プリント配線板の製造方法及びこれに用いる打抜き加工用金型
【課題】開口部周辺におけるクラック発生を防ぐと共に、生産効率に優れたプリント配線板の製造方法、及びこれに用いる打抜き加工用金型を提供すること。
【解決手段】ダイ23とストリッパ21とパンチ22とを有する打抜き加工用金型2を用いて開口部11を形成するプリント配線板の製造方法。ダイ23は分割ダイ230を組合わせてなると共に分割ダイ230の間に下方孔231を形成してなる。ストリッパ21はスライド孔211の周囲においてプリント配線板1を局部的に押さえ付ける突出押え部212を突出形成してなる。パンチ22は、先端外周部223がその内側部分よりも先端側へ突出した形状を有している。プリント配線板1をダイ23の上に載置し、突出押え部212によって押さえ付けた後、パンチ22をスライド孔211から下方孔231へ向かってスライドさせることにより、プリント配線板1に開口部11を形成する。
【解決手段】ダイ23とストリッパ21とパンチ22とを有する打抜き加工用金型2を用いて開口部11を形成するプリント配線板の製造方法。ダイ23は分割ダイ230を組合わせてなると共に分割ダイ230の間に下方孔231を形成してなる。ストリッパ21はスライド孔211の周囲においてプリント配線板1を局部的に押さえ付ける突出押え部212を突出形成してなる。パンチ22は、先端外周部223がその内側部分よりも先端側へ突出した形状を有している。プリント配線板1をダイ23の上に載置し、突出押え部212によって押さえ付けた後、パンチ22をスライド孔211から下方孔231へ向かってスライドさせることにより、プリント配線板1に開口部11を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部を形成してなると共に表面に導体配線を設けてなるプリント配線板を製造する方法、及びこれに用いる打抜き加工用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、BOC(Board On Chip)基板、COB(Chip On Board)基板、或いはICパッケージなど、開口部を形成してなると共に該開口部の周囲における表面に導体配線を設けてなるプリント配線板がある(特許文献1参照)。かかるプリント配線板の開口部を形成するに当っては、打抜き加工用金型を用いてプリント配線板を所望の開口部の大きさよりも若干小さい輪郭にて打ち抜いた後に、ルーター加工によって開口部の大きさを所望の大きさに拡げるといった方法を採る。その後、ルーター加工の際に発生した導体配線のバリを除去する。
【0003】
しかしながら、上記従来の製造方法においては、以下の問題がある。
即ち、上記製造方法によれば、打抜き加工とルーター加工とを行う必要があり、工数が多くなるという問題がある。更には、ルーター加工を行うと、ルーター加工の際に発生した導体配線のバリを除去する工程を行う必要もある。その結果、製造コストの低減、生産効率の向上が困難となるおそれがある。
【0004】
一方、単に、上記打ち抜き加工によって、一度に所望の大きさの開口部を形成しようとすると、プリント配線板にクラックが発生するおそれがある。即ち、打ち抜き加工に当たっては、プリント配線板を押さえ付けるストリッパと該ストリッパの内側において上記プリント配線板を打ち抜くパンチとを有する打抜き加工用金型(図7、図8参照)を用いる。そして、ストリッパをプリント配線板の表面に当接させた状態で、パンチをスライドさせる。
【0005】
このとき、ストリッパの押圧力によってプリント配線板にクラック(白化)が生じるおそれがある。また、プリント配線板にパンチが当たる衝撃で、部分的に大きな応力が働き、この部分にクラック(白化)が生じるおそれがある。このクラックの発生領域(白化領域)が大きくなると、プリント配線板の絶縁性の低下等の不具合を招くおそれがある。
【0006】
【特許文献1】特開平11−284347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、開口部周辺におけるクラック発生を防ぐと共に、生産効率に優れたプリント配線板の製造方法、及びこれに用いる打抜き加工用金型を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、開口部を形成してなると共に表面に導体配線を設けてなるプリント配線板を製造するに当たり、該プリント配線板を載置すると共に上記開口部に対応する下方孔を有するダイと、上記プリント配線板を押さえ付けるストリッパと、上記プリント配線板を打ち抜くパンチとを有する打抜き加工用金型を用いて上記開口部を形成する、プリント配線板の製造方法であって、
上記ダイは、複数に分割された分割ダイを組合わせてなると共に、該複数の分割ダイの間に上記下方孔を形成してなり、
上記ストリッパは、上記パンチを挿通するスライド孔の周囲において、上記プリント配線板を局部的に押さえ付ける突出押え部を突出形成してなり、
上記パンチは、先端外周部がその内側部分よりも先端側へ突出した形状を有しており、
上記プリント配線板をダイの上に載置し、上記ストリッパの上記突出押え部によって上記プリント配線板を押さえ付けた後、上記パンチを上記ストリッパの上記スライド孔から上記ダイの下方孔へ向かってスライドさせることにより、上記プリント配線板に上記開口部を形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法にある(請求項1)。
【0009】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記プリント配線板の製造方法において用いる打抜き加工用金型のダイは、複数に分割された分割ダイを組合わせてなると共に、該複数の分割ダイの間に上記下方孔を形成してなる。そのため、下方孔の内壁面を容易に平滑化することができる。即ち、仮にダイが一体品である場合に下方孔の内壁面を研磨等することは困難であるが、本発明のように分割ダイを用いることにより、組合せ前に、下方孔の内壁面を研磨等することが容易となり、平滑化を容易に行うことができる。
その結果、プリント配線板を打抜かれた打抜き片を円滑に下方孔に通すことができる。それ故、打抜き時において、プリント配線板の開口部の周囲に局部的な負荷がかかることを防ぐことができ、クラックの発生を抑制することができる。
【0010】
また、上記ストリッパは上記突出押え部を突出形成してなるため、プリント配線板を、開口部を形成する部分の周囲において、局部的に押さえ付けることができる。そのため、上記ストリッパによって押さえ付ける部分を小さくすることができる。その結果、ストリッパの押圧力に起因するクラックの発生領域(白化領域)を極力小さくすることができる。
【0011】
また、上記パンチは、先端外周部がその内側部分よりも先端側へ突出した形状を有している。そのため、パンチがプリント配線板を打抜く際、パンチは、先端外周部において局部的にプリント配線板に当たることとなる。それ故、パンチがプリント配線板に当たる際の衝撃を小さくすることができる。その結果、プリント配線板におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0012】
また、上記のごとく、プリント配線板にクラックを生じさせることなく開口部を形成することができるため、開口部の形成に当って、例えば打抜き加工とルーター加工との双方を行う必要がなく、工数を少なくすることができる。更に、ルーター加工を行う必要がないため、ルーター加工の際に発生する導体配線のバリを除去する工程を行う必要もない。その結果、製造コストの低減、生産効率の向上を図ることができる。
【0013】
以上のごとく、本発明によれば、開口部周辺におけるクラック発生を防ぐと共に、生産効率に優れたプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【0014】
第2の発明は、表面に導体配線を設けてなるプリント配線板を打ち抜いて開口部を形成するための打抜き加工用金型であって、
上記プリント配線板を載置すると共に上記開口部に対応する下方孔を有するダイと、上記プリント配線板を押さえ付けるストリッパと、上記プリント配線板を打ち抜くパンチとを有し、
上記ダイは、複数に分割された分割ダイを組合わせてなると共に、該複数の分割ダイの間に上記下方孔を形成してなり、
上記ストリッパは、上記パンチを挿通するスライド孔の周囲において、上記プリント配線板を局部的に押さえ付ける突出押え部を突出形成してなり、
上記パンチは、先端外周部がその内側部分よりも先端側へ突出した形状を有していることを特徴とするプリント配線板の打抜き加工用金型にある(請求項6)。
【0015】
上記打抜き加工用金型のダイは、複数に分割された分割ダイを組合わせてなると共に、該複数の分割ダイの間に上記下方孔を形成してなる。そのため、下方孔の内壁面を容易に平滑化することができる。その結果、プリント配線板を打抜かれた打抜き片を円滑に下方孔に通すことができる。それ故、打抜き時において、プリント配線板の開口部の周囲に局部的な負荷がかかることを防ぐことができ、クラックの発生を抑制することができる。
【0016】
また、上記ストリッパは上記突出押え部を突出形成してなるため、プリント配線板を、開口部を形成する部分の周囲において、局部的に押さえ付けることができる。そのため、上記ストリッパによって押さえ付ける部分を小さくすることができる。その結果、ストリッパの押圧力に起因するクラックの発生領域(白化領域)を極力小さくすることができる。
【0017】
また、上記パンチは、先端外周部がその内側部分よりも先端側へ突出した形状を有している。そのため、パンチがプリント配線板を打抜く際、パンチは、先端外周部において局部的にプリント配線板に当たることとなる。それ故、パンチがプリント配線板に当たる際の衝撃を小さくすることができ、プリント配線板におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0018】
また、本発明の打抜き加工用金型を用いることにより、開口部の形成に当って、例えば打抜き加工とルーター加工との双方を行う必要もなく、工数を少なくすることができる。更に、ルーター加工の際に発生する導体配線のバリを除去する工程を行う必要もない。その結果、製造コストの低減、生産効率の向上を図ることができる。
【0019】
以上のごとく、本発明によれば、開口部周辺におけるクラック発生を防ぐと共に、生産効率に優れたプリント配線板の打抜き加工用金型を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
上記第1の発明(請求項1)及び上記第2の発明(請求項6)において、上記プリント配線板は、例えばBOC(Board On Chip)基板、COB(Chip On Board)基板、或いはICパッケージ等の半導体搭載用のプリント配線板とすることができ、上記開口部は、例えば半導体搭載部とすることができる。また、上記開口部の周囲に配設された上記導体配線は、例えばボンディングパッドとすることができる。
また、上記ダイは、2個の分割ダイを組合わせてなるものであってもよいし、3個以上の分割ダイを組合わせてなるものであってもよい。
【0021】
また、上記ストリッパの上記突出押え部は、30〜70μmの幅を有することが好ましい(請求項2、請求項7)。
この場合には、ストリッパによってプリント配線板を押さえ付けることによるクラック(白化)の発生領域を充分に小さくすることができると共に、開口部の形成を精度よく行うことができる。
上記突出押え部の幅が30μm未満の場合には、開口部の形成を精度よく行うことが困難となるおそれがある。一方、上記突出押え部の幅が70μmを超える場合には、クラック(白化)発生領域を充分に狭い範囲に抑えることが困難となるおそれがある。
【0022】
また、上記ストリッパの上記突出押え部は、40〜100μmの突出高さを有することが好ましい(請求項3、請求項8)。
この場合には、容易かつ正確に、上記突出押え部によって局部的にプリント配線板を押さえ付けることができる。
上記突出押え部の突出高さが40μm未満の場合には、プリント配線板の局部的な押さえつけが困難となるおそれがある。一方、上記突出押え部の突出高さが100μmを超える場合には、基材部分を押し込みすぎてプリント配線板の破壊を招くおそれがある。
【0023】
上記第1の発明(請求項1)において、上記プリント配線板は、0.5mm以下の厚みを有することが好ましい(請求項4)。
この場合には、開口部周辺におけるクラック発生を防ぎつつ、開口部の形成を行うことができる。
上記厚みが0.5mmを超える場合には、開口部周辺におけるクラック発生を充分に防ぐことが困難となるおそれがある。
【0024】
また、上記開口部の形成と共に、上記プリント配線板の外形加工を行うことが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記外形加工を開口部の形成と同時に打抜き加工によって行うことができる。そのため、一層生産効率に優れたプリント配線板の製造方法を得ることができる。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるプリント配線板の製造方法及びこれに用いる打抜き加工用金型につき、図1〜図5を用いて説明する。
本例のプリント配線板の製造方法は、図3に示すごとく、開口部11を形成してなると共に表面に導体配線12を設けてなるプリント配線板1を製造する方法である。そして、図1、図2に示すごとく、プリント配線板1を載置すると共に上記開口部11に対応する下方孔231を有するダイ23と、プリント配線板1を押さえ付けるストリッパ21と、プリント配線板1を打ち抜くパンチ22とを有する打抜き加工用金型2を用いて、上記開口部11を形成する。
【0026】
図4に示すごとく、ダイ23は、複数に分割された分割ダイ230を組合わせてなると共に、該複数の分割ダイ230の間に上記下方孔231を形成してなる。
図1、図2に示すごとく、ストリッパ21は、パンチ22を挿通するスライド孔211の周囲において、プリント配線板1を局部的に押さえ付ける突出押え部212を突出形成してなる。ストリッパ21の突出押え部212は、30〜70μmの幅wを有し、40〜100μmの突出高さhを有する。
また、パンチ22は、先端外周部223がその内側部分よりも先端側へ突出した形状を有している。また、パンチ2の幅tは、プリント配線板1に形成する開口部11の幅と同等であり、約0.6mmである。
【0027】
このような打抜き加工用金型2を用いて、プリント配線板1に開口部11を形成するに当っては、まず、図1に示すごとく、プリント配線板1をダイ23の上に載置し、ストリッパ21の突出押え部212によってプリント配線板1を押さえ付ける。その後、図2に示すごとく、パンチ22をストリッパ21のスライド孔211からダイ23の下方孔231へ向かってスライドさせる。これにより、プリント配線板1に開口部11を形成する。
【0028】
上記プリント配線板1は、BOC(Board On Chip)基板であって、上記開口部11は半導体搭載部である。また、図3に示すごとく、開口部11の周囲に配設された導体配線12は、ボンディングパッドである。また、プリント配線板1は、複数の開口部11を有している。
【0029】
また、図1、図2に示すごとく、上記パンチ22の先端外周部223は、断面鋭角状に形成されている。そして、パンチの先端面221は、断面略V字状に形成されている。
また、ダイ23は、図4に示すごとく、2つの分割ダイ230を以下のようにして組合わせることにより構成されている。即ち、ダイ23を構成する2つの分割ダイ230は、図5に示すごとく、互いの接合面に溝部232を形成してなる。溝部232は、ワイヤーカットや放電加工等によって形成した後、その加工面を研磨処理してなる。その後、互いの溝部232を対向させるようにして2つの分割ダイ23を重ね合わせることにより、図4に示すごとく、下方孔231を有するダイ23を形成する。
【0030】
以下に、本例のプリント配線板の製造方法につき、具体的に説明する。
導体配線12を樹脂基板10の表面に設けたプリント配線板1を用意する。導体配線12は、例えば、Cu、Ni、Auのメッキにより形成される。また、導体配線12の一部がボンディングパッドとなる。導体配線12の厚みは、約20μm程度である。また、上記プリント配線板1の厚みは約0.2mmである。
【0031】
そして、図1、図2に示すごとく、上記打抜き加工用金型2を用いて開口部11を形成する。打抜き加工用金型2におけるパンチ22は、形成しようとする開口部11の形状に沿った断面形状を有する。ストリッパ21は、パンチ22をスライド可能に保持するスライド孔211を有すると共に、該スライド孔211の周囲の先端部に、突出押え部212を有する。
また、打抜き加工用金型2は、プリント配線板1を載置するダイ23を有し、該ダイ23には、パンチ22及びパンチ22によって打抜かれた打抜き片19を通す下方孔231を有する。
【0032】
図1に示すごとく、ダイ23の上にプリント配線板1を載置し、プリント配線板1の表面にストリッパ21の突出押え部212を当接し、プリント配線板1を押さえ付けて保持する。
次いで、図2に示すごとく、上記パンチ22を下方へスライドさせることにより、プリント配線板1の一部を打抜く。これにより、開口部11を形成する。
【0033】
また、上記開口部11の形成と共に、上記プリント配線板1の外形加工を行う。即ち、外形加工を開口部11の形成と同時に打抜き加工によって行う。
次いで、プリント配線板1を打抜き加工用金型2から取り外す。
【0034】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記プリント配線板の製造方法において用いる打抜き加工用金型2のダイ23は、複数に分割された分割ダイ230を組合わせてなると共に、該複数の分割ダイ12の間に上記下方孔231を形成してなる。そのため、下方孔231の内壁面を容易に平滑化することができる。即ち、仮にダイ23が一体品である場合に下方孔231の内壁面を研磨等することは困難であるが、本発明のように分割ダイ230を用いることにより、上述のごとく、組合せ前に、下方孔231の内壁面(図5に示す溝部232の表面)を研磨等することが容易となり、平滑化を容易に行うことができる。
【0035】
その結果、図2に示すごとく、プリント配線板1を打抜かれた打抜き片19を円滑に下方孔231に通すことができる。それ故、打抜き時において、プリント配線板1の開口部11の周囲に局部的な負荷がかかることを防ぐことができ、クラックの発生を抑制することができる。
【0036】
また、ストリッパ21は突出押え部212を突出形成してなるため、プリント配線板1を、開口部11を形成する部分の周囲において、局部的に押さえ付けることができる。そのため、ストリッパ21によって押さえ付ける部分を小さくすることができる。その結果、ストリッパ21の押圧力に起因するクラックの発生領域(白化領域)を極力小さくすることができる。
【0037】
また、パンチ22は、先端外周部223がその内側部分よりも先端側へ突出した形状を有している。そのため、パンチ22がプリント配線板1を打抜く際、パンチ22は、先端外周部223において局部的にプリント配線板1に当たることとなる。それ故、パンチ22がプリント配線板1に当たる際の衝撃を小さくすることができる。その結果、プリント配線板1におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0038】
また、上記のごとく、プリント配線板1にクラックを生じさせることなく開口部11を形成することができるため、開口部11の形成に当って、例えば打抜き加工とルーター加工との双方を行う必要がなく、工数を少なくすることができる。更に、ルーター加工を行う必要がないため、ルーター加工の際に発生する導体配線12のバリを除去する工程を行う必要もない。その結果、製造コストの低減、生産効率の向上を図ることができる。
【0039】
また、ストリッパ21の突出押え部212は、30〜70μmの幅wを有するため、ストリッパ21によってプリント配線板1を押さえ付けることによるクラック(白化)の発生領域を充分に小さくすることができると共に、開口部11の形成を精度よく行うことができる。
また、突出押え部212は、40〜100μmの突出高さhを有するため、容易かつ正確に、突出押え部212によって局部的にプリント配線板1を押さえ付けることができる。
【0040】
また、プリント配線板1は、0.5mm以下の厚みであるため、開口部11周辺におけるクラック発生を防ぎつつ、開口部11の形成を行うことができる。
また、開口部11の形成と共に、プリント配線板1の外形加工を行うことにより、外形加工を開口部11の形成と同時に打抜き加工によって行うことができる。そのため、一層生産効率に優れたプリント配線板1の製造方法を得ることができる。
【0041】
以上のごとく、本例によれば、開口部周辺におけるクラック発生を防ぐと共に、生産効率に優れたプリント配線板の製造方法、及びこれに用いる打抜き加工用金型を提供することができる。
【0042】
(実施例2)
本例は、図6に示すごとく、パンチ22の先端面221の形状を断面略円弧状に形成した打抜き加工用金型2及びこれを用いたプリント配線板の製造方法の例である。
即ち、パンチ22の先端面221は、先端外周部223からその内側へ向かって円弧状に後退してなる。
その他は、実施例1と同様であり、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0043】
(比較例)
本例は、図7、図8に示すごとく、パンチ92の先端面921を平坦面とし、ストリッパ91に突出押え部(図1の符号212参照)を突出形成せず、ダイ93を一体品によって構成した打抜き加工用金型9、及びこれを用いたプリント配線板の製造方法の例である。
【0044】
パンチ92は、平坦な先端面921を有するため、図8に示すごとく、プリント配線板1を打抜く際には、先端面921の全体で面接触することとなる。
また、ストリッパ91は、突出押え部(図1の符号212参照)を突出形成していないため、広い範囲でプリント配線板1を押さえ付けることとなる。
また、ダイ93は、上述のごとく一体品であるため、下方孔931の内壁面は研磨処理することができず、ワイヤーカットや放電加工したままの表面状態となっている。
その他は、実施例1と同様である。
【0045】
本例の場合には、上記のごとく、プリント配線板1をパンチ92によって打抜く際に、パンチ92の先端面921が面接触した状態となるため、プリント配線板1に大きな衝撃を与えるおそれがある。
また、上記のごとく、ストリッパ91は、プリント配線板1を広い範囲で押さえ付けることとなるため、プリント配線板1に、クラック(白化)を、広い範囲にわたって形成するおそれがある。
【0046】
また、上記のごとく、一体品からなるダイ93の下方孔931は、内壁面を研磨処理することが困難であるため、平滑な表面状態を形成することが困難である。そのため、図8に示すごとく、パンチ92による打抜きの際に、プリント配線板1から打抜かれつつある打抜き片19と下方孔931の内壁面との間の摩擦力が大きくなるおそれがある。これにより、プリント配線板1が円滑に打ち抜かれないために、開口部11の周囲に局部的な負荷がかかり、クラック(白化)が発生するおそれがある。
このように、本比較例においては、プリント配線板1にクラック(白化)を広い範囲で発生させる要因が存在している。
【0047】
(実験例)
本例は、図9、図10に示すごとく、本発明のプリント配線板の製造方法を用いた場合の、クラック発生の抑制効果を評価した例である。
即ち、上記実施例1に示す方法を用いて、プリント配線板1に開口部11を形成したとき、開口部11の周辺に発生したクラック(白化領域18)の大きさとその個数を測定した。
ここで、本例の打抜き加工用金型2における、パンチ22の幅tは0.6mm、ストリッパ21の突出押え部212の幅wは50μm、高さhは70μmとした。
用いたプリント配線板1の厚みは0.2mmであり、図3に示すごとく、形成する開口部11の数は9個、幅は0.6mm、長さ11mmである。
【0048】
そして、開口部11の形成後、開口部11の周りのクラックの大きさと、その個数を計測した。クラックの大きさは、図8に示すごとく、開口部11の一辺からの白化領域18の奥行きdを測定することにより評価した。また、クラックの数は、1枚のプリント配線板1における白化領域18の数を計測することにより評価した。
そして、クラックの大きさの分布を図9に示した。
【0049】
図9から分かるように、本発明のプリント配線板の製造方法によれば、発生するクラック(白化領域18)の大きさを50μm以下とすることができる。これは、要求品質である100μm以下の範囲を充分に満たす。
【0050】
また、上記比較例に示したプリント配線板の製造方法を用いた場合のクラック発生の評価を、上記と同様に行った。その結果を図10に示す。
図10から分かるように、大きな白化領域18(クラック)も多数形成され、要求品質である100μm以下を満たすことができていない。
そして、図9及び図10に示す結果から、本発明を採用することにより、プリント配線板1の開口部11周辺におけるクラック(白化)の発生を大きく抑制することができることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例1における、打抜き機によりプリント配線板を打抜く直前の状態を示す断面説明図。
【図2】実施例1における、打抜き機によりプリント配線板を打抜いた直後の状態を示す断面説明図。
【図3】実施例1における、プリント配線板の平面図。
【図4】実施例1における、ダイの斜視図。
【図5】実施例1における、分割ダイの斜視図。
【図6】実施例2における、打抜き機によりプリント配線板を打抜く直前の状態を示す断面説明図。
【図7】比較例における、打抜き機によりプリント配線板を打抜く直前の状態を示す断面説明図。
【図8】比較例における、打抜き機によりプリント配線板を打抜く瞬間の状態を示す断面説明図。
【図9】実験例における、実施例1の製造方法による場合の白化領域の大きさの分布を示すグラフ。
【図10】実験例における、比較例の製造方法による場合の白化領域の大きさの分布を示すグラフ。
【図11】実施例2における、白化領域を示す平面説明図。
【符号の説明】
【0052】
1 プリント配線板
11 開口部
12 導体配線
2 打抜き加工用金型
21 ストリッパ
211 スライド孔
212 突出押え部
22 パンチ
223 先端外周部
23 ダイ
230 分割ダイ
231 下方孔
【技術分野】
【0001】
本発明は、開口部を形成してなると共に表面に導体配線を設けてなるプリント配線板を製造する方法、及びこれに用いる打抜き加工用金型に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、BOC(Board On Chip)基板、COB(Chip On Board)基板、或いはICパッケージなど、開口部を形成してなると共に該開口部の周囲における表面に導体配線を設けてなるプリント配線板がある(特許文献1参照)。かかるプリント配線板の開口部を形成するに当っては、打抜き加工用金型を用いてプリント配線板を所望の開口部の大きさよりも若干小さい輪郭にて打ち抜いた後に、ルーター加工によって開口部の大きさを所望の大きさに拡げるといった方法を採る。その後、ルーター加工の際に発生した導体配線のバリを除去する。
【0003】
しかしながら、上記従来の製造方法においては、以下の問題がある。
即ち、上記製造方法によれば、打抜き加工とルーター加工とを行う必要があり、工数が多くなるという問題がある。更には、ルーター加工を行うと、ルーター加工の際に発生した導体配線のバリを除去する工程を行う必要もある。その結果、製造コストの低減、生産効率の向上が困難となるおそれがある。
【0004】
一方、単に、上記打ち抜き加工によって、一度に所望の大きさの開口部を形成しようとすると、プリント配線板にクラックが発生するおそれがある。即ち、打ち抜き加工に当たっては、プリント配線板を押さえ付けるストリッパと該ストリッパの内側において上記プリント配線板を打ち抜くパンチとを有する打抜き加工用金型(図7、図8参照)を用いる。そして、ストリッパをプリント配線板の表面に当接させた状態で、パンチをスライドさせる。
【0005】
このとき、ストリッパの押圧力によってプリント配線板にクラック(白化)が生じるおそれがある。また、プリント配線板にパンチが当たる衝撃で、部分的に大きな応力が働き、この部分にクラック(白化)が生じるおそれがある。このクラックの発生領域(白化領域)が大きくなると、プリント配線板の絶縁性の低下等の不具合を招くおそれがある。
【0006】
【特許文献1】特開平11−284347号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、かかる従来の問題点に鑑みてなされたもので、開口部周辺におけるクラック発生を防ぐと共に、生産効率に優れたプリント配線板の製造方法、及びこれに用いる打抜き加工用金型を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、開口部を形成してなると共に表面に導体配線を設けてなるプリント配線板を製造するに当たり、該プリント配線板を載置すると共に上記開口部に対応する下方孔を有するダイと、上記プリント配線板を押さえ付けるストリッパと、上記プリント配線板を打ち抜くパンチとを有する打抜き加工用金型を用いて上記開口部を形成する、プリント配線板の製造方法であって、
上記ダイは、複数に分割された分割ダイを組合わせてなると共に、該複数の分割ダイの間に上記下方孔を形成してなり、
上記ストリッパは、上記パンチを挿通するスライド孔の周囲において、上記プリント配線板を局部的に押さえ付ける突出押え部を突出形成してなり、
上記パンチは、先端外周部がその内側部分よりも先端側へ突出した形状を有しており、
上記プリント配線板をダイの上に載置し、上記ストリッパの上記突出押え部によって上記プリント配線板を押さえ付けた後、上記パンチを上記ストリッパの上記スライド孔から上記ダイの下方孔へ向かってスライドさせることにより、上記プリント配線板に上記開口部を形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法にある(請求項1)。
【0009】
次に、本発明の作用効果につき説明する。
上記プリント配線板の製造方法において用いる打抜き加工用金型のダイは、複数に分割された分割ダイを組合わせてなると共に、該複数の分割ダイの間に上記下方孔を形成してなる。そのため、下方孔の内壁面を容易に平滑化することができる。即ち、仮にダイが一体品である場合に下方孔の内壁面を研磨等することは困難であるが、本発明のように分割ダイを用いることにより、組合せ前に、下方孔の内壁面を研磨等することが容易となり、平滑化を容易に行うことができる。
その結果、プリント配線板を打抜かれた打抜き片を円滑に下方孔に通すことができる。それ故、打抜き時において、プリント配線板の開口部の周囲に局部的な負荷がかかることを防ぐことができ、クラックの発生を抑制することができる。
【0010】
また、上記ストリッパは上記突出押え部を突出形成してなるため、プリント配線板を、開口部を形成する部分の周囲において、局部的に押さえ付けることができる。そのため、上記ストリッパによって押さえ付ける部分を小さくすることができる。その結果、ストリッパの押圧力に起因するクラックの発生領域(白化領域)を極力小さくすることができる。
【0011】
また、上記パンチは、先端外周部がその内側部分よりも先端側へ突出した形状を有している。そのため、パンチがプリント配線板を打抜く際、パンチは、先端外周部において局部的にプリント配線板に当たることとなる。それ故、パンチがプリント配線板に当たる際の衝撃を小さくすることができる。その結果、プリント配線板におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0012】
また、上記のごとく、プリント配線板にクラックを生じさせることなく開口部を形成することができるため、開口部の形成に当って、例えば打抜き加工とルーター加工との双方を行う必要がなく、工数を少なくすることができる。更に、ルーター加工を行う必要がないため、ルーター加工の際に発生する導体配線のバリを除去する工程を行う必要もない。その結果、製造コストの低減、生産効率の向上を図ることができる。
【0013】
以上のごとく、本発明によれば、開口部周辺におけるクラック発生を防ぐと共に、生産効率に優れたプリント配線板の製造方法を提供することができる。
【0014】
第2の発明は、表面に導体配線を設けてなるプリント配線板を打ち抜いて開口部を形成するための打抜き加工用金型であって、
上記プリント配線板を載置すると共に上記開口部に対応する下方孔を有するダイと、上記プリント配線板を押さえ付けるストリッパと、上記プリント配線板を打ち抜くパンチとを有し、
上記ダイは、複数に分割された分割ダイを組合わせてなると共に、該複数の分割ダイの間に上記下方孔を形成してなり、
上記ストリッパは、上記パンチを挿通するスライド孔の周囲において、上記プリント配線板を局部的に押さえ付ける突出押え部を突出形成してなり、
上記パンチは、先端外周部がその内側部分よりも先端側へ突出した形状を有していることを特徴とするプリント配線板の打抜き加工用金型にある(請求項6)。
【0015】
上記打抜き加工用金型のダイは、複数に分割された分割ダイを組合わせてなると共に、該複数の分割ダイの間に上記下方孔を形成してなる。そのため、下方孔の内壁面を容易に平滑化することができる。その結果、プリント配線板を打抜かれた打抜き片を円滑に下方孔に通すことができる。それ故、打抜き時において、プリント配線板の開口部の周囲に局部的な負荷がかかることを防ぐことができ、クラックの発生を抑制することができる。
【0016】
また、上記ストリッパは上記突出押え部を突出形成してなるため、プリント配線板を、開口部を形成する部分の周囲において、局部的に押さえ付けることができる。そのため、上記ストリッパによって押さえ付ける部分を小さくすることができる。その結果、ストリッパの押圧力に起因するクラックの発生領域(白化領域)を極力小さくすることができる。
【0017】
また、上記パンチは、先端外周部がその内側部分よりも先端側へ突出した形状を有している。そのため、パンチがプリント配線板を打抜く際、パンチは、先端外周部において局部的にプリント配線板に当たることとなる。それ故、パンチがプリント配線板に当たる際の衝撃を小さくすることができ、プリント配線板におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0018】
また、本発明の打抜き加工用金型を用いることにより、開口部の形成に当って、例えば打抜き加工とルーター加工との双方を行う必要もなく、工数を少なくすることができる。更に、ルーター加工の際に発生する導体配線のバリを除去する工程を行う必要もない。その結果、製造コストの低減、生産効率の向上を図ることができる。
【0019】
以上のごとく、本発明によれば、開口部周辺におけるクラック発生を防ぐと共に、生産効率に優れたプリント配線板の打抜き加工用金型を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
上記第1の発明(請求項1)及び上記第2の発明(請求項6)において、上記プリント配線板は、例えばBOC(Board On Chip)基板、COB(Chip On Board)基板、或いはICパッケージ等の半導体搭載用のプリント配線板とすることができ、上記開口部は、例えば半導体搭載部とすることができる。また、上記開口部の周囲に配設された上記導体配線は、例えばボンディングパッドとすることができる。
また、上記ダイは、2個の分割ダイを組合わせてなるものであってもよいし、3個以上の分割ダイを組合わせてなるものであってもよい。
【0021】
また、上記ストリッパの上記突出押え部は、30〜70μmの幅を有することが好ましい(請求項2、請求項7)。
この場合には、ストリッパによってプリント配線板を押さえ付けることによるクラック(白化)の発生領域を充分に小さくすることができると共に、開口部の形成を精度よく行うことができる。
上記突出押え部の幅が30μm未満の場合には、開口部の形成を精度よく行うことが困難となるおそれがある。一方、上記突出押え部の幅が70μmを超える場合には、クラック(白化)発生領域を充分に狭い範囲に抑えることが困難となるおそれがある。
【0022】
また、上記ストリッパの上記突出押え部は、40〜100μmの突出高さを有することが好ましい(請求項3、請求項8)。
この場合には、容易かつ正確に、上記突出押え部によって局部的にプリント配線板を押さえ付けることができる。
上記突出押え部の突出高さが40μm未満の場合には、プリント配線板の局部的な押さえつけが困難となるおそれがある。一方、上記突出押え部の突出高さが100μmを超える場合には、基材部分を押し込みすぎてプリント配線板の破壊を招くおそれがある。
【0023】
上記第1の発明(請求項1)において、上記プリント配線板は、0.5mm以下の厚みを有することが好ましい(請求項4)。
この場合には、開口部周辺におけるクラック発生を防ぎつつ、開口部の形成を行うことができる。
上記厚みが0.5mmを超える場合には、開口部周辺におけるクラック発生を充分に防ぐことが困難となるおそれがある。
【0024】
また、上記開口部の形成と共に、上記プリント配線板の外形加工を行うことが好ましい(請求項5)。
この場合には、上記外形加工を開口部の形成と同時に打抜き加工によって行うことができる。そのため、一層生産効率に優れたプリント配線板の製造方法を得ることができる。
【実施例】
【0025】
(実施例1)
本発明の実施例にかかるプリント配線板の製造方法及びこれに用いる打抜き加工用金型につき、図1〜図5を用いて説明する。
本例のプリント配線板の製造方法は、図3に示すごとく、開口部11を形成してなると共に表面に導体配線12を設けてなるプリント配線板1を製造する方法である。そして、図1、図2に示すごとく、プリント配線板1を載置すると共に上記開口部11に対応する下方孔231を有するダイ23と、プリント配線板1を押さえ付けるストリッパ21と、プリント配線板1を打ち抜くパンチ22とを有する打抜き加工用金型2を用いて、上記開口部11を形成する。
【0026】
図4に示すごとく、ダイ23は、複数に分割された分割ダイ230を組合わせてなると共に、該複数の分割ダイ230の間に上記下方孔231を形成してなる。
図1、図2に示すごとく、ストリッパ21は、パンチ22を挿通するスライド孔211の周囲において、プリント配線板1を局部的に押さえ付ける突出押え部212を突出形成してなる。ストリッパ21の突出押え部212は、30〜70μmの幅wを有し、40〜100μmの突出高さhを有する。
また、パンチ22は、先端外周部223がその内側部分よりも先端側へ突出した形状を有している。また、パンチ2の幅tは、プリント配線板1に形成する開口部11の幅と同等であり、約0.6mmである。
【0027】
このような打抜き加工用金型2を用いて、プリント配線板1に開口部11を形成するに当っては、まず、図1に示すごとく、プリント配線板1をダイ23の上に載置し、ストリッパ21の突出押え部212によってプリント配線板1を押さえ付ける。その後、図2に示すごとく、パンチ22をストリッパ21のスライド孔211からダイ23の下方孔231へ向かってスライドさせる。これにより、プリント配線板1に開口部11を形成する。
【0028】
上記プリント配線板1は、BOC(Board On Chip)基板であって、上記開口部11は半導体搭載部である。また、図3に示すごとく、開口部11の周囲に配設された導体配線12は、ボンディングパッドである。また、プリント配線板1は、複数の開口部11を有している。
【0029】
また、図1、図2に示すごとく、上記パンチ22の先端外周部223は、断面鋭角状に形成されている。そして、パンチの先端面221は、断面略V字状に形成されている。
また、ダイ23は、図4に示すごとく、2つの分割ダイ230を以下のようにして組合わせることにより構成されている。即ち、ダイ23を構成する2つの分割ダイ230は、図5に示すごとく、互いの接合面に溝部232を形成してなる。溝部232は、ワイヤーカットや放電加工等によって形成した後、その加工面を研磨処理してなる。その後、互いの溝部232を対向させるようにして2つの分割ダイ23を重ね合わせることにより、図4に示すごとく、下方孔231を有するダイ23を形成する。
【0030】
以下に、本例のプリント配線板の製造方法につき、具体的に説明する。
導体配線12を樹脂基板10の表面に設けたプリント配線板1を用意する。導体配線12は、例えば、Cu、Ni、Auのメッキにより形成される。また、導体配線12の一部がボンディングパッドとなる。導体配線12の厚みは、約20μm程度である。また、上記プリント配線板1の厚みは約0.2mmである。
【0031】
そして、図1、図2に示すごとく、上記打抜き加工用金型2を用いて開口部11を形成する。打抜き加工用金型2におけるパンチ22は、形成しようとする開口部11の形状に沿った断面形状を有する。ストリッパ21は、パンチ22をスライド可能に保持するスライド孔211を有すると共に、該スライド孔211の周囲の先端部に、突出押え部212を有する。
また、打抜き加工用金型2は、プリント配線板1を載置するダイ23を有し、該ダイ23には、パンチ22及びパンチ22によって打抜かれた打抜き片19を通す下方孔231を有する。
【0032】
図1に示すごとく、ダイ23の上にプリント配線板1を載置し、プリント配線板1の表面にストリッパ21の突出押え部212を当接し、プリント配線板1を押さえ付けて保持する。
次いで、図2に示すごとく、上記パンチ22を下方へスライドさせることにより、プリント配線板1の一部を打抜く。これにより、開口部11を形成する。
【0033】
また、上記開口部11の形成と共に、上記プリント配線板1の外形加工を行う。即ち、外形加工を開口部11の形成と同時に打抜き加工によって行う。
次いで、プリント配線板1を打抜き加工用金型2から取り外す。
【0034】
次に、本例の作用効果につき説明する。
上記プリント配線板の製造方法において用いる打抜き加工用金型2のダイ23は、複数に分割された分割ダイ230を組合わせてなると共に、該複数の分割ダイ12の間に上記下方孔231を形成してなる。そのため、下方孔231の内壁面を容易に平滑化することができる。即ち、仮にダイ23が一体品である場合に下方孔231の内壁面を研磨等することは困難であるが、本発明のように分割ダイ230を用いることにより、上述のごとく、組合せ前に、下方孔231の内壁面(図5に示す溝部232の表面)を研磨等することが容易となり、平滑化を容易に行うことができる。
【0035】
その結果、図2に示すごとく、プリント配線板1を打抜かれた打抜き片19を円滑に下方孔231に通すことができる。それ故、打抜き時において、プリント配線板1の開口部11の周囲に局部的な負荷がかかることを防ぐことができ、クラックの発生を抑制することができる。
【0036】
また、ストリッパ21は突出押え部212を突出形成してなるため、プリント配線板1を、開口部11を形成する部分の周囲において、局部的に押さえ付けることができる。そのため、ストリッパ21によって押さえ付ける部分を小さくすることができる。その結果、ストリッパ21の押圧力に起因するクラックの発生領域(白化領域)を極力小さくすることができる。
【0037】
また、パンチ22は、先端外周部223がその内側部分よりも先端側へ突出した形状を有している。そのため、パンチ22がプリント配線板1を打抜く際、パンチ22は、先端外周部223において局部的にプリント配線板1に当たることとなる。それ故、パンチ22がプリント配線板1に当たる際の衝撃を小さくすることができる。その結果、プリント配線板1におけるクラックの発生を抑制することができる。
【0038】
また、上記のごとく、プリント配線板1にクラックを生じさせることなく開口部11を形成することができるため、開口部11の形成に当って、例えば打抜き加工とルーター加工との双方を行う必要がなく、工数を少なくすることができる。更に、ルーター加工を行う必要がないため、ルーター加工の際に発生する導体配線12のバリを除去する工程を行う必要もない。その結果、製造コストの低減、生産効率の向上を図ることができる。
【0039】
また、ストリッパ21の突出押え部212は、30〜70μmの幅wを有するため、ストリッパ21によってプリント配線板1を押さえ付けることによるクラック(白化)の発生領域を充分に小さくすることができると共に、開口部11の形成を精度よく行うことができる。
また、突出押え部212は、40〜100μmの突出高さhを有するため、容易かつ正確に、突出押え部212によって局部的にプリント配線板1を押さえ付けることができる。
【0040】
また、プリント配線板1は、0.5mm以下の厚みであるため、開口部11周辺におけるクラック発生を防ぎつつ、開口部11の形成を行うことができる。
また、開口部11の形成と共に、プリント配線板1の外形加工を行うことにより、外形加工を開口部11の形成と同時に打抜き加工によって行うことができる。そのため、一層生産効率に優れたプリント配線板1の製造方法を得ることができる。
【0041】
以上のごとく、本例によれば、開口部周辺におけるクラック発生を防ぐと共に、生産効率に優れたプリント配線板の製造方法、及びこれに用いる打抜き加工用金型を提供することができる。
【0042】
(実施例2)
本例は、図6に示すごとく、パンチ22の先端面221の形状を断面略円弧状に形成した打抜き加工用金型2及びこれを用いたプリント配線板の製造方法の例である。
即ち、パンチ22の先端面221は、先端外周部223からその内側へ向かって円弧状に後退してなる。
その他は、実施例1と同様であり、実施例1と同様の作用効果を有する。
【0043】
(比較例)
本例は、図7、図8に示すごとく、パンチ92の先端面921を平坦面とし、ストリッパ91に突出押え部(図1の符号212参照)を突出形成せず、ダイ93を一体品によって構成した打抜き加工用金型9、及びこれを用いたプリント配線板の製造方法の例である。
【0044】
パンチ92は、平坦な先端面921を有するため、図8に示すごとく、プリント配線板1を打抜く際には、先端面921の全体で面接触することとなる。
また、ストリッパ91は、突出押え部(図1の符号212参照)を突出形成していないため、広い範囲でプリント配線板1を押さえ付けることとなる。
また、ダイ93は、上述のごとく一体品であるため、下方孔931の内壁面は研磨処理することができず、ワイヤーカットや放電加工したままの表面状態となっている。
その他は、実施例1と同様である。
【0045】
本例の場合には、上記のごとく、プリント配線板1をパンチ92によって打抜く際に、パンチ92の先端面921が面接触した状態となるため、プリント配線板1に大きな衝撃を与えるおそれがある。
また、上記のごとく、ストリッパ91は、プリント配線板1を広い範囲で押さえ付けることとなるため、プリント配線板1に、クラック(白化)を、広い範囲にわたって形成するおそれがある。
【0046】
また、上記のごとく、一体品からなるダイ93の下方孔931は、内壁面を研磨処理することが困難であるため、平滑な表面状態を形成することが困難である。そのため、図8に示すごとく、パンチ92による打抜きの際に、プリント配線板1から打抜かれつつある打抜き片19と下方孔931の内壁面との間の摩擦力が大きくなるおそれがある。これにより、プリント配線板1が円滑に打ち抜かれないために、開口部11の周囲に局部的な負荷がかかり、クラック(白化)が発生するおそれがある。
このように、本比較例においては、プリント配線板1にクラック(白化)を広い範囲で発生させる要因が存在している。
【0047】
(実験例)
本例は、図9、図10に示すごとく、本発明のプリント配線板の製造方法を用いた場合の、クラック発生の抑制効果を評価した例である。
即ち、上記実施例1に示す方法を用いて、プリント配線板1に開口部11を形成したとき、開口部11の周辺に発生したクラック(白化領域18)の大きさとその個数を測定した。
ここで、本例の打抜き加工用金型2における、パンチ22の幅tは0.6mm、ストリッパ21の突出押え部212の幅wは50μm、高さhは70μmとした。
用いたプリント配線板1の厚みは0.2mmであり、図3に示すごとく、形成する開口部11の数は9個、幅は0.6mm、長さ11mmである。
【0048】
そして、開口部11の形成後、開口部11の周りのクラックの大きさと、その個数を計測した。クラックの大きさは、図8に示すごとく、開口部11の一辺からの白化領域18の奥行きdを測定することにより評価した。また、クラックの数は、1枚のプリント配線板1における白化領域18の数を計測することにより評価した。
そして、クラックの大きさの分布を図9に示した。
【0049】
図9から分かるように、本発明のプリント配線板の製造方法によれば、発生するクラック(白化領域18)の大きさを50μm以下とすることができる。これは、要求品質である100μm以下の範囲を充分に満たす。
【0050】
また、上記比較例に示したプリント配線板の製造方法を用いた場合のクラック発生の評価を、上記と同様に行った。その結果を図10に示す。
図10から分かるように、大きな白化領域18(クラック)も多数形成され、要求品質である100μm以下を満たすことができていない。
そして、図9及び図10に示す結果から、本発明を採用することにより、プリント配線板1の開口部11周辺におけるクラック(白化)の発生を大きく抑制することができることが分かる。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】実施例1における、打抜き機によりプリント配線板を打抜く直前の状態を示す断面説明図。
【図2】実施例1における、打抜き機によりプリント配線板を打抜いた直後の状態を示す断面説明図。
【図3】実施例1における、プリント配線板の平面図。
【図4】実施例1における、ダイの斜視図。
【図5】実施例1における、分割ダイの斜視図。
【図6】実施例2における、打抜き機によりプリント配線板を打抜く直前の状態を示す断面説明図。
【図7】比較例における、打抜き機によりプリント配線板を打抜く直前の状態を示す断面説明図。
【図8】比較例における、打抜き機によりプリント配線板を打抜く瞬間の状態を示す断面説明図。
【図9】実験例における、実施例1の製造方法による場合の白化領域の大きさの分布を示すグラフ。
【図10】実験例における、比較例の製造方法による場合の白化領域の大きさの分布を示すグラフ。
【図11】実施例2における、白化領域を示す平面説明図。
【符号の説明】
【0052】
1 プリント配線板
11 開口部
12 導体配線
2 打抜き加工用金型
21 ストリッパ
211 スライド孔
212 突出押え部
22 パンチ
223 先端外周部
23 ダイ
230 分割ダイ
231 下方孔
【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部を形成してなると共に表面に導体配線を設けてなるプリント配線板を製造するに当たり、該プリント配線板を載置すると共に上記開口部に対応する下方孔を有するダイと、上記プリント配線板を押さえ付けるストリッパと、上記プリント配線板を打ち抜くパンチとを有する打抜き加工用金型を用いて上記開口部を形成する、プリント配線板の製造方法であって、
上記ダイは、複数に分割された分割ダイを組合わせてなると共に、該複数の分割ダイの間に上記下方孔を形成してなり、
上記ストリッパは、上記パンチを挿通するスライド孔の周囲において、上記プリント配線板を局部的に押さえ付ける突出押え部を突出形成してなり、
上記パンチは、先端外周部がその内側部分よりも先端側へ突出した形状を有しており、
上記プリント配線板をダイの上に載置し、上記ストリッパの上記突出押え部によって上記プリント配線板を押さえ付けた後、上記パンチを上記ストリッパの上記スライド孔から上記ダイの下方孔へ向かってスライドさせることにより、上記プリント配線板に上記開口部を形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、上記ストリッパの上記突出押え部は、30〜70μmの幅を有することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記ストリッパの上記突出押え部は、40〜100μmの突出高さを有することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記プリント配線板は、0.5mm以下の厚みを有することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記開口部の形成と共に、上記プリント配線板の外形加工を行うことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
表面に導体配線を設けてなるプリント配線板を打ち抜いて開口部を形成するための打抜き加工用金型であって、
上記プリント配線板を載置すると共に上記開口部に対応する下方孔を有するダイと、上記プリント配線板を押さえ付けるストリッパと、上記プリント配線板を打ち抜くパンチとを有し、
上記ダイは、複数に分割された分割ダイを組合わせてなると共に、該複数の分割ダイの間に上記下方孔を形成してなり、
上記ストリッパは、上記パンチを挿通するスライド孔の周囲において、上記プリント配線板を局部的に押さえ付ける突出押え部を突出形成してなり、
上記パンチは、先端外周部がその内側部分よりも先端側へ突出した形状を有していることを特徴とするプリント配線板の打抜き加工用金型。
【請求項7】
請求項6において、上記ストリッパの上記突出押え部は、30〜70μmの幅を有することを特徴とするプリント配線板の打抜き加工用金型。
【請求項8】
請求項1又は2において、上記ストリッパの上記突出押え部は、40〜100μmの突出高さを有することを特徴とするプリント配線板の打抜き加工用金型。
【請求項1】
開口部を形成してなると共に表面に導体配線を設けてなるプリント配線板を製造するに当たり、該プリント配線板を載置すると共に上記開口部に対応する下方孔を有するダイと、上記プリント配線板を押さえ付けるストリッパと、上記プリント配線板を打ち抜くパンチとを有する打抜き加工用金型を用いて上記開口部を形成する、プリント配線板の製造方法であって、
上記ダイは、複数に分割された分割ダイを組合わせてなると共に、該複数の分割ダイの間に上記下方孔を形成してなり、
上記ストリッパは、上記パンチを挿通するスライド孔の周囲において、上記プリント配線板を局部的に押さえ付ける突出押え部を突出形成してなり、
上記パンチは、先端外周部がその内側部分よりも先端側へ突出した形状を有しており、
上記プリント配線板をダイの上に載置し、上記ストリッパの上記突出押え部によって上記プリント配線板を押さえ付けた後、上記パンチを上記ストリッパの上記スライド孔から上記ダイの下方孔へ向かってスライドさせることにより、上記プリント配線板に上記開口部を形成することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項2】
請求項1において、上記ストリッパの上記突出押え部は、30〜70μmの幅を有することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2において、上記ストリッパの上記突出押え部は、40〜100μmの突出高さを有することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項において、上記プリント配線板は、0.5mm以下の厚みを有することを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項において、上記開口部の形成と共に、上記プリント配線板の外形加工を行うことを特徴とするプリント配線板の製造方法。
【請求項6】
表面に導体配線を設けてなるプリント配線板を打ち抜いて開口部を形成するための打抜き加工用金型であって、
上記プリント配線板を載置すると共に上記開口部に対応する下方孔を有するダイと、上記プリント配線板を押さえ付けるストリッパと、上記プリント配線板を打ち抜くパンチとを有し、
上記ダイは、複数に分割された分割ダイを組合わせてなると共に、該複数の分割ダイの間に上記下方孔を形成してなり、
上記ストリッパは、上記パンチを挿通するスライド孔の周囲において、上記プリント配線板を局部的に押さえ付ける突出押え部を突出形成してなり、
上記パンチは、先端外周部がその内側部分よりも先端側へ突出した形状を有していることを特徴とするプリント配線板の打抜き加工用金型。
【請求項7】
請求項6において、上記ストリッパの上記突出押え部は、30〜70μmの幅を有することを特徴とするプリント配線板の打抜き加工用金型。
【請求項8】
請求項1又は2において、上記ストリッパの上記突出押え部は、40〜100μmの突出高さを有することを特徴とするプリント配線板の打抜き加工用金型。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−208205(P2007−208205A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28793(P2006−28793)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(591098112)イビデンエンジニアリング株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(591098112)イビデンエンジニアリング株式会社 (7)
【Fターム(参考)】
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