説明

プリント配線板、プリント配線板の製造方法及び電子機器

【課題】異方性を最小限に抑制するプリント配線板、プリント配線板の製造方法及び電子機器を提供する。
【解決手段】繊維方向D1に配向した繊維材料で形成する基材2と、基材2の面部上に搭載する回路チップの外形に対応し、基材2の面部上に周期的に複数区画されたセル3と、回路チップの接続端子に対応し、セル3内に形成した複数の貫通孔4とを有し、繊維方向D1に対して略45度斜め方向に基材2上でセル3を面付けした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント配線板、プリント配線板の製造方法及び電子機器に関する。
【背景技術】
【0002】
LSI(Large Scale Integration)パッケージングが実装されるプリント配線板の熱膨張率は、パターニングされる銅配線の材料に整合して、17ppm/℃程度のものが一般的である。しかしながら、近年では、熱膨張率が3〜3.5ppm/℃程度のシリコンウエハに近い低熱膨張率のプリント配線板が求められているのが実情である。
【0003】
そこで、FR4、FR5、FR6(Flame Retardant:プリント配線板の部材である銅張積層板の耐燃性の等級を示す記号)やBT(ビスマレイミドトリアジン樹脂)レンジ等の中から熱膨張率の低い樹脂材料を含浸したプリプレグ材料がある。このプリプレグ材料を使用してプリント配線板の基材を形成している。更に、プリプレグ化する場合に使用する繊維材料として、一般的なEガラス繊維(熱膨張率:約5.5ppm/℃、弾性率:約70GPa)の代わりに、Tガラス繊維等の低熱膨張特性のガラス繊維(熱膨張率:約3ppm/℃、弾性率:約80GPa)を使用している。つまり、プリプレグ材料やプリプレグ化に使用する繊維材料を適宜選択することで、プリント配線板の基材の低熱膨張化を図ろうとしている。しかしながら、このようなプリント配線板の基材は、概ね12ppm/℃以上の熱膨張率となるため、シリコンウエハに近い熱膨張率を得るのは難しい。
【0004】
また、プリプレグ材料には、フィラメントと呼ばれる細いガラス繊維を束にした繊維糸(ヤーン)にし、これら繊維糸を縦横方向に交互に編み込んだ織布(平織りの織布)や、これら繊維糸を平らに敷き詰めるように織らないまま整列させた状態の不織布がある。そして、プリプレグ材料は、織布又は不織布に樹脂を含浸させ、この含浸させた織布又は不織布を半硬化(Bステージ化)することで形成している。この際、織布に圧力等をかけて扁平させる方法や、糸束を平らに延ばした状態で織り上げる方法である開繊と呼ばれる技術を使用して、プリプレグ材料の薄型化を図ることが知られている。
【0005】
図11は、ガラス繊維の織布を用いたプリプレグ材料の断面図、図12は、ガラス繊維の織布の一部を示す平面図である。図11に示すプリプレグ材料200は、繊維糸201を縦横方向に交互に編み込んだ平織りの織布に樹脂202を含浸させたものである(図12参照)。一般的にプリプレグ材料に用いられるガラス繊維は、Eガラスと呼ばれるものである。Eガラス繊維の熱膨張率は、約5.5ppm/℃と小さいが、数十ppm/℃の熱膨張率を有するエポキシ樹脂等が含有されることにより、プリント配線板の配線に使用される銅配線と整合の取れた約17ppm/℃程度の熱膨張率となっている。しかしながら、シリコンウエハに近い熱膨張率を得るのは難しい。
【0006】
そこで、更なる改善方法として、ガラス繊維に代えて、約100GPaを超える高弾性率で、かつ、1ppm/℃以下の低熱膨張率のアラミド繊維等の有機繊維やカーボン繊維等の無機繊維に樹脂を含浸したプリプレグ材料を基材に使用することが知られている。尚、有機繊維は絶縁材料であるのに対して、無機繊維は導電性材料である。
【0007】
そこで、このような改善方法を採用したプリント配線板について説明する。図13は、導電性材料の基材を使用したプリント配線板の断面図である。図13に示すプリント配線板100Aは、カーボン繊維等の低熱膨張率の導電性材料を基材101Aに使用している。プリント配線板100Aでは、基材101Aが導電性材料であるため、配線層102A間を接続するスルーホール103Aを基材101Aから電気的に絶縁する構造が必要となる。従って、プリント配線板100Aでは、スルーホール103Aを形成する部分に大きい下孔104Aを形成してエポキシ等の樹脂材料105Aで穴埋めして、基材101Aとスルーホール103Aとの間を樹脂材料105Aで電気的に絶縁する二重構造としている。
【0008】
しかし、ガラス繊維と樹脂材料を組合わせたプリプレグ材料を使用したプリント配線板も同様であるが、ガラス繊維の代わりに、アラミド繊維等の有機繊維又はカーボン繊維等の無機繊維を使用した場合、異なる材料の組合せによる物性の問題は顕著である。図14は、物性の異なる材料の組合わせの関係を示す説明図である。図14において材料の異なる材料Aと材料Bとの配列関係において材料Aと材料Bとの横方向に着目すると、材料Aと材料Bとは直列的に組み合わされたと言える。更に、材料Aと材料Bとの縦方向に着目すると、材料Aと材料Bとは並列的に組み合わされたと言える。例えば、材料Aの長さをLa, 熱膨張率をαa、弾性率をEaとし、材料Bの長さをLb, 熱膨張率をαb、弾性率をEbとする。直列的に組み合わされた場合の熱膨張率α'は、α'=(αa×La+αb×Lb)/(La+Lb)となる。また、並列的に組み合わされた場合の熱膨張率α'は、α'=(αa×Ea×La+αb×Eb+Lb)/(Ea×La+Eb×Lb)となる。
【0009】
その結果、物性が異なる材料A及び材料Bが並べて組み合わされた織布のプリプレグ材料では、縦方向と横方向とで熱膨張率が異なる。この点、不織布に樹脂材料を含浸したプリプレグ材料にも同様なことが言える。
【0010】
所定繊維方向に繊維糸を並べたものに樹脂材料を含浸させた場合、この繊維方向を縦方向とし、その繊維方向に対する直角方向を幅方向とすると、前述した式の通り、縦方向の熱膨張率は並列的に組み合わされた場合の式となる。また、横方向の熱膨張率は直列的に組み合わされた場合の式となる。従って、縦方向の熱膨張率と横方向の熱膨張率とは異なる。
【0011】
また、縦方向の弾性率は並列的に組み合わされた場合となるため、E'=(La+Lb)/(La/Ea+Lb/Eb)となり、横方向の弾性率は直列的に組み合わされた場合となるため、E'=(La×Ea+Lb×Eb)/(La+Lb)となる。従って、縦方向の弾性率と横方向の弾性率とも異なる。
【0012】
しかも、実際には繊維同士が接触し得るため、より複雑に接触部分の接触率等を経験的に求めて、並列式にも直列式の係数等を加えて計算することで縦横方向の熱膨張率及び弾性率を計算する方法が知られている。
【0013】
また、例えば、0度方向の不織布及び90度方向の不織布を2枚用いると、0度の不織布及び90度の不織布で物性が異なるため熱膨張率の差で反りが発生してしまう。そこで、このような事態を解消するために、例えば、0度の不織布+90度の不織布+90度の不織布+0度の不織布の如く、中心から対称性を持たせて配置する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2004−289114号公報
【特許文献2】特開2003−324253号公報
【特許文献3】特開2003−142826号公報
【特許文献4】特開2001−332828号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】植村益次, 山脇弘一; 東京大学宇宙航空研究所報告Vol.4,No.3(B),Oct.(1968)
【非特許文献2】S.W.Tsai; Structural Behavior of Composite Materials, NASA CR-71 (1964)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら、上記プリント配線板では、基材にカーボン繊維等の導電性材料を使用して製造した場合、配線層間を接続するスルーホールを導電性材料から樹脂材料で電気的に絶縁する二重構造としている。従って、スルーホールを形成する部分に大きい下孔を形成しなければならず、この下孔形成によって基材の繊維を細かく寸断した構造となる。
【0017】
しかも、樹脂材料の熱膨張率は基材の熱膨張率よりも格段に高いため、スルーホールの配置に偏りがあると、縦方向の熱膨張率と横方向の熱膨張率とに大きな差が生じる。しかも、低熱膨張の繊維材料を用いた場合には、繊維の寸断に応じて繊維長のバラツキが大きくなり、基材自体の物性が部分的に変化する。その結果、縦横方向の熱膨張差が生じて異方性が生じる。
【0018】
図15は、プリント配線板の一部を示す平面図である。尚、説明の便宜上、図15は、スルーホール部位を白丸で示す。図15に示すプリント配線板の基材201は、繊維方向D1の繊維糸と、繊維方向D1に対して直交する繊維方向D2の繊維糸とを縦横方向に編み込んだ織布を形成する。その基材201の面部には、回路チップの1チップ分に対応したセル202を複数区画する。更に、基材201の面部には、例えば、繊維方向D1に対して0度(又は90度)方向にセル202を周期的に面付けした。各セル202内には、回路チップの各接続端子に対応し、繊維方向D1と直交する繊維方向D2にスルーホール部位203を配列した。
【0019】
図16は、セル202内のスルーホール部位203と繊維方向D1(D2)との関係を示す説明図である。図16に示すセル202内には、基材201の繊維方向D2に対して0度方向(又は90度方向)に所定ピッチで複数のスルーホール部位203が配列してある。その結果、セル202では、スルーホール部位203の配置位置に応じて基材201の繊維が寸断し、セル202内の主要部分、すなわち中央部分に着目しても、繊維長のバラツキが大きい。尚、一般的に異なる繊維長を樹脂材料で含浸したプラスチックの物性は繊維長に応じて異なる。つまり、スルーホール部位203形成の繊維寸断による繊維長のバラツキと、スルーホール部位203形成の下孔の穴埋めに使用する材料特性と基材201の材料特性との相違によって、縦横方向の熱膨張差が生じる。
【0020】
図16に示す横方向(繊維方向D2)の熱膨張率をX、縦方向(繊維方向D1)の熱膨張率をYとして、実際の熱膨張係数をシミュレーションした場合、その熱膨張率の大きさはX<Yとなる。尚、物性計算上、繊維方向D2の熱膨張率Xはスルーホール部位203と繊維部分との並列性が高く、繊維方向D1の熱膨張率Yは直列性が高くなるためである。この際、本織布を用いた基材と同一の熱膨張率、弾性率及びポアソン比を備えた材料があったと仮定し、この材料でスルーホール部位203形成時の下孔を穴埋めした場合の繊維方向D2の熱膨張率をX’、繊維方向D1の熱膨張率をY’とする。この際、X<X’<Y’<Yの関係が成立する。
【0021】
つまり、スルーホール部位203の形成によって繊維長のバラツキが大きくなると、熱膨張の異方性が表れる。しかも、スルーホール部位203の形成による下孔の穴埋めに基材と同一材料を使用せず、樹脂材料を使用する場合、熱膨張の異方性は顕著となる。
【0022】
1つの側面では、異方性を最小限に抑制するプリント配線板、プリント配線板の製造方法及び電子機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0023】
本願の開示するプリント配線板は、一つの態様において、所定繊維方向に配向した繊維材料で形成する基材と、前記基材の面部上に搭載する回路チップの外形に対応し、前記基材の面部上に周期的に複数区画されたセルと、前記回路チップの接続端子に対応し、前記セル内に形成した複数の貫通孔とを有する。そして、前記所定繊維方向に対して斜め方向に前記基材上で前記セルを面付けした。
【発明の効果】
【0024】
異方性を最小限に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】図1は、実施例1のプリント配線板の一部を示す平面図である。
【図2】図2は、実施例2のプリント配線板の断面図である。
【図3】図3は、実施例2のプリント配線板で使用する基材の面部の外形を示す平面図である。
【図4】図4は、実施例2のプリント配線板の一部を示す平面図である。
【図5】図5は、実施例2のセル内のスルーホール部位と繊維方向との関係を示す説明図である。
【図6】図6は、実施例2のプリント配線板の製造工程を示す説明図である。
【図7】図7は、6層プリント配線板の断面図である。
【図8】図8は、ビルドアップ配線板の断面図である。
【図9】図9は、ビルドアップ配線板の断面図である。
【図10】図10は、他の実施例のセル内のスルーホール部位と繊維方向との関係を示す説明図である。
【図11】図11は、ガラス繊維の織布を用いたプリプレグ材料の断面図である。
【図12】図12は、ガラス繊維の織布の一部を示す平面図である。
【図13】図13は、導電性材料の基材を使用したプリント配線板の断面図である。
【図14】図14は、物性の異なる材料の組合わせの関係を示す説明図である。
【図15】図15は、プリント配線板の一部を示す平面図である。
【図16】図16は、セル内のスルーホール部位と繊維方向との関係を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面に基づいて、本願の開示するプリント配線板、プリント配線板の製造方法及び電子機器の実施例を詳細に説明する。尚、本実施例により、開示技術が限定されるものではない。
【実施例1】
【0027】
図1は、実施例1のプリント配線板の一部を示す平面図である。図1に示すプリント配線板1は、基材2と、セル3と、貫通孔4とを有する。基材2は、所定繊維方向D1(D2)に配向した繊維材料で形成する。セル3は、基材2の面部上に搭載する回路チップの外形に対応し、基材2の面部上に周期的に複数区画される。貫通孔4は、回路チップの各接続端子に対応し、セル3内に複数形成する。そして、プリント配線板1は、所定繊維方向D1(D2)に対して、例えば45度の所定斜め方向に基材2上でセル3を面付けした。
【0028】
実施例1では、基材2の所定繊維方向D1(D2)に対して、例えば45度の所定斜め方向に基材2上でセル3を面付けしたので、セル3内の主要部分の貫通孔4間の繊維長のバラツキが小さくなるため、その繊維長バラツキによる異方性を最小限に抑制できる。
【実施例2】
【0029】
図2は、実施例2のプリント配線板の断面図である。図2に示すプリント配線板10は、基材12と、基材12の表面及び裏面に積層した配線層13と、配線層13上に形成した配線パターン14とを有する。更に、基材12の面部12Aには、スルーホール部位15を有する。スルーホール部位15は、基材12の面部12Aを表裏に貫通するスルーホール15Aを備え、基材12と異なる熱膨張率の樹脂材料等の絶縁材料16Bを使用した部位である。
【0030】
図3は、実施例2のプリント配線板10で使用する基材12の面部12Aの外形を示す平面図、図4は、実施例2のプリント配線板10の一部を示す平面図である。尚、説明の便宜上、図4では、スルーホール部位15を白丸で示す。図3に示す基材12の面部12Aは、製品部分31と、製品外部分32とを有し、製品部分31は、複数の所定区画のセル20が区画してある。
【0031】
図4に示すプリント配線板10の基材12は、繊維方向D1の繊維糸と、繊維方向D1に対して直交する繊維方向D2の繊維糸とを縦横方向に編み込んだ織布のプリプレグ材料で形成する。その基材12の面部12Aには、回路チップの1チップ分に対応したセル20が複数区画される。更に、基材12の面部12Aには、例えば、繊維方向D1に対して45度斜め方向にセル20を面付けした。各セル20内には、回路チップの各接続端子に対応し、繊維方向D1に対して45度斜め方向にスルーホール部位15を配列した。
【0032】
図5は、セル20内のスルーホール部位15と繊維方向D1(D2)との関係を示す説明図である。セル20内には、繊維方向D1に対して45度斜め方向にスルーホール部位15が配列してある。セル20内のスルーホール部位15は、例えば、9個のスルーホール部位15を含む第1スルーホール群51と、第1スルーホール群51に対向して配列し、例えば、9個のスルーホール部位15を含む第2スルーホール群52とを有する。尚、セル20内の主要部分は、第1スルーホール群51内のスルーホール部位51A〜51Dと、第2スルーホール群52内のスルーホール部位52A〜52Dとで構成する。その結果、繊維方向D1に対して45度斜め方向にスルーホール部位15Aを配列したので、第1スルーホール群51及び第2スルーホール群52の主要部分の関係は次のようになる。
【0033】
繊維方向D1の直線上のスルーホール部位51Cとスルーホール部位52Aとの間の繊維長L1と、スルーホール部位51Dとスルーホール部位52Bとの間の繊維長L2とが同一長の関係となる。更に、繊維方向D1に対して直交する繊維方向D2の直線上のスルーホール部位51Bとスルーホール部位52Dとの間の繊維長L3と、スルーホール部位51Aとスルーホール部位52Cとの間の繊維長L4とが同一長の関係となる。しかも、繊維方向D1の繊維長L1,L2と、繊維方向D2の繊維長L3,L4とは同一長の関係となる。つまり、主要部分の繊維長のバラツキが小さくなる。
【0034】
次に、プリント配線板10の製造工程について説明する。図6は、実施例2のプリント配線板10の製造工程を示す説明図である。先ず、レイアウト設計工程では、基材12の面部12Aにセル20を複数区画する際、基材12の繊維方向D1に対して45度斜め方向に面付けするように配置するレイアウト構成を設計する。つまり、各セル20内の第1スルーホール群51及び第2スルーホール群52が繊維方向D1に対して45度斜め方向に配列するレイアウト構成となる。更に、各セル20内の第1スルーホール群51及び第2スルーホール群52の主要部内の繊維方向D1の繊維長L1,L2と繊維方向D2の繊維長L3,L4とが同一長の関係となるように第1スルーホール群51及び第2スルーホール群52を配列するレイアウト構成を設計する。
【0035】
そして、基材形成工程(ステップS11)では、基材12を形成する複数のプリプレグ材料12Bを積層し、これら積層したプリプレグ材料12Bを熱プレスして基材12を形成する。尚、プリプレグ材料12Bとしては、カーボン繊維の織布に樹脂を含浸してBステージ化した材料である。そのカーボン繊維の織布は、繊維方向D1の繊維糸に繊維方向D2の繊維糸を縦横方向に編み込んだ平織り布である。カーボン繊維は、例えば、熱膨張率が約0ppm/℃、弾性率が約370GPaの繊維を使用する。更に、このカーボン繊維は、FR4等で使用する樹脂を塗工しても、硬化後の低熱膨張基材(CFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastic))の物性値で熱膨張率が約0ppm/℃、弾性率が約80GPaの特性が得られる。
【0036】
次に、下孔形成工程(ステップS12)では、レイアウト設計工程で設計したレイアウト構成に基づき、スルーホール部位15の配置位置に応じて基材12の面部12Aをドリルで穿孔して下孔16Aを形成する。つまり、下孔形成工程では、面部12A上に繊維方向D1に対して45度斜め方向に下孔16Aが配列されたことになる。尚、下孔16Aの直径は、例えば、Φ0.8mmとする。更に、下孔16A形成時のカーボンの切粉による樹脂の汚染を防止する目的で下孔16Aの内周壁面に25μmの銅メッキを施すものとする。
【0037】
次に、絶縁部分形成工程(ステップS13)では、基材12の面部12Aに形成した下孔16Aに穴埋め用の絶縁材料16Bを充填する。尚、穴埋め用の絶縁材料16Bは、例えば、その熱膨張率を低下させる目的でシリカフィラーを混合した熱膨張率が約33ppm/℃、弾性率が4.7GPaの樹脂を使用する。更に、基材12の面部21Aから漏れ出た絶縁材料16Bの部分を研削して面部12Aを平坦化する。
【0038】
更に、銅箔積層工程(ステップS14)では、絶縁部分16を形成した基材2の表裏面にFR4のプリプレグ材料17を使用して銅箔18を積層する。尚、プリプレグ材料17は、カーボン繊維の露出を防止するためにガラス繊維入りのプリプレグ材料とする。
【0039】
更に、スルーホール形成工程(ステップS15)では、レイアウト構成に基づき、スルーホール部位15の配置位置に対応した絶縁材料16Bを充填した部分を表裏にドリルで穿孔してスルーホール15Aを形成する。
【0040】
更に、スルーホールメッキ形成工程(ステップS16)では、形成されたスルーホール15Aの内周壁面に、熱膨張率が約17ppm/℃の銅メッキ15Bを施してセル20内にスルーホール部位15を形成する。尚、スルーホール部位15は、基材12の表裏を電気的に接続する。そして、面部12A上には、繊維方向D1に対して45度斜め方向に下孔16Aが配列したことになる。
【0041】
更に、配線パターン形成工程(ステップS17)では、スルーホール15Aの内周壁面に銅メッキ15Bを施した後、銅箔18上にドライフィルムレジストを形成する。更に、配線パターン形成工程(ステップS17)では、基材12の面部12A上の銅箔18をエッチングすることで面部12A上に配線パターン14を形成する。その結果、約3〜7ppm/℃の熱膨張率を有する両面タイプのプリント配線板10を得た。
【0042】
そこで、基材12の製品部分31を試作し、通常通り、繊維方向D1に0度又は90度方向にセル20を面付けし(図15参照)、基材12の繊維方向D2(横方向)の熱膨張率をX、基材12の繊維方向D1(縦方向)の熱膨張率をYとする。この場合、繊維方向D2(横方向)の熱膨張率×=6.3ppm/℃、繊維方向D1(縦方向)Y=7.0ppm/℃となる。その結果、縦横方向の熱膨張率の差はΔ0.7ppm/℃となる。これに対して、実施例で説明した通り、繊維方向D1に45度斜め方向にセル20を面付けし(図4参照)、基材12の繊維方向D2(横方向)の熱膨張率を×、基材12の繊維方向D1(縦方向)の熱膨張率をYとする。この場合、繊維方向D2(横方向)の熱膨張率×=6.8ppm/℃、繊維方向D1(縦方向)の熱膨張率Y=7.2ppm/℃となる。その結果、縦横方向の熱膨張率の差はΔ0.4ppm/℃となる。
【0043】
つまり、本発明を採用することで、セル20内の縦横方向の熱膨張率の差分を抑制できることが判明した。尚、配置精度を高めることでセル20内の縦横方向の熱膨張率の差をほぼ“0”に近づけることが可能である。
【0044】
実施例2では、基材2の繊維方向D1(又は繊維方向D2)に対して45度斜め方向にセル20を基材12上に面付けしたので、セル20内の主要部分の繊維方向D1の繊維長L1,L2と主要部分の繊維方向D2の繊維長L3,L4とが同一となる。その結果、セル20内の主要部の繊維長のバラツキを小さくし、その繊維長のバラツキによる異方性を最小限に抑制できる。
【0045】
また、実施例2では、基材12にカーボン繊維の導電性材料を使用し、スルーホール部位15及び基材12間を樹脂材料で電気的に絶縁する二重構造としているため、繊維長バラツキによる材料相違による熱膨張差への影響が大である。しかしながら、実施例2では、繊維長バラツキを小さくするため、材料相違による熱膨張差への影響を最小限に抑制できる。
【0046】
尚、上記実施例では、基材2の繊維方向D1に対して45度斜め方向に複数のセル20を面付けしたが、繊維方向D2に対して45度斜め方向にセル20を面付けするようにしても良い。
【0047】
また、上記実施例では、繊維方向D1に対して45度斜め方向に複数のセル20を面付けしたが、45度に限定されるものではなく、例えば、45度±10度の範囲内であれば良い。
【0048】
尚、上記実施例では、図2に示す通り、両面タイプのプリント配線板10を例に挙げて説明したが、多層タイプのプリント配線板にも適用可能である。図7は、6層プリント配線板の断面図である。尚、図2に示すプリント配線板10と同一のものには同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図7に示す6層プリント配線板10Aは、両面タイプのプリント配線板10の表裏に積層した配線パターン14の銅箔上に、回路を形成した両面銅張板19を挟み込んでプリプレグ材料で積層することで6層構造とした。つまり、6層プリント配線板10Aにも本実施例を適用できる。
【0049】
図8は、ビルドアップ配線板の断面図である。尚、図2に示すプリント配線板10と同一のものには同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図8に示すビルドアップ配線板10Bは、両面タイプのプリント配線板10に形成したスルーホール15A内に穴埋め用の絶縁材料41を充填して蓋メッキ42をした後、その配線パターン14上にビルドアップ配線層43を積層する構造とした。つまり、ビルドアップ配線板10Bにも本実施例を適用できる。
【0050】
図9は、ビルドアップ配線板の断面図である。尚、図2に示すプリント配線板10と同一のものには同一符号を付すことで、その重複する構成及び動作の説明については省略する。図9に示すビルドアップ配線板10Cは、両面タイプのプリント配線板10に形成したスルーホール15A内に穴埋め用の絶縁材料41を充填した後、その配線パターン14上にビルドアップ配線層43を積層配置する構造とした。つまり、ビルドアップ配線板10Cにも本実施例を適用できる。
【0051】
尚、図2、図7乃至図9のプリント配線板10の基材12にカーボン繊維等の導電性材料を使用した例について説明した。しかしながら、基材12としてアラミド繊維、ポリ−Pベンゾビスオキサゾール又は芳香族ポリエステル繊維の絶縁材料の有機繊維の織布若しくは不織布を熱膨張の制御材料として使用したプリプレグ材料で形成しても良い。この場合、基材12が絶縁材料となるため、スルーホール15Aと基材12との間を電気的に絶縁する絶縁材料16Bが必要ない構造となる。
【0052】
また、上記実施例2では、繊維方向D1を基準とし、図10に示すように、その基準の繊維方向D1に対して45度に繊維方向を変えた繊維方向D11の繊維糸と、繊維方向D11に対して直交する繊維方向D12の繊維糸とを編み込んだプリプレグ材をラミネート法で作成する。このプリプレグ材料を使用して、実施例2の基材12に比較して繊維方向を45度変えた基材12Bを形成する。その基材12Bの面部に通常の繊維方向D1に対して0度又は90度方向、すなわち通常配置でセル20を面付けしても良い。この場合、セル20の通常配置の面付け方向を変更しなくても、基材12の繊維方向D11に対して45度斜め方向にセル20を面付けできる。そして、セル20内の主要部分の繊維方向D11の繊維長L5,L6と、主要部分の繊維方向D12の繊維長L7,L8とが同一となる。その結果、主要部分の繊維方向D11の繊維長及び繊維方向D12の繊維長のバラツキを小さくして、その繊維長のバラツキによる異方性を最小限に抑制できる。
【0053】
また、上記実施例では、大きめのプリプレグ材料から45度方向でワークサイズ用のプリプレグ材料を切り出し、このプリプレグ材料の基材に通常配置の面付けを行うようにしても良い。
【0054】
上記実施例では、プリント配線板を例に挙げて説明したが、プリント配線板を試験するプロブカードに適用しても良い。
【0055】
また、上記実施例では、プリント配線板を製造する材料の熱膨張率、弾性率や寸法等の数値を具体的に明記したが、これら明記した数値は本願発明の一例に過ぎず、これら数値によって本願発明の技術的思想が限定されてしまうようなことは到底ない。
【符号の説明】
【0056】
1 プリント配線板
2 基材
2A 面部
3 セル
4 貫通孔
12 基材
12A 面部
16A 下孔
16B 絶縁材料
10 プリント配線板
15 スルーホール部位
15A スルーホール
20 セル
D1 繊維方向
D2 繊維方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定繊維方向に配向した繊維材料で形成する基材と、
前記基材の面部上に搭載する回路チップの外形に対応し、前記基材の面部上に周期的に複数区画されたセルと、
前記回路チップの接続端子に対応し、前記セル内に形成した複数の貫通孔とを有し、
前記所定繊維方向に対して斜め方向に前記基材上で前記セルを面付けすることを特徴とするプリント配線板。
【請求項2】
前記斜め方向は、前記所定繊維方向に対して略45度斜め方向であることを特徴とする請求項1記載のプリント配線板。
【請求項3】
前記基材は、
カーボン繊維の無機繊維を熱膨張の制御材料として使用した導電性のプリプレグ材料で形成し、
当該導電性の基材と前記貫通孔との間に絶縁樹脂を充填することで、前記基材と前記貫通孔との電気的接続を絶縁することを特徴とする請求項1又は2に記載のプリント配線板。
【請求項4】
前記基材は、
アラミド繊維、ポリ−Pベンゾビスオキサゾール又は芳香族ポリエステル繊維の有機繊維を熱膨張の制御材料として使用したプリプレグ材料で形成することを特徴とする請求項1又は2に記載のプリント配線板。
【請求項5】
前記基材の面部に形成した前記貫通孔を絶縁樹脂で充填した後、当該貫通孔の内周壁面と電気的に接続するビルドアップ配線層を前記基材の面部上に配置したことを特徴とする請求項1〜4の何れか一つに記載のプリント配線板。
【請求項6】
所定繊維方向に配向した繊維材料で基材を形成する基材形成工程と、
前記基材形成工程にて形成された前記基材の面部上に搭載する回路チップの外形に対応し、前記基材の面部上に周期的に複数区画されたセル内に、前記回路チップの接続端子に対応した複数の貫通孔を形成する貫通孔形成工程と、
前記所定繊維方向に対して斜め方向に前記基材上で前記セルを面付けする面付け工程と
を含むことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項7】
所定繊維方向に配向した繊維材料で形成する基材と、前記基材の面部上に搭載する回路チップの外形に対応し、前記基材の面部上に複数区画されたセルと、前記回路チップの接続端子に対応し、前記セル内に形成した複数の貫通孔とを有し、前記所定繊維方向に対して斜め方向に前記基材上で前記セルを面付けしたプリント配線板を内部に搭載したことを特徴とする電子機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−94563(P2012−94563A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237990(P2010−237990)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】