説明

プレススルーパック包装体およびその製造方法

【課題】 密封性がよく、かつ作製精度を緩和しても、確実に(ばらつきなく)開封を容易に行うことができる、製造が容易なPTPおよびその製造方法を提供する。
【解決手段】 樹脂フィルム層3a、アルミニウム箔3bおよび熱接着層3cを有する蓋材と、フランジ部および多数のポケット部を有する容器とを備え、樹脂フィルム層の一方面に、連続した直線状のハーフカット3jが、複数互いに略平行に、条をなすように設けられ、隣り合うハーフカットの間隔Sは、ポケット部の平均径よりも小さく、ハーフカット3jの少なくとも部分が、すべてのポケット部に対応する領域に位置することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル、錠剤の薬剤等を収納するためのプレススルーパック包装体に関し、詳しくは、プレススルー機能とイージーピール機能を併せ持つプレススルーパック包装体およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプレススルーパック包装体(以下「PTP」と略記する場合がある)は、アルミニウム箔および熱接着層からなる蓋材と、多数のポケット部を形成した容器とから形成されている。カプセルや錠剤等の薬剤を収納したポケット部の凸部背面を手指で押し込み、蓋材のアルミニウム箔を破断させ、薬剤を取り出した後、これを服用する。この場合、アルミニウム箔の破片が生じることがあり、誤って薬剤と共に該アルミニウム箔破片を飲み込んでしまうという事故が報告されている。また、老人や幼児などの弱者にとっては薬剤を押し出す筋力が不足し、PTPから薬剤を取り出し難いという苦情もある。さらに病院などでは、1日に数十〜数百の薬剤を扱う関係上、一度に多数の薬剤を容易に取り出したいという要望がある。
【0003】
上記の問題を解決することを目的に、蓋材をアルミ箔層などの複数層の積層体から構成し、レーザー光線によって表層に部分的な切込みを設けた技術が提案されている(特許文献1および2)。この方法によれば、小さい力で容易にPTPから薬剤を取り出すことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−63558号公報
【特許文献2】実開平1−161469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献に開示の方法では、次の点で不十分である。問題点:レーザー光線によって積層体の表層に部分的な切込みを設けるのはスキルを要し、切込みの位置にわずかでもズレが生じると開封に支障をきたすおそれがある。すなわち切込みの形成に高精度加工を要し、これが歩留り低下等のおそれを生じる。またポケット部の位置が確定してからでないと切込みの位置も特定できず、高価なレーザー銃を後工程で使用しなければならない。
【0006】
本発明は、上記の従来技術の問題を克服するためになされたものであり、密封性がよく、かつ作製精度を緩和しても、確実に(ばらつきなく)開封を容易に行うことができる、製造が容易なPTPおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のPTPは、樹脂フィルム層、基材層および熱接着層を有する蓋材と、フランジ部および多数のポケット部を有する容器とを備える。このPTPは、樹脂フィルム層の一方面に、連続した直線状のハーフカットが、複数互いに略平行に、条をなすように設けられ、隣り合うハーフカットの間隔は、ポケット部の平均径よりも小さく、ハーフカットの少なくとも部分が、すべてのポケット部に対応する領域に位置することを特徴とする。
【0008】
上記の構成によれば、ハーフカットの位置が多少ずれても開封(プレススルー)が容易なPTPを得ることができる。ハーフカットを設けるのは樹脂フィルムのごく一部だけであり、強度はハーフカット以外の部分の樹脂フィルムおよびアルミニウム箔で確保され、バリアー性および密封性に優れる。そして、ハーフカットにより押し込み破壊の起点が形成されるので、プレススルーが容易なPTPを得ることができる。上記のハーフカットの配列の場合、ハーフカット形成、重ね合わせ等の作業において高い精度は不要なので、製造を容易にすることができる。さらにロット間、1ロット内のPTP間、および1つのPTP内のポケット部間におけるプレススルー性能のばらつきをなくすことができる。したがって、製造を容易にした上で、製品の品質を向上させることができる。ここで、隣り合うハーフカットの間隔は、隣り合うハーフカット間の最小距離であり、複数の箇所(例えば20箇所)について平均をとった値とする。また、ポケット部の平均径は、ポケット部の周囲のフランジ部における当該形状縁(内法)の径であって、平面視円形の場合はその直径、平面視楕円形や平面視長円形等の円形以外の場合は、平面視形状の最長径と最短径の平均値であり、個々のポケット部のサイズにばらつきがある場合は、複数の箇所(例えば10箇所)について平均をとった値とする。
【0009】
ハーフカットを、碁盤目状に設けることができる。これによって、どのポケット部についても、より一層容易にポケット部を押し出すことができる。
【0010】
ハーフカットを設けた樹脂フィルムの他方面に印刷を施すことができる。この印刷は、ポケット部に収納された内容物の表示、賞味期限の管理など多様な用途に用いることができる。
【0011】
上記のハーフカットの間隔をポケット部の平均径の半分以下とするのがよい。これによって、ハーフカットの配置精度のばらつき許容度をさらに緩和し、かつ例外的な稀な場合を除いて、ハーフカットを各ポケット部に2条以上配置できるので、薬剤等の押し出しをさらに容易にすることができる。
【0012】
上記のハーフカットを、フランジ部にも位置させることができる。これによって、ハーフカットの配置精度のばらつき許容度を緩和することができる。
【0013】
上記の熱接着層をイージーピール性熱接着層とすることによって、イージーピール機能を高めることができ、病院などで多量の薬剤を扱う場合に、蓋材を容器から容易に剥がして一度に多数の薬剤を簡単に取り出すことができる。
【0014】
樹脂フィルムを、端裂抵抗が70N以下であるポリエステル系フィルムとすることができる。これによって、ポケット部の押し出しが小さい力で可能になり、老人等にも使いやすくなる。
【0015】
上記の蓋材と、容器のフランジ部との接着部を貫通するように設けた分離用のミシン目を有してもよい。これによって、必要な薬剤量に容易に区分けすることができる。
【0016】
上記のプレススルーパック包装体の周縁部の少なくとも一辺に、蓋材と容器とが接着されていない掴み部を設けることができる。これによって、蓋材の容器からのピールを容易にすることができ、多数の薬剤を簡単に取り出すことができる。
【0017】
上記のポケット部に薬剤を収納することができる。これにより、薬剤の密封保持、薬剤の容易押出し、多数の薬剤の容易取り出し等が可能な形態で薬剤を提供することができる。また、薬剤以外にも菓子類や健康食品等を収納することができる。
【0018】
本発明のPTPの製造方法は、樹脂フィルム層、アルミニウム箔および熱接着層を有する蓋材と、フランジ部および多数のポケット部を有する容器とを備えるPTPを製造する。この製造方法は、樹脂フィルム層の一方面に、連続した直線状のハーフカットを、複数互いに略平行に、条をなすように、当該ハーフカットの間隔をポケット部の平均径よりも小さくなるように形成する工程と、樹脂フィルム層、アルミニウム箔および熱接着層を積層し、蓋材を作製する工程と、フランジ部および多数のポケット部を有する容器を準備する工程と、蓋材と容器とを、ハーフカットの少なくとも部分が、すべてのポケット部に対応する領域に位置するように重ね合わせ、熱接着する工程とを備えることを特徴とする。
【0019】
上記の方法によれば、蓋材の各層を積層する前に樹脂フィルムのみにハーフカットを形成するので、積層した後にポケット部に狙いを付けて切込みを形成する方法に比較して、精度を緩和してPTPを作製しても、ロット間、同じロット内のPTP間、同じPTP内のポケット部間でのプレススルー性能のばらつきをなくすことができる。このため製品品質を向上させた上で、製造を容易にすることができる。
【0020】
上記の樹脂フィルム層のハーフカットは、該ハーフカットに対応する間隔で、複数、周方向に刃を沿わせて略平行に配列されたカッターもしくはナイフを有するロール、または、ハーフカットに対応する間隔で、複数、略平行に配列されたカッターもしくはナイフを有するスリット機により、条をなすように形成することができる。これによって、経済性に優れた方法で、ハーフカットの配列を容易に得ることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によって密封性がよく、かつ作製精度を緩和しても、確実に(ばらつきなく)開封を容易に行うことができる、製造が容易なPTPを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態におけるPTPの斜視図である。
【図2】図1のII−II線に沿う断面図である。
【図3】蓋材の断面図である。
【図4】蓋材の樹脂フィルムにおけるハーフカットの配列パターンを説明するためのPTPの斜視図である。
【図5】ハーフカットを例示する樹脂フィルムの一部平面図であり、(a)はハーフカット3jが直線の場合、(b)はハーフカットが格子状の場合を例示する。
【図6】本発明のPTPの製造方法を例示する図である。
【図7】実施例における本発明例であり、(a)は、本発明例1,2,5,6の層構造を、また(b)は本発明例3,4,7,8の層構造を、示す図である。
【図8】実施例における比較例であり、(a)は比較例1、(b)は比較例2、(c)は比較例3、(d)は比較例4、の層構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の実施の形態におけるPTPを蓋材3の側から見た斜視図である。また、図2は、図1のII−II線に沿う断面図である。図1および図2において、このPTP10は、蓋材3と容器5とが接着されて形成されており、図1では図示されていない錠剤は容器5のポケット部5aに収納されている。容器5における平坦部であるフランジ部5bは、蓋材3と当接し、接着される部分となる。なお説明上、蓋材3の基材層には、ポケット部5aに対応する位置にポケット部5aと同じサイズの円形のポケット部表示3tを表示している。実装品においては、このポケット部表示3tは必須のものではない。この例では、ポケット部は、ハーフカットの条(図1〜2では図示せず)に沿うように5個、2列に配列されている。ハーフカットの条を分断するように、蓋材3と容器のフランジ部5bとを貫通するミシン目Mが設けられ、錠剤を2個ずつ区分け分離しやすくしてある。また、PTPの周縁部の1辺に接着していない掴み部Gを設けて、容器5から蓋材3をピールするのを容易にしている。
【0024】
図3は、蓋材3の断面図である。蓋材3は、樹脂フィルム層3aと、基材層3bと、熱接着層3cとで構成される。樹脂フィルム層3aと基材層3bとは、図示しない接着剤で接着されている。樹脂フィルム層3aには、ハーフカット3jが付されている。図4は、蓋材3におけるハーフカット3jの配列パターンを説明するために示すPTP10の斜視図である。ハーフカット3jの配列パターンの下半分は表記を省略してある。樹脂フィルム層3aにおけるハーフカット3jは、図4の場合は、互いに平行な直線状である。なお、図3の例では、蓋材3は、(樹脂フィルム層3a/基材層3b/熱接着層3c)がこの順で積層されているが、本発明の実施態様は必ずしもこれに限定されるものではなく、例えば、(基材層3b/樹脂フィルム層3a/熱接着層3c)という順で積層されていてもよい。ただし、前者(図3の例)の方が、樹脂フィルム層3aに裏印刷できる点(即ち、((樹脂フィルム層3a+印刷層)/基材層3b/熱接着層3c)の順)や、樹脂フィルム用の多種の印刷インキが使用できる等の点で好ましい。樹脂フィルムに印刷を施す場合は、ハーフカットを設ける面と反対側の面に印刷を施すのが好ましい。ハーフカット側に印刷を施すと印刷インキの滲みや印刷部の欠けが生じるため避けた方がよい。
【0025】
図4の場合、隣り合うハーフカットどうしの間隔は、ポケット部(図示せず)または基材層におけるポケット部表示3tの平均径Dよりも小さい。また、ハーフカットの深さPは、樹脂フィルム層の厚みPの1/5〜4/5程度、好ましくはPの 2/5〜3/5程度である。このため、ハーフカット3jの少なくとも一部分がポケット部対応位置に位置し易くでき、プレススルー機能を発揮する。さらに、上記の隣り合うハーフカットどうしの間隔を平均径の半分以下にすることで、複数のハーフカット3jがポケット部表示3tを通過し、プレススルー機能をより確実に発揮することができる。
【0026】
本発明において、樹脂フィルム層3aに設けるハーフカット3jは、樹脂フィルム層の片面、両面のいずれに施してもよいが、片面に施すことで、他面に単色または多色の印刷を施すことが可能となり製品名、注意書き、バーコード、使用法等の情報を表示することができる。この場合、ハーフカット面を蓋材の最外面とし、印刷層を基材層側にする方が、印刷層を摩擦等から保護できる点や、ハーフカット部への接着剤の入り込みを防止できる点で好ましい。次に、PTPの構成要素ごとに、詳細に説明する。
【0027】
1.樹脂フィルム
本発明のPTP10の蓋材に用いる樹脂フィルム層3aは、厚み6〜50μmの樹脂フィルムを用いることが好ましい。さらに好ましくは厚み6〜25μmの樹脂フィルム層3aを用いるのがよい。厚み6μm未満では、強度が十分でなく、蓋材の剥離時に途中で破断するおそれがある。一方、50μmを超えると強度が必要以上に大きくなり過ぎ、プレススルー機能を阻害するおそれがある。従って樹脂フィルム層3aの厚みを6〜50μmの範囲内とすれば、プレススルー機能とイージーピール機能を併せ持つのに好適である。樹脂フィルム層3aの種類は特に制限されるものではないが、ポリエチレン系フィルム、ポリプロピレン系フィルム、ポリエステル系フィルム、ポリアミド(ナイロン)系フィルム、(メタ)アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニリデン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、アセタール系樹脂、その他各種の樹脂のフィルムを使用することができる。これらの樹脂のフィルムは、一軸ないし二軸方向に延伸されているものでもよく、無延伸のものであってもよい。プレススルー機能の観点からは特に端裂抵抗が70N以下の樹脂フィルムが好ましく、端裂抵抗が20〜60Nの樹脂フィルムを用いるのがさらに好ましい。このような樹脂フィルムとしては東洋紡績株式会社製「ティアファイン(登録商標)TF110」ポリエステルフィルム(端裂抵抗タテ:45N、ヨコ:45N)を挙げることができる。端裂抵抗が70N以下(さらに好ましくは20〜60N)の樹脂フィルムを用いることによりイージーピール性能を損なうことなく、プレススルー機能を向上させることができ、よりスムースに内容物を個別に取り出すことができる。なお、端裂抵抗はJIS C 2318により測定(試料幅:20mm)することができる。なお、樹脂フィルム層と基材層とは、ポリウレタン系のドライラミネート用接着剤を用いて強固に接着できるので、蓋材の開封時にアルミニウム箔の破片等が生じるのを防止することができる。
【0028】
2.ハーフカットの形成
図5はハーフカット3jを設けた樹脂フィルム層3aの一部を例示する平面図であり、(a)はハーフカット3jが直線の場合、(b)はハーフカットが格子状(碁盤目状ともいう)の場合を例示する。積層前の樹脂フィルム層3aには、ポケット部に対応する位置を通過するようハーフカット3jを形成しておくことができる。好ましくは互いに平行な2本以上のハーフカット3jを形成するのがよい。ハーフカット3jの本数は、必要に応じて適宜設定すればよいが、1ポケットあたり1〜10本(条)とすればよい。隣り合うハーフカット3jの間隔Sは、ポケットの平均径より小さくする。好ましくは間隔Sはポケットの平均径の半分以下とするのがよい。ポケットの平均径は通常5〜30mm程度なので、当該間隔は30mm未満、好ましくは15mm以下とするのがよい。下限値は樹脂フィルムの強度や生産性を考慮して決めればよいが通常0.1mm程度が好ましい。各ハーフカットどうしは、互いに平行の位置関係にあるのが生産上望ましいが、図5(b)に示すように格子状の状態であってもよい。図3では、説明の都合上ハーフカットの横断面形状はV字型を示しているが、必ずしもこれに限定されるものではなく、単なる直線状の切れ込みであってもよい。ハーフカットの深さは、樹脂フィルムの厚みの1/5〜4/5、好ましくは2/5〜3/5の範囲内にするのが望ましい。4/5を超える深さでは樹脂フィルム自体の強度が弱くなり印刷や接着の工程で皺や穴あき(貫通)の発生のおそれがある。他方1/5未満の深さではプレススルー機能を十分に発揮できないおそれがある。ハーフカット3jの形成方法は特に制限されるものではないが、例えば、鋭利な刃を多数有するロールに樹脂フィルムを接触させたり、鋭利な刃を多数有する治具の上または下を通過させるなどの方法を採用することができる。
【0029】
3.基材層
本発明のPTP10の蓋材3に用いる基材層3bは、プレススルー機能を有するものであれば公知の材料を用いることができる。例えば、アルミニウム箔、紙、合成紙、易突き刺し性または易引き裂き性の樹脂フィルム等を用いることができる。アルミニウム箔としては厚み10〜30μm程度の(JIS)1N30材、8021材、8079材などの硬質材を採用することができる。なお、基材層と樹脂フィルム層との積層は特に制限されるものではないが、ドライラミネート接着剤を用いたドライラミネート法によるのが好ましい。
【0030】
4.熱接着層
本発明のPTP10の蓋材3に用いる熱接着層3cは、イージーピール性熱接着樹脂からなるのが望ましい。例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体フィルム(EVA)、エチレン−メタアクリル酸共重合体(EMAA)、ポリエチレン−ポリブテンのブレンド樹脂、EMAA樹脂あるいはEMAA樹脂等のエチレン共重合体10〜90重量部にPP樹脂90〜10重量部を配合した樹脂、CMPS VN−503(商品名 三井・デュポンポリケミカル株式会社製)などを採用することができる。イージーピール性熱接着樹脂は、基材層の容器側片面に乾燥重量2〜15g/m程度となるように塗布するのが好ましい。
【0031】
5.蓋材の表面等
本発明のPTPの蓋材3には、以上の他に印刷や着色を施してもよく、OP(オーバープリント)層、プライマー層、アンカーコート層等を必要に応じて積層してもよく、また防曇剤、滑剤、防滑剤、各種のコート剤を任意の層の表面にコーティングしてもよい。また、本発明の効果を損なわない範囲で、接着補強層、印刷保護層、蒸着層等を積層してもよい。各層の積層方法も上記に限定されるものではなく、公知の方法を採用することができるのはいうまでもない。
【0032】
6.容器
本発明のPTP10に用いる容器5は、フランジ部5bに囲まれるように多数のポケット5aを形成した公知の容器であって、例えばポリプロピレン、塩化ビニルなどの樹脂シートを用いて、プラグアシスト成形、真空または圧空成形、真空圧空成形、熱プレスなどにより成形できる。また、市販のPTP用容器を用いることもできる。上記容器に錠剤やカプセルなどの薬剤(内容物)を収納後、開口部に蓋材を被せ熱接着することにより封緘し、本発明の包装体を提供することができる。開口部に蓋材を被せる際には、上記ハーフカットが当該開口部を通過するようにすればよいが、ハーフカットは連続的かつ複数設けられているので、しごく容易に蓋材を被せることができる。
【0033】
7.ミシン目、掴み部
本発明のPTP10には、市販のPTPと同様、蓋材3と容器5の接着部を貫通するように分離用のミシン目Mを設けてもよい。1回当たりの服用量に分離することや、必要量の薬剤を提供する際に当該ミシン目で分離すればよい。また、PTPの周縁の少なくとも一辺には図1や図4に示すような掴み部Gを設けることができ、この掴み部Gを手指でつまんで蓋材を容易に引き剥がすことができる。引き剥がす方向は、前記ハーフカット3jの条方向と一致させておけば、蓋材を引き剥がす途中での破断やスリップスティック現象を防止でき、イージーピール性の点で好ましい。この掴み部Gは、予め蓋材3と容器5を剥離させておくのが望ましいが、この部分の熱接着層3cを欠落させたり、熱接着剤の塗布量を極端に少なくしたり、熱接着剤の塗布面積を調整したり、あるいはこの部分の熱接着剤に剥離剤を混合ないし積層させたりして掴み部を形成しやすくしておくこともできる。
【0034】
8.製造方法
図6は、本発明のPTPの製造方法の一例を示す図である。この製造方法では、樹脂フィルム層3aにハーフカット3jを形成する。ハーフカット3jの形成方法は、図6では上述のロールによる形成方法を示しているが、ロールによらなくてもよく、たとえばレーザー加工によってもよい。次いで、ハーフカット3jを形成した樹脂フィルム層3aと、基材層3bと、熱接着層3cとを積層して、積層体からなる蓋材3を形成する。基材層3bには、ポケット部対応位置にポケット部表示3tを形成しておいてもよい。蓋材3には、図6では表示していないが、掴み部Gやミシン目Mを設けておくのがよい。最終的には、PTP10に適合する所定サイズに打ち抜いて、所定仕様の蓋材3となる。
【0035】
容器5の形成は、まず、所定材質の樹脂について、ポケット部5aおよびフランジ部5bを有するように加工すればよいが、上述のとおり市販品を利用してもよい。PTP10の製造は、薬剤を容器5のポケット部5aに充填し、上記の蓋材3と位置合せを行いながら接着し、次いで、仕様に適合したサイズに打ち抜き、所定仕様のPTP10を完成する。この例では打ち抜き工程を最終工程としたが、たとえばバッチ式の場合は、本発明の効果を損なわない範囲で、薬剤充填工程の前や接着工程の前に変更することができる。
【実施例】
【0036】
次に実施例により、本発明における作用効果を説明する。用いた試験体は、本発明例1〜8と、比較例1〜4である。すべての試験体において容器は共通して同じであり、また容器のポケット部のピッチは25mmであり、ポケット部のサイズは長さ20mm×幅10mm×高さ7mmのカプセル形であった。
これら試験体について説明する。
<本発明例1:図7(a)>
厚み14μmのPETフィルム(ポリエステルフィルム:東洋紡績株式会社製「ティアファイン(登録商標)TF110」)の一方面にカッターを用いて互いに平行(間隔:5mm)でかつ連続した直線状の約7μm深さのハーフカットを形成した。当該ハーフカット面に、ポリウレタン系ドライラミネート接着剤(乾燥後重量1.5g/m)を用いて厚み20μmのアルミニウム箔(1N30、硬質箔)をドライラミネート法により貼り合わせた後、さらにPETフィルムを積層した側と反対のアルミニウム箔面にワックス添加ポリプロピレン系イージーピール性熱接着剤を(乾燥後重量)5g/m塗布し蓋材を作製した。蓋材のPETフィルムの表面には、後工程によりカーボンブラックを固形分として約20重量%含有する黒インキを用いて製品名等の表印刷を施し、さらにOPニスを用いてオーバープリント層(厚み約1.5μm)を被覆し、本発明例1の蓋材とした。複数のポケットを成形したポリプロピレン製のPTP用容器に長さ18mm×幅6mm×高さ5mmの薬剤カプセルを収納し、上記蓋材を180℃でヒートシールしPTP包装体を作製した。図7(a)に示すように、本発明例1の蓋材は、(熱接着層3c/アルミニウム箔3b/接着層s/基材層側にハーフカット3j付きPET3a/印刷部r/OP層3v)の層構造を有する。
<本発明例2:図7(a)>
厚み14μmのPETフィルム(ポリエステルフィルム:東洋紡績株式会社製「ティアファイン(登録商標)TF110」)の一方面にカッターを用いて互いに平行(間隔:5mm)でかつ連続した直線状の約7μm深さの第1のハーフカットを形成した後、第1のハーフカットに直角に交わるように、互いに平行(間隔:5mm)でかつ連続した直線状の約7μm深さの第2のハーフカットを形成し、碁盤目状のハーフカットを形成した。以後は本発明例1と同様に蓋材(本発明例2の蓋材)および包装体を作製した。図7(a)に示すように、本発明例2の蓋材は、(熱接着層3c/アルミニウム箔3b/接着層s/基材層側にハーフカット3j付きPET3a/印刷部r/OP層3v)の層構造を有する。
<本発明例3:図7(b)>
厚み14μmのPETフィルム(ポリエステルフィルム:東洋紡績株式会社製「ティアファイン(登録商標)TF110」)の一方面にカーボンブラックを固形分として約20重量%含有する黒インキを用いて製品名等の裏印刷を施し、その印刷面に、ポリウレタン系ドライラミネート接着剤(乾燥後重量1.5g/m)を用いて厚み20μmのアルミニウム箔(1N30、硬質箔)をドライラミネート法により貼り合わせた後、さらにPETフィルムを積層した側と反対のアルミニウム箔面にワックス添加ポリプロピレン系イージーピール性熱接着剤を(乾燥後重量)5g/m塗布し蓋材を作製した。蓋材のPETフィルムの表面には、後工程によりカッターを用いて互いに平行(間隔:5mm)でかつ連続した直線状の約7μm深さのハーフカットを形成し本発明例3の蓋材とした。複数のポケットを成形したポリプロピレン製のPTP用容器に長さ18mm×幅6mm×高さ5mmの薬剤カプセルを収納し、上記蓋材を180℃でヒートシールしPTP包装体を作製した。図7(b)に示すように、本発明例3の蓋材は、(熱接着層3c/アルミニウム箔3b/接着層s/印刷部r/基材層と逆側にハーフカット3j付きPET3a)の層構造を有する。
<本発明例4:図7(b)>
本発明例3において、ハーフカットを本発明例2と同様の碁盤目状とした以外は、本発明例3と同様に蓋材(本発明例4の蓋材)および包装体を作製した。図7(b)に示すように、本発明例4の蓋材は、(熱接着層3c/アルミニウム箔3b/接着層s/印刷部r/基材層と逆側にハーフカット3j付きPET3a)の層構造を有する。
<本発明例5:図7(a)>
厚み14μmのPETフィルム(ポリエステルフィルム:東洋紡績株式会社製「ティアファイン(登録商標)TF110」)に代えて、厚み12μmのPETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム:東洋紡績株式会社製「E5100」)を採用した以外は、本発明例1と同様に蓋材(本発明例5の蓋材)およびPTP包装体を作製した。図7(a)に示すように、本発明例5の蓋材は、(熱接着層3c/アルミニウム箔3b/接着層s/基材層側にハーフカット3j付きPET3a/印刷部r/OP層3v)の層構造を有する。PETフィルムの材質だけが本発明例1との相違点なので、層構造は本発明例1と同じである。
<本発明例6:図7(a)>
本発明例5において、ハーフカットを本発明例2と同様の碁盤目状とした以外は、本発明例5と同様に蓋材(本発明例6の蓋材)および包装体を作製した。図7(a)に示すように、本発明例6の蓋材は、(熱接着層3c/アルミニウム箔3b/接着層s/基材層側にハーフカット3j付きPET3a/印刷部r/OP層3v)の層構造を有する。PETフィルムの材質だけが本発明例2との相違点なので、層構造は本発明例2と同じである。
<本発明例7:図7(b)>
厚み14μmのPETフィルム(ポリエステルフィルム:東洋紡績株式会社製「ティアファイン(登録商標)TF110」)に代えて、厚み12μmのPETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム:東洋紡績株式会社製「E5100」)を採用した以外は、本発明例3と同様に蓋材(本発明例7の蓋材)およびPTP包装体を作製した。図7(b)に示すように、本発明例7の蓋材は、(熱接着層3c/アルミニウム箔3b/接着層s/印刷部r/基材層と逆側にハーフカット3j付きPET3a)の層構造を有する。PETフィルムの材質だけが本発明例3との相違点なので、層構造は本発明例3と同じである。
<本発明例8:図7(b)>
本発明例7において、ハーフカットを本発明例2と同様の碁盤目状とした以外は、本発明例7と同様に蓋材(本発明例8の蓋材)および包装体を作製した。図7(b)に示すように、本発明例8の蓋材は、(熱接着層3c/アルミニウム箔3b/接着層s/印刷部r/基材層と逆側にハーフカット3j付きPET3a)の層構造を有する。PETフィルムの材質だけが本発明例4との相違点なので、層構造は本発明例4と同じである。
【0037】
<比較例1:図8(a)>
ハーフカットに代えて、ピッチ10mm、1つあたりのミシン目長さ5mmの貫通ミシン目、隣り合うミシン目の間隔5mmとした以外は、本発明例5と同様に蓋材(比較例1の蓋材)およびPTP包装体を作製した。図8(a)に示すように、(熱接着層3c/アルミニウム箔3b/接着層s/貫通ミシン目付きPET3a/印刷部r/OP層3v)の層構造を有する。
<比較例2:図8(b)>
ハーフカットを形成しない点を除いて、本発明例7と同様に蓋材(比較例2の蓋材)およびPTP包装体を作製した。図8(b)に示すように、(熱接着層3c/アルミニウム箔3b/接着層s/印刷部r/PET3a)の層構造を有する。
<比較例3:図8(c)>
厚み12μmのPETフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム:東洋紡績株式会社製「E5100」)に、表面に突起を有する穿孔ロールを用いてピッチ10mm、1つあたりのミシン目長さ5mm、隣り合うミシン目の間隔5mmとした貫通ミシン目を施した後、当該PTPフィルムの一方面にカーボンブラックを固形分として約20重量%含有する黒インキを用いて製品名等の裏印刷を施し、その印刷面に、ポリウレタン系ドライラミネート接着剤(乾燥後重量1.5g/m)を用いて厚み20μmのアルミニウム箔(1N30、硬質箔)をドライラミネート法により貼り合わせた後、さらにPETフィルムを積層した側と反対のアルミニウム箔面にワックス添加ポリプロピレン系イージーピール性熱接着剤を(乾燥後重量)5g/m塗布し比較例3の蓋材を作製した。複数のポケットを成形したポリプロピレン製のPTP用容器に長さ18mm×幅6mm×高さ5mmの薬剤カプセルを収納し、上記蓋材を180℃でヒートシールしPTP包装体を作製した。図8(c)に示すように、(熱接着層3c/アルミニウム箔3b/接着層s/印刷部r/貫通ミシン目付きPET3a)の層構造を有する。
<比較例4:図8(d)>
アルミニウム箔(1N30、硬質箔)の一方面にワックス添加ポリプロピレン系イージーピール性熱接着剤を(乾燥後重量)5g/m塗布し、アルミニウム箔の他方面に、カーボンブラックを固形分として約20重量%含有する黒インキを用いて製品名等の表印刷を施し、さらにOPニスを用いてオーバープリント層(厚み約1.5μm)を被覆し、比較例4の蓋材とした。複数のポケットを成形したポリプロピレン製のPTP用容器に長さ18mm×幅6mm×高さ5mmの薬剤カプセルを収納し、上記蓋材を180℃でヒートシールしPTP包装体を作製した。図8(d)に示すように、(熱接着層3c/アルミニウム箔3b/印刷部r/OP層3v)の層構造を有する。
【0038】
上記の試験体に対して、プレススルーテスト、イージーピールテストおよび印刷部の外観検査を行った。各テストは次のとおりである。
1.プレススルーテスト
各包装体の容器の底(蓋材と反対側のポケット部分)を手指で圧迫し、蓋材を突き破って薬剤カプセルを取り出せるかをテストした。評価結果は、次の記号により表示した。
○:問題なく薬剤カプセルを取り出せる。
×:蓋材を突き破ることができず、薬剤カプセルを取り出せない。
2.イージーピールテスト
各包装体の蓋材の端を手指で摘んで引っ張り、蓋材を容器から剥離できるかテストした。評価結果は、次の記号により表示した。
○:問題なく蓋材が剥離し、薬剤カプセルを取り出せる。
×:力を入れても蓋材が剥離せず、薬剤カプセルを取り出せない。
××:蓋材が破断し、開封できず。
3.印刷部の外観検査
○:インキの滲みや印刷の欠けは見られず鮮明であった。
×:インキの滲みや印刷の欠けが見られた。
【0039】
【表1】

【0040】
上記のテスト結果を表1に示す。表1によれば、本発明例1〜8は、例外なく、プレススルーテストおよびイージーピールテストの両方で、良好な結果を得ることができ、印刷部の外観も滲みや欠けがなく良好であった。これに比して、ハーフカットを設けない比較例では、樹脂フィルムを配置した比較例2などでプレススルー性能が劣ることがわかる。またイージーピールテストでは、樹脂フィルムを設けない比較例4ではピール性能が劣る。また、ハーフカットを設けず、貫通ミシン目を施した比較例1および比較例3では印刷部の外観が劣ることがわかる。
【0041】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明のPTPおよびその製造方法によれば、作製精度を緩和しても、ロット間、1ロット内のPTP間、1PTP内のポケット部間でのプレススルー性能のばらつきなく、開封を容易に行うことができる高品質の製品を得ることができるので、この分野で貢献することが期待される。
【符号の説明】
【0043】
3 蓋材、3a 樹脂フィルム、3b 基材層(アルミニウム箔)、3c 熱接着層、3j ハーフカット、3t ポケット部表示、5 容器、5a ポケット部、5b フランジ部、10 PTP、21 錠剤、31 ロール、D ポケット部表示の直径、G 掴み部、M ミシン目、Po 樹脂フィルム層の厚み、P1 ハーフカットの深さ、S1 ハーフカットの間隙。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂フィルム層、基材層および熱接着層を有する蓋材と、フランジ部および多数のポケット部を有する容器とを備えるプレススルーパック包装体であって、
前記樹脂フィルム層の一方面に、連続した直線状のハーフカットが、複数互いに略平行に、条をなすように設けられ、隣り合う前記ハーフカットの間隔は、前記ポケット部の平均径よりも小さく、前記ハーフカットの少なくとも部分が、すべての前記ポケット部に対応する領域に位置することを特徴とする、プレススルーパック包装体。
【請求項2】
前記ハーフカットが、碁盤目状に設けられていることを特徴とする、請求項1に記載のプレススルーパック包装体。
【請求項3】
前記ハーフカットを設けた樹脂フィルム層の他方面に印刷が施されていることを特徴とする、請求項1または2に記載のプレススルーパック包装体。
【請求項4】
前記熱接着層がイージーピール性熱接着層からなることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項に記載のプレススルーパック包装体。
【請求項5】
前記樹脂フィルム層が、端裂抵抗が70N以下であるポリエステル系フィルムであることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか1項に記載のプレススルーパック包装体。
【請求項6】
樹脂フィルム層、アルミニウム箔および熱接着層を有する蓋材と、フランジ部および多数のポケット部を有する容器とを備えるプレススルーパック包装体の製造方法であって、
前記樹脂フィルム層の一方面に、連続した直線状のハーフカットを、複数互いに略平行に、条をなすように、当該ハーフカットの間隔を前記ポケット部の平均径よりも小さくなるように形成する工程と、
前記樹脂フィルム層、アルミニウム箔および熱接着層を積層し、蓋材を作製する工程と、
前記フランジ部および多数のポケット部を有する容器を準備する工程と、
前記蓋材と前記容器とを、前記ハーフカットの少なくとも部分が、すべての前記ポケット部に対応する領域に位置するように重ね合わせ、熱接着する工程とを備えることを特徴とする、プレススルーパック包装体の製造方法。
【請求項7】
前記樹脂フィルム層のハーフカットは、該ハーフカットに対応する間隔で、複数、周方向に刃を沿わせて略平行に配列されたカッターもしくはナイフを有するロール、または、前記ハーフカットに対応する間隔で、複数、略平行に配列されたカッターもしくはナイフを有するスリット機により、前記条をなすように形成されることを特徴とする、請求項6に記載のプレススルーパック包装体の製造方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−254315(P2010−254315A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−103867(P2009−103867)
【出願日】平成21年4月22日(2009.4.22)
【出願人】(399054321)東洋アルミニウム株式会社 (179)
【Fターム(参考)】