説明

プレス式塵芥収集車の延焼防止装置

【課題】プレス式塵芥収集車の塵芥収容箱内での火災発生後、塵芥投入箱の開閉機能を長時間に亘って確保する。
【解決手段】塵芥収容箱2と、塵芥収容箱2の後部に開閉自在に連結された塵芥投入箱4と、塵芥投入箱の内部に装備された塵芥積込装置5とを備え、塵芥積込装置5が、昇降自在のパッカープレート6と、パッカープレート6の下端部に揺動自在に設けられたプレスプレート7とを有するプレス式塵芥収集車1の延焼防止装置10である。延焼防止装置10は、貯水タンク11と、塵芥収容箱4の後方上部に設置され、貯水タンク11から配水管15を介して供給された水12を塵芥収容空間9の後方上部領域に向けて噴射する噴射ノズル16とを備える。噴射ノズル16は、水12を浮遊可能な粒径にて噴射可能な噴霧ノズルで構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス式塵芥収集車の延焼防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
塵芥収集車は、車体と、車体に搭載された塵芥収容箱と、塵芥収容箱の後部開口に開閉自在に連結された塵芥投入箱と、塵芥投入箱の内部に装備された塵芥積込装置とを備え、塵芥投入箱に投入された塵芥を塵芥積込装置によって塵芥収容箱内に積み込んで収容するように構成されている。周知のように、塵芥積込装置は、揺動自在な押込板、及び押込板の下方に位置する回転自在な回転板を備えたいわゆる回転式と、昇降自在なパッカープレート、及びパッカープレートの下端部に揺動自在に設けられたプレスプレートを備えたいわゆるプレス式とに大別される。一般に、回転式の塵芥積込装置を装備した塵芥収集車は回転式塵芥収集車と称され、プレス式の塵芥積込装置を装備した塵芥収集車はプレス式塵芥収集車と称される。
【0003】
塵芥収集車で収集する塵芥には、紙やプラスチックなどの可燃性廃棄物の他に、ライターや可燃性ガスボンベなどの引火性廃棄物が混入していることがあり、引火性廃棄物が塵芥積込時の圧縮や摩擦等の影響で発火することによって塵芥収容箱内で火災が発生する(内部火災が発生する)場合がある。内部火災が発生した場合、火勢は比較的弱くても、火災発生に伴って生じる熱気流が塵芥投入箱内に流入等して塵芥投入箱の内部温度が上昇する結果、塵芥投入箱の開閉動作を制御する制御系(電気系統や油圧系統)の構成部品が軟化、溶融、ひいては焼損等し、塵芥投入箱の開閉機能が損なわれるおそれがある。塵芥投入箱の開閉機能が損なわれると、消防隊が本格的な消火活動を実行する際に、塵芥収容箱もしくは塵芥投入箱を切断等することによって消火用の開口部を人為的に形成する必要が生じることから、消火活動を円滑に実行する上での妨げとなる。また、塵芥収容箱もしくは塵芥投入箱を切断等すると、これらが使用不能となることから、多大なメンテナンスコストが必要となり、ユーザ(塵芥収集車の保有者)の損害も甚大なものとなる。
【0004】
そこで、内部火災の消火又は火災の拡大防止を目的として、種々の装置・システムが提案されている。例えば下記の特許文献1には、塵芥収容箱内の後方側の天井部に設置したガス放出ノズルから二酸化炭素ガス等の消火用ガスを放出するように構成された消火燃焼抑制システムが記載されている。しかしながら、消火媒体として二酸化炭素ガス等の消火用ガスを用いるようにしたのでは、消火用ガスが放出される度にガスボンベの交換が必要となることから多大なランニングコストが必要になるという問題がある。一方、下記の特許文献2,3には、塵芥収容箱の天井部に設置した噴射ノズルから、水、又は水を主体とした液状の消火液を塵芥収容箱内に噴射するように構成された消火液噴射式の消火装置が記載されている。このような消火液噴射式の消火装置であれば、火災の拡大を可及的に防止しつつ、ランニングコストを低廉に抑えることができるものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−284194号公報
【特許文献2】実公昭63−11406号公報
【特許文献3】特開2003−95404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、プレス式塵芥収集車においては、塵芥収容箱の内部に前後動可能の排出板が設けられており、この排出板の後部側に塵芥を収容する塵芥収容空間が画成される。そして、塵芥投入箱に投入された塵芥は、塵芥積込装置によって圧縮されながら上記の塵芥収容空間に積み込まれ、塵芥収容空間に積み込まれた塵芥は、塵芥収容箱の側壁内面や天井部内面等に密着する。そのため、プレス式塵芥収集車の塵芥収容箱の天井部に、塵芥収容空間に向けて液状の消火液を噴射する噴射ノズルを設置したとしても、噴射ノズルから噴射された消火液は、噴射ノズルの直下位置にある塵芥に当たってそのまま鉛直下方に流下してしまう。すなわち、上記特許文献2,3に記載されたような消火装置では、噴射ノズルから噴射された消火液が消火若しくは延焼防止に有効に寄与する範囲が極めて限定的であるために、プレス式塵芥収集車で発生した内部火災の拡大を効果的に抑制又は防止することができず、塵芥投入箱の開閉機能が早期に損なわれるという問題がある。このような問題は、例えば噴射ノズルを多数設置することによって解消できるとも考えられるが、この場合、噴射ノズルの設置個数が増大すること、配管が複雑化すること等に起因して、大幅なコスト増を招来する。
【0007】
上記の問題点に鑑み、本発明は、シンプルな構成でありながら、塵芥投入箱の開閉動作を制御する制御系が焼損等することによって塵芥投入箱の開閉機能が損なわれるような事態を可及的に防止し得る延焼防止装置を提供し、これにより、消防隊による本格的な消火活動を円滑に実行可能とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明者らが鋭意研究を重ねた結果、プレス式塵芥収集車において、塵芥収容箱の内部空間(塵芥収容空間)の後方上部領域には塵芥が積み込まれないことを発見し(図2を参照)、この塵芥が積み込まれない領域を有効利用すれば、内部火災が発生した場合にこれを消火するには至らないまでも、塵芥投入箱の制御系が焼損等するのを可及的に防止し、塵芥投入箱の開閉機能を長時間確保できることを見出すに至った。
【0009】
すなわち、上記の課題を解決するために創案された本発明は、内部に前後動可能の排出板が設けられた塵芥収容箱と、塵芥収容箱の後部に開閉自在に連結された塵芥投入箱と、塵芥投入箱の内部に装備された塵芥積込装置とを備え、塵芥積込装置は、昇降自在のパッカープレートと、パッカープレートの下端部に揺動自在に設けられたプレスプレートとを有し、パッカープレートの昇降動作及びプレスプレートの揺動動作の協働により、塵芥投入箱に投入された塵芥を排出板の後部側に画成される塵芥収容空間に圧縮しながら積み込むように構成されたプレス式塵芥収集車の延焼防止装置であって、貯水タンクと、塵芥収容箱の後方上部に設置され、貯水タンクから配水管を介して供給された水を塵芥収容空間の後方上部領域に向けて噴射する噴射ノズルとを備え、この噴射ノズルは、水を浮遊可能な粒径にて噴射するものであることを特徴とする。なお、「浮遊可能な粒径」とは温度条件等によっても異なるが、概ね200μm以下の粒径である。
【0010】
このように、本発明に係るプレス式塵芥収集車の延焼防止装置は、塵芥収容箱の後方上部に設置される噴射ノズルを備え、この噴射ノズルは、塵芥収容箱の内部火災発生時に、水を塵芥収容空間の後方上部領域に向けて浮遊可能な粒径にて噴射する(ウォーターミストを噴射する)もの、すなわち噴霧ノズルで構成される。上記したように、プレス式塵芥収集車においては、塵芥収容空間の後方上部領域に塵芥が積み込まれることがない。そのため、塵芥収容空間内で火災が発生し、噴射ノズルからウォーターミストが噴射されると、噴射されたウォーターミストは、塵芥との接触が抑えられて塵芥収容空間の後方上部領域内で浮遊し、火災発生に伴って生じる熱気流と混合する。これにより、熱気流が冷却され、塵芥収容空間の後方上部領域や、塵芥収容箱と塵芥投入箱の連結部近傍領域の温度上昇が効果的に抑制又は防止される。そのため、塵芥投入箱の開閉動作を制御する制御系の構成部品が焼損等に至るまでの時間を遅らせ、塵芥投入箱の開閉機能を比較的長時間に亘って確保することができる。従って、消防隊が到着するまでの時間をかせぐことができ、消防隊が到着した際には本格的な消火活動を円滑に実行することが可能となる。
【0011】
また、本発明に係る延焼防止装置は、噴射ノズル(噴霧ノズル)が塵芥収容箱の後方上部に設置されるシンプルな構成であることから、設置作業を簡便に実行することができる。また、消火(延焼防止)媒体として水を用いることからランニングコストを低廉に抑えることができ、しかも水はミスト状に噴射されるためにその使用量も少なくて済む。従って、貯水タンクは小型のもので足り、延焼防止装置のコンパクト化を図ることもできる。
【0012】
上記構成において、上記の噴射ノズルは、さらに、塵芥投入箱の内部上方に設置しても良い。このようにすれば、塵芥収容箱と塵芥投入箱の連結部近傍領域の温度上昇を一層効果的に抑制又は防止することができるので、塵芥収容箱内での火災発生後においても塵芥投入箱の開閉機能を一層長時間に亘って確保することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
以上に示すように、本発明に係る延焼防止装置は、設置作業を簡便に実行することができるシンプルな構成で、かつランニングコストも低廉に抑え得るものでありながら、プレス式塵芥収集車で内部火災が発生した場合においても、塵芥投入箱の制御系が焼損等し、その結果塵芥投入箱の開閉機能が損なわれるような事態を可及的に防止することができるものである。これにより、消防隊が本格的な消火活動を円滑に実行することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態に係る延焼防止装置を装備したプレス式塵芥収集車の要部を模式的に示す側面図である。
【図2】塵芥収容箱内部の後方上部領域の撮影画像である。
【図3】プレス式の塵芥積込装置の動作態様を模式的に示す図であって、(A)図は初期状態を示す図、(B)図はプレスプレートが反転動作した状態を示す図、(C)図は塵芥を一次圧縮した状態を示す図、(D)図は塵芥を二次圧縮した状態を示す図、(E)図は塵芥の押し込み動作状態を示す図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る延焼防止装置を装備したプレス式塵芥収集車の要部を模式的に示す図である。
【図5】図1中に示すX部における温度計側結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0016】
図1は、本発明の一実施形態に係る延焼防止装置10を装備したプレス式塵芥収集車1の要部を模式的に示す側面図である。同図に示すプレス式塵芥収集車1は、図示外の車体に搭載された塵芥収容箱2と、塵芥投入箱4と、延焼防止装置10とを主要な構成として備える。塵芥収容箱2の内部には、車幅方向に延びた断面略くの字状の排出板3が配設されており、この排出板3は、図示外の油圧シリンダの一端に連結されて車体の前後方向に移動可能となっている。
【0017】
塵芥投入箱4は、塵芥収容箱2の後部(図中右側)に開閉自在に連結されている。塵芥投入箱4の開閉動作は、主要部が塵芥投入箱4の上部に集中的に設けられた図示外の制御系(電気系統や油圧系統)によって制御される。図3に示すように、塵芥投入箱4の内部には、塵芥投入箱4に投入された塵芥8を塵芥収容箱2の内部空間、より詳しくは、排出板3の後部側に画成される塵芥収容空間9に積み込むための塵芥積込装置5が装備されている。
【0018】
塵芥積込装置5は、図示外のガイドレールに沿って昇降移動するパッカープレート6と、パッカープレート6の下端部に枢着され、車体前後方向に揺動するプレスプレート7とを有するいわゆるプレス式である。塵芥投入箱4に投入された塵芥8は、パッカープレート6とプレスプレート7(さらには排出板3)が以下のように協働して動作することによって、圧縮されながら塵芥収容空間9に積み込まれる。
【0019】
まず、図3(A)に示す初期状態において、パッカープレート6は上昇限に位置し、プレスプレート7は前方側に揺動している。塵芥積込装置5の積込動作を開始させると、図3(B)に示すように、プレスプレート7が後方側に揺動する。プレスプレート7が後方側に揺動した後、図3(C)に示すように、パッカープレート6及びプレスプレート7が一体的に下降し、塵芥投入箱3内に投入された塵芥8がプレスプレート7によって圧縮される(一次圧縮)。この一次圧縮の後、図3(D)に示すようにプレスプレート7が前方側に揺動して塵芥8をさらに圧縮する(二次圧縮)。二次圧縮された塵芥8は、図3(E)に示すように、パッカープレート6及びプレスプレート7が一体的に上昇することによって塵芥収容空間9に積み込まれる。このような一連の塵芥積込動作は自動的に行われ、かつ、これを一回のみ行うモードと、連続的に行うモードとが選択可能となっている。
【0020】
上記した塵芥積込装置5による一連の塵芥8の積込動作中、排出板3は、塵芥収容箱2の塵芥収容空間9に積み込まれた塵芥8を適度に圧縮できるような位置にある。すなわち、排出板3は、塵芥収容空間9における塵芥8の収容量(積込量)がゼロもしくは少量の場合には後方側に位置する一方、塵芥8の積込量が増大すると、塵芥収容空間9の容積を拡大すべく、徐々に前方側に移動するように構成されている。
【0021】
そして、本願発明者は、上記のようにして塵芥収容空間9に塵芥8が積み込まれた際、いかなる場合においても塵芥収容空間9の後方上部領域には塵芥8が積み込まれないことを、すなわち、塵芥収容空間9の後方上部には、塵芥8が収容されていない空き空間(非収容部)20が存在することを見出すに至った(図2を参照)。なお、非収容部20は、例えば塵芥収容箱2の後端から300mm程度前方側に延びるようにして、また、塵芥収容箱2の内側天井面から200mm程度下方に延びるようにして画成されている。
【0022】
次に、延焼防止装置10の構成について詳述する。
【0023】
延焼防止装置10は、塵芥収容箱2の内部空間(塵芥収容空間9)で火災が発生した場合に、塵芥投入箱4の開閉動作を制御する制御系(電気系統や油圧系統)の構成部品が焼損等し、その結果塵芥投入箱4の開閉機能が損なわれるのを可及的に防止することを主たる目的として設けられたものであり、水12を貯留した貯水タンク11と、噴射ノズル16と、ポンプ13と、貯水タンク11とポンプ13の間、及びポンプ13と噴射ノズル16の間に配設された配水管15と、ポンプ13の動作を制御する制御盤14とを備える。
【0024】
噴射ノズル16は、ポンプ13から供給された水12を上記の非収容部20に向けて噴射するように、塵芥収容箱2の後方上部に一又は複数設置されている。図示例では、塵芥収容箱2の天井部にのみ設置しているが、さらに塵芥収容箱2の側壁に設置するようにしても良い。噴射ノズル16は、ポンプ13から供給された水12を、非収容部20内で浮遊可能な粒径(例えば、平均粒径が200μm以下)にて噴射可能なもの、すなわち噴霧ノズルで構成される。
【0025】
本発明に係る延焼防止装置10は以上の構成からなり、塵芥収容空間9で火災が発生した場合には次のように動作する。
【0026】
まず、制御盤14から出力されたポンプ駆動信号がポンプ13に入力されると、ポンプ13は貯水タンク11内に貯留された水12を吸い上げ、吸い上げた水12を所定の圧力で噴射ノズル16に供給する。噴射ノズル16のノズル口からは、塵芥収容空間9の非収容部20に向けてポンプ13から供給された水12が浮遊可能な粒径にて噴射される(非収容部20に向けてウォーターミストが噴射される)。噴射されたウォーターミストは非収容部20内で浮遊し、火災発生に伴って生じた熱気流と混合する。これにより熱気流が効果的に冷却され、塵芥収容空間9の非収容部20、さらには塵芥収容箱2と塵芥投入箱4の連結部近傍領域の温度上昇が効果的に抑制又は防止される。そのため、塵芥投入箱4の開閉動作を制御する電気系統や油圧系統の構成部品が軟化、溶融、ひいては焼損等に至るまでの時間を遅らせることができるので、内部火災が発生した場合、塵芥投入箱4の開閉機能を比較的長時間に亘って確保することができる。従って、消防隊が到着するまでの時間をかせぐことができ、消防隊が到着した際には本格的な消火活動を円滑に実行することができる。
【0027】
上記のように、本発明に係る延焼防止装置10は、噴射ノズル16(噴霧ノズル)を塵芥収容箱2の後方上部に設置したシンプルな構造であることから、設置作業を簡便に実行することができる。また、消火(延焼防止)媒体として水12を用いることからランニングコストを低廉に抑えることができ、しかも水12はミスト状に噴射されることからその使用量も少なくて済む。従って、貯水タンク11、さらにはポンプ13を小型化し、延焼防止装置10をコンパクト化することもできる。
【0028】
図4は、本発明の他の実施形態に係る延焼防止装置10を装備したプレス式塵芥収集車1の要部を模式的に示す側面図である。同図に示す延焼防止装置10が図1に示すものと異なる主な点は、塵芥投入箱4の内部上方に、上記の噴射ノズル16がさらに設置された点にある。塵芥投入箱4の内部上方に設置された噴射ノズル16は、ノズル口を上側に位置させるようにして、すなわち、塵芥収容箱2と塵芥投入箱4の連結部近傍にウォーターミストを噴射するように配設されている。このような構成によれば、熱気流による塵芥収容箱2と塵芥投入箱4の連結部近傍領域の温度上昇を一層効果的に抑制又は防止することができるので、火災発生後においても、塵芥投入箱4の開閉機能を一層長時間に亘って確保することが可能となる。
【実施例】
【0029】
本発明の有用性を実証するため、確認試験を行った。確認試験においては、図1に示す延焼防止装置10を実装したプレス式塵芥収集車の塵芥収容空間9で試験的に火災を発生させると共に延焼防止装置10を作動させ、火災発生から所定時間(15分)経過するまでの間、塵芥投入箱4の開閉機能を制御する制御系の近傍領域である塵芥収容空間9の後方上部領域(非収容部20)や塵芥投入箱4の内部上方領域等における温度変化を温度センサーで計測した。なお、延焼防止装置10は、複数設置した温度センサーのうち、何れか一つの温度センサーが200℃を計測した時点で作動するように構成した。
【0030】
この確認試験に先立って、塵芥投入箱4の開閉機能を制御する制御系のうち、電気系統の構成部品の熱破壊試験を行うと共に、温度上昇に伴って塵芥収容箱4の塗装状態がどのように変化するかを確認したのでその結果を表1に示す。
【表1】

【0031】
表1からも明らかなように、150℃では電気系統の構成部品に異常は見受けられなかったが、160℃になると電線被膜の収縮が発生し、170℃になるとコルゲートチューブ(電線を内部に収容した蛇腹状のパイプ材)が溶け、250℃になると電線被膜及びコネクタが溶けた。従って、火災が発生した際、150℃を超えるような高温状態が電気系統の周辺で所定時間維持されないようにしておけば、電気系統の構成部品が焼損等するのを可及的に防止して、塵芥投入箱4の開閉機能を確保することができるものと考えられる。
【0032】
図5は、上記の確認試験において複数設置した温度センサーのうち、温度の振れ幅が最も大きかった温度センサー(最高温度を計測した温度センサー)、詳しくは図1中のX部に設置した温度センサーによる計測データを示すものである。図5からも明らかなように、延焼防止装置10が作動し、噴射ノズル16からのウォーターミストの噴射開始後1分にも満たない時点でX部の温度は150℃以下となり、ウォーターミストの噴射開始から1分超経過した時点でX部の温度は40℃程度にまで低下した。火災発生から15分後においてもX部の温度が150℃を超えることはなく、X部の温度は概ね70℃以下に維持された。したがって、本発明に係る延焼防止装置10は、制御系の構成部品が焼損等するのを可及的に防止して、塵芥投入箱4の開閉機能を長時間に亘って確保することができる有用なものであると言える。なお、本確認試験では、複数設置した温度センサーの何れか一つが200℃を計測した時点で延焼防止装置10を作動させているが、作動開始温度を百数十℃程度に設定すれば、塵芥投入箱4の開閉機能が損なわれる事態を一層確実に防止することができるものと考えられる。
【符号の説明】
【0033】
1 プレス式塵芥収集車
2 塵芥収容箱
3 排出板
4 塵芥投入箱
5 塵芥積込装置
6 パッカープレート
7 プレスプレート
8 塵芥
9 塵芥収容空間
10 延焼防止装置
11 貯水タンク
16 噴射ノズル
20 非収容部(塵芥収容空間の後方上部領域)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に前後動可能の排出板が設けられた塵芥収容箱と、該塵芥収容箱の後部に開閉自在に連結された塵芥投入箱と、該塵芥投入箱の内部に装備された塵芥積込装置とを備え、
前記塵芥積込装置は、昇降自在のパッカープレートと、該パッカープレートの下端部に揺動自在に設けられたプレスプレートとを有し、前記パッカープレートの昇降動作及び前記プレスプレートの揺動動作の協働により、前記塵芥投入箱に投入された塵芥を前記排出板の後部側に画成される塵芥収容空間に圧縮しながら積み込むように構成されたプレス式塵芥収集車の延焼防止装置であって、
貯水タンクと、前記塵芥収容箱の後方上部に設置され、前記貯水タンクから配水管を介して供給された水を前記塵芥収容空間の後方上部領域に向けて噴射する噴射ノズルとを備え、該噴射ノズルは、前記水を浮遊可能な粒径にて噴射するものであることを特徴とするプレス式塵芥収集車の延焼防止装置。
【請求項2】
さらに、前記塵芥投入箱の内部上方に設置された前記噴射ノズルを有する請求項1に記載のプレス式塵芥収集車の延焼防止装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−41121(P2012−41121A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−183044(P2010−183044)
【出願日】平成22年8月18日(2010.8.18)
【出願人】(000192073)株式会社モリタホールディングス (80)
【Fターム(参考)】