説明

プログラム書込システム

【課題】 作業者の工数を増加させることなく、きわめて容易に、プログラム書込時に主電源回路をオン状態にするプログラム書込システムを提供すること。
【解決手段】 電気機器1と、電気機器1にプログラムを書き込むプログラム送信装置2と、プログラム送信装置2からのプログラムを電気機器1に供給する書込治具3とを備える。電気機器1は、プログラムを書き換え可能なマイコン14と、主電源回路12と、待機電源回路と12、リレースイッチ24Aをオン/オフすることにより主電源回路12をオン/オフ制御する切換手段と、書込治具3と接続される第1の接続手段16とを有する。書込治具3は、第1の接続手段16と接続される第2の接続手段26を有する。第1の接続手段16と第2の接続手段26とが接続された際に、待機電源回路11からの電圧が切換手段に供給され、リレースイッチ24Aをオン状態にし、主電源回路12をオン状態にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気機器のマイコンにプログラムを書き込むプログラム書込システムに関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、従来のプログラム書込システム300を示す概略回路図である。プログラム書込システム300は、プログラム送信装置302から送信されるプログラムのデータを、電気機器301内のマイクロコンピュータ(以下、マイコンとする)314に書き込む。プログラム書込時には、電気機器301は待機(スタンバイ)状態であるので、主電源回路312はオフ状態であり、待機電源回路311が入力電圧を整流および平滑してマイコン314に供給する。マイコン314は、待機電源回路311から供給された電圧によって、プログラム書込を実行する。
【0003】
また、近年、電気機器の省電力化が要求され、マイコンにスタンバイ状態における消費電力を低減する低消費電力モードが設けられるようになっている。これに伴い、待機電源回路311はマイコン314が低消費電力モードで動作できる程度の電圧を供給すれば十分であるので、待機電源回路311のトランス317がかなり小型化されている。しかしながら、マイコン314へのプログラム書込時には、マイコン314に大きな電圧が必要であり、小型化されたトランス317を有する待機電源回路311では、プログラム書込時に必要な電圧をマイコン314に供給できないという問題が生じる。
【0004】
この問題を解決するために、マイコン314へのプログラム書込時に、外部の電源回路を電気機器301に接続して、マイコン314に電圧を供給する方法が提案されている。しかし、この方法では、専用のコネクタを電気機器301内に設ける必要があり、コストが増加する。さらに、専用のコネクタを外部の電源回路に接続する必要があるので、作業工数が増加する。
【0005】
また、プログラム書込時に、主電源回路312をオン状態にし、主電源回路312からの電圧をマイコン314に供給する方法が提案されている。この場合、電気機器301が待機状態であり、マイコン314が低消費電力モードであるので、マイコン314は、トランジスタ325をオン状態にし(リレースイッチ324Aをオン状態にし)主電源回路312をオン状態に制御するための信号を主電源制御端子bから出力することができない。すなわち、マイコン314は、格納されるプログラムに基づいて動作を実行するので、プログラム書込時は動作を実行できない。そのため、機械的なスイッチをトランジスタ325に並列に接続して、機械的なスイッチを作業者の手作業でオン状態にすることによって、(リレースイッチ324をオン状態にし、)主電源回路312をオン状態にし、主電源回路312からの電圧をマイコン314に供給する方法が提案されている。しかし、この方法では、機械的なスイッチを設ける必要がありコストが増加し、かつ、スイッチを手作業でオン状態にするので作業工数が増加するという問題がある。
【0006】
また、ショートピンを使って、トランジスタ325のコレクタ−エミッタ間を短絡することによって、主電源回路312をオン状態にし、主電源回路からの電圧をマイコンに供給する方法が提案されている。この方法では、工数が増加すると共に、プログラム書込終了後にショートピンが取り除かれずに、誤って電気機器内に残ってしまう可能性がある。
【0007】
【特許文献1】特開平8−203288号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記従来の課題を解決するためになされたものであり、その目的は、作業者の工数を増加させることなく、プログラム書込時に主電源回路をオン状態にし、主電源回路からの電圧をマイコンに供給するプログラム書込システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の好ましい実施形態によるプログラム書込システムは、電気機器と、該電気機器にプログラムを送信するプログラム送信装置と、該電気機器と該プログラム送信装置との間に接続される書込治具とを備える。該電気機器は、プログラムを書き換え可能な制御手段と、入力電圧が与えられ主回路および該制御手段に電圧を供給する主電源回路と、入力電圧が与えられ該制御手段に電圧を供給する待機電源回路と、スイッチをオフ状態にすることにより該主電源回路をオフ状態にし、該スイッチをオン状態にすることにより該主電源回路をオン状態にする切換手段と、該書込治具と接続される第1の接続手段とを有する。該書込治具は、該第1の接続手段と接続される第2の接続手段を有する。該プログラム書込システムは、該第1の接続手段と該第2の接続手段とが接続された際に、該待機電源回路からの電圧を該切換手段に供給して、該スイッチをオン状態にする主電源制御手段をさらに備える。
【0010】
電気機器を書込治具に接続する(第1の接続手段を第2の接続手段に接続する)と、待機電源回路から電圧が切換手段に供給され、切換手段のスイッチ(例えば、リレースイッチ)がオン状態になる。スイッチがオン状態になると主電源回路がオン状態になるので、主電源回路からの電圧を制御手段に供給できるようになる。制御手段は主電源回路からの電圧を受けてプログラムの書き込みを実行する。プログラム書込作業時に、書込治具はプログラム送信装置に常時接続されている状態であるので、作業者は、単に電気機器を書込治具に接続するだけで、主電源回路をオン状態にすることができる。つまり、書込治具を介して接続するだけであるので、図3の場合に比べて作業工数は増加しない。従って、作業工数を増加させることなく、プログラム書込時に主電源回路をオン状態にすることができる。さらに、主電源回路をオン状態にするために電気機器内に機械的なスイッチまたはショートピンを使用しないので、作業者が機械的なスイッチをオフにするのを忘れたり、ショートピンを取り除くことを忘れたりするという問題が生じない。さらに機械的なスイッチを電気機器内に設ける必要がないので、コストが増加しない。さらに、主電源回路をオン状態にするために外部電源回路を使用しないので、専用コネクタを設ける必要がない。従って、コストが増加せず、作業工数が増加しない。
【0011】
好ましい実施形態においては、上記切換手段は上記スイッチをオンオフ制御するトランジスタを含む。上記主電源制御手段は、上記第1の接続手段が含む第1の電圧供給端子と第1の切換制御端子、および、上記第2の接続手段が含む第2の電圧供給端子と第2の切換制御端子を有する。該第1の電圧供給端子は、上記待機電源回路および上記主電源回路の出力に接続され、該第1の切換制御端子は該トランジスタの制御電極に接続され、該第2の電圧供給端子は該第2切換制御端子に接続されている。該主電源制御手段は、該第1の電圧供給端子と該第2の電圧供給端子とを接続し、かつ、該第1の切換制御端子と該第2の切換制御端子とを接続することにより、該待機電源回路からの電圧を該切換手段に供給する。
【0012】
第1の電圧供給端子と第2の電圧供給端子とを接続し、かつ、第1の切換制御端子と第2の切換制御端子とを接続することにより、第1の電圧供給端子と第1の切換制御端子とが短絡される。第1の電圧供給端子は待機電源回路の出力に接続され、第1の切換制御端子はトランジスタの制御電極に接続されているので、トランジスタの制御電極に待機電源回路からの電圧が供給される。トランジスタは、制御電極に電圧が供給されるとオン状態になり、スイッチ(リレースイッチ)がオン状態になり、主電源回路をオン状態にすることができる。従って、第1の接続手段と第2の接続手段とを接続することにより、主電源回路をオン状態にすることができる。
【0013】
好ましい実施形態においては、上記書込治具は、上記プログラム送信装置に接続される第3の接続手段をさらに有し、上記プログラム送信装置は、該第3の接続手段に接続される第4の接続手段を有する。
【0014】
書込治具が第3の接続手段を有し、プログラム送信装置が第4の接続手段を有するので、書込治具は、必要に応じて(プログラムを書き込む電気機器に対応して)、プログラム送信装置に接続したり、取り外したりすることができる。従って、待機電源回路からの電圧のみで制御手段にプログラムを書き込める電気機器の場合は、書込治具をプログラム送信装置から取り外し、電気機器をプログラム送信装置に直接接続する。これにより、主電源回路をオフの状態で制御手段にプログラムを書き込むことができる。従って、待機電源回路からの電圧でマイコンへのプログラム書込を実行できる場合、主電源回路をオン状態にしないので、無駄な電力消費を低減できる。
【0015】
本発明の別の局面においてはプログラム書込可能な電気機器が提供され得る。この電気機器は、プログラムを送信するプログラム送信装置に接続される書込治具に接続可能な第1の接続手段と、プログラムを書き換え可能な制御手段と、入力電圧が与えられ主回路および該制御手段に電圧を供給する主電源回路と、入力電圧が与えられ該制御手段に電圧を供給する待機電源回路と、スイッチと該スイッチをオンオフ制御するトランジスタとを含み、該スイッチをオフ状態にすることにより該主電源回路をオフ状態にし、該スイッチをオン状態にすることにより該主電源回路をオン状態にする切換手段とを有する。該第1の接続手段は、該待機電源回路および該主電源回路の出力に接続された第1の電圧供給端子、および、該トランジスタの制御電極に接続された第2の切換制御端子を含む。該電気機器は、該第1の接続手段が該書込治具に接続された際に、該電圧供給端子と該切換制御端子とが短絡され、該待機電源回路からの電圧を該トランジスタの制御電極に供給することにより、該スイッチをオン状態にする。
【発明の効果】
【0016】
プログラム書込時に、第1の接続手段と第2の接続手段とを接続することにより、待機電源回路からの電圧を切換手段に供給し、主電源回路をオン状態にすることができる。従って、待機電源回路からはマイコンにプログラムを書き込むための電圧を供給できない場合に、主電源回路を自動的にオン状態にし主電源回路からの電圧でプログラムを書き込むことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の好ましい実施形態について、図面を参照して具体的に説明するが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。図1は、本発明の好ましい実施形態によるプログラム書込システム100を説明するための概略回路図である。プログラム書込システム100は、電気機器1と、電気機器1にプログラムを送信するプログラム送信装置2と、書込治具3とを備える。書込治具3はプログラム送信装置2に接続されており、プログラム書込時に、電気機器1が書込治具3に接続されることによって、電気機器1内の主電源回路12をオン状態にすることができる。
【0018】
電気機器1は、待機電源回路11、主電源回路12、マイコン用電源回路13、制御手段14、切換手段15および第1の接続手段16を備える。
【0019】
待機電源回路11は、主に待機状態(主電源回路12がオフ状態で、待機電源回路11がオン状態)の時に、制御手段(例えばマイコン)14および/または図示しないマイコン14の周辺回路(例えば、リモコン信号受信回路および表示回路等)に電圧を供給する回路である。待機電源回路11は、トランス17および整流回路18を備えている。トランス17は、その一次側巻線が商用交流電源に接続され(入力交流電圧が与えられ)、一次巻線と二次巻線との巻数比に基づいて入力交流電圧を所定の電圧に変換して整流回路18に与える。整流回路18は、トランス17からの電圧を整流および平滑して直流電圧を生成する。整流回路18は、全波整流回路D1、コンデンサC1および抵抗R1を含む。
【0020】
主電源回路12は、図示しない主回路(電源供給先の回路であり例えばアンプ回路等)およびマイコン14に電圧を供給する回路である。主電源回路12は、トランス19および整流回路20を備えている。トランス19は、商用交流電源に接続され(入力交流電圧が与えられ)、一次巻線と二次巻線との巻数比に基づいて、入力交流電圧を所定の電圧に変換して整流回路20に与える。整流回路20は、トランス19からの電圧を整流および平滑して、直流電圧を生成する。整流回路20は、全波整流回路D2およびコンデンサC2を含む。
【0021】
マイコン用電源回路13は、待機電源回路11および/または主電源回路12からの電圧を受けて、マイコン14に電圧を与える回路である。マイコン用電源回路13は、逆電流防止用のダイオードD3、D4、コンデンサC3および安定化回路21を備える。コンデンサC3にはマイコン14に与えるための電圧が充電される。待機時には待機電源回路11のみからコンデンサC3に電圧が充電され、通常動作時(主電源回路3がオン状態の時)には待機電源回路11および主電源回路12からコンデンサC3に電圧が充電される。安定化回路21は、コンデンサC3からの電圧が与えられ、マイコン14の動作に必要な安定化直流電圧を生成する。安定化回路21の出力端は、マイコン14の電圧入力端子aに接続されている。
【0022】
制御手段14は、待機電源回路11および/または主電源回路12から電圧が供給され、電気機器1全体を制御するものであり、代表的にはマイコン(micro computer)が採用され得る。マイコン14は、CPU(中央演算処理装置)22、フラッシュEEPROM23、電圧入力端子a、主電源制御端子b、および一または複数のプログラム書込端子cを有する。CPU22は、EEPROM23に格納されたプログラムを実行することにより電気機器1の各部(主回路、待機電源回路11および主電源回路12等)を制御する。EEPROM23は、書込治具3を介してプログラム送信装置2から送信されたプログラムを格納する。電圧入力端子aは、マイコン用電源回路13からマイコン14を動作するために必要な電圧が与えられる端子である。主電源制御端子bは、主電源回路12のオン状態/オフ状態を制御するための(すなわち、後述のリレースイッチ24Aをオン/オフするための)信号を出力する端子である。プログラム書込端子cは、EEPROM23に書き込むプログラムが供給される端子である。
【0023】
切換手段15は、主電源回路12のオン状態およびオフ状態を切り換えるものである。切換手段15は、代表的には、リレー回路24およびリレードライブ用のトランジスタ25を有する。リレー回路24は、リレースイッチ24Aおよび巻線24Bを含む。リレースイッチ24Aは、商用交流電源とトランス19との間に接続される。主電源回路12はリレースイッチ24Aの後段に接続され、待機電源回路11はリレースイッチ24Aの前段に接続されているので、リレースイッチ24Aをオフ状態にすると、主電源回路12のみがオフ状態になる。巻線24Bの一端は整流回路18の出力端に接続され、他端はトランジスタ25のコレクタに接続されている。トランジスタ25は、ベースに与えられる電圧に基づいて、リレー回路24をオン/オフ制御する素子である。トランジスタ25は、ベース(制御電極)が抵抗R2を介してマイコン14の主電源制御端子bおよび後述する第1の切換制御端子16Bに接続され、エミッタが接地電位GNDに接続されている。
【0024】
第1の接続手段16は、書込治具3(後述する第2の接続手段26)に接続され、書込治具3を介してプログラム送信装置2からプログラムのデータが供給される。さらに、第1の接続手段16は、書込治具3を介してプログラム送信装置2に電圧を供給する。第1の接続手段16は、代表的にはコネクタであり、第1の電圧供給端子16Aおよび第1の切換制御端子16Bを少なくとも含む。第1の接続手段16は、さらに、一または複数のプログラム入力端子16C、および接地端子16Dを含む。第1の電圧供給端子16Aは、安定化回路21の出力端に接続され(すなわち、待機電源回路11および主電源回路12の出力端に接続され)、プログラム書込時にマイコン14へ供給される電圧を、プログラム送信装置2にも供給する端子である。第1の切換制御端子16Bは、抵抗R2を介してトランジスタ25のべースに接続されており、待機電源回路11からの電圧をトランジスタ25のベースに供給することにより、リレー回路24をオン/オフ制御する端子である。プログラム書込端子16Cは、プログラムのデータが供給される端子であり、プログラムの内容に応じて任意のものが設けられる。接地端子16Dは、電気機器1の接地電位GNDに接続される端子である。
【0025】
書込治具3は、電気機器1からの電圧をプログラム送信装置2に供給し、かつ、プログラム送信装置2からのプログラムデータを電気機器1に供給する。書込治具3は、第2の接続手段26および第3の接続手段27を有する。第2の接続手段26は、プログラム書込時に、第1の接続手段16に接続される。第2の接続手段26は、第1の接続手段16から電圧が入力され、かつ、第1の接続手段16にプログラムのデータを出力する。第2の接続手段26は、代表的にはコネクタであり、第1の接続手段16の各端子16A〜16Dに対応する端子を含む。つまり、第2の接続手段26は、第2の電圧供給端子26Aおよび第2の切換制御端子26Bを少なくとも含む(詳細は、主電源制御手段として後述する)。第2の接続手段26は、さらに、一または複数のプログラム出力端子26Cおよび接地端子26Dを含む。プログラム書込時に、プログラム出力端子26Cはプログラム入力端子16Cに接続され、接地端子26Dは接地端子16Dにそれぞれ接続される。
【0026】
第3の接続手段27は、プログラム書込時にプログラム送信装置2に接続されている。第3の接続手段27は、プログラム送信装置2からプログラムのデータが入力され、第2の接続手段26に出力する。さらに、第3の接続手段27は、第2の接続手段26からの電圧をプログラム送信装置2に出力する。第3の接続手段27は、代表的にはコネクタであり、第3の電圧供給端子27A、一または複数のプログラム入力端子27Cおよび接地端子27Dを含む。第3の電圧供給端子27Aは第2の電圧供給端子26Aに、プログラム入力端子27Cはプログラム出力端子26Cに、接地端子27Dは接地端子26Dにそれぞれ書込治具3内で接続されている。
【0027】
電気機器1および書込治具3は、主電源制御手段を有する。主電源制御手段は、マイコン14(主電源制御端子b)からの信号を使用せずに、切換手段15のリレースイッチ24Aをオン状態にする。つまり、主電源制御手段は、第1の接続手段16と第2の接続手段26とが接続された際に、待機電源回路11からの電圧を切換手段15に供給して、リレースイッチ24Aをオン状態にすることにより、主電源回路12をオン状態に制御する。主電源制御手段は、第1の電圧供給端子16A、第1の切換制御端子16B、第2の電圧供給端子26Aおよび第2の切換制御端子26Bを含む。第2の電圧供給端子26Aと第2の切換制御端子26Bとは書込治具3内部で接続されている。従って、プログラム書込時に、第1の電圧供給端子16Aと第2の電圧供給端子26Aとを接続し、第1の切換制御端子16Bと第2の切換制御端子26Bとを接続することにより、第1の電圧供給端子16Aと第1の切換制御端子16Bとが短絡される。すなわち、安定化回路21(待機電源回路11)の出力とトランジスタ25のベースとが短絡される。従って、待機電源回路11からの電圧がトランジスタ25のベースに供給されることになる。
【0028】
プログラム送信装置2は、マイコン29のRAM31内に格納されているプログラムのデータを、書込治具3を介して電気機器1に送信するものであり、一般的にフラッシュライターと呼ばれている。プログラム送信装置2は、第4の接続手段28を有する。第4の接続手段28は、プログラム書込時に、第3の接続手段27に接続されている。第4の接続手段28は第3の接続手段27から電圧が入力され、第3の接続手段27にプログラムのデータを出力する。第4の接続手段28は、代表的にはコネクタであり、第3の接続手段27の各端子27A、27C、27Dに対応する端子を含む。つまり、第4の接続手段28は、第4の電圧入力端子28A、一または複数のプログラム出力端子28Cおよび接地端子28Dを含む。第4の電圧供給端子28Aは第3の電圧供給端子27Aに接続され、プログラム出力端子28Cはプログラム入力端子27Cに接続され、接地端子28Dは接地端子27Dにそれぞれ接続される。操作部32は、プログラムのデータを送信開始する指示を作業者が入力するためのものであり、操作ボタン等である。マイコン29内のCPU30は、プログラム書込時に、プログラム出力端子28Cを介して電気機器1のCPU22と通信する。
【0029】
以上の構成を有するプログラム書込システム100についてその動作を説明する。プログラム書込時には、書込治具3はプログラム送信装置2に接続された状態である。そのため、作業者は、待機状態にある電気機器1を書込治具3に接続したあと、プログラム送信装置2の操作部32を操作することによって、電気機器1のEEPROM23にプログラムを書き込むことができる。
【0030】
電気機器1を書込治具3に接続する前は、リレースイッチ24Aがオフ状態であり、主電源回路12はオフ状態である。ここで、第1の電圧供給端子16Aを第2の電圧供給端子26Aに接続し、第1の切換制御端子16Bを第2の切換制御端子26Bに接続する(プログラム入力端子16Cをプログラム出力端子26Cに接続し、接地端子16Dを接地端子26Dに接続する)。第2の電圧供給端子26Aと第2の切換制御端子26Bとは書込治具3内で接続されているので、第1の電圧供給端子16Aと第1の切換制御端子16Bとが短絡される。そのため、待機電源回路11の出力は、ダイオードD4、安定化回路21、第1の電圧供給端子16A、第2の電圧供給端子26A、第2の切換制御端子26B、第1の切換制御端子16Bおよび抵抗R2を介してトランジスタ25のベースに接続される。従って、待機電源回路11からの電圧がトランジスタ25のべースに供給される。トランジスタ25は、ベースに待機電源回路11からの電圧が供給されると、ベース−エミッタ間電圧がトランジスタ25の導通開始電圧以上になり、オン状態になる。トランジスタ25がオン状態になると、待機電源回路11からリレー回路24の巻き線24Bおよびトランジスタ25を介して接地電位GNDに電流が流れ、リレースイッチ24Aがオン状態になる。それにより、主電源回路12はオン状態になり、安定化回路21を介してマイコン14に電圧を供給するようになる。従って、待機状態である電気機器1が書込治具3に接続されることにより、自動的に主電源回路12をオン状態にし、マイコン14はプログラム書込を実行するために必要な電圧を得ることができる。
【0031】
主電源回路12および待機電源回路11からの電圧は、さらに、第1の電圧供給端子16A、第2の電圧供給端子26A、第3の電圧供給端子27Aおよび第4の電圧供給端子28Aを介して、プログラム送信装置2に供給される。プログラム送信装置2は、当該電圧によって動作され、プログラム出力端子28Cからプログラムのデータを出力する。このプログラムデータは、プログラム入力端子27C,プログラム出力端子26Cおよびプログラム入力端子16Cを介して、マイコン14のプログラム書込端子cに供給され、EEPROM23内に書き込まれる。
【0032】
なお、電気機器1が書込治具3に接続されている間、トランジスタ25のベースには切換制御端子16Bを介して電圧が与えられるので、主電源回路12はオン状態を維持する。一方、電気機器1を書込治具3から取り外すと、トランジスタ25のベースに電圧が供給されなくなるので、リレー回路24の巻き線24Bに流れる電流が遮断される。その結果、リレースイッチ24はオフ状態になり、主電源回路12はオフ状態になる。以上のように、作業者は単に電気機器1を書込治具3に接続するだけで、他の作業を要することなく、主電源回路12をオン状態にし、主電源回路12からの電圧を使ってマイコン14へのプログラム書込を実行することができる。さらに、電気機器1を書込治具3から取り外すと主電源回路12がオフ状態になるので、ショートピンを使用する場合のように電気機器1内に主電源回路1をオン状態にするための器具が取り除かれずに誤って放置されるという問題を解決できる。
【0033】
次に、待機電源回路11からの電圧がプログラム書込時に必要な電圧以上であり、待機電源回路11からの電圧のみでマイコン14へのプログラム書込が可能である場合について図2を用いて説明する。つまり、主電源回路12をオフ状態のままで、EEPROM23にプログラムを書き込む場合を説明する。なお、図2の通り、電気機器1の回路構成自体は図1と同様であり(但し、待機電源回路11がプログラム書込時に必要な電圧をマイコンに供給できる)、異なるのは、書込治具3を使用せずに、電気機器1をプログラム送信装置2に直接接続することである。つまり、第1の接続手段16を第4の接続手段28に接続する。具体的には、第1の電圧供給端子16Aは第4の電圧供給端子28Aに接続され、プログラム入力端子16Cはプログラム出力端子28Cに接続され、接地端子16Dは接地端子28Dに接続される。一方、第1の切換制御端子16Bは、いずれの端子にも接続されず、開放されている。従って、第1の電圧供給端子16Aと第1の切換制御端子16Bとは短絡されない。そのため、トランジスタ25のべースには待機電源回路11から電圧が供給されず、トランジスタ25はオン状態にならない。従って、主電源回路11はオン状態にならず、待機電源回路11からの電圧のみがマイコン14およびプログラム送信装置2に供給される。
【0034】
以上のように、待機電源回路11からの電圧のみでマイコン14へのプログラム書込が可能である場合には、書込治具3を使用しないことにより、待機電源回路11からの電圧のみでプログラム書込を実行する。従って、無駄な電力消費を低減することができる。
【0035】
また、プログラム送信装置2に接続された書込治具3に、図3の従来の構成の電気機器301を接続して、プログラム書込を実行することも可能である。さらに、書込治具3をプログラム送信装置2から取り外して、プログラム送信装置2に直接、図3に示す従来の電気機器301を接続してプログラム書込を実行することもできる。これらの互換性が可能なのは、書込治具3が第3の接続手段27を有し、プログラム送信装置2が第4の接続手段28を有しているからである。
【0036】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明はこれらの実施形態には限定されない。例えば、書込治具3はプログラム送信装置2と一体であってもよい(すなわち、第3の接続手段と、第4の接続手段とを有さなくてもよい)。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、マイコンのEEPROMにプログラムを外部から書き込む様々な電気機器(例えば、TV、DVDプレーヤ、アンプ機器等のオーディオビジュアル機器等)に好適に採用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本発明の好ましい実施形態によるプログラム書込システムを示す概略回路図である。
【図2】本発明の好ましい実施形態によるプログラム書込システムを示す概略回路図である。
【図3】従来のプログラム書込システムを示す概略回路図である。
【符号の説明】
【0039】
1 電気機器
2 プログラム送信装置
3 書込治具
11 待機電源回路
12 主電源回路
14 制御手段
15 切換手段
16 第1の接続手段
26 第2の接続手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気機器と、該電気機器にプログラムを送信するプログラム送信装置と、該電気機器と該プログラム送信装置との間に接続される書込治具とを備え、
該電気機器が、プログラムを書き換え可能な制御手段と、
入力電圧が与えられ主回路および該制御手段に電圧を供給する主電源回路と、
入力電圧が与えられ該制御手段に電圧を供給する待機電源回路と、
スイッチをオフ状態にすることにより該主電源回路をオフ状態にし、該スイッチをオン状態にすることにより該主電源回路をオン状態にする切換手段と、
該書込治具と接続される第1の接続手段とを有し、
該書込治具が、該第1の接続手段と接続される第2の接続手段を有し、
該第1の接続手段と該第2の接続手段とが接続された際に、該待機電源回路からの電圧を該切換手段に供給して、該スイッチをオン状態にする主電源制御手段をさらに備える、プログラム書込システム。
【請求項2】
前記切換手段が前記スイッチをオンオフ制御するトランジスタを含み、
前記主電源制御手段が、前記第1の接続手段が含む第1の電圧供給端子と第1の切換制御端子、および、前記第2の接続手段が含む第2の電圧供給端子と第2の切換制御端子を有し、
該第1の電圧供給端子が前記待機電源回路および前記主電源回路の出力に接続され、該第1の切換制御端子が該トランジスタの制御電極に接続され、該第2の電圧供給端子が該第2切換制御端子に接続されており、
該主電源制御手段が、該第1の電圧供給端子と該第2の電圧供給端子とを接続し、かつ、該第1の切換制御端子と該第2の切換制御端子とを接続することにより、該待機電源回路からの電圧を該切換手段に供給する、請求項1に記載のプログラム書込システム。
【請求項3】
前記書込治具が、前記プログラム送信装置に接続される第3の接続手段をさらに有し、
前記プログラム送信装置が、該第3の接続手段に接続される第4の接続手段を有する、請求項1または2に記載のプログラム書込システム。
【請求項4】
プログラムを送信するプログラム送信装置に接続される書込治具に接続可能な第1の接続手段と、
プログラムを書き換え可能な制御手段と、
入力電圧が与えられ主回路および該制御手段に電圧を供給する主電源回路と、
入力電圧が与えられ該制御手段に電圧を供給する待機電源回路と、
スイッチと該スイッチをオンオフ制御するトランジスタとを含み、該スイッチをオフ状態にすることにより該主電源回路をオフ状態にし、該スイッチをオン状態にすることにより該主電源回路をオン状態にする切換手段とを有し、
該第1の接続手段が、該待機電源回路および該主電源回路の出力に接続された第1の電圧供給端子、および、該トランジスタの制御電極に接続された第2の切換制御端子を含み、
該第1の接続手段が該書込治具に接続された際に、該電圧供給端子と該切換制御端子とが短絡され、該待機電源回路からの電圧を該トランジスタの制御電極に供給することにより、該スイッチをオン状態にする、電気機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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