説明

プレス機械のワーク搬送装置

【課題】 エネルギ消費が少なく、製造コストの低減を図れるプレス機械のワーク搬送装置を提供すること目的とする。
【解決手段】 プレス機械のワーク搬送装置において、フィード方向に平行に設けられた左右一対のトランスファバー13,13と、前記それぞれのトランスファバー13をフィード方向に移動自在で、かつリフト方向に拘束する支持部材19と、この支持部材19と前記トランスファバー13との間に介在し、前記トランスファバー13を前記支持部材19に対してフィード方向に移動自在に駆動するリニアモータ16と、前記支持部材19をリフト方向に移動させるリフト装置41と、前記トランスファバー13に着脱自在に装着され、ワーク6を保持するワーク保持具15とを備えたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プレス機械内でワークを搬送するワーク搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プレス本体内に複数の加工工程を備えたトランスファプレスには、各加工工程間でワークを順次次工程へ搬送するトランスファフィーダが設けられている。そして、このトランスファフィーダとしては、ワークをワーク保持具で保持して、このワーク保持具をフィード方向(ワーク搬送方向)、クランプ方向(フィード方向に対し水平直交方向)、リフト方向の3次元方向に移動させることで、ワークを順次次工程へ搬送する3次元トランスファフィーダが一般的に知られている。
【0003】
図7に、従来の3次元トランスファフィーダを用いたトランスファプレスの全体構成を示す。
トランスファフィーダ110は、フィード方向と平行な左右一対のトランスファバー113を有しており、これらのトランスファバー113にはワークを保持する、図示しない複数のワーク保持具が着脱自在に装備されている。これらのトランスファバー113は、フィード方向に往復するフィード・リターン動(前後動)と、リフト方向(上下方向)に往復するリフト・ダウン動(昇降動)と、クランプ方向(フィード方向に対し水平面上で直交する方向)に往復動するクランプ・アンクランプ動(左右動)との3次元動作を行うことにより、ワーク106を下流側の金型130へ順次移送している。この際、トランスファバー113の基本的な動作パターンは、クランプ、リフト、フィード、ダウン、アンクランプ、リターンである。そして、このトランスファフィーダ110には、トランスファバー113に前述の動作をさせる装置として、フィード方向に移動させるフィード装置(図示せず)と、リフト方向及びクランプ方向に移動させるリフト・クランプ装置140とが設けられている。
【0004】
このフィード装置を内蔵したフィードボックス111は、プレス本体101の上流側または下流側側面に突出して設けられており、またリフト・クランプ装置140を内蔵したリフト・クランプボックスは、前後それぞれの左右アプライト103間で、かつベッド102上に設けられている。
【0005】
また特許文献1には、上下および左右方向の移動は自由とするが、前後方向(フィード方向)の移動は拘束されるようにフィードバーが連結されているフィードキャリアと、このフィードキャリアを前後動させるフィードユニットと、このフィードユニットの駆動源であるリニアモータとによって構成された技術を開示している。
【0006】
【特許文献1】特開平10−314871号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、図7および特許文献1に示されているようなワーク搬送装置においては、リフト・クランプ装置によるトランスファバーのリフト方向およびクランプ方向の動きを受け流し、且つ前記トランスファバーを支持する、フィードキャリアが大型で且つ重量物になる。このため、このフィードキャリアをフィード方向に駆動する駆動源に高出力のサーボモータあるいはリニアモータを備えなければならず、省エネの面からも製造コストの面からも不利になっていた。
また、回転出力軸を有するサーボモータの場合、回転動を直線動に変換する、例えばラック・ピニオン機構のような動力変換機構を必要とするため、特に高速運転時の騒音が問題になっていた。
【0008】
なお、可動体重量に見合った容量の駆動源を用いなかった場合、その可動体の慣性力によって起動時、停止時あるいは寸動時にびびりを生じ易く、ワークの落下および駆動装置部品の早期磨耗などの原因になる。また、加減速時の力不足により、プレス機械にワーク搬送装置が追従できなくなり、生産速度を低く設定しなければならないことにもなる。
【0009】
本発明は上記の問題点に着目してなされたもので、ワーク搬送装置を簡素化させ、且つフィード方向の駆動源の出力を減らすことにより、エネルギ消費が少なく、製造コストの低減及び低騒音化を図れるプレス機械のワーク搬送装置を提供すること目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、第1発明のプレス機械のワーク搬送装置は、フィード方向に平行に設けられた一対のトランスファバーと、前記それぞれのトランスファバーをフィード方向に移動自在で、かつリフト方向に拘束する支持部材と、前記支持部材と前記トランスファバーとの間に介在し、トランスファバーを支持部材に対してフィード方向に移動させるリニアモータと、前記支持部材をリフト方向に移動させるリフト装置と、前記トランスファバーに着脱自在に装着され、ワークを保持するワーク保持具とを備えた構成としている。
【0011】
また、第1発明のプレス機械のワーク搬送装置において、前記一対のトランスファバー間に、フィード方向に対し直交するクランプ方向に横架されたクロスバーを備え、前記クロスバーに前記ワーク保持具を配設することが好ましい。
【0012】
さらに、第2発明のプレス機械のワーク搬送装置は、フィード方向に平行に設けられた左右一対のトランスファバーと、前記それぞれのトランスファバーをフィード方向に移動自在で、かつリフト方向及びクランプ方向に拘束する支持部材と、前記支持部材と前記トランスファバーとの間に介在し、トランスファバーを支持部材に対してフィード方向に駆動するリニアモータと、前記支持部材をリフト方向に移動させるリフト装置と、前記支持部材をクランプ方向に移動させるクランプ装置と、前記トランスファバーに着脱自在に装着され、ワークを保持するワーク保持具とを備えた構成としている。
【発明の効果】
【0013】
第1発明によると、トランスファバーに直接リニアモータのマグネット側又はコイル側を横設させ、支持部材と前記トランスファバーとの間に介在させたリニアモータからなるフィード装置により、前記トランスファバーを前記支持部材に対してフィード方向に移動させ、支持部材をリフト装置で昇降駆動している。このように、フィード装置とリフト装置を分離することにより、フィード装置に対する可動体重量を軽減することができ、プレス機械の高速運転に対しワーク搬送装置が容易に追従可能になる。このため、リニアモータの出力を抑えることができ、省エネが図れ,且つ製造コストを抑えることができる。
また、リニアモータ駆動のため、回転動を直線動へ変換する動力変換機構が不要になり、特に高速運転時の低騒音化を図ることができる。
【0014】
さらに第1発明において、トランスファバーに、その長手方向に対し直交する方向に横架されたクロスバーを備え、このクロスバーにワーク保持具を配設することで、薄物大物ワークの中央部の適当な位置を保持することができる。このため、搬送時のワークの変形を少なくさせ、ワークの搬送を確実にでき、且つ搬送時のワークの変形による不良品の発生を抑えることができる。
【0015】
第2発明によると、第1発明のリフト装置に加えて、支持部材をクランプ方向に移動させるクランプ装置を備えたことにより、3次元トランスファフィーダを構成し、第1発明と同様な効果を図っている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明に係るワーク搬送装置の第1実施形態について図1〜図3の図面を参照して説明する。
ここに図1は、本発明のワーク搬送装置を用いたトランスファプレスの全体構成を示し、図2は、本発明のワーク搬送装置に係る構成を示し、また図3は本発明のトランスファバーのモーションを示している。
【0017】
先ず、図1により本発明の実施形態であるトランスファプレスの全体構成を説明する。
トランスファプレスは、ベッド2、アプライト3、クラウン4、およびスライド5よりなるプレス本体1と、金型30と、ムービングボルスタ33と、ワーク搬送装置10とで構成されている。尚、以下の説明においては、ワークを搬送する方向(図1の左右方向)をフィード方向又は前後方向と呼び、図1の上下方向をリフト方向又は上下方向と呼び、水平面内でフィード方向と垂直な方向(図1の紙面に垂直な方向)をクランプ方向又は左右方向と呼ぶ。
【0018】
フロア(FL)下にはプレス機械の土台となるベッド2が設けられており、この上面には4隅に柱状のアプライト3が立設されている。またこのアプライト3上には、図示しないスライド駆動装置を内蔵したクラウン4が支持されており、このクラウン4の下方にはスライド5が昇降自在に吊り下げられている。クラウン4、アプライト3及びベッド2は、図示しないタイロッドで締結されている。
【0019】
スライド5下面には、プレス成形の加工工程に対応したそれぞれの上金型31が装着されている。また、ベッド2上にはムービングボルスタ33が載置され、その上面には、前記複数の上金型31と対をなす下金型32がそれぞれ脱着自在に装着されている。これら上金型31、下金型32の間でワークがプレス成形される。
【0020】
ムービングボルスタ33につき、以下説明する。
ムービングボルスタ33は、通常2セット準備されている。即ち、使用中又は使用済みの下金型32を装着してプレス機内にある第1のムービングボルスタ33に加え、次の工程に使用する下金型を前もって装着しておいた第2のムービングボルスタ(図示せず)をプレス機外に備えている。また、各ムービングボルスタ33には、それぞれの下金型32に対応する図示しないワーク保持具を装着した、ワーク搬送装置10の一部が搭載される。
【0021】
各ムービングボルスタ33は、それぞれ自走可能の駆動装置を備えている。また、フロアFL上及びベッド2上には、クランプ方向に図示しないレールが敷設されている。ムービングボルスタ33は、前記駆動装置及びレールにより、ベッド2の上面にフィード方向に立設するアプライト3,3間をクランプ方向に通過して、プレス機内へと搬出(またはプレス機外から搬入)自在となっている。これにより、使用済みの下金型32を、次に使用する下金型と迅速に交換することができる。
【0022】
次に、図2により、本発明のワーク搬送装置10の第1実施形態を詳述する。
ワーク搬送装置10は、クランプ方向に対向する一対(以下、これを左右一対と呼ぶ)のトランスファバー13,13と、このトランスファバー13上でワークをフィード方向に移動させるフィード装置11と、トランスファバー13をリフト方向及びクランプ方向に移動させるリフト・クランプ装置40とで構成されている。
【0023】
トランスファバー13は、ワーク搬送装置10に固定された固定バー13Bと、金型交換の際にこの固定バー13Bと切り離されてムービングボルスタ33と共にプレス機外へ搬出される移動バー13Aとで構成されている。
左右の移動バー13A,13Aには、それぞれ複数対のベース14,14が組み付けられている。そして、金型30に対応した図示しないワーク保持具が、ベース14に着脱自在に装着されている。
【0024】
トランスファバー13をフィード方向に移動させるフィード装置11は、左右一対のトランスファバー13,13のそれぞれに設けられている。
フィード装置11は、トランスファバー13の固定バー13Bを支持する支持部材19と、トランスファバー13をこの支持部材19に対してフィード方向に移動自在に案内するリニアガイド18と、トランスファバー13をフィード方向に駆動させるリニアモータ16とを備えている。
【0025】
トランスファバー13は、トランスファバー13の外面に沿ってフィード方向に敷設されたリニアガイドレール18Aと、支持部材19の内面に固着されたリニアガイドホルダ18Bとで構成されたリニアガイド18によって、フィード方向に移動自在に保持されている。
フィード装置11を駆動するリニアモータ16は、トランスファバー13の外面に沿ってフィード方向に敷設されたリニアモータマグネット16Aと、支持部材19の内面に固着されたリニアモータコイル16Bとで成立っている。
なお、トランスファバー13側にリニアモータコイル16Bを、また支持部材側にリニアモータマグネット16Aを、それぞれ設けてもよい。
【0026】
このように、本発明では前記フィード装置11の駆動源として、回転運動をする部品が無く部品点数も少ないリニアモータ16を採用しているので、フィード装置11を軽量化および小型化できる。また、低騒音化を図ることができる。さらに、リニアモータ16をトランスファバー13と支持部材19との間に設け、トランスファバー13のみを動かすようにしたため、可動体重量を減らすことが可能になり、リニアモータ16が小出力で済む。また、可動体重量が軽いことから、起動、停止時及び寸動時におけるトランスファバー13のびびりを抑えることができ、かつフィーダ装置11全体の高速化、高位置精度化が図れ、プレス機械の高速運転が可能となる。またさらに、部品点数がすくないことから、保全作業が容易になる。
【0027】
次に、トランスファバー13を、リフト方向及びクランプ方向に移動させるリフト・クランプ装置40を説明する。
リフト・クランプ装置40は、トランスファバー13をリフト方向に移動させるリフト装置41と、トランスファバー13をクランプ方向に移動させるクランプ装置61とで構成されている。リフト・クランプ装置40,40は、リフト・クランプボックス70,70内に収納されている。リフト・クランプボックス70,70は、フィード方向においては、トランスファバー13,13両端部の支持部材19の下方のベッド2上に、クランプ方向においては、対向するアプライト3,3の間に配置されている。
【0028】
リフト・クランプ装置40の下部を構成するリフト装置41は、リフト駆動モータ44と、リフト駆動モータ44によって回転するリフトスクリュー46とを備えている。リフトスクリュー46の上端部には、リフトキャリア42が螺合している。リフトキャリア42には、フィード方向に対向するリフトバー43,43の下端部が、カムフォロア43A,43Aを介してクランプ方向に移動自在に取着されている。リフトバー43,43の上端部は、支持部材19に固定されている。
リフト駆動モータ44によってリフトスクリュー46を正逆回転させると、リフトスクリュー46と螺合するリフトキャリア42が昇降動する。これにより、リフトバー43,43及び支持部材18を介して、トランスファバー13がリフト方向に昇降動する。尚、リフトキャリア42には、その昇降移動を円滑に行うと共にトランスファバー13、リフトキャリア42などの重量をバランスさせるためのリフトバランサ47,47が、クランプ方向の両端部に装着されている。
【0029】
次に、リフト・クランプ装置40の上部を構成するクランプ装置61を説明する。リフトバー43,43は、クランプキャリア62,62の案内部位に挿入されている。クランプキャリア62,62には、リフト・クランプボックス70内部に設けられたクランプ駆動モータ64によって回転するクランプスクリュー66が螺合している。また、クランプボックス70上面には、左右リニアガイドレール63がクランプ方向に敷設されている。クランプキャリア62は、図示しない左右リニアガイドホルダを介して、左右リニアガイドレール63上に、クランプ方向に移動自在に搭載されている。
クランプ駆動モータ64を正逆回動すると、クランプスクリュー66と螺合するクランプキャリア62が、左右リニアガイドレールに沿ってクランプ方向に往復動する。
【0030】
このように、支持部材19がリフト・クランプ装置40の上方に設けられるので、従来プレス本体の前側(上流側)または後側(下流側)側面に突出して設けられていたフィードボックス111が不要か、簡便なカバーだけで済む。このため、プレスラインの全長を短くさせることができ、プレスライン全体の設置面積が少なくなる。
【0031】
次に、図2及び第1実施形態のモーションを示す図3を参照し、第1実施形態のワーク搬送装置の作動について説明する。
(1)まず、ワーク6が、図示しない搬入装置により、トランスファバー13のワーク搬入位置(トランスファバー13,13前方端位置)の図示しないワーク受台へ搬入載置される。
この時、ダウン(トランスファバー13,13下降)位置にあるトランスファバー13は、アンクランプ(トランスファバー13,13離間)位置からクランプ(トランスファバー13,13接近)位置へ移動し、ワーク受台上のワーク6を、ベース14に取付けたワーク保持具15に載置させる。
(2)次に、ワーク6をワーク保持具15で載置した状態でトランスファバー13を、支持部材19を介してリフト装置41でリフト(トランスファバー13,13上昇)させ、さらに、リニアモータ16で制御駆動されるフィード装置11によりフィード(前進搬送)させる。その結果、ワーク保持具15に載置されたワーク6を、プレス成形加工の第1加工工程(図1においてスライド5の左端加工工程)位置へフィード(前進搬送)させる。
(3)続いて、ワーク6がプレス成形加工の第1加工工程位置に到達したら、トランスファバー13をリフト装置41でダウンすることで、ムービングボルスタ33上面に設置された、プレス成形加工の第1加工工程用の下金型32上にワーク6をセットする。
(4)下金型32にワーク6をセット完了後、トランスファバー13をクランプ装置61でアンクランプすることで、ワーク保持具15をワーク6から退避させる。そして、トランスファバー13がアンクランプしてクランプ後退端に到達後、トランスファバー13は、フィード装置11により最初の搬入位置までリターン(後退搬送)させる。
(5)一方、前述のワーク保持手段15がアンクランプ(トランスファバー13,13後退)し、金型30との干渉域外に退避した後、スライド5の下降動作を行い、その下面に取着した上金型31を下降させて、これと下金型32との間でワーク6を挟みこみ且つ加圧して所定の第1加工工程の成形加工を行う。
【0032】
(6)引き続いて、ワーク6の次加工工程への搬送及び成形加工は、前述のワーク搬送装置10による搬入位置からプレス成形加工の第1加工工程位置へのワーク搬送((1)から(4)に記載)、及び第1加工工程におけるワーク6の成形加工((5)に記載)と同様に行われる。即ち、ワーク搬送装置10によるプレス成形加工の第1加工工程位置から第2加工工程位置へのワーク搬送、及び第2加工工程におけるワーク6の成形加工は、前述と同様に行われる。また、ワーク搬送装置10によるプレス成形加工の第2加工工程位置から第3加工工程位置へのワーク搬送、及び第3加工工程におけるワーク6の成形加工も前述と同様にして行われる。
【0033】
(7)続いて、第3加工工程位置においてワーク6の第3加工工程の成形加工が完了したら、このワーク6は、ワーク搬送装置10によりプレス成形加工の第3加工工程位置からトランスファバー13のワーク搬出位置(トランスファバー13,13後方端位置)のワーク受台へ搬送される。
(8)ワーク搬出位置のワーク受台へ搬出された成形加工済みのワーク6は、図示しない製品搬出装置によりプレス機外へ搬出される。
【0034】
以上述べたように第1実施形態のワーク搬送装置は、トランスファバー13をフィード方向に往復するフィード・リターン動と、上下方向に往復する昇降動と、フィード方向に水平直交するクランプ方向に往復動するクランプ・アンクランプ動との3次元動作を行っている。
【0035】
本発明に係る第2実施形態を、図4により説明する。
第1実施形態と同じ構造部分については、ここではその説明を省略する。
第2実施形態は、第1実施形態において、クランプ装置61の駆動を停止させることにより、トランスファバー13,13をクランプ方向に対して固定している。これにより、間隔を一定に保たれたトランスファバー13,13間には、クロスバー20が横架されている。クロスバー20には、負圧を利用したバキュームカップを用いてワーク6をその下部に保持するワーク保持具15が配設されている。
【0036】
次に、図4及び第2実施形態のモーションを示す図5を参照し、第2実施形態のワーク搬送装置の作動について説明する。
(1)まず、ワーク6は、(図示しない)搬入装置により、トランスファバー13のワーク搬入位置(バー前方端位置)の図示しないワーク受台へ搬入載置さ
れる。
この後、待機位置にあるクロスバー20を、トランスファバー13と共にリターンさせる。クロスバー20をワーク受台上までリターンさせた後、ダウンさせ、ワーク受台上のワーク6をバキュームカップで吸着する。
(2)次に、ワーク6をバキュームカップで吸着した状態でトランスファバー13を、支持部材19を介してリフト装置41でリフトさせ、さらにリニアモータ16で制御駆動されるフィード装置11によりフィード(前進搬送)させる。その結果、ワーク保持具15で吸着されたワーク6を、プレス成形加工の第1加工工程(図1においてスライド5の左端加工工程)位置へフィード(前進搬送)させる。
(3)続いて、ワーク6がプレス成形加工の第1加工工程位置に到達したら、トランスファバー13をリフト装置41でダウンすることで、ムービングボルスタ33上面に設置された、プレス成形加工の第1加工工程用の下金型32上にワーク6を位置決めし、バキュームカップの吸引力を除去する。その結果下金型32上にワーク6がセットされる。
(4)下金型32にワーク6をセット完了後、トランスファバー13をリフトさせる。そして、最初の待機位置までリターンさせる。
(5)一方、前述のワーク保持具15が下金型32に上にセットされ、クロスバーが干渉域外の待機位置までに退避した後、スライド5の下降動作を行い、その下面に取着した上金型31を下降させて、これと下金型32との間でワーク6を挟みこみ且つ加圧して所定の第1加工工程の成形加工を行う。
【0037】
(6)引き続いて、ワーク6の次加工工程への搬送及び成形加工は、前述のワーク搬送装置10による搬入位置からプレス成形加工の第1加工工程位置へのワーク搬送((1)から(4)に記載)、及び第1加工工程におけるワーク6の成形加工((5)に記載)と同様に行われる。即ち、ワーク搬送装置10によるプレス成形加工の第1加工工程位置から第2加工工程位置へのワーク搬送、及び第2加工工程におけるワーク6の成形加工は、前述と同様に行われる。また、ワーク搬送装置10によるプレス成形加工の第2加工工程位置から第3加工工程位置へのワーク搬送、及び第3加工工程におけるワーク6の成形加工も前述と同様にして行われる。
【0038】
(7)続いて、第3加工工程位置においてワーク6の第3加工工程の成形加工が完了したら、このワーク6は、ワーク搬送装置10によりプレス成形加工の第3加工工程位置からトランスファバー13のワーク搬出位置(バー後方端位置)のワーク受台へ搬送される。
(8)ワーク搬出位置のワーク受台へ搬出された成形加工済みのワーク6は、図示しない製品搬出装置によりプレス機外へ搬出される。
【0039】
以上述べたように第2実施形態のワーク搬送装置10は、トランスファバー13をフィード方向に往復するフィード・リターン動と、上下方向に往復する昇降動との2次元動作を行っている。
【0040】
尚、第2実施形態においては、クロスバー20にワーク保持具15であるバキュームカップを配設してあるが、図6のように、トランスファバー13にバキュームカップを配設してもよい。
【0041】
また、第2実施形態においては、第1実施形態のクランプ装置61の駆動を停止させ、トランスファバーを2次元運動させている。このとき、ワーク搬送装置10の使用を、2次元運動を用いるバキューム搬送だけに限定する場合、クランプ装置が不要になる。そのため、当初からクランプ装置を設けずに、リフト装置のみとする構成にしてもよい。
【0042】
また、第2実施形態において、金型交換の際、トランスファバー13を移動バー13Aと固定バー13Bに分割し、移動バー13Aをムービングボルスタ33に載置して、プレス機外へ搬出していたが、クロスバー20をトランスファバー13から分離し、分離されたクロスバー20をムービングボルスタ33に載置させてプレス機外へ搬出してもよい。この場合、トランスファバー13を分割する必要がなくなる。
【0043】
また上記各実施形態においては、本発明のワーク搬送装置10を、フィード方向にアプライト3,3を2本有する2柱式のプレスに採用した例について説明した。しかし、この構成に限定することなく、例えばフィード方向にアプライト3を3本有する3柱式、または、それ以上のアプライト本数を有するプレス機械に採用してもよい。
【0044】
また、上記各実施形態において、リフト駆動モータ44とクランプ駆動モータ64を、フィード装置11の駆動源であるリニアモータ16のように、リニアモータで構成してもよい。
【0045】
また、上記各実施形態において、リフト・クランプボックス70はトランスファバー13の下方のベッド2上に設置されているが、トランスファバー13の上方のアプライト3、3間に設置されてもよい。この場合、トランスファバー13は、支持部材19を介して吊り下げられた形になる。
【0046】
さらに、上記各実施形態においては、リフト・クランプボックス70が、トランスファバー13の前後の端部に存在していることにより,リフト・クランプボックス70の上方に位置する支持部材19も、1本のトランスファバー13に対して2個存在することになる。しかし、1本のトランスファバー13に対する支持部材16の数が3個以上あってもよい。
またさらに、サーボモータの出力をより大きくすれば、全ての支持部材にリニアモータを設ける必要はない。例えば、前側(上流側)の支持部材16のみにリニアモータ及びリニアガイドを設け、後側(下流側)の支持部材16には、リニアガイドだけにしてもよい。
【0047】
なお、本願発明は、レトロフィットにおいても効果を図ることができる。
トランスファプレスにおける近年の傾向として、既存のプレス機械のカム駆動のワーク搬送装置をサーボ制御駆動の装置に交換して、高速化、ワーク多種対応化などの機能を高める、プレスのレトロフィットが盛んに行われてきている。ところが、今までのようにフィード方向の駆動源をサーボモータとした場合においても、プレス本体の搬出側(またはワーク搬入側)側面に突出して配設された、フィード装置の主要部であるフィードボックスは残り、結果的にフィードボックスの交換をすることになっていた。フィードボックスが大型・重量物であり、しかもプレス本体の側面に突出して設けられているため、プレス本体にフィードボックス取付け座を溶接する工事などを含むフィードボックスの交換工事には、多くの工事日数を要していた。
このようなレトロフィットでは、稼動中の生産加工ラインの長い停止期間を必要とするため、ユーザの生産管理に支障をきたしていた。
特許文献1の場合においても、トランスファバーを支持するフィードキャリアが大型で且つ重量物になり、それに伴い大きなフィードボックスを取付けることになる。
【0048】
本発明においては、支持部材がリフト・クランプ装置の上方(あるいは下方)に設けられるだけなので、フィードボックスが不要か、あるいは安全面、スクラップ対策等の簡便なカバーで済む。このため、レトロフィット工事に要する工事期間を短縮でき、ユーザの生産管理に対する支障を最小限に抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】第1実施形態のワーク搬送装置を用いたプレスの全体構成図である。
【図2】第1実施形態のワーク搬送装置に係る構成図である。
【図3】第1実施形態のモーションを示す図である。
【図4】第2実施形態のワーク搬送装置に係る構成図である。
【図5】第2実施形態のモーションを示す図である。
【図6】第2実施形態の、他の実施形態のワーク搬送装置に係る構成図である。
【図7】従来の3次元トランスファフィーダを用いたプレスの全体構成図である。
【符号の説明】
【0050】
1…プレス本体、2…ベッド、3…アプライト、4…クラウン、5…スライド、6…ワーク、10…ワーク搬送装置、11…フィード装置、13…トランスファバー、15…ワーク保持具、16…リニアモータ、18…リニアガイド、19…支持部材、20…クロスバー、30…金型、31…上金型、32…下金型、33…ムービングボルスタ、40…リフト・クランプ装置、41…リフト装置、61…クランプ装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プレス機械のワーク搬送装置において、
フィード方向に平行に設けられた一対のトランスファバー(13,13)と、
前記それぞれのトランスファバー(13)をフィード方向に移動自在で、かつリフト方向に拘束する支持部材(19,19)と、
前記支持部材(19)と前記トランスファバー(13)との間に介在し、トランスファバー(13)を支持部材(19)に対してフィード方向に移動させるリニアモータ(16)と、
前記支持部材(19)をリフト方向に移動させるリフト装置(41)と、
前記トランスファバー(13)に着脱自在に装着され、ワーク(6)を保持するワーク保持具(15)とを
備えたことを特徴とするプレス機械のワーク搬送装置。
【請求項2】
前記一対のトランスファバー(13,13)間に、フィード方向に対し直交するクランプ方向に横架されたクロスバー(20)を備え、
前記クロスバー(20)に前記ワーク保持具(15)を配設したことを特徴とする請求項1に記載のプレス機械のワーク搬送装置。
【請求項3】
プレス機械のワーク搬送装置において、
フィード方向に平行に設けられた左右一対のトランスファバー(13,13)と、
前記それぞれのトランスファバー(13)をフィード方向に移動自在で、かつリフト方向及びクランプ方向に拘束する支持部材(19)と、
前記支持部材(19)と前記トランスファバー(13)との間に介在し、トランスファバー(13)を支持部材(19)に対してフィード方向に駆動するリニアモータ(16)と、
前記支持部材(19)をリフト方向に移動させるリフト装置(41)と、
前記支持部材(19)をクランプ方向に移動させるクランプ装置(61)と、
前記トランスファバー(13)に着脱自在に装着され、ワーク(6)を保持するワーク保持具(15)とを
備えたことを特徴とするプレス機械のワーク搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−21235(P2006−21235A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−203104(P2004−203104)
【出願日】平成16年7月9日(2004.7.9)
【出願人】(000001236)株式会社小松製作所 (1,686)
【Fターム(参考)】