパターンが、同心状に展開される。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、図を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】図5に、本発明を適応したプリント基板の第1の実施の形態を示す。プリント基板40は、2層基板であり、図5(A)は、プリント基板40のA面のパターン図であり、図5(B)は、プリント基板40のB面のパターン図をA面側から透視した図である。
【0012】プリント基板40には、A面に2本、B面に2本の2組の螺旋状パターンが同心状に展開されている。タップ41に接続されている端子(入力端子、または出力端子)a1から中心(内周)に向かう螺旋状のパターン(図5(A)の実線のパターン)は、スルーホールa2を介して、B面に接続され、スルーホールa2から、外周に向かう螺旋状のパターン(図5(B)の実線のパターン)が、タップ42に接続されているスルーホールc1に向けて展開されている。このパターンは、スルーホールc1を介して再びA面に接続され、スルーホールc1から中心に向かう螺旋状のパターン(図5(A)の点線のパターン)は、スルーホールc2を介して、B面に接続され、スルーホールc2から、外周に向かう螺旋状のパターン(図5(B)の点線のパターン)が、タップ43に接続されているスルーホール(出力端子、または入力端子)b1に向けて展開されている。
【0013】プリント基板40のA,B両面のパターンを平面的に表すと、図6のようになる。すなわち、図5(A)において、実線で示されるパターンは、図6のコイルLa1−a2に対応し、図5(A)において、点線で示されるパターンは、図6のコイルLc1−c2に対応し、図5(B)において、実線で示されるパターンは、図6のコイルLa2−c1に対応し、図5(B)において、点線で示されるパターンは、図6のコイルLc2−b1に対応する。
【0014】ここで、プリント基板40を、プッシュプル回路を用いたアンテナのコイルとして用いる場合、中間タップであるタップ42は、電気的に正しく中点となるポイントでなければならない。しかし、プリント基板40のA面およびB面のそれぞれのパターンが生成するコイルのインダクタンスは、内周側より外周側のほうが大きい値となる(内周側のコイルより、外周側のほうが長くなる)。このため、プリント基板40におけるパターンは、A面からB面にパターンが移動するときに、内周と外周とが入れ替わるように結線されている。
【0015】すなわち、端子a1から、スルーホールa2までのA面のパターンは外周、スルーホールa2から、スルーホールc1までのB面のパターンは内周、スルーホールc1から、スルーホールc2までのA面のパターンは内周、そして、スルーホールc2から、スルーホールb1までのB面のパターンは外周に、それぞれ形成されている。
【0016】そして、各タップ間のコイルは、A面のコイルと、B面のコイルで構成され、かつ、各タップ間のコイルの全長が略等しくなるように組み合わされている。従って、図6に示されるように、タップ41からタップ42までと、タップ42からタップ43までは、それぞれ、A面とB面のコイルで形成され、かつ、内周と外周のパターンが組み合わされている。その結果、タップ42を、タップ41とタップ43との電気的な中点にすることができる。
【0017】図7に、プリント基板40を用いた電磁結合非接触通信における送信装置の回路図を示す。
【0018】図7の送信回路は、図4を用いて説明した送信回路と同様に、信号源V1および信号源V2により、正逆相のドライブ信号が発信され、これらの信号は抵抗R1または抵抗R2を介して、PNPトランジスタQ3またはPNPトランジスタQ4のベースに供給され、増幅された後、それぞれ抵抗R3または抵抗R4を介して直流バイアス電圧が印加されているエミッタから出力される。この出力信号は、抵抗R12または抵抗R11を介して、PNPトランジスタQ9またはPNPトランジスタQ10のベースに入力され、電力増幅される。電力増幅された信号は、コンデンサC3と、プリント基板40により構成されるコイル(アンテナ)により規定される所定の通信周波数に共振される。
【0019】プリント基板40のタップ42には、チョークコイルL3で交流成分が抑圧され、コンデンサC2で平滑された直流電圧が印加される。この電圧に基づいて、タップ42、タップ41、NPNトランジスタQ9のコレクタ-エミッタ、抵抗R5の経路、または、タップ42、タップ43、NPNトランジスタQ10のコレクタ-エミッタ、抵抗R5の経路でバイアス電流が流れる。コンデンサC1は、バイパス用である。
【0020】図4を用いて説明した送信回路においては、トランジスタQ1およびトランジスタQ2に直流電圧を与えるために、外付けのチョークコイルL1およびチョークコイルL2が必要となり、そのばらつきにより、安定したバイアス電圧を供給することが困難であった。図7に示される送信回路においては、正確な電気的中点とし得る、タップ2により電源を供給することができるため、チョークコイルL1およびチョークコイルL2を省略することができ、部品点数を減らし、回路規模を小さくすることができると同時に、安定したバイアス電圧の供給が可能となる。
【0021】次に、図8に、本発明を適応したプリント基板の第2の実施の形態を示す。プリント基板50も、プリント基板40と同様に2層基板であり、図8(A)は、プリント基板50のA面のパターン図であり、図8(B)は、プリント基板50のB面のパターン図をA面側から透視した図である。
【0022】プリント基板50には、A面に3本、B面に3本の2組の螺旋状パターンが同心状に展開されている。タップ51に接続されている端子a1から中心に向かう螺旋状のパターン(図8(A)の実線のパターン)は、スルーホールa2を介して、B面に接続され、スルーホールa2から、外周に向かう螺旋状のパターン(図8(B)の実線のパターン)が、タップ52に接続されているスルーホールc1に向けて展開されている。このパターンは、スルーホールc1を介してA面に接続され、スルーホールc1から中心に向かう螺旋状のパターン(図8(A)の点線のパターン)は、スルーホールc2を介してB面に接続され、スルーホールc2から、外周に向かう螺旋状のパターン(図8(B)の点線のパターン)が、タップ53に接続されているスルーホールd1に向けて展開されている。このパターンは、スルーホールb1を介してA面に接続され、スルーホールd1から中心に向かう螺旋状のパターン(図8(A)の二点鎖線のパターン)は、スルーホールd2を介して、B面に接続され、スルーホールd2から、外周に向かう螺旋状のパターン(図8(B)の二点鎖線のパターン)が、タップ54に接続されているスルーホールb1に向けて展開されている。
【0023】プリント基板50のA,B両面のパターンを平面的に表すと、図9のようになる。すなわち、図8(A)において、実線で示されるパターンは、図9のコイルLa1−a2に対応し、図8(A)において、点線で示されるパターンは、図9のコイルLc1−c2に対応し、8(A)において、二点鎖線で示されるパターンは、図9のコイルLd1−d2に対応し、図8(B)において、実線で示されるパターンは、図9のコイルLa2−c1に対応し、図8(B)において、点線で示されるパターンは、図9のコイルLc2−d1に対応し、図8(B)において、二点鎖線で示されるパターンは、図9のコイルLd2−b1に対応する。
【0024】ここで、中間タップであるタップ52およびタップ53が、タップ51とタップ54に対して、電気的に正しく3等分されたポイントであるためには、外周と内周のパターンの長さに対して、中央のパターンがちょうど中間の長さ(外周のコイルの長さと、内周のコイルの長さの和の1/2)であればよい。そして、各タップ間のコイルの長さが相互に略等しくなるように組み合わされる。すなわち、図9に示されるように、タップ51からタップ52までと、タップ53からタップ54までは、それぞれ、内周と外周のパターンが組み合わされ、タップ52からタップ53までは、中央のパターンが組み合わされる。その結果、タップ52およびタップ53は、タップ51とタップ54に対して、電気的に正しく3等分されたポイントとなる。
【0025】同様にして、プリント基板の同一面上に展開されるパターンの本数を増やすことによって、プリント基板上のパターンで形成されるコイルに、3つ、もしくはそれ以上の中間タップを備えるようにすることができる。
【0026】図10に、本発明を適応した第3の実施の形態を示す。例えば、アンテナ以外の用途などで、プリント基板に形成されるコイルに中間タップの搭載が必要ない場合においても、本発明を適用して、基板面積および基板の層の数を増やすことなく、プリント基板上に形成されるコイルのインダクタンスを改善することができる。
【0027】図10(A)は、プリント基板60のA面のパターン図であり、図10(B)は、プリント基板60のB面のパターン図をA面側から透視した図である。プリント基板60は、2層基板であり、パターンの配線は、図5を用いて説明したプリント基板40と略等しく、タップ61およびタップ62のみを搭載し、中間タップを持たない。ここでは、2本のパターンを同一面上に展開しているが、3本、もしくはそれ以上のパターンを同一面上に展開することにより、更に、コイルのインダクタンスを改善するようにしてもよい。
【0028】
【発明の効果】請求項1に記載のプリント基板によれば、プリント基板の一方の面と他方の面のそれぞれに、コイルを形成する複数のパターンを、同心状に展開するようにしたので、例えば、2層基板等の層の数が少ないプリント基板において、リアクタンスを改善し、中間タップを設けることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】プリント基板上のパターン展開によって形成されるコイルの従来例を示す図である。
【図2】プリント基板上のパターン展開によって形成されるコイルの従来例を示す図である。
【図3】プリント基板上のパターン展開によって形成されるコイルの従来例を示す図である。
【図4】図2のプリント基板を用いた電磁結合非接触通信における送信装置の回路図である。
【図5】本発明を適応したプリント基板の第1の実施の形態を示す図である。
【図6】図5のプリント基板に形成されるコイルおよび中間タップの位置を説明するための図である。
【図7】図5のプリント基板を用いた電磁結合非接触通信における送信装置の回路図である。
【図8】本発明を適応したプリント基板の第2の実施の形態を示す図である。
【図9】図8のプリント基板に形成されるコイルおよび中間タップの位置を説明するための図である。
【図10】本発明を適応したプリント基板の第3の実施の形態を示す図である。
【符号の説明】
40 プリント基板, 41乃至43 タップ, 50 プリント基板, 51乃至54 タップ, 60 プリント基板, 61,62 タップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 入力端子から出力端子までの間が、螺旋状に展開されたパターンによりコイルを形成するプリント基板において、前記プリント基板の一方の面と他方の面のそれぞれにおいて、前記コイルを形成する複数のパターンが、同心状に展開されていることを特徴とするプリント基板。
【請求項2】 前記コイルは、前記入力端子および前記出力端子以外に1つ以上の中間端子を有することを特徴とする請求項1に記載のプリント基板。
【請求項3】 前記各端子間のコイルは、前記基板の一方の面のパターンと、他方の面のパターンとで構成され、かつ、前記各端子間のコイル全体の長さが略等しくなるように組み合わされていることを特徴とする請求項2に記載のプリント基板。
【請求項4】 前記コイルは、アンテナを構成することを特徴とする請求項1に記載のプリント基板。

【図1】
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【図2】
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【図6】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図7】
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【図8】
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【図10】
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【公開番号】特開2001−167928(P2001−167928A)
【公開日】平成13年6月22日(2001.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平11−351087
【出願日】平成11年12月10日(1999.12.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】