説明

プルラン誘導体及び有機溶剤型塗料組成物

【課題】植物由来の原料を用いて得られ、成膜性に優れ、耐水性を有し、かつ容易に有機溶剤型塗料組成物に用いることができるプルラン誘導体、及び該プルラン誘導体を含有する有機溶剤型塗料組成物を提供する。
【解決手段】プルランの有する水酸基の水素をアシル基で置換して得られるプルラン誘導体であって、該置換の置換度が1.8〜3.0であり、該アシル基が炭素数4〜15のアシル基を含むことを特徴とするプルラン誘導体、及び該プルラン誘導体及び有機溶剤を含有する有機溶剤型塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プルラン誘導体及びそれを含有する有機溶剤型塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化による影響低減の視点から、世界的レベルでCO排出量の削減が求められており、石油に替わる再生可能な資源であって、地球上の炭酸ガス循環においてCOの放出量を増大させない植物由来原料を積極的に利用することが求められている。
【0003】
そのような再生可能な資源の代表的な材料として、多糖類である澱粉、あるいはアセチル化澱粉等の変性澱粉がある。澱粉や変性澱粉は、従来、食品工業関連、製紙工業関連等で用いられてきたが、近年はプラスチックの原料として、食品容器、包装材、緩衝材シート、農業用フィルム、使い捨てオムツ等の幅広い分野で製品化されてきている。
【0004】
澱粉を塗料組成物に用いた例として、特許文献1には、澱粉を用いた塗料組成物に関する発明が開示されている。
【0005】
一方、多糖類の他の例としてプルランがある。プルランは、黒色酵母の一種であるオーレオバシディウム・プルランス(Aureobasidium pullulans)のようなプルラン生産能を有する微生物によって、スクロースや澱粉加水分解物等から生成される。プルランは親水性が高く水溶性であり、食品、化粧品、医薬品等に利用されている。またプルランは、成膜性に優れるという特徴がある。
【0006】
プルランを用いた塗料組成物に関して、特許文献2には、プルラン系組成物が塗布された熱交換器用フィン材に関する発明が開示されている。この発明では、水溶性メラミン樹脂、該水溶性メラミン樹脂の硬化触媒、プルラン、及び該プルランに配位されてキレート化合物を生成する金属化合物を有するプルラン系組成物が使用されている。
【0007】
また、特許文献3には、プルランアセテート溶液をフィン材本体表面に塗布し、その後乾燥することにより有機溶剤を蒸発させて、フィン本体表面にプルランアセテート層を形成させた熱交換器用フィン材の製造方法に関する発明が開示されている。この発明では、置換度1.2〜1.7のプルランアセテートを有機溶剤に溶解または分散させたプルランアセテート溶液が使用されている。
【0008】
しかしながら、プルラン及び置換度1.2〜1.7のプルランアセテートは、有機溶剤への溶解性が十分ではなく、有機溶剤型塗料組成物に用いることが難しい。また、プルラン及び置換度1.2〜1.7のプルランアセテートは、一般的な塗料に用いた場合、耐水性の点で課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−224887号公報
【特許文献2】特開平1−38229号公報
【特許文献3】特開平1−38175号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、植物由来の原料を用いて得られ、成膜性に優れ、耐水性を有し、かつ容易に有機溶剤型塗料組成物に用いることができるプルラン誘導体、及び該プルラン誘導体を含有する有機溶剤型塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記した従来技術の問題点を解消するために鋭意検討した結果、プルランの有する水酸基の水素をアシル基で置換して得られるプルラン誘導体であって、該置換の置換度が特定範囲であり、かつ該アシル基が特定のアシル基を含むプルラン誘導体を用いることにより、かかる課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち本発明は、
1.プルランの有する水酸基の水素をアシル基で置換して得られるプルラン誘導体であって、該置換の置換度が1.8〜3.0であり、該アシル基が炭素数4〜15のアシル基を含むことを特徴とするプルラン誘導体、
2.前記炭素数4〜15のアシル基が、ブチリル基又はラウロイル基である1項記載のプルラン誘導体、
3.前記アシル基が、アセチル基及び炭素数4〜15のアシル基を含む1又は2項記載のプルラン誘導体、
4.前記炭素数4〜15のアシル基による置換度が1.0〜2.9である3項記載のプルラン誘導体、
5.重量平均分子量が30,000〜1,000,000である1〜4項のいずれか1項に記載のプルラン誘導体、
6.1〜5項のいずれか1項に記載のプルラン誘導体及び有機溶剤を含有する有機溶剤型塗料組成物、
7.水酸基と反応性を有する基を1分子中に少なくとも2個有する硬化剤を含有する6項記載の有機溶剤型塗料組成物、
8.前記水酸基と反応性を有する基を1分子中に少なくとも2個有する硬化剤が、ポリイソシアネート化合物及び/又はアミノ樹脂である7項記載の有機溶剤型塗料組成物、
に関する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のプルラン誘導体は、植物由来の原料を用いて得られ、成膜性に優れ、耐水性を有する。また、本発明のプルラン誘導体は、有機溶剤への溶解性に優れるため、有機溶剤型塗料組成物に用いることが容易である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<プルラン誘導体>
本発明のプルラン誘導体は、プルランの有する水酸基の水素をアシル基で置換して得られるプルラン誘導体であって、該置換の置換度が1.8〜3.0であり、該アシル基が炭素数4〜15のアシル基を含むことを特徴とするプルラン誘導体(以下、「本発明のプルラン誘導体」と略すことがある)である。
【0015】
本発明のプルラン誘導体の原料として用いられるプルランは、下記一般式(I)で示されるようなグルコースの3量体であるマルトトリオースがα−1,6結合で連なった構造を有する水溶性多糖である。
【0016】
一般式(I):
【0017】
【化1】

【0018】
[式(I)中、「*」は下記で示す13C−NMR分析の説明のための記号である。]
【0019】
前記プルランは、例えばプルラン生産能を有する微生物によってスクロースや澱粉加水分解物等から生成される。プルランの平均分子量は、プルランを製造する際の条件により調整が可能である。具体的には、プルランの平均分子量は、特開昭49−42894号公報に記載されているように、プルランを製造する際の培養培地のpH及び/又は燐酸イオン濃度を調節する方法により調整が可能である。
【0020】
本発明のプルラン誘導体は、前記プルランの有する水酸基の水素をアシル基で置換することにより得ることができる。本発明のプルラン誘導体は、前記置換の置換度が1.8〜3.0である。置換度が1.8より小さい場合は、有機溶剤への溶解性が乏しい、塗料の粘度が高く塗装することが困難となる、得られる塗膜の成膜性が悪い、光沢が低い、耐水性に劣る等の不具合の少なくとも1つが起こる。ここで本発明において置換度とは、プルランを構成する単糖単位1個あたりの、アシル基で置換された水酸基の水素の平均個数である。例えば、置換度3.0とは、プルランを構成する単糖単位1個中に存在する3.0個の水酸基の全ての水素がアシル基に置換されていることを意味する。置換度1.8とは、プルランを構成する単糖単位1個中に存在する3.0個の水酸基のうちの平均1.8個の水素がアシル基に置換されていることを意味する。
【0021】
本発明のプルラン誘導体は、前記プルランの有する水酸基の水素をアシル基で置換することにより得ることができ、該アシル基は炭素数4〜15のアシル基を含む。本発明のプルラン誘導体は、炭素数4〜15のアシル基を含むことにより、有機溶剤への溶解性に優れる。また、得られる塗膜の耐水性、柔軟性が良好となる。炭素数4〜15のアシル基としては、RCO−(Rは、炭素数3〜14の非置換のアルキル基、非置換のアリール基又は非置換のアルキルアリール基を示す。)で表されるアシル基が挙げられる。炭素数4〜15のアシル基としては、プロピオニル基、ブチリル基、ピバロイル基、ラウロイル基、シクロヘキシルカルボニル基、ベンゾイル基、トルオイル基、ナフトイル基等が挙げられる。炭素数4〜15のアシル基は、得られる塗膜の耐水性、柔軟性の点からブチリル基又はラウロイル基であることが好ましく、得られる塗膜の耐水性、柔軟性の点及び原料のラウリン酸が生体由来成分であることからラウロイル基であることが好ましい。
【0022】
本発明のプルラン誘導体はアシル基を有するが、該アシル基は1種類のアシル基であってもよく又は2種以上のアシル基であってもよい。本発明のプルラン誘導体の有するアシル基が1種類の場合、該アシル基はその全てが炭素数4〜15のアシル基のうちの1種類である。本発明のプルラン誘導体の有するアシル基が2種類以上の場合、該アシル基は炭素数4〜15のアシル基の2種以上を含むアシル基であってもよく、また該アシル基は炭素数2〜3のアシル基及び炭素数4〜15のアシル基を含む2種以上のアシル基であってもよく、さらにはアセチル基及び炭素数4〜15のアシル基を含む2種以上のアシル基であってもよい。
【0023】
本発明のプルラン誘導体が2種以上のアシル基を有する場合には、有機溶剤への溶解性の点、得られる塗膜の耐水性、柔軟性の点から、炭素数4〜15のアシル基による置換度は1.0〜2.9であることが好ましく、1.2〜2.8であることがより好ましい。
【0024】
本発明のプルラン誘導体は、プルランの有する水酸基の水素を置換している全ての置換基が非置換のアシル基であることが好ましい。非置換のアシル基としては、例えばRCO−(Rは、炭素数1〜19の非置換のアルキル基、非置換のアリール基又は非置換のアルキルアリール基を示す。)で表される非置換のアシル基が挙げられる。
【0025】
本発明のプルラン誘導体の分子量は特に限定されるものではない。有機溶剤への溶解性の点、塗料の粘度の点から、本発明のプルラン誘導体の重量平均分子量は、30,000〜1,000,000であることが好ましく、30,000〜500,000であることがより好ましく、50,000〜350,000であることが特に好ましい。
【0026】
なお本明細書において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(東ソー(株)社製、「HLC8120GPC」)で測定した重量平均分子量をポリスチレンの重量平均分子量を基準にして換算した値である。カラムは、「TSKgel G−4000H×L」、「TSKgel G−3000H×L」、「TSKgel G−2500H×L」、「TSKgel G−2000H×L」(いずれも東ソー(株)社製、商品名)の4本を用い、移動相;テトラヒドロフラン、測定温度;40℃、流速;1ml/分、検出器;RIの条件で行ったものである。
【0027】
本発明のプルラン誘導体は、例えば、プルランの有する水酸基の水素をアシル化(言い換えれば、プルランの有する水酸基をエステル化)することによって得ることができる。アシル化は、例えば、カルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸ビニル等を用いて行うことができる。アシル化する方法としては、具体的には、カルボン酸を用いてプルランの有する水酸基の水素をアシル化(エステル化)する方法、カルボン酸エステルを用いてエステル交換反応を行う方法、カルボン酸ビニルを用いてエステル交換反応を行う方法、無水酢酸を用いてアセチル化を行う方法等が挙げられる。本発明のプルラン誘導体を得る方法の具体例としては、有機溶剤中又は水中で、プルランとカルボン酸、カルボン酸エステル、カルボン酸ビニル等とを反応させる方法が挙げられる。前記反応において使用する有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の炭化水素系溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトン等のケトン系溶剤;ジメチルスルホキシド;ジメチルホルムアミド;あるいはこれらの混合物等が挙げられる。前記反応は、例えば、攪拌下で60℃〜100℃、より好ましくは70〜95℃の温度で、30分間〜10時間、より好ましくは30分間〜5時間で行うことができる。
【0028】
前記アシル化(エステル化)反応の際には、アシル化(エステル化)触媒を使用することができる。アシル化(エステル化)触媒としては、例えば、周期表中第5周期までに属する金属の水酸化物、鉱酸塩、炭酸塩、有機化合物もしくはアルカリ金属アルコキシド、有機物相間移動触媒、アミノ化合物の各群の内から1種又は2種以上が挙げられる。具体例としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属水酸化物;酢酸ナトリウム、p−トルエンスルホン酸ナトリウム等のアルカリ金属有機酸塩;水酸化バリウム、水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属水酸化物、酢酸カルシウム、プロピオン酸カルシウム、p−トルエンスルホン酸バリウム等のアルカリ土類金属有機酸塩;燐酸ナトリウム、燐酸カルシウム、亜硫酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、硫酸カリウム、アルミン酸ナトリウム、亜鉛酸カリウム等の無機酸塩;水酸化アルミニウム、水酸化亜鉛等の両性金属水酸化物、ジメチルアミノピリジン、ジエチルアミノ酢酸等のアミノ化合物;N−トリメチル−N−プロピルアンモニウムクロリド、N−テトラエチルアンモニウムクロリド等の第四アンモニウム化合物等が挙げられる。
【0029】
本発明のプルラン誘導体の置換度を所望の置換度とする方法は、特に困難なものではなく、例えば、本発明のプルラン誘導体を製造する際のカルボン酸等(例えばカルボン酸ビニル)の量、反応温度、反応時間等により調節することができる。
【0030】
なお本明細書において、置換度は、13C−NMR分析によって求められるものである。具体的には、置換度は、FT−NMR EX−400(商品名、JEOL社製)を使用し、溶媒にAceton−D6、内部標準物質にテトラメチルシランを用い、測定モードをプロトンデカップリング法にして測定したプルラン誘導体のマルトトリオース構造のC−1[前記一般式(1)中のプルランにおいて「*」で示した炭素]のケミカルシフト(97ppm)とアシル基のカルボニル炭素のケミカルシフト(174ppm)とのピーク強度比により求めることができる。
【0031】
<塗料組成物>
本発明のプルラン誘導体は、塗料組成物に用いることができる。本発明のプルラン誘導体を含有する塗料組成物は、該本発明のプルラン誘導体が有機溶剤への溶解性に優れることから、有機溶剤型塗料組成物であることが好ましい。なお本明細書において、有機溶剤型塗料組成物とは溶媒として実質的に水を含有しない塗料組成物である。
【0032】
本発明のプルラン誘導体を含有する有機溶剤型塗料組成物に用いられる有機溶剤は、特に限定されるものではない。有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルアミルケトン、エチルイソアミルケトン、ジイソブチルケトン、メチルへキシルケトン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、安息香酸メチル、プロピオン酸メチル等のエステル類;テトラヒドロフラン、ジオキサン、ジメトキシエタン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のグリコールエーテル類;エチルアルコール、ベンジルアルコール等のアルコール類;芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類等が挙げられる。これら有機溶剤は単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0033】
本発明のプルラン誘導体を含有する塗料組成物は、硬化剤を含有しないラッカー型塗料組成物として使用することができる。ラッカー型塗料組成物は、塗装のし易さ、乾燥の早さに優れた非常に使い易い塗料組成物となりうる。
【0034】
また本発明のプルラン誘導体を含有する塗料組成物は、さらに水酸基と反応性を有する基を1分子中に少なくとも2個有する硬化剤(以下、「硬化剤」と略すことがある)を含有して硬化型塗料組成物として使用することができる。塗料組成物が硬化剤を含有する場合、本発明のプルラン誘導体は硬化剤と反応するための水酸基を有していることが好ましく、本発明のプルラン誘導体のアシル基による置換の置換度は1.8〜2.7であることが望ましい。該硬化剤を含有することにより耐溶剤性、耐候性、耐薬品性に優れる塗膜を得ることができる。
【0035】
硬化剤は、水酸基と反応性を有する基を1分子中に少なくとも2個有するものであって、前記本発明のプルラン誘導体の有する水酸基と反応して硬化しうるものである。
【0036】
硬化剤の代表例としては、例えば、ポリイソシアネート化合物、アミノ樹脂、エポキシ基含有化合物、アルコキシシリル基含有化合物、2個以上のカルボン酸無水基を有する化合物等を挙げることができる。なかでも耐溶剤性、耐候性、耐薬品性の点から、ポリイソシアネート化合物及び/又はアミノ樹脂が好ましい。
【0037】
前記ポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基(NCO基)がブロック化されていないもの(以下、「非ブロック化ポリイソシアネート化合物」と略すことがある)、及びイソシアネート基がブロック化されたもの(以下、「ブロック化ポリイソシアネート化合物」と略すことがある)のいずれをも包含する。
【0038】
非ブロック化ポリイソシアネート化合物としては、例えば、リジンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサンジイソシアネート等の脂肪族ジイソシアネート類;水素添加キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、メチルシクロヘキサン−2,4(または2,6)−ジイソシアネート、4,4´−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,3−(イソシアナトメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート類;トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネ−ト、ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類;リジントリイソシアネ−ト等の3価以上のポリイソシアネート等の如き有機ポリイソシアネートそれ自体、又はこれらの各有機ポリイソシアネートと多価アルコール、低分子量ポリエステル樹脂もしくは水等との付加物、あるいは前記した如き各有機ジイソシアネート同志の環化重合体(例えば、イソシアヌレート)、ビウレット型付加物;イソシアナトエチル(メタ)アクリレートやm−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート等のイソシアネート基含有エチレン性不飽和化合物とその他のエチレン性不飽和化合物との共重合体等が挙げられる。
【0039】
ブロック化ポリイソシアネート化合物は、前記の非ブロック化ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基をブロック化剤でブロック化してなるものであり、その際に用いられるブロック化剤としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノール等のフェノール系;ε−カプロラクタム;δ−バレロラクタム、γ−ブチロラクタム、β−プロピオラクタム等ラクタム系;メタノール、エタノール、n−又はi−プロピルアルコール、n−,i−又はt−ブチルアルコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ベンジルアルコール等のアルコール系;ホルムアミドキシム、アセトアルドキシム、アセトキシム、メチルエチルケトキシム、ジアセチルモノオキシム、ベンゾフェノンオキシム、シクロヘキサンオキシム等オキシム系;マロン酸ジメチル、マロン酸ジエチル、アセト酢酸エチル、アセト酢酸メチル、アセチルアセトン等の活性メチレン系等のブロック化剤を好適に使用することができる。ブロック化は、非ブロック化ポリイソシアネートとブロック化剤とを混合することによって容易に行うことができる。これらのポリイソシアネート化合物は単独で又は2種以上組合せて用いることができる。プルラン誘導体の耐熱性を考慮すると、低温で硬化剤として作用するブロック化ポリイソシアネート化合物が好ましく、具体的には、活性メチレン系のブロック化ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0040】
硬化剤として使用可能なアミノ樹脂としては、例えば、メラミン、尿素、ベンゾグアナミン、アセトグアナミン、ステログアナミン、スピログアナミン、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられる。アルデヒドとしては、例えば、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。また、このメチロール化アミノ樹脂を1種又は2種以上のアルコールによってエーテル化したものも前記アミノ樹脂に包含される。このエーテル化に用いられるアルコールとしては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、2−エチルブタノール、2−エチルヘキサノール等の1価アルコールが挙げられる。これらのアミノ樹脂は単独で又は2種以上組合せて用いることができる。プルラン誘導体の耐熱性を考慮すると、低温で硬化剤として作用するアミノ樹脂が好ましく、具体的には、イミノメチロール型のアミノ樹脂が好ましい。
【0041】
硬化剤として使用可能なエポキシ基含有化合物は、1分子中にエポキシ基を2個以上有する化合物であり、その代表例としては、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ジグリセリンテトラグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、2,6−ジグリシジルフェニルエーテル、ソルビトールトリグリシジルエーテル、トリグリシジルイソシアヌレート、ジグリシジルアミン、ジグリシジルベンジルアミン、フタル酸ジグリシジルエステル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ブタジエンジオキサイド、ジシクロペンタジエンジオキサイド、3,4−エポキシシクロヘキセンカルボン酸とエチレングリコールとのジエステル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキサンカルボキシレート、ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート、ジシクロペンタジエンオールエポキシドグリシジルエーテル、ジペンテンジオキサイド、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とエチレンオキサイドとの付加物等を挙げることができる。
【0042】
また、前記エポキシ基含有化合物としては、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有重合性不飽和モノマーとその他の重合性不飽和モノマーとの共重合ポリマーも挙げることができる。前記エポキシ基含有化合物は単独で又は2種以上組合せて用いることができる。前記エポキシ基含有化合物のエポキシ基の含有量は特に限定されるものではないが、通常、エポキシ当量が100〜3,000、好ましくは100〜1,500の範囲内にあることが適当である。
【0043】
硬化剤として使用可能なアルコキシシリル基含有化合物は、1分子中にアルコキシシリル基を2個以上含有する化合物であり、例えば、ジメトキシジメチルシラン、ジメトキシジエチルシラン、ジメトキシジフェニルシラン、ジエトキシジメチルシラン、トリメトキシメチルシラン、トリメトキシエチルシラン、トリメトキシプロピルシラン、トリメトキシフェニルシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラブトキシシラン、ジメトキシジエトキシシラン等の重合性不飽和基を有さないアルコキシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシラン、ビニルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、β−(メタ)アクリロイルオキシエチルトリメトキシシラン、γ−(メタ)アクリロイルオキシブチルフェニルジメトキシシラン等の重合性不飽和基含有アルコキシシラン;前記重合性不飽和基を有さないアルコキシラン及び/又は重合性不飽和基含有アルコキシシランの部分縮合物;前記重合性不飽和基含有アルコキシシランと該アルコキシシランと共重合可能な重合性不飽和モノマーとの共重合体等を挙げることができる。
【0044】
硬化剤として使用可能な2個以上のカルボン酸無水基を有する化合物(以下、「ポリ酸無水物」と略すことがある)としては、例えば、無水ピロメリット酸、エチレングリコール1モルと無水トリメリット酸2モルとの縮合物[エチレンビス(アンヒドロトリメリテート)]、グリセリン1モルと無水トリメリット酸3モルとの縮合物[グリセリントリス(アンヒドロトリメリテート)]等;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカン二酸、ダイマー酸、エチル−オクタデカン二酸、フェニル−ヘキサデカン二酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸等の多塩基酸が分子間縮合した直鎖状又は環状ポリ酸無水物;無水マレイン酸、テトラヒドロフタル酸無水物等の重合性不飽和酸無水物を一単量体成分とするポリマーを挙げることができる。前記ポリ酸無水物の酸無水基の含有量は特に限定されるものではないが、通常、酸無水基に基づく全酸価が50〜1,100mgKOH/g、好ましくは80〜800mgKOH/gの範囲内にあることが好適である。
【0045】
前記硬化剤は、それぞれ単独で又は2種以上組合せて用いることができる。
【0046】
本発明のプルラン誘導体を含有する塗料組成物に前記硬化剤を配合する場合、前記硬化剤の含有量は特に限定されるものではないが、本発明のプルラン誘導体100質量部に対して、1〜50質量部であることが好ましく、3〜30質量部であることがより好ましい。
【0047】
本発明のプルラン誘導体を含有する塗料組成物に前記硬化剤を配合する場合、前記硬化剤の含有量は特に限定されるものではないが、本発明のプルラン誘導体の水酸基と前記硬化剤の水酸基と反応性を有する基との当量比(水酸基と反応性を有する基/水酸基)は、0.1〜1.2であることが好ましく、0.2〜1.0であることがより好ましい。
【0048】
本発明のプルラン誘導体を含有する塗料組成物は、クリヤ塗料組成物として使用してもよく、また着色塗料組成物として使用してもよい。
【0049】
本発明のプルラン誘導体を含有する塗料組成物は、必要に応じて、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノキシ樹脂、ポリビニルブチラール樹脂等の樹脂を含有することができる。
【0050】
本発明のプルラン誘導体を含有する塗料組成物は、必要に応じて、艶消し剤、表面調整剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤等を含有することができる。
【0051】
紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルフォベンゾフェノン、5−クロロ−2−ヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−5−スルフォベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2’−カルボキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−(2−ヒドロキシ−3−メチルアクリロキシ)プロポキシベンゾフェノン等の如きベンゾフェノン系化合物;2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチル−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチル−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−イソアミル・フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(ヒドロキシ−5−tert−ブチル−フェニル)ベンゾトリアゾール等の如きベンゾトリアゾール系化合物;エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレート、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3’−ジフェニル−アクリレート等の如きアクリレート系;フェニルサリシレート、4−tert−ブチル−フェニルサリシレート、パラ−オクチル−フェニルサリシレート等の如きサリシレート系;エタンジアミド−N−(2−エトキシフェニル)−N’−(4−イソドデシルフェニル)、2−エチル−2’−エトキシオキザルアニリド、2−エトキシ−5−tert−ブチル−2’−エチル−オキザルアニリド及び商品名としてサンドーズ社のサンドボアEPU.USU3206等の蓚酸アニリド系化合物;ヒドロキシ−5−メトキシ−アセトフェノン、2−ヒドロキシ−ナフトフェノン、2−エトキシエチル−パラ−メトキシシンナメート、ニッケル−ビスオクチルフェニルスルフィド、〔2,2’−チオビス(4−tert−オクチルフェノラト)〕−n−ブチルアミン−ニッケル等のその他の化合物等が挙げられる。これらのものは1種もしくは2種以上組合わせて使用できる。
【0052】
紫外線吸収剤の含有量としては、通常、塗料組成物の不揮発分100質量部に対して0〜10質量部、特に0.2〜5質量部、さらに特に0.3〜2質量部の範囲内であるのが耐侯性、耐黄変性の点から好ましい。
【0053】
光安定剤としては、例えば、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−2−ブチル−2−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ブチルベンジル)プロパンジオエート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、8−アセチル−3−ドデシル−7,7,9,9−テトラメチル−1,3,8−トリアザスピロ〔4,5〕デカン−2,4−ジオン及び商品名としてチヌビン144、292、440(以上、チバガイギー社製)、サノールLS−770(三共社製)等のヒンダードアミン系化合物等が挙げられる。これらのものは1種もしくは2種以上組合わせて使用できる。
【0054】
光安定剤の含有量としては、通常、塗料組成物の不揮発分100質量部に対して0〜10質量部、特に0.2〜5質量部、さらに特に0.3〜2質量部の範囲内であるのが耐侯性、耐黄変性の点から好ましい。
【0055】
本発明のプルラン誘導体を含有する塗料組成物を着色塗料組成物として使用する場合には、通常、着色成分を含有する。着色成分としては、有機着色剤、天然色素、無機顔料、光輝材等が挙げられる。
【0056】
有機着色剤としては、例えば、厚生省令第37号で定められているもの等が挙げられる。具体的には例えば、赤色202号(リソールルビンBCA)、赤色203号(レーキレッドC)、赤色204号(レーキレッドCBA)、赤色205号(リソールレッド)、赤色206号(リソールレッドCA)、赤色207号(リソールレッドBA)、赤色208号(リソールレッドSR)、赤色219号(ブリリアントレーキレッドR)、赤色220号(ディープマルーン)、赤色221号(トルイジンレッド)、赤色228号(パーマトンレッド)、だいだい色203号(パーマネントオレンジ)、だいだい色204号(ベンチジンオレンジG)、黄色205(ベンチジンエローG)、赤色404号(ブリリアントファストスカーレット)、赤色405号(パーマネントレッドF5R)、だいだい色401号(ハンザオレンジ)、黄色401号(ハンザエロー)、青色404号(フタロシアニンブルー)等が挙げられる。
【0057】
天然色素としては、具体的には例えば、カロチノイド系では、カロチン、カロチナール、カプサンチン、リコピン、ビキシン、クロシン、カンタキサンチン、アナトー等、フラボノイド系では、シソニン、ラファニン、エノシアニン等のようなアントシアニジン類、サフロールイエロー、ベニバナ等のようなカルコン類、ルチン、クエルセチン等のようなフラボノール類、カカオ色素のようなフラボン類等、フラビン系では、リボフラビン等、キノン系では、ラッカイン酸、カルミン酸(コチニール)、ケルメス酸、アリザリン等のようなアントラキノン類、シコニン、アルカニン、エキノクローム等のようなナフトキノン類等、ポリフィリン系では、クロロフィル、血色素等、ジケトン系では、クルクミン(ターメリック)等、ベタシアニジン系では、ベタニン等が挙げられる。
【0058】
無機顔料としては、例えば、無水ケイ酸、ケイ酸マグネシウム、タルク、カオリン、ベントナイト、マイカ、雲母チタン、オキシ塩化ビスマス、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、軽質炭酸カルシウム、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸マグネシウム、重質炭酸マグネシウム、硫酸バリウム、黄酸化鉄、ベンガラ、黒酸化鉄、グンジョウ、酸化クロム、水酸化クロム、カーボンブラック、カラミン等が挙げられる。有機着色剤、天然色素及び無機顔料の配合割合は、使用される用途や要求される性能に応じて適宜決定すれば良い。
【0059】
光輝材とは、塗膜にキラキラとした光輝感または光干渉性を付与するりん片状顔料である。光輝材としては、例えば、りん片状のアルミニウム、蒸着アルミニウム、酸化アルミニウム、塩化オキシビスマス、雲母、酸化チタン被覆雲母、酸化鉄被覆雲母、雲母状酸化鉄、酸化チタン被覆シリカ、酸化チタン被覆アルミナ、酸化鉄被覆シリカ、酸化鉄被覆アルミナ、ガラスフレーク、着色ガラスフレーク、蒸着ガラスフレーク、ホログラムフィルム等が挙げられる。これらの光輝材の大きさは長手方向が1〜30μm、厚さが0.001〜1μmであるのが好ましい。
【0060】
以下に、本発明のプルラン誘導体を含有する塗料組成物を被塗物に塗装する方法について説明する。
【0061】
本発明のプルラン誘導体を含有する塗料組成物が塗装される被塗物は、金属、プラスチック、木材等、特に制限はない。金属としては、例えば、冷延鋼板、錫メッキ鋼板、亜鉛メッキ鋼板、クロムメッキ鋼板、アルミニウム板、ステンレス板等を挙げることができる。これらの金属板は、無処理のままで用いることもできるが、リン酸塩処理、ジルコニウム塩処理、クロメート処理等の表面処理を行ったものも用いることができる。プラスチックとしては、例えば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリカーボネート樹脂、ABS樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリエチレン樹脂、これらの2種以上を複合したアロイ樹脂等が挙げられる。これらプラスチックは塗料組成物の塗装に先立ち、それ自体既知の方法で、脱脂処理、水洗処理、又はプライマー塗装等を適宜行なっておくことができる。
【0062】
被塗物の用途としては、特に制限されず、例えば、乗用車、トラック、オートバイ、バス等の自動車車体の外板部;自動車部品;携帯電話、オーディオ機器等の家庭電気製品の外板部等を挙げることができる。
【0063】
本発明のプルラン誘導体を含有する塗料組成物をクリヤ塗料組成物として使用する場合には、前記被塗物には、必要に応じて、下塗り塗装がされていてもよく、また、着色成分等を含有するベースコート塗料が塗装されていてもよい。
【0064】
本発明のプルラン誘導体を含有する塗料組成物を着色塗料組成物として使用する場合には、前記被塗物に、必要に応じて下塗り塗装をした後に、本発明のプルラン誘導体を含有する着色塗料組成物を塗装して着色塗膜を形成することができる。また、該着色塗膜上にクリヤ塗料組成物を塗装してクリヤ塗膜を形成してもよい。
【0065】
ここで使用するクリヤ塗料組成物としては、具体的には、例えば、水酸基、カルボキシル基、エポキシ基、シラノール基等の架橋性官能基を有する、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素樹脂等の基体樹脂と、メラミン樹脂、尿素樹脂、ブロックされてもよいポリイソシアネート化合物、カルボキシル基含有化合物もしくは樹脂、エポキシ基含有化合物もしくは樹脂等の硬化剤を含有するクリヤ塗料組成物が挙げられる。また、活性エネルギー線硬化性樹脂を含有するクリヤ塗料組成物(活性エネルギー線硬化性塗料組成物)であってもよい。活性エネルギー線硬化性樹脂としては、光硬化性樹脂、電子線硬化性樹脂等が挙げられる。これらクリヤ塗料組成物は、有機溶剤系塗料、水性塗料、粉体塗料等として使用することができる。
【0066】
クリヤ塗料組成物は、一液型塗料の形態であってもよく、また、二液型ウレタン樹脂塗料等の二液型塗料の形態であってもよい。
【0067】
クリヤ塗料組成物には、必要に応じて、透明性を阻害しない程度に、前述の着色顔料、光輝性顔料、染料等を含有させることができる。さらに、体質顔料、硬化触媒、増粘剤、紫外線吸収剤、光安定剤、消泡剤、防錆剤、可塑剤、有機溶剤、表面調整剤、沈降防止剤等を適宜含有させることができる。
【0068】
本発明のプルラン誘導体を含有する塗料組成物は、例えば、ローラー塗装、刷毛塗装、浸漬塗装、スプレー塗装(非静電塗装、静電塗装等)、カーテンフロー塗装、スクリーン印刷、凸版印刷等により、被塗物に塗装または印刷することができる。
【0069】
被塗物に本発明のプルラン誘導体を含有する塗料組成物を塗装してなるウェット塗膜の乾燥又は硬化は、例えば、常温で乾燥又は加熱することにより行われ、加熱は公知の加熱手段により行うことができる。加熱には、例えば、熱風炉、電気炉、赤外線誘導加熱炉等の乾燥炉を適用できる。乾燥又は硬化は、例えば、100℃未満で1〜40分間乾燥した後に常温(50℃以下)で10時間以上放置する、又は常温(50℃以下)で1〜7日間放置することにより行うことができる。また、乾燥又は硬化は、100〜200℃で30秒間〜120分間、好ましくは100〜120℃で2〜30分間で行うこともできる。
【0070】
本発明のプルラン誘導体を含有する塗料組成物を塗装して得られる塗膜の膜厚は、特に制限されるものではないが、乾燥膜厚として、一般的には平均約1〜200μm、特に2〜100μm、とりわけ5〜50μmが好ましい。
【実施例】
【0071】
以下、実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれにのみに限定されるものではない。なお、「部」及び「%」は、特にことわらない限り、「質量部」及び「質量%」を意味する。
【0072】
<プルラン誘導体の製造>
<実施例1>
プルランA(平均分子量10万)162部をジメチルスルホキシド(DMSO)1300部に懸濁させ、攪拌しながら90℃まで昇温し、20分間その温度に保持して糊化させた。この溶液に炭酸水素ナトリウム20部を触媒として添加した。続いて、90℃に維持してブタン酸ビニル238部を添加し、1時間反応させた。その後、反応後の溶液を水道水中に流し込み、高速で攪拌して、粉砕を行い、濾過し、脱水乾燥して、プルラン誘導体No.1を得た。得られたプルラン誘導体No.1の重量平均分子量は17万であった。また13C−NMR分析を行い計算したブチリル基による置換度は1.9であった。
【0073】
<実施例2、3、8、9>
実施例1においてプルラン及びカルボン酸ビニルの配合を表1に記載のプルラン及びカルボン酸ビニルの配合とする以外は、実施例1と同様にして、プルラン誘導体No.2、3、8、9を製造した。得られたプルラン誘導体の重量平均分子量及びアシル基による置換度を表1に示した。
【0074】
<実施例4>
プルランA(平均分子量10万)162部をジメチルスルホキシド(DMSO)1300部に懸濁させ、攪拌しながら90℃まで昇温し、20分間その温度に保持して糊化させた。この溶液に炭酸水素ナトリウム20部を触媒として添加した。続いて、90℃に維持してブタン酸ビニル138部を添加し、1時間反応させた。ここで、反応後の溶液をわずかに抜き取りプルラン誘導体の13C−NMR分析を行ったところ、ブチリル基による置換度は1.1であった。続いて、反応後の溶液を80℃に維持して酢酸ビニル114部を添加し、1時間反応させた。その後、反応後の溶液を水道水中に流し込み、高速で攪拌して、粉砕を行い、濾過し、脱水乾燥して、プルラン誘導体No.4を得た。得られたプルラン誘導体No.4の重量平均分子量は16万であった。また13C−NMR分析を行い計算したブチリル基による置換度は1.1であり、アセチル基による置換度は1.2であった。
【0075】
<実施例5〜7、10、11>
実施例4においてプルラン及びカルボン酸ビニルの配合を表1に記載のプルラン及びカルボン酸ビニルの配合とする以外は、実施例1と同様にして、プルラン誘導体No5〜7、10、11を得た。なお、反応の際のカルボン酸ビニルの添加の順序は、実施例4と同様にして、まずブタン酸ビニル又はラウリン酸ビニルを添加して反応させた後に、続いて酢酸ビニルを添加する順序とした。得られたプルラン誘導体の重量平均分子量及びアシル基による置換度を表1に示した。
【0076】
<比較例1>
プルランA 162部をジメチルスルホキシド(DMSO)1300部に懸濁させ、攪拌しながら80℃まで昇温し、20分間その温度に保持して糊化させた。この溶液に炭酸水素ナトリウム20部を触媒として添加した。続いて、80℃に維持して酢酸ビニル161部を添加し、1時間反応させた。その後、反応後の溶液を水道水中に流し込み、高速で攪拌して、粉砕を行い、濾過し、脱水乾燥して、プルラン誘導体No.12を得た。得られたプルラン誘導体No.12の重量平均分子量は15万であった。また13C−NMR分析を行い計算したアセチル基による置換度は1.7であった。
【0077】
<比較例2>
プルランA 162部をジメチルスルホキシド(DMSO)1300部に懸濁させ、攪拌しながら90℃まで昇温し、20分間その温度に保持して糊化させた。この溶液に炭酸水素ナトリウム20部を触媒として添加した。続いて、90℃に維持してブタン酸ビニル213部を添加し、1時間反応させた。その後、反応後の溶液を水道水中に流し込み、高速で攪拌して、粉砕を行い、濾過し、脱水乾燥して、プルラン誘導体No.13を得た。得られたプルラン誘導体No.13の重量平均分子量は17万であった。また13C−NMR分析を行い計算したブチリル基による置換度は1.7であった。
【0078】
<比較例3、4>
比較例1において、酢酸ビニルの配合量を表1に記載の配合量とする以外は、比較例1と同様にして、プルラン誘導体No.14、15を製造した。得られたプルラン誘導体の重量平均分子量及びアセチル基による置換度を表1に示した。
【0079】
<比較例5>
デンプン分解物(平均分子量10万)162部をジメチルスルホキシド(DMSO)1300部に懸濁させ、攪拌しながら90℃まで昇温し、20分間その温度に保持して糊化させた。この溶液に炭酸水素ナトリウム20部を触媒として添加した。続いて、90℃に維持してブタン酸ビニル188部を添加し、1時間反応させた。ここで、反応後の溶液をわずかに抜き取り誘導体の13C−NMR分析を行ったところ、ブチリル基による置換度は1.5であった。続いて、80℃に維持して酢酸ビニル114部を添加し、1時間反応させた。その後、反応後の溶液を水道水中に流し込み、高速で攪拌して、粉砕を行い、濾過し、脱水乾燥して、誘導体No.16を得た。得られた誘導体No.16の重量平均分子量は18万であった。また13C−NMR分析を行い計算したブチリル基による置換度は1.5であり、アセチル基による置換度は1.2であった。
【0080】
<比較例6>
デンプン分解物(平均分子量10万)162部をジメチルスルホキシド(DMSO)1300部に懸濁させ、攪拌しながら90℃まで昇温し、20分間その温度に保持して糊化させた。この溶液に炭酸水素ナトリウム20部を触媒として添加した。続いて、90℃に維持してラウリン酸ビニル75部を添加し、1時間反応させた。ここで、反応後の溶液をわずかに抜き取り誘導体の13C−NMR分析を行ったところ、ラウロイル基による置換度は0.3であった。続いて、80℃に維持して酢酸ビニル227部を添加し、1時間反応させた。その後、反応後の溶液を水道水中に流し込み、高速で攪拌して、粉砕を行い、濾過し、脱水乾燥して、誘導体No.17を得た。得られた誘導体No.17の重量平均分子量は18万であった。また13C−NMR分析を行い計算したラウロイル基による置換度は0.3であり、アセチル基による置換度は2.4であった。
【0081】
<比較例7>
セルロース分解物(平均分子量10万)162部をジメチルスルホキシド(DMSO)1300部に懸濁させ、攪拌しながら90℃まで昇温し、20分間その温度に保持して糊化させた。この溶液に炭酸水素ナトリウム20部を触媒として添加した。続いて、90℃に維持してブタン酸ビニル188部を添加し、1時間反応させた。ここで、反応後の溶液をわずかに抜き取り誘導体の13C−NMR分析を行ったところ、ブチリル基による置換度は1.5であった。続いて、80℃に維持して酢酸ビニル114部を添加し、1時間反応させた。その後、反応後の溶液を水道水中に流し込み、高速で攪拌して、粉砕を行い、濾過し、脱水乾燥して、誘導体No.18を得た。得られた誘導体No.18の重量平均分子量は18万であった。また13C−NMR分析を行い計算したブチリル基による置換度は1.5であり、アセチル基による置換度は1.2であった。
【0082】
<評価試験>
実施例1〜11及び比較例1〜7で得られた(プルラン)誘導体の溶剤溶解性及び粘度を評価した。評価結果を表1に示した。
【0083】
<溶剤溶解性>
酢酸ブチルと各(プルラン)誘導体とを混合し十分に攪拌して不揮発分20%溶液を作成した。この時点で不溶物がある場合は「×」と評価した。続いて、不揮発分20%溶液を攪拌しながら、該溶液に(プルラン)誘導体を徐々に添加していった。そして、不溶物が生じた時点での不揮発分を求め、溶剤溶解性を下記基準で評価した。
○:不揮発分30%以上。
△:不揮発分20%以上30%未満。
×:不揮発分20%未満。
【0084】
<粘度>
酢酸ブチルと(プルラン)誘導体とを混合して十分に攪拌して不揮発分20%溶液を作成した。この溶液を20℃に維持し、B型粘度計を用いて60rpmの条件で測定した。なお、表1中に「−」で示した結果は、溶剤溶解性が悪く不揮発分20%溶液を作成した時点で不溶物があるため、粘度の測定をしなかったことを示す。
【0085】
【表1】

【0086】
(注1)プルランB:平均分子量5万
(注2)プルランC:プルランPI−20、商品名、(株)林原商事販売、平均分子量20万
【0087】
<ラッカー型クリヤ塗料組成物の製造>
<実施例12>
実施例1得られたプルラン誘導体No.1 100部、BYK−333(商品名、ビックケミー社製、表面調整剤)1.0部、及び酢酸ブチル404部を均一になるように混合して、不揮発分20%の有機溶剤型のラッカー型クリヤ塗料組成物No.1を得た。
【0088】
<実施例13〜22、比較例8〜14>
実施例12において、表2に記載の配合とする以外は実施例12と同様にして、有機溶剤型のラッカー型クリヤ塗料組成物No.2〜18を得た。
【0089】
<評価試験>
実施例12〜22及び比較例8〜14で得られた有機溶剤型のラッカー型クリヤ塗料組成物について、評価試験を行った。評価結果を表2に示した。
【0090】
【表2】

【0091】
<試験板作成>
ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂とのアロイ樹脂(サイコロイC6600、商品名、SABICイノベーティブプラスチックス ジャパン社製)に実施例12〜22及び比較例8〜14で得られた各ラッカー型クリヤ塗料組成物を乾燥膜厚が20μmとなるようスプレー塗装した。続いて、常温で3分放置した後、80℃で30分乾燥させて試験板を得た。
【0092】
(注3)<成膜性>
塗膜の塗面外観を目視観察し、下記基準で評価を行った。
○:ワレ等の異常がない。
△:基材には達していないが、微細なワレが発生している。
×:基材に達するワレが発生している。
【0093】
(注4)<光沢>
JIS K 5600−4−7(1999)の鏡面光沢度(60度)に準じて塗面の光沢度を測定し、下記基準で評価を行った。
○:光沢度80以上。
△:光沢度50以上80未満。
×:光沢度50未満。
【0094】
(注5)<耐水性>
試験板を40℃の温水に240時間浸漬した後、水洗した塗面を観察し、下記基準で評価を行った。
○:全く変化がない。
△:白化するものの、膨れ及び剥離はない。
×:膨れ又は剥離がある。
【0095】
<柔軟性>
上記試験板作成において被塗物をブリキ板とする以外は、上記試験板作成と同様の方法で塗装板を作成した。作成した塗装板の塗膜を水銀アマルガム法によりブリキ板から剥離し、それを長さ20mm、巾5mmの短冊状に裁断した。「テンシロンUTM−II−20」(オリエンテック社製、商品名)を使用し、短冊状の塗膜を20℃において引張り速度4mm/分で引っ張ることにより柔軟性試験を行った。塗膜が破断した時点での塗膜の長さを試験前の塗膜の長さと比較して、下記式により伸び率(%)を求めた。伸び率(%)を表2に示した。数値が高いほど良好である。
伸び率(%)=100×[(破断した時点の塗膜の長さ)−(試験前の塗膜の長さ)]/(試験前の塗膜の長さ)
【0096】
<硬化型クリヤ塗料組成物の製造>
<実施例23>
実施例3で得られたプルラン誘導体No.3 100部を酢酸ブチル400部に溶解し、プルラン誘導体溶液を得た。この溶液にBYK−333 1.0部、スミジュールN−3300(商品名、住化バイエルウレタン社製、イソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート、不揮発分100%)8.2部[イソシアネート基(NCO)/水酸基(OH)=0.5(当量比)]、及び酢酸ブチル37部を配合し均一になるように混合して不揮発分20%の有機溶剤型の硬化型クリヤ塗料組成物No.1を得た。
【0097】
<実施例24〜31、比較例15〜23>
実施例23において、表3に記載の配合とする以外は実施例23と同様にして硬化型クリヤ塗料組成物No.2〜18を得た。
【0098】
<評価試験>
実施例23〜31及び比較例15〜23で得られた有機溶剤型の硬化型型クリヤ塗料組成物について、下記試験板作成方法に従い試験板を作成し評価試験を行った。評価結果を表3に示した。
【0099】
【表3】

【0100】
(注6)サイメル327:商品名、日本サイテックインダストリーズ社製、イミノメチロール型のアミノ樹脂、不揮発分90%
【0101】
<試験板作成>
ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂とのアロイ樹脂(サイコロイC6600、商品名、SABICイノベーティブプラスチックス ジャパン社製)に実施例23〜31及び比較例15〜23で得られた各硬化型クリヤ塗料組成物を乾燥膜厚が20μmとなるようスプレー塗装した。続いて、実施例23〜28及び比較例15〜22の硬化型クリヤ塗料組成物については、常温で3分放置した後、80℃で30分乾燥させて試験板を得た。実施例29〜31及び比較例23の硬化型クリヤ塗料組成物については、常温で3分放置した後、100℃で30分乾燥させて試験板を得た。
【0102】
(注7)<耐溶剤性>
メチルエチルケトンをしみ込ませたガーゼを塗面に押さえつけ、20回往復させて塗面を擦った。試験後の塗膜表面を下記基準により目視で評価した。
○:異常がない。
△:塗膜表面の光沢が低下している。
×:塗膜表面の光沢低下および軟化が発生している。
【0103】
(注8)<耐候性>
各試験板について、JIS K 5600−7−8(1999)に準拠して、サンシャインウェザオメーターを用いて300時間の耐候性試験を行った。試験後の試験板について、JIS K 5600−4−7(1999)の鏡面光沢度(60度)に準じて塗膜表面の光沢度を測定して光沢保持率を求め、下記基準で評価を行った。なお、光沢保持率は下記式により求めた。
光沢保持率=100×耐候性試験後の光沢度/耐候性試験前の光沢度
○:光沢保持率80%以上。
△:光沢保持率50%以上80%未満。
×:光沢保持率50%未満。
【0104】
(注9)<耐薬品性>
各塗膜表面に、1%水酸化ナトリウム水溶液を0.5mL滴下して、温度20℃、相対湿度65%の雰囲気下に24時間放置した。放置後、塗膜表面をガーゼで拭き、塗膜表面を下記基準により目視で評価した。
○:塗膜表面の異常が全くない。
△:塗膜表面の変色(白化)が認められる。
×:塗膜表面の変色(白化)が著しい。
【0105】
<硬化型着色塗料組成物の製造>
<実施例32>
実施例3で得たプルラン誘導体No.3 100部を酢酸ブチル400部に溶解し、プルラン誘導体溶液を得た。この溶液にアルミニウムペーストF.X1440(商品名、東洋アルミニウム社製、アルミニウムペースト)41.8部(不揮発分23部)、BYK−333 1.0部、スミジュールN−3300 8.2部及び酢酸ブチル110部を加え、攪拌機により十分に混合して、不揮発分20%の有機溶剤型の硬化型着色塗料組成物No.1を得た。
【0106】
<実施例33〜40、比較例24〜32>
実施例32において、表4に記載の配合とする以外は実施例32と同様にして、有機溶剤型の硬化型着色塗料組成物No.2〜18を得た。
【0107】
<評価試験>
実施例32〜40及び比較例24〜32で得られた有機溶剤型の硬化型着色塗料組成物について、下記試験板作成方法に従い試験板を作成し評価試験を行った。評価結果を表4に示した。
【0108】
<試験板作成>
ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂とのアロイ樹脂(サイコロイC6600、商品名、SABICイノベーティブプラスチックス ジャパン社製)に実施例32〜40及び比較例24〜32で得られた各硬化型着色塗料組成物を乾燥膜厚が30μmとなるようスプレー塗装した。続いて、実施例32〜37及び比較例24〜31の硬化型着色塗料組成物については、常温で3分放置した後、80℃で30分乾燥させて試験板を得た。実施例38〜40及び比較例32の硬化型着色塗料組成物については、常温で3分放置した後、100℃で30分乾燥させて試験板を得た。
【0109】
【表4】

【0110】
<上塗りクリヤ塗料組成物の製造>
<製造例1>
レタンPGマルチクリヤーHX(Q)ベース(商品名、関西ペイント社製、ウレタン硬化系クリヤーベース塗料)100質量部とレタンPGマルチクリヤーHXスタンダード硬化剤(商品名、関西ペイント社製、イソシアネート硬化剤)50質量部とを配合し、上塗りクリヤ塗料組成物No.1を得た。
【0111】
<製造例2>
EBECRYL8402(商品名、ダイセルサイテック社製、ウレタンアクリレート)60部、及びペンタエリスリトールテトラアクリレート40部を酢酸ブチル412部に溶解し溶液を得た。この溶液にイルガキュア184(商品名、チバスペシャリティケミカル社製、光重合開始剤)2部、及びBYK−333 1.0部を加え、攪拌機により十分に混合して、不揮発分20%の活性エネルギー線硬化性塗料組成物(上塗りクリヤ塗料組成物No.2)を得た。
【0112】
<実施例41>
ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂とのアロイ樹脂(サイコロイC6600、商品名、SABICイノベーティブプラスチックス ジャパン社製)に硬化型着色塗料組成物No.1を乾燥膜厚が15μmとなるようスプレー塗装した。続いて、常温で3分放置した後、80℃で30分乾燥させて着色塗膜を得た。さらに、該着色塗膜上に製造例1で得た上塗りクリヤ塗料組成物No.1を乾燥膜厚が30μmとなるようスプレー塗装した。そして、常温で3分放置した後、80℃で30分乾燥させてクリヤ塗膜を形成し、複層塗膜を得た。得られた複層塗膜について評価試験を行った。評価結果を表5に示した。
【0113】
<実施例42〜49>
実施例41において、表4に示す塗料組成物とする以外は実施例41と同様にして、複層塗膜を得た。なお、硬化型着色塗料組成物No.7〜No.9については、乾燥条件を80℃×30分ではなく100℃×30分とした。得られた複層塗膜について評価試験を行った。評価結果を表5に示した。
【0114】
<実施例50>
ポリカーボネート樹脂とアクリロニトリル−ブタジエン−スチレン(ABS)樹脂とのアロイ樹脂(サイコロイC6600、商品名、SABICイノベーティブプラスチックス ジャパン社製)に硬化型着色塗料組成物No.1を乾燥膜厚が15μmとなるようスプレー塗装した。続いて、常温で3分放置した後、80℃で30分乾燥させて着色塗膜を得た。さらに、該着色塗膜上に製造例2で得た上塗りクリヤ塗料組成物No.2を乾燥膜厚が30μmとなるようスプレー塗装した。そして、常温で3分放置した後、80℃で10分乾燥させ、さらに、高圧水銀ランプにより6,000J/mの紫外線を照射してクリヤ塗膜を形成し、複層塗膜を得た。得られた複層塗膜について評価試験を行った。評価結果を表5に示した。
【0115】
【表5】

【0116】
<仕上り性>
塗膜の塗面外観を目視観察し、下記基準で評価を行った。
○:うねり、ツヤビケ、チリ肌がなく良好な仕上り性である。
△:うねり、ツヤビケ、チリ肌の少なくとも1つが見られる。
×:うねり、ツヤビケ、チリ肌の少なくとも1つが著しく見られ仕上り性不良。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プルランの有する水酸基の水素をアシル基で置換して得られるプルラン誘導体であって、該置換の置換度が1.8〜3.0であり、該アシル基が炭素数4〜15のアシル基を含むことを特徴とするプルラン誘導体。
【請求項2】
前記炭素数4〜15のアシル基が、ブチリル基又はラウロイル基である請求項1記載のプルラン誘導体。
【請求項3】
前記アシル基が、アセチル基及び炭素数4〜15のアシル基を含む請求項1又は2記載のプルラン誘導体。
【請求項4】
前記炭素数4〜15のアシル基による置換度が1.0〜2.9である請求項3記載のプルラン誘導体。
【請求項5】
重量平均分子量が30,000〜1,000,000である請求項1〜4のいずれか1項に記載のプルラン誘導体。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のプルラン誘導体及び有機溶剤を含有する有機溶剤型塗料組成物。
【請求項7】
水酸基と反応性を有する基を1分子中に少なくとも2個有する硬化剤を含有する請求項6記載の有機溶剤型塗料組成物。
【請求項8】
前記水酸基と反応性を有する基を1分子中に少なくとも2個有する硬化剤が、ポリイソシアネート化合物及び/又はアミノ樹脂である請求項7記載の有機溶剤型塗料組成物。

【公開番号】特開2011−32336(P2011−32336A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−178519(P2009−178519)
【出願日】平成21年7月31日(2009.7.31)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】