説明

プログラム、印刷制御方法、及び印刷システム

【課題】画像形成処理と印刷動作とを適切に並列処理することを可能にする。また、印刷動作の停止が生じにくい方法で、印刷装置を適切に制御する。
【解決手段】印刷制御部12を制御するプログラムであって、複数ページデータ202から分割された一部のページ単位データ204に対応するラスタ画像を形成する第1画像形成処理と、第1画像形成処理の処理時間に基づき、画像形成処理予想時間を予測する画像形成時間予測処理と、画像形成処理予想時間と、印刷処理予想時間とに基づき、少なくとも印刷動作の終了が第2画像形成処理の終了よりも後になるように、印刷開始タイミングを決定する印刷タイミング決定処理と、残りのページ単位データ204に対し、ラスタ画像を形成する第2画像形成処理と、印刷開始タイミング以降のタイミングで、印刷動作を開始させる印刷実行処理とを印刷制御部12に実行させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラム、印刷制御方法、及び印刷システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ページ単位で印刷ジョブを分割処理する分散印刷システムが知られている(例えば、特許文献1参照。)。分散印刷システムにおいては、複数の印刷装置で並列に印刷動作を行うことにより、印刷動作の終了までに要する印刷時間を短縮できる。
【特許文献1】特開2005−196546号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
印刷装置に印刷を行わせるためには、印刷動作の前に、印刷データに基づき、様々な画像形成処理を行う場合がある。例えば、印刷データに基づき、印刷装置が印刷するラスタ画像を形成する画像形成処理を行う場合がある。
【0004】
ここで、このような画像形成処理に必要な処理量は、例えば印刷データのデータサイズ、データの複雑性、及び印刷解像度等の条件により異なる。そのため、印刷データの条件によっては、画像形成処理に要する時間が増大する。
【0005】
その結果、例えば画像形成処理の速度と比べて高速な印刷装置により印刷を行う場合、画像形成処理の速度を印刷速度に追従させることが困難になる場合がある。そのため、従来、例えば高速な印刷装置を用いる印刷システムにおいては、印刷動作と並行して画像形成処理を行うことは困難であり、画像形成処理の完了を待って印刷を開始していた。
【0006】
しかし、画像形成処理の完了を待って印刷を開始する場合、画像形成処理に時間がかかると、高速な印刷装置を用いたとしても、印刷の開始までの時間が長くなる。また、その結果、トータルでの印刷所要時間が増大してしまう。また、画像形成処理の完了を待つ間、印刷動作を行わないため、高価なリソースである印刷装置の稼働率が低下することとなる。そのため、従来、より効率的に印刷を行う方法が求められていた。そこで、本発明は、上記の課題を解決できるプログラム、印刷制御方法、及び印刷システムを提供することを目的とする。
【0007】
尚、画像形成処理が間に合わなくなる事態を避けるためには、十分な処理能力を有するコンピュータ等により、画像形成処理を行えばよいようにも考えられる。しかし、この場合、画像形成処理の処理量が例外的に大きくなる場合等にも十分な処理量を有するコンピュータ等を用いることが必要になり、コストの大幅な上昇を招くおそれがある。そのため、このようなコストの大幅な上昇を招くことなく、より適切に印刷装置を制御することが望まれる。
【0008】
また、画像形成処理の速度を印刷速度に追従させることが困難な場合に、印刷動作と並行して画像形成処理を行おうとすれば、いずれかのタイミングで、印刷装置での印刷動作に対し、画像形成処理が間に合わなくなる。そして、このように画像形成処理が間に合わない事態が生じると、印刷装置は、例えば印刷処理中に印刷動作を一旦停止することとなる。
【0009】
しかし、印刷装置が印刷動作を停止すると、例えば印刷の再開時に余分な時間がかかり、全体の印刷時間が増大することとなる。また、分散印刷システムにおいては、全ての印刷装置を効率的に稼働させる観点から、印刷装置の停止が生じることは好ましくない。
【0010】
更には、例えば媒体を搬送しつつ印刷を行う印刷装置を用いる場合、媒体の搬送速度が一定にならず、搬送の制御が難しくなるおそれがある。例えば、媒体がロール状に巻かれたロール状媒体を用いて印刷を行う印刷装置においては、印刷動作を停止させると、媒体に無駄が生じることとなる。また、断裁間隔が一定にならないという問題も発生する。また、印刷システムにおいて、印刷装置は、印刷の前又は後に媒体への加工を行う他の装置と共に用いられる場合がある。このような場合、印刷装置の停止が生じると、他の装置との間で動作の同期を適切に行えなくなるおそれもある。
【0011】
そのため、印刷装置に印刷を行わせる場合には、更に、例えば印刷動作の停止が生じにくい方法により、より適切に印刷装置を制御することが望まれる。また、このことは、複数の印刷装置で分散印刷を行う場合に限らず、例えば一台の印刷装置で印刷を行う場合にも望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するために、本発明は、以下の構成を有する。
(構成1)印刷装置と、印刷装置による印刷動作を制御する印刷制御部とを備える印刷システムにおいて、印刷制御部の動作を制御するプログラムであって、複数のページからなる印刷データである複数ページデータをページ単位の印刷データであるページ単位データに分割することにより、複数ページデータの各ページにそれぞれが対応する複数のページ単位データを生成するページ分割処理と、ページ単位データに対応して印刷装置が印刷するラスタ画像を形成することにより、ページ分割処理で生成する全てのページ単位データのうちの、一部のページ単位データに対応するラスタ画像を形成する第1画像形成処理と、第1画像形成処理に要した処理時間に基づき、全てのページ単位データに対応するラスタ画像を形成するのに必要な時間である画像形成処理予想時間を予測する画像形成時間予測処理と、全てのページ単位データに対応するラスタ画像を印刷装置で印刷するのに必要な時間である印刷処理予想時間を予測する印刷時間予測処理と、画像形成処理予想時間と、印刷処理予想時間とに基づき、印刷装置に印刷動作を開始させる印刷開始タイミングを決定する印刷タイミング決定処理と、全てのページ単位データのうちの、第1画像形成処理でラスタ画像を形成した一部のページ単位データを除くページ単位データに対し、それぞれのページ単位データに対応するラスタ画像を形成する第2画像形成処理と、全てのページ単位データに対応するラスタ画像を印刷する印刷動作を、少なくとも印刷タイミング決定処理で決定した印刷開始タイミング以降のタイミングで、印刷装置に開始させる印刷実行処理とを印刷制御部に実行させ、印刷タイミング決定処理は、少なくとも、全てのページ単位データに対する印刷動作の終了が第2画像形成処理の終了よりも後になるように、印刷開始タイミングを決定する。
【0013】
印刷制御部は、例えば、一又は複数のコンピュータを有する。このプログラムは、例えばCD−ROM等の記録媒体に記録された状態で提供され、印刷制御部を構成する少なくとも一のコンピュータにインストールされる。印刷制御部が複数のコンピュータを有する場合、このプログラムは、これらのコンピュータに、印刷制御部で行う各処理を行わせる。このプログラムは、印刷制御部の一又は一部のコンピュータにインストールされてもよい。この場合、このプログラムをインストールされたコンピュータは、例えば、プログラムに応じて他のコンピュータを制御することにより、他のコンピュータと共に、印刷制御部の各処理を行う。
【0014】
画像形成時間予測処理は、例えば、第2画像形成処理に要する時間を、画像形成処理予想時間として予測する。例えば、画像形成時間予測処理は、第1画像形成処理において画像形成処理を行ったページ単位データ以外の残りのページ単位データに対応するラスタ画像を形成するのに必要な時間を、画像形成処理予想時間として予測する。画像形成時間予測処理は、例えば一定の余裕分を見込んで、画像形成処理予想時間を予測してもよい。尚、第2画像形成処理は、第1画像形成処理でラスタ画像を形成したページ単位データに対しても、再度ラスタ画像を形成してもよい。
【0015】
第1画像形成処理及び第2画像形成処理は、例えば、ページ単位データに対応して印刷装置が印刷するラスタ画像を形成し、そのラスタ画像を示すラスタ出力データを、印刷装置が解釈可能なプリンタ記述言語に変換する。このラスタ出力データは、例えば、ページ単位データとして入力される画像形成処理の入力画像を印刷装置の解像度に合わせてラスタライズし、印刷装置の色再現特性に合わせてカラー変換したデータである。印刷実行処理は、例えば、第1画像形成処理の出力データであるプリンタ記述言語のデータを印刷装置へ送信することにより、印刷装置に印刷動作を開始させる。また、印刷動作を開始させた後、印刷実行処理は、各ページ単位データに対応するラスタ画像から変換されたプリンタ記述言語のデータを順次印刷装置へ送信することにより、全てのページ単位データに対応するラスタ画像を、印刷装置に印刷させる。
【0016】
このように構成した場合、例えば、印刷処理予想時間及び画像形成処理予想時間に応じて印刷開始タイミングを決定できる。そのため、このように構成すれば、例えば、適切なタイミングで、印刷装置に印刷動作を行わせることができる。これにより、印刷動作の停止が生じにくい方法で、印刷装置を適切に制御できる。また、例えば、印刷開始タイミングの制御を行わない場合に印刷装置が印刷処理中に印刷動作を停止するか否かを、事前に適切に判断できる。
【0017】
ここで、例えば画像形成処理予想時間が印刷処理予想時間よりも短く、印刷開始タイミングを調整しなくても画像形成処理が間に合わない事態が発生しない場合、印刷タイミング決定処理は、第2画像形成処理の開始に応じて印刷動作を開始させるタイミングを印刷開始タイミングに設定する。このように構成すれば、例えば、第2画像形成処理と並行して印刷装置に印刷動作を行わせることができる。また、これにより、印刷開始タイミングを遅延させなくても印刷動作が停止しないで済む場合に、より短い時間内に印刷を終了させることが可能になる。
【0018】
また、例えば画像形成処理予想時間が印刷処理予想時間よりも長く、印刷開始タイミングを調整しないと画像形成処理が間に合わない事態が発生する場合、印刷タイミング決定処理は、第2画像形成処理の開始以降のタイミングを、印刷開始タイミングに設定する。この場合、印刷タイミング決定処理は、少なくとも画像形成処理予想時間と印刷処理予想時間との時間差分、第2画像形成処理の開始よりも、印刷開始タイミングを遅らせる。印刷タイミング決定処理は、例えば、印刷動作を停止させることなく連続的に全てのページ単位データに対する印刷動作を印刷装置が行えるように、印刷開始タイミングを決定する。
【0019】
このように構成すれば、画像形成処理と印刷動作とを適切に並列処理することが可能になる。そのため、トータルでの印刷所要時間を適切に短縮できる。また、これにより、例えば、印刷装置の稼働率を大きく向上させることができる。
【0020】
更には、このように構成すれば、例えば、印刷開始タイミングの調整を行わないと印刷装置が印刷処理中に印刷動作を停止する場合において、画像形成処理を適切に先行して実行させることができる。これにより、例えば、印刷動作を停止しなくて済む程度に画像形成処理の結果が滞留するまで印刷動作の開始を遅延させ、その後、残りのページ単位データ分の画像形成処理と、印刷処理とを並列実行させることができる。印刷実行処理は、例えば第2画像形成処理の完了後に、印刷動作を開始させてもよい。
【0021】
尚、例えば画像形成処理予想時間が印刷処理予想時間よりも長い場合、印刷タイミング決定処理は、画像形成処理に要する時間が印刷に要する時間よりも長くなる旨を、例えば表示装置に表示してもよい。この場合、印刷実行処理は、例えばオペレータの指示に応じて、印刷装置に印刷動作を開始させてもよい。この場合も、画像形成処理と印刷動作とを適切に並列処理できる。また、印刷動作の停止が生じにくい方法で、印刷装置を適切に制御できる。
【0022】
印刷装置は、例えば、シングルパス方式で印刷を行うインクジェットプリンタである。このような印刷装置は、高速な印刷が可能であるため、単に画像形成処理と印刷動作を並行して行おうとすると、画像形成処理の速度を印刷速度に追従させることが困難になる。そのため、この場合、従来公知の方法では、画像形成処理と印刷動作との並列処理は、特に困難である。これに対し、構成1のように構成すれば、画像形成処理と印刷動作とを適切に並列処理することが可能になる。
【0023】
また、印刷装置は、例えば大判の媒体へ高解像度の印刷を行う大判プリンタであってもよい。この場合、画像形成処理に要する時間が大きくなる。そのため、この場合も、従来公知の方法では、画像形成処理と印刷動作との並列処理は困難になる。これに対しても、構成1のように構成すれば、画像形成処理と印刷動作とを適切に並列処理することが可能になる。
【0024】
また、印刷装置は、例えば、印刷動作の前又は後に媒体に対する加工等が行われる環境で使用されてもよい。この加工は、例えば、印刷動作と同期して行われる工程である。このような工程としては、例えば、書籍、新聞等の印刷を行う場合に印刷後に行う媒体の断裁、折り、製本等が考えられる。また、例えばIDカード等の印刷を行う場合に印刷後に行うID番号の識別及びデータベースへの登録等が考えられる。このような場合、印刷動作とその前又は後の工程とを同期させる必要があるため、タクトタイムを一定にすることが特に望まれる。これに対し、構成1のように構成すれば、例えば、印刷動作の停止を防ぐことにより、適切にタクトタイムを一定にできる。
【0025】
(構成2)画像形成時間予測処理は、少なくとも第2画像形成処理においてラスタ画像が形成されるページ単位データのそれぞれについて、当該ページ単位データに対応するラスタ画像を形成する画像形成処理が完了する時間を更に予測し、印刷時間予測処理は、少なくとも第2画像形成処理においてラスタ画像が形成されるページ単位データのそれぞれについて、当該ページ単位データに対応する印刷が開始されるまでの時間を更に予測し、印刷タイミング決定処理は、画像形成時間予測処理及び印刷時間予測処理の予測結果に基づき、少なくとも第2画像形成処理においてラスタ画像が形成されるページ単位データのそれぞれについて、当該ページ単位データに対応する印刷が開始される前に当該ページ単位データに対応する画像形成処理が完了するように、印刷開始タイミングを決定する。印刷時間予測処理は、例えば、それぞれのページ単位データに対応する印刷が開始されるまでの時間として、途中で印刷を中止することなく連続的に印刷を行った場合の時間を予測する。このように構成すれば、印刷開始タイミングをより適切に決定できる。
【0026】
(構成3)第2画像形成処理による画像形成処理の完了時刻、印刷動作の開始時刻、及び印刷動作の完了時刻を、画像形成処理予想時間、印刷処理予想時間、及び印刷開始タイミングに基づいて予測し、表示装置へ表示する予測時刻表示処理を印刷制御部に更に実行させる。このように構成すれば、例えば、第1画像形成処理の完了時点で、各処理が完了するタイミングをオペレータに適切に通知できる。
【0027】
(構成4)第2画像形成処理は、全てのページ単位データに対応するラスタ画像を形成するまでの間に、その時点までに画像形成処理に要した処理時間に基づき、画像形成処理予想時間を再計算する。
【0028】
このように構成すれば、例えば、より精度の高い画像形成処理予想時間を求めることができる。第2画像形成処理が画像形成処理予想時間を再計算した場合、プログラムは、例えば、印刷制御部に、表示時刻更新処理を行わせる。表示時刻更新処理において、印刷制御部は、例えば、再計算された画像形成処理予想時間に応じて、表示装置に表示される各時刻を更新する。
【0029】
(構成5)印刷制御部は、ページ単位データに対応するラスタ画像を形成する画像形成処理をそれぞれ行う複数の画像形成処理装置と、複数ページデータをページ単位データに分割し、分割したページ単位データをそれぞれの画像形成処理装置に振り分けるデータ分割装置と、印刷装置が印刷動作を行うタイミングを制御する印刷タイミング制御装置とを有し、プログラムは、ページ分割処理を、データ分割装置に実行させ、第1画像形成処理を、データ分割装置により一部のページ単位データが振り分けられる画像形成処理装置に実行させ、第2画像形成処理を、複数の画像形成処理装置に並列に実行させ、画像形成時間予測処理、印刷時間予測処理、及び印刷タイミング決定処理を印刷タイミング制御装置に実行させ、画像形成時間予測処理において、印刷タイミング制御装置は、画像形成処理装置の台数に更に基づき、画像形成処理予想時間を予測する。
【0030】
このように構成すれば、例えば、画像形成処理時間に要する時間を適切に短縮できる。また、画像形成処理装置の台数に基づいて画像形成処理予想時間を予測することにより、複数の画像形成処理装置を用いる構成に対しても、適切に印刷開始タイミングを決定できる。
【0031】
尚、複数の画像形成処理装置、データ分割装置、及び印刷タイミング制御装置は、例えば印刷制御部に設けられるコンピュータである。印刷制御部は、更に他のコンピュータを有してよい。
【0032】
(構成6)印刷システムは、複数の画像形成処理装置のそれぞれにそれぞれ対応する複数の印刷装置を備え、それぞれの画像形成処理装置は、対応する印刷装置で印刷されるラスタ画像を形成する。このように構成すれば、例えば、複数の印刷装置で分散印刷を行うことにより、全てのページに対する印刷を行うのに必要な時間を、適切に短縮できる。画像形成処理装置の台数と、印刷装置の台数との対応関係は、必ずしも1対1に限らず、例えば、1対n、n対1、m対n(m、nは、1以上の整数)であってもよい。
【0033】
尚、複数の印刷装置を用いて並列に印刷を行う場合、印刷の進行が速くなるため、印刷開始タイミングの制御を行わないとすれば、画像形成処理が間に合わない事態が生じやすくなる。また、その結果、印刷動作の停止が起こりやすくなる。これに対し、このように構成すれば、例えば、印刷動作の停止が生じにくい方法により、印刷装置をより適切に制御できる。
【0034】
(構成7)第1画像形成処理は、印刷データの先頭の一又は複数のページに対応するページ単位データに対し、ラスタ画像を形成する。このように構成すれば、例えば、画像形成時間予測処理において、画像形成処理予想時間を適切に予測できる。
【0035】
(構成8)印刷装置は、媒体がロール状に巻かれたロール状媒体を用いて印刷を行う。この印刷装置は、例えば、媒体を搬送しつつ印刷を行う。ロール状媒体を用いる場合、印刷動作を停止させると、媒体に無駄が生じることとなる。また、断裁間隔が一定にならないという問題も発生する。これに対し、このように構成すれば、例えば、印刷動作の停止を防ぐことにより、媒体の無駄を低減できる。また、断裁間隔を適切に一定に保つことができる。
【0036】
ここで、媒体を搬送しつつ印刷を行うとは、搬送を一時停止させることなく印刷を行うことである。また、この構成において、印刷装置は、例えば、シングルパス方式で印刷を行うインクジェットプリンタである。この場合、印刷装置は、ロール状媒体からの媒体の繰り出しを一定の速度で続けたまま、搬送を停止させることなく、印刷動作を行う。
【0037】
また、この場合、インクジェットヘッドのスキャン時に媒体の搬送を一時的に停止させるマルチパス方式で印刷を行うインクジェットプリンタ等と比べて、高速に媒体を搬送する。例えば、印刷装置は、数10cm〜1m/s以上の速度で媒体を搬送する。このような場合、画像形成処理が間に合わなくなって印刷動作を停止させるとしても、搬送の急停止は困難である。そのため、印刷動作を停止させないことが、特に求められる。これに対し、このように構成すれば、印刷動作の停止を適切に防ぐことができる。
【0038】
また、この構成において、印刷装置は、インクジェットヘッドの上流側のロール状媒体から媒体を繰り出し、下流側で、印刷後の媒体を巻き取る。この繰り出しから巻き取りまでの距離は、例えば1m以上(例えば1〜15m)である。この距離は、2m以上であってもよい。このような場合、繰り出しから巻き取りまでの距離が長いため、媒体に蛇行が生じやすい。そのため、印刷動作の停止・再開させると、特に、媒体の安定した搬送が困難になるおそれがある。また、蛇行により、印刷画質に影響が生じる場合がある。これに対し、このように構成すれば、印刷動作の停止を適切に防ぐことにより、媒体の蛇行を抑え、安定して媒体を搬送できる。また、蛇行による印刷画質への影響を適切に抑えることができる。
【0039】
(構成9)印刷装置は、厚物媒体に対して印刷を行う印刷装置であり、厚物媒体は、印刷装置と連結された搬送装置により、印刷装置による印刷動作と同期して搬送される。搬送装置は、例えば、厚物媒体に合わせて作成された専用の治具により、厚物媒体を搬送する。
【0040】
厚物媒体とは、例えば家電製品、自動車部品といった工業製品等の、紙やフィルム等と比べて厚みのある媒体である。厚物媒体は、紙やフィルム等と比べて重量のある非可とう性の媒体であってよい。また、厚物媒体は、例えば各種製品の形状に加工された特殊形状の媒体であってよい。例えば、厚物媒体は、例えばプラスチック、金属、又は木材等で形成された媒体であってよい。
【0041】
このような構成においては、例えば一定の時間内に一定の個数の厚物媒体に安定して印刷を行うことが望まれる。また、印刷動作の停止が生じると、例えば時間内に所定の個数の印刷を行えなくなり、工程のエラーとなる場合がある。また、その結果、搬送装置の動作も停止させることが必要になる場合がある。
【0042】
しかし、ローラ等の簡単な搬送機構で搬送できる紙やフィルム等の通常の媒体を用いる場合と比べ、厚物媒体に対して印刷を行う場合、複雑な構成の搬送装置を用いることが必要となる。そのため、一旦搬送を停止させてしまうと、例えば印刷装置と搬送装置との間の動作を同期させるタイミング制御等が必要となり、再開のための作業の負担が大きくなるおそれがある。また、その結果、トータルでの印刷所要時間の大幅な増大を招くおそれがある。
【0043】
更には、一旦搬送装置を停止させてしまうと、前後の工程にも大きな影響が生じ、多くの時間が無駄になるおそれもある。また、印刷動作が停止してしまうと、印刷不完全又は全く印刷がされない不良品等が発生しやすくなる。そのため、この場合、不良品検出用の検品装置や、人手による目視確認が必要となり、コストの増大を招くこととなる。
【0044】
これに対し、このように構成すれば、印刷動作の停止を適切に防ぐことにより、トータルでの印刷所要時間の大幅な増大を適切に防ぐことができる。また、印刷動作の停止により不良品が発生することを適切に防ぐことができる。
【0045】
(構成10)印刷装置による印刷動作の制御を行う印刷制御方法であって、複数のページからなる印刷データである複数ページデータをページ単位の印刷データであるページ単位データに分割することにより、複数ページデータの各ページにそれぞれが対応する複数のページ単位データを生成するページ分割段階と、ページ単位データに対応して印刷装置が印刷するラスタ画像を形成することにより、ページ分割段階で生成する全てのページ単位データのうちの、一部のページ単位データに対応するラスタ画像を形成する第1画像形成段階と、第1画像形成段階の実行に要した時間に基づき、全てのページ単位データに対応するラスタ画像を形成するのに必要な時間である画像形成処理予想時間を予測する画像形成時間予測段階と、全てのページ単位データに対応するラスタ画像を印刷装置で印刷するのに必要な時間である印刷処理予想時間を予測する印刷時間予測段階と、画像形成処理予想時間と、印刷処理予想時間とに基づき、印刷装置に印刷動作を開始させる印刷開始タイミングを決定する印刷タイミング決定段階と、全てのページ単位データのうちの、第1画像形成処理でラスタ画像を形成した一部のページ単位データを除くページ単位データに対し、それぞれのページ単位データに対応するラスタ画像を形成する第2画像形成段階と、全てのページ単位データに対応するラスタ画像を印刷する印刷動作を、少なくとも印刷タイミング決定処理で決定した印刷開始タイミング以降のタイミングで、印刷装置に開始させる印刷実行段階とを備え、印刷タイミング決定段階は、少なくとも、全てのページ単位データに対する印刷動作の終了が第2画像形成段階の終了よりも後になるように、印刷開始タイミングを決定する。このようにすれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【0046】
(構成11)印刷装置と、印刷装置による印刷動作の制御を行う印刷制御部とを備える印刷システムであって、印刷制御部は、複数のページからなる印刷データである複数ページデータをページ単位の印刷データであるページ単位データに分割することにより、複数ページデータの各ページにそれぞれが対応する複数のページ単位データを生成するページ分割処理部と、ページ単位データに対応して印刷装置が印刷するラスタ画像を形成することにより、ページ分割処理部が生成する全てのページ単位データのうちの、一部のページ単位データに対応するラスタ画像を形成する第1画像形成処理部と、第1画像形成処理部が行った処理に要した処理時間に基づき、全てのページ単位データに対応するラスタ画像を形成するのに必要な時間である画像形成処理予想時間を予測する画像形成時間予測処理部と、全てのページ単位データに対応するラスタ画像を印刷装置で印刷するのに必要な時間である印刷処理予想時間を予測する印刷時間予測処理部と、画像形成処理予想時間と、印刷処理予想時間とに基づき、印刷装置に印刷動作を開始させる印刷開始タイミングを決定する印刷タイミング決定処理部と、全てのページ単位データのうちの、第1画像形成処理部でラスタ画像を形成した一部のページ単位データを除くページ単位データに対し、それぞれのページ単位データに対応するラスタ画像を形成する第2画像形成処理部と、全てのページ単位データに対応するラスタ画像を印刷する印刷動作を、少なくとも印刷タイミング決定処理部が決定した印刷開始タイミング以降のタイミングで、印刷装置に開始させる印刷実行処理部とを有し、印刷タイミング決定処理部は、少なくとも、全てのページ単位データに対する印刷動作の終了が第2画像形成処理部による画像形成処理の終了よりも後になるように、印刷開始タイミングを決定する。このように構成すれば、例えば、構成1と同様の効果を得ることができる。
【0047】
尚、印刷制御部は、例えば、一又は複数のコンピュータを有する。この一又は複数のコンピュータは、例えば所定のプログラムに応じて、印刷制御部として動作する。この場合、例えばそれぞれのコンピュータのCPUが、プログラムに応じて、印刷制御部の各部として動作する。
【発明の効果】
【0048】
本発明によれば、例えば、画像形成処理と印刷動作とを適切に並列処理することが可能になる。また、印刷動作の停止が生じにくい方法で、印刷装置を適切に制御できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0049】
以下、本発明に係る実施形態を、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の一実施形態に係るプログラムを使用する印刷システム10の構成の一例を示す。印刷システム10は、複数の印刷装置14a〜14dにより分散印刷を行う印刷システムであり、印刷動作を制御する印刷制御部12と、複数の印刷装置14a〜14dとを備える。印刷制御部12は、印刷タイミング制御装置102、データ分割装置104、複数の画像形成処理装置106a〜106d、及びプリンタ端末108を有する。また、本例において、印刷タイミング制御装置102、データ分割装置104、各画像形成処理装置106a〜106d、及びプリンタ端末108は、それぞれ独立のコンピュータ(PC)である。
【0050】
尚、例えば、プリンタ端末108は、それぞれが一又は複数の印刷装置14を受け持つ複数台のPCで構成されてもよい。このように構成すれば、例えば印刷装置の台数が多い場合や、印刷装置が非常に高速な場合等において、一台のPCだけでは処理が間に合わない場合にも、適切に処理を行うことができる。
【0051】
印刷タイミング制御装置102は、印刷装置14a〜14dが印刷動作を行うタイミングを制御するコンピュータである。本例において、印刷タイミング制御装置102は、印刷制御部12全体の動作を制御するシステム管理PCの機能を有しており、例えば予めインストールされたプログラムに従い、印刷制御部12における他のコンピュータであるデータ分割装置104、画像形成処理装置106a〜106d、及びプリンタ端末108の動作を制御する。また、印刷タイミング制御装置102には、例えば、印刷制御部12において表示装置となるモニタが接続される。このモニタは、例えば、印刷実行時において、画像形成処理や印刷動作の進捗状況を表示する。
【0052】
データ分割装置104は、印刷データの分割及び振り分けを行うコンピュータ(データ管理PC)である。本例において、データ分割装置104は、複数のページからなる印刷データである複数ページデータ202を受け取り、受け取った複数ページデータ202を、ページ単位の印刷データであるページ単位データ204に分割する。これにより、データ分割装置104は、複数ページデータ202の各ページにそれぞれが対応する複数のページ単位データ204を生成する。そして、データ分割装置104は、生成した複数のページ単位データ204を、複数の画像形成処理装置106a〜106dのそれぞれに振り分ける。
【0053】
ここで、データ分割装置104は、例えば複数ページデータ202を受け取った時点で、全部でnページからなる複数ページデータ202を、n個のページ単位データ204に分割する。そして、例えば印刷タイミング制御装置102からの転送指示に応じて、画像形成処理装置106a〜106dのそれぞれに、ページ単位データ204を順番に振り分ける。例えば、データ分割装置104は、複数ページデータ202の第1〜4ページをそれぞれ分割した4個のページ単位データ204のそれぞれを、画像形成処理装置106a〜106dのそれぞれに振り分ける。また、複数ページデータ202の第5ページ以降を、同様に、画像形成処理装置106a〜106dのそれぞれに振り分ける。
【0054】
尚、複数ページデータ202は、例えば、印刷制御部12の外部のコンピュータ等においてアプリケーションソフトを用いて作成された印刷データである。例えば、本例において、複数ページデータ202は、複数ページを有するPDFファイルである。この場合、データ分割装置104は、複数ページデータ202を、それぞれが1ページのPDFファイルである複数のページ単位データ204に分割する。
【0055】
画像形成処理装置106a〜106dは、RIP(Raster Image Processer)処理を行うコンピュータ(RIP用PC)であり、データ分割装置104から受け取るページ単位データ204に基づく画像形成処理により、ページ単位データ204に対応して印刷装置14a〜14dが印刷するラスタ画像を形成する。複数の画像形成処理装置106a〜106dのそれぞれは、複数の印刷装置14a〜14dのそれぞれに対応して設けられており、対応する印刷装置14a〜14dが印刷するラスタ画像をそれぞれ形成する。尚、画像形成処理装置106a〜106dの台数と、印刷装置14a〜14dの台数との対応関係は、必ずしも1対1に限らず、例えば、1対n、n対1、m対n(m、nは、1以上の整数)であってもよい。
【0056】
本例において、画像形成処理装置106a〜106dは、ページ単位データ204に基づき、ラスタ画像を示す画像データである形成画像データ206をそれぞれ形成する。そして、画像形成処理装置106a〜106dは、形成した形成画像データ206を、プリンタ端末108を介して、対応する印刷装置14a〜14dへ送信する。
【0057】
尚、本例において、形成画像データ206は、印刷装置が解釈可能なプリンタ記述言語のデータである。画像形成処理装置106a〜106dは、ページ単位データ204により入力される入力画像を印刷装置14a〜14dの解像度に合わせてラスタライズし、印刷装置14a〜14dの色再現特性に合わせてカラー変換することにより、印刷装置14a〜14dが印刷するラスタ画像を示すラスタ出力データを形成する。そして、このラスタ出力データを変換することにより、形成画像データ206を形成する。
【0058】
プリンタ端末108は、印刷装置14a〜14dの動作を制御する端末となるコンピュータ(印刷PC)であり、画像形成処理装置106a〜106dから受け取る形成画像データ206を印刷装置14a〜14dへ送信することにより、印刷装置14a〜14dに印刷動作を実行させる。本例において、プリンタ端末108は、印刷動作の開始を指示する印刷指示を印刷タイミング制御装置102から受け取り、印刷指示に応じて、印刷装置14a〜14dに、印刷動作を開始させる。また、プリンタ端末108は、印刷装置14a〜14dの状態を適宜確認し、ステータス報告により、印刷装置14a〜14dの状態を、印刷タイミング制御装置102に通知する。
【0059】
尚、例えばプリンタ端末108が複数のPCで構成される場合、印刷タイミング制御装置102は、例えば、これらの複数のPCに対して一斉に、印刷指示を送信する。また、プリンタ端末108を構成する各PCは、例えば、それぞれが受け持つ印刷装置14のステータスを報告する。
【0060】
複数の印刷装置14a〜14dは、並列に印刷動作を行う分散印刷を実行可能な印刷装置である。印刷装置14a〜14dは、プリンタ端末108を介して画像形成処理装置106a〜106dから形成画像データ206を受け取り、形成画像データ206が示すラスタ画像を印刷する。また、本例において、複数の印刷装置14a〜14dは、例えば同じ性能の印刷装置である。複数の印刷装置14a〜14dとしては、同一機種の印刷装置を好適に用いることができる。
【0061】
ここで、本例において、印刷装置14a〜14dは、例えば、シングルパス方式で印刷を行うインクジェットプリンタであり、例えば、媒体がロール状に巻かれたロール状媒体を用いて印刷を行う。印刷装置14a〜14dは、インクジェットヘッドの上流側のロール状媒体から媒体を繰り出し、下流側で、印刷後の媒体を巻き取る。この繰り出しから巻き取りまでの距離は、例えば1m以上(例えば1〜15m)である。この距離は、2m以上であってもよい。また、印刷装置14a〜14dは、例えば数10cm〜1m/s以上の速度で媒体を搬送し、ロール状媒体からの媒体の繰り出しを一定の速度で続けたまま、搬送を停止させることなく、印刷動作を行う。
【0062】
また、印刷装置14a〜14dは、ロール状媒体以外の媒体を用いてもよい。例えば、印刷装置14a〜14dは、例えばプラスチック、金属、又は木材等で形成された厚物媒体に対して印刷を行うインクジェットプリンタであってもよい。この厚物媒体は、例えば家電製品、自動車部品といった工業製品等であってよい。また、厚物媒体は、例えば、プラスチックのカード等であってもよい。これら場合、印刷の対象物である厚物媒体は、例えば、印刷装置14a〜14dと連結された搬送装置により、印刷装置14a〜14dによる印刷動作と同期して搬送される。この搬送装置は、例えば、厚物媒体に合わせて作成された専用の治具により、厚物媒体を搬送する。
【0063】
また、印刷装置14a〜14dは、インクジェットヘッドをスキャンさせて印刷を行うマルチパス方式のインクジェットプリンタであってもよい。印刷装置14a〜14dは、例えば大判の媒体へ高解像度の印刷を行う大判プリンタであってもよい。また、印刷装置14a〜14dは、例えば、印刷動作の前又は後に媒体に対する加工等が行われる環境で使用されてもよい。
【0064】
尚、印刷システム10は、例えば、複数の印刷装置14a〜14dに代えて、一の印刷装置14を備えてもよい。また、印刷制御部12は、複数の画像形成処理装置106a〜106dに代えて、一の画像形成処理装置106を有してもよい。また、印刷タイミング制御装置102、データ分割装置104、画像形成処理装置106a〜106d、及びプリンタ端末108のうちの、複数の機能を、一のコンピュータにより実現してもよい。
【0065】
以下、印刷制御部12の動作について説明する。本例において、印刷制御部12は、印刷制御部12における少なくともいずれかのコンピュータにインストールされるプログラムに応じて、後に詳しく説明するページ分割処理、第1画像形成処理、画像形成時間予測処理、印刷時間予測処理、印刷タイミング決定処理、第2画像形成処理、印刷実行処理等の処理を行う。
【0066】
このプログラムは、例えば、CD−ROM等の記録媒体に記録された状態で提供され、例えば印刷タイミング制御装置102にインストールされる。この場合、印刷タイミング制御装置102は、このプログラムに応じてデータ分割装置104、画像形成処理装置106a〜106d、及びプリンタ端末108を制御することにより、これらのコンピュータと共に、上記の各処理を行う。例えば、印刷タイミング制御装置102は、プログラムに応じて、ページ分割処理を、データ分割装置104に実行させる。第1画像形成処理及び第2画像形成処理を、画像形成処理装置106a〜106dに実行させる。画像形成時間予測処理、印刷時間予測処理、及び印刷タイミング決定処理を印刷タイミング制御装置102自身に実行させる。また、印刷実行処理を、プリンタ端末108に実行させる。
【0067】
図2は、印刷制御部12の動作の一例を示すフローチャートである。本例において、印刷制御部12は、例えば、複数ページデータ202がデータ分割装置104へ送信される
のに応じて、動作を開始する。複数ページデータ202を受け取るのに応じて、データ分割装置104は、複数ページデータ202を、複数のページ単位データ204に分割する(ページ分割処理:S102)。
【0068】
その後、例えばオペレータから受ける開始指示に応じて、印刷タイミング制御装置102は、データの転送指示を、データ分割装置104へ送信する。そして、この転送指示に応じて、データ分割装置104は、分割したページ単位データ204を、複数の画像形成処理装置106a〜106dのそれぞれに振り分ける。
【0069】
続いて、画像形成処理装置106a〜106dが、複数ページデータ202の先頭の一又は複数のページに対応するページ単位データ204に対して、先行して画像形成処理を行う(第1画像形成処理S104)。この場合、例えば、複数の画像形成処理装置106a〜106dのうちの、上記先頭の一又は複数のページに対応するページ単位データ204が振り分けられた装置のみが、画像形成処理を行う。例えば、先頭の1ページに対応するページ単位データ204に対してのみ第1画像形成処理を行う場合、このページ単位データ204が振り分けられる一の画像形成処理装置106aのみが、画像形成処理を行う。
【0070】
そして、第1画像形成処理の完了後、印刷タイミング制御装置102は、第1画像形成処理に要した処理時間、及び画像形成処理装置の台数に基づき、複数ページデータ202の全てのページに対応する全ての複数ページデータ202に対する画像形成処理を行うのに必要な時間である画像形成処理予想時間を予測する(画像形成時間予測処理S106)。画像形成時間予測処理において、印刷タイミング制御装置102は、例えば、第1画像形成処理において画像形成処理を行ったページ単位データ204以外の残りのページ単位データ204に対応するラスタ画像を形成するのに必要な時間を、画像形成処理予想時間として予測する。また、本例の画像形成時間予測処理において、印刷タイミング制御装置102は、更に、全てのページ単位データ204のそれぞれについて、各ページ単位データ204に対応する画像形成処理が完了する時間を予測する。
【0071】
尚、印刷タイミング制御装置102は、一定の余裕分を見込んで、画像形成処理予想時間を予測することが好ましい。また、第1画像形成処理において、複数のページ単位データ204に対して画像形成処理を行った場合、第1画像形成処理に要した処理時間とは、例えば、各ページ単位データ204に対する画像形成処理に要した処理時間を平均した平均処理時間である。
【0072】
画像形成時間予測処理に続いて、印刷タイミング制御装置102は、全てのページ単位データ204に対応するラスタ画像を印刷装置14a〜14dで印刷するのに必要な時間である印刷処理予想時間を予測する(印刷時間予測処理S108)。印刷時間予測処理において、印刷タイミング制御装置102は、例えば、予め設定された1ページあたりの印刷所要時間、複数ページデータ202のページ数、及び印刷装置14a〜14dの台数に基づき、印刷処理予想時間を予測する。また、本例の印刷時間予測処理において、印刷タイミング制御装置102は、更に、第1画像形成処理で画像形成処理が行われなかったページ単位データ204のそれぞれについて、各ページ単位データ204に対応する印刷が開始されるまでの時間を予測する。
【0073】
尚、印刷タイミング制御装置102は、例えば、複数ページデータ202の全てのページに対する印刷を行うのに必要な最短時間を、印刷処理予想時間として予測する。この最短時間は、例えば、途中で印刷動作を停止することなく全てのページを連続的に印刷する場合に必要な時間である。
【0074】
続いて、印刷タイミング制御装置102は、画像形成処理予想時間と、印刷処理予想時間とに基づき、印刷装置14a〜14dに印刷動作を開始させる印刷開始タイミングを決定する(印刷タイミング決定処理S110)。印刷タイミング決定処理において、印刷タイミング制御装置102は、少なくとも、全てのページ単位データ204に対する印刷動作の終了が印刷制御部12における次の処理である第2画像形成処理の終了よりも後になるように、印刷開始タイミングを決定する。また、本例において、印刷タイミング制御装置102は、画像形成時間予測処理及び印刷時間予測処理での予測結果に基づき、各ページ単位データ204について、そのページ単位データ204に対応する印刷が開始される前にそのページ単位データ204に対応する画像形成処理が完了するように、印刷開始タイミングを決定する。これにより、印刷タイミング制御装置102は、例えば、印刷動作を停止させることなく連続的に全てのページ単位データ204に対する印刷動作を印刷装置14a〜14dが行えるように、印刷開始タイミングを決定する。
【0075】
例えば、画像形成処理予想時間が印刷処理予想時間よりも短く、印刷開始タイミングを調整しなくても画像形成処理が間に合わない事態が発生しない場合、印刷タイミング制御装置102は、第2画像形成処理の開始に応じて直ちに印刷動作を開始させるタイミングを、印刷開始タイミングに設定する。これにより、印刷タイミング制御装置102は、画像形成処理装置106a〜106dによる画像形成処理の進行を待たずに印刷動作を開始させるタイミングを、印刷開始タイミングに設定する。
【0076】
また、画像形成処理予想時間が印刷処理予想時間よりも長い場合等の、印刷開始タイミングを調整しないと画像形成処理が間に合わない事態が発生する場合、印刷タイミング制御装置102は、少なくとも画像形成処理予想時間と印刷処理予想時間との時間差分、第2画像形成処理の開始よりも、印刷開始タイミングを遅らせる。これにより、印刷タイミング制御装置102は、画像形成処理装置106a〜106dによる画像形成処理の進行を待って印刷動作を開始するタイミングを、印刷開始タイミングに設定する。
【0077】
尚、本例において、印刷タイミング制御装置102は、例えば、表示装置であるモニタへの表示により、決定した印刷開始タイミングを、オペレータに通知する。例えば、印刷タイミング制御装置102は、予測時刻表示処理を行い、画像形成処理の完了時刻、印刷動作の開始時刻、及び印刷動作の完了時刻を、画像形成処理予想時間、印刷処理予想時間、及び印刷開始タイミングに基づいて予測し、モニタへ表示する。この予測時刻表示処理において、印刷タイミング制御装置102は、例えば、画像形成処理及び印刷処理について、進捗状況、開始時刻、及び終了時刻等を表示することにより、印刷開始タイミングを通知してもよい。本例によれば、例えば、第1画像形成処理の完了時点で、各処理が完了するタイミングをオペレータに適切に通知できる。
【0078】
印刷タイミング決定処理に続いて、例えば印刷タイミング制御装置102の指示に応じて、複数の画像形成処理装置106a〜106dは、残りのページ単位データ204に対する画像形成処理を開始する(第2画像形成処理S112)。残りのページ単位データ204とは、例えば、複数ページデータ202の全ページに対応する全てのページ単位データ204のうち、第1画像形成処理でラスタ画像を形成した一部のページ単位データ204を除くページ単位データ204である。複数の画像形成処理装置106a〜106dは、並列に画像形成処理を行うことにより、これらのページ単位データ204に対応する形成画像データ206を形成する。そして、形成した形成画像データ206を、プリンタ端末108へ送信する。
【0079】
また、本例の第2画像形成処理においては、全てのページ単位データに対応するラスタ画像が形成されるまでの間に、例えば印刷タイミング制御装置102が、その時点までに画像形成処理に要した処理時間に基づき、画像形成処理予想時間を再計算する。そして、再計算を行った場合、その結果に基づき、印刷タイミング制御装置102は、例えば表示時刻更新処理を行い、モニタに表示される各時刻を更新する。本例によれば、例えば、より精度の高い画像形成処理予想時間を求めることができる。
【0080】
尚、画像形成処理装置106a〜106dは、印刷タイミング制御装置102による画像形成時間予測処理、印刷時間予測処理、及び印刷タイミング決定処理と並行して、第2画像形成処理を行ってもよい。この場合、画像形成処理装置106a〜106dは、例えば、第1画像形成処理に続けて、第2画像形成処理を開始する。このように構成すれば、例えば、より短時間で画像形成処理を終了させることができる。
【0081】
第2画像形成処理の開始後、印刷タイミング決定処理において決定した印刷開始タイミングに達するまでの間、印刷制御部12は、印刷動作を開始しない(S114:No)。また、この間、画像形成処理装置106a〜106dは、第2画像形成処理を続ける。これにより、第2画像形成処理の開始よりも印刷開始タイミングを遅らせる場合、印刷動作の開始までの間に、画像形成処理の結果を滞留させることができる。
【0082】
そして、印刷開始タイミングに達した場合(S114:Yes)、例えば印刷タイミング制御装置102の指示に応じて、プリンタ端末108は、印刷装置14a〜14dに、印刷動作を開始させる(印刷実行処理S116)。また、印刷動作を開始させた後、プリンタ端末108は、画像形成処理装置106a〜106dから受け取る形成画像データ206を、印刷装置14a〜14dへ順次送信する。これにより、印刷装置14a〜14dは、印刷動作を、少なくとも印刷タイミング決定処理で決定した印刷開始タイミング以降のタイミングで開始する。また、プリンタ端末108を介して画像形成処理装置106a〜106dから受け取る形成画像データ206に基づき、印刷装置14a〜14dは、
全てのページ単位データ204に対応するラスタ画像を順次印刷する。
【0083】
尚、プリンタ端末108は、例えばオペレータから受け取る印刷指示に応じて、印刷開始タイミング以降のタイミングで、印刷装置14a〜14dに、印刷動作を開始させてもよい。この場合、印刷タイミング制御装置102は、印刷開始タイミングを示す情報等をモニタ等に表示することにより、印刷開始タイミング以降のタイミングで、オペレータに印刷指示を与えさせる。印刷開始タイミングを示す情報としては、例えば画像形成処理予想時間及び印刷処理予想時間を表示することが考えられる。また、印刷開始タイミングを遅延させる場合、画像形成処理に要する時間が印刷に要する時間よりも長くなる旨を表示してもよい。
【0084】
以上のように、本例によれば、例えば、印刷処理予想時間及び画像形成処理予想時間に応じて印刷開始タイミングを決定することにより、適切なタイミングで、印刷装置14a〜14dに印刷動作を行わせることができる。これにより、例えば、画像形成処理と印刷動作とを適切に並列処理することが可能になり、トータルでの印刷所要時間を適切に短縮できる。また、印刷動作の停止が生じにくい方法で、印刷装置14a〜14dを適切に制御できる。更には、印刷動作の停止を防ぐことにより、例えば、媒体を一定間隔で正確に搬送しつつ、一定の印刷速度を保ったまま印刷を行うことが可能になる。
【0085】
図3〜図6は、画像形成処理及び印刷処理の進捗状況の一例を示す。図3及び図4は、印刷開始タイミングを遅延させない場合についての進捗状況の一例を示す。図3は、画像形成処理及び印刷処理のタイミングの一例を示す。
【0086】
尚、以下の説明においては、説明を簡単にするために、一の印刷装置14により印刷処理を行う場合について説明する。また、複数ページデータ202が12ページからなるデータである場合について説明する。複数ページデータ202は、例えば数100〜数千(例えば100ページ以上、更には、1000ページ以上)のページからなるデータであってもよい。このような場合、本例の効果はより顕著となる。
【0087】
本例において、複数の画像形成処理装置106a〜106dは、複数ページデータ202から分割されたページ単位データ204に基づき、画像形成処理を行う。そして、画像形成処理装置106a〜106dが行う画像形成処理であるRIP処理に要する時間は、ページ単位データ204のデータサイズ、データの複雑性、及び印刷解像度等の条件により異なる。そのため、例えばデータサイズが小さい場合、データが単純である場合、又は印刷解像度が低い場合等には、第1画像形成処理に要する処理時間が短くなる。
【0088】
また、全てのページに対する画像形成処理に要する時間は、通常、1ページあたりの画像形成処理に要する処理時間に比例する。そのため、例えば第1画像形成処理に要する処理時間が短い場合、画像形成時間予測処理が予測する画像形成処理予想時間も短くなる。そして、画像形成処理予想時間が十分に短い場合、図3に示したように、画像形成処理予想時間が印刷処理予想時間よりも短くなる。
【0089】
例えば、図3に示した場合において、画像形成処理装置106a〜106dは、第1画像形成処理により、最初の4ページ分に対する画像形成処理を行う。そして、第1画像形成処理が完了したタイミングAにおいて、印刷タイミング制御装置102は、画像形成処理予想時間及び印刷処理予想時間を予測する。
【0090】
ここで、画像形成処理予想時間と印刷処理予想時間との関係が図3のような場合、第2画像形成処理と印刷処理とを同時に開始して並列実行しても、画像形成処理が間に合わなくなることはない。そのため、この場合、印刷制御部12は、第1画像形成処理が完了次第、印刷開始タイミングを遅延させることなく、印刷装置14に印刷動作を開始させる。これにより、印刷システム10は、第1画像形成処理が完了次第、即座に、第2画像形成処理と印刷処理とを並列実行する。この場合、画像形成処理装置106a〜106dは、図中のタイミングCにおいて、第2画像形成処理を完了する。また、タイミングDにおいて、印刷処理を完了する。尚、図中のタイミングBは、途中の第8ページまで画像形成処理を完了したタイミングである。
【0091】
図からわかるように、本例によれば、画像形成処理と印刷処理とを適切に並列実行し、より短い時間内に印刷を終了させることが可能になる。また、画像形成処理が間に合わなくなることはない。そのため、本例によれば、トータルでの印刷所要時間を適切に短縮できる。
【0092】
図4は、印刷制御部12の表示装置への表示内容の一例を示す図であり、図3に示したタイミングA〜Dにおける表示内容の一例を示す。この表示装置は、例えば印刷タイミング制御装置102のモニタである。
【0093】
本例において、印刷制御部12は、例えば、画像形成処理の状況、及び印刷処理の状況について、進捗状況、開始時刻、及び完了時刻を、表示装置に表示する。また、進捗状況の表示として、プログレスバーと、処理済ページ数とによる表示を行う。更には、本例において、印刷制御部12は、これらの時刻について、画像形成処理及び印刷動作の進捗状況に応じて、随時再計算を行う。そして、再計算の結果に応じて表示を更新する。これにより、印刷制御部12は、より高い精度で、時刻の再表示を行う。
【0094】
図4(a)は、タイミングAにおける表示内容の一例を示す。この表示は、第1画像形成処理の完了時点での進捗表示であり、第1画像形成処理により第4ページまでの画像形成処理が完了し、印刷処理が未だ開始されていない状態を示す。また、図3に示した場合においては、第2画像形成処理と印刷動作とを同時に開始する。この場合、印刷制御部12は、画像形成処理の開始時刻として、第1画像形成処理の開始時刻を表示する。また、印刷処理の開始時刻として、印刷処理と同時に開始される第2画像形成処理の開始時刻を表示する。印刷処理の開始時刻は、第1画像形成処理に要する時間分だけ画像形成処理の開始時刻より遅れた時刻であり、第1画像形成処理の終了時刻とぼぼ同じ時刻である。更に、画像形成処理予想時間及び印刷処理予想時間に基づき、画像形成処理及び印刷処理の完了の予測時刻を表示する。
【0095】
尚、本例において、印刷制御部12は、その時点までの完了していない処理の完了時間を、時刻の後に”頃”を付記して示す。これにより、その時刻が、その時点までの処理の進捗状況・経過時間に基づく予測時刻であることを示す。また、その時点で処理が完了している場合、印刷制御部12は、”頃”を付記せずに、その処理の実際の完了時刻を示す。
【0096】
図4(b)は、タイミングBにおける表示内容の一例を示す。この表示は、第2画像形成処理により第8ページまでの画像形成処理が完了し、第2ページまでの印刷処理が完了している状態での進捗表示である。このタイミングにおいて、印刷制御部12は、例えば図4(a)と同様の各時刻を表示する。また、第2画像形成処理及び印刷動作の進捗状況に応じて予測時刻の再計算を行った場合、印刷制御部12は、再計算後の予測時刻を表示する。
【0097】
図4(c)は、タイミングCにおける表示内容の一例を示す。この表示は、第2画像形成処理が完了し、第4ページまでの印刷処理が完了している状態での進捗表示である。このタイミングにおいては、画像形成処理が完了しているため、印刷制御部12は、画像形成処理の実際の完了時刻を示す。また、印刷処理の完了時刻としては、例えば図4(a)、(b)と同様に、予測時刻を表示する。また、印刷動作の進捗状況に応じて予測時刻の再計算を行った場合には、再計算後の予測時刻を表示する。
【0098】
図4(d)は、タイミングDにおける表示内容の一例を示す。この表示は、印刷動作の完了時点での進捗表示である。このタイミングにおいては、画像形成処理及び印刷処理の両方が完了しているため、印刷制御部12は、両者について、実際の完了時刻を示す。
【0099】
以上のように、本例の印刷制御部12は、各タイミングにおいて、画像形成処理及び印刷処理の進捗表示を行う。本例によれば、例えば、印刷開始前に、印刷完了予想時刻を適切に判断できる。また、画像形成処理済のページ数及び印刷済のページ数の表示により、進捗状況や処理完了までの残り時間を適切に判断できる。
【0100】
図5及び図6は、印刷開始タイミングを遅延させる場合についての進捗状況の一例を示す。図5は、画像形成処理及び印刷処理のタイミングの一例を示す。図5に示したタイミングA〜Dは、図3におけるタイミングA〜Dと同様のタイミングである。
【0101】
例えば、ページ単位データ204のデータサイズが大きい場合、データが複雑である場合、又は印刷解像度が高い場合等には、画像形成処理の要する処理時間が長くなる。この場合、例えば第1画像形成処理に要する処理時間が長くなり、画像形成時間予測処理が予測する画像形成処理予想時間も長くなる。また、画像形成処理予想時間の長さによっては、画像形成処理予想時間が印刷処理予想時間よりも長くなる。この場合、第2画像形成処理の直後に印刷動作を開始したとすれば、画像形成処理が間に合わなくなり、いずれかのタイミングで、印刷動作の停止が生じることとなる。また、全体では画像形成処理予想時間が印刷処理予想時間よりも短い場合であっても、各ページ単位データ204に対応する画像形成処理が間に合わなくなる場合もある。このような場合も、いずれかのタイミングで、印刷動作の停止が生じることとなる。
【0102】
このような場合、本例において、印刷制御部12は、印刷開始タイミングを遅延させることにより、画像形成処理を先行して実行させる。これにより、例えば、印刷動作を停止しなくて済む程度に画像形成処理の結果が滞留するまで、印刷装置14の印刷動作の開始を遅延させる。
【0103】
例えば、図5に示すように、印刷制御部12は、第1画像形成処理の完了のタイミングAの後直ちに、第2画像形成処理を開始する。そして、その一方で、印刷開始タイミングを、タイミングAよりも遅らせる。また、印刷開始タイミング以降は、画像形成処理と印刷処理とを並列実行する。これにより、例えば第5ページ以降の印刷が開始されるタイミングを、第5〜8ページまでに対応する画像形成処理が完了するタイミングBよりも後に設定する。また、例えば第9ページ以降の印刷が開始されるタイミングを、第9〜12ページまでに対応する画像形成処理が完了するタイミングCよりも後に設定する。
【0104】
ここで、図5に示した場合において、仮に、印刷タイミングを遅延させないとすれば、例えば第9ページ等の画像形成処理が間に合わなくなり、途中で印刷動作を停止させることが必要となる。また、その結果、上記で説明した様々な問題が生じるおそれがある。
【0105】
これに対し、本例によれば、例えば、印刷開始タイミングを必要なだけ遅延させることにより、画像形成処理と印刷処理とを適切に並列実行できる。また、これにより、例えば、画像形成処理と印刷処理の終了時刻をほぼ一致させ、トータルでの所要時間を適切に短縮できる。また、画像形成処理が間に合わなくなることを適切に防ぐことができる。これにより、例えば、印刷動作の停止が生じにくい方法で、印刷装置14を適切に制御できる。更には、画像形成処理と印刷処理との並列実行を可能にすることにより、例えば、印刷システム全体の稼働率を適切に向上させることができる。
【0106】
図6は、印刷制御部12の表示装置への表示内容の一例を示す図であり、図5に示したタイミングA〜Dにおける表示内容の一例を示す。尚、以下に説明する点を除き、図6の表示内容は、図4の表示内容と同様である。
【0107】
図6(a)は、タイミングAにおける表示内容の一例を示す。この表示は、第1画像形成処理の完了時点での進捗表示であり、第1画像形成処理により第4ページまでの画像形成処理が完了し、印刷処理が未だ開始されていない状態を示す。尚、図5に示した場合においては、印刷開始タイミングを遅延するため、印刷動作の開始時刻として、予想時刻を示している。
【0108】
図6(b)は、タイミングBにおける表示内容の一例を示す。この表示は、第2画像形成処理により第8ページまでの画像形成処理が完了し、第3ページまでの印刷処理が完了している状態での進捗表示である。図6(c)は、タイミングCにおける表示内容の一例を示す。この表示は、第2画像形成処理が完了し、第8ページまでの印刷処理が完了している状態での進捗表示である。図6(d)は、タイミングDにおける表示内容の一例を示す。この表示は、印刷動作の完了時点での進捗表示である。
【0109】
以上のように、本例によれば、例えば印刷開始タイミングを遅延させる場合にも、印刷開始前に、印刷完了予想時刻を適切に判断できる。また、画像形成処理済のページ数及び印刷済のページ数の表示により、進捗状況や処理完了までの残り時間を適切に判断できる。
【0110】
以上、本発明を実施形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、例えば、印刷システムに好適に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0112】
【図1】本発明の一実施形態に係るプログラムを使用する印刷システム10の構成の一例を示す図である。
【図2】印刷制御部12の動作の一例を示すフローチャートである。
【図3】印刷開始タイミングを遅延させない場合について、画像形成処理及び印刷処理のタイミングの一例を示す図である。
【図4】印刷制御部12の表示装置への表示内容の一例を示す図である。図4(a)は、タイミングAにおける表示内容の一例を示す。図4(b)は、タイミングBにおける表示内容の一例を示す。図4(c)は、タイミングCにおける表示内容の一例を示す。図4(d)は、タイミングDにおける表示内容の一例を示す。
【図5】印刷開始タイミングを遅延させる場合について、画像形成処理及び印刷処理のタイミングの一例を示す図である。
【図6】印刷制御部12の表示装置への表示内容の一例を示す図である。図6(a)は、タイミングAにおける表示内容の一例を示す。図6(b)は、タイミングBにおける表示内容の一例を示す。図6(c)は、タイミングCにおける表示内容の一例を示す。図6(d)は、タイミングDにおける表示内容の一例を示す。
【符号の説明】
【0113】
10・・・印刷システム、12・・・印刷制御部、14、14a、14b、14c、14d・・・印刷装置、102・・・印刷タイミング制御装置、104・・・データ分割装置、106a、106b、106c、106d・・・画像形成処理装置、108・・・プリンタ端末、202・・・複数ページデータ、204・・・ページ単位データ、206・・・形成画像データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
印刷装置と、前記印刷装置による印刷動作を制御する印刷制御部とを備える印刷システムにおいて、前記印刷制御部の動作を制御するプログラムであって、
複数のページからなる印刷データである複数ページデータをページ単位の印刷データであるページ単位データに分割することにより、前記複数ページデータの各ページにそれぞれが対応する複数のページ単位データを生成するページ分割処理と、
前記ページ単位データに対応して前記印刷装置が印刷するラスタ画像を形成することにより、前記ページ分割処理で生成する全ての前記ページ単位データのうちの、一部の前記ページ単位データに対応する前記ラスタ画像を形成する第1画像形成処理と、
前記第1画像形成処理に要した処理時間に基づき、前記全てのページ単位データに対応する前記ラスタ画像を形成するのに必要な時間である画像形成処理予想時間を予測する画像形成時間予測処理と、
前記全てのページ単位データに対応する前記ラスタ画像を前記印刷装置で印刷するのに必要な時間である印刷処理予想時間を予測する印刷時間予測処理と、
前記画像形成処理予想時間と、前記印刷処理予想時間とに基づき、前記印刷装置に印刷動作を開始させる印刷開始タイミングを決定する印刷タイミング決定処理と、
前記全てのページ単位データのうちの、前記第1画像形成処理で前記ラスタ画像を形成した前記一部のページ単位データを除く前記ページ単位データに対し、それぞれの前記ページ単位データに対応する前記ラスタ画像を形成する第2画像形成処理と、
前記全てのページ単位データに対応する前記ラスタ画像を印刷する印刷動作を、少なくとも前記印刷タイミング決定処理で決定した前記印刷開始タイミング以降のタイミングで、前記印刷装置に開始させる印刷実行処理と
を前記印刷制御部に実行させ、
前記印刷タイミング決定処理は、少なくとも、前記全てのページ単位データに対する印刷動作の終了が前記第2画像形成処理の終了よりも後になるように、前記印刷開始タイミングを決定することを特徴とするプログラム。
【請求項2】
前記画像形成時間予測処理は、少なくとも前記第2画像形成処理において前記ラスタ画像が形成される前記ページ単位データのそれぞれについて、当該ページ単位データに対応する前記ラスタ画像を形成する画像形成処理が完了する時間を更に予測し、
前記印刷時間予測処理は、少なくとも前記第2画像形成処理において前記ラスタ画像が形成される前記ページ単位データのそれぞれについて、当該ページ単位データに対応する印刷が開始されるまでの時間を更に予測し、
前記印刷タイミング決定処理は、前記画像形成時間予測処理及び前記印刷時間予測処理の予測結果に基づき、少なくとも前記第2画像形成処理において前記ラスタ画像が形成される前記ページ単位データのそれぞれについて、当該ページ単位データに対応する印刷が開始される前に当該ページ単位データに対応する前記画像形成処理が完了するように、前記印刷開始タイミングを決定することを特徴とする請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記第2画像形成処理による画像形成処理の完了時刻、前記印刷動作の開始時刻、及び前記印刷動作の完了時刻を、前記画像形成処理予想時間、前記印刷処理予想時間、及び前記印刷開始タイミングに基づいて予測し、表示装置へ表示する予測時刻表示処理を前記印刷制御部に更に実行させることを特徴とする請求項1又は2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記第2画像形成処理は、全ての前記ページ単位データに対応する前記ラスタ画像を形成するまでの間に、その時点までに画像形成処理に要した処理時間に基づき、前記画像形成処理予想時間を再計算することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のプログラム。
【請求項5】
前記印刷制御部は、
前記ページ単位データに対応する前記ラスタ画像を形成する画像形成処理をそれぞれ行う複数の画像形成処理装置と、
前記複数ページデータを前記ページ単位データに分割し、分割した前記ページ単位データをそれぞれの前記画像形成処理装置に振り分けるデータ分割装置と、
前記印刷装置が印刷動作を行うタイミングを制御する印刷タイミング制御装置と
を有し、
前記プログラムは、
前記ページ分割処理を、前記データ分割装置に実行させ、
前記第1画像形成処理を、前記データ分割装置により前記一部のページ単位データが振り分けられる前記画像形成処理装置に実行させ、
前記第2画像形成処理を、前記複数の画像形成処理装置に並列に実行させ、
前記画像形成時間予測処理、前記印刷時間予測処理、及び前記印刷タイミング決定処理を前記印刷タイミング制御装置に実行させ、
前記画像形成時間予測処理において、前記印刷タイミング制御装置は、前記画像形成処理装置の台数に更に基づき、前記画像形成処理予想時間を予測することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載のプログラム。
【請求項6】
前記印刷システムは、前記複数の画像形成処理装置のそれぞれにそれぞれ対応する複数の前記印刷装置を備え、
それぞれの前記画像形成処理装置は、対応する前記印刷装置で印刷される前記ラスタ画像を形成することを特徴とする請求項5に記載のプログラム。
【請求項7】
前記第1画像形成処理は、前記印刷データの先頭の一又は複数のページに対応する前記ページ単位データに対し、前記ラスタ画像を形成することを特徴とする請求項1から6のいずれかに記載のプログラム。
【請求項8】
前記印刷装置は、媒体がロール状に巻かれたロール状媒体を用いて印刷を行うことを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のプログラム。
【請求項9】
前記印刷装置は、厚物媒体に対して印刷を行う印刷装置であり、
前記厚物媒体は、前記印刷装置と連結された搬送装置により、前記印刷装置による印刷動作と同期して搬送されることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載のプログラム。
【請求項10】
印刷装置による印刷動作の制御を行う印刷制御方法であって、
複数のページからなる印刷データである複数ページデータをページ単位の印刷データであるページ単位データに分割することにより、前記複数ページデータの各ページにそれぞれが対応する複数のページ単位データを生成するページ分割段階と、
前記ページ単位データに対応して前記印刷装置が印刷するラスタ画像を形成することにより、前記ページ分割段階で生成する全ての前記ページ単位データのうちの、一部の前記ページ単位データに対応する前記ラスタ画像を形成する第1画像形成段階と、
前記第1画像形成段階の実行に要した時間に基づき、前記全てのページ単位データに対応する前記ラスタ画像を形成するのに必要な時間である画像形成処理予想時間を予測する画像形成時間予測段階と、
前記全てのページ単位データに対応する前記ラスタ画像を前記印刷装置で印刷するのに必要な時間である印刷処理予想時間を予測する印刷時間予測段階と、
前記画像形成処理予想時間と、前記印刷処理予想時間とに基づき、前記印刷装置に印刷動作を開始させる印刷開始タイミングを決定する印刷タイミング決定段階と、
前記全てのページ単位データのうちの、前記第1画像形成処理で前記ラスタ画像を形成した前記一部のページ単位データを除く前記ページ単位データに対し、それぞれの前記ページ単位データに対応する前記ラスタ画像を形成する第2画像形成段階と、
前記全てのページ単位データに対応する前記ラスタ画像を印刷する印刷動作を、少なくとも前記印刷タイミング決定処理で決定した前記印刷開始タイミング以降のタイミングで、前記印刷装置に開始させる印刷実行段階と
を備え、
前記印刷タイミング決定段階は、少なくとも、前記全てのページ単位データに対する印刷動作の終了が前記第2画像形成段階の終了よりも後になるように、前記印刷開始タイミングを決定することを特徴とする印刷制御方法。
【請求項11】
印刷装置と、前記印刷装置による印刷動作の制御を行う印刷制御部とを備える印刷システムであって、
前記印刷制御部は、
複数のページからなる印刷データである複数ページデータをページ単位の印刷データであるページ単位データに分割することにより、前記複数ページデータの各ページにそれぞれが対応する複数のページ単位データを生成するページ分割処理部と、
前記ページ単位データに対応して前記印刷装置が印刷するラスタ画像を形成することにより、前記ページ分割処理部が生成する全ての前記ページ単位データのうちの、一部の前記ページ単位データに対応する前記ラスタ画像を形成する第1画像形成処理部と、
前記第1画像形成処理部が行った処理に要した処理時間に基づき、前記全てのページ単位データに対応する前記ラスタ画像を形成するのに必要な時間である画像形成処理予想時間を予測する画像形成時間予測処理部と、
前記全てのページ単位データに対応する前記ラスタ画像を前記印刷装置で印刷するのに必要な時間である印刷処理予想時間を予測する印刷時間予測処理部と、
前記画像形成処理予想時間と、前記印刷処理予想時間とに基づき、前記印刷装置に印刷動作を開始させる印刷開始タイミングを決定する印刷タイミング決定処理部と、
前記全てのページ単位データのうちの、前記第1画像形成処理部で前記ラスタ画像を形成した前記一部のページ単位データを除く前記ページ単位データに対し、それぞれの前記ページ単位データに対応する前記ラスタ画像を形成する第2画像形成処理部と、
前記全てのページ単位データに対応する前記ラスタ画像を印刷する印刷動作を、少なくとも前記印刷タイミング決定処理部が決定した前記印刷開始タイミング以降のタイミングで、前記印刷装置に開始させる印刷実行処理部と
を有し、
前記印刷タイミング決定処理部は、少なくとも、前記全てのページ単位データに対する印刷動作の終了が前記第2画像形成処理部による画像形成処理の終了よりも後になるように、前記印刷開始タイミングを決定することを特徴とする印刷システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−20579(P2010−20579A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−181000(P2008−181000)
【出願日】平成20年7月11日(2008.7.11)
【出願人】(000137823)株式会社ミマキエンジニアリング (437)
【Fターム(参考)】