説明

プロシアニジンの分析方法

【課題】天然物、飲食物、医薬品及び/又は化粧品中に含まれるプロシアニジン及びフラバン−3−オール類を定量する新規な方法。
【解決手段】分析試料中に含まれるプロシアニジン(カテキンのn重合体の混合物の総称;n≧1)を定量する方法であって、a)プロシアニジン、フラバン−3−オールの分析に影響を与える夾雑物を分析試料から取り除くための、カラムを用いた前処理工程;及び、b)前記a)の前処理工程で夾雑物を取り除いた処理溶液中のプロシアニジン、フラバン−3−オール類を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分離し、そして定量する工程;を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然物、飲食物、医薬品及び/又は化粧品中に含まれるプロシアニジン及びフラバン−3−オール類を定量する方法に関するものである。
【技術背景】
【0002】
プロアントシアニジン(OPC)の効能については、ワインにも含まれている事からフレンチパラドックスの効能成分の一つといわれており(1995, Clin. Chim. Acta., 235, 207-219)、抗酸化作用、抹消循環改善作用、血液流動性改善効果、肝機能改善効果(2004, ジャパンフードサイエンス, 403, 1月号, 40-45)、血小板凝集抑制効果(特表2003-527418)などが知られている。
【0003】
従来知られているプロアントシアニジンの分析方法としては、質量分析検出機を用いた高速液体クロマトグラフィー(LC−MS)による逆相のHPLC(2003, Biosci. Biotechnol. Biochem., 67(5), 1140-1142)、LC−MSによるグラジエント溶出の順相のHPLC(2003, J. Agric. Food Chem., 51, 7513-7521)による方法が知られている。しかしながらいずれの分析法においても、茶やサプリメントで他の成分と混合したプロシアニジンでは夾雑ピークとの分離が困難で正確な定量方法とは言い難かった。またプロアントシアニジンは構成成分であるフラバン−3−オール類の立体異性により、非常に多くの立体異性体が存在し、標準物質として入手できる化合物には限りがあり、そのため定量分析は一部の既知化合物を除いて不可能であった。
【特許文献1】特表2003−527418
【非特許文献1】1995, Clin. Chim. Acta., 235, 207-219
【非特許文献2】2004, ジャパンフードサイエンス, 403, 1月号, 40-45
【非特許文献3】2003, Biosci. Biotechnol. Biochem., 67(5), 1140-1142
【非特許文献4】2003, J. Agric. Food Chem., 51, 7513-7521
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プロシアニジン(カテキンのn重合体の混合物の総称;n≧1)及びフラバン−3−オール類を含む茶製品、天然物、飲食物、医薬品及び/又は化粧品中の正確なプロシアニジン及びフラバン−3−オール類の定量を夾雑物の干渉を受けずに求めることの出来る新規な分析法の開発が強く望まれている。従って、本発明は、茶製品、天然物、飲食物、医薬品及び/又は化粧品中に含まれるプロシアニジン及びフラバン−3−オール類の新規な定量法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記の課題を解決するために種々研究の結果、(a)分析試料をデキストラン系又はビニルポリマー系の樹脂を用いて前処理することで、疎水的吸着樹脂などでは分離不可能なカフェインなどの夾雑物を除去し、そして(b)分別したプロシアニジン及びフラバン−3−オール類を、高速液体クロマトグラフィーで分離・定量することで、天然物、飲食物中に含まれるプロシアニジン及びフラバン−3−オール類を、夾雑物の影響を受けずに定量することができることを見出した。
【0006】
したがって、本発明の方法は、分析試料中に含まれるプロシアニジン及びフラバン−3−オール類を定量する方法であって、次の工程:
a) プロシアニジン、フラバン−3−オール類の分析に影響を与える夾雑物を分析試料から取り除くための、カラムを用いた前処理工程;
b) a)の前処理工程で夾雑物を取り除いた処理溶液中のプロシアニジン、フラバン−3−オール類を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分離し、そして定量する工程;
を含む方法を提供する。
【0007】
本発明の方法により定量される物質
本発明の方法により定量される物質は、プロシアニジン(カテキンのn重合体の混合物の総称;n≧1)及びフラバン−3−オール類のいずれかの物質であってよい。本発明の方法により定量されるフラバン−3−オール類には、カテキン、エピカテキン、ガロカテキン、エピガロカテキン、カテキン−3−O−ガレート、エピカテキン−3−O−ガレート、ガロカテキン−3−O−ガレート、エピガロカテキン−3−O−ガレートが含まれるが、これらに限定されない。本発明の方法により定量されるプロシアニジンには、プロシアニジンB1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8が含まれるが、これらに限定されない。好ましくは、本発明の方法により定量される物質は、プロシアニジンB1(PB1)及び/又はプロシアニジンB3(PB3)であり、さらに好ましくはPB1である。
【0008】
分析試料
本発明の方法が対象とする分析試料は、天然物(ブドウ種子、タマリンド、リンゴ、樹皮、松樹皮由来ポリフェノール、茶葉、ココアなど、及び/又はそれらの処理物(エキスなど)、飲食物、医薬品、及び/又は、化粧品など、プロシアニジン及び/又はフラバン−3−オール類を含むと予測される任意の試料である。本発明の方法が対象とする好ましい分析試料はプロシアニジンを含む茶飲料であり、さらに好ましくは松樹皮抽出物を含む茶飲料である。
【0009】
前処理工程
分析試料中のプロシアニジン及びフラバン−3−オール類を高速液体クロマトグラフィーで分析するにあたって、分析を妨害する夾雑物としてカフェイン、テオブロミンなどのメチルキサンチン類、カフェ酸、クマル酸、フェルラ酸などのフェニルプロパノイド類、フラボン類、フラボノール類、及びそれらの配糖体類を挙げることができる。
【0010】
逆相(例えば、C8またはC18)の担体を用いて、これらの夾雑物とプロシアニジン及びフラバン−3−オール類の分離を試みた場合には、これらの物質は共に樹脂に吸着し、そして同時に溶出するため分離が不可能であるか、あるいは分離できたとしても非常に長い分析時間を要する。本発明者等は、これらの夾雑物とプロシアニジン及びフラバン−3−オール類とを分離可能な条件について研究を重ねたところ、極性有機溶媒を含む溶出液を用いてゲルろ過カラムにかけることで、これら夾雑物を、プロシアニジン及びフラバン−3−オール類から分離することに成功した。したがって、本発明の方法においては、前処理として、カラム分離を行うことによりプロシアニジン及びフラバン−3−オール類を上記の夾雑物から分別することができる。
【0011】
前処理に用いることができるカラムの樹脂には、デキストラン系の樹脂(例えば、Sephadex LH-20(アマシャムバイオサイエンス株式会社))、親水性ビニルポリマー系のゲル濾過樹脂(例えば、TOYOPEARL HW40(東ソー株式会社)、TOYOPEARL HW-50(東ソー株式会社))が含まれ、これらの樹脂により夾雑物とプロシアニジン及びフラバン−3−オール類の分画を行うことができる。また、充填カラムであるSuperdex Peptide 10/300 GL(アマシャムバイオサイエンス株式会社)を用いても同様の分画を行う事ができるが、これらに限定しているわけではない。
【0012】
前処理工程において、分析試料をカラムにチャージして、夾雑物とプロシアニジン及びフラバン−3−オール類とを分別するための溶出溶媒は、分別可能であれば特に制限はなく、水と水に可溶の極性有機溶媒、例えば、エタノール、メタノール、アセトニトリル、アセトンなど、の混合溶媒を用いることができる。そして、水に可溶の極性溶媒としては特にエタノールが好ましく、例えば、分析試料をカラムにチャージして、夾雑物質であるカフェインは0〜20%のエタノールにより溶出させ、フェニルプロパノイド類、フラボン類、及びフラボノール類は20〜40%のエタノールにより溶出させ、最後に、プロシアニジン及びフラバン−3−オール類を60〜80%のエタノールにより溶出させることで、目的とするプロシアニジン及びフラバン−3−オール類を、夾雑物を含まないで得ることができる。
【0013】
高速液体クロマトグラフィーによる分離・定量工程
次に、前処理工程で夾雑物を取り除いた処理溶液中のプロシアニジン、フラバン−3−オール類は高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で定量する。分析に用いるカラムは、逆相系カラムが好ましく、逆相系カラムがシリカゲル担体にオクタデシル基が化学結合した充填剤(ODS)、ブチル基が化学結合した充填剤(C4)、オクチル基が化学結合した充填剤(C8)、フェニル基が化学結合した充填剤(Ph)、C30のアルキル鎖が化学結合した充填剤(C30)、オクタデシル基が合成ポリマーに結合した(ODP)又は逆相系合成ポリマー担体(例えば、Shodex Rspak DEシリーズ(昭和電工株式会社))、アミド結合型逆相担体(例えば、Ascentis RP-Amide(シグマアルドリッチジャパン株式会社))を用いることができるが、これらカラムに限定しているわけではない。
【0014】
HPLC分析の移動相として、水と水に可溶の極性溶媒を用いる事が可能で、エタノール、メタノール、アセトニトリル、アセトンなどを、水との混合比率を0〜100%で用いることができる。移動相は酸性にする方が分離及び分析する成分の安定性のために好ましく、トリフルオロ酢酸(TFA)、蟻酸、酢酸、トリクロロ酢酸(TCA)、過塩素酸などを0.001%〜5%混合して用いてもよい。好ましくは0.05%〜0.1%のTFAを用いる。
【0015】
具体的には、ODSカラム(Capcellpak C-18 AQ(6mm x 150mm、資生堂株式会社)を用い、A溶液に0.05%TFA/水、B溶液に0.05%TFA/90%アセトニトリル/水を用い、流速1.2ml/分で、B10%→B10%(10分)次いでB10%→B35%(10分)のグラジエント溶出を行い、カラム温度は40℃で溶出する。検出は225nmにおける吸光度(A225nm)の測定により行い、それぞれの物質のピークの面積値からプロシアニジン及びフラバン−3−オール類を定量することができる。プロシアニジンの標準物質としてプロシアニジンB1(PB1)(フナコシ株式会社)及びプロシアニジンB3(PB3:下記の実施例4に従い合成した)を用いることができる。PB1及びPB3の構造式は図1に示す。上記の条件でPB1は10.7分、PB3は12.6分に溶出する。フラバン−3−オール類は(−)−エピカテキン、(−)−エピカテキン 3−O−ガレート、(−)−エピガロカテキン 、(−)−エピガロカテキン 3−O−ガレート、(+)−カテキン、(−)−カテキン 3−O−ガレート、(+)−ガロカテキン、(−)−ガロカテキン 3−O−ガレートを和光純薬工業株式会社より購入した。(−)−エピカテキンは17.6分、(−)−エピガロカテキンは、11.1分、(−)−エピガロカテキン 3−O−ガレートは18.2分、(+)−カテキンは14.0分、(+)−ガロカテキンは6.4分、(−)−ガロカテキン 3−O−ガレートは19.1分に溶出した。しかし、この分析条件に限定しているわけではなく、定量可能なすべての条件を用いることができる。
【0016】
また、別の態様において本発明の方法は、高速液体クロマトグラフィーによる分離の後、さらに質量分析機を組み合わせて分析することを含んでいてよい。すなわち、前処理したサンプルをLC−MSでも定量することが可能である。LC−MSによる分離・定量は、例えば下記の実施例6に示す条件を用いて行うことができるが、これらに限定されない。LC−MSによる定量において、例えば、2重合体のプロシアニジンのみを定量する場合には、選択イオンモニタリング(SIM:selected ion monitoring)によりm/z 579([M+H])のイオンを選択したクロマトグラムから定量することができる。サンプルに含まれるプロシアニジンが非常に少ない場合(1ppm以下)はLC−MSによる定量が有効な分析手段となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の方法は、プロシアニジンを含む茶製品、天然物、飲食物及び/又は化粧品中に含まれるプロシアニジン及びフラバン−3−オール類とそれ以外の夾雑物との分離を可能とすることによって、そのような茶製品等に含まれるプロシアニジン及びフラバン−3−オール類を分離・定量することができる。したがって、本発明の方法は、茶製品、天然物、飲食物、医薬品及び/又は化粧品中のプロシアニジン及びフラバン−3−オール類を分解することなく分析する方法として適している。

次に、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。しかし、本発明は実施例に限定されない。
【実施例1】
【0018】
前処理条件の検討
プロアントシアニジンB1(PB1)及びカフェインを20ppmづつ含む水溶液5mlを、乾燥重量0.25gのSephadex LH-20(アマシャムバイオサイエンス株式会社)を水で膨潤したカラムに負荷し、2mlの水で洗浄した後、20、40、60、80%EtOH 各2mlで溶出した。各溶出画分は減圧濃縮下で濃縮後、2mlのメスフラスコでフィルアップし、各溶出画分をHPLC(分析条件は実施例3に記載)に供し、カフェインとPB1の定量を行った。
【0019】
【表1】

この結果、カフェインはHOでほぼ溶出され、一方PB1は60%EtOH以上で溶出されることが明らかになり、両者を分離できる事がわかった。
【実施例2】
【0020】
茶製品のSephadex LH-20による前処理
フラバンジェノール(松樹皮由来プロシアニジン)を含む茶製品5mlを乾燥重量0.25gのSephadex LH-20(アマシャムバイオサイエンス株式会社)を水で膨潤したカラムに負荷し、2mlの水で洗浄した後、35%EtOH 2ml、70%EtOH 4mlで溶出した。70%EtOH溶出画分は減圧濃縮下で濃縮後、2mlのメスフラスコでフィルアップし、各溶出画分をHPLC(分析条件は実施例3に記載)に供し、カフェインとPB1の定量を行った。濃度は元の体積(5ml)あたりに換算した。
【0021】
【表2】

水洗浄によりカフェインがほぼ完全に溶出され、ついで35%EtOHによりフェニルプロパノイド類とフラボノール類が溶出し、70%EtOHにより、目的のプロシアニジン及びフラバン−3−オールが溶出した。
【0022】
なお、茶製品はあらかじめ、5mlを量り取り凍結乾燥したものを5mlの水に溶解して用いてもよい。
【実施例3】
【0023】
HPLCによるプロシアニジンとフラバン−3−オール類の分離
Sephadex LH-20処理において分画した水、35%あるいは70%EtOH溶出画分及び、前処理によりカフェインなどの夾雑物を除去したサンプル溶液は下記条件のHPLCで分析を行った。
【0024】
分析条件は,カラムとしてCapcellpak C-18 AQ (6mmx150mm、資生堂株式会社)を用い、A溶液に0.05%TFA/水、B溶液に0.05%TFA/90%CHCN/水を用い、流速1.2ml/分で、B10%→B10%(10分)B10%→B35%(10分)のグラジエント溶出を行った。カラム温度は40℃、検出はA225nmの面積値で定量する。HPLCは島津LC−2010HT(島津製作所)を用いた。
【0025】
本条件で、プロシアニジンB1は10.7分、プロシアニジンB3は12.6分、カテキンは14.0分、エピカテキンは17.6分、ガロカテキンは6.4分、エピガロカテキンは11.1分、エピガロカテキン−3−O−ガレートは18.2分、ガロカテキン−3−O−ガレートは19.1分に溶出し良好な分離を示した(図2)。
【実施例4】
【0026】
プロシアニジンB3の合成
プロシアニジンB3の合成は論文(J. C. S. Perkin I, 1981, Jacobus J. Botha, et al., 1235-1245)に従い、以下のように行った。
(+)−タキシフォリン 500mgをエタノール50mlに溶解し、NaBHを200mg加えた後、(+)−カテキン 1gを加え溶解後、HClを加え1時間撹拌した。反応物を逆相のHPLCで精製し、プロシアニジンB3 200mgを得た。
【実施例5】
【0027】
前処理に用いる樹脂の検討
プロシアニジンB1(PB1)及びカフェインを20ppmづつ含む水溶液2mlを、1mlのTOYOPEARL HW-40(東ソー株式会社)を水で平衡化したカラムに負荷し、2mlの水で洗浄した後、35%EtOH 2ml、70%EtOH 4mlで溶出した。各溶出画分をHPLCに供し、カフェインとPB1の定量を行った。
【0028】
【表3】

この結果、Sephadex LH-20と同様にカフェインはHOでほぼ溶出され、一方PB1は70%EtOHで溶出されることが明らかになり、両者を分離できる事がわかった。したがって本前処理方法は、デキストラン系のゲル濾過樹脂や親水性ビニルポリマー系樹脂において有効な方法であることが認められた。
【実施例6】
【0029】
質量分析機による定量
前処理したサンプルは以下の条件のLC−MSで定量した。
質量分析機はQuattro micro(日本ウォーターズ株式会社)を用いESIポジティブモードで以下の条件:
【0030】
【表4】

で測定し、HPLCはAliance 2795(日本ウォーターズ株式会社)を用いた。HPLCの条件は以下の通りであった。
【0031】
カラム: Capcell pak C-18 AQ(3mmφ x 15cm、資生堂株式会社)
移動相: A溶液:0.1%HCOOH/水、B溶液:90%CHCN/0.1%HCOOH/水、流速0.2ml/分
グラジエント:B10%→B35%(7分)→B70%(3分)
本条件でPB1は7.3分に、PB3は7.8分に溶出した。定量は選択イオンモニタリング(SIM:selected ion monitoring)のm/z 579([M+H])のクロマトグラムにおける面積値で検量線を作成し定量した。サンプルに含まれるプロシアニジンが非常に少ない場合(1ppm以下)はLC−MSによる定量が有効な分析手段となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】図1は、プロシアニジンB1及びプロシアニジンB3の構造式を示す図である。
【図2】図2は、前処理工程における70%EtOH溶出画分のHPLCクロマトグラムである。分析条件は、HPLC装置:島津LC−2010HT(島津製作所);カラム:capcellpak C-18 AQ (6mmx150mm、資生堂株式会社);移動相:A溶液:0.05%TFA/水、B溶液:0.05%TFA/90%CHCN/水;流速:1.2ml/分;グラジエント:B10%→B10%(10分)B10%→B35%(10分);カラム温度:40℃;検出:A225nm。この条件で、プロシアニジンB1は10.7分、プロシアニジンB3は12.6分、カテキンは14.0分、エピカテキンは17.6分、ガロカテキンは6.4分、エピガロカテキンは11.1分、エピガロカテキン−3−O−ガレートは18.2分、ガロカテキン−3−O−ガレートは19.1分にそれぞれ溶出した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析試料中に含まれるプロシアニジン(カテキンのn重合体の混合物の総称:n≧1)及びフラバン−3−オール類を定量する方法であって、次の工程:
a) プロシアニジン、フラバン−3−オール類の分析に影響を与える夾雑物を分析試料から取り除くための、カラムを用いた前処理工程;
b) a)の前処理工程で夾雑物を取り除いた処理溶液中のプロシアニジン、フラバン−3−オール類を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)で分離し、そして定量する工程;
を含む、前記方法。
【請求項2】
夾雑物が、カフェイン、ならびに、フェニルプロパノイド類及びフラボノール類ならびにそれらの配糖体類、からなる群より選択される1以上の物質であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
分析試料が、プロシアニジンを含む茶飲料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
分析試料が、松樹皮抽出物を含む茶飲料であることを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
前処理工程において、デキストラン系又はビニルポリマー系の樹脂のカラムを用いることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前処理工程における条件として水/エタノールの混合液を用い、それによりプロシアニジン及びフラバン−3−オール類と夾雑物を分離することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前処理工程において、デキストラン系の樹脂のカラムを用い、これを水で平衡化した後、サンプルを負荷し、水及び/又は0〜40%エタノールで夾雑物を溶出し、そして、60%以上のエタノールによりプロシアニジン及びフラバン−3−オール類を回収することを特徴とする、請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前処理工程における条件として、水/メタノールの混合液、水/エタノールの混合液、水/アセトニトリルの混合液、及び水/アセトンの混合液からなる群より選択される混合液を用い、それによりプロシアニジン及びフラバン−3−オール類と夾雑物を分離することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程b)において使用する高速液体クロマトグラフィーのカラムが、逆相系カラムであることを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
逆相系カラムが、シリカゲル担体にオクタデシル基が化学結合した充填剤(ODS)、ブチル基が化学結合した充填剤(C4)、オクチル基が化学結合した充填剤(C8)、フェニル基が化学結合した充填剤(Ph)、C30のアルキル鎖が化学結合した充填剤(C30)、オクタデシル基が合成ポリマーに結合した充填剤(ODP)、逆相系合成ポリマー担体、及び、アミド結合型逆相担体からなる群より選択される充填剤を有するカラムであることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
工程b)の高速液体クロマトグラフィーによる分離に使用する移動相が、アセトニトリル及び/又は水であることを特徴とし、ここでアセトニトリル及び/又は水は、それぞれTFA(トリフルオロ酢酸)を含む又は含まない、請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
移動相が、アセトニトリル及び水のグラジエントであることを特徴とし、ここでアセトニトリル及び水は、それぞれTFA(トリフルオロ酢酸)を含む又は含まない、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程b)の高速液体クロマトグラフィーによる分離に使用する移動相として、メタノール、エタノール、アセトニトリル、アセトン及びこれらを混合した溶媒からなる群より選択される溶媒を含む移動相を用いることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
工程b)の高速液体クロマトグラフィーによる分離に使用する移動相中に、TFA(トリフルオロ酢酸)、蟻酸、酢酸、TCA(トリクロロ酢酸)、過塩素酸を含むことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
定量するプロシアニジンが、プロシアニジンB1(Procyanidin B1: PB1)であることを特徴とする請求項1ないし14のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
2重合体のプロシアニジンのみを定量するために、さらに質量分析機を組み合わせることを特徴とする請求項1ないし15のいずれか1項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−10487(P2007−10487A)
【公開日】平成19年1月18日(2007.1.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−191665(P2005−191665)
【出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(000001904)サントリー株式会社 (319)
【Fターム(参考)】