説明

プレート式熱交換器

【課題】プレート式熱交換器の耐圧強度の向上を図りつつ、従来と比べて軽量かつ低コストなプレート式熱交換器を提供する。
【解決手段】本発明のプレート式熱交換器は、プレート積層体の最表面を構成する伝熱プレートに補強プレートを設けたものであり、剛性の低い熱交換媒体および被熱交換媒体の流入出部である四隅の開口部周辺から、比較的に剛性の高い伝熱面の一部に亘って選択的に補強プレートを伝熱プレートにろう付け等で一体接合したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電気給湯機や産業用機器などに利用されるプレート式熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複数枚の伝熱プレートを積層し、この伝熱プレート間に熱交換媒体と被熱交換媒体の流路を形成し、それぞれの媒体間で熱交換を可能にするプレート式熱交換器が知られている。この種のプレート式熱交換器は、伝熱プレート上に伝熱面積拡大を目的として形成された凸状波形または凹状波形の波板形状部を有するとともに、伝熱プレートの四隅に熱交換媒体および被熱交換媒体の出入り口となる開口部を備えている。上記の伝熱プレートは、一般にステンレスやチタン等の薄板等からなる材料をプレス成形によって板厚方向に絞り成形することにより製作される。そのため上記の凸状波形または凹状波形の波板形状や四隅の開口部を含む張り出し形状の斜面部分は、材料の板厚を伸ばしながら成形されるため平面部と比較して減肉する。このような伝熱プレートは積層された状態で、ろう付接合などによって互いに密着接合することで各熱交換媒体通路の水密を確保している。また伝熱面内に形成された凹状波形および凸状波形の波板形状は、その頂点同士がろう付接合の接点として機能するため、伝熱面内は全面にわたり千鳥状に接点を有する。対して四隅の開口部周辺は熱交換媒体の出入り口として機能するため、伝熱面内に比べて接合点数が少なく広い空間を有している。そのため開口部周辺は水平面部分のエッジ同士が接点となってろう付接合される。
【0003】
しかしながら、ブレージング形式のプレート式熱交換器において、凸状波形または凹状波形に形成された伝熱面内は、ろう付接合などで凸状波形または凹状波形の頂点同士を接合している場合が多く、耐圧強度は四隅の開口部周辺の耐圧強度よりも比較的に高い。その反面、四隅の開口部周辺は熱交換媒体や被熱交換媒体を熱交換器内に導入するノズル等の部品を配置する都合から平面状に成形されている場合が多く流路面と比較して耐圧強度は低い。そのためプレート式熱交換器に内圧が印加された場合において、伝熱面と四隅の開口部周辺との境界部分に高い応力が発生し熱交換器が破裂する恐れがあるといえる。この問題を解決するため、例えば特許文献1には、プレート積層体の最外面を構成する伝熱プレートの表裏両面に厚板の補強板を付加することにより、耐圧能力の向上を図るプレート式熱交換器が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−79274号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、電気温水器のように熱交換媒体が比較的低い圧力で利用される機器においては、接合点の多い伝熱面に補強板が必要ない場合がある。このような場合、特許文献1に記載されているような、伝熱面と四隅の開口部周辺を2枚の厚板の補強板で狭持した全面補強構造ではプレート式熱交換器を過剰に補強している場合があり、熱交換器全体の重量増加を招く恐れがあった。
【0006】
本発明は、このような課題を解決するためになされたものであり、プレート式熱交換器の耐圧強度の向上を図ることが可能であり、しかも従来と比べて軽量かつ低コストなプレート式熱交換器の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明におけるプレート式熱交換器は、両端に設けられた平面部の間に波板形状部が形成され、四隅の前記平面部に開口部が設けられた伝熱プレートと、両端に設けられた平面部の間に波板形部が形成された端板との間に、前記伝熱プレートを複数枚間隔をおいて積層し、前記伝熱プレートの間に熱媒体流路と被熱媒体流路を交互に形成したプレート積層体と、前記伝熱プレートより小型で、前記プレート積層体の最外面を形成する前記伝熱プレートの前記開口部周辺および前記平面部と前記波形部との境界を覆うように配置された第1の補強プレートと、前記端板よりも小型で、前記端板の平面部および該平面部と前記波形部との境界部を覆うように配置された第2の補強プレートとを備えたものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、上述のような構成により、プレート式熱交換器の長期使用において印加される繰返し圧力による微小変形を抑制でき、その結果、プレート式熱交換器の耐圧能力を向上させ、長期間に渡って使用することが可能となる。また、従来の全面補強構造と比較して材料使用量を大幅に削減することが可能であり、プレート式熱交換器の低コスト化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態におけるプレート式熱交換器を表側から見た斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるプレート式熱交換器を表側から見た平面図である。
【図3】図3のA−A線における断面図である。
【図4】本発明の実施の形態におけるプレート式熱交換器を裏側から見た斜視図である。
【図5】図4のB−B線における断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1は、本実施の形態におけるプレート式熱交換器を表側から見た斜視図である。図2は、上記プレート式熱交換器を表側から見た平面図であり、図3は図2中のA−A線における断面図である。また、図4は、上記プレート式熱交換器を裏側から見た斜視図であり、図5は図4中のB−B線における断面図である。以下、図1〜図5を参照して、本実施の形態におけるプレート式熱交換器について説明する。
【0011】
プレート式熱交換器100は、温水給湯機や温水床暖房機器等の様々の機器に適用されるものであり、プレート積層体1、表面補強プレート(第1の補強プレート)21および裏面補強プレート(第2の補強プレート)41、42を備えるものである。このプレート積層体1は、伝熱プレート11を所定枚数間隔をおいて積層して形成したものであり、伝熱プレート11間には、熱交換媒体流路51と被熱交換媒体流路52とが交互に形成されている。
【0012】
伝熱プレート11は、両端に設けられた平面部12の間に、凸状波形13および凹状波形14からなる波板形状部15が形成されており、四隅の平面部12には開口部16〜19が設けられている。プレート積層体1の最表面を形成する伝熱プレート11の開口部16〜19周辺には、図3に示すように、突起部53が形成されている。また、図4に示すように、プレート積層体1の裏面を形成する伝熱プレートである端板10には四隅に開口部が設けられていないが、両端に設けられた平面部の間に波板形状部が形成されている点は、伝熱プレート11と同様の構成である。
【0013】
熱交換媒体は、開口部16から流入し、熱交換媒体流路51を通過して、開口部17から流出する。一方、被熱交換媒体は、開口部18から流入し、被熱交換媒体流路52を通過して、開口部19から流出する。また、各伝熱プレート11の間隙と周縁部にはろう材を固着することで水密を確保している。
【0014】
そして、図1〜図3に示すように、プレート積層体1の表面を形成する伝熱プレート11には、伝熱プレート11よりも小型の表面補強プレート21が、上記開口部16、17の周辺31から伝熱面の波板形状の頂点の一部分32にろう付等で一体接合されている。また、図3および図4に示すように、プレート積層体1の裏面を形成する端板10には、端板10よりも小型の裏面補強プレート41、42が開口部の背面周辺34から裏面伝熱面の波板形状の頂点の一部分33に亘ってろう付等で永久に一体接合されている。表面補強プレート21、裏面補強プレート41、42の板厚は、伝熱プレート11および端板10よりも厚く形成されている。
【0015】
ここで、表面補強プレート21および裏面補強プレート41は、図3に示すように、伝熱プレート11または端板10の開口部周辺の平面部31、41から、伝熱面の波板形状の2〜3波分に亘って、ろう付接合などにより伝熱プレート11または端板10と一体接合されている。図3に図示されていない裏面補強プレート42についても、裏面補強プレート41と同様に端板10に接合されている。
【0016】
なお、本実施の形態では、図1に示すように、表面補強プレート21は、伝熱プレート11の開口部16〜19のうち、高圧が印加される開口部16、17周辺のみを覆うように形成しているが、全ての開口部16〜19を覆うように表面補強プレートを配置してもよい。
【0017】
次に、本実施の形態におけるプレート式熱交換器100に熱交換媒体および被熱交換媒体が流通する場合の作用について説明する。
【0018】
プレート式熱交換器100に両媒体が流通すると、熱交換媒体および被熱交換媒体そのものに水源等からの静圧が印加された状態、あるいは循環ポンプ等の機器によって動圧が印加された状態が周期的に発生するため、熱交換媒体の流通時と不通時にプレート熱交内部に圧力変動が加わる。また熱交換媒体流路51と被熱交換媒体流路52の間には圧力差が発生する。これらの圧力変動または圧力差はプレート式熱交換器100を構成する伝熱プレート11に微小な繰返し変形を発生させる。
【0019】
特に伝熱プレート11の四隅の開口部16〜19とその周辺部分はろう付接点間隔が広く圧力荷重に対しで変形しやすい低い剛性の構造となっている。これに対して、熱交換が行われる凸状波形13および凹状波形14の波板形状部15が成形された伝熱面は、上下伝熱プレート11の凸状波形または凹状波形の波板形状の頂点同士が接点となってろう付接合され、波板形状1波分の短いろう付接点間隔となるため、圧力荷重に対して変形しにくい高い剛性の構造となっている。この圧力変形に対して変形しやすい開口部周辺と変形しにくい伝熱面との境界部分35は、他の部位と比較して非常に高い応力が伝熱プレート11に発生するため、耐圧能力が低く繰返し変形によって破裂しやすい。
【0020】
上記のように、伝熱面と開口部周辺で剛性が異なる境界部分35を有する伝熱プレート11に対して、上記のように厚板の表面補強プレート21および裏面補強プレート41、42をろう付などの方法で伝熱プレートに一体接合することで境界部分35の剛性が向上し変形および破裂を抑制し耐圧能力を向上させることが可能となる。
【0021】
以上のようにプレート式熱交換器100を構成すると、熱交換媒体流路51に高圧がかかった場合でも、伝熱プレート開口部周辺と境界部分35の破裂または変形が抑制される。しかも補強プレートの貼られていない凸状波形または凹状波形の波板形状を有する伝熱面は、伝熱プレートとろう付接点が十分に耐圧強度を保っているため、高圧が印加される場合でも板厚を厚くする必要がないので、比較的に伝熱プレート11の板厚を薄くすることができ、その結果、プレート式熱交換器全体を軽量に製作することが可能となる。
【0022】
また、開口部周辺を覆う表面補強板21の形状を、伝熱プレート11の開口部から立ち上がる突起形状53に嵌合するような形状に成形することで、表面補強板21と伝熱プレート11の一体接合を行う際に、スポット溶接やカシメなどの仮止め工程を必要とせずに、伝熱プレート11上に配置するだけで表面補強板21の位置決めが可能となり、補強板の取付け工程を簡素化することができる。
【0023】
なお、上述した実施の形態、構成要素の形容等はあくまで例示であって、これらの記載に本願発明の技術的範囲が限定されるものではないことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0024】
1 プレート積層体、 10 端板、 11 伝熱プレート、 12 平面部、 13 凸条波形、 14 凹条波形、 15 波板形状部、 16〜19 開口部、 21 表面補強プレート、 31〜33 ろう付接点、 34 裏面補強板のろう付面、 35 境界部、 41,42 裏板補強板、 51 熱交間媒体流路、 52 被熱交換媒体流路、 53 突起部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端に設けられた平面部の間に波板形状部が形成され、四隅の前記平面部に開口部が設けられた伝熱プレートと、両端に設けられた平面部の間に波板形部が形成された端板との間に、前記伝熱プレートを複数枚間隔をおいて積層し、前記伝熱プレートの間に熱媒体流路と被熱媒体流路を交互に形成したプレート積層体と、
前記伝熱プレートより小型で、前記プレート積層体の最外面を形成する前記伝熱プレートの前記開口部周辺および前記平面部と前記波形部との境界を覆うように配置された第1の補強プレートと、
前記端板よりも小型で、前記端板の平面部および該平面部と前記波形部との境界部を覆うように配置された第2の補強プレートとを備えたプレート式熱交換器。
【請求項2】
前記第1の補強プレートは、前記開口部から立ち上がる突起部と嵌合するように設けられたことを特徴とする請求項1に記載のプレート式熱交換器。
【請求項3】
前記第1の補強プレートおよび前記第2の補強プレートは、前記伝熱プレートおよび前記端板よりも板厚が厚いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のプレート式熱交換器。
【請求項4】
前記第1の補強プレートおよび前記第2の補強プレートは、前記伝熱プレートおよび前記端板とそれぞれろう付けによって接合されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のプレート式熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−169551(P2011−169551A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36118(P2010−36118)
【出願日】平成22年2月22日(2010.2.22)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】