説明

プロジェクター

【課題】プロジェクターのコントラスト比を向上させる。
【解決手段】プロジェクター1は、第1の光(緑色光L2)を射出する照明光学系2と、照明光学系2から射出された第1の光を変調する反射型の第1の液晶パネル27と、第1の液晶パネル27で変調されて反射した光が入射する位置に配置され、第1の液晶パネル27の光射出面27Aと略平行に伸びる複数の金属線を有し、第1の液晶パネル27の光射出面27Aの法線方向に対して、37°以上45°未満の角度で傾斜した第1のワイヤーグリッド素子26と、第1の液晶パネル27によって変調されて第1のワイヤーグリッド素子26で反射した第1の光を投写する投写光学系7と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、液晶プロジェクターの1つとして反射型のプロジェクターが知られている。反射型のプロジェクターは、例えば照明光学系、偏光ビームスプリッター(以下、PBSという)、反射型の液晶パネル、及び投写光学系により構成される。照明光学系から射出された光は、PBSを経由して液晶パネルに入射する。PBSは、通常は液晶パネルの法線方向と45°の角度をなして配置される。液晶パネルに入射した光は、変調されるとともに液晶パネルで反射する。液晶パネルで反射した光は、PBSに再度入射して、画像を示す偏光と反転画像を示す偏光とに分離される。画像を示す偏光が投写光学系によりスクリーン等に投写されることにより、画像が表示される。
【0003】
従来のPBSは、直角プリズムの斜面に誘電体多層膜をコーティングした2つのプリズムを、互いの斜面で接着したものである。近年、従来のPBSよりも偏光分離機能の入射角依存性が小さいワイヤーグリッド素子が採用されるようになり、反射型のプロジェクターのコントラスト比が大幅に向上してきている(例えば特許文献1〜4参照)。
【0004】
特許文献1のプロジェクターは、照明光学系から射出された光がワイヤーグリッド素子で反射して液晶パネルに入射し、液晶パネルによって変調された光のうち画像を示す光がワイヤーグリッド素子を透過して投写される。特許文献2のプロジェクターにおいて、ワイヤーグリッド素子は、屈折率が1よりも大きい媒質中に配置されている。特許文献3のプロジェクターは、ワイヤーグリッド素子をその法線方向の周りで回転させることによって、コントラスト比を最適化することができる。特許文献4のプロジェクターにおいて、ワイヤーグリッド素子は、液晶パネルの法線方向に対して、45°よりも大きい角度をなしており、液晶パネルから射出された光のワイヤーグリッド素子に対する入射角が45°未満になっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2003−506746号公報
【特許文献2】特開2005−250057号公報
【特許文献3】特開2004−46156号公報
【特許文献4】特開2000−111839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
プロジェクターは、さらなるコントラスト比の向上が期待されており、上記のようなワイヤーグリッド素子を用いたプロジェクターにも改善の余地がある。本発明は、上記の事情に鑑み成されたものであって、コントラスト比を向上させることが可能なプロジェクターを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプロジェクターは、第1の光を射出する照明光学系と、前記照明光学系から射出された前記第1の光を変調する反射型の第1の液晶パネルと、前記第1の液晶パネルで変調されて反射した第1の光が入射する位置に配置され、前記第1の光が入射される面内において前記第1の液晶パネルの光射出面と略平行に伸びる複数の金属線を有し、前記第1の液晶パネルの光射出面の法線方向に対して前記第1の光が入射される面が37°以上45°未満の角度で傾斜した第1のワイヤーグリッド素子と、前記第1の液晶パネルによって変調されて前記第1のワイヤーグリッド素子で反射した第1の光を投写する投写光学系と、を備える。
【0008】
詳しくは下記の第1実施形態等で説明するが、本発明者は、第1の液晶パネルの光射出面の法線方向に対して第1のワイヤーグリッド素子が45°未満の角度で傾斜していれば、第1のワイヤーグリッド素子に対するP偏光とS偏光との分離能が向上することを見出した。上記のプロジェクターは、第1のワイヤーグリッド素子が第1の液晶パネルの光射出面の法線方向に対して、37°以上45°未満の角度で傾斜しているので、投写光学系によって投写された画像において第1の光のコントラスト比を向上させることができる。
【0009】
上記のプロジェクターにおいて、前記照明光学系は、前記第1の光の他に、前記第1の光とは波長が異なる第2の光を射出し、前記照明光学系から射出された前記第2の光を変調する反射型の第2の液晶パネルと、前記第2の液晶パネルで変調されて反射した第2の光が入射する位置に配置され、前記第2の光が入射される面内において前記第2の液晶パネルの光射出面と略平行に伸びる複数の金属線を有する第2のワイヤーグリッド素子と、を備え、前記投写光学系は、前記第1の液晶パネルによって変調されて前記第1のワイヤーグリッド素子で反射した第1の光と、前記第2の液晶パネルによって変調されて前記第2のワイヤーグリッド素子で反射した第2の光とを投写し、前記第1の光は、前記第2の光よりも視感度が高くてもよい。
【0010】
このようにすれば、投写光学系によって投写された第1の光と第2の光のうちで相対的に視感度が高い第1の光のコントラスト比が向上するので、コントラスト比を効果的に向上させることができる。
【0011】
上記のプロジェクターにおいて、前記第2のワイヤーグリッド素子は、前記第2の液晶パネルの光射出面の法線方向に対して45°未満の角度で傾斜していてもよい。
【0012】
このようにすれば、投写光学系によって投写された第1の光と第2の光の双方のコントラスト比が向上するので、コントラスト比を格段に向上させることができる。
【0013】
上記のプロジェクターにおいて、前記第1の液晶パネルの光射出面の法線方向に対する前記第1のワイヤーグリッド素子の角度が39°以上43°以下であってもよい。
【0014】
このようにすれば、第1のワイヤーグリッド素子に対するP偏光とS偏光との分離能が格段に向上するので、コントラスト比を格段に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1実施形態のプロジェクターの概略構成を示す図である。
【図2】液晶パネルの構成を模式的に示す図である。
【図3】(A)はワイヤーグリッド素子の透過特性の角度依存性を示すグラフ、(B)はワイヤーグリッド素子の反射特性の角度依存性を示すグラフ、(C)は液晶パネルの光射出面の法線方向とワイヤーグリッド素子とがなす角度を変化させたときのプロジェクターのコントラスト比の変化を示すグラフである。
【図4】第2実施形態のプロジェクターの概略構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態及び実施例について図面を参照しながら説明する。説明に用いる図面中の構造の寸法や縮尺は、実際と異なることがある。
【0017】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態のプロジェクターの概略構成を示す図である。図2は、液晶パネルの構成を模式的に示す図である。図1に示すプロジェクター1は、照明光学系2、青用の画像形成系3、緑用の画像形成系4、赤用の画像形成系5、色合成部(色合成プリズム)6、及び投写光学系7を備える。
【0018】
照明光学系2は、青色光(第2の光)L1と緑色光(第1の光)L2と赤色光(第3の光)L3とを個別に射出することができる。本実施形態の照明光学系2は、光源部10、インテグレーター光学系11、及び色分離光学系12を備える。
【0019】
光源部10は、波長が450nm以上495未満の青色光L1、波長が495nm以上570nm未満の緑色光L2、及び波長が620nm以上750nm未満の赤色光L3を含んだ白色光Lを射出することができる。青色光L1、緑色光L2、赤色光L3のうちで、緑色光L2は、最も人間の視感度(人間の錐体細胞の光吸収率)が高い色光である。インテグレーター光学系11は、光源部10から射出された白色光Lの照度を均一化し、また偏光状態を揃えることができる。色分離光学系12は、インテグレーター光学系11から射出された白色光Lを青色光L1、緑色光L2、及び赤色光L3に分離することができる。
【0020】
本実施形態の光源部10は、白色光を放射する光源ランプ13、及び回転放物面状の反射面を有するリフレクター14を備える。光源ランプ13から放射された白色光は、リフレクター14によって一方向に向って反射し、略平行な光線束となる。光源ランプ13は、例えばメタルハライドランプ、キセノンランプ、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ等により構成される。リフレクター14は、インテグレーター光学系11へ入射する。リフレクター14は、反射面が回転楕円面状であってもよく、この場合には、リフレクターから射出された白色光を平行化する平行化レンズが用いられることがある。
【0021】
本実施形態のインテグレーター光学系11は、第1レンズアレイ15、第2レンズアレイ16、偏光変換素子17、及び重畳レンズ18を備える。
【0022】
第1レンズアレイ15及び第2レンズアレイ16は、それぞれ、光源部10の光軸と直交する平面に二次元的に配列された複数のマイクロレンズを有する。第1レンズアレイ15のマイクロレンズは、第2レンズアレイ16のマイクロレンズと1対1の対応で設けられている。複数のマイクロレンズは、光源部10の光軸に直交する平面での形状が、後述する各液晶パネルの被照明領域と相似形状(ここでは、略矩形)である。被照明領域は、各液晶パネルにおいて複数の画素が2次元的に配列された画素領域の全体を含む領域である。各液晶パネルの光射出面は、画素領域における画素の2つの配列方向のいずれにも平行な面あり、各液晶パネルの液晶層の厚み方向に直交する面である。
【0023】
偏光変換素子17は、光源部10の光軸と直交する平面に二次元的に配列された複数のセルを有する。偏光変換素子17のセルは、第2レンズアレイ16のマイクロレンズと1対1の対応で設けられている。複数のセルは、それぞれ、偏光ビームスプリッター膜(以下、PBS膜という)、1/2位相板、及び反射ミラーを有する。
【0024】
光源部10から第1レンズアレイ15へ入射した白色光Lは、マイクロレンズごとに集光され、複数の部分光束に分かれる。第1レンズアレイ15の各マイクロレンズから射出された部分光束は、このマイクロレンズと対応する第2レンズアレイ16のマイクロレンズに結像して、マイクロレンズに二次光源を形成する。第2レンズアレイ16の各マイクロレンズから射出された部分光束は、このマイクロレンズと対応する偏光変換素子17のセルに入射する。
【0025】
偏光変換素子17は、第2レンズアレイ16と重畳レンズ18との間の光路に配置されている。偏光変換素子17の各セルへ入射した部分光束は、PBS膜に対するP偏光とS偏光とに分離される。分離された一方の偏光は、反射ミラーで反射した後に1/2位相板を通り、他方の偏光と偏光状態が揃えられる。本実施形態において、偏光変換素子17の各セルは、各セルへ入射した部分光束の偏光状態を、各画像形成系のワイヤーグリッド素子(後述する)に対するP偏光に揃えることができる。偏光変換素子17の複数のセルから射出された複数の部分光束は、重畳レンズ18で屈折することによって、各画像形成系の液晶パネルの被照明領域に重畳される。
【0026】
色分離光学系12は、第1ダイクロイックミラー20、第2ダイクロイックミラー21、第3ダイクロイックミラー22、第1反射ミラー23、及び第2反射ミラー24を備える。第1ダイクロイックミラー20は、赤色光L3が透過し、かつ緑色光L2及び青色光L1が反射する特性を有する。第2ダイクロイックミラー21は、赤色光L3が反射し、かつ緑色光L2及び青色光L1が透過する特性を有する。第3ダイクロイックミラー22は、緑色光L2が反射し、かつ青色光L1が透過する特性を有する。
【0027】
第1ダイクロイックミラー20及び第2ダイクロイックミラー21は、互いに略直交するように、かつインテグレーター光学系11の光軸と略45°の角度をなすように配置されている。
【0028】
色分離光学系12へ入射した白色光Lのうちの赤色光L3は、第2ダイクロイックミラー21で反射して進行方向が略90°折れ曲がり、第1反射ミラー23へ入射する。第1反射ミラー23は、第2ダイクロイックミラー21から第1反射ミラー23への赤色光L3の進行方向に対して、角度α1をなして傾斜している。本実施形態において、角度α1は略45°に設定されており、第1反射ミラー23は、第1ダイクロイックミラー20とほぼ平行に配置されている。第1反射ミラー23へ入射した赤色光L3は、第1反射ミラー23で反射して進行方向が略90°折れ曲がり、赤用の画像形成系5へ入射する。
【0029】
色分離光学系12へ入射した白色光Lのうちの青色光L1及び緑色光L2は、第1ダイクロイックミラー20で反射し、進行方向が略90°折れ曲がり、第1ダイクロイックミラー20に対して赤色光L3とは反対側に進行して、第2反射ミラー24へ入射する。
【0030】
第2反射ミラー24は、第1ダイクロイックミラー20から第2反射ミラー24への青色光L1及び緑色光L2の進行方向に対して、角度α2なして傾斜している。本実施形態において、角度α2は略45°に設定されており、第2反射ミラー24は、第2ダイクロイックミラー21とほぼ平行に配置されている。第2反射ミラー24へ入射した青色光L1及び緑色光L2は、第2反射ミラー24で反射して進行方向が略90°折れ曲がり、第3ダイクロイックミラー22へ入射する。
【0031】
第3ダイクロイックミラー22は、第2反射ミラー24から第3ダイクロイックミラー22への青色光L1及び緑色光L2の進行方向に対して、45°よりも大きい角度α3をなして傾斜している。すなわち、第3ダイクロイックミラー22に対する青色光L1及び緑色光L2の入射角(90−α3)[°]は、45°未満に設定されている。第3ダイクロイックミラー22へ入射した青色光L1は、第3ダイクロイックミラー22を透過して青用の画像形成系3へ入射する。第3ダイクロイックミラー22へ入射した緑色光L2は、第3ダイクロイックミラー22で反射して進行方向が2×α3[°]変化して、第3ダイクロイックミラー22へ入射する直前の光路に対して非垂直な方向へ進行し、緑色用の画像形成系4へ入射する。なお、色分離光学系12は、ダイクロイックプリズムによって白色光を複数の色光に分離する構成でもよい。
【0032】
青用の画像形成系3は、入射側偏光板25、ワイヤーグリッド素子(第2のワイヤーグリッド素子)26、液晶パネル(第2の液晶パネル)27、射出側偏光板28、及び放熱板29を備える。
【0033】
色分離光学系12から射出された青色光L1は、入射側偏光板25へ入射した後にワイヤーグリッド素子26へ入射し、次いで液晶パネル27へ入射して変調されるとともに液晶パネル27で反射し、ワイヤーグリッド素子26へ再度入射する。ワイヤーグリッド素子26からワイヤーグリッド素子26へ入射した青色光L1のうち、ワイヤーグリッド素子26で反射した青色光L1は、射出側偏光板28へ入射する。ワイヤーグリッド素子26から射出側偏光板28へ入射した青色光L1のうち、射出側偏光板28を透過した青色光L1は、色合成部6へ入射する。
【0034】
入射側偏光板25は、透過軸に平行な直線偏光を通し、かつ透過軸と直交する吸収軸に平行な直線偏光を吸収する特性を有する。入射側偏光板25の透過軸は、ワイヤーグリッド素子26に対するP偏光の偏光方向とほぼ平行に設定されている。
【0035】
ワイヤーグリッド素子26は、ガラス等からなる誘電体層と、液晶パネル27の光射出面27Aと平行な方向に延びる複数の金属線とを有する。ワイヤーグリッド素子26は、複数の金属線に平行な直線偏光が反射し、複数の金属線に直交する直線偏光が反射する特性を有する。本実施形態において、ワイヤーグリッド素子26は、ワイヤーグリッド素子26に対するS偏光が反射し、ワイヤーグリッド素子26に対するP偏光が透過する特性を有する。
【0036】
ワイヤーグリッド素子26は、入射側偏光板25からワイヤーグリッド素子26へ入射してくる青色光L1の進行方向(光路)に対して、角度α4をなして傾斜している。本実施形態において、角度α4は略45°に設定されている。
【0037】
液晶パネル27は、ワイヤーグリッド素子26を通って液晶パネル27へ入射してくる青色光L1の進行方向に対して光射出面27Aが直交するように、配置されている。液晶パネル27で反射した青色光L1は、液晶パネル27へ入射する直前と進行方向が略180°変化して折り返される。すなわち、液晶パネル27で反射した青色光L1のワイヤーグリッド素子26に対する入射角(90−α4)[°]は、略45°である。
【0038】
放熱板29は、アルミニウム合金等の熱伝導性に優れる金属材料からなり、多数の板状フィンを有している。放熱板29は、液晶パネル27へ青色光L1が入射してくる入射側とは反対側にて液晶パネル27と接触して、設けられている。放熱板29は、図示略のファン等から供給される空気等の冷媒に液晶パネル27の熱を逃がすことができる。
【0039】
図2に示すように液晶パネル27は、素子基板40、対向基板41、液晶層42、及び補償板43を備える。素子基板40は、対向基板41と対向して設けられている。液晶層42は、素子基板40と対向基板41との間に封入されている。補償板43は、対向基板41に対して液晶層42と反対に設けられている。
【0040】
本実施形態の液晶パネル27は、反射型の液晶パネルである。入射側偏光板25からワイヤーグリッド素子26を通った青色光L1は、補償板43へ入射した後に対向基板41を通り、次いで液晶層42へ入射した後に素子基板40で反射して折り返される。青色光L1は、液晶層42を通る間に変調され、液晶層42から射出された後に対向基板41へ入射し、次いで補償板43を通って液晶パネル27から射出される。
【0041】
素子基板40は、シリコン基板やガラス基板を基体として構成される。シリコン基板を用いる場合には、いわゆるLCOS(Liquid crystal on silicon)になる。素子基板40は、複数のゲート線44、複数のソース線45、複数の薄膜トランジスター(以下、TFT46という)、及び画素電極47を備える。
【0042】
複数のゲート線44は、互いに平行に延在している。複数のソース線45は、互いに平行に延在している。ゲート線44の延在方向(X方向)は、ソース線45の延在方向(Z方向)と交差(ここでは直交)している。ゲート線44が、ソース線45と交差する部分ごとに、TFT46が設けられている。ゲート線44は、TFT46のゲート電極と電気的に接続されている。ソース線45は、TFT46のソース領域と電気的に接続されている。
【0043】
ゲート線44とソース線45とに囲まれる部分は、1つの画素Pに対応している。画素電極47は、各画素Pと1対1の対応で設けられている。液晶パネル27において、複数の画素Pは、ゲート線44が延びる方向とソース線が延びる方向とに配列されている。複数の画素Pの2つの配列方向は、それぞれ、液晶層42の厚み方向と直交する方向である。液晶パネル27の光射出面27Aは、画素Pの2つの配列方向のいずれにも平行な面あり、液晶パネル27の液晶層42の厚み方向に直交する面である。
【0044】
本実施形態の画素電極47は、金属材料からなり、鏡面反射板を兼ねている。図2では、画素電極47を切欠いて、画素電極47の下地側を模式的に図示している。実際には、画素電極47は、平坦化層や絶縁層を介してゲート線44、ソース線45、TFT46を被覆しており、画素Pの開口率が高められている。画素電極47は、TFT46のドレイン領域と電気的に接続されている。画素電極47を覆って、図示略の配向膜が設けられている。
【0045】
対向基板41は、ガラス基板等の透光性を有する基板を基体として構成されている。対向基板41の液晶層42側には、例えばインジウム錫酸化物等の透明導電材料からなる共通電極が設けられている。共通電極の液晶層42側には、配向膜が設けられている。素子基板40や対向基板41に設けられる配向膜は、例えば斜方蒸着法等により形成された無機配向膜である。
【0046】
液晶層42は、例えばVAモードの液晶層により構成される。素子基板40と対向基板41とのセルギャップは、例えば2.0μm程度であり、このセルギャップに液晶材料が封入されて液晶層42が構成されている。液晶材料は、誘電率異方性が負であり、複屈折性Δnが例えば0.12のものである。液晶層42に含まれる液晶分子48は、素子基板40の基板面に沿う方向を基準(0°)としたプレチルト角θが例えば87°程度である。補償板43は、例えばネガのCプレートにより構成される。補償板43は、液晶分子48のプレチルトにより生じる位相差を補償するように、素子基板40の基板面に沿う方向に対して略4.5°程度傾けて設けられている。
【0047】
以上のような構成の液晶パネル27において、ゲート線44に選択パルスが供給されると、このゲート線44に接続されたTFT46がオンになる。TFT46がオンになった状態で、画素Pごとの階調値に応じたソース信号がソース線45に供給され、ソース信号がTFT46を経て画素電極47に供給される。画素電極47にソース信号が供給されると、この画素電極47と共通電極との間に電界が印加され、この電界に応じて液晶層42の液晶分子48の方位角が画素Pごとに変化する。画素Pへ入射した青色光L1は、この画素Pにおける液晶層42の液晶分子48の方位角に応じて偏光状態が変化する。
【0048】
本実施形態では、任意の1画素Pにおける液晶層42に電界が印加されていない状態で、この画素Pへ入射した青色光L1は、ほぼ偏光状態が変化せずにP偏光のまま射出される。任意の1画素Pにおける液晶層42に電界が印加されている状態で、この画素Pへ入射した青色光L1は、画像データに規定された階調値に応じた比率で、ワイヤーグリッド素子26に対するP偏光がS偏光へ変化する。すなわち、液晶層42を通った青色光L1のうちワイヤーグリッド素子26に対するS偏光は、画像を示す光である。
【0049】
液晶パネル27から射出された青色光L1のうち、ワイヤーグリッド素子26に対するP偏光は、ワイヤーグリッド素子26を透過する。液晶パネル27から射出された青色光L1のうち、ワイヤーグリッド素子26に対するS偏光は、ワイヤーグリッド素子26で反射して進行方向が変化し、射出側偏光板28へ入射する。
【0050】
図1の説明に戻り、射出側偏光板28は、透過軸に平行な直線偏光を通し、かつ透過軸と直交する吸収軸に平行な直線偏光を吸収する特性を有する。射出側偏光板28の透過軸は、ワイヤーグリッド素子26に対するS偏光の偏光方向とほぼ平行に設定されている。射出側偏光板28へ入射した青色光L1のうち、ワイヤーグリッド素子26に対するS偏光は、射出側偏光板28を透過して、色合成部6へ入射する。
【0051】
緑用の画像形成系4は、入射側偏光板30、ワイヤーグリッド素子(第1のワイヤーグリッド素子)31、液晶パネル(第1の液晶パネル)32、射出側偏光板33、及び放熱板34を備える。
【0052】
色分離光学系12から射出された緑色光L2は、入射側偏光板30へ入射した後にワイヤーグリッド素子31へ入射し、次いで液晶パネル32へ入射して変調されるとともに液晶パネル32で反射し、ワイヤーグリッド素子31へ再度入射する。ワイヤーグリッド素子31からワイヤーグリッド素子31へ入射した緑色光L2のうち、ワイヤーグリッド素子31で反射した緑色光L2は、射出側偏光板33へ入射する。ワイヤーグリッド素子31から射出側偏光板33へ入射した緑色光L2のうち、射出側偏光板33を透過した緑色光L2は、色合成部6へ入射する。
【0053】
入射側偏光板30は、透過軸に平行な直線偏光を通し、かつ透過軸と直交する吸収軸に平行な直線偏光を吸収する特性を有する。入射側偏光板30の透過軸は、ワイヤーグリッド素子31に対するP偏光の偏光方向とほぼ平行に設定されている。
【0054】
ワイヤーグリッド素子31は、青用の画像形成系3のワイヤーグリッド素子26と同様の構造である。ワイヤーグリッド素子31の金属線は、液晶パネル32の光射出面32Aと平行な方向に延びている。ワイヤーグリッド素子31は、入射する緑色光L2のうち、ワイヤーグリッド素子31に対するP偏光が透過し、かつワイヤーグリッド素子31に対するS偏光が反射する特性を有する。
【0055】
ワイヤーグリッド素子31は、入射側偏光板30からワイヤーグリッド素子31へ入射してくる緑色光L2の進行方向(光路)に対して、角度α5をなして傾斜している。角度α5は、37°以上45°未満の範囲内に設定されている。角度α5は、38°以上44°以下の範囲に設定されていてもよいし、39°以上43°以下の範囲に設定されていてもよい。本実施形態において、角度α3は、角度α5との和(α3+α5)が略90°になるように、設定されている。
【0056】
液晶パネル32は、青用の画像形成系3の液晶パネル27とほぼ同じ構成である。液晶パネル32は、ワイヤーグリッド素子31を通って液晶パネル32へ入射してくる緑色光L2の進行方向に対して光射出面32Aが直交するように、配置されている。液晶パネル32で反射した緑色光L2は、液晶パネル32へ入射する直前と進行方向が略180°変化して折り返される。すなわち、液晶パネル32で反射した緑色光L2のワイヤーグリッド素子31への入射角は、(90−α5)[°]である。
【0057】
ワイヤーグリッド素子31へ入射した緑色光L2のうち、ワイヤーグリッド素子31に対するS偏光は、画像を示す緑色光L2であり、ワイヤーグリッド素子31で反射する。ワイヤーグリッド素子31で反射した緑色光L2は、射出側偏光板28から色合成部6へ向って進行する青色光L1と直交する方向に進行して、射出側偏光板33へ入射する。
【0058】
射出側偏光板33は、透過軸に平行な直線偏光を通し、かつ透過軸と直交する吸収軸に平行な直線偏光を吸収する特性を有する。射出側偏光板33の透過軸は、ワイヤーグリッド素子31に対するS偏光の偏光方向とほぼ平行に設定されている。
【0059】
放熱板34は、放熱板29とほぼ同じ構造であり、放熱板29と同様にして液晶パネル32の熱を逃がすことができる。放熱板34は、液晶パネル32へ緑色光L2が入射してくる入射側とは反対側にて液晶パネル32と接触して、設けられている。
【0060】
赤用の画像形成系5は、入射側偏光板35、ワイヤーグリッド素子(第3のワイヤーグリッド素子)36、液晶パネル(第3の液晶パネル)37、射出側偏光板38、及び放熱板39を備える。
【0061】
色分離光学系12から射出された赤色光L3は、入射側偏光板35へ入射した後にワイヤーグリッド素子36へ入射し、次いで液晶パネル37へ入射して変調されるとともに液晶パネル37で反射し、ワイヤーグリッド素子36へ再度入射する。ワイヤーグリッド素子36からワイヤーグリッド素子36へ入射した赤色光L3のうち、ワイヤーグリッド素子36で反射した赤色光L3は、射出側偏光板38へ入射する。ワイヤーグリッド素子36から射出側偏光板38へ入射した赤色光L3のうち、射出側偏光板38を透過した赤色光L3は、色合成部6へ入射する。
【0062】
入射側偏光板35は、透過軸に平行な直線偏光を通し、かつ透過軸と直交する吸収軸に平行な直線偏光を吸収する特性を有する。入射側偏光板35の透過軸は、ワイヤーグリッド素子36に対するP偏光の偏光方向とほぼ平行に設定されている。
【0063】
ワイヤーグリッド素子36は、青用の画像形成系3のワイヤーグリッド素子26と同様の構造である。ワイヤーグリッド素子36の金属線は、液晶パネル37の光射出面37Aと平行な方向に延びている。ワイヤーグリッド素子36は、入射側偏光板35からワイヤーグリッド素子36へ入射してくる赤色光L3の進行方向(光路)に対して、角度α6をなして傾斜している。本実施形態において、角度α6は略45°に設定されている。
【0064】
ワイヤーグリッド素子36は、入射する赤色光L3のうち、ワイヤーグリッド素子36に対するP偏光が透過し、かつワイヤーグリッド素子36に対するS偏光が反射する特性を有する。
【0065】
液晶パネル37は、青用の画像形成系3の液晶パネル27とほぼ同じ構成である。液晶パネル37は、ワイヤーグリッド素子36を通って液晶パネル37へ入射してくる赤色光L3の進行方向に対して光射出面37Aが直交するように、配置されている。液晶パネル37で反射した赤色光L3は、液晶パネル37へ入射する直前と進行方向が略180°変化して折り返される。
【0066】
射出側偏光板38は、透過軸に平行な直線偏光を通し、かつ透過軸と直交する吸収軸に平行な直線偏光を吸収する特性を有する。射出側偏光板38の透過軸は、ワイヤーグリッド素子36に対するS偏光の偏光方向とほぼ平行に設定されている。射出側偏光板38を透過した赤色光L3は、射出側偏光板28から色合成部6へ向って進行する青色光L1と向かい合うように反対方向に進行して、色合成部6へ入射する。
【0067】
放熱板39は、放熱板29とほぼ同じ構造であり、放熱板29と同様にして液晶パネル37の熱を逃がすことができる。放熱板39は、液晶パネル32へ赤色光L3が入射してくる入射側とは反対側にて液晶パネル37と接触して、設けられている。
【0068】
色合成部6は、ダイクロイックプリズム等により構成される。ダイクロイックプリズムは、4つの三角柱プリズムが互いに貼り合わされた構造である。各三角柱プリズムにおいて貼り合わされる面は、ダイクロイックプリズムの内面になる。ダイクロイックプリズムは、赤色光L3が反射し、かつ緑色光L2及び青色光L1が透過する特性の波長選択膜と、青色光L1が反射し、かつ緑色光L2及び赤色光L3が透過する特性の波長選択膜とが互いに直交して上記の内面に形成された構造である。
【0069】
ダイクロイックプリズムへ入射した緑色光L2は、波長選択面を通ってそのまま射出される。ダイクロイックプリズムへ入射した青色光L1及び赤色光L3は、波長選択面で選択的に反射あるいは透過して、緑色光L2の射出方向と同じ方向に射出される。このように、3つの色光は、重ね合わされて合成され、フルカラーの画像を示す合成光となり投写光学系7へ入射する。この合成光が投写光学系7によって投写面上で結像することにより、投写面にフルカラーの画像が表示される。
【0070】
次に、本実施形態のプロジェクター1のコントラスト比について説明する。
図3(A)は、ワイヤーグリッド素子の透過特性の角度依存性を示すグラフである。図3(B)は、ワイヤーグリッド素子の反射特性の角度依存性を示すグラフである。図3(C)は、液晶パネルの光射出面の法線方向とワイヤーグリッド素子とがなす角度を変化させたときのプロジェクターのコントラスト比の変化を示すグラフである。
【0071】
図3(A)ないし図3(C)のグラフのそれぞれにおいて、横軸は、液晶パネル32の光射出面32Aの法線方向とワイヤーグリッド素子31とがなす角度α5を示す。図3(A)の縦軸は、光量が同じであるP偏光とS偏光に関して、ワイヤーグリッド素子31を透過するS偏光の光量(T)に対するワイヤーグリッド素子31を透過するP偏光の光量(T)の比(T/T)を示す。図3(B)の縦軸は、光量が同じであるP偏光とS偏光に関して、ワイヤーグリッド素子31で反射するP偏光の光量(R)に対するワイヤーグリッド素子31で反射する透過するS偏光の光量(R)の比(R/R)を示す。図3(C)の縦軸は、最も画素値が低い画素(黒表示)の明るさに対する、最も画素値が高い画素(白表示)の明るさの比(コントラスト比)を示す。
【0072】
図3(A)のグラフに示すように、透過特性(T/T)は角度α5にほとんど依存しない。一方で、図3(A)のグラフに示すように、反射特性(R/R)は、α5が45°よりも小さくなるにつれて増加し、α5=41°程度でピークになり、α5が41°よりも小さくなるにつれて減少している。透過特性(T/T)が高くなるほど黒の表示特性が高くなり(引き締まった黒になり)、反射特性(R/R)が高くなるほど白の表示特性が高くなる(明るい白になる)。すなわち、透過特性(T/T)が高くなるほど、また反射特性(R/R)が高くなるほど、コントラスト比が高くなる。
【0073】
以上のような構成のプロジェクター1は、α5が37°以上45°未満に設定されているので、α5=45°である構成と比較して、反射特性(R/R)が高くなり、コントラスト比を向上させることができる。また、α5が38°以上44°以下の範囲内であればさらにコントラスト比を向上させることができ、α5が39°以上43°以下の範囲内であれば格段にコントラスト比を向上させることができる。
【0074】
また、プロジェクター1は、角度α3と角度α5との和が90°になるように設定されているので、緑用の画像形成系4から色合成部6へ入射する緑色光L2の進行方向が、青用の画像形成系3から色合成部6へ入射する青色光L1の進行方向及び赤用の画像形成系5から色合成部6へ入射する赤色光L3の進行方向と直交する。したがって、青色光L1、緑色光L2、及び赤色光L3を高精度に重ね合わせて合成することが容易になる。また、汎用のダイクロイックプリズムによって色合成部6を構成することができ、特注のダイクロイックプリズムを用いる場合と比較して、装置コストを下げることができる。
【0075】
なお、角度α3と角度α5との和が90°でなくてもよい。この場合に、例えば、色合成部6は、複数のダイクロイックミラーを含んで構成されており、ダイクロイックミラーを経由した複数の色光が重なり合うように、ダイクロイックミラーの姿勢が設定されていてもよい。
【0076】
ところで、青色光L1、緑色光L2、赤色光L3のうちで、緑色光L2は、最も人間の視感度(人間の錐体細胞の光吸収率)が高い色光である。プロジェクター1は、緑用の画像形成系4に関して、液晶パネル32の光射出面32Aの法線方向とワイヤーグリッド素子31とがなす角度(α5)が45°未満に設定されているので、効果的にコントラスト比を向上させることができる。
【0077】
なお、α5が41°付近で反射特性がピークを有する理由については明らかではないが、以下のような推測もできる。ここで、空気中のガラスへ光が入射する場合を考える。入射角に対するP偏光の反射率は、入射角が45°を超えても、ブリュースター角(60°程度)になるまでは減少する。一方で、入射角に対するS偏光の反射率は単調増加するので、入射角が45°を超えると、ガラス板で反射するP偏光に対するS偏光の比は増加することになる。
【0078】
一般的に、ワイヤーグリッド素子は、入射角が45°の光に対して反射特性と透過特性が最大になるように、設計される。しかしながら、ワイヤーグリッド素子の実際の特性は、製造誤差等に起因して理論上の特性からずれることがありえる。すなわち、ワイヤーグリッド素子は、ガラス等の透光性を有する誘電体層を有しており、誘電体層の特性が製造誤差等で残ることによって、入射角が45°よりも大きい範囲(α5が45°未満の範囲)で反射特性がピークを有することがありえる。
【0079】
ワイヤーグリッド素子の加工や設計の精度を向上させると、ワイヤーグリッド素子の実際の特性が理論上の特性へ近く可能性はある。換言すると、本実施形態のプロジェクター1は、ワイヤーグリッド素子の加工や設計の精度を向上させなくとも、ワイヤーグリッド素子の特性を補正することができ、プロジェクター1のコントラスト比を高めつつ製造コストを減らす効果も期待できる。
【0080】
[第2実施形態]
次に、第2実施形態について説明する。図4は、第2実施形態のプロジェクターの概略構成を示す図である。図4に示すプロジェクター1Bは、第1実施形態と同様の構成要素によって構成されている。プロジェクター1Bは、青用の画像形成系3、緑用の画像形成系4、赤用の画像形成系5のいずれにおいても、液晶パネルで反射した色光のワイヤーグリッド素子に対する入射角が45°よりも大きくなるように、第1実施形態とは構成要素の配置が変更されている。以下、詳しく説明する。
【0081】
第1反射ミラー23は、第2ダイクロイックミラー21から第1反射ミラー23への赤色光L3の進行方向に対して、45°未満の角度β1をなして傾斜している。第2反射ミラー24は、第1ダイクロイックミラー20から第2反射ミラー24への青色光L1及び緑色光L2の進行方向に対して、45°未満の角度β2なして傾斜している。本実施形態において、角度β1は角度β2とほぼ同じである。第3ダイクロイックミラー22は、第2反射ミラー24から第3ダイクロイックミラー22への青色光L1及び緑色光L2の進行方向に対して、45°よりも大きい角度β3をなして傾斜している。
【0082】
青用の画像形成系3において、ワイヤーグリッド素子26は、入射側偏光板25からワイヤーグリッド素子26へ入射してくる青色光L1の進行方向(光路)に対して、45°未満の角度β4をなして傾斜している。本実施形態において、角度β4は、上記の角度β2とほぼ同じである。液晶パネル27は、ワイヤーグリッド素子26を通って液晶パネル27へ入射してくる青色光L1の進行方向に対して光射出面27Aが直交するように、配置されている。
【0083】
緑用の画像形成系4において、ワイヤーグリッド素子31は、入射側偏光板30からワイヤーグリッド素子31へ入射してくる緑色光L2の進行方向(光路)に対して、45°未満の角度β5をなして傾斜している。本実施形態において、角度β5は、角度β2及び角度β3との和(β2+β3+β5)が略135°になるように、設定されている。液晶パネル32は、ワイヤーグリッド素子31を通って液晶パネル32へ入射してくる緑色光L2の進行方向に対して光射出面32Aが直交するように、配置されている。
【0084】
赤用の画像形成系5において、ワイヤーグリッド素子36は、入射側偏光板35からワイヤーグリッド素子36へ入射してくる赤色光L3の進行方向に対して、45°未満の角度β6をなして傾斜している。本実施形態において、角度β6は、上記の角度β1とほぼ同じである。液晶パネル37は、ワイヤーグリッド素子36を通って液晶パネル37へ入射してくる赤色光L3の進行方向に対して光射出面37Aが直交するように、配置されている。
【0085】
以上のような構成のプロジェクター1Bは、複数の画像形成系のそれぞれにおいて、各液晶パネルの光射出面の法線方向に対してワイヤーグリッド素子が45°未満の角度で傾斜しているので、コントラスト比を格段に向上させることができる。また、プロジェクター1Bは、光源部10から投写光学系7までの各色光の光路長を揃えることできる。
【0086】
また、プロジェクター1Bは、角度β2が角度β4とほぼ同じであり、かつ角度β1が角度β6とほぼ同じであるので、青用の画像形成系3から色合成部6へ入射する青色光L1の進行方向と、赤用の画像形成系5から色合成部6へ入射する赤色光L3の進行方向とが互いにほぼ平行になる。また、角度β2と角度β3と角度β5の和が略135°に設定されているので、青用の画像形成系3から色合成部6へ入射する青色光L1の進行方向と、緑用の画像形成系4から色合成部6へ入射する緑色光L2の進行方向とが互いにほぼ直交する。したがって、青色光L1、緑色光L2、及び赤色光L3を高精度に重ね合わせて合成することが容易になる。また、汎用のダイクロイックプリズムによって色合成部6を構成することができ、特注のダイクロイックプリズムを用いる場合と比較して、装置コストを下げることができる。
【0087】
なお、角度β2が角度β4と異なっていてもよいし、角度β1が角度β6と異なっていてもよい。また、角度β2と角度β3と角度β5の和が135°でなくてもよい。この場合に、例えば、色合成部6は、複数のダイクロイックミラーを含んで構成されており、ダイクロイックミラーを経由した複数の色光が重なり合うように、ダイクロイックミラーの姿勢が設定されていてもよい。
【0088】
なお、本発明の技術範囲は上記の実施形態に限定されるものではない。上記の実施形態で説明した要件は、適宜組み合わせることができる。また、上記の実施形態で説明した要件の少なくとも1つは、省略されることある。本発明の主旨を逸脱しない範囲内で多様な変形が可能である。
【0089】
第1実施形態において、3色の色光のうちの1つの色光に関して、この色光に対応する画像形成系の液晶パネルで反射した色光に対してワイヤーグリッド素子が45°未満の角度をなしており、上記の1つの色光は緑色光L2であるが、上記の1つの色光は青色光L1でもよいし、赤色光L3でもよい。また、3色の色光のうちの2つの色光に関して、各色光に対応する画像形成系の液晶パネルで反射した色光に対してワイヤーグリッド素子が45°未満の角度をなしており、残り1つの色光に関して、この色光に対応する画像形成系の液晶パネルで反射した色光に対してワイヤーグリッド素子が略45°の角度をなしていてもよい。
【0090】
上記の実施形態において、照明光学系2は、光源ランプ13から射出された白色光を3色の光に色分離し、各色の光ごとに各色用の画像形成系を照明する構成であるが、その構成に限定はない。例えば、照明光学系は、各色の光を直接的に発光するレーザーダイオードや発光ダイオード等の固体光源を備え、各色用の固体光源から射出された各色の光により各色用の画像形成系を照明する構成でもよい。また、青色光又は紫外光を発光する固体光源と、この固体光源から射出された光源光を受けて光源光よりも長波長の光を射出する蛍光体とを備え、蛍光体から射出された光により画像形成系を照明する構成でもよい。この構成において、照明光学系は、固体光源から射出された光と蛍光体から射出された光とが合わさって白色光となり、この白色光を3色の光に色分離し、各色の光ごとに各色用の画像形成系を照明する構成でもよい。また、固体光源から射出された青色光をハーフミラーなどで複数の光線束に分離し、分離された1つの光線束により青用の画像形成系を照明するとともに、分離された他の光線束を蛍光体で色変換した光により他色用の画像形成を照明する構成でもよい。
【0091】
上記の実施形態において、入射側偏光板と射出側偏光板の少なくとも一方を、入射してくる各色光の進行方向の周りの回転角を調整することによって、コントラスト比をさらに向上させてもよい。また、入射側偏光板と射出側偏光板の少なくとも一方は、入射してくる各色光の進行方向に直交していてもよいし、入射してくる各色光の進行方向に対して90°未満の角度で傾斜していてもよい。
【符号の説明】
【0092】
1、1B・・・プロジェクター、2・・・照明光学系、7・・・投写光学系、26・・・ワイヤーグリッド素子(第2のワイヤーグリッド素子)、27・・・液晶パネル(第2の液晶パネル)、27A・・・光射出面、31・・・ワイヤーグリッド素子(第1のワイヤーグリッド素子)、32・・・液晶パネル(第1の液晶パネル)、32A・・・光射出面、L1・・・青色光(第2の光)、L2・・・緑色光(第1の光)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の光を射出する照明光学系と、
前記照明光学系から射出された前記第1の光を変調する反射型の第1の液晶パネルと、
前記第1の液晶パネルで変調されて反射した第1の光が入射する位置に配置され、前記第1の光が入射される面内において前記第1の液晶パネルの光射出面と略平行に伸びる複数の金属線を有し、前記第1の液晶パネルの光射出面の法線方向に対して前記第1の光が入射される面が37°以上45°未満の角度で傾斜した第1のワイヤーグリッド素子と、
前記第1の液晶パネルによって変調されて前記第1のワイヤーグリッド素子で反射した第1の光を投写する投写光学系と、を備えるプロジェクター。
【請求項2】
前記照明光学系は、前記第1の光の他に、前記第1の光とは波長が異なる第2の光を射出し、
前記照明光学系から射出された前記第2の光を変調する反射型の第2の液晶パネルと、
前記第2の液晶パネルで変調されて反射した第2の光が入射する位置に配置され、前記第2の光が入射される面内において前記第2の液晶パネルの光射出面と略平行に伸びる複数の金属線を有する第2のワイヤーグリッド素子と、を備え、
前記投写光学系は、前記第1の液晶パネルによって変調されて前記第1のワイヤーグリッド素子で反射した第1の光と、前記第2の液晶パネルによって変調されて前記第2のワイヤーグリッド素子で反射した第2の光とを投写し、
前記第1の光は、前記第2の光よりも視感度が高い、請求項1に記載のプロジェクター。
【請求項3】
前記第2のワイヤーグリッド素子は、前記第2の液晶パネルの光射出面の法線方向に対して45°未満の角度で傾斜している、請求項2に記載のプロジェクター。
【請求項4】
前記第1の液晶パネルの光射出面の法線方向に対する前記第1のワイヤーグリッド素子の角度が39°以上43°以下である、請求項1ないし3のいずれか一項に記載のプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−189930(P2012−189930A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−55172(P2011−55172)
【出願日】平成23年3月14日(2011.3.14)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】