説明

プロジェクター式ヘッドランプ

【課題】点灯時及び非点灯時の見栄えを従来技術と同等としつつ、部品点数の削減を図ることができる、プロジェクター式ヘッドランプを提供する。
【解決手段】プロジェクター式ヘッドランプ1は、ハウジング10とアウターレンズ20とで画成した灯室S内に、バルブ35を搭載したプロジェクターユニット30と、バルブ35から距離を置いてバルブ前方に配置した凸型レンズ40と、凸型レンズ40の周縁部から傘状に広がった透明樹脂で成る透明部材60と、を有し、透明部材60はその表面にミラー処理又はハーフミラー処理を施した複数の反射部を有する。透明部材60の表面に、車両前側から車両後側へ傾斜面60Aと傾斜面60Aの後端から立ち上がった壁面60Bとを繰り返して形成し、複数の壁面60Bを反射部として構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はヘッドランプに係り、特にバルブからの光を凸型レンズを介して外部へ照射するプロジェクター式ヘッドランプの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図5は従来の車両の右側の車両用ランプ100の正面図である。この図に示すように、車両用ランプ100として、近年、フォグランプ101と共にプロジェクター式ヘッドランプ102を搭載したものが普及している。
【0003】
図6は図5のA−A線に沿ったプロジェクター式ヘッドランプ102の断面図であり、このプロジェクター式ヘッドランプ102は、ハウジング110とアウターレンズ120とで画成される灯室S’内に、バルブ131を搭載したプロジェクターユニット130と、このバルブ131から距離を置いてバルブ前方に配置された凸型レンズ140と、を備えている。
【0004】
凸型レンズ140からバルブ131までの間には、凸型レンズ140の周縁から車両後方側へ傘状に広がった透明部材150が配設されている。この透明部材150は透明樹脂で成るため、日中には透明部材150を介して凸型レンズ140の奥部、即ちバルブ周辺領域が光に照らされるため、灯体内を明るくすることができる。
夜間では、バルブ131からの光が凸型レンズ140を介して車両前方を照らすことに加え、透明部材自体が車両外部から光って見えるようにしている。
このように、図6に示すタイプのプロジェクター式ヘッドランプ102では、透明樹脂でなる透明部材150を凸型レンズ140とバルブ131との間に配設することで、点灯時及び非点灯時のヘッドランプの見栄えを向上させている。
【0005】
特許文献1、2には、この種のプロジェクター式ヘッドランプが開示されている。
【特許文献1】特開2000−195310号公報
【特許文献2】特開2002−140906号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図6に示す従来のプロジェクター式ヘッドランプ102では、ヘッドランプの正面から透明部材150を介してランプ奥側を覗くと、透明部材150の車両後方側に配設したプロジェクターユニット130が車両外側から視認され得る。そこで、これを隠すために透明部材150の車両後方側に中見えを防止する部材(以下、中見え防止部材と呼称する)160を配置しているが、このような中見え防止部材160を、前述のランプ構成部品とは別個に製造したのでは、部品点数、質量及びコストの増加になってしまう。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑みて創作されたもので、点灯時及び非点灯時の見栄えを従来技術と同等としつつ、部品点数の削減を図ることができる、プロジェクター式ヘッドランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、ハウジングとアウターレンズとで画成される灯室内に、バルブを搭載したプロジェクターユニットとバルブから距離を置いてバルブ前方に配置された凸型レンズとを備えたプロジェクター式ヘッドランプであって、凸型レンズの周縁部から傘状に広がった透明樹脂で成る透明部材を有していて、この透明部材がその表面に複数の反射部を有して構成されることを特徴とする。
本発明のプロジェクター式ヘッドランプにおいて、複数の反射部は、透明部材の表面をミラー処理又はハーフミラー処理して成る。また、反射部は、ミラーフィルム或いはハーフミラーフィルムを透明部材の表面及び/又は裏面に貼着して構成されてもよい。
本発明のプロジェクター式ヘッドランプにおいて、透明部材の表面は、車両前側から車両後側へ傾斜面とこの傾斜面の後端から立ち上がった壁面とを繰り返して形成されており、複数の壁面が反射部として構成されている。
本発明のプロジェクター式ヘッドランプにおいて、好ましくは、複数の傾斜面にはシボ加工が施される。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、点灯時及び非点灯時のヘッドランプの見栄えを従来技術と同等としつつも、透明樹脂でなる透明部材の外表面に、部分蒸着等の鏡面処理とシボの加飾を設定することで灯体内の中見えを防ぐことができる。この場合、従来のヘッドランプで必要としていた中見え防止部材を廃止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。なお、図中のFrは車両前方を、Upは車両上方を、LHは車両の横幅方向であって左方を示す。
図1は本発明の実施形態に係るプロジェクター式ヘッドランプ(以下、ヘッドランプと呼称する)1の断面図である。図2はヘッドランプ1の一部構成部品の分解斜視図である。
ヘッドランプ1は、ハウジング10とアウターレンズ20とで画成される灯室S内に、バルブ35を搭載したプロジェクターユニット30と、バルブ35から距離を置いてバルブ前方に配置された凸型レンズ40と、を備えている。
【0011】
ハウジング10は、図1に示すように、車両前方へ拡開するように広がった椀状のハウジング本体部11と、このハウジング本体部11の中心に開けられたサービスホール11Aを塞ぐ蓋部12と、ハウジング本体部11の下側の開口縁から車両前方へ向けて延出した後底部13と、この後底部13の前端から車両前方へ向けて延出した前底部14と、を備えている。
このように構成されたハウジング10の縁、具体的にはハウジング本体部11の上縁及び前底部14の縁に、アウターレンズ20のフランジ部が当接するように、ハウジング10の前側にアウターレンズ20が配設される。
ハウジング10及びアウターレンズ20も樹脂で成るが、アウターレンズ20は透明樹脂でなる。
【0012】
プロジェクターユニット30は、発光源となるものであり、内部にバルブ35を着脱可能に搭載したものである。このプロジェクターユニット30は、図2に示すように、内部にバルブ35を収容するよう前方に拡開したカップ状の筐体部31と、この筐体部31の開口縁から前方に突出した複数のアーム部32と、これらのアーム部32の先端部に連結された円環部33と、から成る。
なお、本実施形態では、バルブ35としてキセノンヘッドランプを使用しており、ヘッドランプ1がディスチャージヘッドランプ(discharge headlamp)として構成されている。
図示を省略するが、筐体部31の内部には、バルブ35からの迷光を前方へ反射するリフレクターが配設されている。
このように構成されるプロジェクターユニット30は、例えば耐熱性に優れたポリエーテルサルフォン(polyether sulfone:PES)で成る。
【0013】
凸型レンズ40は、バルブ35からの光を前方へ収束させて照射するものであり、図1に示すように、バルブ側が平坦に形成され、車両前方側へ砲弾状に張り出すように形成されている。この凸型レンズ40はガラスから成る。
この凸型レンズ40は、図3に示すように、その周縁を円環部33の内周面に当接させた状態で、円環部33と共にレンズホルダー50によって挟持されて、プロジェクターユニット30に固定される。
【0014】
このようにして、バルブ35の前方に配置された凸型レンズ40に対して、透明部材60が凸型レンズ40の周囲に設けられる。この透明部材60は、その中心領域がレンズ挿入用に開いており、この開口61(図2)の周囲から傘状に広がった形状を成す。具体的には、透明部材60は、凸型レンズ40の周縁部から車両後方へ行くにつれて凸型レンズ40の中心を貫く仮想水平線L(図1参照)に対して次第に離れるように傘状に広がるように形成されている。この透明部材60も、透明樹脂、例えばアクリル樹脂やポリカーボネート樹脂、耐熱性ポリスチレン樹脂などから成形される。
この透明部材60はプロジェクターユニット30の円環部33に係合して、灯室S内で、凸型レンズ40の周縁から車両後方側へ向けて傘状に広がるように配設される。具体的には、透明部材60の開口61寄りの内周面には爪部62が設けられており、この爪部62が係合する孔33Aが円環部33に設けられている。
【0015】
さらに、本実施形態の透明部材60は、外側表面にミラー処理が施された複数の反射部を有する。
ここで、図4は透明部材60の外側表面の部分、具体的には図1の破線の円で囲んだ領域部分の拡大斜視図であり、この図に示すように、透明部材60の外表面は、車両前側から車両後側へ行くにつれて傾斜面60Aとこの傾斜面60Aの後端から立ち上がった壁面60Bとを繰り返して形成されており、これらの複数の壁面60B、図2中の斜線領域にミラー処理が施されている。例えば、壁面60Bには、アルミニウム蒸着処理が施されている。このように、壁面60Bに入射した光をアルミニウムで完全に反射させる代わりに、壁面60Bにハーフミラー処理を施してもよい。このようなミラー処理が施される壁面60Bは、車両前方側と対向するように面が広がっている。
さらに、本実施形態の透明部材60では、複数の傾斜面60Aにシボ加工を施して、透明部材60の奧側への光の採光を確保しつつライト外部から透明部材60の奧側が直接視認されることを防止している。シボ加工の模様としては、皮革模様に限らず、木目、岩目、砂目、幾何学模様などであってもよい。
なお、透明部材60の内側は、湾曲面として構成されている。
【0016】
本実施形態に係るヘッドランプは、さらに、透明部材60とアウターレンズ上側のフランジ部との隙間を埋めるように、灯室S内に第1エクステンション71を設け、さらに、透明部材60の下縁とアウターレンズ下側のフランジ部との隙間を埋めるように第2エクステンション72及び第3エクステンション73を設けている。これらの第1〜3のエクステンションは、所謂メインライトと所謂サブライトの両方をつなぎ包む部材である。
【0017】
このように構成されたヘッドランプ1によれば、日中には透明部材60、具体的には複数の傾斜面60Aを介して凸型レンズ40の奥部、即ちバルブ周辺領域が光に照らされるため、灯体内を明るくすることができる。
夜間では、バルブ35からの光が凸型レンズ40を介して車両前方を照らし、さらに、透明部材60の傾斜面60Aからもバルブ35からの光を外側に照射させるため、ヘッドランプ1を正面から見た場合、凸型レンズ40の周りにリング状に発光する領域を形成することができる。
【0018】
また、ヘッドランプ1の正面から透明部材60を介してランプの奥側を覗いた場合、透明部材60の壁面60Bにミラー処理が施されていると共に傾斜面60Aにはシボ加工が施されていて、壁面60Bに入射した光が車両前方側へ反射されるので、ヘッドランプ1の正面からランプ奧側を直接視認することが規制されている。
【0019】
このように、本発明の実施形態に係るヘッドランプ1によれば、点灯時及び非点灯時のヘッドランプ1の見栄えを従来技術と同等としつつも、透明樹脂でなる透明部材60の外表面に、部分蒸着とシボの加飾を設定することで灯体内の中見えを防ぐことができる。この場合、従来のヘッドランプで必要としていた中見え防止部材を廃止することができる。
【0020】
以上詳述したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施をすることができる。
上記説明では、透明部材の外側表面にミラー処理とシボ加工処理とを施した構成を示したが、本発明における透明部材はシボ加工を省略して構成されてもよい。
上記説明におけるミラー処理及びハーフミラー処理は、透明部材の表面にアルミニウム等を蒸着する処理に限らず、ミラーフィルム又はハーフミラーフィルムを透明部材の外側表面に被着させる構成を含む。
透明部材の外側表面に施したミラー処理とシボ加工処理とは透明部材の内側表面に施しても良い。この場合、透明部材の外側表面は湾曲面として構成され、内側表面は傾斜面と壁面とが車両前側から後側にかけて繰り返して形成される。
本発明におけるヘッドランプ、即ちプロジェクター式ヘッドランプは、白熱電球タイプにも適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態に係るプロジェクター式ヘッドランプの断面図である。
【図2】図1のプロジェクター式ヘッドランプの部分分解斜視図である。
【図3】図1のプロジェクター式ヘッドランプにおける凸型レンズと円環部とレンズホルダーの結合構造を示す断面図である。
【図4】図1のプロジェクター式ヘッドランプにおける透明部材の表面を示す部分拡大斜視図である。
【図5】従来の車両右側の車両ランプの正面図である
【図6】図5のA−A線に沿った従来のプロジェクター式ヘッドランプの断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 プロジェクター式ヘッドランプ
10 ハウジング
11 ハウジング本体部
11A サービスホール
12 蓋部
13 後底部
14 前底部
20 アウターレンズ
30 プロジェクターユニット
31 筐体部
32 アーム部
33 円環部
33A 孔
35 バルブ
40 凸型レンズ
50 レンズホルダー
60 透明部材
60A 透明部材の傾斜面
60B 透明部材の壁面
61 透明部材の開口
62 透明部材の爪部
71 第1エクステンション
72 第2エクステンション
73 第3エクステンション
L 仮想水平線
S 灯室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングとアウターレンズとで画成される灯室内に、バルブを搭載したプロジェクターユニットと、上記バルブから距離を置いてバルブ前方に配置された凸型レンズと、を備えた、プロジェクター式ヘッドランプであって、
上記凸型レンズの周縁部から傘状に広がった透明樹脂で成る透明部材を有し、
上記透明部材はその表面に複数の反射部を有する、プロジェクター式ヘッドランプ。
【請求項2】
前記透明部材の表面は、車両前側から車両後側へ傾斜面とこの傾斜面の後端から立ち上がった壁面とを繰り返して形成されており、
複数の上記壁面が前記反射部として構成されている、請求項1に記載のプロジェクター式ヘッドランプ。
【請求項3】
前記複数の反射部は、透明部材の表面をミラー処理又はハーフミラー処理して成る、請求項1又は2に記載のプロジェクター式ヘッドランプ。
【請求項4】
前記複数の傾斜面にシボ加工が施されている、請求項2又は3に記載のプロジェクター式ヘッドランプ。
【請求項5】
ディスチャージ式ヘッドランプである、請求項1〜4の何れかに記載のプロジェクター式ヘッドランプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−118322(P2010−118322A)
【公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−292817(P2008−292817)
【出願日】平成20年11月14日(2008.11.14)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【Fターム(参考)】