説明

プレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構造および圧着接合構法

【課題】建物外周部の柱2とプレキャストコンクリート梁1を圧着接合する場合にも、PC鋼材3の定着作業を建物内部から行い得ることを実現することにより、仮設の作業足場aを一切不要とし、もって、経済性、安全性に非常に優れたプレキャストコンクリート梁1と柱2の圧着接合構造および圧着接合構法を提供する。
【解決手段】プレキャストコンクリート梁1を、柱2へ圧着接合して成る接合構造において、プレキャストコンクリート梁1は、その両側面に、柱2の側面に対向する定着面を備えた段部11が設けられ、PC鋼材3は、その一端が前記プレキャストコンクリート梁1の段部11に定着され、他端が、前記梁1及び柱2の内部を通って水平方向又は鉛直方向に折り返され、同一の又は別異のプレキャストコンクリート梁に設けた段部11に緊張して定着されることにより、プレキャストコンクリート梁1が柱2に圧着接合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プレキャストコンクリート梁を、柱(プレキャストコンクリート柱、又は現場打ち施工による鉄筋コンクリート造柱、鉄骨鉄筋コンクリート造柱を含む。以下同じ。)へ圧着接合して成る圧着接合構造及び圧着接合構法の技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
プレキャストコンクリート梁を、柱へ圧着接合して成る圧着接合構造及び圧着接合構法に係る技術は、種々開示されている(例えば、特許文献1〜5を参照)。
【0003】
従来、建物外周部の柱とプレキャストコンクリート梁を圧着接合するには、図5に示したように、プレキャストコンクリート梁1を柱2の側面に当接して隣接する柱2、2間に架設し、PC鋼材3を、同梁1の材軸方向に水平に設けたシースとこれと連続する柱2に設けたシースに亘って直線状に通して緊張し、定着具4により定着していた。そのため、PC鋼材3及びその定着具4を配置するための作業やPC鋼材3の緊張作業を、作業員が建物外部から行う必要があるので、建物外部に何らかの仮設の作業足場aを必要としていた。
【0004】
【特許文献1】特開平7−252884号公報
【特許文献2】特開平11−131587号公報
【特許文献3】特開2000−73448号公報
【特許文献4】特開2002−371634号公報
【特許文献5】特開2004−316322号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の構法によると、建物外周部の柱2とプレキャストコンクリート梁1を圧着接合するには、上記したように、建物外部に仮設の作業足場aを組み上げる必要があった。特に、中高層建物を構築する場合には跳ね出し足場などを構築しなければならず、仮設の作業足場aの施工に伴う費用、工期が嵩み、経済的でなかった。また、建物外部からの作業は、建物内部からの作業と比して、安全性の点で劣っていることは明らかである。
【0006】
本発明の目的は、建物外周部の柱2とプレキャストコンクリート梁1を圧着接合する場合にも、PC鋼材3の定着作業を建物内部から行い得ることを実現することにより、仮設の作業足場aを一切不要とし、もって、経済性、安全性に非常に優れたプレキャストコンクリート梁1と柱2の圧着接合構造および圧着接合構法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記従来技術の課題を解決するための手段として、請求項1に記載した発明に係るプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構造は、
プレキャストコンクリート梁を、柱へ圧着接合して成る接合構造において、
プレキャストコンクリート梁は、その両側面に、柱の側面に対向する定着面を備えた段部が設けられていること、
PC鋼材は、その一端が前記プレキャストコンクリート梁の段部に定着され、他端が、前記梁及び柱の内部を通って水平方向又は鉛直方向に折り返され、同一の又は別異のプレキャストコンクリート梁に設けた段部に緊張して定着されることにより、プレキャストコンクリート梁が柱に圧着接合されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2に記載した発明に係るプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構法は、
プレキャストコンクリート梁を、柱へ圧着接合する接合構法において、
柱に、その水平断面内をUターンして一側面へ開口するシースを設け、梁には、その両側面に沿って前記柱のシースの開口と一致する配置のシースを、梁の材軸方向に設けた段部に開口するように設け、
柱の前記側面へ梁の端部を当接させて各々のシース開口を一致させ、PC鋼材を、梁の段部から梁及び柱に設けたシースへU字形状に通して緊張し前記段部へ定着してプレキャストコンクリート梁を柱へ圧着接合することを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載した発明に係るプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構法は、
プレキャストコンクリート梁を、柱へ圧着接合する接合構法において、
隣接する柱とその間に架設する梁に、その水平断面内を通って各柱の一側面へ開口するシースを並行に設け、前記プレキャストコンクリート梁には、その両側面に沿って前記柱のシースの開口と一致する配置のシースを、梁の材軸方向に設けた段部に開口するように設け、
隣接する柱の前記側面へそれぞれ、プレキャストコンクリート梁の端部を当接させて各々のシース開口を一致させ、PC鋼材を、梁の段部から梁及び柱に設けたシースへ水平方向にコ字形状に通して緊張し前記段部へ定着してプレキャストコンクリート梁を柱へ圧着接合することを特徴とする。
【0010】
請求項4に記載した発明に係るプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構法は、
プレキャストコンクリート梁を、柱へ圧着接合する接合構法において、
柱に、その側面における上下の梁の当接部位で開口するシースを鉛直方向に並行に設け、梁には、その両側面に沿って前記柱のシースの開口と一致する配置のシースを、梁の材軸方向に設けた段部に開口するように設け、
柱の前記側面へ上下の梁の端部をそれぞれ当接させて各々のシース開口を一致させ、PC鋼材を、梁の段部から梁及び柱に設けたシースへ鉛直方向にコ字形状に通して緊張し前記段部へ定着してプレキャストコンクリート梁を柱へ圧着接合することを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載した発明は、請求項2〜4のいずれか一に記載したプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構法において、前記プレキャストコンクリート梁は、その両端部から段部に至るまでの範囲を断面矩形状に形成し、左右の段部の間をI形状等の軽量断面形状に形成した高強度コンクリートで製造することを特徴とする。
【0012】
請求項6に記載した発明は、請求項2〜4のいずれか一に記載したプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構法において、前記プレキャストコンクリート梁は、スパンの柱間に均等断面形状のプレキャストコンクリート梁を介して前記一の柱の側面へ圧着接合することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係るプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構造および圧着接合構法によれば、下記する効果を奏する。
1)建物内部の柱2は勿論のこと、建物外周部の柱2とプレキャストコンクリート梁1を圧着接合する場合にも、PC鋼材3の定着作業を建物内部から行うことを実現したので、仮設の作業足場aを一切不要とし、もって、経済性、安全性に非常に優れている。
2)プレキャストコンクリート梁1に段部11を設けることによりその重量を軽減することができるので、運搬性及び施工性並びに経済性に優れている。
3)柱梁接合部のコンクリートにPC鋼材3による側圧を加えることができるので、その耐力や靱性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明に係るプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構造および圧着接合構法は、上述した発明の効果を奏するべく、以下のように実施される。
【実施例1】
【0015】
図1A〜Cは、請求項2に記載したプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構法の実施例を示している。具体的に、図1Aは、前記圧着接合構法を示した立断面図を示し、図1Bは、図1AのB−B線矢視断面図を示し、図1Cは、図1AのC−C線矢視断面図を示している。
【0016】
この圧着接合構法は、プレキャストコンクリート梁1を、柱2(特には、建物外周部の柱)へ圧着接合する接合構法であり、柱2に、その水平断面内をUターンして一側面2aへ開口するシース7を設け、梁1には、その両側面に沿って前記柱2のシース7の開口と一致する配置のシース6を、梁1の材軸方向に設けた段部11、11に開口するように設け、柱2の前記側面2aへ梁1の端部を当接させて各々のシース開口6、7を一致させ、PC鋼材3を、梁1の段部11、11から梁1及び柱2に設けたシース6、7へU字形状に通してその端部を緊張し、前記段部11、11へ楔等の定着具4により定着してプレキャストコンクリート梁1を柱2へ圧着接合している(請求項2記載の発明)。
【0017】
前記プレキャストコンクリート梁1は、その両端部から段部11に至るまでの範囲を断面矩形状に形成し、左右の段部11、11の間をI形状等の軽量断面形状に形成した高強度コンクリートで製造している(請求項5記載の発明)。なお、前記プレキャストコンクリート梁1の形状はこれに限定されず、前記梁1の両側面にPC鋼材3を定着し得る大きさの切り欠き部を少なくとも確保していれば実施可能である。以下の実施例2〜4についてもほぼ同様の技術的思想とする。
【0018】
なお、図示例に係る前記シース6、7及びPC鋼材3は上下2段配置で実施しているがこれに限定されず、構造設計に応じて適宜増減できることは勿論である。以下の実施例2〜4についてもほぼ同様の技術的思想とする。
【0019】
前記圧着接合構法の手順は、プレキャストコンクリート梁1を柱2の側面に当接する際に、予め両者に設けたシース6、7の開口を連結するシース連結スリーブ(図示省略)を介在させると共に外周型枠を設置してグラウト材5を充填する。次に、建物内部から、前記シース6、7及びシース連結スリーブにPC鋼材3を水平方向にU字形状に通す作業を行い、前記グラウト材5が硬化した後に前記PC鋼材3を緊張し前記段部11、11へ定着具4により定着する。しかる後、シース6、7内にモルタルグラウトを圧入して圧着接合構法を終了する。
【0020】
前記圧着接合構法により施工した圧着接合構造は、プレキャストコンクリート梁1を、柱2へ圧着接合して成る接合構造であり、プレキャストコンクリート梁1は、その両側面に、柱2の側面2aに対向する定着面を備えた段部11、11が設けられ、PC鋼材3は、その一端が前記プレキャストコンクリート梁1の一側の段部11に定着され、他端が、前記梁1及び柱2を通って水平方向にU字形状に折り返され、同一のプレキャストコンクリート梁1の他側の定着面11に緊張して定着されることにより、プレキャストコンクリート梁1が柱2に圧着接合されている(請求項1記載の発明)。
【0021】
したがって、上述したプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構造および圧着接合構法によれば、建物内部の柱2は勿論のこと、建物外周部の柱2とプレキャストコンクリート梁1を圧着接合する場合においても、PC鋼材3の定着作業を建物内部から行うことができるので、仮設の作業足場a(図5参照)を不要とし、もって、経済性、安全性に非常に優れている。また、プレキャストコンクリート梁1に段部11を設けることによりその重量を軽減することができるので、運搬性及び施工性並びに経済性に優れている。さらに、柱梁接合部のコンクリートにPC鋼材3による側圧を加えることができるので、その耐力や靱性を高めることができる。
【実施例2】
【0022】
図2A、Bは、請求項2に記載したプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構法のバリエーションを概略的に示している。図2Aは、実施例2に係る圧着接合構法を示した立断面図を示し、図2Bは、図2AのB−B線矢視断面図を示している。
【0023】
この実施例2に係る圧着接合構法は、上記実施例1に係る前記プレキャストコンクリート梁1が、スパンの柱2、2間に均等断面形状のプレキャストコンクリート梁8を介して前記一の柱2の側面2aへ圧着接合して実施していることを特徴とする(請求項6記載の発明)。建物内部の柱2および均等断面形状のプレキャストコンクリート梁8には、前記プレキャストコンクリート梁1および建物外周部の柱2に設けたシース6、7の開口と一致する配置のシースが直線状に設けられている。
【0024】
この実施例2に係る圧着接合構法は、上下2段に設けたPC鋼材3、3(但し、実施例1と比して長尺のPC鋼材3を使用する。)を、建物外周部の柱2内で水平方向にU字形状に折り返し、前記均等断面形状のプレキャストコンクリート梁8を通って、建物内部の柱2に当接した前記プレキャストコンクリート梁1の左右の段部11、11で緊張して定着具4により定着している。この圧着接合構法は、以下の実施例3、4についてもほぼ同様に実施することができる。
【0025】
前記圧着接合構法の手順は、実施例1とほぼ同様に、前記プレキャストコンクリート梁1、8をそれぞれ柱2、2の側面に直線状に当接する際に、各接合部について、予めシース6、7等の開口を連結するシース連結スリーブを介在させると共に外周型枠を設置してグラウト材5を充填する。次に、建物内部から、前記シース6、7等およびシース連結スリーブにPC鋼材3を水平方向にU字形状に折り返して通す作業を行い、前記グラウト材5が硬化した後に前記PC鋼材3を緊張し前記プレキャストコンクリート梁1の段部11、11へ定着具4により定着する。しかる後、シース6、7等の内部にモルタルグラウトを圧入して圧着接合構法を終了する。
【0026】
前記圧着接合構法により施工した圧着接合構造は、プレキャストコンクリート梁1を、柱2へ圧着接合して成る接合構造であり、プレキャストコンクリート梁1は、その両側面に、柱2の側面2aに対向する定着面を備えた段部11、11が設けられ、PC鋼材3は、その一端が前記プレキャストコンクリート梁1の一側の段部11に定着され、他端が、前記梁1、8及び柱2を通って水平方向にU字形状に折り返され、同一のプレキャストコンクリート梁1の他側の定着面11に緊張して定着されることにより、プレキャストコンクリート梁1が柱2に圧着接合されている(請求項1記載の発明)。
【0027】
したがって、実施例2に係るプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構法および圧着接合構造によれば、実施例1と同様の作用効果を奏する。すなわち、建物内部の柱2は勿論のこと、建物外周部の柱2とプレキャストコンクリート梁1を圧着接合する場合にも、PC鋼材3の定着作業を建物内部から行うことができるので、仮設の作業足場a(図5参照)を不要とし、もって、経済性、安全性に非常に優れている。また、プレキャストコンクリート梁1に段部11を設けることによりその重量を軽減することができるので、運搬性及び施工性並びに経済性に優れている。さらに、柱梁接合部のコンクリートにPC鋼材3による側圧を加えることができるので、その耐力や靱性を高めることができる。
【実施例3】
【0028】
図3は、請求項3に記載したプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構法の実施例を概略的した平断面図である。
【0029】
この実施例3に係る圧着接合構法は、要するに、隣接するプレキャストコンクリート梁1、1a同士(或いは1a、1b同士)をPC鋼材3で一連に定着することを特徴としている。
【0030】
すなわち、この実施例3に係る圧着接合構法は、隣接する柱2、2(特には、建物外周部の柱)とその間に架設する梁8に、その水平断面内を通って各柱2、2の一側面2a、2aへ開口するシースを並行に設け、前記プレキャストコンクリート梁1、1aには、その両側面に沿って前記柱2のシースの開口と一致する配置のシースを、梁1、1aの材軸方向に設けた段部11…に開口するように設け、隣接する柱2、2の前記側面2a、2aへそれぞれプレキャストコンクリート梁1、1aの端部を当接させて各々のシース開口を一致させ、PC鋼材3を、梁1、1aの段部11…から梁1、1a及び柱2、2に設けたシースへ水平方向にコ字形状に通してその端部を緊張し前記段部11…へ楔等の定着具4により定着してプレキャストコンクリート梁1、1aを柱2、2へ圧着接合している(請求項3記載の発明)。
【0031】
具体的に、図示例に係る圧着接合構法は、前記プレキャストコンクリート梁1の段部11、11に上下2段に設けたPC鋼材3のいずれか一方(例えば、下段)を、上記実施例1により、水平方向にU字形状に配設してプレキャストコンクリート梁1と建物外周部のコーナー柱2との圧着接合を行い、他方(例えば、上段)のPC鋼材3を、建物外周部の柱2、2内とこの間の外周梁8内に水平方向にコ字形状に折り返し、その両端を、隣接するプレキャストコンクリート梁1、1aに設けた段部11、11に緊張して定着具4により定着している。同様に、前記プレキャストコンクリート梁1aの下段と、これと隣接するプレキャストコンクリート梁1bの下段を定着する等、以下順に、隣接するプレキャストコンクリート梁同士を段違いに定着して実施する。
【0032】
前記圧着接合構法の手順は、プレキャストコンクリート梁1、1aを柱2、2の側面2a、2aにそれぞれ当接する際に、予め両者に設けたシース6、7の開口を連結するシース連結スリーブ(図示省略)を介在させると共に外周型枠を設置してグラウト材5を充填する。次に、建物内部から、前記シース6、7及びシース連結スリーブにPC鋼材3を水平方向にコ字形状に通す作業を行い、前記グラウト材5が硬化した後に前記PC鋼材3を緊張し前記段部11、11へ定着具4により定着する。しかる後、シース6、7内にモルタルグラウトを圧入して圧着接合構法を終了する。
【0033】
前記圧着接合構法により施工した圧着接合構造は、プレキャストコンクリート梁1、1aを、柱2へ圧着接合して成る接合構造であり、プレキャストコンクリート梁1、1aは、その両側面に、柱2の側面2aに対向する定着面を備えた段部11、11が設けられ、PC鋼材3は、その一端が前記プレキャストコンクリート梁1の一側の段部11に定着され、他端が、前記梁1、1a、8及び柱2を通って水平方向にコ字形状に折り返され、隣接する別異のプレキャストコンクリート梁1aの定着面11に緊張して定着されることにより、プレキャストコンクリート梁1、1aが柱2に圧着接合されている(請求項1記載の発明)。
【0034】
したがって、実施例3に係るプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構造および圧着接合構法によれば、実施例1及び実施例2と同様の作用効果を奏する。すなわち、建物内部の柱2は勿論のこと、建物外周部の柱2とプレキャストコンクリート梁1を圧着接合する場合にも、PC鋼材3の定着作業を建物内部から行うことができるので、仮設の作業足場a(図5参照)を不要とし、もって、経済性、安全性に非常に優れている。また、プレキャストコンクリート梁1、1a…に段部11を設けることによりその重量を軽減することができるので、運搬性及び施工性並びに経済性に優れている。さらに、柱梁接合部のコンクリートにPC鋼材3による側圧を加えることができるので、その耐力や靱性を高めることができる。
【実施例4】
【0035】
図4は、請求項4に記載したプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構法の実施例を概略的に示した立断面図である。
【0036】
この実施例4に係る圧着接合構法は、要するに、上下階に配置したプレキャストコンクリート梁1、1c同士をPC鋼材3で一連に定着することを特徴としている。ちなみに、実施例4に係る柱2は、プレキャストコンクリート製で実施することが施工上好ましい。
【0037】
すなわち、この実施例4に係る圧着接合構法は、柱2に、その側面2aにおける上下の梁1、1cの当接部位で開口するシースを鉛直方向に並行に設け、梁1、1cには、その両側面に沿って前記柱2のシースの開口と一致する配置のシースを、梁1、1cの材軸方向に設けた段部11…に開口するように設け、柱2の前記側面2aへ上下の梁1、1cの端部をそれぞれ当接させて各々のシース開口を一致させ、PC鋼材3を、梁1の段部11、11から梁1、1c及び柱2に設けたシースへ鉛直方向にコ字形状に並行に通してその端を緊張し前記段部11へ楔等の定着具4により定着してプレキャストコンクリート梁1、1cを柱2へ圧着接合している(請求項4記載の発明)。
【0038】
具体的に、図示例に係る圧着接合構法は、前記プレキャストコンクリート梁1の左右の段部11、11に上下2段に設けたPC鋼材3の下段側のPC鋼材3、3を、下階のプレキャストコンクリート梁1cの左右の段部11、11の上段側へ、建物外周部の柱2、2内に鉛直方向にコ字形状に折り返し、各両端を、上下階のプレキャストコンクリート梁1、1cに設けた段部11、11へ緊張し定着具4により定着している。同様に、前記プレキャストコンクリート梁1の左右の段部11、11の上段側のPC鋼材3、3を、下階のプレキャストコンクリート梁1cの左右の定着面11、11の下段側へ、建物外周部の柱2、2内に鉛直方向にコ字形状に折り返し、各両端を、上下階のプレキャストコンクリート梁1、1cに設けた段部11、11へ緊張し定着具4により定着している。
【0039】
前記圧着接合構法の手順は、プレキャストコンクリート梁1及び1cを柱2、2の側面2aにそれぞれ当接する際に、予め両者に設けたシース6、7の開口を連結するシース連結スリーブを介在させると共に外周型枠を設置してグラウト材5を充填する。次に、建物内部から、前記シース6、7及びシース連結スリーブにPC鋼材3…を鉛直方向にコ字形状に通す作業を行う。具体的には、建物内部から、上階のプレキャストコンクリート梁1の左右の段部11、11における下段側のPC鋼材3、3を鉛直方向にコ字形状に折り返し、下階のプレキャストコンクリート梁1cの左右の段部11、11における上段側へ通し、且つ、上階のプレキャストコンクリート梁1の左右の段部11、11における上段側のPC鋼材3、3を鉛直方向にコ字形状に折り返し、下階のプレキャストコンクリート梁1cの左右の段部11、11における下段側へ通す。前記グラウト材5が硬化した後に各PC鋼材3を緊張し前記段部11へ定着具4により定着する。しかる後、シース6、7内にモルタルグラウトを圧入して圧着接合構法を終了する。
【0040】
前記圧着接合構法により施工した圧着接合構造は、プレキャストコンクリート梁1、1cを、柱2へ圧着接合して成る接合構造であり、プレキャストコンクリート梁1、1cは、その両側面に、柱2の側面2aに対向する定着面を備えた段部11、11が設けられ、PC鋼材3は、その一端が前記プレキャストコンクリート梁1の段部11に定着され、他端が、前記梁1、1c及び柱2、2を通って鉛直方向にコ字形状に折り返され、下階(又は上階)の別異のプレキャストコンクリート梁1cの定着面11に緊張して定着されることにより、プレキャストコンクリート梁1、1cが柱2に圧着接合されている(請求項1記載の発明)。
【0041】
したがって、実施例4に係るプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構法および圧着接合構造によれば、実施例1〜実施例3と同様の作用効果を奏する。すなわち、建物内部の柱2は勿論のこと、建物外周部の柱2とプレキャストコンクリート梁1、1cを圧着接合する場合にも、PC鋼材3の定着作業を建物内部から行うことができるので、仮設の作業足場a(図5参照)を不要とし、もって、経済性、安全性に非常に優れている。また、プレキャストコンクリート梁1、1cに段部11を設けることによりその重量を軽減することができるので、運搬性及び施工性並びに経済性に優れている。さらに、柱梁接合部のコンクリートにPC鋼材3による側圧を加えることができるので、その耐力や靱性を高めることができる。
【0042】
以上に実施形態を図面に基づいて説明したが、本発明は、図示例の実施形態の限りではなく、その技術的思想を逸脱しない範囲において、当業者が通常に行う設計変更、応用のバリエーションの範囲を含むことを念のために言及する。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】Aは、実施例1に係るプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構法および圧着接合構造を示した立断面図であり、Bは、AのB−B線矢視断面図であり、Cは、AのC−C線矢視断面図である。
【図2】実施例2に係るプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構法および圧着接合構造を示した立断面図であり、Bは、AのB−B線矢視断面図である。
【図3】実施例3に係るプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構法および圧着接合構造を示した平断面図である。
【図4】実施例4に係るプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構法および圧着接合構造を示した立断面図である。
【図5】従来技術に係るプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構法および圧着接合構造を示した立断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 プレキャストコンクリート梁
2 柱
2a 柱の側面
3 PC鋼材
4 定着具
5 グラウト材
6 シース
7 シース
8 プレキャストコンクリート梁
11 段部
1a プレキャストコンクリート梁
1b プレキャストコンクリート梁
1c プレキャストコンクリート梁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレキャストコンクリート梁を、柱へ圧着接合して成る接合構造において、
プレキャストコンクリート梁は、その両側面に、柱の側面に対向する定着面を備えた段部が設けられていること、
PC鋼材は、その一端が前記プレキャストコンクリート梁の段部に定着され、他端が、前記梁及び柱の内部を通って水平方向又は鉛直方向に折り返され、同一の又は別異のプレキャストコンクリート梁に設けた段部に緊張して定着されることにより、プレキャストコンクリート梁が柱に圧着接合されていることを特徴とする、プレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構造。
【請求項2】
プレキャストコンクリート梁を、柱へ圧着接合する接合構法において、
柱に、その水平断面内をUターンして一側面へ開口するシースを設け、梁には、その両側面に沿って前記柱のシースの開口と一致する配置のシースを、梁の材軸方向に設けた段部に開口するように設け、
柱の前記側面へ梁の端部を当接させて各々のシース開口を一致させ、PC鋼材を、梁の段部から梁及び柱に設けたシースへU字形状に通して緊張し前記段部へ定着してプレキャストコンクリート梁を柱へ圧着接合することを特徴とする、プレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構法。
【請求項3】
プレキャストコンクリート梁を、柱へ圧着接合する接合構法において、
隣接する柱とその間に架設する梁に、その水平断面内を通って各柱の一側面へ開口するシースを並行に設け、前記プレキャストコンクリート梁には、その両側面に沿って前記柱のシースの開口と一致する配置のシースを、梁の材軸方向に設けた段部に開口するように設け、
隣接する柱の前記側面へそれぞれ、プレキャストコンクリート梁の端部を当接させて各々のシース開口を一致させ、PC鋼材を、梁の段部から梁及び柱に設けたシースへ水平方向にコ字形状に通して緊張し前記段部へ定着してプレキャストコンクリート梁を柱へ圧着接合することを特徴とする、プレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構法。
【請求項4】
プレキャストコンクリート梁を、柱へ圧着接合する接合構法において、
柱に、その側面における上下の梁の当接部位で開口するシースを鉛直方向に並行に設け、梁には、その両側面に沿って前記柱のシースの開口と一致する配置のシースを、梁の材軸方向に設けた段部に開口するように設け、
柱の前記側面へ上下の梁の端部をそれぞれ当接させて各々のシース開口を一致させ、PC鋼材を、梁の段部から梁及び柱に設けたシースへ鉛直方向にコ字形状に通して緊張し前記段部へ定着してプレキャストコンクリート梁を柱へ圧着接合することを特徴とする、プレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構法。
【請求項5】
前記プレキャストコンクリート梁は、その両端部から段部に至るまでの範囲を断面矩形状に形成し、左右の段部の間をI形状等の軽量断面形状に形成した高強度コンクリートで製造することを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一に記載したプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構法。
【請求項6】
前記プレキャストコンクリート梁は、スパンの柱間に均等断面形状のプレキャストコンクリート梁を介して前記一の柱の側面へ圧着接合することを特徴とする、請求項2〜4のいずれか一に記載したプレキャストコンクリート梁と柱の圧着接合構法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2007−247276(P2007−247276A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−72723(P2006−72723)
【出願日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【出願人】(000003621)株式会社竹中工務店 (1,669)
【Fターム(参考)】