説明

プレート式熱交換器

【課題】冷媒が流れる熱交換器内流路の特に上流側での冷媒の偏流を改善して、熱交換効率を向上する。
【解決手段】
プレート式熱交換器5は、複数の伝熱プレート10を平行に積層して複数の冷媒流路と複数の被冷却媒体流路を交互に配列し、配列された前記複数の冷媒流路及び前記複数の被冷却媒体流路をそれぞれの入口部と出口部で連通させて形成され、冷凍サイクルを循環する冷媒の蒸発潜熱により被冷却媒体を冷却するように構成されている。また、前記冷媒流路に冷媒を導入するための熱交換器入口11での冷媒の流速よりも、前記複数の冷媒流路13aへ流入して流れる冷媒の流速の方が速くなるように、前記複数の冷媒流路13a全体の流路面積を、前記熱交換器入口における流路面積より小さく構成している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプレート式熱交換器に係り、特に冷凍装置などの冷凍サイクルの蒸発器として好適なプレート式熱交換器に関する。
【背景技術】
【0002】
冷凍サイクルを循環する冷媒の蒸発潜熱により被冷却媒体(例えば、水)を冷却する熱交換器として、例えば、プレート式熱交換器が用いられている。このプレート式熱交換器は、複数の伝熱プレートを平行に立設させて積層し、複数の冷媒流路と、複数の被冷却媒体流路とが交互に配列されるように構成されたものである。また、配列された複数の前記冷媒流路のそれぞれの下部側を互いに連通させると共に、前記複数の冷媒流路の上部側も互いに連通させる。同様に、前記複数の被冷却媒体流路のそれぞれの下部側を互いに連通させると共に、前記複数の被冷却媒体流路の上部側も互いに連通されている。
【0003】
例えば、冷媒の入口側は、熱交換器入口から前記複数の冷媒流路の下部を互いに連通するように入口管(連結管)がプレート式熱交換器の下部に挿入して構成されている。
【0004】
冷媒は、前記プレート式熱交換器の入口管へ気液二相状態で流入する。流速が速いと、液冷媒は熱交換器の奥の方の冷媒流路へ、ガス冷媒は熱交換器の手前側の冷媒流路に流れ易くなり、冷媒の偏流が生じる。このため、各冷媒流路の熱交換量に偏りが生じ、全体としての熱交換効率が低下する。
【0005】
この問題を解決する従来技術として特開平10−300371号公報(特許文献1)に記載されているものがある。この特許文献1のものには、前記複数の冷媒流路或いは被冷却媒体流路の流路の途中をそれぞれ連通させる連通路を形成して前記各流路を流れる流体の偏流を解消することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−300371号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1のものは、初めに生じた冷媒流路或いは被冷却媒体流路毎の流体の偏流を、前記連通路により、該連通路に流入した流体を混合することで均一化し、偏流を解消するようにしたものである。
【0008】
しかし、この特許文献1のものでは、前記連通路よりも下流側の流路の偏流は改善できるものの、前記連通路に至るまでの流路(連通路の上流側の流路)においては、依然偏流が生じたままであり、前記連通路上流側のプレート式熱交換器の熱交換効率を十分には向上できないという課題がある。
【0009】
本発明の目的は、冷媒が流れる熱交換器内流路の特に上流側での冷媒の偏流を改善して、熱交換効率を向上できるプレート式熱交換器を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明は、複数の伝熱プレートを平行に積層して複数の冷媒流路と複数の被冷却媒体流路を交互に配列し、これらの配列された前記複数の冷媒流路及び前記複数の被冷却媒体流路をそれぞれの入口部と出口部で連通させ、冷凍サイクルを循環する冷媒の蒸発潜熱により被冷却媒体を冷却するように構成されたプレート式熱交換器において、前記冷媒流路に冷媒を導入するための熱交換器入口での冷媒の流速よりも、前記複数の冷媒流路へ流入して流れる冷媒の流速の方が速くなるように、前記複数の冷媒流路全体の流路面積を、前記熱交換器入口における流路面積より小さく構成したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、冷媒が流れる熱交換器内流路の上流側での冷媒の偏流を改善することができ、これにより熱交換効率を向上したプレート式熱交換器を得ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】蒸発器にプレート式熱交換器を採用した冷凍装置の冷凍サイクル構成図である。
【図2】本発明のプレート式熱交換器の実施例1を示す断面図である。
【図3】本発明のプレート式熱交換器の実施例2を示す断面図である。
【図4】本発明のプレート式熱交換器の実施例3を示す断面図である。
【図5】本発明のプレート式熱交換器の実施例4を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明のプレート式熱交換器の具体的実施例を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0014】
図1は、蒸発器にプレート式熱交換器を採用した冷凍装置の冷凍サイクル構成図を示している。本実施例では、冷凍装置の例としてヒートポンプ式空気調和機を掲げている。
【0015】
図1において、1は圧縮機、2は四方弁、3は空気側熱交換器、4は膨張弁、5はプレート式熱交換器であり、これらの機器は冷媒配管7により順次接続されている。
上記四方弁2に示した実線は冷房運転時、点線は暖房運転時の状態を示している。前記空気側熱交換器3は冷凍サイクルを流れる冷媒と室外の空気とを熱交換させるもので、送風ファン6により室外の空気が送風されるようになっている。なお、図1の冷媒配管7に沿って示す実線矢印は冷房運転時、点線矢印は暖房運転時の冷媒の流れ方向を示している。
【0016】
前記実線矢印で示す冷房運転の場合、圧縮機1で圧縮された高温高圧のガス冷媒は、四方弁2の実線経路を通り、空気側熱交換器3により凝縮されて高温高圧の液冷媒となる。その後、この凝縮液化された冷媒は、前記膨張弁4により減圧され、プレート式熱交換器5に流入して同じくプレート式熱交換器5内を流れる被熱交換媒体(被冷却媒体または冷水)8と熱交換して蒸発され、低温低圧のガス冷媒となって前記圧縮機1に戻る。一方、前記被熱交換媒体8は冷媒により冷却されて、冷房用途などに使用される。
【0017】
前記破線矢印で示す暖房運転の場合、圧縮機1からの高温高圧の冷媒は四方弁2を通過後、プレート式熱交換器5に流入して、被熱交換媒体(被加熱媒体または温水)と熱交換して凝縮され、その後膨張弁4で減圧されて空気側熱交換器3に入り、ここで室外空気と熱交換して蒸発され低温低圧のガス冷媒となって前記圧縮機に戻る。前記被熱交換媒体は冷媒により加熱されて、暖房用途などに使用される。
【0018】
図2は本発明のプレート式熱交換器の実施例1を示す断面図で、図1に示すプレート式熱交換器における冷媒流路側の断面図である。
プレート式熱交換器5は、複数枚の伝熱プレート10を、各伝熱プレート10間に互いに隣り合うように冷媒流路と、被熱交換媒体流路(被冷却媒体流路または被加熱媒体流路)を形成するようにして積層されている。隣り合うように配置された前記冷媒流路と、被熱交換媒体流路のそれぞれを流通する冷媒と被熱交換媒体(被冷却媒体または被加熱媒体)とは、前記伝熱プレート10を介して互いに熱交換を行う。このように、複数枚の前記伝熱プレート10が熱交換器入口11側から奥行き方向(冷媒の流入方向)に積層されてプレート式熱交換器が構成されている。
【0019】
なお、図2はプレート式熱交換器における冷媒流路側の断面図を示しているが、被熱交換媒体流路もほぼ同様に構成されている。また、以下の説明では、冷凍装置が冷房運転される場合、即ちプレート式熱交換器5が蒸発器として使用される場合について説明する。
【0020】
プレート式熱交換器5の下部に設けられた前記熱交換器入口11からの冷媒はプレート式熱交換器下部の入口管(連結管或いは入口部)12に流入し、この入口管12から伝熱プレート10間に形成された複数の第1冷媒流路13a(上流側の冷媒流路)に分配されて上昇する。伝熱プレート10の上下方向の中間部付近には、前記複数の第1冷媒流路を連通する連通路14が設けられており、この連通路14の上部には冷媒が更に上方に流れる複数の第2冷媒流路13b(下流側の冷媒流路)が形成されている。更に、前記複数の第2冷媒流路13bの上部は出口管(連結管或いは出口部)16で連通され、前記冷媒はこの出口管16に集合されて、前記熱交換器入口11と同じ側(手前側)の上部に設けられた熱交換器出口17から排出されるように構成されている。
【0021】
本実施例では、前記入口管12から前記連通路14までの第1冷媒流路13a側の部分に、複数の第1冷媒流路13a全体の流路面積が小さくなるように、冷媒を流さない領域15を設けている。また、本実施例では、前記熱交換器入口11の流路面積よりも、前記複数の第1冷媒流路13a全体の流路面積の方が小さくなるように構成されている。即ち、本実施例では、前記冷媒を流さない領域15を設けることにより、冷媒はプレート式熱交換器の奥側の数流路13aのみに冷媒が流れる構成となるから、複数の第1冷媒流路13a(上流側の冷媒流路)全体の流路面積を小さくできる。
【0022】
このように構成することにより、熱交換器入口11から流入した冷媒は前記入口管12を通り、前記伝熱プレート10間に形成された前記複数の第1冷媒流路13aに分配されるが、これらの第1冷媒流路13aへ流入する際、流通抵抗が生じて冷媒が流れ難くなる。このため、前記入口管12内で冷媒は一時滞留する。入口管12に流入する冷媒は、液冷媒とガス冷媒が混在しているが、前記入口管12の部分で一時滞留することにより、後から流入してきた冷媒により攪拌され、液冷媒とガス冷媒が良く混合される。従って、上流側に設けられた前記複数の第1冷媒流路13aに分配される冷媒の質量流量はより均一になり、冷媒の偏流を改善できる。
【0023】
また、冷媒を流さない領域15を設けたことにより、複数の第1冷媒流路13aの入口部は互いに近接した位置となる。このため、第1冷媒流路13aに流入する際の各流路毎の圧力損失のばらつきも小さくなる。従って、この点からも、前記複数の第1冷媒流路13a間における冷媒の偏流を改善することができる。
【0024】
本実施例では、前記冷媒を流さない領域15を設けているので、その分前記第1冷媒流路13aの流路数も減少するが、各第1冷媒流路13aを流れる冷媒の流速は、流路数の減少分だけ速くすることができ、流れも乱流となる。従って、冷媒が流れる第1冷媒流路13aの領域が狭くなっても、プレート式熱交換器全体の熱交換効率はより向上できる。
【0025】
本実施例では、前記第1冷媒流路13aの上部に前記連通路14が設けられ、この連通路14の上部には前記複数の第2冷媒流路13bが設けられている。これにより、複数の第1冷媒流路13aから流出した冷媒は前記連通路14で混合された後、前記複数の第2冷媒流路に流入するから、第2冷媒流路における冷媒偏流も改善できる。
【0026】
また、前述した冷媒を流さない領域15は、本実施例では前記熱交換器出口17側に設けられている。なお、前記冷媒を流さない領域15は熱交換器入口11側(奥行き方向手前側)にも位置している。このように構成することにより、熱交換器入口11から流入した冷媒は入口管12の奥側まで流れるから前記熱交換器出口17側との距離は長くなり、冷媒を流さない領域を設けていない前記複数の第2冷媒流路13b全体に均一に冷媒を流すことができ、熱交換効率を向上できる。
【0027】
前記複数の第2冷媒流路13bにおいては、熱交換器出口17に近い流路ほど冷媒が流れやすくなる。一方、前記連通路14では、第1冷媒流路13aから流れてきた冷媒を第2冷媒流路13bへ再分配するものの、複数の第2冷媒流路13bのうち、前記第1冷媒流路13aの直上にある(即ち第1冷媒流路13aに近い)部分の第2冷媒流路13bにより多くの冷媒が流れ易い。従って、第1冷媒流路13aを形成した側とは反対側(即ち冷媒を流さない領域15側)に熱交換器出口17を形成することにより、複数の第2冷媒流路13bにおける偏流もより改善できる。
【0028】
前記熱交換器入口11から流入した冷媒は、前記第1冷媒流路13a及び前記第2冷媒流路13bにおいて、伝熱プレート10を介して反対側を流れる被冷却媒体(被熱交換媒体)と熱交換し、冷媒の蒸発潜熱により被冷却媒体を冷却する。従って、下流に行くにつれて、液冷媒が蒸発してガス冷媒の割合が増えていくため、下流側ほど冷媒の流速は速くなる。本実施例では、上流側の第1冷媒流路13aの流路数よりも下流側の第2冷媒流路13bの流路数の方が多くなっており、その分第2冷媒流路全体の流路面積も増加しているため、冷媒流速の上昇を抑えて、流速増加に伴う流路内圧力損失の増加も防ぐことができる。このように、本実施例におけるプレート式熱交換器によれば、熱交換器内を流れる冷媒流量の増加に対応して冷媒流路数(流路面積)が増加する構成となっているから、圧力損失が増大するのを抑制でき、冷凍装置の成績係数(COP)も、従来のプレート式熱交換器を採用した冷凍装置のものより向上することができる。
【0029】
なお、本実施例では、1つの連通路14を挟んで上下に第1冷媒流路と第2冷媒流路を設けた例について説明したが、前記連通路14を上下に2つ以上形成し、その連通路間にも冷媒流路を設けるようにして冷媒流路の段数を増やすことも可能であり、このように冷媒流路の段数を増やすことで、偏流の発生を更に改善することも可能になる。
【実施例2】
【0030】
図3は、本発明のプレート式熱交換器の実施例2を示す断面図で、図2に示すプレート式熱交換器と同様に冷媒流路側の断面図である。また、図3において図2と同一符号を付した部分は同一或いは相当する部分を示している。
【0031】
この実施例2においては、熱交換器出口17を、熱交換器入口11とは反対側(奥側)に設けると共に、冷媒を流さない領域15を、前記熱交換器出口17側と同じ熱交換器奥側に設けている。これに伴い、第1冷媒流路13aは手前側(熱交換器入口11側)に設けられている。他の構成は上記実施例1と同様である。
本実施例2においても、実施例1と同様に、冷媒の偏流を改善でき、実施例1と同様の効果が得られる。
【実施例3】
【0032】
図4は、本発明のプレート式熱交換器の実施例3を示す断面図で、図2に示すプレート式熱交換器と同様に冷媒流路側の断面図である。また、図4において図2と同一符号を付した部分は同一或いは相当する部分を示している。
【0033】
この実施例3においては、図2に示した実施例1のプレート式熱交換器に対し、複数の第1冷媒流路13aの流路面積を互いに異ならせたもので、熱交換器入口11に近い手前側の第1冷媒流路13aほど流路面積を大きくし、熱交換器入口11から遠い奥側の第1冷媒流路13aほど流路面積が小さくなるように構成している。
【0034】
熱交換器入口11から入口管12に流入する冷媒の流速が速いと、液冷媒は奥側へ流れ易く、このため液冷媒は奥側の第1冷媒流路13aから、ガス冷媒は手前側の第1冷媒流路13aへ流入し易くなる。本実施例によれば、奥側の第1冷媒流路ほど流路面積を狭くしているので、各第1冷媒流路13aを流れる冷媒の質量流量をより均一化でき、偏流をより改善して熱交換効率を向上することができる。
【実施例4】
【0035】
図5は、本発明のプレート式熱交換器の実施例4を示す断面図で、図2に示すプレート式熱交換器と同様に冷媒流路側の断面図である。また、図5において図2と同一符号を付した部分は同一或いは相当する部分を示している。
【0036】
本実施例では、プレート式熱交換器5の約下半分に第1冷媒流路13aと第2冷媒流路13bを設けると共に、前記第1冷媒流路13aと第2冷媒流路13bの下部に、これらの冷媒流路13a,13bを連通するように第1の連通路14aが設けられている。また、プレート式熱交換器5の約上半分には第3冷媒流路13c(下流側の冷媒流路)が設けられ、この第3冷媒流路13cと前記第2冷媒流路13bとの間(プレート式熱交換器の上下方向中央部付近)には第2の連通路14bが形成されている。前記第3冷媒流路13cの出口側(プレート式熱交換器の上部)には出口管16が設けられ、ここに流入した冷媒は熱交換器出口17から流出する。
【0037】
前記第1冷媒流路13aはプレート式熱交換器5の下部における手前側の数流路分のみとし、残りの奥側に形成されている流路を前記第2冷媒流路13bとする。前記第1冷媒流路13aの上部には冷媒を流さない領域15を設け、この冷媒を流さない領域15の下部には、前記第1冷媒流路15aの入口側のヘッダとなる入口管12が設けられている。また、この入口管12に連通するように熱交換器入口11が設けられている。また、熱交換器入口11の流路面積よりも、前記複数の第1冷媒流路13a(上流側の冷媒流路)全体の流路面積の方が小さくなるように構成されている。
【0038】
このように構成することにより、前記熱交換器入口11から前記入口管12に流入した冷媒は、入口管12で一時滞留して混合され、入口管12と連通している前記第1冷媒流路13aに流入して下方に流れ、その後、プレート式熱交換器5の下部に形成した前記第1の連通路14aに流入して冷媒は混合され、奥側の第2冷媒流路13bに流入して上方へ流れる。第2冷媒流路13bから流出した冷媒は、プレート式熱交換器5の上下方向のほぼ中央に形成された前記第2の連通路14bにおいて再度混合された後、第3冷媒流路13cに流入して上昇し、熱交換器上部に設けられた前記出口管16を通って熱交換器出口17から熱交換器外部に流出する。冷媒は前記各冷媒流路13a〜13cを流れる間に、伝熱プレート10の反対側を流れる被冷却媒体と熱交換される。
【0039】
本実施例においても、上記各実施例と同様に、冷媒を流さない領域15は熱交換器出口17と同じ側に設けられている。また、上記実施例1及び3と同様に、熱交換器入口11と熱交換器出口17とは同一側(手前側)に設けられている。
【0040】
本実施例においても上記各実施例と同様の効果を得ることができる。また、本実施例によれば、冷媒を流さない領域15の下部に第1冷媒流路13aを設けているので、熱交換器全体を効率的に利用することができ、しかも第1冷媒流路13aと第2冷媒流路13b間、及び第2冷媒流路13bと第3冷媒流路13c間にはそれぞれ連通路14a,14bを設けているから、冷媒の偏流を更に低減でき、高い熱交換効率のプレート式熱交換器を得ることができる。
【0041】
以上説明したように、本発明の各実施例によれば、以下の効果が得られる。
(1)熱交換器入口11の流路面積よりも、前記複数の第1冷媒流路13a(上流側の冷媒流路)全体の流路面積の方が小さくなるように構成しているので、入口管12に流入した冷媒は一時滞留して混合され、第1冷媒流路13aを流れる冷媒の偏流を改善できる。また、熱交換器入口11から流入する冷媒流速よりも前記第1冷媒流路13aを流れる冷媒の流速が速くなり、流れも乱流となる。流速が速いほど熱交換効率は高くなり、また層流よりも乱流の方が熱交換効率は向上するから、熱交換効率も向上できる。
(2)冷媒を流さない領域15を設けたことにより、前記複数の第1冷媒流路13aの入口を互いに近い位置に配置することができ、各流路入口部での圧力損失のばらつきが小さくなるから、この点からも冷媒の偏流を改善できる。
(3)第1冷媒流路13aと第2冷媒流路3bとの間、或いは更に第2冷媒流路13bと第3冷媒流路13cとの間に、連通路14或いは14a,14bを設けているので、この連通路によっても冷媒偏流を低減できる。
(4)蒸発器として使用されているプレート式熱交換器においては、冷媒流路の下流に行くほど液冷媒は蒸発し、ガス冷媒の割合が増えていく(乾き度が上がる)。このため下流側ほど冷媒の流速が速くなるが、本実施例では、上流側の冷媒流路の流路数より、下流側の冷媒流路の流路数の方が増加(流路面積が増加)する構成となっている。即ち、流れる冷媒の乾き度の変化に伴い、冷媒流路の流路数が増加(凝縮器として使用する場合には減少)する構造としているので、熱交換器内で冷媒流速が上昇しすぎることを防止できる。これにより、圧力損失の増加を防ぐことができ、冷凍装置の成績係数(COP)が低下するのを防止できる。
【0042】
このように、本実施例によれば、熱交換される冷媒が流れる熱交換器内流路の上流側から下流側までの広い範囲に亘って冷媒の偏流を改善して、熱交換効率を向上できるプレート式熱交換器を得ることができる。
【0043】
なお、上記各実施例ではプレート式熱交換器5が蒸発器として使用される場合について主に説明したが、図1に示す冷凍装置において、暖房運転される場合には、冷媒の流れは上述した冷房運転の場合とは逆になり、プレート式熱交換器5の前記熱交換器出口17から高温高圧のガス冷媒が熱交換器内に流入し、冷媒は熱交換器内で凝縮して、熱交換器入口11から流出する。従って、上述した本実施例のプレート式熱交換器5は暖房運転時にも使用可能なものである。
【0044】
また、上記各実施例は何れも上流側の冷媒流路と下流側の冷媒流路を備え、それらの冷媒流路間に連通路を設けている例について説明したが、本発明はこのような態様のみに限定されるものではなく、例えば前記連通路がなく、上流側の冷媒流路と下流側の冷媒流路が合わさった長い冷媒流路として構成されたプレート式熱交換器であっても同様に適用できるものである。即ち、熱交換器入口での冷媒の流速よりも、複数の冷媒流路へ流入して流れる冷媒の流速の方が速くなるように、前記複数の冷媒流路全体の流路面積を、前記熱交換器入口における流路面積より小さく構成すれば、同様の効果が得られるものである。
【0045】
更に、上記各実施例のように、上流側の冷媒流路(第1冷媒流路)と下流側の冷媒流路(第2冷媒流路または第3冷媒流路)を備えた構成のものでは、上流側となる冷媒流路全体の流路面積が熱交換器入口の流路面積より小さく構成すれば良く、下流側の冷媒流路の流路面積まで小さくする必要はない。
【符号の説明】
【0046】
1:圧縮機、
2:四方弁、
3:空気側熱交換器、
4:膨張弁、
5:プレート式熱交換器、
6:送風ファン、
7:冷媒配管、
8:被熱交換媒体(被冷却媒体または被加熱媒体)、
11:熱交換器入口、
12:入口管(連結管、入口部)、
13a,13b,13c:冷媒流路(13a:第1冷媒流路(上流側の冷媒流路)、
13b:第2冷媒流路(下流側の冷媒流路)、13c:第3冷媒流路(下流側の冷媒流路))、
14,14a,14b:連通路、
15:冷媒を流さない領域、
16:出口管(連結管、出口部)、
17:熱交換器出口。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の伝熱プレートを平行に積層して複数の冷媒流路と複数の被冷却媒体流路を交互に配列し、これらの配列された前記複数の冷媒流路及び前記複数の被冷却媒体流路をそれぞれの入口部と出口部で連通させ、冷凍サイクルを循環する冷媒の蒸発潜熱により被冷却媒体を冷却するように構成されたプレート式熱交換器において、
前記冷媒流路に冷媒を導入するための熱交換器入口での冷媒の流速よりも、前記複数の冷媒流路へ流入して流れる冷媒の流速の方が速くなるように、前記複数の冷媒流路全体の流路面積を、前記熱交換器入口における流路面積より小さく構成したことを特徴とするプレート式熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載のプレート式熱交換器において、前記伝熱プレート間に形成される複数の冷媒流路の一部に冷媒を流さない領域を設けることにより、前記複数の冷媒流路全体の流路面積が前記熱交換器入口における流路面積より小さくなるように構成すると共に、前記複数の冷媒流路の流路入口が互いに近い位置に配置されるように構成したことを特徴とするプレート式熱交換器。
【請求項3】
請求項1または2に記載のプレート式熱交換器において、前記複数の冷媒流路の途中に、各冷媒流路を連通させる連通路を設けると共に、前記連通路の上流側の冷媒流路全体の流路面積が前記熱交換器入口における流路面積より小さく構成され、且つ前記連通路の下流側の冷媒流路全体の流路面積は前記上流側の冷媒流路全体の流路面積より大きく構成されていることを特徴とするプレート式熱交換器。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載のプレート式熱交換器において、前記複数の冷媒流路のそれぞれの流路面積が熱交換器入口から離れた奥側ほど狭くなるように構成されていることを特徴とするプレート式熱交換器。
【請求項5】
請求項2に記載のプレート式熱交換器において、前記冷媒を流さない領域は、前記冷媒流路から熱交換器外に冷媒を導くための熱交換器出口と同一側に設けられていることを特徴とするプレート式熱交換器。
【請求項6】
請求項5に記載のプレート式熱交換器において、前記冷媒流路に冷媒を導入するための熱交換器入口と、前記冷媒流路から熱交換器外に冷媒を導く熱交換器出口を、熱交換器の同一側の面に設けたことを特徴とするプレート式熱交換器。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載のプレート式熱交換器において、前記冷媒流路は、前記熱交換器入口から下流側に向かって、第1冷媒流路、第2冷媒流路及び第3冷媒流路により構成され、前記第1冷媒流路と第2冷媒流路の間には各冷媒流路を連通させる第1の連通路を、前記第2冷媒流路と第3冷媒流路の間には各冷媒流路を連通させる第2の連通路を設け、前記第1及び第2の冷媒流路はプレート式熱交換器の下部側に、前記第3冷媒流路はプレート式熱交換器の上部側に配置し、前記第1冷媒流路の上方に冷媒を流さない領域を設けるようにして、熱交換器入口からの冷媒は、前記第1冷媒流路に流入し、その後前記第1の連通路、第2冷媒流路、第2の連通路、前記第3冷媒流路の順に流れて、冷媒を外部に導く熱交換器出口から熱交換器外に流出するように構成されていることを特徴とするプレート式熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−167861(P2012−167861A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−28673(P2011−28673)
【出願日】平成23年2月14日(2011.2.14)
【出願人】(399048917)日立アプライアンス株式会社 (3,043)
【Fターム(参考)】