説明

プレフィルドシリンジ

【課題】キャップの開封が容易且つ確実に遂行されるとともに、一旦開封済みであるか否かを明瞭に見分けることを可能にする。
【解決手段】プレフィルドシリンジ10は、シリンジ外筒12を備え、このシリンジ外筒12の口部20にキャップ30が着脱自在に設けられる。ロックアダプタ26とキャップ30とを被覆する被覆フイルム42は、前記キャップ30の回転方向に複数の切れ目44が所定間隔ずつ離間して設けられるとともに、各切れ目44には、1つの傾斜切れ目46が前記切れ目44に対して所定の角度だけ傾斜して配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンジ本体側部材に対して着脱自在なキャップを備えるプレフィルドシリンジに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、滅菌されたシリンジ(注射筒)内に無菌状態の液状製剤(薬液)が予め充填されたプレフィルドシリンジが使用されている。薬液をシリンジに移し変える必要がなく、異物混入の可能性を低減できるとともに、開封後即時に使用することが可能である等の利点を有するからである。
【0003】
この種のプレフィルドシリンジでは、シリンジ外筒の液体排出部(口部)にキャップを被せ、このキャップを覆って被覆フイルムにより外装している。ところが、外装を開封した後には、異物混入のおそれがあり、特に開封後に再度キャップが取り付けられた(リキャップされた)ものであるか否かを確実に見分ける必要がある。
【0004】
そこで、例えば、特許文献1に開示されているプレフィルドシリンジが知られている。このプレフィルドシリンジは、図7に示すように、薬剤が充填されるシリンダ1を備えており、このシリンダ1の先端には、注射針接続部(口部)2が設けられている。注射針接続部2にキャップ3が取り付けられるとともに、前記キャップ3からシリンダ1の外周面にわたってシュリンクフイルム4により被覆されている。このシュリンクフイルム4には、シリンダ1の先端部分で周方向に沿ってミシン目5が形成されており、このミシン目5に沿って間欠的にY字状の切り込み6が形成されている。
【0005】
このような構成において、操作者の指先により把持されたキャップ3が、シリンダ1に対して所定の方向に回転される。このため、シュリンクフイルム4は、切り込み6を介してミシン目5から容易に開封されるとともに、開封後に切り込み6のY字状の端が浮き上がって内容物改ざん防止効果も高くなる、としている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−312932号公報(図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、上記の従来技術では、キャップ3をどちらの方向に回しても、シュリンクフイルム4の開封が容易となるようにY字状の切り込み6が形成されている。すなわち、各切り込み6には、それぞれ異なる方向に傾斜する2つの切れ目が存在している。このため、切り込み6では、いずれかの切れ目に沿って捲れが発生し易く、シュリンクフイルム4が開封後にリキャップされたものであるか否かの判別が困難になるという問題がある。
【0008】
本発明はこの種の問題を解決するものであり、キャップの開封が容易且つ確実に遂行されるとともに、一旦開封済みであるか否かを明瞭に見分けることが可能なプレフィルドシリンジを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、シリンジ本体側部材に対して着脱自在なキャップを備えるプレフィルドシリンジに関するものである。このプレフィルドシリンジは、シリンジ本体側部材とキャップとを被覆する被覆フイルムを設け、前記被覆フイルムは、前記キャップの回転方向に沿って複数の切れ目が所定間隔ずつ離間して設けられるとともに、各切れ目には、1つ以下の傾斜切れ目が前記切れ目に対して所定の角度だけ傾斜して配置されている。
【0010】
また、切れ目は、キャップとシリンジ本体側部材との境界部位近傍に周方向に沿って間欠的に設けられることが好ましい。
【0011】
さらに、傾斜切れ目は、切れ目に対して10度〜70度の範囲内だけ傾斜することが好ましい。
【0012】
さらにまた、被覆フイルムは、キャップの先端面よりシリンジ本体側部材側に1mm以上離間した位置から前記キャップを被覆することが好ましい。
【0013】
また、傾斜切れ目は、キャップ側に設けられるとともに、切れ目との交差部位で終端することが好ましい。
【0014】
さらに、切れ目には、それぞれ1つの傾斜切れ目が配置されることが好ましい。さらにまた、傾斜切れ目同士の間隔Xと、前記間隔X間に配置される切れ目同士の間隔Aとは、A<0.4Xの関係を有するように設定されることが好ましい。
【0015】
また、切れ目には、一つ置きに傾斜切れ目が配置されることが好ましい。さらに、傾斜切れ目同士の間隔Xと、前記間隔X間に配置される切れ目同士の2つの間隔B1、B2とは、(B1+B2)<0.4Xの関係を有するように設定されることが好ましい。
【0016】
さらにまた、シリンジ本体側部材は、液状製剤が充填されるシリンジ外筒に対し軸方向に移動可能なロックアダプタであることが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、回転方向に配置される切れ目と傾斜切れ目とが設けられるため、被覆フイルムの開封時にキャップの回転トルクが有効に低減され、開封処理が容易且つ確実に遂行される。さらに、回転方向の切れ目の他、傾斜切れ目が存在するため、開封後に再度キャップを取り付ける際、前記傾斜切れ目に捲れが生じて開封痕跡が明瞭になり、一旦開封済みであるか否かを確実に見分けることが可能なる。
【0018】
しかも、各切れ目には、1つ以下の傾斜切れ目が配置されている。従って、各切れ目毎に2以上の傾斜切れ目が設けられる構成に比べ、未開封時の捲れの発生を良好に削減することができる。これにより、未開封のプレフィルドシリンジを、開封済みであると誤認することを可及的に阻止することが可能になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
図1は、本発明の第1の実施形態に係るプレフィルドシリンジ10の概略構成説明図である。
【0020】
プレフィルドシリンジ10は、シリンジ外筒(シリンジ本体)12を備え、このシリンジ外筒12の開口部14を形成する内周面14aには、ガスケット16が矢印L方向に摺動自在に配置される。このガスケット16は、プランジャ18の先端部に設けられており、前記プランジャ18を介して摺動操作される。開口部14には、薬液等の液状製剤(図示せず)が充填される。
【0021】
図2に示すように、シリンジ外筒12の先端側には、外周直径を縮径して矢印L方向に突出する口部20が一体形成される。口部20には、開口部14に連通して外部に開放可能な流路22が形成される。口部20の外周部には、ストッパ部24が外方に膨出して設けられるとともに、前記口部20の外周部には、前記ストッパ部24を介して矢印L方向に所定の距離だけ移動可能なロックアダプタ(シリンジ本体側部材)26が設けられる。
【0022】
ロックアダプタ26は、断面略六角形状を有するとともに、その内周面には、雌ねじ部28が形成される。シリンジ外筒12の口部20には、ロックアダプタ26を介してキャップ30が装着される。
【0023】
キャップ30の外周部には、ロックアダプタ26の雌ねじ部28に螺合する雄ねじ部32が、軸方向(矢印L方向)に所定の長さにわたって形成される。このキャップ30の外周部には、断面略六角形状の凸部34が形成され、この凸部34の外周面には、軸方向に複数の溝部36が所定の長さにわたって形成される。凸部34に溝部36を形成することにより、操作者の指先によって容易に把持可能な把持部が構成される。キャップ30内には、開口部38が形成され、この開口部38の底部側にパッキン40が配置される。
【0024】
図1に示すように、ロックアダプタ26の雌ねじ部28にキャップ30の雄ねじ部32が螺合した状態で、前記ロックアダプタ26と前記キャップ30とを被覆する被覆フイルム42が設けられる。
【0025】
図3に示すように、被覆フイルム42は、帯状に切断された熱収縮性樹脂フイルムにより構成される。具体的には、被覆フイルム42は、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PS(ポリスチレン)、PVC(塩化ビニル樹脂)、PE(ポリエチレン)又はPP(ポリプロピレン)等の材質から選択される他、熱収縮性を有する他の材質も使用可能である。被覆フイルム42の厚さは、0.02mm〜0.1mmが好ましい。
【0026】
被覆フイルム42には、キャップ30の回転方向(矢印R方向)に沿って複数の切れ目(ミシン目)44が所定間隔ずつ離間して設けられるとともに、各切れ目44には、それぞれ1つの傾斜切れ目46が配置される。
【0027】
傾斜切れ目46は、切れ目44に対して所定の角度θ(10度≦θ≦70度)だけ傾斜し、前記切れ目44と交差している。傾斜切れ目46同士の間隔Xと、前記間隔X間に配置される切れ目46同士の間隔Aとは、A<0.4Xの関係を有するように設定される。切れ目44は、傾斜切れ目46との交差位置から矢印R方向側の長さC1及び矢印R方向とは逆方向の長さC2が設定される一方、前記傾斜切れ目46は、前記切れ目44との交差位置から上方及び下方に、それぞれ長さD1及びD2が設定される。
【0028】
切れ目44の全長は、0.5mm〜4mm、好ましくは、0.8mm〜3.2mmであり、長さC1は、0.3mm〜2mm、好ましくは、0.5mm〜1.8mmであるとともに、長さC2は、0.3mm〜2mm、好ましくは、0.5mm〜1.8mmである。傾斜切れ目46の全長は、1.5mm〜7mm、好ましくは、2.5mm〜4.5mmであり、長さD1は、0.7mm〜4mm、好ましくは、1.5mm〜4mmであるとともに、長さD2は、0.7mm〜4mm、好ましくは、1.5mm〜4mmである。間隔Xは、1.2mm〜7mm、好ましくは、2mm〜5.5mmであるとともに、間隔Aは、0.2mm〜1.5mm、好ましくは、0.3mm〜1mmである。
【0029】
具体的には、切れ目44の全長が1mm、長さC1が0mm、長さC2が1mm、傾斜切れ目46の全長が3mm、長さD1が3mm、長さD2が0mm、距離Xが2mm、間隔Aが0.5mm、及び角度θが45度に設定される。又は、切れ目44の全長が2.8mm、長さC1が1.4mm、長さC2が1.4mm、傾斜切れ目46の全長が4mm、長さD1が2mm、長さD2が2mm、間隔Xが3.3mm、間隔Aが0.5mm、及び角度θが45度に設定される。
【0030】
被覆フイルム42の裏面(貼り付け面)には、粘着材が塗布されるとともに、切れ目44及び傾斜切れ目46が設けられる部分には、粘着材の粘着力を低下させる物質が、前記切れ目44及び前記傾斜切れ目46を含む領域にわたって塗布される。
【0031】
図1に示すように、被覆フイルム42がロックアダプタ26及びキャップ30を被覆して装着された際、切れ目44は、前記ロックアダプタ26と前記キャップ30との境界部位近傍に周方向に沿って間欠的に設けられる。
【0032】
被覆フイルム42の端面42aは、キャップ30の天面(先端面)30aから距離M(M≧1mm)だけ内方に離間した位置に配置されており、前記被覆フイルム42は、この位置から前記キャップ30及びロックアダプタ26の全体を被覆する。被覆フイルム42は、幅が6mm〜20mmで、長さが25mm〜50mmであることが好ましい。
【0033】
このように構成されるプレフィルドシリンジ10の動作について、以下に説明する。
【0034】
図1に示す状態で、操作者がキャップ30を被覆フイルム42の先端側と一体に把持し、このキャップ30を矢印R1方向に回転させる。このため、キャップ30がロックアダプタ26に対して回転し、前記キャップ30及び前記ロックアダプタ26を被覆している被覆フイルム42が破断して開封される。
【0035】
その際、被覆フイルム42には、回転方向に配置される各切れ目44に、それぞれ1つの傾斜切れ目46が交差して設けられている。このため、被覆フイルム42の開封時に、キャップ30の回転トルクが有効に低減され、開封処理が容易且つ確実に遂行される。
【0036】
さらに、被覆フイルム42には、切れ目44の他、傾斜切れ目46が存在するため、開封後に再度キャップ30を取り付ける際に、前記傾斜切れ目46に捲くれが生じ易く、開封痕跡が明瞭になる。これにより、キャップ30がリキャップされたものであるか否かを確実に見分けることが可能になるという効果が得られる。
【0037】
しかも、各切れ目44には、それぞれ1つの傾斜切れ目46が配置されている。従って、各切れ目44毎に2以上の傾斜切れ目46が設けられる構造に比べ、開封時の捲くれの発生を良好に削減することができる。このため、未開封のプレフィルドシリンジ10を、開封済みであると誤認することを可及的に阻止することが可能になる。
【0038】
また、切れ目44は、キャップ30とロックアダプタ26の境界部位近傍に周方向に沿って間欠的に設けられている。これにより、キャップ30を開封する際に必要とされる回転トルクを、可及的に低減することができ、開封処理が有効に簡素化されるという利点がある。
【0039】
さらにまた、傾斜切れ目46は、切れ目44に対して10度〜70度、好ましくは、25度〜55度の範囲内だけ傾斜している。傾斜切れ目46は、切れ目44を横切る構成ではなく、キャップ30の先端側から前記切れ目44との交差部位で終端する構成でもよい。また、傾斜切れ目46は、切れ目44の中間ではなく、前記切れ目44の端で交差する構成でもよく、その際、回転方向側の端と交差することが好ましい。
【0040】
さらに、キャップ30の先端面30aと被覆フイルム42の端面42aとの距離Mは、1mm以上に設定されている。これにより、操作者が被覆フイルム42と共にキャップ30を把持する際、該操作者の指先でこのキャップ30の凸部34を直接把持することができる。このため、キャップ30の回転操作が容易且つ確実に遂行され、開封性の向上が遂行可能になる。
【0041】
また、図3に示すように、傾斜切れ目46同士の間隔Xと、切れ目44同士の間隔Aとは、A<0.4Xの関係を有するように設定されている。従って、キャップ30の開封時に必要なトルクを良好に軽減し得るとともに、切れ目44間の破断を確実に行うことができる。
【0042】
図4は、本発明の第2の実施形態に係るプレフィルドシリンジを構成する被覆フイルム50の展開状態説明図である。
【0043】
被覆フイルム50は、第1の実施形態に使用される被覆フイルム42と同様に、熱収縮性樹脂フイルムで構成されている。この被覆フイルム50には、回転方向(矢印R方向)に複数の切れ目44aが所定間隔ずつ離間して設けられるとともに、前記切れ目44aには、1つおきに傾斜切れ目46aが配置される。ここで、傾斜切れ目46aを有する切れ目44aと、前記傾斜切れ目46aがない切れ目44a1との長さが異なるものでもよい。その際、切れ目44a1の長さ>切れ目44aの関係が好ましい。
【0044】
傾斜切れ目46a同士の間隔Xと、前記間隔X間に配置される切れ目44a同士の2つの間隔B1、B2とは、(B1+B2)<0.4Xの関係を有するように設定される。切れ目44aは、傾斜切れ目46aとの交差位置から矢印R方向側の長さC3及び矢印R方向とは逆方向の長さC4が設定される一方、前記傾斜切れ目46aは、前記切れ目44aとの交差位置から上方及び下方に、それぞれ長さD3及びD4が設定される。
【0045】
切れ目44aの全長は、0.2mm〜3mm、好ましくは、0.3mm〜1.8mmであり、長さC3は、0.05mm〜0.8mm、好ましくは、0.1mm〜0.6mmであるとともに、長さC4は、0.05mm〜0.8mm、好ましくは、0.1mm〜0.6mmである。切れ目44a1の全長は、0.2mm〜3mm、好ましくは、0.2mm〜1.8mmである。
【0046】
傾斜切れ目46aの全長は、2mm〜6mm、好ましくは、2.5mm〜5mmであり、長さD3は、1.5mm〜5mm、好ましくは、2mm〜4mmであるとともに、長さD4は、0mm〜2.5mm、好ましくは、0mm〜1.5mmである。間隔Xは、1mm〜6mm、好ましくは、2mm〜4.5mmであるとともに、間隔B1、B2は、それぞれ0.2mm〜1mm、好ましくは、0.3mm〜0.8mmである。
【0047】
具体的には、切れ目44aの全長が0.345mm、長さC3が0.1mm、長さC4が0.245mm、切れ目44a1の全長が3.255mm、傾斜切れ目46aの全長が3mm、長さD3が3mm、長さD4が0mm、間隔Xが4.1mm、間隔B1が0.5mm、間隔B2が0.5mm及び角度θが45度に設定される。又は、切れ目44aの全長が0.49mm、長さC3が0.245mm、長さC4が0.245mm、切れ目44a1の全長が2.255mm、傾斜切れ目46aの全長が4mm、長さD3が3mm、長さD4が1mm、間隔Xが3.745mm、間隔B1が0.5mm、間隔B2が0.5mm及び角度θが45度に設定される。
【0048】
このように構成される被覆フイルム50を用いたプレフィルドシリンジでは、開封時のトルク上昇を抑えるとともに、容易且つ良好な開封処理が確実に遂行される等、第1の実施形態に係るプレフィルドシリンジ10と同様の効果が得られる。
【0049】
図5は、本発明の第3の実施形態に係るプレフィルドシリンジを構成する被覆フイルム60の展開状態説明図である。なお、被覆フイルム60の材質及び構成は、第1及び第2の実施形態に係る被覆フイルム42、50と同様である。また、以下に説明する第4の実施形態においても、同様である。
【0050】
被覆フイルム60は、回転方向(矢印R方向)に複数の切れ目44bが所定間隔ずつ離間して設けられるとともに、各切れ目44bには、又は1つ置きの切れ目44bには、傾斜切れ目46bが所定の角度だけ傾斜して配置される。傾斜切れ目46bは、キャップ30側に設けられるとともに、切れ目44bとの交差部位で終端する。切れ目44bは、傾斜切れ目46bとの交差位置から矢印R方向側の長さC5及び矢印R方向とは逆方向の長さC6が設定される。
【0051】
切れ目44bの全長は、0.5mm〜3.5mm、好ましくは、0.8mm〜3mmであり、長さC5は、0.2mm〜2mm、好ましくは、0.3mm〜1.5mmであるとともに、長さC6は、0.2mm〜2mm、好ましくは、0.3mm〜1.5mmである。傾斜切れ目46bの全長は、1.5mm〜5mm、好ましくは、2mm〜4mmであるとともに、間隔Xは、1.2mm〜7mm、好ましくは、2mm〜5.5mmであり、間隔Aは、0.2mm〜1.5mm、好ましくは、0.3mm〜1mmである。
【0052】
具体的には、切れ目44bの全長が1.12mm、長さC5が0.6mm、長さC6が0.52mm、傾斜切れ目46bの全長が2mm、間隔Xが1.62mm、間隔Aが0.5mm、及び角度θが30度に設定される。
【0053】
従って、第3の実施形態では、上記の第1及び第2の実施形態と同様の効果が得られる。
【0054】
図6は、本発明の第4の実施形態に係るプレフィルドシリンジを構成する被覆フイルム70の展開状態説明図である。
【0055】
被覆フイルム70は、回転方向(矢印R方向)に傾斜切れ目46cを有する切れ目44cと、前記傾斜切れ目46cがない切れ目44c1とが所定間隔Aずつ離間して交互に設けられる。傾斜切れ目46cは、切れ目44cの矢印R方向先端で終端する。切れ目44cは、全長である長さC7が設定され、切れ目44c1は、全長である長さC8が設定され、傾斜切れ目46cは、全長である長さD5が設定される。
【0056】
切れ目44cの長さC7は、0.5mm〜2.5mm、好ましくは、0.7mm〜1.5mmであり、切れ目44c1の長さC8は、1mm〜5mm、好ましくは、2mm〜4mmであるとともに、傾斜切れ目46cの長さD5は、1mm〜5mm、好ましくは、2mm〜4mmである。間隔Aは、0.2mm〜1mm、好ましくは、0.3mm〜0.6mmであり、角度θは、15度〜75度、好ましくは、25度〜60度である。
【0057】
具体的には、切れ目44cの長さC7が1mm、切れ目44c1の長さC8が2.8mm、傾斜切れ目46cの長さD5が3mm、間隔Aが0.5mm、及び角度θが45度に設定される。又は、切れ目44cの長さC7が1.3mm、切れ目44c1の長さC8が2.5mm、傾斜切れ目46cの長さD5が3mm、間隔Aが0.5mm、及び角度θが45度に設定される。
【0058】
これにより、第4の実施形態では、上記の第1〜第3の実施形態と同様の効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るプレフィルドシリンジの概略構成説明図である。
【図2】前記プレフィルドシリンジの要部分解説明図である。
【図3】前記プレフィルドシリンジを構成する被覆フイルムの展開状態説明図である。
【図4】本発明の第2の実施形態に係るプレフィルドシリンジを構成する被覆フイルムの展開状態説明図である。
【図5】本発明の第3の実施形態に係るプレフィルドシリンジを構成する被覆フイルムの展開状態説明図である。
【図6】本発明の第4の実施形態に係るプレフィルドシリンジを構成する被覆フイルムの展開状態説明図である。
【図7】特許文献1に開示されているプレフィルドシリンジの要部説明図である。
【符号の説明】
【0060】
10…プレフィルドシリンジ 12…シリンジ外筒
14、38…開口部 16…ガスケット
18…プランジャ 20…口部
22…流路 24…ストッパ部
26…ロックアダプタ 28…雌ねじ部
30…キャップ 32…雄ねじ部
34…凸部 42、50、60、70…被覆フイルム
44、44a、44a1、44b、44c、44c1…切れ目
46、46a〜46c…傾斜切れ目

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンジ本体側部材に対して着脱自在なキャップを備えるプレフィルドシリンジであって、
前記シリンジ本体側部材と前記キャップとを被覆する被覆フイルムを設け、
前記被覆フイルムは、前記キャップの回転方向に沿って複数の切れ目が所定間隔ずつ離間して設けられるとともに、
各切れ目には、1つ以下の傾斜切れ目が前記切れ目に対して所定の角度だけ傾斜して配置されることを特徴とするプレフィルドシリンジ。
【請求項2】
請求項1記載のプレフィルドシリンジにおいて、前記切れ目は、前記キャップと前記シリンジ本体側部材との境界部位近傍に周方向に沿って間欠的に設けられることを特徴とするプレフィルドシリンジ。
【請求項3】
請求項1又は2記載のプレフィルドシリンジにおいて、前記傾斜切れ目は、前記切れ目に対して10度〜70度の範囲内だけ傾斜することを特徴とするプレフィルドシリンジ。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載のプレフィルドシリンジにおいて、前記被覆フイルムは、前記キャップの先端面より前記シリンジ本体側部材側に1mm以上離間した位置から前記キャップを被覆することを特徴とするプレフィルドシリンジ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか1項に記載のプレフィルドシリンジにおいて、前記傾斜切れ目は、前記キャップ側に設けられるとともに、前記切れ目との交差部位で終端することを特徴とするプレフィルドシリンジ。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプレフィルドシリンジにおいて、前記切れ目には、それぞれ1つの前記傾斜切れ目が配置されることを特徴とするプレフィルドシリンジ。
【請求項7】
請求項6記載のプレフィルドシリンジにおいて、前記傾斜切れ目同士の間隔Xと、前記間隔X間に配置される前記切れ目同士の間隔Aとは、A<0.4Xの関係を有するように設定されることを特徴とするプレフィルドシリンジ。
【請求項8】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載のプレフィルドシリンジにおいて、前記切れ目には、一つ置きに前記傾斜切れ目が配置されることを特徴とするプレフィルドシリンジ。
【請求項9】
請求項8記載のプレフィルドシリンジにおいて、前記傾斜切れ目同士の間隔Xと、前記間隔X間に配置される前記切れ目同士の2つの間隔B1、B2とは、(B1+B2)<0.4Xの関係を有するように設定されることを特徴とするプレフィルドシリンジ。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれか1項に記載のプレフィルドシリンジにおいて、前記シリンジ本体側部材は、液状製剤が充填されるシリンジ外筒に対し軸方向に移動可能なロックアダプタであることを特徴とするプレフィルドシリンジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−67832(P2008−67832A)
【公開日】平成20年3月27日(2008.3.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−247890(P2006−247890)
【出願日】平成18年9月13日(2006.9.13)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】