説明

プロジェクションシステム、画像供給装置、プロジェクター、及び、画像投射方法

【課題】プロジェクターの投射方向の変化に合わせて投射する画像を変化させることが可能なプロジェクションシステム、画像供給装置、プロジェクター、及び、画像投射方法を提供する。
【解決手段】プロジェクションシステム10は、プロジェクター11と、プロジェクター11に画像データを供給するPC2とを備え、プロジェクター11は、スクリーンSCに画像を投射する投射部3を備え、PC2は、スクリーンSCと投射部3による投射範囲との位置関係に基づいて、投射部3が投射可能な解像度より大きい解像度を有する画像データ22Bから、投射される範囲を求める範囲検出部21Dと、画像データ22Bから範囲検出部21Dが求めた範囲を抽出して、画像データとしてプロジェクター11に供給する抽出部21Eとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクションシステム、画像供給装置、プロジェクター、及び、画像投射方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクターにより大型のスクリーンに画像を投射するため、揺動サーボ機構によりプロジェクターを揺動させることで投射方向を変えるようにした装置が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−303626号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載のようにプロジェクターの投射面積よりも大型のスクリーンに画像を投射する場合に、投射方向の変化を投射する画像に反映させる方法が無かった。
本発明は、上記の課題に鑑み、プロジェクターの投射方向の変化に合わせて投射する画像を変化させることが可能なプロジェクションシステム、画像供給装置、プロジェクター、及び、画像投射方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するため、本発明は、プロジェクターと、前記プロジェクターに画像を表す画像データを供給する画像供給装置とを備え、前記プロジェクターは、投射面に前記画像を投射する投射手段を備え、前記画像供給装置は、前記投射面と前記投射手段による投射範囲との位置関係に基づいて、前記投射手段が投射可能な解像度より大きい解像度を有する全体画像から、投射される範囲を求める範囲検出手段と、前記全体画像から前記範囲検出手段が求めた範囲を抽出して、前記画像データとして前記プロジェクターに供給する画像抽出手段とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、プロジェクターの投射範囲と投射面との位置関係に基づいて、プロジェクターが投射可能な解像度より大きい解像度を有する全体画像から一部を抽出して、プロジェクターにより投射面に投射する。これにより、プロジェクターの投射方向やプロジェクターの位置を反映して全体画像の一部が抽出され、投射されるので、投射画像に、プロジェクターの投射方向やプロジェクターの位置が反映される。従って、プロジェクターの投射方向の変化に合わせて投射する画像を変化させることができ、投射範囲より大きな投射面を利用して広大な画像を投射できる。
【0006】
また、本発明は、上記プロジェクションシステムにおいて、前記画像供給装置が備える前記範囲検出手段は、前記投射面と前記投射手段による投射範囲との相対位置が変化した場合に、この変化に追従して新たに前記範囲を求めることを特徴とする。
本発明によれば、プロジェクターの投射範囲が投射面に対して移動した場合に、この移動に合わせて全体画像のうち投射される範囲が移動する。これにより、プロジェクターの投射範囲より大きな投射面を利用して広大な画像を投射できる。
【0007】
また、本発明は、上記プロジェクションシステムにおいて、前記プロジェクターは、前記投射手段の向きを変更する投射方向変更手段と、前記プロジェクター本体を基準として前記投射手段の向きを検出する投射方向検出手段とを備え、前記画像供給装置が備える前記範囲検出手段は、前記投射方向検出手段により検出された前記投射手段の向きが変化した場合に、この変化に追従して新たに前記範囲を求めることを特徴とする。
本発明によれば、プロジェクターの投射方向の変化を容易に、かつ正確に検出できるので、投射範囲の移動に合わせて、全体画像のうち投射される範囲を正確に移動させることができる。これにより、投射範囲の移動を正確に反映して投射画像を変化させることができる。
【0008】
また、本発明は、上記プロジェクションシステムにおいて、前記投射面は平面または曲面であることを特徴とする。
本発明によれば、平面または曲面で構成される大きな投射面を利用して、広大な画像を投射できる。
【0009】
また、上記課題を解決するため、本発明は、投射面に画像を投射するプロジェクターに前記画像を表す画像データを供給する画像供給装置であって、前記投射面と前記プロジェクターの投射範囲との位置関係に基づいて、前記プロジェクターが投射可能な解像度より大きい解像度を有する全体画像から、投射される範囲を求める範囲検出手段と、前記全体画像から前記範囲検出手段が求めた範囲を抽出して、前記画像データとして前記プロジェクターに供給する画像抽出手段とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、本発明によれば、プロジェクターの投射範囲と投射面との位置関係に基づいて、プロジェクターが投射可能な解像度より大きい解像度を有する全体画像から一部を抽出して、プロジェクターに出力することで投射面に投射させることができる。これにより、プロジェクターの投射方向やプロジェクターの位置を反映して全体画像の一部を抽出し、投射させることで、プロジェクターの投射方向の変化に合わせて投射する画像を変化させることができ、投射範囲より大きな投射面を利用して広大な画像を投射できる。
【0010】
また、上記課題を解決するため、本発明は、投射面に画像を投射する投射手段と、前記投射面と前記投射手段による投射範囲との位置関係に基づいて、前記投射手段が投射可能な解像度より大きい解像度を有する全体画像から、投射される範囲を求める範囲検出手段と、前記全体画像から前記範囲検出手段が求めた範囲を抽出する画像抽出手段と、前記画像抽出手段により抽出された前記画像を前記投射手段により投射させる投射制御手段とを備えることを特徴とする。
本発明によれば、画像を投射するプロジェクターが、当該プロジェクターの投射範囲と投射面との位置関係に基づいて、投射可能な解像度より大きい解像度を有する全体画像から一部を抽出して、プロジェクターにより投射面に投射するので、投射される画像にプロジェクターの投射方向やプロジェクターの位置を反映させることができる。これにより、投射範囲より大きな投射面を利用して広大な画像を投射できる。
【0011】
また、上記課題を解決するため、本発明は、投射面に画像を投射するプロジェクターによる画像投射方法であって、前記投射面と、前記プロジェクターの投射範囲との位置関係に基づいて、前記プロジェクターが投射可能な解像度より大きい解像度を有する全体画像から、投射される範囲を求め、求めた範囲を前記全体画像から抽出し、抽出した範囲を前記プロジェクターにより投射することを特徴とする。
本発明の方法によれば、プロジェクターによって投射される画像に、当該プロジェクターの投射方向や位置を反映させることができるので、大きな投射面を利用して、投射可能な解像度より大きな解像度を有する広大な画像を投射できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、投射面に投射される画像に、投射面と投射範囲との位置関係が反映されるので、大きな投射面を利用して、投射可能な解像度より大きい解像度を有する広大な画像を投射できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明を適用した実施形態に係るプロジェクションシステムの概略構成及び表示態様の例を示す図である。
【図2】プロジェクター及びPCの機能的構成を示すブロック図である。
【図3】変化量検出処理におけるスクリーン上の投射画像を示す図であり、(A)は初期状態を示し、(B)及び(C)は回動部及び水平回動部の動作後の状態を示す。
【図4】プロジェクションシステムの動作を示すフローチャートであり、変化量検出処理を示す。
【図5】プロジェクションシステムの動作を示すフローチャートであり、PCが有する画像データを投射する動作を示す。
【図6】プロジェクションシステムの第1の変形例の構成を示す図である。
【図7】プロジェクションシステムの第2の変形例の構成を示す図である。
【図8】プロジェクションシステムの第3の変形例の構成を示すブロック図である。
【図9】プロジェクションシステムの第4の変形例の構成を示す図である。
【図10】プロジェクションシステムの第5の変形例の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明を適用したプロジェクションシステム10の概略構成を示す図である。プロジェクションシステム10は、プロジェクター11と、プロジェクター11に対して画像を表す画像データを供給する画像供給装置としてのPC(Personal Computer)2とを備えて構成される。本実施形態のPC2とプロジェクター11とは、後述するように画像データを送受信する通信ケーブル、及び、制御データを送受信する通信ケーブルにより有線接続される。PC2とプロジェクター11との間の通信はUSB(Universal Serial Bus)、IEEE1394、LAN等の公知の通信規格に準拠した方式とすることができ、1本の通信ケーブルにより画像データと制御データを送受信することも可能である。
【0015】
プロジェクター11は、投射面としてのスクリーンSCに対して画像を投射(表示)する装置である。プロジェクター11は、略箱形の本体15を有し、本体15の前部には、プロジェクター11の設置面に対して垂直方向に回動可能な回動部16が設けられている。回動部16の上面には水平回動部17が立設されていて、この水平回動部17に、スクリーンSCに対して画像を投射する投射光学系33(図2)が収容され、光変調装置32が投射する画像はスクリーンSC上において投射範囲100に結像する。回動部16は、図中符号Vで示すように上下に回動可能であり、この回動部16の回動に伴って投射光学系33の投射方向は仰角方向に変化する。この回動部16の動作により、スクリーンSC上に矢印で示したように投射範囲100は上下に移動する。また、水平回動部17は、図中符号Hで示すように本体15に対して水平方向に回動可能であり、この水平回動部17の動作に伴い投射範囲100は左右に移動する。
【0016】
スクリーンSCは、プロジェクター11の投射範囲100に比べて大きな平面であり、部屋の壁面そのものをスクリーンSCとすることも可能である。本実施形態では、ほぼ直立して立設された矩形の投射可能領域を有するスクリーンSCを例示する。PC2は、投射範囲100よりも大きい画像を投射するための画像データを有している。この画像データは、プロジェクター11の表示解像度(画素数)に比べて数倍またはそれ以上の画素数からなる画像データである。当該画像データの解像度がプロジェクター11の表示解像度よりも大きいため、プロジェクター11が画像データの縮小を行わず、縮小に相当する解像度変換も行わない場合(換言すれば、この画像データの解像度を維持したまま、この画像データによって表される画像全体を表示しようとする場合)、プロジェクター11はこの画像データ全体を表示することはできず、その一部を表示することしかできない。この画像の一部が、投射範囲100に表示されている画像に相当する。図1中に破線で示す投射範囲200は、プロジェクター11が、投射範囲100に含まれる画像を投射する際の倍率と同様の倍率で画像データに対応する画像全体を投射することができると仮定した場合の、当該画像全体が投射されると推測される領域である。プロジェクター11が実際に投射可能な投射範囲100は、投射範囲200に比べて小さいので、PC2は、画像データから投射範囲100に対応する範囲を抽出して、プロジェクター11に出力する。PC2が抽出する画像データの解像度は、例えば、プロジェクター11が画像データの縮小や解像度変換等の処理を行わずに投射した場合に、プロジェクター11の表示解像度に略一致するような解像度である。PC2がプロジェクター11に供給する画像データは動画像であっても静止画像であってもよい。
【0017】
図2は、プロジェクションシステム10の機能的構成を示すブロック図である。
プロジェクター11は、PC2を含む外部の画像供給装置に接続され、デジタル画像データまたはアナログ画像信号が入力されるI/F(インターフェース)101を備えている。I/F101は、上述したようにUSBインターフェース、有線または無線LANインターフェース、アナログ映像信号が入力されるVGA端子、デジタル映像信号が入力されるDVI(Digital Visual Interface)、NTSC、PAL、SECAM等のコンポジット映像信号が入力されるS映像端子、コンポジット映像信号が入力されるRCA端子、コンポーネント映像信号が入力されるD端子、HDMI(登録商標)規格に準拠したHDMIコネクター、及び、これらの端子やコネクターを介して信号を入出力するインターフェース回路を備えている。
【0018】
プロジェクター11は、大きく分けて光学的な画像の形成を行う投射部3(投射手段)と、この投射部3に入力される画像信号を電気的に処理する画像処理系とからなる。投射部3は、照明光学系31、液晶パネル等を備えた光変調装置32、及び投射光学系33から構成されている。照明光学系31は、キセノンランプ、超高圧水銀ランプ、LED(Light Emitting Diode)等からなる光源を備えている。また、照明光学系31は、光源が発した光を光変調装置32に導くリフレクター及び補助リフレクターを備えていてもよく、投射光の光学特性を高めるためのレンズ群(図示略)、偏光板、或いは光源が発した光の光量を光変調装置32に至る経路上で低減させる調光素子等を備えたものであってもよい。
【0019】
光変調装置32は、例えば透過型液晶パネルを備えて構成され、この液晶パネルに後述する画像処理系からの信号を受けて画像を形成する。この場合、光変調装置32は、カラーの投影を行うため、RGBの三原色に対応した3枚の液晶パネルを備え、照明光学系31からの光はRGBの3色の色光に分離され、各色光は対応する各液晶パネルに入射する。各液晶パネルを通過して変調された色光はクロスダイクロイックプリズム等の合成光学系によって合成され、投射光学系33に射出される。
【0020】
なお、光変調装置32は、3枚の透過型液晶パネルを用いた構成に限らず、例えば3枚の反射型の液晶パネルを用いることも可能であるし、1枚の液晶パネルとカラーホイールを組み合わせた方式、3枚のデジタルミラーデバイス(DMD)を用いた方式、1枚のデジタルミラーデバイスとカラーホイールを組み合わせた方式等により構成してもよい。ここで、光変調装置32として1枚のみの液晶パネルまたはDMDを用いる場合には、クロスダイクロイックプリズム等の合成光学系に相当する部材は不要である。また、液晶パネル及びDMD以外にも、光源が発した光を変調可能な構成であれば問題なく採用できる。
【0021】
投射光学系33は、投射する画像の拡大・縮小および焦点の調整を行うズームレンズ、ズームの度合いを調整するズーム調整用モーター、フォーカスの調整を行うフォーカス調整用モーター等を備えている。投射光学系33は、光変調装置32で変調された入射光を、ズームレンズを用いてスクリーンSC上に投射し、結像させる。
投射部3には、制御部103の制御に従って投射光学系33が備える各モーターを駆動する投射光学系駆動部121、及び、制御部103の制御に従って照明光学系31が備える光源を駆動する光源駆動部117が接続されている。
【0022】
画像処理系は、プロジェクター11全体を統合的に制御する制御部103を中心に構成され、制御部103が処理するデータや制御部103が実行する制御プログラム105Aを記憶した記憶部105、操作パネル45及びリモコン受光部41を介した操作を検出する入力処理部123、I/F101から入力される入力画像を処理する画像処理部113、及び、画像処理部113から出力される画像信号に基づいて光変調装置32を駆動して描画を行う光変調装置駆動部119を備えている。
【0023】
制御部103は、記憶部105に記憶された制御プログラム105Aを読み出して実行することにより、プロジェクター11の各部を制御する。制御部103は、入力処理部123から入力される操作信号に基づいて、ユーザーが行った操作の内容を検出し、この操作に応じて画像処理部113、光変調装置駆動部119、投射光学系駆動部121及び光源駆動部117を制御して、投射部3によりスクリーンSCに画像を投射させる。
【0024】
プロジェクター11の本体15には、ユーザーが操作を行うための各種スイッチ及びインジケーターランプを備えた操作パネル45が配置されている。操作パネル45は入力処理部123に接続されており、入力処理部123は、制御部103の制御に従い、プロジェクター11の動作状態や設定状態に応じて操作パネル45のインジケーターランプを適宜点灯或いは点滅させる。この操作パネル45のスイッチが操作されると、操作されたスイッチに対応する操作信号が入力処理部123から制御部103に出力される。
また、プロジェクター11は、ユーザーが使用するリモコン(図示略)を有する。リモコンは各種のボタンを備えており、これらのボタンの操作に対応して赤外線信号を送信する。プロジェクター11の本体には、リモコンが発する赤外線信号を受光するリモコン受光部41が配置されている。リモコン受光部41は、リモコンから受光した赤外線信号をデコードして、リモコンにおける操作内容を示す操作信号を生成し、制御部103に出力する。
【0025】
I/F101には、画像処理部113が接続されている。画像処理部113は、PC2または他の画像供給装置から入力されたアナログ画像信号または画像データを取得し、アナログ画像信号がデジタル画像データかの判別、デジタル画像データのデータフォーマットの識別等を行う。そして、画像処理部113は、外部の画像供給装置からアナログ画像信号が入力された場合に、このアナログ入力信号をA/D変換してデジタル信号を出力する機能を有する。また、画像処理部113は、入力画像の画像データを、光変調装置32の液晶パネルの仕様に適合した解像度のデータに変換する解像度変換処理等を実行し、光変調装置32により表示する表示用画像をフレームメモリー115に展開し、展開した表示用画像を光変調装置駆動部119に出力する。光変調装置駆動部119は、画像処理部113から入力される表示用画像に基づいて、光変調装置32を駆動する。これにより、制御部103の制御によって、光変調装置32に画像が描画され、この画像が投射光学系33を介して、スクリーンSC上に投射画像として投射される。
本実施形態では、PC2から、光変調装置32の液晶表示パネルの解像度に合わせて画像データ22Bから抽出された画像データが入力されるので、画像処理部113は、解像度変換及び縮小処理を行わずに、フレームメモリー115に画像を展開する。
【0026】
制御部103は、制御プログラム105Aを実行することで表示制御部103Aとして機能する。表示制御部103A(表示制御手段)は、画像処理部113を制御して、I/F101に入力された画像データに基づき、画像処理部113によってフレームメモリー115に画像を展開させるとともに、光変調装置駆動部119を制御して、フレームメモリー115に展開された画像を光変調装置32の液晶パネルに描画させ、投射部3により投射させる。
【0027】
また、プロジェクター11は、回動部16(図1)を本体15に対して上下方向に回動させるとともに、水平回動部17(図1)を水平方向に回動させる駆動源としての回転動作部125(投射方向変更手段)と、回転動作部125によって回動された回動部16及び水平回動部17の角度を検出する角度検出部127(投射方向検出手段)とを備えている。角度検出部127は、本体15に対する回動部16及び水平回動部17の角度を検出するものである。角度検出部127が検出する角度は、本体15をスクリーンSCの正面に設置し、本体15の前面をスクリーンSCに正対させた状態を基準とする。この基準の状態において、回動部16及び水平回動部17は、投射部3がスクリーンSCに対し真正面から投射する位置にある。また、以下の動作において、本体15の移動及び向きの変更はされないものとする。
回転動作部125は、図示しないモーターや減速機等を用いて構成され、後述する駆動制御部103Bの制御に従って、回動部16及び水平回動部17を個別に回動させることが可能である。この回転動作部125には、ロータリーエンコーダー等からなる角度検出部127が取り付けられ、角度検出部127は、回動部16と水平回動部17の各々について、基準位置からの回転角度を検出し、検出値を制御部103に出力する。
【0028】
制御部103は、制御プログラム105Aを実行することで駆動制御部103Bとして機能する。
駆動制御部103Bは、リモコンまたは操作パネル45の操作により回動部16または水平回動部17の角度の変更が指示された場合に、当該指示に従って、回動部16及び水平回動部17のそれぞれについて回動量(角度)を決定し、回転動作部125を動作させるとともに、角度検出部127から入力される検出値を取得し、回動部16または水平回動部17が目標位置に達したところで回転動作部125を停止させる。
【0029】
制御部103には、通信部47が接続されている。通信部47は、上述した通信ケーブルによりPC2に有線接続され、制御部103の制御に従って、PC2との間で制御データを送受信する。制御部103は、制御プログラム105Aを実行することで通信制御部103Cとして機能し、PC2からの要求に応じて、角度検出部127から入力される検出値を示す制御データをPC2へ送信する。
また、通信制御部103Cは、回動部16または水平回動部17を回動させる動作を指示する制御データがPC2から送信された場合に、この制御データを受信して、当該制御データによる指示を駆動制御部103Bに出力する。駆動制御部103Bは、この指示に従って上述したように回転動作部125を駆動する。
【0030】
制御部103には、スクリーンSCを撮影する撮像部48が接続されている。撮像部48は、図1に示したように本体15の前面側に設けられ、本体15の前面に正対する方向を撮影するデジタルスチルカメラである。撮像部48は本体15に固定されており、回動部16及び水平回動部17の動作によっても撮影方向が変化しない。また、撮像部48の撮影画角は、少なくとも投射範囲100より大きく、好ましくは、スクリーンSC上の投射範囲を含む大きさである。
【0031】
PC2は、CPU、ROM、RAM等により構成され、PC2の各部を制御する制御部21を備える。制御部21には、磁気記録媒体や半導体記憶素子を備えて構成される記憶部22が接続され、制御部21は記憶部22に記憶された制御プログラム22Aを読み出して実行することにより、PC2の各種機能を実現する。
制御部21には、また、キーボードやマウス等の入力デバイスを有する入力部23が接続されている。入力部23は、各入力デバイスに対する操作を検出して操作内容を制御部21に出力する。また、制御部21には、制御部21の制御に従って表示用の画像データを生成する画像出力部24が接続されている。画像出力部24には、モニター(図示略)を備えた表示部25が接続され、制御部21が処理する画像や処理結果等を上記モニターに表示するための画像データを生成して、表示部25に出力する。表示部25は、画像出力部24から入力される画像データに基づいて表示信号を生成し、この表示信号に基づいて上記モニターを駆動し、表示を実行させる。また、画像出力部24は、制御部21により、記憶部22に記憶された画像データ22Bの一部を抽出して表示するよう指示された場合に、指定された部分を抽出して表示用の画像データを生成し、プロジェクター11のI/F101に出力する。
【0032】
また、制御部21には、通信部26が接続されている。通信部26は、プロジェクター11の通信部47と通信可能に接続され、通信部47との間で各種データを送受信する。通信部26は、制御部21の制御に従って、プロジェクター11に対して変化量の検出や投射開始を指示する制御データを送信し、プロジェクター11から送信される制御データを受信する。
制御部21は、制御プログラム22Aを実行することで通信制御部21Aとして機能し、プロジェクター11に対して送信する制御データを生成して、通信部26により送信させる。また、通信制御部21Aは、通信部26が受信した制御データを取得し、解析する。例えば、プロジェクター11の駆動制御部103Bが角度検出部127によって検出した回動部16または水平回動部17の角度を示す制御データが送信された場合、通信制御部21Aは、この制御データを通信部26によって受信して解析し、回動部16または水平回動部17の角度を取得する。
【0033】
記憶部22には、制御プログラム22Aのほか、プロジェクター11により投射される画像データ22B(全体画像)、プロジェクター11の投射範囲100(図1)の変化量を検出する変化量検出処理で使用されるテスト画像データ22C、上記の変化量検出処理で得られる変化量データ22D、及び、現在のプロジェクター11の投射方向を示す投射方向データ22Eを記憶している。
画像データ22Bは、上述したように投射範囲200(図1)に投射されるのに適した画像データである。画像データ22Bは、例えば、プロジェクター11の表示解像度すなわち投射範囲100の画素数(光変調装置32の液晶パネルの画素数)に比べ、例えば数倍以上の画素で構成される画像データであり、縮小や解像度変換を行わずに投射した場合に、投射範囲200のように広い面積に投射される画像データである。記憶部22には、複数の画像データ22Bが記憶されていてもよい。なお、画像データ22Bの解像度は、光変調装置32の液晶表示パネルの解像度より大きければ、特に制限されない。例えば、画像データ22Bの全体を投射する場合に、投射範囲200がスクリーンSCより小さくなったとしても差し支えない。
【0034】
制御部21は、制御プログラム22Aを実行することにより、画像取得部21Bとして機能する。画像取得部21Bは、入力部23から入力される操作内容に従って、記憶部22に記憶された画像データ22Bの中から指定された画像データ22Bを選択して読み出す。
また、制御部21は、制御プログラム22Aを実行することにより、変化量検出部21Cとして機能する。変化量検出部21Cは、回動部16及び/又は水平回動部17を回動させて投射範囲100が移動した場合に、投射範囲100の移動量と、この移動量に対応する回動部16及び/又は水平回動部17の回動量との対応関係を求める変化量検出処理を行う。
【0035】
テスト画像データ22Cは、プロジェクター11の投射範囲100に対応した解像度、すなわちプロジェクター11の表示解像度とほぼ同等の解像度の画像データであり、アスペクト比も投射範囲100に対応している。テスト画像データ22Cは、例えば光変調装置32の液晶表示パネルの表示可能領域に合わせて矩形の画像となっている。また、テスト画像データ22Cは、その四隅を他の部分と容易に識別できるように、例えば四隅に暗色の四角形が配置され、その他の部分が明色で構成された画像等、幾何学的な模様を有する画像としてもよい。
【0036】
図3は、変化量検出処理におけるスクリーンSC上の投射画像を示す図であり、(A)は初期状態を示し、(B)及び(C)は回動部16及び/又は水平回動部17の動作後の状態を示す。
変化量検出処理では、画像取得部21Bが記憶部22からテスト画像データ22Cを取得して、通信制御部21Aがテスト画像データ22Cの投射を指示する制御データをプロジェクター11に送信する。この制御データに従って、プロジェクター11の表示制御部103Aは、テスト画像データ22Cに対応する画像をスクリーンSCに投射する。図3(A)にはプロジェクター11が画像を投射した初期状態を示し、投射範囲100の四隅を頂点100A、100B、100C、100Dとする。
【0037】
また、PC2の変化量検出部21Cは、プロジェクター11に対して回動部16及び/又は水平回動部17の回動を指示し、回動開始前から撮像部48により所定時間毎に撮影を行い、撮影画像データを送信するよう指示する。これらの指示は制御データとしてプロジェクター11に送信される。プロジェクター11の駆動制御部103Bは、制御データに従って、回動部16及び/又は水平回動部17を回動させる動作を実行し、動作開始の直前から定期的に撮像部48による撮影を行い、撮影画像データをPC2へ送信する。撮影周期は、PC2から送信された制御データにより指定された周期であってもよいし、或いは予めプロジェクター11に設定された周期であってもよい。
【0038】
変化量検出部21Cは、プロジェクター11から撮影画像データを取得し、この撮影画像データにおける投射範囲100の四隅の位置を検出する。そして、回動部16及び/又は水平回動部17の回動により、投射範囲100が、投射範囲100の幅に相当する長さだけ移動すると、プロジェクター11に制御データを送信して、回動部16及び/又は水平回動部17の回動を停止させる。
図3(B)には、投射範囲100が水平方向に、投射範囲100の幅に相当する長さ分移動した例を示す。移動前の投射範囲100の頂点100C、100Dの位置を、頂点100C´、100D´として表す。図3(B)の例では、プロジェクター11の水平回動部17(図1)が回動することで投射範囲100がスクリーンSC上を水平に移動し、頂点100C´、100D´と100B、100Aとが重なっている。例えば、投射範囲100に表示されるテスト画像データ22Cの画素数が横X画素×縦Y画素であった場合、図3(A)の状態から図3(B)の状態となった場合、水平回動部17は水平方向にX画素分回動したことになる。
【0039】
変化量検出部21Cは、プロジェクター11に対して制御データを送信し、角度検出部127が検出した水平回動部17の角度、又は、回動の前後における水平回動部17の回動量を送信するように指示する。この指示に応じてプロジェクター11の通信制御部103Cが角度検出部127の検出値または回動量を送信すると、変化量検出部21Cは、送信された角度検出部127の検出値または回動量をもとに、水平回動部17の回動量と、移動する画素数との対応を算出する。
即ち、図3(A)から(B)の変化において水平回動部17がRX度回動した場合、水平回動部17の回動量1度あたりの画素数は、X÷RXを演算することで求められる。同様に、1画素あたりの回動量をRX÷Xを演算することで求めることができる。
【0040】
また、図3(C)には、投射範囲100が水平方向に投射範囲100の幅に相当する長さだけ移動するとともに、垂直方向に投射範囲100の高さに相当する長さだけ移動した例を示す。図3(C)の例は、プロジェクター11の回動部16及び水平回動部17が回動し、投射範囲100がスクリーンSC上を水平及び垂直に移動して、頂点100C´と100Aとが重なった例である。
この場合、水平回動部17は水平方向にX画素分、回動部16は垂直方向にY画素分だけ回動したことになる。ここで、図3(A)から(C)の変化において角度検出部127を用いて検出された回動部16の回動量をRY度、水平回動部17の回動量をRX度とすると、回動部16の回動量1度あたりの画素数はY÷RYの演算により求められ、水平回動部17の回動量1度あたりの画素数はX÷RXの演算により求められる。同様に、1画素あたりの回動量をRY÷Yを演算することで求めることができる。
このように、制御部21は、プロジェクター11の回動部16及び水平回動部17の回動量と、PC2がプロジェクター11に出力する画像データの画素数との比率を求めるので、回動部16及び/又は水平回動部17が回動した場合に、その回動量に対応する画素数を求めることができる。
【0041】
図4は、制御部21が実行する変化量検出を示すフローチャートである。
PC2は、入力デバイスの操作等に従って変化量検出処理を開始し(ステップS11)、画像取得部21Bは記憶部22からテスト画像データ22Cを取得し、画像出力部24によってテスト画像データ22Cをプロジェクター11へ出力させる。とともに、画像取得部21Bは通信部26を介して、画像の投射を指示する制御データをプロジェクター11に送信する。これにより、プロジェクター11によってテスト画像データ22CがスクリーンSCに投射される(ステップS12)。
ここで、変化量検出部21Cは、プロジェクター11に対して撮影実行と撮影画像の送信を指示する制御データを送信し、プロジェクター11は、この制御データに従って撮像部48により1回目の撮影を行い、撮影画像データをPC2に送信する(ステップS13)。
【0042】
変化量検出部21Cは、プロジェクター11に対し、回動部16及び/又は水平回動部17の回動を指示する制御データを送信し、プロジェクター11は、この制御データに従って回転動作部125により回動部16及び/又は水平回動部17を回動させる(ステップS14)。変化量検出部21Cは、投射範囲100の水平方向の移動に関して変化量を検出する場合は水平回動部17を動作させ、投射範囲100の垂直方向の移動に関して変化量を検出する場合は回動部16を動作させる。
プロジェクター11の制御部103は、ステップS13で受信した制御データまたは事前の設定により指定された周期で2回目以後の撮影を行う。すなわち撮像部48を制御して撮影を実行し、撮影画像データをPC2に送信する(ステップS15)。
PC2の変化量検出部21Cは、プロジェクター11から受信した撮影画像データを、ステップS13で受信した1回目の撮影画像データと比較し、投射範囲100が、図3(B)及び(C)に示したように、初期状態の投射範囲100に隣接する位置に達したか否かを判別する(ステップS16)。
【0043】
投射範囲100が初期状態の投射範囲100に隣接する位置に達していない場合(ステップS16;No)、変化量検出部21Cは、ステップS14に戻ってさらに回動部16と水平回動部17とを回動させる。これにより、プロジェクター11は、回動部16及び水平回動部17を回動させる動作を、撮影周期に従って繰り返し実行する。
一方、投射範囲100が初期状態の投射範囲100に隣接する位置に達した場合(ステップS16;Yes)、変化量検出部21Cは、テスト画像データ22Cの画素と回動部16及び水平回動部17の回動量との比率を求める(ステップS17)。
以上の変化量検出処理により得られた画素と回動部16及び水平回動部17の回動量との比率は、変化量データ22Dとして記憶部22に記憶される。
【0044】
また、図2に示すように、制御部21は、制御プログラム22Aを実行することにより、範囲検出部21D及び抽出部21Eとして機能する。範囲検出部21D(範囲検出手段)は、画像取得部21Bが記憶部22から取得した画像データ22Bのうち、プロジェクター11によって投射する範囲を検出する。範囲検出部21Dは、画像データ22Bから、現在のプロジェクター11の投射方向に適合した範囲を抽出するため、抽出すべき範囲を求める処理を行う。
範囲検出部21Dは、画像投射開始時のプロジェクター11の投射方向を、画像データ22Bの中央すなわち投射範囲200の中央に位置していると設定する。この設定は便宜的なものであって、変更は可能であり、例えば、PC2の入力デバイスやプロジェクター11の操作パネル45の操作により設定してもよい。
範囲検出部21Dは、回転動作部125によって回動部16及び/又は水平回動部17が駆動され、投射方向が変化すると、プロジェクター11から入力される角度検出部127の検出値に基づいて、回動部16及び水平回動部17の各々の回動量を求める。さらに、範囲検出部21Dは、回動部16及び水平回動部17の回動量に相当する画素数を求め、プロジェクター11に出力する範囲を、求めた画素数だけ移動する。
【0045】
抽出部21E(画像抽出手段)は、画像取得部21Bが取得した画像データ22Bから、範囲検出部21Dにより検出された範囲を抽出し、抽出した画像データを表示用の画像データとして、画像出力部24によりプロジェクター11に出力する。
この範囲検出部21Dと抽出部21Eの動作によって、プロジェクター11の回動部16及び水平回動部17が回動すると、その回動量に対応して、画像データ22Bのうち投射範囲100に投射される範囲が変化する。従って、スクリーンSCには、広大な投射範囲200のうち投射範囲100に対応する位置の画像が投射されるので、プロジェクター11の投射範囲100を移動させることで画像データ22Bの全体を見ることができる。
【0046】
図5は、プロジェクションシステム10の動作を示すフローチャートであり、特に、PC2が有する画像データ22Bを投射する動作を示す。
PC2は、入力デバイスの操作等に従って変化量検出処理を開始し(ステップS21)、プロジェクター11の現在の投射方向及び投射範囲100の位置を初期値として設定する(ステップS22)。この後、プロジェクター11が回動部16及び水平回動部17を回動させた場合、初期値を基準として、初期値からの回動量により回動部16及び水平回動部17の位置が検出される。
PC2の画像取得部21Bは記憶部22から画像データ22Bを取得し、範囲検出部21Dは、画像データ22Bにおいて初期値に対応する範囲を検出し、抽出部21Eが画像データ22Bの一部を抽出する(ステップS23)。次いで、抽出部21Eは、抽出した範囲の画像データを画像出力部24によりプロジェクター11に出力し(ステップS24)、プロジェクター11は、PC2からI/F101に入力された画像データを投射部3によりスクリーンSC上に投射する(ステップS25)。
【0047】
ここで、プロジェクター11の制御部103は、操作パネル45またはリモコン(図示略)の操作によって、回動部16及び/又は水平回動部17の回動が指示された場合に、この指示に応じて回転動作部125を駆動する。この際、制御部103は、角度検出部127の検出値を、回動部16及び/又は水平回動部17が所定量回動する毎に、或いは所定時間毎に、PC2へ出力する。変化量検出部21Cは、角度検出部127の検出値に基づき、投射方向の変化があったか否かを判別する(ステップS26)。この判別は、例えば、角度検出部127の検出値に基づき、初期値からの回動量がしきい値を超えたか否かをもとに行われる。
変化量検出部21Cは、投射方向の変化がないと判別した場合(ステップS26;No)、投射を終了するか否かを判別し(ステップS29)、投射を終了しない場合は(ステップS29;No)、ステップS26に戻って投射を継続する。
【0048】
これに対し、投射方向の変化があったと判別した場合(ステップS26;Yes)、変化量検出部21Cは、初期値からの変化量を算出し(ステップS27)、算出された変化量に基づいて範囲検出部21Dが新たに抽出する範囲を検出して更新する(ステップS28)。その後、ステップS23に戻り、更新された範囲に従って抽出部21Eが画像データを抽出し、この抽出された画像データがスクリーンSCに投射される。また、この後繰り返し実行されるステップS23〜S26の処理では、投射する範囲が更新された時点での投射方向が初期値として再設定される。これにより、回動部16及び/又は水平回動部17の回動量がしきい値を超える毎に、抽出する範囲が更新される。
【0049】
以上説明したように、本発明を適用した実施形態に係るプロジェクションシステム10は、プロジェクター11と、プロジェクター11に画像データを供給するPC2とを備え、プロジェクター11は、スクリーンSCに画像を投射する投射部3を備え、PC2は、スクリーンSCと投射部3による投射範囲との位置関係に基づいて、投射部3が投射可能な解像度より大きい解像度を有する画像データ22Bから、投射される範囲を求める範囲検出部21Dと、画像データ22Bから範囲検出部21Dが求めた範囲を抽出して、画像データとしてプロジェクター11に供給する抽出部21Eとを備え、プロジェクター11が投射範囲100に投射可能な解像度より大きい解像度を有する画像データ22Bから一部を抽出してスクリーンSCに投射するので、プロジェクター11の投射方向やプロジェクター11の位置を反映して画像データ22Bの一部を抽出して投射する。これにより、スクリーンSCに投射される画像を、プロジェクター11の投射方向の変化に合わせて変化させることができ、投射範囲100より大きなスクリーンSCを利用して、投射範囲200に相当する広大な画像を投射できる。
【0050】
また、範囲検出部21Dは、回動部16及び/又はスクリーンSCと投射部3による投射範囲との相対位置が変化した場合に、この変化に追従して新たに範囲を求めるので、投射範囲100の移動に合わせて画像データ22Bのうち投射される範囲を移動させることができる。従って、回動部16及び水平回動部17の動作によって、投射範囲100しか投射できないプロジェクター11によって投射範囲200に相当する大きな画像を見ることができる。
【0051】
プロジェクター11は、回動部16及び水平回動部17を回動させて投射部3の向きを変更し、投射範囲100を移動させる回転動作部125と、プロジェクター11本体を基準として投射部3の向きの変化すなわち投射範囲100の移動を検出する角度検出部127を備え、範囲検出部21Dは、投射部3の向きが変化した場合に、この変化に追従して新たに範囲を求めるので、投射範囲100の移動に合わせて、画像データ22Bのうち投射される範囲を正確に移動させることができる。
【0052】
以下、本実施形態の変形例について説明する。変形例の説明において、上記実施形態と同様に構成される各部には同符号を付して説明を省略する。
【0053】
[変形例1]
図6は、第1の変形例の構成を示す図である。
上記実施形態のプロジェクター11は、本体15に対して回動する回動部16及び水平回動部17を備え、これら回動部16及び水平回動部17の回動量を角度検出部127により検出する構成であった。この変形例では、投射範囲100を移動させる構成の別の例について説明する。
図6に示すプロジェクター11Aは、プロジェクター11と同様の箱形の本体15Aを有する。本体15Aの前部には、回動部16と同様に、図中符号Vで示すように上下に回動可能な回動部16Aが設けられており、投射部3は回動部16Aに搭載されている。このため、回動部16Aの動作によって投射範囲100は上下に移動する。
また、本体15Aの底面はベース部15Bに載置されている。平板状のベース部15Bは設置面に静置され、このベース部15Bの上に、本体15Aが回動可能に搭載されている。本体15Aとベース部15Bとの連結部は、例えば、ベース部15Bに立設された軸(図示略)により本体15Aを下方から回動可能に支持し、この軸を中心として本体15Aを回動させるモーター(図示略)等を備えて構成される。従って、本体15Aは、モーター(図示略)の動力によりベース部15Bに対して、図中符号Hで示すように水平面内で回動する。
【0054】
回動部16Aと本体15Aとの連結部および本体15Aとベース部15Bとの連結部には、角度検出部127と同様に基準位置からの角度を検出する検出部が設けられる。プロジェクター11Aは、この検出部の検出値をPC2(図1)等の装置に出力し、PC2は、この検出値に基づいて、投射範囲100の水平方向及び垂直方向における移動を検出できる。従って、プロジェクター11に代えてプロジェクター11Aを用いてプロジェクションシステム10を構成した場合も、プロジェクションシステム10は、投射範囲100の移動に追従して投射画像を変化させて投射を行うことができ、ユーザーは画像データ22B全体を見ることができる。
【0055】
[変形例2]
図7は、第2の変形例の構成を示す図である。
この変形例に示すプロジェクター11Bは、箱形の本体15Cを有する。本体15Cは、その前面から投射部3が投射光を放射する構成となっており、投射部3は本体15Cに固定されている。このため、本体15Cを、図中符号V,Hで示す方向に動かすことで、プロジェクター11BがスクリーンSCに投射する投射範囲100を上下左右に移動させることができる。
【0056】
プロジェクター11Bの近傍には、位置検出装置50が設置されている。位置検出装置50は、本体15Cの基準位置からの移動および向きの変化を検出する検出機構を備えている。位置検出装置50は、プロジェクター11Bの通信部47との間で無線通信を実行し、当該検出機構で検出した移動量及び向きの変化量をプロジェクター11Bに送信する。位置検出装置50が備える検出機構は、例えば、プロジェクター11Bが備える通信部47との間で無線通信を実行して、電波強度に基づいて本体15Cと位置検出装置50との相対位置を検出する機構である。また、上記検出機構は、本体15Cに無線信号を送信する送信機(図示略)を複数設け、これら複数の送信機が発する無線信号を受信して、本体15Cの移動量及び向きの変化量を検出する機構や、本体15Cを撮影して、この撮影画像に基づいて本体15Cの移動及び向きの変化を検出する機構とすることができる。
プロジェクター11Bは、位置検出装置50から送信された本体15Cの移動量及び向きの変化量を、PC2(図1)等の装置に出力し、PC2は、これらの値に基づいて、投射範囲100の水平方向及び垂直方向における移動を検出できる。従って、プロジェクター11に代えてプロジェクター11Bを用いてプロジェクションシステム10を構成した場合も、プロジェクションシステム10は、投射範囲100の移動に追従して投射画像を変化させて投射を行うことができ、ユーザーは画像データ22B全体を見ることができる。
【0057】
[変形例3]
図8は、第3の変形例の構成を示す図であり、第3の変形例に係るプロジェクター11Cの機能ブロック図である。この図8にはPC2の機能ブロックを合わせて図示する。
第3の変形例に示すプロジェクター11Cは、プロジェクター11と同様の構成を有するが、回転動作部125及び角度検出部127を備えていない。即ち、プロジェクター11Cは、プロジェクター11B(図7)と同様に、本体に回動部16や水平回動部17のような可動部を持たない。
【0058】
プロジェクター11Cは、プロジェクター11C本体の移動及び傾きを検出する各種センサーを備えたセンサー部129を具備している。
センサー部129は、プロジェクター11Cの本体の移動を検出する加速度センサー、及び、プロジェクター11Cの本体の向きを検出するジャイロセンサー等を備え、これらセンサーの検出値を制御部103に出力する。制御部103は、センサー部129から入力される各センサーの検出値に基づいて、プロジェクター11Cの本体の移動及び向きの変化を検出する。この検出結果を、プロジェクター11CはPC2に出力し、PC2は、これらの値に基づいて、投射範囲100の水平方向及び垂直方向における移動を検出できる。従って、プロジェクター11に代えてプロジェクター11Bを用いてプロジェクションシステム10を構成した場合も、プロジェクションシステム10は、投射範囲100の移動に追従して投射画像を変化させて投射を行うことができ、ユーザーは画像データ22B全体を見ることができる。
【0059】
[変形例4]
上記実施形態及び各変形例では平面のスクリーンSCに投射を行う場合について説明したが、本発明は、曲面や複数の平面に対して画像を投射する場合にも有用である。
図9は、第4の変形例の構成を示す図である。
この図9に示す構成では、半球形状のドームの内面に形成されたスクリーンSC´に対して画像を投射する。プロジェクター11は半球のドームの底面Pに設置され、半球の中心に位置して、スクリーンSC´上の投射範囲100に画像を投射する。
この図9に示す構成によれば、スクリーンSC´より小さい投射範囲100に画像を投射するプロジェクター11を用い、投射範囲100を移動させながら投射を行うことで、スクリーンSC´の全体にわたる大きな画像を見ることができる。
【0060】
[変形例5]
図10は、第5の変形例の構成を示す図である。
この図10に示す構成では、直方体形状の室Rの壁面及び天井面をスクリーンとして、プロジェクター11が画像を投射する。プロジェクター11は、室Rの床面のほぼ中央に位置し、例えば、プロジェクター11の本体の前面が天井面を向くよう設置される。図10の構成によれば、プロジェクター11を用いて室Rの壁面及び天井面にわたる大きな画像を見ることができる。
【0061】
なお、上述した実施形態及び変形例は本発明を限定するものではなく、上記実施形態及び変形例とは異なる態様として本発明を適用することも可能である。例えば、上記実施形態及び変形例では、PC2の通信部26とプロジェクター11、11A〜11Cの通信部47とが有線接続された構成を例に挙げて説明したが、本発明はこれに限定されず、無線通信方式によって各種データを送受信可能に接続した構成とすることも可能である。この場合、無線通信方式として、例えば無線LAN、Bluetooth(登録商標)、UWB、赤外線通信等の近距離無線通信方式や、携帯電話回線を利用した無線通信方式を採用することができる。また、1台のプロジェクター11に対し、複数のPC2を、有線または無線で接続した構成とすることも可能である。
さらに、一つのスクリーンSC、SC´に対して複数のプロジェクター11、11A〜11Cから画像を投射してもよく、この場合、投射範囲200に相当する一つの画像のうち、複数のプロジェクター11、11A〜11Cにより各々異なる部分を投射する構成とすることができる。つまり、一つの画像データ22Bから、各プロジェクター11、11A〜11Cの投射方向に対応した部分を抽出して投射すればよい。
【0062】
また、上記実施形態及び変形例のプロジェクター11、11A〜11Cは、投射光とスクリーンSC、SC´との角度に対応した台形歪み補正を行う構成としてもよい。具体的には、例えば、スクリーンSC、SC´の投射状態を撮像部48により撮影し、この撮影画像から台形歪みの状態を検出して、これを補正する構成とすればよい。
【0063】
また、上記実施形態及び各変形例においては、プロジェクター11、11A〜11CがPC2に接続された構成について説明した。この構成では、PC2が、記憶部22に記憶した画像データ22Bの一部を抽出する等の処理を行って画像データを出力し、この画像データをプロジェクター11、11A〜11Cが投射する。本発明はこれに限定されるものではなく、PC2の機能をプロジェクター11、11A〜11Cが一体として備えた構成とすることも可能である。この場合、プロジェクター11、11A〜11CがPC2の機能として説明した全ての機能を具備する構成としてもよい。また、画像データ22Bを記憶する記憶部22を有する外部装置をプロジェクター11、11A〜11Cに接続して、プロジェクター11、11A〜11Cが上記外部装置から画像データ22Bを取得し、取得した画像データ22Bの一部を抽出して投射する構成としてもよい。
【0064】
また、上記実施形態においてプロジェクター11の記憶部105に記憶された制御プログラム105A、及び、PC2の記憶部22に記憶された制御プログラム22Aを図示しない不揮発性メモリーが記憶する構成であってもよいし、可搬型の記録媒体に記憶されている構成であってもよいし、或いは、PC2が通信ネットワークを介して接続された他の装置にダウンロード可能に記憶されていてもよい。また、図2及び図8に示したPC2及びプロジェクター11、11A〜11Cの各機能部は機能的構成を示すものであって、具体的な実装形態は特に制限されない。つまり、必ずしも各機能部に個別に対応するハードウェアが実装される必要はなく、一つのプロセッサーがプログラムを実行することで複数の機能部の機能を実現する構成とすることも勿論可能である。また、上記実施形態においてソフトウェアで実現されている機能の一部をハードウェアで実現してもよく、あるいは、ハードウェアで実現されている機能の一部をソフトウェアで実現してもよい。その他、プロジェクションシステム10の具体的な細部構成について、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で任意に変更可能である。
【符号の説明】
【0065】
2…PC(画像供給装置)、3…投射部、10…プロジェクションシステム、11、11A〜11C…プロジェクター、15、15A、15C…本体、16、16A…回動部、17…水平回動部、21…制御部、21A…通信制御部、21B…画像取得部、21C…変化量検出部、21D…範囲検出部(範囲検出手段)、21E…抽出部(画像抽出手段)、22…記憶部、22A…制御プログラム、22B…画像データ(全体画像)、22C…テスト画像データ、22D…変化量データ、22E…投射方向データ、24…画像出力部、26…通信部、47…通信部、48…撮像部、50…位置検出装置、100…投射範囲、100A〜100D、100C´、100D´…頂点、103…制御部、103A…表示制御部、103B…駆動制御部、103C…通信制御部、105…記憶部、105A…制御プログラム、113…画像処理部、125…回転動作部(投射方向変更手段)、127…角度検出部(投射方向検出手段)、129…センサー部(投射方向検出手段)、200…投射範囲、P…底面、R…室、SC、SC´…スクリーン(投射面)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロジェクターと、前記プロジェクターに画像を表す画像データを供給する画像供給装置とを備え、
前記プロジェクターは、投射面に前記画像を投射する投射手段を備え、
前記画像供給装置は、
前記投射面と前記投射手段による投射範囲との位置関係に基づいて、前記投射手段が投射可能な解像度より大きい解像度を有する全体画像から、投射される範囲を求める範囲検出手段と、
前記全体画像から前記範囲検出手段が求めた範囲を抽出して、前記画像データとして前記プロジェクターに供給する画像抽出手段とを備えること、
を特徴とするプロジェクションシステム。
【請求項2】
前記画像供給装置が備える前記範囲検出手段は、前記投射面と前記投射手段による投射範囲との相対位置が変化した場合に、この変化に追従して新たに前記範囲を求めることを特徴とする請求項1記載のプロジェクションシステム。
【請求項3】
前記プロジェクターは、
前記投射手段の向きを変更する投射方向変更手段と、
前記プロジェクター本体を基準として前記投射手段の向きを検出する投射方向検出手段とを備え、
前記画像供給装置が備える前記範囲検出手段は、前記投射方向検出手段により検出された前記投射手段の向きが変化した場合に、この変化に追従して新たに前記範囲を求めることを特徴とする請求項2記載のプロジェクションシステム。
【請求項4】
前記投射面は平面または曲面であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のプロジェクションシステム。
【請求項5】
投射面に画像を投射するプロジェクターに前記画像を表す画像データを供給する画像供給装置であって、
前記投射面と前記プロジェクターの投射範囲との位置関係に基づいて、前記プロジェクターが投射可能な解像度より大きい解像度を有する全体画像から、投射される範囲を求める範囲検出手段と、
前記全体画像から前記範囲検出手段が求めた範囲を抽出して、前記画像データとして前記プロジェクターに供給する画像抽出手段と、
を備えることを特徴とする画像供給装置。
【請求項6】
投射面に画像を投射する投射手段と、
前記投射面と前記投射手段による投射範囲との位置関係に基づいて、前記投射手段が投射可能な解像度より大きい解像度を有する全体画像から、投射される範囲を求める範囲検出手段と、
前記全体画像から前記範囲検出手段が求めた範囲を抽出する画像抽出手段と、
前記画像抽出手段により抽出された前記画像を前記投射手段により投射させる投射制御手段と、
を備えることを特徴とするプロジェクター。
【請求項7】
投射面に画像を投射するプロジェクターによる画像投射方法であって、
前記投射面と、前記プロジェクターの投射範囲との位置関係に基づいて、前記プロジェクターが投射可能な解像度より大きい解像度を有する全体画像から、投射される範囲を求め、
求めた範囲を前記全体画像から抽出し、
抽出した範囲を前記プロジェクターにより投射すること、
を特徴とする画像投射方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−20199(P2013−20199A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−155469(P2011−155469)
【出願日】平成23年7月14日(2011.7.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】