説明

プレテンション方式によるプレストレス導入方法およびプレストレストコンクリート部材

【課題】スリーブをPC鋼材に確実に固定するようにしたプレテンション方式によるプレストレス導入方法およびプレストレストコンクリート部材を提供すること。
【解決手段】内側傾斜面付のスリーブ8と緊張力が導入されたPC鋼材4との間にクサビを圧入することでスリーブ8をPC鋼材4に固定し、そのPC鋼材4を用いてプレテンション方式によりコンクリートにプレストレスを導入する方法において、前記PC鋼材4に導入される緊張力の少なくとも50%の緊張力に相当する圧入力でクサビ12がスリーブ8とPC鋼材4との間に圧入されて、スリーブ8がPC鋼材4に固定されている。また、PC鋼材4に導入される緊張力の少なくとも50%の緊張力に相当する圧入力でクサビ12がスリーブ8とPC鋼材4との間に圧入されて、スリーブ8がPC鋼材4に固定されているプレテンション方式によるプレストレストコンクリート部材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木建築分野におけるコンクリート製梁または桁あるいはその他の建築部材等において使用されるプレキャストプレストレストコンクリート部材等に有利なプレテンション方式によるプレストレス導入方法およびプレストレストコンクリート部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、建物のプレキャスト化が進み、駐車場・商業ビル・共同住宅や体育館・学校校舎等主要構造部材(柱・梁)をプレキャスト化することが多くなってきている。
【0003】
前記の主要構造部材をコンクリート製でプレキャスト化する場合に、コンクリート部材に圧縮力を導入するようになり、一般に、コンクリート部材にPC鋼材により圧縮力を導入する方式として、(A)ポストテンション方式と、(B)プレテンション方式が知られている。
【0004】
前記(A)のポストテンション方式の場合は、コンクリート部材製造後に、コンクリート部材のシース内にPC鋼材を挿通配置すると共にコンクリート部材の端部に定着具を配置し、PC鋼材を緊張定着して、コンクリート部材に圧縮力を導入する方式であり、この方式の場合は、PC鋼材の現場での配線作業、緊張作業、シースとPC鋼材との間の空間へのグラウト作業を必要とし、これらがプレストレストコンクリート部材を高価にしている原因になっている。
【0005】
また、前記(B)のプレテンション方式では、PC鋼材を直接コンクリートに埋め込んで付着させるため、前記グラウトは不要で、ポストテンション方式のような現場での作業の必要がないので、このプレテンション方式によるプレストレストコンクリート部材は、安価である利点を有している(例えば、特許文献1〜2参照)。
【0006】
前記プレテンション方式の場合のスリーブ8のPC鋼材4への定着構造として、例えば、図15に示すように、截頭円錐状のクサビ支承用の内側傾斜面10を有する鋼製円筒状スリーブ8内にPC鋼材4を挿通配置し、前記PC鋼材4とスリーブ8との間に、一対のクサビ片12を介在させてスリーブ8をPC鋼材に固定するようにし、前記のようなスリーブ8をPC鋼材4の長手方向に間隔をおいて配置するとともに、前記各スリーブ8の対向する内側に支圧板9を配置するようにして、コンクリート21にプレストレスを導入する形態が知られている。
【0007】
しかし、前記の構造形式のプレテンション方式の場合は、PC鋼材4により圧縮力が導入されたプレストレストコンクリート部材18とする場合、PC鋼材4を埋め込むようにその回りにコンクリート21を設け、コンクリート部材18内に埋め込み配置されるPC鋼材4とコンクリート21との付着を図る形態であり、この場合、PC鋼材4の定着部間全長L1にわたってプレストレスを均一に導入することは困難で、図3に示すように、PC鋼材4の定着部付近においては、PC鋼材4によるプレストレス力が一定しないため、定着部から中央部方向に、例えば、PC鋼材4の直径(D)の45倍(45D)〜65倍(65D)あるいは100倍(100D)の長い距離を、定着長Lとして確保するようになり、プレストレストコンクリート部材18である一方、部材端部では、通常のRC部材として設計(RC設計)されて、床などの二次部材として利用されている。このように従来のプレテンション方式によるプレストレストコンクリート部材18の場合には、端部の定着長Lが長いという問題があると共に、逆に、部材中間部における一定したプレストレス力が導入されている区間が短いという問題があった。
【0008】
したがって、プレテンション方式におけるプレストレストコンクリート部材18における前記の定着長Lを、短く制御できると、部材中間部における一定したプレストレス力が導入あれている区間を長くできるため、プレストレストコンクリート部材全体の長さ寸法を短くでき、安価なプレストレストコンクリート部材にすることができ、そのようなプレストレストコンクリート部材が望まれている。
【0009】
また、PC鋼材をPC鋼撚り線とした場合では、図6(a)に示すように、中心部に配置される1本のPC鋼線4aの外側に6本のPC鋼線4bを撚って配置する7本撚りの2層式PC鋼撚り線4c、あるいは図6(b)に示すように、3層式PC鋼撚り線4dとした場合には、最外層のPC鋼線4b、4eおよびこれにクサビ片12を介して固定されるスリーブ8および支圧板9によりコンクリート21にプレストレスを伝達するようになるため、PC鋼撚り線等のPC鋼材4にスリーブ8をクサビ片12により確実に固定することが望まれていた。
特に、図6(b)に示すように、中心となる第1層の鋼線材4aと、その外側の第2層の鋼線4bとからなる芯線4fと、最外層の鋼線4eとからなる3層式PC鋼撚り線4dでは、芯線4fのズレ(戻り)が大きくなるため、プレテンション用としては、一般に使用されていない。
【特許文献1】特開平09−309105号公報
【特許文献2】特開2001−254478号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
今まで、前記一対のクサビ片12をスリーブ8に対して圧入する圧入力と、PC鋼材4の緊張力(プレテンション)とプレストレス力との関係が、関連した関係で確立されていないため、一対のクサビ片12の圧入力を設計プレストレス力以上の大きな圧入力で圧入したり、一対のクサビ片12の必要以上の圧入力で圧入してクサビを固定していたため、合理的かつ経済的に管理されたクサビおよびスリーブの固定方法により固定されたPC鋼材によるプレストレスの導入方法ではないという問題があった。
本発明は、クサビによりスリーブをPC鋼材に固定する形態のPC鋼材により、プレテンション方式でコンクリートにプレストレスを導入する場合に、PC鋼材に導入されている緊張力(プレテンション)に関連させた形態でクサビを圧入して、スリーブをPC鋼材に確実に固定するようにしたプレテンション方式によるプレストレス導入方法およびプレストレストコンクリート部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記の課題を有利に解決するために、第1発明のプレテンション方式によるプレストレス導入方法においては、内側傾斜面付スリーブと緊張力が導入されたPC鋼材との間にクサビを圧入することでスリーブをPC鋼材に固定し、そのPC鋼材を用いてプレテンション方式によりコンクリートにプレストレスを導入する方法において、前記PC鋼材に導入される緊張力の少なくとも50%の緊張力に相当する圧入力でクサビがスリーブとPC鋼材との間に圧入されて、スリーブがPC鋼材に固定されていることを特徴とする。
また、第2発明では、第1発明のプレテンション方式によるプレストレス導入方法において、PC鋼材に導入される緊張力の50%〜100%の緊張力に相当する圧入力で、クサビがスリーブとPC鋼材との間に圧入されて、スリーブがPC鋼材に固定されていることを特徴とする。
第3発明のプレストレストコンクリート部材においては、内側傾斜面付スリーブと緊張力が導入されたPC鋼材との間にクサビを圧入することでスリーブをPC鋼材に固定し、そのPC鋼材を用いてプレテンション方式によりコンクリートにプレストレスを導入されているプレストレストコンクリート部材において、前記PC鋼材に導入される緊張力の少なくとも50%の緊張力に相当する圧入力でクサビがスリーブとPC鋼材との間に圧入されて、スリーブが固定されていることを特徴とする。
第4発明では、第3発明のプレストレストコンクリート部材において、PC鋼材に導入される緊張力の少なくとも50%の緊張力に相当する圧入力に代えて、PC鋼材に導入される緊張力の50%〜100%の緊張力に相当する圧入力で、クサビがスリーブとPC鋼材との間に圧入されて、スリーブが固定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1発明によると、PC鋼材に導入される緊張力に対応して、クサビの圧入力を設定してクサビを圧入固定する施工をすれば、PC鋼材とクサビとスリーブとの一体化を確実に図ることができるので、クサビの圧入固定の施工が容易であると共にクサビを圧入固定する施工管理が緊張力に関係した圧入力で定量化でき、確実にPC鋼材にスリーブを固定することができるため、スリーブの固定状態の品質が向上し、確実なプレストレスが導入されたコンクリート部材とすることができると共に、クサビの施工管理が容易になる。
また、管理された圧入力でクサビが圧入されてスリーブが固定されているので、スリーブから所定の設計上のプレストレスが導入された部分までの定着長を確実に短くすることができ、そのため、単なるRC部材として使用する部分が少なく、かつプレストレストコンクリート部材として利用できる部分を長くした、経済的なプレストレストコンクリート部材とすることができる。
第2発明によると、PC鋼材に導入される緊張力の50%〜100%の緊張力に相当する圧入力で、クサビがスリーブとPC鋼材との間に圧入されて、スリーブがPC鋼材に固定されているので、クサビの圧入施工の圧入力を、PC鋼材に導入される緊張力に関連した一定の範囲内において圧入すればよいので、クサビの圧入を確実に施工することができると共に、施工管理が容易である。
第3発明によると、PC鋼材に導入される緊張力に対応して、クサビの圧入力を設定してクサビを圧入固定する施工をすれば、PC鋼材とクサビとスリーブとの一体化を確実に図ることができるので、確実なプレストレスが導入されたプレストレストコンクリート部材とすることができる。
第4発明によると、PC鋼材に導入される緊張力の50%〜100%の緊張力に相当する圧入力でクサビがPC鋼材とスリーブとの間に固定されているので、確実にかつ正確に管理されて固定されたスリーブおよびクサビになり、確実にプレストレス力が導入されたプレストレストコンクリート部材とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
次に、本発明を図示の実施形態に基づいて詳細に説明する。
【0014】
先ず、鋼製スリーブをPC鋼材にクサビにより固定する構造について、図1(c)および図5を参照して説明すると、本発明でも前記従来の場合と同様で、PC鋼材4に、鋼製筒状のスリーブ8およびPC鋼材挿通孔を有する鋼製の支圧板9が所定の間隔をおいて対向するように配置され、PC鋼材4とスリーブ8との間に一対のクサビ片12が圧入されて、PC鋼材4にクサビ片12を介してスリーブ8が固定されている。そしてPC鋼材4の軸方向に対向するように配置固定されている各スリーブ8の内側に支圧板9が配置されている。
【0015】
各スリーブ8の軸方向の内側には、軸方向の外側に向かって漸次拡径するように傾斜する截頭円錐状の内側傾斜面10が設けられており、その内側傾斜面10に、ほぼ截頭半円錐状の傾斜外面(テーパ状外面)11を有すると共に断面円弧状の内外面を有する半分割型のクサビ片12における前記傾斜外面11が圧着され、断面円弧状内面にPC鋼材4の外面が圧着されて、各クサビ片12は圧入されている。
【0016】
前記の各クサビ片12の外形形状としては、半径方向の内外面の片面または両面を粗面としたクサビ片12を使用するようにしてもよく、また、前記の粗面として、クサビの軸方向に断面鋸歯状の噛み込み用粗面としたクサビ片を用いることもできる。クサビ片12の粗面部分の硬度は、スリーブ8およびPC鋼材4の硬度よりも高く、これらに食い込むように圧入してもよい。
【0017】
前記のようにクサビ片12を、PC鋼材4とスリーブ8との間に圧入するように固定するための装置としては、PC鋼材4自体に反力部を設けない箇所では、図1および図2に示すような反力体14を備えたプレストレス部材用のジャッキ13を使用すればよく、PC鋼材4自体に本設用または仮設用の反力体14を設ける形態では、図8に示すような反力体14を備えていない形態のプレストレス部材用のジャッキ13を使用することができる。
前記の各ジャッキ13におけるジャッキ本体13a側は、PC鋼材挿通用溝を有する二又状のジャッキ本体とされ、左右の各本体部にそれぞれ可動ピストン15を備え、各可動ピストン15の先端部はPC鋼材挿通用溝を有する押圧板16を備えている。
また、PC鋼材挿通用溝を有する反力体14を備えているプレストレス部材用のジャッキ13では、ジャッキ本体13a側と反力体14側とが、これらに渡って連結用側板26が配置されてボルトまたは溶接により固定されることで連結されている構成とされている。そして、反力体14をスリーブ8の前面に当接した状態で、スリーブ8の後面側に挿入される各クサビ片12の後面を、可動ピストン15を前進移動して、その先端部の押圧板16により押圧して、スリーブ8とPC鋼材4との間に各クサビ片12を圧入して、スリーブ8がPC鋼材4に固定される。
また、図8に示すように、PC鋼材4自体に反力部17を備えている形態では、反力部17と、PC鋼材4に固定しようとするスリーブ8およびクサビ片12との間にプレストレス部材用のジャッキ13を配置して、反力部17にジャッキ13の本体後面を係合させ、スリーブ8に可動ピストン15の先端側の押圧板16を係合させ、ジャッキ13を伸長させることで、スリーブ8をクサビ片12を介してPC鋼材4に固定することができる。
前記の反力部17は、截頭円錐状の内側傾斜面10を有する鋼製スリーブ19を予めPC鋼材4に装着すると共に、PC鋼材4と前記鋼製スリーブ19との間に、一対のクサビ片19aを圧入して、鋼製スリーブ19とクサビ片19aをPC鋼材4の所定の位置に仮設として設けている。
【0018】
そして、本発明では、前記の一対のクサビ片12を同時に圧入するときの圧入力Fを、図4に示すようなアバット1,2間においてPC鋼材4に予め導入されている緊張力(すなわちプレテンション)Tに、密接に関連させて設定して、クサビ片12が圧入されてスリーブ8が固定されているプレストレス導入方法としていると共に、そのようなスリーブ8が固定されているプレストレストコンクリート部材としている。
【0019】
前記の圧入力Fは、PC鋼材4周りのすべてのクサビ片12を同時に圧入する場合の圧入力であり、複数個(N個)に分割された個々のクサビ片12に作用する圧入力は、F/Nである。前記のPC鋼材4の緊張力Tは、前記緊張力Tが部材外側において、PC鋼材4の切断により開放されて、相対的にコンクリート21に導入されるプレストレス力になり、そのプレストレス力を保持するスリーブ8およびクサビ片12の位置固定状態を確実に保持する必要があり、すなわち、PC鋼材4とコンクリート21との付着あるいはクサビ片12の圧入固定によるスリーブ8およびその前面に配置されている支圧板9の抵抗によるので、クサビ片12の圧入力も、プレストレス力に関連している。そして、本発明では、設計上のクサビ片12の圧入力と、プレストレストコンクリート部材18に設計上期待できるプレストレス力との関係を明らかにした上で、これらを積極的に関連づけている。
【0020】
すなわち、本発明では、一対の分割型のクサビ片12からなるクサビ片12を圧入する場合の圧入力として、PC鋼材4に導入されている緊張力(プレテンション)に関連させて、前記PC鋼材4に導入される緊張力Tの少なくとも50%の緊張力に相当する圧入力Fで一対のクサビ片12からなるクサビ12が、スリーブ8とPC鋼材4の間に圧入されて、スリーブ8がPC鋼材4に固定されている。前記の圧入力Fとして、好ましい値は、緊張力Tの75%の相当する押圧力で、一対のクサビ片12を圧入するのがよい。また、緊張力Tの100%の緊張力で一対のクサビ片12を圧入してもよい。効率よく経済的に圧入するには、緊張力Tの50%以上100%程度の圧入力Fで一対のクサビ片12を圧入してもよい。また、緊張力Fの100%を超える圧入力で圧入してもよいが、経済的でない。
【0021】
前記のように、本発明では、一対の分割型のクサビ片12からなるクサビ片12を圧入する場合の圧入力Fとして、PC鋼材4に導入されている緊張力(プレテンション)Tに関連させて、前記PC鋼材4に導入される緊張力Tの少なくとも50%の緊張力に相当する圧入力Fで一対のクサビ片12からなるクサビが、スリーブ8とPC鋼材4との間に圧入する理由は、下記実験結果の通り、スリーブ8からのPC鋼材長手方向の定着長Lを、PC鋼材4の直径(D)の大きくても47倍以内にするに十分な押し込み圧入力Fとなっていることがわかったからである。また、前記PC鋼材4に導入される緊張力Tの少なくとも75%の緊張力に相当する圧入力Fで一対のクサビ片12からなるクサビが、スリーブ8とPC鋼材4との間に圧入すると、スリーブ8からのPC鋼材長手方向の定着長Lを、PC鋼材の直径(D)の11倍以内にするに十分な押し込み圧入力Fとなることがわかった。
【0022】
以下、実験例について説明する。
【0023】
使用したPC鋼材4は、PC鋼撚り線で、下記表1に示す2種類のPC鋼材4を緊張状態で、図10に示す2形態および図11に示す2形態のそれぞれのプレキャストプレストレストコンクリート部材18の試験体を製作し試験した。以下、図10および図11に示すプレキャストプレストレストコンクリート部材18の形態について簡単に説明する。
【0024】
【表1】

【0025】
図10(a)〜(d)に示す形態では、プレキャストプレストレストコンクリート部材18の中央部に1本埋め込み配置し、図10(a)(c)の各試験体で、左端側の固定端側と緊張端側にそれぞれ、スリーブ8をクサビ片12によりPC鋼材4に固定すると共に支圧板9をスリーブ8に係合させ、また前記PC鋼材4を囲むように鉄筋籠20(部材長手方向の外径10mmの6本の鉄筋22と鉄筋22を囲む多数の環状鉄筋)を配置して、これらをコンクリート21に埋め込むように配置し、コンクリート21を養生・硬化させてPC鋼材4および鉄筋22との付着を確実にした後に、前記PC鋼材4の緊張を開放するようにして、相対的にコンクリート21にプレストレスを導入したプレキャストプレストレストコンクリート部材18である(各試験体の長さは4000mm)。
また、比較例として、図11(a)〜(d)に示すように、プレキャストプレストレストコンクリート部材18の中央部に1本埋め込み配置し、図11(a)(c)の各比較試験体で、右端側の緊張端側にそれぞれ、スリーブ8をクサビ片12によりPC鋼材4に固定すると共に支圧板9をスリーブ8に係合させ、同図左端側の固定端側では、スリーブ8を使用しないでコンクリート21とPC鋼材4のみによる付着とし、同図右端側の緊張端側では、スリーブ8をPC鋼材に圧着固定して支圧板9によりコンクリート21を圧縮するようにし、また前記PC鋼材4を囲むように鉄筋籠20(構成は前記と同様)を配置して、これらをコンクリート21に埋め込むように配置し、コンクリート21を養生・硬化させてPC鋼材4および鉄筋22との付着を確実にした後に、前記PC鋼材4の緊張を開放するようにして、相対的にコンクリート部材にプレストレスを導入したプレキャストプレストレストコンクリート部材18を製作した。
前記の図10および図11に示すいずれの形態でも、プレキャストプレストレストコンクリート部材18中には、予め、筒状の鉄筋籠20が埋め込み配置され、その鉄筋籠20における片側の側部鉄筋22に長手方向に間隔をおいて、図10(e)および図11(e)に示すように、部材端部では細かいピッチで、すなわち、固定側(左側)および緊張端(右側)で、100mmピッチの細かいピッチでひずみゲージを配置し(小丸で示す位置)、端部間の中間部では、比較的荒いピッチでひずみゲージを予め設置して、図10(b)(d)および図11(b)(d)におけるプレキャストプレストレストコンクリート部材18の一側部中央に埋め込み配置されている側部鉄筋22の鉄筋ひずみ(μ)を計測した。
そして、前記各2種類のPC鋼材4について、PC鋼材4に導入されている緊張力(プレテンション)の100%に相当する圧入力(圧縮力)、または緊張力の75%に相当する圧入力(圧縮力)、あるいは緊張力の50%に相当する圧入力(圧縮力)でスリーブ8がPC鋼材4に固定された図10に示す各形態のプレキャストプレストレストコンクリート部材18(計6種類)を製作すると共に、同様に、前記各2種類のPC鋼材4について、比較例として緊張力の0%に相当する圧入力(圧縮力)でスリーブ8をPC鋼材4に固定し、かつ外径寸法の異なる2種類のスリーブ付のPC鋼材4を用いたプレキャストプレストレストコンクリート部材18b(計2種類)を製作し、各コンクリート部材18bにおける圧縮ひずみである鉄筋ひずみ(μ)を、鉄筋長手方向に多数配置した各ゲージで計測した結果を、表1および表2に数値で、図12(7本撚りPC鋼材の場合)および図13(19本撚りPC鋼材の場合)にグラフで示す。なお、使用したコンクリート21の設計基準強度およびプレストレス導入時の強度を表3に示す(プレストレス導入時強度は35N/mmである。)
【0026】
【表2】

【0027】
【表3】

【0028】
また、各外径の異なる各PC鋼材によりコンクリートに導入されているプレストレスは、下記表4に示す通り、土木用の項に記載されているプレストレス導入力である。
【0029】
【表4】

【0030】
図12および図13から、プレキャストプレストレストコンクリート部材18の両端部付近まで、PC鋼材4に導入されている緊張力(プレテンション)の100%に相当する圧入力(圧縮力)と、緊張力の75%に相当する圧入力(圧縮力)と、緊張力の50%に相当する圧入力(圧縮力)でスリーブ8がPC鋼材4に固定されている形態では、緊張力の0%に相当する圧入力(圧縮力)でスリーブ8がクサビ片12により固定されている形態に比べて、鉄筋ひずみがほぼ安定していることがわかる。
緊張力の0%に相当する圧入力(圧縮力)でスリーブ8がクサビ片12により固定されている形態では、緊張端側では、特に、鉄筋ひずみが極端に小さくなっている(プレストレスがほとんど導入されていない)ことがわかる。また、PC鋼材4に導入されている緊張力(プレテンション)の100%に相当する圧入力(圧縮力)と、緊張力の75%に相当する圧入力(圧縮力)とでスリーブ8をクサビ片12により固定した形態のPC鋼材4では、圧入力が大きい順に、端部まで鉄筋ひずみが確実に生じている(換言すると、コンクリート部材に確実にプレストレス力が導入されている)。
【0031】
次に、前記の試験によるプレストレス伝達長の結果について、表5に示す。
【表5】

また、表5に示すように、プレキャストプレストレストコンクリート部材18における支圧板9端部から確実に設計上部材に設定されるプレストレス力が見込める部分までの距離(定着長)は、PC鋼材4に導入されている緊張力(プレテンション)の100%に相当する圧入力(圧縮力)と、緊張力の75%に相当する圧入力(圧縮力)では、PC鋼材4の外径寸法の11倍(11×D(DはPC鋼材の外径寸法))の定着長であり、この距離から、コンクリート21に安定してプレストレスが導入されているプレキャスト部材となっており、PC鋼材4に導入されている緊張力(プレテンション)の50%に相当する圧入力(圧縮力)でスリーブ8がクサビ片で固定されているスリーブ付のPC部材4では、コンクリート21にほぼ安定してプレストレスが導入されているプレキャスト部材18となっている。
【0032】
PC鋼材4に導入されている緊張力(プレテンション)の少なくとも50%に相当する圧入力(圧縮力)でスリーブ8がクサビ片12で固定されているスリーブ付のPC部材4であると、部材端部近くまで有効にプレストレスが導入されているプレキャストプレストレストコンクリート部材であるのでよく、より好ましくは、緊張力の60%に相当する圧入力(圧縮力)でスリーブ8がクサビ片12で固定されているスリーブ付のPC部材4、あるいは緊張力の70%に相当する圧入力(圧縮力)でクサビ片12がスリーブ8に圧入されて固定されているスリーブ付PC鋼材であるとよく、さらに好ましくは、PC鋼材4に導入されている緊張力(プレテンション)の少なくとも75%に相当する圧入力(圧縮力)でスリーブ8がクサビ片12で固定されているスリーブ付のPC部材4であると、プレキャストプレストレストコンクリート部材18の梁として使用する場合に、特段、梁端部に圧縮力を導入するような接続方法によらなくとも利用可能であるので、緊張力の75%の圧入力でスリーブ8をPC鋼材4に固定するのが望ましい。
【0033】
PC鋼材4に導入される緊張力の100%以上で、クサビ片12を圧入しても、圧入用ジャッキ13が大型になり、施工時間もかかり経済的でなく、PC鋼材4の損傷する恐れもあるので、好ましくない。したがって、PC鋼材4に導入される緊張力の100%〜50%、好ましくは、PC鋼材4に導入される緊張力の100%〜75%に相当する圧入力Fで、より好ましくは、PC鋼材4に導入される緊張力の75%に相当する圧入力Fで、クサビ片12を圧入してスリーブ8をPC鋼材4に固定するようにすると、施工管理が容易でよい。
したがって、前記のようにPC鋼材4に導入されている緊張力に関連させて、緊張力の100%〜50%に相当する圧入力Fでクサビ片12を圧入管理すると、図3に示すように、定着長を11D(11倍)から47D(47倍)の範囲(図3上図のAの範囲)に短く制御することができる。
【0034】
PC鋼材4に導入されている緊張力(プレテンション)の50%より下回ると、プレキャスト部材として、所定のプレストレスが導入されていない部材端部からの距離が大きくなって、従来のプレキャストプレストレストコンクリート部材と同様になる恐れが高いので、PC鋼材4に導入されている緊張力(プレテンション)の少なくとも50%とした。
【0035】
なお、スリーブ8は、JIS G4051 機械構造用炭素鋼鋼材のS55C相当品を使用し、クサビ片12は、JIS G4052 焼入れ性を保障した構造用炭素鋼鋼材(H鋼)のSMC415相当品を使用し、いずれも図9および図6に示す寸法仕様による。なお、スリーブ8およびクサビ片12は図9に示す各部の寸法で、これに対応する表6の試験体NO.3およびNO.5のものを使用した。また、表2中のAG−18およびAG−22は、いずれもスリーブ8とクサビ12とからなる定着具であり、前記の図9に示す各部の寸法で、これに対応する表6の試験体NO.3およびNO.5のものである。
【表6】

【0036】
なお、前記の本発明の試験体についての曲げ耐力も良好であった。
【0037】
なお、連続したPC鋼材4に多数のPC鋼材4を固定する場合には、PC鋼材4の所定の位置に、予め鋼製スリーブ8を多数配置し、後からPC鋼材4と鋼製スリーブ8との間に、分割型のクサビ片12をPC鋼材4の周りに抱き込むように配置し、その各クサビ片12を覆うようにこれらの外側にスリーブ8を配置した状態で、一対のクサビ片12が圧入される。クサビ片12としては2つ1組のクサビを圧入するようにしているが、3つ1組のクサビ等を使用するようにしてもよい。クサビ片12の内側には、部材長手方向に交互凸凹を繰り返す断面鋸刃状の粗面27を備えている。
【0038】
なお、前記の一対の分割型のクサビ片12は、断面円弧状の内外面を有し、内外面の片面または両面を断面鋸歯状の噛み込み用粗面としたクサビ片を用いることもできる。クサビ片12の粗面部分の硬度は、スリーブ8およびPC鋼材4の硬度よりも高いものを使用するとよい。
【0039】
また、スリーブ8の一端部側には、予めPC円盤状あるいは矩形状の鋼板製の支圧板9,10が固定され、支圧板9を介してコンクリート21を圧縮するようにされている。
【0040】
次に、PC鋼材4にスリーブ8を備えているスリーブ付PC鋼材4を使用して、プレキャストプレストレストコンクリート部材を製造する製造方法について、図4を参照しながら説明する。
【0041】
図4は、ロングライン方式により複数のプレキャストプレストレストコンクリート部材を間隔をおいて直列に同時に製造している工程を示す説明図であり、図4(a)に示すように、アバット(反力受け)1,2間に、底板3が配置されると共に、必要本数のPC鋼材4が平行に配置され、前記各PC鋼材4の一端側(図の左側)は、一端側のアバット1の外側に配置された可動フレーム5に装着される把持装置(図示省略)により着脱可能に固定され、かつ前記可動フレーム5とアバット1間には、液圧式伸縮ジャッキ6が介在されて、前記可動フレーム5は、アバット1に対して接近または離反移動可能にされている。
【0042】
また、前記PC鋼材4の他端側(図の右側)は、他端側のアバット2に装着される把持装置(図示省略)により着脱可能に固定されている。
【0043】
また、前記のPC鋼材4には、後に、間隔をおいて型枠7を設置するときに、各型枠7の内側に位置するように、予め、図4(b)に示すように、一対の対称配置される鋼製筒状のスリーブ8、2つの環状支圧板9,10、鋼製筒状のスリーブ8の順にPC鋼材4に装着しておく。
【0044】
各型枠7内の他端側内側近傍に位置するようにPC鋼材4に、前記と同様に、クサビ片12を介してスリーブ8を固定して他方のスリーブ8が所定の位置に固定している。
【0045】
なお、クサビ片12はスリーブ8間側に向かって、クサビの厚さが薄くなるように配置されて、一対のクサビ片12がスリーブ8側に向かって押圧して締め込むようにすることで、クサビ片12が抜け出さないように配置される。
【0046】
前記のようにPC鋼材4を配置した状態で、図4(b)に示すように、液圧式伸縮ジャッキ6を伸長することにより、前記可動フレーム5を矢印で示すように、一端側のアバット1から離反させ、前記各PC鋼材4に緊張力を付与する。
【0047】
次に、図1(c)に一端側の鋼製筒状のスリーブ8および支圧板9およびPC鋼材4との関係を拡大して示すように、PC鋼材4の所定の位置に、分割型のクサビ片12をPC鋼材4の周りに抱き込むように配置し、その各クサビ片12を覆うようにこれらの外側にスリーブ8を配置した状態で、一対のクサビ片12を押圧して圧入すべく、図1(a)および図8に示すようなプレストレス部材用のジャッキ13を配置して、PC鋼材4に導入されている緊張力Tに対応して、可動ピストン15を前進させてジャッキ13を伸長し、かつ、PC鋼材4に導入されている緊張力Tの少なくとも50%に相当する圧入力Fが一対のクサビ片12に作用した状態を計器等により確認する。
【0048】
前記の圧入力Fは、製造されるプレストレストコンクリート部材18の性能に応じて、PC鋼材4に導入されている緊張力Tの75%でもよく、100%でもよいが、少なくともPC鋼材4に導入されている緊張力Tの50%、例えば、75%に相当する圧入力で、一対のクサビ片12を圧入すると、プレストレストコンクリート部材18に導入されるプレストレスは、支圧板9の端面を基点としてPC鋼材4の軸方向に、PC鋼材4の外形直径(D)の11倍(11D)から設計上必要とされる設計プレストレスが、確実にコンクリート部材18に導入されている。
【0049】
そして、図示省略の鉄筋が配筋されると共に、図4(b)に実線で示すように、前記底板3上に間隔をおいて複数の型枠7(図示の場合は3組図示されている)が、PC鋼材4の長手方向に対向するように配置されている間隔をおいた一対のスリーブ8を囲むように組み立て配置され、従って、前記各型枠7を貫通するように、PC鋼材4が配置されている。
【0050】
また、前記各スリーブ8間の各支圧板9を、それぞれ近い側のスリーブ8側に移動させてスリーブ端面に当接し、必要に応じ、溶接、接着あるいは接着テープなどを使用して、支圧板9をスリーブ8に仮固定し、支圧板9がPC鋼材4に対してPC鋼材4の長手方向に移動しないようにし、各型枠7内において、支圧板付のスリーブ8が2組対称配置になるようにPC鋼材4に装着される。
【0051】
前記のように、各型枠7内における各PC鋼材4に支圧板付のスリーブ8が2組対称配置された状態で、図4(c)に示すように、型枠7内にコンクリート21を打設して、そのコンクリート21の養生・硬化を図り、PC鋼材4および支圧板付のスリーブ8との付着を図る。
【0052】
次いで、図4(d)に矢印で示すように、前記液圧式伸縮ジャッキ6を短縮することにより、各型枠7内のコンクリート21にプレストレスを導入し、型枠7間のPC鋼材4を切断41すると共に、各型枠7を脱型して、プレキャストプレストレストコンクリート部材18を製造する。
【0053】
次に、前記のようにして製造されたプレキャストプレストレストコンクリート部材18を、構造用の軸組部材としてのプレキャスト梁部材18aとして利用して軸組み構造を構築する場合を説明すると、図7に示すように、梁18aの端部をプレキャストコンクリート柱23の上端部に載置して、軸組み構造を構築していくことができる利点がある。これは、少なくとも柱23間、好ましくは柱23中心軸線間、より好ましくは、プレキャスト柱23外端部に近い位置までの梁部材18a部分をプレストレスが導入されたプレキャスト部材としているため、梁端部付近までプレストレスト部材として有効に利用可能になっているためである。
なお、図7では、基礎コンクリート24に渡って設けられたコントロール製地中梁25上に、プレキャストコンクリート柱23とプレキャストコンクリート梁部材18aとが交互に建て込まれ、プレキャスト柱23とプレキャスト梁部材18aの縦シースに、カプラー等により連結可能な短尺PC鋼材4が順次挿通配置されて連結され、最上部のプレキャスト梁部材18aの上端部において、支圧プレートおよびナットなどの定着具(図示を省略した)を用いて、順次連結されたPC鋼材4の上端部は緊張定着されて、柱23と梁部材18aとは、縦PC鋼材28により一体化されて軸組構造を構成している。
【0054】
なお、前記のような本発明の構成では、芯線とその外側の線材層との間で、線材長手方向のすべりを防止するために、PC鋼線の長手方向に凹溝を設けるインテンド加工線材のような特殊なPC鋼材を用いる必要がないので、経済的である。
【0055】
本発明を実施する場合、PC鋼材としては、PC鋼撚り線、PC鋼棒などを使用するようにしてもよい。
【0056】
前記実施形態では、梁の場合について説明したが、本発明をコンクリート製梁または桁あるいはその他の建築部材等のプレキャストプレストレストコンクリート部材に適用してもよい。
【0057】
本発明を実施する場合、コンクリート21内にPC鋼材4を埋め込み配置する形態としては、図5(a)に示す直線状配置ばかりでなく、図5(b)に示すように、後に撤去される屈折または屈曲部支承部材(図示を省略)を用いて、PC鋼材4を屈折配置または屈曲配置する形態あるいは直線状配置と屈折または屈曲配置の両方の形態を備えたプレキャストプレストレストコンクリート部材18であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】反力部を備えたジャッキによりクサビ片をスリーブに圧入してコンクリートを打設するまでの説明図であって、(a)は反力部を備えた圧入用のジャッキによりPC鋼材にスリーブをクサビ片を圧入している状態を示す一部縦断側面図、(b)は圧入力と反力の作用説明図、(c)はクサビ片の圧入を完了した状態を示す一部縦断側面図、スリーブを埋め込むようにPC鋼材の周囲にコンクリートを仮想線で示す一部縦断側面図である。
【図2】図1(a)のA−A線断面図である。
【図3】本発明の圧入方式によりクサビ片をスリーブに圧入固定した場合の定着長と、従来の工法の定着長の差異を説明するためのグラフ(下図)、部材(上図)との関係の説明図である。
【図4】本発明の製造方法によりプレキャスト部材を製造する手順を示す説明図である。
【図5】(a)は、本発明のプレテンション方式により製造された一形態のプレキャスト梁部材を示す縦断側面図、(b)は本発明のプレテンション方式により製造された他の形態のプレキャスト梁部材を示す縦断側面図である。
【図6】2層または3層構造のPC鋼撚り線の形態およびコンクリートとの付着との関係を示す断面図である。
【図7】本発明のプレキャスト梁部材を使用して、プレキャスト柱部材とプレキャスト梁部材を交互に設置すると共に一体化して、建物の軸組みを構築した状態を示す概略側面図である。
【図8】PC鋼材に仮反力部を設けて、反力体を備えていない圧入用のジャッキによりクサビ片を圧入する形態を示すものであって、(a)は一部縦断側面図、(b)は圧入力と反力の作用説明図である。
【図9】本発明において使用するスリーブおよびクサビ片を示す一部縦断側面図および正面図である。
【図10】2種類のプレキャストプレストレストコンクリート部材の試験体およびひずみゲージ位置を示す説明図であって、(a)は外径17.8mmのPC鋼材によりプレストレスを導入した試験体の縦断側面図、(b)は(a)の縦断正面図、(c)は外径21.8mmのPC鋼材によりプレストレスを導入した試験体の縦断側面図、(d)は(c)の縦断正面図、(e)は、(a)および(c)に対応させてPC鋼材に間隔をおいて多数設けたひずみゲージ位置を示す縦断側面図である。
【図11】2種類のプレキャストプレストレストコンクリート部材の試験体およびひずみゲージ位置を示す説明図であって、(a)は外径17.8mmのPC鋼材によりプレストレスを導入した試験体の縦断側面図、(b)は(a)の縦断正面図、(c)は外径21.8mmのPC鋼材によりプレストレスを導入した試験体の縦断側面図、(d)は(c)の縦断正面図、(e)は、(a)および(c)に対応させてPC鋼材に間隔をおいて多数設けたひずみゲージ位置を示す縦断側面図である。
【図12】外径17.8mmのPC鋼材でクサビ片の圧入力を変化させた形態のプレストレストコンクリート部材における各ゲージ位置におけるひずみ分布を示すグラフである。
【図13】外径21.8mmのPC鋼材でクサビ片の圧入力を変化させた形態のプレストレストコンクリート部材における各ゲージ位置におけるひずみ分布を示すグラフである。
【図14】従来のスリーブのPC鋼材への定着構造を示す一部縦断側面図である。
【符号の説明】
【0059】
F 圧入力
T 緊張力
L 定着長
1 アバット
2 アバット
3 底板
4 PC鋼材
4a PC鋼線
4b PC鋼線
4c PC鋼撚り線
4d PC鋼撚り線
4e PC鋼線
4f 芯線
5 可動フレーム
6 液圧式伸縮ジャッキ
7 型枠
8 スリーブ
9 支圧板
10 内側傾斜面
11 傾斜外面(テーパー状外面)
12 クサビ片
13 ジャッキ
13a ジャッキ本体
14 反力体
15 可動ピストン
16 押圧板
17 反力部
18 プレキャストプレストレストコンクリート部材
18a プレキャストプレストレストコンクリート梁部材
18b プレキャストプレストレストコンクリート部材
20 鉄筋籠
21 コンクリート
22 鉄筋
23 プレキャスト柱
24 基礎コンクリート
25 地中梁
41 切断

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側傾斜面付スリーブと緊張力が導入されたPC鋼材との間にクサビを圧入することでスリーブをPC鋼材に固定し、そのPC鋼材を用いてプレテンション方式によりコンクリートにプレストレスを導入する方法において、前記PC鋼材に導入される緊張力の少なくとも50%の緊張力に相当する圧入力でクサビがスリーブとPC鋼材との間に圧入されて、スリーブがPC鋼材に固定されていることを特徴とするプレテンション方式によるプレストレス導入方法。
【請求項2】
PC鋼材に導入される緊張力の50%〜100%の緊張力に相当する圧入力で、クサビがスリーブとPC鋼材との間に圧入されて、スリーブがPC鋼材に固定されていることを特徴とする請求項1に記載のプレテンション方式によるプレストレス導入方法。
【請求項3】
内側傾斜面付スリーブと緊張力が導入されたPC鋼材との間にクサビを圧入することでスリーブをPC鋼材に固定し、そのPC鋼材を用いてプレテンション方式によりコンクリートにプレストレスを導入されているプレストレストコンクリート部材において、前記PC鋼材に導入される緊張力の少なくとも50%の緊張力に相当する圧入力でクサビがスリーブとPC鋼材との間に圧入されて、スリーブが固定されていることを特徴とするプレストレストコンクリート部材。
【請求項4】
前記PC鋼材に導入される緊張力の少なくとも50%の緊張力に相当する圧入力に代えて、PC鋼材に導入される緊張力の50%〜100%の緊張力に相当する圧入力で、クサビがスリーブとPC鋼材との間に圧入されて、スリーブが固定されている請求項3に記載のプレストレストコンクリート部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2008−126544(P2008−126544A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−314774(P2006−314774)
【出願日】平成18年11月21日(2006.11.21)
【出願人】(000103769)オリエンタル白石株式会社 (136)
【出願人】(000192626)神鋼鋼線工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】