説明

プレグナン類の製造方法

式(II)で表わされる3-ベンゾイルオキシ-Δ3,5-プレグナン誘導体を、実質的に無水の反応混合物中で、強酸の窒素塩基による塩の存在下にて、求電子性フッ素化剤と反応させることを含んでなる、式(I)で表わされる6α-フルオロプレグナン誘導体の改良された立体選択的製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実質的に無水の反応条件下、強酸のアミン塩の存在下で、選択されたプレグナン誘導体の6位を求電子性フッ素化剤でフッ素化することを含む6α-フルオロプレグナン類の改良された立体選択的製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
フルオロステロイド類は有用な抗炎症性化合物であり、そして立体異性体が異なる薬理効力を有することが知られている。また6α-フルオロプレグナン誘導体は、一般に対応する6β-フルオロ類似体より高い効力を有することが分かっている。6α-フルオロプレグナン類を得るいくつもの方法が開発されているが、これらの方法はすべて立体選択性が劣っている。より経済的な工業規模の製造を行うため6α-/6β-立体異性体比の高い方法が必要である。
【0003】
F. La Logglaらは、米国特許願公開第2002/0062021号に、下記化学式:
【化1】

(式中、RはH、OH及び1-4個の炭素原子を有するアルキル基から選択されそしてR1は1-4個の炭素原子を有するアルキル基である)で表わされるプレグナン類を、求電子性フッ素化剤でフッ素化する方法を記載している。F. La Logglaらの試験結果は、これらの方法が6α/6β比が90:10より高くない反応混合物をもたらすことを示している。不溶性生成物を反応混合物から濾過することによって、6β-異性体を一部分除くことはできるが生成物の損失を伴う。したがって、純粋の6α-フルオロ誘導体は、さらに精製及び/又は異性化のステップを実施した後にしか得ることができず(米国特許第6,369,218号参照)、これら両ステップはともに追加の経費とかなりの製品損失を避けられない。
【0004】
J.Y.Godardらは、求電子性フッ素化剤、好ましくはSelectfluor(登録商標)を水含有溶媒中で使って、安息香酸アンドロスタンエノール誘導体(3-ベンゾイルオキシ-9β,11β-エポキシ-16α-メチル-17β-メトキシカルボニル-Δ1,3,5-アンドロスタトリエン-17α-オール)に6α-フッ素官能基を導入する方法を開示している。我々は、D段階で得た粗生成物(6α-フルオロ-9β,11β-エポキシ-16α-メチル-17β-メトキシカルボニル-Δ1,4 -アンドロスタジエン-17α-オール-3-オン)が、有意な量の6-ヒドロキシ化生成物のみならず少なくとも4%の6β-異性体を含有していることを発見した。米国特許第5,478,957号に記載されている反応条件を、プレグナンの安息香酸エノールに適用すると、かなりの量の6-ヒドロキシ化副生成物のみたらずさらに多量(6.5%)の6β-異性体が生成した。したがって、米国特許第5,478,957号の条件を使って得ることができた6α-プレグナン類の純度は不十分な純度であるから、医薬製剤用に適した生成物を得るにはさらに精製する必要がある。このような精製を実施できる場合でも、所望の6α-異性体のかなりの量がその精製ステップを行っている間に失われることは避けられない。また、プレグナンを、側鎖を除くことによって対応するアンドロスタン誘導体に変換する反応は比較的有効であるが(例えば、米国特許第5,478,957号の実施例1の段階A参照)、その逆の反応(そのプレグナンの側鎖の再構築)は困難な多数のステップの操作になる。したがって、米国特許第5,478,957号の生成物は、ジフロラゾン、フルメタゾン、ジフルプレドネート、フルオシノロンアセトニド、フルオシノニド、フルニソリドなどの価値ある6α-フッ素化プレグナン類を得るのに全く役に立たない。
【0005】
国際特許願公開第WO02/100878 A1号は、9β,11-エポキシ-16α-メチル-3,17,21-トリヒドロキシ-プレグナ-1,3,5-トリエン-20-オン-21-アセテート-3-ベンゾエートを、求電子性フッ素化剤で6位をフッ素化するための中間体として使用する、フルメタゾンの製造法を記載している。
【発明の開示】
【0006】
驚くべきことに、3-ベンゾイルオキシ-Δ3,5-プレグナン誘導体類を基体として選択し、次いでフッ素化反応を、実質的に無水の反応混合物中にて強酸の窒素塩基による塩の存在下で実施すると、プレグナンの求電子性フッ素化反応の立体選択性を大きく高めることができかつ副生成物の生成を実質的に抑制できることが発見されたのである。これらの条件下では、反応混合物中の6α/6β比は99:1まで達成することができしかも6-ヒドロキシ化物、4-フッ素化物などの副生成物の生成は無視できる。さらに、この本発明のフッ素化法によれば、より高い化学的収率が得られ、かつその粗生成物の純度が高いので、有用な医薬製品を得るために必要な精製操作回数が少ない。
【0007】
本発明の一つの目的は、不活性溶媒中でかつ外界温度にてプレグナン誘導体の6位を求電子性フッ素化剤でフッ素化することを含む、下記式I:
【化2】

(式中、R2は水素、C1-C8アルキル又はC3-C8シクロアルキルであり、R3は水素、C1-C8アルキル又はR4-C(O)-O-である(式中、R4はC1-C8アルキル又はC1-C8ヒドロキシアルキルである))で表わされる6α-フッ素化合物の製造方法であって、(1)下記式II:
【化3】

(式中、R1はフェニルであるか又はハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、モノもしくはジC1-C8アルキルアミノ、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ及び/又はC1-C8カルバルコキシで置換されたフェニルであり、そしてR2とR3は先に定義したのと同じである)で表わされる化合物を、求電子性フッ素化剤と、(2)強酸の窒素塩基による塩の存在下、(3)実質的に無水の反応条件下で反応させることを特徴とする前記製造方法である。
【0008】
式I中のR2は好ましくはC1-C4アルキルを意味し、そしてメチル、エチル、n-もしくはi-プロピル並びにブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル及びオクチルの異性体でもよい。C3-C8シクロアルキルとしての式I中のR2は、好ましくはC3-C6シクロアルキルであり、より好ましくはC4-C6シクロアルキルである。シクロアルキルは、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル及びシクロオクチルでよい。好ましいシクロアルキルはシクロペンチルとシクロへキシルである。
【0009】
式I中のR2は、最も好ましくはC1-C8アルキルであり、特に好ましいのはC1-C4アルキルである。
【0010】
アルキルとしてのR3は、好ましくはC1-C6アルキルであり、より好ましくはC1-C4アルキルであり、そして最も好ましくはC1-C2アルキルである。アルキルの例は、メチル、エチル、n-もしくはi-プロピル、並びにブチル、ペンチル、ヘキシル及びオクチルの異性体であり、アルキルとしてのR3はメチル又はエチルが特に好ましい。
【0011】
残基R4-C(O)-O-中のR4は、アルキルとしてR3について先に述べたのと同じものが好ましい。アルキルとしてのR4はメチル又はエチルが最も好ましい。ヒドロキシアルキルとしてのR4は1-4個の及びより好ましくは1-2個の炭素原子を含有している。その例はヒドロキシメチルとヒドロキシエチルである。
【0012】
好ましい実施態様でR3は、水素、メチル及びアセチルオキシからなる群から選択される。
【0013】
この反応に用いる不活性溶媒はよく知られており、極性又は非極性の溶媒からなる群から選択できる。その例は、ニトリル類(アセトニトリル)、N-ジアルキル化カルボン酸アミド類(ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド)もしくはN-アルキル化環式カルボン酸アミド類(N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン)、エーテル類(テトラヒドロフラン、ジオキサン)及びカルボン酸エステル類(酢酸エチル、安息香酸メチル)である。
【0014】
外界温度は、-20〜50℃の温度範囲を意味し、好ましくは-10〜40℃であり、最も好ましくは0~30℃である。
【0015】
フェニルとしてのR1の好ましい置換基は、フッ素、塩素、ヒドロキシ、ジメチルアミノ、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ及びメトキシカルボニルである。置換されたフェニルの例は、4-フルオロフェニル、2,4-ジフルオロフェニル、2,4,6-トリフルオロフェニル、4-クロロフェニル、2,4-ジクロロフェニル、2-もしくは4-ヒドロキシフェニル、4-メチルフェニル、4-エチルフェニル、2,4-ジメチルフェニル、2,4-ジエチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル、4-メトキシフェニル、4-エトキシフェニル、2,4-ジメトキシフェニル、2,4-ジエトキシフェニル、2,4,6-トリメトキシフェニル、2-メチル-4-フルオロフェニル、2-メチル-4-クロロフェニル、2-又は3-又は4-メトキシカルボニルフェニルである。
【0016】
好ましい実施態様で、R1はフェニルである。
【0017】
適切な求電子性フッ素化剤は当該技術分野で周知であり、一部は市販されている。これらの化合物としては、例えばN-フルオロスルホンアミド類、N-フルオロピリミジウム塩類、N-フルオロビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド類、N-アルキル-N’-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタン塩類、N-フルオロ-N’-ヒドロキシ-1,4-ヂアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタン塩類及びフッ化過塩素酸がある。
【0018】
フッ素化剤はN-F第四級塩から選択することが好ましい。というのはこの化合物が市販されていてかつフッ化過塩素酸などの古い薬剤に関する安全性が改善されているからである。好ましいフッ素化剤の例は、1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタン-ビステトラフルオロボレート(Selectfluor)(登録商標)及び1-フルオロ-4-ヒドロキシ-1,4-ヂアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタン-ビステトラフルオロボレート(Accufluor)(登録商標)である。
【0019】
求電子性フッ素化剤は損失無しで過剰に使用できるが、過剰な薬剤は反応が終了したのち分解しなければならないので、この追加行程のステップは避けることが非常に望ましい。本発明の方法に従って、実質的に等モルの量のフッ素化剤と式IIで表わされる化合物を使ってフッ素化反応を完了させる。したがって、実質的に等モルの量が特に好ましい。式IIで表わされる化合物:フッ素化剤のモル比は好ましくは1:1〜1:0.95であり、特に好ましくは1:1である。
【0020】
強酸のアニオンのアミン塩類は、下記式III :
HB+A (III )
(式中、HB+は、脂肪族、芳香族、環式脂肪族又は環式芳香族の窒素塩基のカチオンであり、そしてAは有機又は無機の強酸のアニオンである)で表わされる。
【0021】
カチオンHB+は1個以上のアミン基例えば1〜4個又は1〜2個のアミン基を有し、そしてアニオンAはそれらの正電荷の数で存在している。
【0022】
前記カチオンはアンモニア、第一級、第二級又は第三級のアミン類から誘導することができ、中でも第三級アミン類が好ましい。このアミンは、炭素原子を合計、好ましくは1〜24個、より好ましくは1〜16個そして最も好ましくは1〜8個含有している。これらアミン類は窒素原子を1〜4個含有し、より好ましくは1又は2個含有している。
【0023】
前記アミンのN-原子は以下の基で置換されてもよい。すなわち、C1‐C12アルキル好ましくはC1-C6アルキルそして最も好ましくはC1-C4アルキル、C3-C8シクロアルキル好ましくはC5-C8シクロアルキル、C4-C10へテロシクロアルキル好ましくはC4-C8ヘテロシクロアルキル、C8-C10アリール、C7-C10アラルキル、C5-C10ヘテロアリール又はC5-C10へテロアラルキルで置換されてもよい。これらアミンのN原子は、脂肪族又は芳香族の単環式又は多環式のリングの一部であってもよく(環式アミン類)、そして前記N-原子は上記のような残基の一つで置換してもよい。環式アミンのリングが例えばC1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ又はヒドロキシルで置換さてもよいのと同様に、前記N-原子におけるアルキル基は例えばC3-C8シクロアルキル、C4-C10ヘテロシクロアルキル、C1-C6アルキル、C1-C6アルコキシ又はヒドロキシル、シクロアルキル、ヘテロシクロアルキル、アリール、ヘテロアリール、アラルキル及びヘテロアラルキルで置換されてもよい。
【0024】
カチオンHB+が誘導されるアミン類の例は、モノ-、ジ-及び好ましくはトリ-アルキルアミン類であり、例えば、メチル-,エチル-、プロピル-、ブチル-、オクチル-、ジメチル-、ジエチル-、ジプロピル-、ジブチル-、メチル-エチル-、メチル-プロピル-、メチル-ブチル-、トリメチル-、トリエチル-、トリプロピル-、トリブチル-、メチル-ジエチル-、ジメチル-エチル-アミンである。カチオンHB+が誘導されるアミン類の他の例は、シクロアルキル-、ヘテロシクロアルキル-、アリール-、アラルキル-、ヘテロアリ−ル-及びヘテロアラルキル-アミン類であり、好ましくは第三級アミン類であり、例えば、シクロヘキシル-、シクロヘキシル-メチル-、シクロヘキシル-ジメチル-、テトラヒドロフラニル-、テトラヒドロフラニル-メチル-、テトラヒドロフラニル-ジメチル-、フェニル-、フェニル-メチル-、フェニル-エチル-、フェニル-ブチル-、フェニル-ジメチル-、フェニル-ジエチル-、ベンジル-、ベンジル-メチル-、ベンジル-エチル-、ベンジル-イソプロピル-、ベンジル-ブチル-、ベンジル-ジメチル-、ベンジル-ジエチル-、フラニル-、フラニル-メチル-、フラニル-ジメチル-、チオフェニル-、チオフェニル-メチル-、チオフェニル-ジメチル-、フラニルメチル-、フラニルメチル-ジメチル-アミンがある。置換残基を有するアミン類の例は、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及びN,N-ジメチル-エタノールアミンである。
【0025】
脂肪族、環式又は芳香族のアミン類及び1個以上のアミノ基を有する多価アミン類の例は、ピロリジン、ピペリジン、N-メチル-ピロリジン、N-メチル-ピぺリジン、N-メチル-モルホリン、ジメチルアミノ-N-メチル-ピペリジン、N,N’-ジアザビシクロヘプタン、N,N’-ジアザビシクロノナン、2H-ピロール、イミダゾール、ピラゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、3H-インドール、1H-インダゾール、プリンイソキノリン、キノリン、フタラジン、ナフチドリン、キノキサリン、キナゾリン、プテリジン、アクリジン、フェナントロリン、フェナジン、イミダゾリン、トリアジン、2-ピコリン、ルチジン、ベンゾイミダゾール、メチルイミダゾール、ピラゾール、4-ジメチルアミノピリジン,4-ピロリジノピリジン、1,3,5-トリアジン及び4-メチルアミノピリジンである。
【0026】
好ましいアミン類は環式、多環式及び芳香族のアミン類からなる群から選択され、そして芳香族アミン類が特に好ましい。好ましい芳香族アミンはピリジンとピリミジンである。
【0027】
前記アニオンは、無機又は有機の酸から誘導することができ、そしてそのアニオンは、所望の製品が不純物で汚染されることを避けるためハロゲン化反応のような副反応を起こさない酸から選択することが好ましい。無機酸のアニオンの例は、ハロゲン化物、水素硫酸、硫酸、モノ-もしくはジ-水素リン酸及びリン酸のアニオンである。有機酸のアニオンの例は、カルボン酸、スルホン酸、ホスフィン酸及びホスホン酸のアニオンである。前記有機酸の有機残基は、例えばハロゲン及び特にフッ素、ヒドロキシ、C1-C6アルキル又はC1-C6アルコキシで置換されてもよい。具体例は、ギ酸、酢酸、トリフルオロ酢酸、シュウ酸、マロン酸、安息香酸、フッ素化安息香酸、メチルスルホン酸、トリフルオロメチルスルホン酸、フェニルスルホン酸、p-トルイルスルホン酸、フルオロフェニルスルホン酸、メチルホスホン酸、フェニルホスホン酸の残基である。特に好ましいのはメチルスルホン酸のようなスルホン酸の残基である。
【0028】
特に好ましいアミン塩はピリジンメチルスルホン酸である。
【0029】
アミン塩の量は広範囲にわたって変えることができ、式IIで表わされる化合物の量に対して0.1〜100重量%、好ましくは1〜100重量%、より好ましくは5〜100重量%そして最も好ましくは10〜100重量%である。50〜100未満の重量%の範囲、例えば50〜90重量%が本発明の方法を実施するのに有用であることが分かった。
【0030】
式III で表わされるアミン塩類は予め形成された塩としてそれ自体を反応混合物に添加してもよく、又はこれらアミン塩はアミンと強酸を反応混合物に添加してその場で形成させてもよい。これは本発明の方法を実施する好ましい実施態様である。
【0031】
本発明に関連する実質的に無水の反応条件は、反応混合物に水を全く添加しないことを意味する。溶媒と化学薬剤は乾燥する必要はなくそして痕跡量の水が存在しても反応に影響しない。
【0032】
本発明の別の目的は、本発明の方法の価値ある中間体としての下記式II:
【化4】

(式中、R1、R2及びR3は、R2とR3がともにメチルであるときR1はフェニルでないという条件で、先に述べたのと同じものを意味する)で表わされる化合物である。R1、R2及びR3は先に述べた好ましい実施態様を含んでいる。
【0033】
式IIで表わされる化合物は、9,11β-エポキシ-Δ4-プレグナン-17β-オール-21-ヒドロキシ-3,20-ジオン類を、カルボン酸又はその誘導体例えばカルボン酸のハロゲン化物、無水物又はエステルでエステル化又はエステル交換することによって周知の方式でかつ周知の又は類似の行程で得られる。その製造は、通常2種のカルボン酸残基を導入しなければならないので、2ステップで有利に実施される。第一の反応ステップで、前記21-ヒドロキシ基を、例えば無水酢酸のような無水カルボン酸で選択的にエステル化することができる。第二の反応ステップでは、ベンゼンカルボン酸のハロゲン化物(臭化物又は塩化物)で3-オールエステルが製造される。この反応のより詳細な事項は実施例で述べる。式IIで表わされる化合物は高い収率と純度で得られるので、その粗反応生成物を、反応混合物から分離した後、直接使用して本発明の方法のフッ素化行程を実施できる。その粗反応生成物は安息香酸のアルキルエステル類を含有していてもよく、これはアルカノール類例えばメタノール、エタノール、プロパノール又はブタノールを添加して製造中に形成される。その量は、式IIで表わされる化合物に対して、30重量%までであり、好ましくは0.1〜20重量%である。単離されて精製された式IIで表わされる化合物を本発明のフッ素化工程に使用する場合、前記安息香酸アルキルエステルを反応混合物に添加することが有利である。
【0034】
本発明の方法は、式IIで表わされる化合物を適切な溶媒に溶解又は懸濁させ次にその溶液を、20℃より低い温度、好ましくは約10℃まで冷却して実施できる。次に、前記アミン塩又はほぼ当量のアミンと強酸を添加し、続いて求電子性フッ素化剤を添加する。このフッ素化反応は発熱反応なので、この段階で、式I及びIIで表わされる化合物に作用して分解する温度を超えないように注意しなければならない。フッ素化剤は少しずつ滴下して添加することが好ましくかつ反応混合物はこの操作中冷却することが好ましい。反応混合物は、フッ素化剤を添加したのち攪拌しそして温度は外界温度好ましくは室温まで上げてもよい。反応の進行は式Iで表わされる出発物質をクロマトグラフィーで測定することによって制御できる。この反応は、前記出発物質の存在がもはや検出できなくなると停止する。その反応時間は0.5〜8時間である。式IIで表わされる所望の化合物は、周知の方法、例えば、溶媒を除き、得られた懸濁液を濾過又は抽出し、続いて適切な溶媒例えばアルカノールから再結晶させる方法で、反応混合物から単離することができる。
【0035】
本発明の方法は、式Iで表わされる化合物の従来の製造方法を凌駕する下記の各種の利点を提供する。
a) 粗反応生成物の6α/6β比が99:1より高く非常に高い;
b) 反応副生成物の量が少ない;
c) 化学的収率が高くかつ反応時間が短い;
d) 所望の6α-フルオロステロイドを得るための精製ステップが少ない;
e) 工業規模の製造が可能である;
【0036】
本発明の方法は、有効な医薬化合物として使用されるフッ素化ステロイド類を製造するのに非常に有用である。このような化合物の具体例は、フルメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノロン、ジフルプレドネート及びこれらの誘導体である。
下記実施例で本発明を説明する。
【実施例】
【0037】
A) 式IIで表わされる化合物の製造
実施例A1 9β,11-エポキシ-16α-メチル-3,17,21-トリヒドロキシ-プレグナ-1,3,5-トリエン-20-オン-21-アセテート-3-ベンゾエートの製造
【化5】

275gのピリジンに、110gの9β,11β-エポキシ-17,21-ジヒドロキシ-16β-メチル-プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン-21-アセテートを溶解した溶液に、窒素雰囲気下、75℃にて66gの塩化ベンゾイルを添加する。次いで、その反応混合物を75℃で180分間保持し、30℃まで冷却し次に55gのメタノールで希釈する。その溶液を45℃にて30分間攪拌した後、160gの85%リン酸、1100gの水及び1100gのジクロロメタンの冷混合物に添加する。30分間攪拌した後、有機相を分離して再び1100gの水で洗浄する。有機相を、分離した後、11gのピリジンで希釈し次いで減圧下で蒸発させて表題化合物からなる油状物を得る。なおこの生成物は次のステップで直接使用する。その油状残留物をジイソプロピルエーテルでトリチュレートすると、標題化合物が淡黄褐色の結晶質粉末として得られる。
【0038】
実施例 A2 9β,11β-エポキシ-16α-メチル-3,17,21-トリヒドロキシ-プレグナ-1,3,5-トリエン-20-オン-21-アセテート-3-ベンゾエートの製造
【化6】

216gのピリジンに、108gの9β,11β-エポキシ-17,21-ジヒドロキシ-16α-メチル-プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン-21-アセテートを溶解した溶液に、窒素雰囲気下、75℃にて64.8gの塩化ベンゾイルを添加する。次いで、その反応混合物を75℃で180分間保持し、30℃まで冷却し次に54gのメタノールで希釈する。その溶液を45℃にて30分間攪拌した後、126gの85%リン酸、1080gの水及び1080gのジクロロメタンの冷混合物に添加する。30分間攪拌した後、有機相を分離して再び1080gの水で洗浄する。有機相を、分離した後、10.8gのピリジンで希釈し次いで減圧下で蒸発させて表題化合物からなる油状物を得る。なお、この生成物は次のステップで直接使用する。
【0039】
実施例 A3 9β,11β-エポキシ-3,17,21-トリヒドロキシ-プレグナ-1,3,5-トリエン-20-オン-21-アセテート-3-ベンゾエートの製造
【化7】

135gのピリジンに、50gの9β,11β-エポキシ-17,21-ジヒドロキシ-プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン-21-アセテートを溶解した溶液に、窒素雰囲気下、75℃にて30gの塩化ベンゾイルを添加する。次いで、その反応混合物を75℃で180分間保持し、30℃まで冷却し次に25gのメタノールで希釈する。その溶液を45℃にて30分間攪拌した後、78gの85%リン酸、500gの水及び500gのジクロロメタンの冷混合物に添加する。30分間攪拌した後、有機相を分離して再び500gの水で洗浄する。有機相を、分離した後、5gのピリジンで希釈し次いで減圧下で蒸発させて表題化合物からなる結晶質残留物を得る。なお、この生成物は次のステップで直接使用する。
【0040】
実施例 A4 9β,11β-エポキシ-3,16α,17,21-テトラヒドロキシ-プレグナ-1,3,5-トリエン-20-オン-16,21-ジアセテート-3-ベンゾエートの製造
【化8】

72gのピリジンに、36gの9β,11β-エポキシ-16α,17,21-トリヒドロキシ-プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン-16,21-ジアセテートを溶解した溶液に、窒素雰囲気下、75℃にて21.6gの塩化ベンゾイルを添加する。次いで、その反応混合物を75℃で180分間保持し、30℃まで冷却し次に18gのメタノールで希釈する。その溶液を45℃にて30分間攪拌した後、42gの85%リン酸、360gの水及び360gのジクロロメタンの冷混合物に添加する。30分間攪拌した後、有機相を分離して再び360gの水で洗浄する。有機相を、分離した後、3.5gのピリジンで希釈し次いで減圧下で蒸発させて表題化合物からなる油状物を得る。なお、この生成物は次のステップで直接使用する。
【0041】
実施例 A5 9β,11β-エポキシ-3,17,21-トリヒドロキシ-16α-メチル-プレグナ-1,3,5-トリエン-20-オン-21-ピバレートの製造
【化9】

100gのピリジンに、40gの9β,11β-エポキシ-17,21-ジヒドロキシ-16α-メチル-プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン-21-ピバレートを溶解した溶液に、窒素雰囲気下、75℃にて24gの塩化ベンゾイルを添加する。次いで、その反応混合物を75℃で300分間保持し、30℃まで冷却し次に20gのメタノールで希釈する。その溶液を45℃にて30分間攪拌した後、60gの85%リン酸、400gの水及び400gのジクロロメタンの冷混合物に添加する。30分間攪拌した後、有機相を分離して再び400gの水で洗浄する。有機相を、分離した後、4gのピリジンで希釈し次いで減圧下で蒸発させて表題化合物からなる油状物を得る。なお、この生成物は次のステップで直接使用する。
【0042】
実施例 A6 9β,11β-エポキシ-16α-メチル-3,17,21-トリヒドロキシ-プレグナ-1,3,5-トリエン-20-オン-21-アセテート-3-トルエートの製造
【化10】

220gのピリジンに110gの9β,11β-エポキシ-17,21-ジヒドロキシ-16α-メチル-プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン-21-アセテートを溶解した溶液に、窒素雰囲気下、75℃にて64.8gのp-メチルベンゾイルクロリドを添加する。次いで、その反応混合物を75℃で240分間保持し、30℃まで冷却し次に55gのメタノールで希釈する。その溶液を45℃にて30分間攪拌した後、129gの85%リン酸、1100gの水及び1100gのジクロロメタンの冷混合物に添加する。30分間攪拌した後、有機相を分離して再び1100gの水で洗浄する。有機相を、分離した後、11gのピリジンで希釈し次いで減圧下で蒸発させて表題化合物からなる油状物を得る。なお、この生成物は次のステップで直接使用する。
【0043】
B) 式Iで表わされる化合物の製造
実施例 B1 9β,11β-エポキシ-6α-フルオロ-17,21-ジヒドロキシ-16β-メチル-プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン-21-アセテートの製造
実施例A1で得た油状残留物を957gのアセトニトリルに溶解した溶液に、0℃にて22gのピリジンと25.5gのメタンスルホン酸を添加し、続いて95.7gのSelectfluor(登録商標)を、混合物の温度が5℃を超えない速度で添加する。次にその反応混合物を、出発化合物が全く残っていないことをHPLCの分析結果が示すまで室温で攪拌する。またそのHPLC分析結果は、得られた標題化合物が6β-エピマーを1.0%しか含有していない(6α/6β比=99:1)ことを示す。その反応混合物を550gの水で希釈し次いで減圧下で蒸発させてアセトニトリルを除く。得られた水性懸濁液を、ジクロロメタンとメタノールの混合物(5:1 v/v)を使って抽出し次いで残留物をメタノールから結晶化させて、91gの純粋の標題化合物(HPLC分析結果は0.69%の6β-異性体を示す)を得る。
【0044】
実施例 B2 9β,11β-エポキシ-6α-フルオロ-17,21-ジヒドロキシ-16α-メチル-プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン-21-アセテートの製造
【化11】

実施例A2で得た油状残留物を940gのアセトニトリルに溶解した溶液に、0℃にて21.6gのピリジンと25gのメタンスルホン酸を添加し、続いて94gのSelectfluor(登録商標)を、混合物の温度が5℃を超えない速度で添加する。次にその反応混合物を、出発化合物が全く残っていないことをHPLCの分析結果が示すまで室温で攪拌する。またそのHPLC分析結果は、得られた標題化合物が6β-エピマーを1.0%しか含有していない(6α/6β比=99:1)ことを示す。その反応混合物を1080gの水で希釈し次いで減圧下で蒸発させてアセトニトリルを除く。得られた水性懸濁液を、ジクロロメタンとメタノールの混合物(5:1 v/v)を使って抽出し次いで残留物をメタノールから結晶化させて、88gの純粋の標題化合物を得る。
【0045】
実施例 B3 9β,11β-エポキシ-6α-フルオロ-17,21-ジヒドロキシ-プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン-21-アセテートの製造
【化12】

実施例A3で得た油状残留物を400gのアセトニトリルに溶解した溶液に、0℃にて10gのピリジンと11.8gのメタンスルホン酸を添加し、続いて44.5gのSelectfluor(登録商標)を、混合物の温度が5℃を超えない速度で添加する。次にその反応混合物を、出発化合物が全く残っていないことをHPLCの分析結果が示すまで室温で攪拌する。またそのHPLC分析結果は、得られた標題化合物が6β-エピマーを1.0%未満しか含有していないことを示す。その反応混合物を500gの水で希釈し次いで減圧下で蒸発させてアセトニトリルを除く。得られた水性懸濁液を、ジクロロメタンとメタノールの混合物(4:1 v/v)を使って抽出し次いで残留物をメタノールから結晶化させて、40.5gの純粋の標題化合物(HPLC分析結果は0.95%の6β-異性体を示す)を得る。
【0046】
実施例 B4 9β,11β-エポキシ-6α-フルオロ-17,21-トリヒドロキシ-プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン-16,21-ジアセテートの製造
【化13】

156gのアセトニトリル、4gのピリジン及び3gの安息香酸メチルに4.61gのメタンスルホン酸を加えた混合物に、0〜5℃にて、20gの実施例 A4で得た9β,11β-エポキシ-3,16α,17,21-テトラヒドロキシ-プレグナ-1,3,5-トリエン-20-オン-16,21-ジアセテート-3-ベンゾエートの結晶を添加し、続いて12.6gのSelectfluor(登録商標)を、混合物の温度が5℃を超えない速度で添加する。次にその反応混合物を、出発化合物が全く残っていないことをHPLCの分析結果が示すまで室温で攪拌する。またそのHPLC分析結果は、得られた標題化合物が6β-エピマーを1.2%しか含有していない(6α/6β比=99:1)ことを示す。その反応混合物を200gの水で希釈し次いで減圧下で蒸発させてアセトニトリルを除く。得られた水性懸濁液を、ジクロロメタンを使って抽出し次いで残留物をジイソプロピルエーテルから結晶化させて、16.5gの純粋の標題化合物(6β-エピマーの含有量は1.0%)を得る。
【0047】
実施例 B5 9β,11β-エポキシ-6α-フルオロ-17,21-ジヒドロキシ-16α-メチル-プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン-21-ピバレートの製造
【化14】

実施例A5で得た油状残留物を400gのアセトニトリルに溶解した溶液に、0℃にて4gのピリジンと4.6gのメタンスルホン酸を添加し、続いて31gのSelectfluor(登録商標)を、混合物の温度が5℃を超えない速度で添加する。次にその反応混合物を、出発化合物が全く残っていないことをHPLCの分析結果が示すまで室温で攪拌する。またそのHPLC分析結果は、得られた標題化合物が6β-エピマーを1.7%しか含有していない(6α/6β比=98.3:1.7)ことを示す。その反応混合物を400gの水で希釈し次いで減圧下で蒸発させてアセトニトリルを除く。得られた水性懸濁液を、ジクロロメタンとメタノールの混合物(5:1 v/v)を使って抽出し次いで残留物をメタノールから結晶化させて、29.5gの純粋の標題化合物(HPLC分析結果は0.35%の6β-異性体を示す)を得る。
【0048】
実施例 B6 9β,11β-エポキシ-6α-フルオロ-17,21-ジヒドロキシ-16α-メチル-プレグナ-1,4-ジエン-3,20-ジオン-21-アセテートの製造
【化15】

実施例A6で得た油状残留物を960gのアセトニトリルに溶解した溶液に、0℃にて22gのピリジンと25.5gのメタンスルホン酸を添加し、続いて95.7gのSelectfluor(登録商標)を、混合物の温度が5℃を超えない速度で添加する。次にその反応混合物を、出発化合物が全く残っていないことをHPLCの分析結果が示すまで室温で攪拌する。またそのHPLC分析結果は、得られた標題化合物が6β-エピマーを約1.0%含有している(6α/6β比=99:1)ことを示す。その反応混合物を1100gの水で希釈し次いで減圧下で蒸発させてアセトニトリルを除く。得られた水性懸濁液を、ジクロロメタンとメタノールの混合物(5:1 v/v)を使って抽出し次いで残留物をメタノールから結晶化させて、87gの純粋の標題化合物を得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性溶媒中でかつ外界温度にてプレグナン誘導体の6位を求電子性フッ素化剤でフッ素化することを含む、下記式I:
【化1】

(式中、R2は水素、C1-C8アルキル又はC3-C8シクロアルキルであり、R3は水素、C1-C8アルキル又はR4-C(O)-O-である(式中、R4はC1-C8アルキル又はC1-C8ヒドロキシアルキルである))で表わされる6α-フッ素化合物の製造方法であって、(1)下記式II:
【化2】

(式中、R1はフェニルであるか又はハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、モノもしくはジC1-C8アルキルアミノ、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ及び/又はC1-C8カルバルコキシで置換されたフェニルであり、R2とR3は先に定義したのと同じである)で表わされる化合物を、求電子性フッ素化剤と、(2)強酸の窒素塩基による塩の存在下、(3)実質的に無水の反応条件下で反応させることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
R2がメチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R3が水素、メチル又はアセトキシである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
R1がフェニルであるか又はフッ素、塩素、ヒドロキシ、ジメチルアミノ、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ及びメトキシカルボニルで置換されたフェニルである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒が、ニトリル類、N-ジアルキル化カルボン酸アミド類もしくはN-アルキル化環式カルボン酸アミド類、エーテル類及びカルボン酸エステル類からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
反応温度が-20℃〜50℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フッ素化剤が、1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタン-ビステトラフルオロボレート又は1-フルオロ-4-ヒドロキシ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタン-ビステトラフルオロボレートである、請求項8に記載の方法。
【請求項8】
前記アミン塩が、下記式III :
HB+A (III )
(式中、HB+は脂肪族、芳香族、環式脂肪族又は環式芳香族の窒素塩基のカチオンであり及びAは有機又は無機の強酸のアニオンである)で表わされ、そしてそのアミン塩が好ましくはメチルスルホン酸ピリジンである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アミン塩の量が、式IIで表わされる化合物の量に対して0.1〜100重量%であり、好ましくは50〜90重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
下記式II:
【化3】

(式中、R1、R2及びR3は、請求項1で定義したのと同一である。但し、R2とR3がメチルであるときR1はフェニルでない。)で表わされる化合物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性溶媒中でかつ外界温度にてプレグナン誘導体の6位を求電子性フッ素化剤でフッ素化することを含む、下記式I:
【化1】

(式中、R2は水素、C1-C8アルキル又はC3-C8シクロアルキルであり、R3は水素、C1-C8アルキル又はR4-C(O)-O-である(式中、R4はC1-C8アルキル又はC1-C8ヒドロキシアルキルである))で表わされる6α-フッ素化合物の製造方法であって、(1)下記式II:
【化2】

(式中、R1はフェニルであるか又はハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、モノもしくはジC1-C8アルキルアミノ、C1-C8アルキル、C1-C8アルコキシ及び/又はC1-C8カルバルコキシで置換されたフェニルであり、R2とR3は先に定義したのと同じである)で表わされる化合物を、求電子性フッ素化剤と、(2)強酸の窒素塩基による塩の存在下、(3)実質的に無水の反応条件下で反応させることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
R2がメチルである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
R3が水素、メチル又はアセトキシである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
R1がフェニルであるか又はフッ素、塩素、ヒドロキシ、ジメチルアミノ、メチル、エチル、メトキシ、エトキシ及びメトキシカルボニルで置換されたフェニルである、請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶媒が、ニトリル類、N-ジアルキル化カルボン酸アミド類もしくはN-アルキル化環式カルボン酸アミド類、エーテル類及びカルボン酸エステル類からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
反応温度が-20℃〜50℃である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記フッ素化剤が、1-クロロメチル-4-フルオロ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタン-ビステトラフルオロボレート又は1-フルオロ-4-ヒドロキシ-1,4-ジアゾニアビシクロ[2,2,2]オクタン-ビステトラフルオロボレートである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記アミン塩が、下記式III :
HB+A (III )
(式中、HB+は脂肪族、芳香族、環式脂肪族又は環式芳香族の窒素塩基のカチオンであり及びAは有機又は無機の強酸のアニオンである)で表わされ、そしてそのアミン塩が好ましくはメチルスルホン酸ピリジンである、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記アミン塩の量が、式IIで表わされる化合物の量に対して0.1〜100重量%であり、好ましくは50〜90重量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
下記式II:
【化3】

(式中、R1、R2及びR3は、請求項1で定義したのと同一である。但し、R2とR3がメチルであるときR1はフェニルでない。)で表わされる化合物。

【公表番号】特表2006−515582(P2006−515582A)
【公表日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−558103(P2004−558103)
【出願日】平成15年12月2日(2003.12.2)
【国際出願番号】PCT/EP2003/050925
【国際公開番号】WO2004/052911
【国際公開日】平成16年6月24日(2004.6.24)
【出願人】(505216117)シコール インコーポレイティド (35)
【Fターム(参考)】