説明

プロジェクタ、およびその位置算出方法

【課題】スクリーンに対して正常に画像を投影可能な位置をユーザに報知することができるプロジェクタ、およびその位置検出方法を提供する。
【解決手段】画像補正を行う画像補正手段23と、画像補正手段23により補正した画像をスクリーンSCに投射する投射手段と、スクリーンSCに投射した画像を撮像する撮像手段27と、所定位置から投射した画像の撮像結果である基準画像と、当該画像の画像補正値である基準補正値と、を記憶する記憶手段26と、基準補正値に基づいて画像補正して任意の位置から投射した画像の撮像結果である任意画像と、記憶手段26に記憶されている基準画像との差分に基づいて、所定位置と任意の位置との相対位置を算出する相対位置算出手段と、算出した相対位置に関する情報を報知する報知手段19と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スクリーンに画像を投影するプロジェクタ、およびその位置算出方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、会議室などに設置されたスクリーンに対して画像を投影するプロジェクタが知られている。このプロジェクタは、投射レンズを平行移動して光軸を移動させるレンズシフト手段と、投射レンズのフォーカス調整を行う電動フォーカス手段と、投射レンズのズーム調整を行う電動ズーム手段と、プロジェクタの傾き及び投射光の投射方向を設定する投射方向/傾き設定手段と、スクリーンとプロジェクタの相対位置情報を検出する相対位置検出手段と、を備えている。相対位置検出手段は、プロジェクタ側およびスクリーン側に配置された交信機により、これらの相対位置/距離を検出する。そして、この検出結果に基づき、レンズシフト手段、電動フォーカス手段、電動ズーム手段、投射方向/傾き設定手段を制御し、投射画像の有効領域をスクリーンの有効領域に近づける。さらに、上記制御を行っても投射画像に台形歪みが残る場合には、投射画像の台形補正を行う。これにより、高品質の画像をスクリーンに投影する(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−341029号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上述のプロジェクタでは、設置位置が変わってしまうと、当該設置位置に基づいて(設置位置を基準として)投射対象となる画像の補正(フォーカス調整や台形歪補正等)を自動で行う。しかしながら、この自動補正のみで画像を完璧に補正することは難しく、最終的にはプロジェクタの操作者がこれら補正の微調整を行わなければならない。このため、設置位置が変わる度に、操作者が画像の補正(微調整)をしなければならず、手間がかかるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記の問題に鑑み、スクリーンに対して正常に画像を投影可能な位置をユーザに報知することができるプロジェクタ、およびその位置検出方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のプロジェクタは、画像補正を行う画像補正手段と、画像補正手段により補正した画像をスクリーンに投射する投射手段と、スクリーンに投射した画像を撮像する撮像手段と、所定位置から投射した画像の撮像結果である基準画像と、当該画像の画像補正値である基準補正値と、を記憶する記憶手段と、基準補正値に基づいて画像補正して任意の位置から投射した画像の撮像結果である任意画像と、記憶手段に記憶されている基準画像との差分に基づいて、所定位置と任意の位置との相対位置を算出する相対位置算出手段と、算出した相対位置に関する情報を報知する報知手段と、を備えたことを特徴とする。
【0006】
また、本発明のプロジェクタの位置算出方法は、画像補正を行う画像補正工程と、画像補正工程により補正した画像をスクリーンに投射する投射工程と、スクリーンに投射した画像を撮像する撮像工程と、所定位置から投射した画像の撮像結果である基準画像と、当該画像の画像補正値である基準補正値と、を記憶する記憶工程と、基準補正値に基づいて画像補正して任意の位置から投射した画像の撮像結果である任意画像と、記憶手段に記憶されている基準画像との差分に基づいて、所定位置と任意の位置との相対位置を算出する相対位置算出工程と、算出した相対位置に関する情報を報知する報知工程と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
これらプロジェクタおよびその位置算出方法によれば、所定位置から投射した画像(補正済み画像)を撮像した撮像結果を基準画像とする。そして、当該基準画像と、当該画像を投射したときの画像補正値である基準補正値と、を記憶する。一方、任意の位置から上記の基準補正値に基づいて投射した画像の撮像結果を任意画像とする。そして、これら基準画像と任意画像とを比較し、その差分に基づいて所定位置と任意の位置との相対位置を算出し、その算出した相対位置に関する情報を報知する。つまり、ユーザは、任意の位置(現時点のプロジェクタの設置位置)が、最初に基準画像の元となる投影画像を投射した所定位置からどの方向にどのくらい離れているかを知ることが出来る。これにより、ユーザは、所定位置における画像の補正のみを行いさえすれば、その後プロジェクタの設置位置が変わったとしても、上述の相対位置に関する情報に基づいてプロジェクタの位置を所定位置に移動させるだけで、スクリーンに対して正常な画像を投影することができる。このため、プロジェクタの設置場所が変ってしまったことに起因する画像補正(微調整)の手間を省くことが出来る。なお、報知する相対位置の情報としては、所定位置を基準とした現在の位置を報知しても良いし、現在の位置から所定位置までの移動方向や移動量、または移動方法を報知しても良い。
【0008】
本発明のプロジェクタにおいて、装置本体の位置変化を検出する位置変化検出手段をさらに備え、相対位置算出手段は、予め定めた所定量を超える位置変化の検出に伴って、相対位置を算出することが好ましい。
【0009】
この構成によれば、プロジェクタの位置変化を検出し、この位置変化の量が予め定めた所定量を超えた場合に基準位置と現在の位置(任意の位置)との相対位置を算出する。これにより、例えば、所定量を少なく設定することで、プロジェクタの位置変化に伴って刻々と相対位置を算出し、当該プロジェクタを設置すべき位置に関する情報を報知できる。
【0010】
本発明のプロジェクタにおいて、相対位置算出手段は、ユーザからの指示をトリガとして、相対位置を算出することが好ましい。
【0011】
この構成によれば、ユーザの指示(例えば、装置本体に搭載されたボタンを押す等)をトリガとして、基準位置と現在の位置との相対位置を算出する。これにより、例えば、プロジェクタの位置変化に伴って刻々と相対位置を算出する場合に比べ、プロジェクタの処理負荷を軽減できるため、プロジェクタの性能が低い場合などには好適である。
【0012】
本発明のプロジェクタにおいて、相対位置算出手段は、相対位置として、3次元方向における相対位置および装置本体の載置面に対する水平方向の回転角度を算出することが好ましい。
【0013】
この構成によれば、プロジェクタの位置を、3次元方向および装置本体の載置面に対する水平方向の相対位置で算出する。これにより、ユーザは、プロジェクタの現在位置が所定位置に対して、前後方向、左右方向、上下方向にどのくらい離れているか(どの位置にあるのか)、水平方向にどのくらい回転しているのかを知ることが出来る。
【0014】
本発明のプロジェクタにおいて、画像補正手段は、少なくともフォーカス手段、レンズシフト手段および台形歪補正手段から成ることが好ましい。
【0015】
この構成によれば、画像補正手段として、フォーカス手段、レンズシフト手段および台形歪補正手段を有するため、画像補正をより正確に行うことができる。
【0016】
本発明のプロジェクタにおいて、報知手段は、相対位置に関する情報を、投射手段によりスクリーンに投射して報知することが好ましい。
【0017】
この構成によれば、基準位置と現在のプロジェクタの位置との相対位置に関する情報を、スクリーンに投射して報知する。これにより、ユーザに対して視覚的に相対位置情報を提供することができるため、ユーザは容易にプロジェクタを設置すべき位置(あるいは、設置すべき位置までの方向および距離)を把握することができる。
【0018】
本発明のプロジェクタにおいて、報知手段は、相対位置に関する情報を、音声で報知することが好ましい。
【0019】
この構成によれば、基準位置と現在のプロジェクタの位置との相対位置に関する情報を音声で報知する。これにより、例えば、ユーザに対して「後ろにXセンチメートル、左にYセンチメートル移動してください。」と報知することで、ユーザは容易にプロジェクタの設置位置(あるいは、設置位置までの距離)を把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、添付した図面を参照して、本発明の一実施形態に係るプロジェクタ、およびその位置算出方法について説明する。
【0021】
図1は、本発明の一実施形態に係るプロジェクタ1の構成を示すブロック図である。同図に示すように、本実施形態のプロジェクタ1は、スクリーンSCに対して画像(映像光)を投射する光学系(投射手段、報知手段)として、照明光学系17と、液晶ライトバルブ18と、投射光学系19と、を備えている。また、プロジェクタ1は、これらの光学系に関わる構成要素として、光源ランプ駆動部11と、液晶ライトバルブ駆動部12と、投射光学系調整部13と、シフト位置検出部14と、ズーム位置検出部15と、フォーカス位置検出部16と、を備えている。
【0022】
さらに、プロジェクタ1は、その他の構成要素として、中央処理装置であるCPU(Central Processing Unit)21の他、画像入力部22と、画像処理部23と、操作部24と、加速度センサ25(位置変化検出手段)と、記憶部26(記憶手段)と、撮像部27(撮像手段)と、を備えている。このうち、構成要素11〜16および構成要素22〜27は、CPU21とバス28を介して接続されている。
【0023】
光源ランプ駆動部11は、照明光学系17に含まれる光源ランプを駆動する。光源ランプとしては、放電発光型のものであっても自己発光素子(発光ダイオードなど)であっても良い。液晶ライトバルブ駆動部12は、画像処理部23により処理された画像データに基づいて、画像形成素子である液晶ライトバルブ18を駆動する。
【0024】
投射光学系調整部13は、モータを有しており、投射光学系19に含まれる投射レンズの位置を調整する。当該投射レンズは、筒状の鏡筒内に、ズームレンズやフォーカスレンズなど複数のレンズが収容された組レンズとして構成される。
【0025】
具体的には、投射光学系調整部13は、投射レンズを光源光軸LAに直交する方向に移動させることによって、投射光学系19のシフト位置を調整する(レンズシフト手段)。また、投射光学系調整部13は、投射レンズに含まれるズームレンズを、これを支持するズームリングの回転によって、光源光軸LAに平行な方向に移動させることにより、投射光学系19のズーム位置を調整する。さらに、投射光学系調整部13は、投射レンズに含まれるフォーカスレンズを、これを支持するフォーカスリングの回転によって、光源光軸LAに直交する方向に移動させる(複数のレンズの相対位置を変更させる)ことにより、投射光学系19のフォーカス位置を調整する(フォーカス手段)。なお、光源光軸LAとは、照明光学系17から射出される光の中心軸を指し、液晶ライトバルブ18の有効表示領域(画像形成面)の中心を通る。
【0026】
シフト位置検出部14は、投射光学系19のシフト位置を検出する。ズーム位置検出部15は、投射光学系19のズーム位置を検出する。また、フォーカス位置検出部16は、投射光学系19のフォーカス位置を検出する。なお、これら各検出部(シフト位置検出部14、ズーム位置検出部15およびフォーカス位置検出部16,以下、「投射検出部10」と総称する)の検出結果は、投射光学系調整部13による画像調整のために用いられる。また、投射検出部10としては、ロータリーエンコーダや可変抵抗器など、周知の位置検出手段を適用可能である。
【0027】
画像入力部22は、メモリカード35などの外部記憶媒体から画像データを取得する。この場合、画像入力部22は、画像データを読み出すメモリカードスロットにより構成される。また、画像入力部22は、パーソナルコンピュータ36やビデオレコーダ37等の外部装置から画像データを取得することも可能である。この場合、画像入力部22は、パーソナルコンピュータ36から出力されたRGB信号やビデオレコーダ37から出力されたコンポジット信号を受信するインターフェースにより構成される。
【0028】
画像処理部23(画像補正手段)は、台形歪補正部31(台形歪補正手段)を有し、画像処理プログラムに基づいて所定の画像処理を実行する。台形歪補正部31は、プロジェクタ1の水平方向における回転や仰角変化に伴う画像の歪みを補正する。例えば、スクリーンSCに対して斜め方向からプロジェクタ1による投射を行う場合、液晶ライトバルブ18に歪みのない画像が形成されると、スクリーンSC上の投影画像Gが略台形状にゆがんでしまう。そこで、液晶ライトバルブ18に略台形状に歪んだ画像(スクリーンSC上に投影される投影画像Gの逆画像)を形成すれば、スクリーンSC上に歪みのない画像(正しいアスペクト比を有する矩形画像)を投影させることができる。すなわち、台形歪補正部31は、画像補正処理に伴って、この補正済みの画像データを生成する処理を行う。
【0029】
撮像部27は、プロジェクタ1の筐体の前面に取り付けられており、CCDカメラ34により構成されている。この撮像部27により、投射光学系調整部13および画像処理部23(台形歪補正部31)により補正(調整)され、スクリーンSCに投影された画像を撮像する。
【0030】
操作部24は、ユーザによって操作されるものであり、電源ボタンや各種設定(コントラスト設定、色補正、環境設定など)を行うためのキー群を有する。当該キー群には、補正情報設定キー32と、画像補正モード選択キー33と、が含まれる。
【0031】
補正情報設定キー32は、スクリーンSCに投影された投影画像Gの撮像結果および当該投影画像Gの画像補正に関する情報を記憶部26に記録させるためのものである。具体的には、この補正情報設定キー32が押されると、投影画像Gの撮像結果を基準画像として、また、投影画像Gを投影したときの台形歪補正部31による画像補正値を基準補正値として記憶部26に記録するようになっている。なお、この基準画像および基準補正値は、プロジェクタ1により正常に投影された投影画像Gの撮像結果および画像補正値であればよく、投影画像Gの大きさ・形状および画像補正値は、これらを取得する際のプロジェクタ1の設置位置毎に異なる。また、この時のプロジェクタ1の設置位置を基準位置(所定位置)と定義する。
【0032】
画像補正モード選択キー33は、第1補正モードおよび第2補正モードを有し、これら各補正モードのどちらのモードで画像補正処理を実行するかを選択するものである。第1補正モードが選択された場合、一般的な画像補正処理と同様に、現在のプロジェクタ1の設置位置からの投影画像Gが好適に投影されるように、投射光学系調整部13および台形歪補正部31により画像補正が実行される。
【0033】
一方、第2補正モードが選択された場合、対象となる画像に対して、記憶部26に記憶された基準補正値に基づいて画像補正が実行される。そして、この基準補正値に基づいて投射した画像の撮像結果(以下、「任意画像」と称す。)と記憶部26に記憶された基準画像との差分に基づいて、基準位置(基準画像の元となる投影画像Gが投影された際のプロジェクタ1の設置位置)と任意画像の元となる投影画像Gが投影された際のプロジェクタ1の設置位置(以下、「任意の位置」と称す。)との相対位置が算出され(相対位置算出手段)、算出した相対位置に関する情報が報知される。なお、基準補正値が記憶されていない場合は、第2補正モードの選択は無効となる。
【0034】
加速度センサ25は、プロジェクタ1の位置変化量を検出する。なお、加速度センサ25としては、圧電体型、半導体ひずみゲージ型、サーボ型のいずれを用いても良い。本実施形態では、プロジェクタ1の複数箇所に加速度センサ25が搭載されており、CPU21は、各加速度センサ25から出力される計測値に基づいて、プロジェクタ1の前後方向、上下方向および左右方向における移動量、水平方向における回転量、並びに仰角の変化量を検出する。
【0035】
なお、「前後方向」、「上下方向」、「左右方向」、「水平方向」および「仰角」とは、スクリーンSCに対するプロジェクタ1の位置変化を指すものであり、図2(プロジェクタ1を側面から見た平面図)および図3(プロジェクタ1を上面から見た平面図)に示すとおりである。なお、両図において、参照番号41は、プロジェクタ1を設置する設置台を示している。
【0036】
ここで、図4を参照して基準画像および基準補正値を記憶する手順について説明する。まず、プロジェクタ1は、ユーザにより画像補正モード選択キー33から第1補正モードが選択されることで画像補正指示を受ける(S01)。プロジェクタ1は、この指示をトリガとして、投射検出部10の検出結果に基づいて投射光学系調整部13による画像調整(レンズシフト調整、ズーム調整、フォーカス調整)を実行すると共に(S02)、台形歪補正部31により水平方向における回転や仰角変化に伴う画像の歪みを補正する(S03)。これにより、スクリーンSCに正常な投影画像Gを投影することができる。この時のプロジェクタ1の設置位置が基準位置となる。
【0037】
この状態で、ユーザにより補正情報設定キー32が押されると(S04)、プロジェクタ1は、現在投影されている投影画像Gを撮像し(S05)、これを基準画像として記憶部26に記憶する(S06)。これと同時に、当該投影画像Gに関する台形歪補正部31による画像補正値を基準補正値として記憶部26に記憶する(S07)。なお、これら基準画像および基準補正値は、プロジェクタ1の電源をOFFしても消去されることがない。また、再度補正情報設定キー32が押された場合は、上書き保存される。なお、補正情報設定キー32による補正情報の記録は、第1補正モード選択時にのみ有効になる。これにより、例えば、第2補正モード選択時において、プロジェクタ1を基準位置に移動する前に当該キー32が押されることにより、正常に投影されていない投影画像Gの撮像結果や画像補正値(つまり、基本画像や基本補正値として相応しくない情報)を記憶することを防止できる。
【0038】
次に、図5ないし図9を参照して、基準位置とプロジェクタ1の現在位置(任意の位置)との相対位置に関する情報を報知する手順について説明する。なお、図6は、ここでのプロジェクタ1の基準位置P0および現在位置P1を示すものであり、図中のL1は基準位置P0と現在位置P1との前後方向の距離、L2は左右方向の距離、θは基準位置P0におけるプロジェクタ1の向きを基準とした現在位置P1のプロジェクタ1(光軸)の水平方向の向き(回転角度)を示す。また、図7は、図6の各位置(基準位置P0および現在位置P1)において撮像した画像(基準画像H0および任意画像H1)を示すものである。また、記憶部26には、基準画像H0および基準補正値が記憶されているものとする。
【0039】
まず、プロジェクタ1が任意の位置に設置され、ユーザにより画像補正モード選択キー33から第2補正モードが選択されると(S11)、プロジェクタ1は、記憶部26から基準補正値および基準画像H0を読み出す(S12、S13)。次に、投影対象となる画像に対して基準補正値に基づいて画像補正を行う(S14)。そして、この画像をスクリーンSCに投影し、その投影画像Gを任意画像H1として撮像する(S15)。
【0040】
次に、プロジェクタ1は、基準画像H0と任意画像H1との差分から、基準位置P0とプロジェクタ1の現在位置P1との相対位置を算出する(S16)。この場合、図7に示すように、CCDカメラ34の撮像領域ARにおける画像の位置に基づいて、基準画像H0の四隅の座標(座標A、B、C、D)および任意画像H1の四隅の座標(座標A´、B´、C´、D´)を検出し、これら四隅の座標の位置関係(座標毎の差分)から、基準位置P0とプロジェクタ1の現在位置P1との相対位置を算出する。そして、プロジェクタ1は、この相対位置に関する情報をスクリーンSCに投影してユーザに報知する(S17)。
【0041】
例えば、上記の処理で算出された基準位置P0と現在位置P1との相対位置から、図6における前後方向の距離L1が30cm、左右方向の距離L2が30cm、水平方向の回転角度θが30°であると分かった場合、プロジェクタ1は、図8(a)に示すように、自身の現在位置P1から基準位置P0までの移動方向や移動量等をスクリーンSCに投影してユーザに報知する。なお、図8(b)に示すように、基準位置P0を基点としたプロジェクタ1の現在位置P1をプロジェクタ1に投影するようにしても良い。
【0042】
また、プロジェクタ1は、加速度センサ25により自身の位置変化を検出し、この位置変化が所定量を超えた場合、S14からS17までの処理を行い、基準位置P0とプロジェクタ1の現在位置P1との相対位置を算出する。そして、スクリーンSCにこの相対位置に関する情報を投影して報知する(図9参照)。これにより、例えば、所定量を少なく設定することで、プロジェクタ1の位置変化に伴って刻々と相対位置を算出し、当該プロジェクタ1を設置すべき位置に関する情報を報知することができる。
【0043】
以上のように、本実施形態によれば、所定位置から投影した投影画像Gの撮像結果である基準画像と、当該投影画像Gを投射したときの画像補正値である基準補正値とを記憶する。また、この時の所定位置をプロジェクタ1の基準位置とする。一方、任意の位置から上記の基準補正値に基づいて投射した投影画像Gの撮像結果を任意画像とする。そして、これら基準画像と任意画像とを比較し、その差分に基づいて基準位置と任意の位置との相対位置を算出し、その算出した相対位置に関する情報を報知する。つまり、ユーザは、現時点のプロジェクタ1の位置(任意の位置)が、基準位置からどの方向にどのくらい離れているかを知ることが出来る。これにより、ユーザは、基準位置における画像の補正のみを行いさえすれば、その後は、プロジェクタ1の設置位置が変わったとしても、上述の相対位置に関する情報に基づいてプロジェクタ1の位置を基準位置に移動させるのみでスクリーンSCに対して正常な画像を投影することができる。このため、プロジェクタ1の設置場所が変ってしまったことに起因する画像補正(微調整)の手間を省くことが出来る。
【0044】
なお、本実施形態では、加速度センサ25によりプロジェクタ1自身の位置変化を検出し、この位置変化が所定量を超えた場合に、基準位置に対する現在のプロジェクタ1の設置位置の相対位置を算出するようにしているが、これに限らず、所定時間毎に加速度センサ25による位置変化を検出し、その都度相対位置を算出するようにしても良い。あるいは、ユーザからの指示(例えば、プロジェクタ1に搭載されたボタンを押す等)をトリガとして、相対位置を算出するようにしても良い。ユーザからの指示をトリガとすることで、プロジェクタ1の位置変化に伴って刻々と相対位置を算出する場合に比べ、プロジェクタ1の処理負荷を軽減できるため、プロジェクタ1の性能が低い場合などには好適である。
【0045】
また、台形歪補正部31による画像補正値のみならず、投射検出部10の検出結果(フォーカス位置やレンズシフト位置等の検出結果)を含めて基準補正値とし、これにより任意の位置から投影する画像の補正を行うようにしても良い。
【0046】
また、相対位置に関する情報として、プロジェクタ1の上下方向の移動量や仰角変化に関する情報を報知するようにしても良い。
【0047】
また、撮像対象となる投影画像Gとしては、輝度の高い白光を投射した際に投影される白色の矩形画像が好ましい。
【0048】
また、プロジェクタ1の現在位置と基準位置との相対位置に関する情報をスクリーンSCに投影する際、双方の位置関係を示す図を含めて投影するようにしても良い。例えば、図10に示すように、プロジェクタ1の基準位置、プロジェクタ1の現在位置および光軸の水平方向の向きを、プロジェクタ1を模式的に示した画像とその配置角度とで示すと共に、プロジェクタ1の現在位置から基準位置までの移動方向を矢印等で示すことで、ユーザは、プロジェクタ1をどの方向に移動させればよいのかを、より一層容易に把握することができる。
【0049】
また、本実施形態では、プロジェクタ1の基準位置と現在位置との相対位置に関する情報をスクリーンSCに投影することで、ユーザに対して視覚的に報知するようにしているが、これに限らず、この情報を音声で報知するようにしても良い。音声で報知することで、ユーザは容易にプロジェクタ1の設置位置(あるいは、設置位置までの距離)を把握することができる。
【0050】
また、上述した実施例によらず、プロジェクタ1の装置構成や位置算出方法における処理工程等について、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係るプロジェクタのブロック図である。
【図2】プロジェクタを側面から見た平面図である。
【図3】プロジェクタを上面から見た平面図である。
【図4】基準画像および基準補正値を記憶する手順を示すフローチャートである。
【図5】プロジェクタの基準位置と現在位置との相対位置を算出する処理手順を示すフローチャートである。
【図6】プロジェクタの基準位置および現在位置の位置関係の例を示す図である。
【図7】図6の基準位置および現在位置において撮像した画像を示す図である。
【図8】スクリーンに投影する相対位置に関する情報の一例を示す図である。
【図9】プロジェクタの位置変化に伴い、スクリーンに投影される相対位置に関する情報が変化する様子を示す図である。
【図10】スクリーンに投影する相対位置に関する情報の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0052】
1…プロジェクタ 13…投射光学系調整部 17…照明光学系 18…液晶ライトバルブ 19…投射光学系 23…画像処理部 25…加速度センサ 26…記憶部 27…撮像部 31…台形歪補正部 34…CCDカメラ G…投影画像 P0…基準位置 P1…現在位置 H0…基準画像 H1…任意画像 SC…スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像補正を行う画像補正手段と、
前記画像補正手段により補正した画像をスクリーンに投射する投射手段と、
前記スクリーンに投射した前記画像を撮像する撮像手段と、
所定位置から投射した前記画像の撮像結果である基準画像と、当該画像の画像補正値である基準補正値と、を記憶する記憶手段と、
前記基準補正値に基づいて画像補正して任意の位置から投射した画像の撮像結果である任意画像と、前記記憶手段に記憶されている基準画像との差分に基づいて、前記所定位置と前記任意の位置との相対位置を算出する相対位置算出手段と、
算出した前記相対位置に関する情報を報知する報知手段と、を備えたことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
装置本体の位置変化を検出する位置変化検出手段をさらに備え、
前記相対位置算出手段は、
予め定めた所定量を超える位置変化の検出に伴って、前記相対位置を算出することを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項3】
前記相対位置算出手段は、
ユーザからの指示をトリガとして、前記相対位置を算出することを特徴とする請求項1に記載のプロジェクタ。
【請求項4】
前記相対位置算出手段は、
前記相対位置として、3次元方向における相対位置および装置本体の載置面に対する水平方向の回転角度を算出することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項5】
前記画像補正手段は、
少なくともフォーカス手段、レンズシフト手段および台形歪補正手段から成ることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項6】
前記報知手段は、
前記相対位置に関する情報を、前記投射手段により前記スクリーンに投射して報知することを特徴とする請求項1ないし5のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項7】
前記報知手段は、
前記相対位置に関する情報を、音声で報知することを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載のプロジェクタ。
【請求項8】
画像補正を行う画像補正工程と、
前記画像補正工程により補正した画像をスクリーンに投射する投射工程と、
前記スクリーンに投射した前記画像を撮像する撮像工程と、
所定位置から投射した前記画像の撮像結果である基準画像と、当該画像の画像補正値である基準補正値と、を記憶する記憶工程と、
前記基準補正値に基づいて画像補正して任意の位置から投射した画像の撮像結果である任意画像と、前記記憶手段に記憶されている基準画像との差分に基づいて、前記所定位置と前記任意の位置との相対位置を算出する相対位置算出工程と、
算出した前記相対位置に関する情報を報知する報知工程と、を備えたことを特徴とするプロジェクタの位置算出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−186528(P2009−186528A)
【公開日】平成21年8月20日(2009.8.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−23490(P2008−23490)
【出願日】平成20年2月4日(2008.2.4)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】