説明

プロジェクター

【課題】ファンによる装置内の冷却を適切に保ち、かつ、ファンの送風量が増大して騒音が大きくなることを抑制できるプロジェクターを提供すること。
【解決手段】送風制御部95において、調光装置90の調光羽根が相対的に閉じた場合よりも相対的に開いた場合に、調光装置90への送風量をより小さくするように制御し、調光羽根が相対的に閉じた場合よりも相対的に開いた場合に光変調部50への送風量をより大きくするように制御する。これにより、例えば映像場面等に応じて随時動作する調光装置90の動作状態によらず、第1及び第2ファン81,82による装置内の冷却状態を適切に保ち、かつ、第1及び第2ファン81,82全体としての動作量の増加を抑え、騒音が大きくなることを抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮光により照明光量の調整を行う調光装置と、調光装置を冷却する送風装置とを有するプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプロジェクターとして、照明装置内に一対のレンズアレイを組込み、当該一対のレンズアレイ間に開閉可能な調光部材を有する調光装置を配置して照明光量の調節を行うものが広く知られている(例えば、特許文献1,2等参照)。このような調光装置は、比較的熱が発生しやすい場合がある。このため、調光装置をファンにより冷却するものが知られている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−69966号公報
【特許文献2】特開2008−180931号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、調光装置やその他のプロジェクター内の各機構を冷却するために、ファンの送風量を大きくすると、これに伴ってファンによる騒音も大きくなることが問題となる。特に調光装置での遮光量が大きいときには、発熱量も多くなり、調光装置の冷却のための送風量を増やす必要がある。
【0005】
そこで、本発明は、ファンによる装置内の冷却を適切に保ち、かつ、ファンの送風量が増大して騒音が大きくなることを抑制できるプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明に係る第1のプロジェクターは、光源と光源からの光束を開閉動作により部分的に遮蔽可能な調光部とを有する照明光学系と、照明光学系からの照明光によって照明される光変調装置と、調光部及び光変調装置への送風を可能にする送風装置と、調光部を相対的に閉じたことに対応させて調光部への送風量を増加させた場合に光変調装置への送風量を減少させる送風制御部と、を備える。
【0007】
上記プロジェクターによれば、送風制御部において、調光部を相対的に閉じたことに対応させて、送風装置による調光部への送風量を増加させた場合には、光変調装置への送風量を減少させるように制御する。これにより、遮光の増加によって温度の上昇しやすい状態にある調光部について効果的な冷却を行うことで装置内の冷却状態を適切に保ち、かつ、送風装置全体としての動作量の増加を抑え、騒音が大きくなることを抑制できる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、送風制御部が、調光部を相対的に開いたことに対応させて調光部への送風量を減少させた場合に光変調装置への送風量を増加させる。この場合、照明の増加によって温度の上昇しやすい状態にある光変調装置について効果的な冷却を行うことで装置内の冷却状態を適切に保ち、かつ、送風装置全体としての動作量の増加を抑え、騒音が大きくなることを抑制できる。
【0009】
本発明のさらに別の側面では、送風装置が、調光部へ送風する第1送風装置と、光変調装置へ送風する第2送風装置とを備える。この場合、第1送風装置により調光部への送風量を調整し、第2送風装置により光変調装置への送風量を調整することができる。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、送風制御部が、第1送風装置にかける電圧と第2送風装置にかける電圧とを調整することにより、調光部への送風量と光変調装置への送風量とを調整する。この場合、電圧制御により、比較的簡易かつ確実に調光部及び光変調装置への送風量を調整することができる。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、送風装置が、1つの送風源から、調光部へ向けて送風するための第1送風路と光変調装置へ向けて送風するための第2送風路とに分岐する送風分岐部を有するダクトと、送風分岐部において第1及び第2送風路への送風を調整する調整弁とを有する。この場合、調整弁の向きを調節することで、1つの送風源から調光部への送風量と光変調装置への送風量との分岐比として簡単に反転させることが可能になる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、送風制御部が、送風装置における消費電力の量を略一定に保つ。この場合、送風装置全体による騒音を簡易確実に一定限度内に抑制できる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、照明光学系における光源が、高輝度優先モードと、省電力モードとに切り替えて動作可能であり、送風制御部が、少なくとも高輝度優先モードで動作する場合に、調光部及び光変調装置への送風量の調整を行う。この場合、消費電力が比較的高く明るいが、温度上昇の生じやすい高輝度優先モードにおいて、送風装置による装置内の冷却状態を適切に保ち、かつ、騒音が大きくなることを抑制できる。
【0014】
上記課題を解決するため、本発明に係る第2のプロジェクターは、光源と、光源からの光束を開閉動作により部分的に遮蔽可能な調光部とを有する照明光学系と、照明光学系からの照明光によって照明される光変調装置と、調光部及び光変調装置への送風を可能にする送風装置とを備え、送風装置から調光部への送風量は、調光部の遮光量が増加した場合に、調光部の遮光量が増加する前よりも増加すると共に、送風装置から光変調装置への送風量は、調光部の遮光量が増加した場合に、調光部の遮光量が増加する前よりも減少することを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態に係るプロジェクターを概念的に示す平面図である。
【図2】調光装置について説明するための平面図である。
【図3】(A)は、調光装置の遮光量と調光羽根の回動角度との関係を示すグラフであり、(B)〜(D)は、遮光量と送風装置の電圧等との関係を示すグラフである。
【図4】変形例のプロジェクターを概念的に示す平面図である。
【図5】第2実施形態に係るプロジェクターを概念的に示す平面図である。
【図6】送風装置にについて説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1実施形態〕
以下、図面を参照して、本発明の第1実施形態に係るプロジェクターについて詳細に説明する。
【0017】
〔A.プロジェクターの構造の概要〕
図1に示すように、本実施形態に係るプロジェクター100は、照明装置10、調光装置90、送風装置80、色分離導光部40、光変調部50、色合成部60、投射光学系70及び制御装置94を備える。送風装置80は、調光装置90を冷却するための第1風装置である第1ファン81と、光変調部50を冷却するための第2風装置である第2ファン82とを備える。また、制御装置94は、全体の動作を司る主制御部99のほか、送風装置80の制御を行う送風制御部95等を備える。
【0018】
まず、照明装置10は、光源ランプユニット20及び均一化光学系30を含む照明光学系である。
【0019】
照明装置10のうち、光源ランプユニット20は、光源として、ランプ部21aと、凹レンズ21bとを備える。このうち、ランプ部21aは、例えば高圧水銀ランプ等である発光管22aと、発光管22aから射出された光束を反射して前方に射出させる楕円面型の凹面鏡22bとを備える。凹レンズ21bは、ランプ部21aからの照明光束をシステム光軸SAに略平行にする役割を有するが、例えば凹面鏡22bが放物面鏡である場合には、省略することもできる。
【0020】
均一化光学系30は、第1及び第2レンズアレイ31,32と、偏光変換部材34と、重畳レンズ35とを備える。
【0021】
第1及び第2レンズアレイ31,32は、それぞれが例えばX方向及びY方向に関してマトリクス状に配置された複数の要素レンズからなるフライアイレンズである。このうち、第1レンズアレイ31を構成する複数の要素レンズによって、光源ランプユニット20から射出された照明光束が複数の部分光束に分割される。また、第2レンズアレイ32を構成する複数の要素レンズによって、第1レンズアレイ31から入射した各部分光束が適当な発散角で射出される。
【0022】
偏光変換部材34は、全体としてXY面に平行な矩形の平板状の部材であり、PBSのプリズムアレイ等で構成されY方向を長手方向として延びる複数の偏光変換素子をX方向に一列に並べて形成されている。偏光変換部材34は、レンズアレイ32から射出された照明光束を特定方向の直線偏光のみに変換して次段光学系に供給する。
【0023】
重畳レンズ35は、第2レンズアレイ32から射出され偏光変換部材34を経た照明光束を全体として適宜収束させることにより、光変調装置である光変調部50に設けた各色の液晶ライトバルブ50a,50b,50cに対する重畳照明を可能にする。
【0024】
以上のように、均一化光学系30は、光源である光源ランプユニット20からの照明光束を分割・重畳により均一化し、当該照明光束により光変調部50に設けた各色の液晶ライトバルブ50a,50b,50cに対する照明を可能にする。つまり、照明装置10は、プロジェクター100による投影画像の形成に適した状態の照明光を射出している。
【0025】
図1及び図2に示す調光装置90は、遮光量を調整する調光部であり、例えば第1レンズアレイ31と第2レンズアレイ32との間に配設される一対の第1及び第2の調光羽根91a,91bを備える。図2に示すように、第1の調光羽根91aは、システム光軸SAよりも+Y側に配置され、第2の調光羽根91bは、システム光軸SAよりも−Y側に配置されている。一対の第1及び第2の調光羽根91a,91bは、調光羽根駆動部96aにより駆動されて、軸AX1,AX2を回動軸として観音開き状に同期して回動する。この結果、調光装置90は、Y方向を開閉方向R2とする絞りのように機能して照明装置10から射出される照明光の光量を増減調整する。つまり、例えば図2中実線で示す両調光羽根91a,91bを全閉し最大限に照明光の遮蔽を行っている状態(最大遮蔽状態)や、図2中破線で示すある程度開いた開放状態、或いは図2中一点鎖線で示す完全に開ききった全開状態(最小遮蔽状態)にすることで照明光の遮蔽量を調整する。従って、図示のように、調光装置90は、開閉方向R2についての光束の通過領域を両調光羽根91a,91bの先端ED間即ち開口幅S1〜S3の間で調整できる。開口幅S1となる最大遮蔽状態のときには、調光装置90の遮光量が最大となり、調光羽根91a,91bは最も温度上昇が生じやすくなる。一方、開口幅S3となる最小遮蔽状態のときには、調光装置90の遮光量が最小となり、調光羽根91a,91bの温度上昇が殆ど生じないものとなる。このような調光羽根91a,91bによる遮光量の大きさは、軸AX1,AX2を回動軸とする回動角度により規定することができる。つまり、図3(A)のグラフに示すように、最大遮蔽状態を基準となる回動角度0度とし、回動角度が大きくなるほど遮光量が小さくなる。回動角度αが略90度となる最小遮蔽状態では、遮光量がゼロとなる。なお、この遮光量の調整において、両調光羽根91a,91bは、連続的に回動し、遮光量も連続的に変化する。調光装置90は、例えば投射されている動画の映像場面等に応じて調光羽根駆動部96aからの駆動信号に従って随時上記のような動作をすることで、動的なコントラストの向上に寄与するものとなっている。
【0026】
図1に戻って、送風装置80のうち、第1送風装置である第1ファン81は、例えばシロッコファンで構成され、送風制御部95の第1ファン駆動部95cからの駆動信号に従って動作し、調光装置90を冷却している。調光装置90は、光変調部50等に比較して光源ランプユニット20側に近い光路上流側に位置しており、遮光をする場合、強い光線を吸収等し、これに伴い多くの熱を吸収することになる。従って、調光装置90が最小遮蔽状態であるときは、送風量が少ないか又はゼロでも構わないが、調光装置90が例えば最大遮蔽状態であるときには、吸収する熱量が非常に大きくなり、第1ファン81による送風量も増大させる必要がある。このため、詳しくは後述するが、送風制御部95のうち、第1ファン風量制御部95aは、調光羽根制御部96から情報を取得して、調光装置90での遮光量に応じて、第1ファン駆動部95cを介して第1ファン81の風量を調整している。
【0027】
均一化光学系30の光路下流側に位置する色分離導光部40は、第1及び第2ダイクロイックミラー41a,41bと、反射ミラー42a,42b,42cと、3つのフィールドレンズ43a,43b,43cと、リレーレンズ44a,44bとを備え、照明装置10から射出された照明光束を赤(R)色、緑(G)色、及び青(B)色の3色に分離するとともに、各色光を後段の液晶ライトバルブ50a,50b,50cへ導く。より詳しく説明すると、まず、第1ダイクロイックミラー41aは、RGBの3色のうちR色の照明光LRを反射しG色及びB色の照明光LG,LBを透過させる。また、第2ダイクロイックミラー41bは、GBの2色のうちG色の照明光LGを反射しB色の照明光LBを透過させる。つまり、第1ダイクロイックミラー41aで反射された赤色光LRは、フィールドレンズ43aのある赤光路OP1に導かれ、第1ダイクロイックミラー41aを透過して第2ダイクロイックミラー41bで反射された緑色光LGは、フィールドレンズ43bのある緑光路OP2に導かれ、第2ダイクロイックミラー41bを通過した青色光LBは、フィールドレンズ43cのある青光路OP3に導かれる。各色用のフィールドレンズ43a,43b,43cは、第2レンズアレイ32から射出され重畳レンズ35等を通過して光変調部50に入射する各部分光束が、各液晶ライトバルブ50a,50b,50cの被照射領域上において、システム光軸SAに対して適当な収束度又は発散度となるように入射角を調節している。
【0028】
光変調部50は、照明光束から分離された3色の照明光LR,LG,LBによって照明される光変調装置であり、3色の照明光LR,LG,LBがそれぞれ入射する3つの液晶ライトバルブ50a,50b,50cを備える。各液晶ライトバルブ50a,50b,50cは、中央に配置される液晶パネル51a,51b,51cと、これを挟むように配置される光路上流側の入射側偏光フィルター52a,52b,52cと、光路下流側の射出側偏光フィルター53a,53b,53cとをそれぞれ備えている。各液晶ライトバルブ50a,50b,50cにそれぞれ入射した各色光LR,LG,LBは、各液晶ライトバルブ50a,50b,50cに電気的信号として入力された駆動信号或いは制御信号に応じて、画素単位で強度変調される。なお、各液晶パネル51a,51b,51cは、いずれも透過型の液晶パネルであり、図示による説明を省略するが、透明電極等を有する光透過性の入射側基板と、画素電極等を有する光透過性の駆動基板と、入射側基板及び駆動基板間に密閉封入される液晶層とを備える。
【0029】
色合成部60は、カラー画像を合成するためのクロスダイクロイックプリズムであり、その内部には、R光反射用の第1ダイクロイック膜61と、B光反射用の第2ダイクロイック膜62とが、平面視X字状に配置されている。この色合成部60は、液晶ライトバルブ50aからの赤色光LRを第1ダイクロイック膜61で反射して進行方向右側に射出させ、液晶ライトバルブ50bからの緑色光LGを両ダイクロイック膜61,62を介して直進・射出させ、液晶ライトバルブ50cからの青色光LBを第2ダイクロイック膜62で反射して進行方向左側に射出させる。
【0030】
送風装置80のうち、第2送風装置である第2ファン82は、例えばシロッコファンで構成されている。第2ファン82は、第2ファン駆動部95dからの駆動信号に従って、均一化光学系30の光路下流側に位置する光学系のうち、光が重畳して照射され光の照射に伴う熱の影響が比較的大きい光変調部50等を中心に冷却している。詳しくは後述するが、第2ファン風量制御部95bは、第1ファン風量制御部95aから調光羽根制御部96に関する情報を間接的に取得して、調光装置90での遮光量に応じて、第2ファン駆動部95dを介して第2ファン82の風量を調整している。
【0031】
投射光学系70は、投射レンズとして、色合成部60で合成された画像光をスクリーン(不図示)上にカラー画像として投射する。
【0032】
制御装置94は、ビデオ信号等の外部画像信号が入力される画像処理部98と、調光羽根駆動部96aを介して調光装置90の開閉状態を制御する調光羽根制御部96と、送風装置80を制御する送風制御部95と、これらの動作を制御する主制御部99とを備える。
【0033】
画像処理部98は、入力された外部画像信号に対して補正等の画像処理を行い、画像信号を形成する。パネル駆動部98aは、画像処理部98から出力された画像処理後の画像信号に基づいて各液晶ライトバルブ50a,50b,50cの状態を調節する駆動信号を発生する。
【0034】
調光羽根制御部96は、調光装置90が画像処理部98で処理される映像場面等に応じて随時開閉動作するように、調光羽根駆動部96aを介して制御を行う。また、調光装置90の動作状況を送風制御部95に逐一送信している。
【0035】
送風制御部95は、第1ファン駆動部95cを介して第1ファン81の送風量を制御する第1ファン風量制御部95aと、第2ファン駆動部95dを介して第2ファン82の送風量を制御する第2ファン風量制御部95bとを備える。このうち、第1ファン風量制御部95aは、調光羽根制御部96からの遮光状態についての情報に基づき第1ファン81の送風量を決定し、その送風量で第1ファン81を動作させるための信号を第1ファン駆動部95cに送信する。また、第1ファン風量制御部95aは、第2ファン風量制御部95bに第1ファン81の送風量に関係する信号を送信している。第2ファン風量制御部95bは、第1ファン風量制御部95aから送信された信号に基づいて、第2ファン82の送風量を決定し、その送風量で第2ファン82を動作させるための信号を第2ファン駆動部95dに送信する。ここでは、一例として、送風制御部95は、第1ファン81にかける電圧と第2ファン81にかける電圧とを調整することにより、調光装置90側への送風量と光変調部50側への送風量とを調整しているものとする。この際、送風制御部95は、第1及び第2ファン81,82全体即ち送風装置80全体としての総消費電力の量を略一定に保っている。これにより、第1及び第2ファン81,82全体によって生じる騒音を、調光装置90の動作状態によらず、常に抑制した状態となるように調整している。
【0036】
なお、主制御部99は、送風制御部95、調光羽根制御部96及び画像処理部98等を制御するために適宜用意されたプログラムに基づいて動作する。
【0037】
〔B.送風制御部による送風制御の説明〕
以下、送風制御部95即ち第1及び第2ファン風量制御部95a,95bによる送風の制御についてより具体的に説明する。まず、送風制御部95のうち、第1ファン風量制御部95aは、調光羽根制御部96から、調光装置90の遮光量についての情報を取得している。具体的には、遮光量を決定する図2の調光羽根91a,91bの回動角度について情報を取得している。図2に示すように、調光羽根91a,91bの回動角度が最小の0度であるときに遮光量が最大となり、回動角度が略90度であるときに遮光量が最小となる。従って、図3(A)のグラフのように遮光量と回動角度との関係が示される。このような状況下にある調光装置90を、無駄なく冷却するためには、第1ファン81による送風量を、調光羽根91a,91bが相対的に閉じた場合により大きくし、相対的に開いた場合により小さくするように制御することが望ましい。従って、図3(B)のグラフのように、第1ファン風量制御部95aは、第1ファン81にかかる電圧を、調光装置90による遮光量が大きくなるほど即ち回動角度が小さくなるほど大きくするように制御している。なお、ここでは、回動角度の連続的な変化に応じて、電圧も連続的に変化させているものとする。このような制御により、調光装置90は、動作中第1ファン81によって常に適切な冷却がなされた状態となる。
【0038】
これに対して、図3(C)のグラフのように、第2ファン風量制御部95bは、第2ファン82にかかる電圧を、調光装置90による遮光量が大きくなるほど即ち回動角度が小さくなるほど小さくするように制御している。つまり、第2ファン82による送風量を、調光羽根91a,91bが相対的に閉じた場合により小さくし、相対的に開いた場合により大きくするように制御している。
【0039】
以上のように、送風制御部95は、第1ファン81にかかる電圧が大きくなるほど第2ファン82にかかる電圧が小さくなり、逆に、第1ファン81にかかる電圧が小さくなるほど第2ファン82にかかる電圧が大きくなるように制御している。このような制御を行う結果、図3(D)に示すように、第1及び第2ファン81,82全体としての消費電力量が略一定に保たれ、送風装置80によって生じる騒音も、調光装置90の動作状態によらず、安定したものとなる。
【0040】
ここで、装置内の各部において照射される光による発熱について説明し、上記のような送風による冷却の制御との関係を説明する。まず、調光羽根91a,91bが閉じて調光装置90による遮光量が多い場合には、調光装置90における照射光の吸収による発熱量が比較的多くなり、第1ファン81による調光装置90側への冷却作用を大きくする必要がある。一方、この場合、調光装置90での遮光量が多いことで調光装置90よりも光路下流側にある光変調部50等への光の照射量は減少する。従って、光変調部50側での光の照射による熱の発生は比較的小さくなり、第2ファン82による光変調部50側の冷却は比較的小さくても構わない。これとは逆に、調光羽根91a,91bが開いて調光装置90による遮光量が少ない場合には、第1ファン81による調光装置90の冷却については比較的小さくても構わない。一方、この場合、調光装置90での遮光量が少ないことで光変調部50側への光の照射量は増大する。従って、光変調部50側での光の照射光の吸収による発熱量が比較的多くなり、第2ファン82による光変調部50側への冷却作用を大きくする必要がある。送風制御部95は、以上のような調光装置90側と光変調部50側との状況を考慮して第1ファン81の送風量を増加させるときは第2ファン82の送風量を減少させ、第2ファン82の送風量を増加させるときは第1ファン81の送風量を減少させるように調整がなされている。従って、総電力量を略一定に保った状態であっても、常に装置内の冷却を適切に保つことができるものとなっている。
【0041】
以上のように、本実施形態に係るプロジェクター100によれば、送風制御部95において、調光装置90の第1及び第2の調光羽根91a,91bが相対的に閉じたことに対応させて、送風装置80による調光装置90への送風量を増加させた場合には、光変調部50への送風量を減少させるように制御している。言い換えると、送風装置80から調光装置90への送風量は、調光装置90の遮光量が増加した場合に、調光装置90の遮光量が増加する前よりも増加すると共に、送風装置80から光変調部50への送風量は、調光装置90の遮光量が増加した場合に、調光装置90の遮光量が増加する前よりも減少するように制御されている。これにより、温度の上昇しやすい状態にある調光装置90について効果的な冷却を行うことで装置内の冷却状態を適切に保ち、かつ、送風装置80全体としての動作量の増加を抑え、送風装置80の送風量が増大して騒音が大きくなることを抑制できる。
【0042】
また、送風制御部95において、調光装置90の第1及び第2の調光羽根91a,91bが相対的に開いたことに対応させて、送風装置80による調光装置90への送風量を減少させた場合には、光変調部50への送風量を増加させるように制御している。これにより、温度の上昇しやすい状態にある光変調部50について効果的な冷却を行うことで装置内の冷却状態を適切に保ち、かつ、送風装置80全体としての動作量の増加を抑え、送風装置80の送風量が増大して騒音が大きくなることを抑制できる。
【0043】
また、以上のように、第1及び第2の調光羽根91a,91bの開閉動作に対応させて、送風装置80を構成する第1及び第2ファン81,82の送風量を増減させることにより、映像場面等に応じて随時動作する調光装置90の動作状態によらず、第1及び第2ファン81,82による装置内の冷却状態を適切に保ち、かつ、送風装置80全体としての動作量の増加を抑え、騒音が大きくなることを抑制できる。
【0044】
〔D.第1実施形態の変形例〕
以下、図4を用いて、第1実施形態の変形例のプロジェクター200について説明する。なお、本変形例のプロジェクター200は、光源ランプユニット20及び制御装置194の構造を除いて、図1等に示すプロジェクター100と同様であり、各部の詳細な説明を省略する。
【0045】
図4に示すプロジェクター200のうち、光源ランプユニット20において、ランプ部21aは、消費電力が比較的高く明るさを優先する高輝度優先モードと、消費電力が比較的抑えられた省電力モードとに切り替えて動作可能となっている。制御装置194は、ランプ部21aの上記各モードの切替えを行うための光源モード切替部85をさらに備えている。
【0046】
制御装置194の光源モード切替部85は、ユーザーの選択に従い上記各モードのうちいずれのモードで画像投射を行うかについて決定し、当該モードに対応する照明をさせる旨ランプ駆動部85aに指示をする。ランプ駆動部85aは、選択されたモードに適用する動作状態の照明となるようにランプ部21aを発光させる。また、光源モード切替部85は、上記モードの決定結果を、送風制御部95の第1ファン風量制御部95aに送信している。
【0047】
第1ファン風量制御部95aは、光源モード切替部85から上記各モードに関する情報を取得し、当該情報に基づいて、上記各モードに対応して送風の制御を行っている。例えば、比較的調光装置90の温度上昇が生じやすいと考えられる高輝度優先モードのときにのみ、上述のような調光装置90の開閉状態に応じた送風量を調整する制御を行うこととすることができる。調光装置90の温度上昇が高輝度優先モードより比較的穏やかであると考えられる省電力モードのときには、例えば調光装置90の開閉状態に関わらず、一定の割合で送風する通常の送風制御を行うことで、全体を均一に冷却してもよい。また、上記各モードに対応して、調光装置90の開閉状態に応じた送風量を増減させる比率を変えてもよい。
【0048】
〔第2実施形態〕
以下、図5等を参照して、本発明の第2実施形態に係るプロジェクターについて説明する。なお、本実施形態に係るプロジェクター300は、図1に示す第1実施形態のプロジェクター100の変形例であり、制御装置294の送風制御部295及び送風装置180の構造を除き、特に説明のないものは第1実施形態と同様である。
【0049】
図5に示すプロジェクター300のうち、送風装置180は、1つの送風源として一纏りとなっているシロッコファン181aと、シロッコファン181aからの送風を調光装置90側と光変調部50側とに分岐するダクト181bとを備える。また、送風装置180は、ダクト181b内の気流を調整する調整弁183と調整弁183を回動軸PBのまわりに回動させるためのアクチュエーター295bとを有している。なお、送風装置180の送風量は、ファン風量制御部としての送風制御部295によりファン駆動部295aを介して制御されている。
【0050】
以下、図6を参照して、送風制御部295及び送風装置180による送風について詳しく説明する。まず、シロッコファン181aは、小型のファンFFを複数個配列して一纏りの送風源として構成されており、送風制御部295からの信号を受けたファン駆動部295aによる駆動信号に従って動作している。なお、図示では一例として、シロッコファン181aは、6個の小型のファンFFにより1つの送風源として構成されるものとしている。また、ダクト181bは、シロッコファン181aによって発生した気流Aの送風路を形成する送風源側ダクト部DTと、送風源側ダクト部DTから分岐部DPにおいて分岐して調光装置90へ向けて送風するための第1送風路FAを形成する第1分岐ダクト部DT1と、送風源側ダクト部DTから分岐部DPにおいて分岐して光変調部50へ向けて送風するための第2送風路FBを形成する第2分岐ダクト部DT2とを備える。
【0051】
シロッコファン181aを構成する小型のファンFFは、図の矢印の方向に送風を行う。これにより、送風源側ダクト部DT内に図中矢印で示す一様な方向に流れる気流Aが発生する。調整弁183は、アクチュエーター295bにより、分岐部DPの分岐点に位置する回動軸PBを中心軸として、分岐部DPにおいて回動することにより、気流Aを第1分岐ダクト部DT1側と第2分岐ダクト部DT2側とに分岐している。具体的には、例えば、調整弁183が図中実線に示すように、第2分岐ダクト部DT2寄りにある場合、分岐部DPにおいて6つのファンFFからの気流Aの殆どが気流A1として第1送風路FAを形成する第1分岐ダクト部DT1側即ち調光装置90側へ向かう。逆に、調整弁183が図中破線に示すように、第1分岐ダクト部DT1寄りにある場合、分岐部DPにおいて6つのファンFFからの気流Aの殆どが気流A2として第2送風路FBを形成する第2分岐ダクト部DT2側即ち光変調部50側へ向かう。調整弁183が図中一点鎖線に示すように、中間的な位置にある場合、6つのファンFFからの気流Aは、略3つ分ずつ半分に分岐されて調光装置90側と光変調部50側とに向かう。従って、送風制御部295は、アクチュエーター295bを介して回動軸PBにより調整弁183の姿勢を適宜調節することにより、シロッコファン181aでの送風量を一定に保ったままであっても、調光装置90側への送風量と光変調部50側への送風量との増減を調整することができる。
【0052】
〔その他、変形例等〕
以上実施形態に即して本発明を説明したが、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0053】
上記第1実施形態では、第1及び第2ファン81,82の駆動電圧の変化を、第1及び第2の調光羽根91a,91bの回動角度の変化に応じて連続的なものとしているが、例えば駆動電圧を数段階で切り替える段階的なものとしてもよい。この場合、例えば回動角度について複数の閾値を設けておき、各閾値によって第1及び第2ファン81,82の駆動電圧の値を定めるものとすればよい。
【0054】
また、上記第1実施形態では、送風制御部95は、調光装置90への送風量を小さくするとともに光変調部50への送風量を大きくし、前調光装置90への送風量を大きくするとともに光変調部50への送風量を小さくするように制御を行っているが、プロジェクター100の使用状況等に応じて、変化量が大きくない場合には、どちらか一方への送風量のみを増減するものとしてもよい。この場合も、一方の送風量のみを極端に増減させなければ、全体としての消費電力は略一定に保たれ、第1及び第2ファン81,82全体によって生じる騒音を、調光装置90の動作状態によらず、一定となるように調整できる。
【0055】
また、上記各実施形態において、送風制御部95等は、例えば、送風量の調整を回動角度の変化から若干遅らせて行うように制御してもよい。これにより、遮光量の変化から遮光による温度上昇の影響が出始めるまでの時間を考慮してより効果的な冷却を行うことができる。
【0056】
また、上記第1実施形態では、第1及び第2ファン81,82の駆動電圧は、総電力消費が略一定となるようにしている。従って、例えば送風制御部95の第1ファン風量制御部95aによって、第1ファン81にかける駆動電圧を総電力即ち総電圧のa倍と決定したときに、第2ファン風量制御部95bは、第2ファン82にかける駆動電圧を総電圧の(1−a)倍とするように制御することで、総電力消費が常に正確に一定となるようにできる。しかし、送風量の制御は、総電力消費が大きくは上昇せず、ある程度の範囲が保てれば、これに限らず種々の方法が可能である。例えば、光変調部50付近にサーミスターを設け、第2ファン風量制御部95bが、第1ファン風量制御部95aからの情報だけでなく、当該サーミスターによる温度状態も加味して第2ファン82にかける駆動電圧を決定するものとしてもよい。
【0057】
また、上記実施形態では、送風装置80、180にシロッコファンを用いているが、シロッコファン以外のファンにより、送風装置80、180を構成してもよい。
【0058】
また、上記第2実施形態では、シロッコファン181aを、小型のファンFFを複数個配列して一纏りの送風源として構成していたが、ひとつのシロッコファンからの気流を調整弁183を回動させることにより、第1分岐ダクト部DT1側と第2分岐ダクト部DT2側とに分岐する構成としてもよい。
【0059】
また、上記実施形態では、光路の両側に配置された一対の調光羽根91a,91bが軸AX1,AX2を回動軸として回動する調光装置90を用いたが、照明光の一部を遮光して光変調装置を照射する光の量を調整する他の構成の調光装置を採用することもできる。
【0060】
また、上記実施形態では、透過型の液晶ライトバルブ50a,50b,50cを備えるプロジェクターに本発明を適用した場合の例について説明したが、本発明は、反射型の液晶ライトバルブを備えるプロジェクターにも適用することが可能である。ここで、「透過型」とは、液晶ライトバルブが光を透過するタイプであることを意味しており、「反射型」とは、液晶ライトバルブが光を反射するタイプであることを意味している。
【0061】
また、プロジェクターとしては、投射面を観察する方向から画像投射を行う前面投射型のプロジェクターと、投射面を観察する方向とは反対側から画像投射を行う背面投射型のプロジェクターとがあるが、図1等に示すプロジェクターの構成は、いずれにも適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
100,200,300…プロジェクター、 10…照明装置、 20…光源ランプユニット、 30…均一化光学系、 31,32…レンズアレイ、 95…送風制御部、 95a,95b…ファン風量制御部、 80…送風装置、 81,82…ファン、 90…調光装置、 91a,91b…調光羽根、 40…色分離導光光学系、 50…光変調部、 60…クロスダイクロイックプリズム、 70…投射光学系

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源からの光束を開閉動作により部分的に遮蔽可能な調光部とを有する照明光学系と、
前記照明光学系からの照明光によって照明される光変調装置と、
前記調光部及び前記光変調装置への送風を可能にする送風装置と、
前記調光部を相対的に閉じたことに対応させて前記調光部への送風量を増加させた場合に前記光変調装置への送風量を減少させる送風制御部と、
を備えるプロジェクター。
【請求項2】
前記送風制御部は、前記調光部を相対的に開いたことに対応させて前記調光部への送風量を減少させた場合に前記光変調装置への送風量を増加させる、請求項1に記載のプロジェクター。
【請求項3】
前記送風装置は、前記調光部へ送風する第1送風装置と、前記光変調装置へ送風する第2送風装置とを備える、請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項4】
前記送風制御部は、前記第1送風装置にかける電圧と前記第2送風装置にかける電圧とを調整することにより、前記調光部への送風量と前記光変調装置への送風量とを調整する、請求項3に記載のプロジェクター。
【請求項5】
前記送風装置は、1つの送風源から、前記調光部へ向けて送風するための第1送風路と前記光変調装置へ向けて送風するための第2送風路とに分岐する送風分岐部を有するダクトと、前記送風分岐部において前記第1及び第2送風路への送風を調整する調整弁とを有する、請求項1及び請求項2のいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項6】
前記送風制御部は、前記送風装置における消費電力の量を略一定に保つ、請求項1から請求項5までのいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項7】
前記照明光学系における前記光源は、高輝度優先モードと、省電力モードとに切り替えて動作可能であり、
前記送風制御部は、少なくとも前記高輝度優先モードで動作する場合に、前記調光部及び前記光変調装置への送風量の調整を行う、請求項1から請求項6までのいずれか一項に記載のプロジェクター。
【請求項8】
光源と、前記光源からの光束を開閉動作により部分的に遮蔽可能な調光部とを有する照明光学系と、
前記照明光学系からの照明光によって照明される光変調装置と、
前記調光部及び前記光変調装置への送風を可能にする送風装置とを備え、
前記送風装置から前記調光部への送風量は、前記調光部の遮光量が増加した場合に、前記調光部の遮光量が増加する前よりも増加すると共に、前記送風装置から前記光変調装置への送風量は、前記調光部の遮光量が増加した場合に、前記調光部の遮光量が増加する前よりも減少することを特徴とするプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−203514(P2011−203514A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−71021(P2010−71021)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】