説明

プロジェクタ及びその制御方法

【課題】光源が消灯しなくなる異常が発生した際に、この異常をユーザに認識させることが可能なプロジェクタ及びその制御方法を提供する。
【解決手段】光源11が消灯しなくなる消灯異常が検出されると、制御部20は、LED表示部23を赤色で点滅させて、異常の発生をユーザに報知する。さらに、制御部20は、OSD処理部27に指示をして、消灯異常を報知するためのメッセージ画像を投写画像上に重畳表示させるとともに、画像処理部26に指示をして、メッセージ画像の背景を赤色で点滅させる。その後、制御部20は、ファン制御部32に対して、冷却ファン33の回転数を増大させる指示を行い、温度検出部31の検出結果に応じた回転数よりも大きな回転数で冷却ファン33を回転させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光源から射出された光を変調して投写するプロジェクタ及びその制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光源から射出された光を変調して画像を形成し、この画像をスクリーン等に投写するプロジェクタにおいて、光源自身、又は光源の点消灯(点灯及び消灯)を行う光源駆動装置に故障や誤動作が生じた場合、或いは光源と光源駆動装置との接続が不完全である場合等には、光源の点消灯を適正に制御できない事態が生じ得る。また、特許文献1に記載の光源駆動装置(放電ランプ点灯装置)のように、光源駆動装置が、外部機器(例えば、プロジェクタの主たる制御装置)と通信を行って光源の点灯状態を高精度に制御するマイコン(演算処理回路)を備えた構成の場合には、外来のノイズ等による通信異常や予期せぬマイコンの誤動作が光源の制御に支障をきたす恐れもある。
【0003】
ここで、光源を点灯させるための操作(オン操作)を行ったにも拘わらず光源が点灯しない場合には、ユーザは、すぐに異常(光源が点灯しないこと)を認識することが可能であり、再度オン操作を試みたり、光源の接続状態を確認したりすることができる。
【0004】
【特許文献1】特開2005−243381号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、光源を消灯させるための操作(オフ操作)を行ったにも拘わらず光源が消灯しない場合には、プロジェクタの使用を終えた状況下であることから、ユーザは、異常(光源が消灯しないこと)に気づきにくく、そのまま放置されてしまう恐れがある。また、異常に気づいたユーザが、点灯により高温になっている光源に触れようとしてしまうことも考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例に係るプロジェクタは、光源と、前記光源から射出された光を変調して画像を形成する光変調装置と、前記光変調装置で形成された前記画像を投写する投写光学系と、前記光源の消灯を指示するためのオフ操作を受け付ける入力操作部と、前記光源の点灯及び消灯を行う光源駆動装置と、前記入力操作部が受け付けた前記オフ操作に基づいて、前記光源駆動装置に前記光源を消灯させるための指示を行う制御部と、前記制御部が前記指示を行った後も前記光源の点灯が継続する消灯異常を検出する消灯異常検出部と、前記消灯異常検出部が前記消灯異常を検出した場合に異常の発生を報知する報知部と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
このプロジェクタによれば、制御部が光源駆動装置に光源を消灯させるための指示を行った後も光源の点灯が継続する消灯異常が検出された場合に、報知部が異常の発生を報知するため、異常が発生したことをユーザに認識させることができる。
【0009】
[適用例2]上記適用例に係るプロジェクタにおいて、前記報知部は、前記消灯異常検出部が前記消灯異常を検出した場合に、異常の発生を報知するメッセージ画像を前記光変調装置に形成させ、前記投写光学系から投写させることが望ましい。
【0010】
このプロジェクタによれば、消灯異常が検出された場合にメッセージ画像を投写するため、異常の発生をユーザに認識させることが可能となる。また、メッセージの内容によって、対処方法や注意事項等も報知することができる。
【0011】
[適用例3]上記適用例に係るプロジェクタにおいて、前記報知部は、前記消灯異常検出部が前記消灯異常を検出した場合に、前記投写光学系から投写される前記画像の色を周期的に切り換えることが望ましい。
【0012】
このプロジェクタによれば、消灯異常が検出された場合に画像の色を周期的に切り換えるため、異常が発生したことをユーザに効果的に認識させることが可能となる。
【0013】
[適用例4]上記適用例に係るプロジェクタにおいて、前記光源及び前記光変調装置を含む装置本体を収容する筐体と、前記筐体の内部を冷却する冷却ファンと、をさらに備え、前記報知部は、前記消灯異常検出部が前記消灯異常を検出した場合に、前記冷却ファンの回転数を増大させることが望ましい。
【0014】
このプロジェクタによれば、消灯異常が検出された場合に冷却ファンの回転数を増大させるため、冷却ファンの回転音によって異常の発生を認識させることができるとともに、光源が点灯し続けることによる温度上昇を抑制することが可能となる。
【0015】
[適用例5]上記適用例に係るプロジェクタにおいて、前記報知部は、音声を出力する音声出力部を備え、前記消灯異常検出部が前記消灯異常を検出した場合に、前記音声出力部から所定の音声を出力させるようにしてもよい。
【0016】
このプロジェクタによれば、消灯異常が検出された場合に音声によって異常の発生を報知するため、投写される画像やプロジェクタから目を離したユーザに対しても、異常の発生を認識させることができる。なお、出力する音声としては、単に警報音を鳴らすだけでもよいし、音声メッセージをアナウンスするようにしてもよい。後者の場合には、メッセージの内容によって、対処方法や注意事項等も報知することができる。
【0017】
[適用例6]本適用例に係るプロジェクタの制御方法は、光源から射出された光を変調して投写するプロジェクタの制御方法であって、前記光源の消灯を指示するためのオフ操作を受け付けるオフ操作入力ステップと、前記オフ操作入力ステップで受け付けた前記オフ操作に基づいて、前記光源を駆動する光源駆動装置に対して前記光源を消灯させるための指示を行う消灯指示ステップと、前記消灯指示ステップの後も前記光源の点灯が継続する消灯異常を検出する消灯異常検出ステップと、前記消灯異常検出ステップで前記消灯異常が検出された場合に、異常の発生を報知する報知ステップと、を備えたことを特徴とする。
【0018】
このプロジェクタの制御方法によれば、光源駆動装置に光源を消灯させるための指示を行った後も光源の点灯が継続する消灯異常が検出された場合に、異常の発生を報知するようにしているため、異常が発生したことをユーザに認識させることができる。
【0019】
また、上述したプロジェクタ及びその制御方法がプロジェクタに備えられたコンピュータを用いて構築されている場合には、上記形態及び上記適用例は、その機能を実現するためのプログラム、或いは当該プログラムを前記コンピュータで読み取り可能に記録した記録媒体等の態様で構成することも可能である。記録媒体としては、フレキシブルディスクやCD−ROM、光磁気ディスク、ICカード、ROMカートリッジ、パンチカード、バーコード等の符号が印刷された印刷物、プロジェクタの内部記憶装置(RAMやROM等のメモリ)、及び外部記憶装置等、前記コンピュータが読み取り可能な種々の媒体を利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、光源から射出された光を画像情報に応じて変調して画像を形成し、形成した画像をスクリーン等の投写面に投写するプロジェクタについて説明する。
【0021】
図1及び図2は、本実施形態のプロジェクタを示す斜視図であり、図1は、前面、上面、及び右側面を示す図、図2は、背面、底面、及び右側面を示す図である。
図1及び図2に示すように、プロジェクタ1は、装置本体が筐体2に収容された構成を有しており、筐体2の前面2fには、画像を投写する投写レンズ13が露出している。筐体2の上面2tには、ユーザがプロジェクタ1に対して各種指示を行うための入力操作部22が備えられ、入力操作部22の近傍には、プロジェクタ1の動作状態を報知するためのLED表示部23が備えられている。筐体2の背面2rには、商用電源が供給される電源端子28と、図示しない外部の画像出力装置から画像情報が入力される画像情報入力部24とが設けられている。画像情報入力部24には、複数の入力端子24aが配置されており、各入力端子24aには、一端が画像出力装置に接続されたケーブルの他端が接続される。
【0022】
プロジェクタ1は、筐体2の内部に冷却ファン33(図3参照)を備えており、光源の点灯等に伴って高温となる筐体2の内部を冷却することができる。筐体2の底面2bには、外部から空気を吸入するための吸気口3aが形成されており、冷却ファン33の回転によって吸気口3aから吸入された空気は、筐体2の内部を冷却した後、筐体2の右側面2sに形成された排気口3bから排出される。
【0023】
図3は、プロジェクタの回路構成を示すブロック図である。
図3に示すように、プロジェクタ1は、画像投写部10、制御部20、記憶部21、入力操作部22、LED表示部23、画像情報入力部24、入力選択部25、画像処理部26、OSD処理部27、電源端子28、電源回路29、光源駆動装置30、温度検出部31、ファン制御部32、冷却ファン33等を備えて構成されている。
【0024】
画像投写部10は、光源11、光変調装置としての3つの液晶ライトバルブ12R,12G,12B、投写光学系としての投写レンズ13、ライトバルブ駆動部14等を含んでいる。画像投写部10は、表示部に相当するものであり、光源11から射出された光を、液晶ライトバルブ12R,12G,12Bで変調して画像を形成し、この画像を投写レンズ13から投写して投写面Sに表示する。
【0025】
光源11は、超高圧水銀ランプやメタルハライドランプ等からなる放電型の光源ランプ11aと、光源ランプ11aが放射した光を液晶ライトバルブ12R,12G,12B側に反射するリフレクタ11bとを含んで構成されている。光源11から射出された光は、図示しないインテグレータ光学系によって輝度分布が略均一な光に変換され、図示しない色分離光学系によって光の3原色である赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の各色光成分に分離された後、それぞれ液晶ライトバルブ12R,12G,12Bに入射する。
【0026】
液晶ライトバルブ12R,12G,12Bは、一対の透明基板間に液晶が封入された液晶パネル等によって構成される。液晶ライトバルブ12R,12G,12Bには、マトリクス状に配列された複数の画素(図示せず)が形成されており、液晶に対して画素毎に駆動電圧を印加可能になっている。ライトバルブ駆動部14が、入力される画像情報に応じた駆動電圧を各画素に印加すると、各画素は、画像情報に応じた光透過率に設定される。このため、光源11から射出された光は、この液晶ライトバルブ12R,12G,12Bを透過することによって変調され、画像情報に応じた画像が色光毎に形成される。形成された各色の画像は、図示しない色合成光学系によって画素毎に合成されてカラー画像となった後、投写レンズ13から拡大投写される。
【0027】
制御部20は、CPU(Central Processing Unit)や、各種データ等の一時記憶に用いられるRAM(Random Access Memory)等を備え、記憶部21に記憶されている制御プログラムに従って動作することによりプロジェクタ1の動作を統括制御する。つまり、制御部20は、記憶部21とともにコンピュータとして機能する。
【0028】
記憶部21は、マスクROM(Read Only Memory)や、フラッシュメモリ、FeRAM(Ferroelectric RAM:強誘電体メモリ)等の不揮発性のメモリにより構成されている。記憶部21には、プロジェクタ1の動作を制御するための制御プログラムや、プロジェクタ1の動作条件等を規定する各種設定データ等が記憶されている。
【0029】
入力操作部22は、ユーザからの入力操作を受け付けるものであり、ユーザがプロジェクタ1に対して各種指示を行うための複数の操作キーを備えている。入力操作部22が備える操作キーとしては、電源のオン・オフを切り換えるための「電源キー」、有効な入力端子24aを切り換えるための「入力切換キー」等がある。ユーザが入力操作部22の各種操作キーを操作すると、入力操作部22は、この入力操作を受け付けて、ユーザの操作内容に応じた操作信号を制御部20に出力する。なお、入力操作部22として、遠隔操作が可能なリモコン(図示せず)を用いた構成としてもよい。この場合、リモコンは、ユーザの操作内容に応じた赤外線の操作信号を発信し、図示しないリモコン信号受信部がこれを受信して制御部20に伝達する。
【0030】
LED表示部23は、LED(発光ダイオード)を備えたインジケータであり、制御部20の指示に基づいてその表示状態を切り換えることにより、ユーザにプロジェクタ1の動作状態(電源のオン・オフや異常発生等)を報知する。なお、LED表示部23は、その表示状態、即ち点灯、点滅、消灯、発光色等を適宜切り換えることによって、多数の動作状態を表すことが可能になっている。
【0031】
画像情報入力部24は、上述したように複数の入力端子24aを備えており、各入力端子24aには、ビデオ再生装置やパーソナルコンピュータ等、外部の画像出力装置から出力される画像情報がケーブルを介して入力される。各入力端子24aに入力された画像情報は、入力選択部25に供給される。
【0032】
入力選択部25は、複数の入力端子24aのうち、制御部20の指示に基づく1つの入力端子24aを選択し、この入力端子24aに入力される画像情報を画像処理部26に出力する。ユーザが、入力操作部22に備わる入力切換キーを操作して所望の入力端子24aを指定すると、制御部20は、この入力端子24aに入力される画像情報が画像処理部26に出力されるよう、入力選択部25に指示をする。
【0033】
画像処理部26は、入力選択部25から入力される画像情報を、液晶ライトバルブ12R,12G,12Bの各画素の階調を表す画像情報に変換する。ここで、変換された画像情報は、R,G,Bの色光別になっており、各液晶ライトバルブ12R,12G,12Bのすべての画素に対応する複数の画素値によって構成されている。画素値とは、対応する画素の光透過率を定めるものであり、この画素値によって、各画素から射出する光の強弱(階調)が規定される。また、画像処理部26は、制御部20の指示に基づき、変換した画像情報に対して、明るさ、コントラスト、シャープネス、色合い等を調整するための画質調整処理等を行い、処理後の画像情報をOSD処理部27に出力する。
【0034】
また、画像処理部26は、制御部20の指示に基づいて、所定の基本画像(例えば、単色無地の画像等)を投写するための画像情報を出力可能になっている。制御部20が基本画像の投写を指示すると、画像処理部26は、入力選択部25から入力される画像情報の内容に拘わらず、指示に応じた画像情報を生成し、生成した画像情報をOSD処理部27に出力する。例えば、白色無地の基本画像の投写が指示された場合には、画像処理部26は、すべての画素の光透過率が最大となるような画像情報を生成して出力する。
【0035】
OSD処理部27は、制御部20の指示に基づいて、投写すべき画像(投写画像)上にメニュー画像やメッセージ画像等のOSD(オンスクリーンディスプレイ)画像を重畳するための処理を行う。OSD処理部27は、図示しないOSDメモリを備えており、OSD画像を形成するための図形やフォント等を表す画像データを記憶している。制御部20が、OSD画像の重畳を指示すると、OSD処理部27は、必要な画像データをOSDメモリから読み出して、指定されたOSD画像を形成するためのOSD画像情報を生成する。そして、投写画像上の所定の位置にOSD画像が重畳されるように、画像処理部26から入力される画像情報にこのOSD画像情報を合成する。OSD画像情報が合成された画像情報は、ライトバルブ駆動部14に出力される。なお、制御部20からOSD画像を重畳する旨の指示がない場合には、OSD処理部27は、画像処理部26から入力される画像情報を、そのままライトバルブ駆動部14に出力する。
【0036】
ライトバルブ駆動部14が、OSD処理部27から入力される画像情報に従って液晶ライトバルブ12R,12G,12Bを駆動すると、液晶ライトバルブ12R,12G,12Bは、画像情報に応じた画像を形成し、この画像が投写レンズ13から投写される。
【0037】
電源回路29には、電源端子28を介してAC100V等の商用電源が外部から供給される。電源回路29は、商用電源(交流電源)を所定の電圧の直流電源に変換して、プロジェクタ1の各部に電力を供給する。また、電源回路29は、制御部20の指示に基づいて、画像の投写に必要な電力(動作電力)を各部に供給する状態(電源オンの状態)と、動作電力の供給を停止して、電源をオンにするための操作を待機する状態(スタンバイ状態)とを切り換えることができる。
【0038】
光源駆動装置30は、電源回路29で生成された直流電流を交流矩形波電流に変換するインバータ(図示せず)や、光源ランプ11aの電極間の絶縁破壊を行って、光源ランプ11aの始動を促すためのイグナイタ(図示せず)等を備えており、制御部20の指示に基づいて光源11を駆動する。具体的には、光源駆動装置30は、光源11を始動させて所定の電力を供給することにより光源11を点灯させるとともに、電力の供給を停止して光源11を消灯させることができる。また、光源駆動装置30は、光源11が消費する電流(光源電流)等に基づいて、光源11の点灯状態(点灯しているか否か)を検知可能になっており、その検知結果を点灯状態検知信号として制御部20に出力する。
【0039】
温度検出部31は、1つ又は複数の温度センサ等で構成され、筐体2の内部の温度を検出し、検出結果をファン制御部32に出力する。この温度センサは、光源11、液晶ライトバルブ12R,12G,12B、電源回路29等のように、熱を発する部位や熱によるダメージを受けやすい部位に配置される。また、筐体2の内部の温度を直接検出する代わりに、排気口3bから排出される空気の温度を検出すること等により、筐体2の内部の温度を間接的に検出するようにしてもよい。
【0040】
ファン制御部32は、制御部20の指示に基づいて、冷却ファン33の回転の始動、及びその停止を制御するとともに、制御部20の指示と温度検出部31の検出結果とに基づいて冷却ファン33の回転数を制御する。具体的には、ファン制御部32は、筐体2の内部温度が高温であるほど、冷却ファン33を高速で回転させて温度上昇を抑制し、内部温度が低い場合には、ファンの回転に伴う騒音と電力消費とを抑制すべく冷却ファン33の回転数を低速にする。
【0041】
冷却ファン33は、例えば、軸流ファンやシロッコファン等によって構成される。冷却ファン33は、ファン制御部32の制御に基づいて回転することにより、吸気口3aから外部の空気を吸入して筐体2の内部を冷却し、冷却後の空気を排気口3bから排出する。なお、冷却ファン33は、複数のファンによって構成されてもよく、例えば、吸気口3aの近傍に配置されるファン(吸気ファン)と、排気口3bの近傍に配置されるファン(排気ファン)とを含んで構成されてもよい。
【0042】
次に、プロジェクタ1の動作について説明する。
【0043】
電源端子28に電源ケーブル(図示せず)の一端が接続され、この電源ケーブルの他端に備わる電源プラグがコンセントに挿し込まれると、電源回路29に商用電源が供給される。商用電源が供給されると、電源回路29は、少なくとも制御部20、記憶部21、入力操作部22、LED表示部23に電力(スタンバイ電力)の供給を行い、制御部20は、この電力供給を受けて、制御プログラムに従った動作を開始する。商用電源が供給された直後には、プロジェクタ1は、スタンバイ状態(「電源オフの状態」ともいう。)であり、制御部20は、LED表示部23をオレンジ色で点灯させるとともに、入力操作部22の電源キーに対する操作を監視する。そして、電源キーがユーザにより操作されると、制御部20は、電源回路29に指示をして、各部への動作電力の供給を開始させ、プロジェクタ1を電源オンの状態に移行させる。
【0044】
プロジェクタ1が電源オンの状態に移行すると、制御部20は、LED表示部23を緑色で点灯させる。そして、ファン制御部32に指示をして冷却ファン33を始動させるとともに、光源駆動装置30に指示をして光源11を点灯させる。この結果、入力端子24aに入力される画像情報に基づく画像が画像投写部10から投写される。
【0045】
電源オンの状態でユーザにより再度電源キーが操作されると、制御部20は、光源駆動装置30に対して光源11を消灯させる指示(消灯指示)を行い、光源11が正常に消灯した後に、プロジェクタ1をスタンバイ状態に移行させる。ただし、本実施形態では、消灯指示を行ったにも拘わらず光源11が点灯した状態が継続する現象(消灯異常)が発生した場合には、制御部20は、消灯指示を繰り返すとともに、ユーザに対して消灯異常が発生した旨を報知するようになっている。なお、本明細書では、電源オンの状態でなされる電源キーの操作、即ち光源11を消灯させてスタンバイ状態に移行させるためになされる電源キーの操作を「オフ操作」と呼ぶ。
【0046】
図4は、上記の動作、即ちオフ操作時のプロジェクタ1の動作を詳述するためのフローチャートである。ユーザによりオフ操作がなされると、制御部20は、図4に示すフローに従って動作する。
図4に示すように、まず、ステップS101では、制御部20は、光源駆動装置30に消灯指示を行い、光源11を消灯させるための消灯処理を行わせる。
【0047】
続くステップS102では、制御部20は、光源駆動装置30から入力される点灯状態検知信号に基づいて、光源11が正常に消灯したか否かを判断する。そして、光源11が正常に消灯した場合にはステップS103に移行する。一方、光源11が消灯しておらず、点灯した状態が継続している場合にはステップS105に移行する。
【0048】
消灯処理によって光源11が正常に消灯しステップS103に移行した場合には、制御部20は、ファン制御部32に指示をして、冷却ファン33の回転を停止させる。なお、光源11が消灯した後も、所定時間、或いは、温度検出部31の検出温度が所定の温度以下になるまで冷却ファン33による冷却(クールダウン)を継続させるようにしてもよい。
【0049】
続くステップS104では、制御部20は、他の必要な終了処理(図示せず)を行った後、電源回路29に指示をして動作電力の供給を停止させることにより、プロジェクタ1をスタンバイ状態に移行させ、フローを終了する。
【0050】
一方、光源11が消灯せずにステップS105に移行した場合には、制御部20は、オフ操作の後に光源駆動装置30に対して行った消灯指示の回数を判断する。そして、その回数が所定の回数M(例えば、5)である場合にはステップS106に移行する。一方、所定の回数M以外、即ち所定の回数M未満か所定の回数Mを超えている場合にはステップS101に戻り、再度光源駆動装置30に対して消灯指示を行う。なお、消灯指示の回数は、例えば、制御部20のRAMに記憶され、制御部20は、オフ操作がなされた直後にこれを0にリセットし、ステップS101で消灯指示を行うたびに1ずつインクリメントする。
【0051】
消灯指示の回数が所定の回数MとなってステップS106に移行した場合、即ち、所定の回数Mの消灯指示を行ったにも拘わらず、依然として光源11が消灯しない状態になった場合には、制御部20は、この状態を消灯異常として検出する。そして、ステップS107では、制御部20は、LED表示部23を赤色で点滅させて、異常の発生をユーザに報知する。
【0052】
さらに、ステップS108では、制御部20は、OSD処理部27に指示をして、消灯異常を報知するためのメッセージ画像Mw(図5参照)を投写画像P上に重畳表示させる。図5に示すように、メッセージ画像Mwには、消灯異常が発生した旨のメッセージ(「ランプを消灯できません。」)とともに、その対処方法(「電源プラグをコンセントから抜いて下さい。」)及び注意事項(「ランプには絶対に触れないで下さい。」)等が表記されている。
【0053】
図4に戻って、ステップS109では、制御部20は、画像処理部26に指示をして、投写画像Pとして黒色無地の基本画像を投写する状態と、赤色無地の基本画像を投写する状態とを周期的に切り換えさせる。これにより、制御部20は、投写画像P、即ちメッセージ画像Mwの背景を赤色で点滅させて、ユーザに異常の発生を報知する。
【0054】
そして、ステップS110では、制御部20は、ファン制御部32に対して、冷却ファン33の回転数を増大させる指示を行い、その後、ステップS101に戻る。ファン制御部32は、制御部20から上記の指示を受けると、温度検出部31の検出結果に応じた回転数よりも大きな回転数で冷却ファン33を回転させる。この結果、光源11が点灯し続けることによる温度上昇が抑制されるとともに、冷却ファン33の回転音が増大することにより、ユーザに異常の発生が報知される。このため、ここでは、冷却ファン33の回転数を、その可変範囲のうちの最大の回転数とすることが望ましい。
【0055】
これ以降も、制御部20は、ステップS101にて消灯指示を行い、光源11が消灯してスタンバイ状態となるか、電源プラグが抜かれて電源の供給が断たれるまで消灯指示を繰り返す。そして、その間、プロジェクタ1は、LED表示部23が赤色で点滅し、同じく赤色で点滅する投写画像Pにはメッセージ画像Mwが重畳され、さらに、冷却ファン33の回転数が増大した状態が継続する。
【0056】
以上説明したように、本実施形態のプロジェクタ1によれば、以下の効果を得ることができる。
【0057】
(1)本実施形態のプロジェクタ1によれば、消灯異常が検出された場合に、様々な手段(LED表示部23及び投写画像Pの点滅、メッセージ画像Mwの重畳、及び冷却ファン33の回転数の増大)で異常の発生を報知するため、異常が発生したことをユーザに認識させることができる。
【0058】
(2)本実施形態のプロジェクタ1によれば、消灯異常が検出された場合に、その旨を報知するメッセージ画像Mwを重畳するようにしているため、異常の発生をユーザに認識させることが可能となるとともに、対処方法や注意事項等も報知することができる。
【0059】
(3)本実施形態のプロジェクタ1によれば、消灯異常が検出された場合に、投写画像Pを点滅させる(投写画像Pの色を周期的に切り換えている)ため、異常が発生したことをユーザに効果的に認識させることが可能となる。
【0060】
(4)本実施形態のプロジェクタ1によれば、消灯異常が検出された場合に、冷却ファン33の回転数を増大させるため、冷却ファン33の回転音によって異常の発生を認識させることができるとともに、光源11が点灯し続けることによる温度上昇を抑制することが可能となる。
【0061】
なお、本実施形態では、光源電流に基づいて光源11の点灯状態を検知する際の光源駆動装置30と、その検知結果(点灯状態検知信号)に基づいて消灯異常を検出する際の制御部20が、消灯異常検出部に相当する。また、赤色で点滅する際のLED表示部23と、メッセージ画像Mwを重畳表示する際のOSD処理部27と、投写画像Pを点滅させる際の画像処理部26と、冷却ファン33の回転数を増大させる際のファン制御部32と、これらの動作を制御する制御部20とが、報知部に相当する。
【0062】
(変形例)
また、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
【0063】
上記実施形態では、光源駆動装置30が、光源電流に基づいて光源11の点灯状態(点灯しているか否か)を検知し、制御部20は、光源駆動装置30の検知結果(点灯状態検知信号)に基づいて消灯異常を検出しているが、消灯異常を検出するための手段は上記に限定されない。例えば、図6に示すように、光源駆動装置30とは独立して光源11の点灯状態を検知する点灯状態検知部34を備えるようにして、この点灯状態検知部34の検知結果に基づいて、制御部20が消灯異常を検出するようにしてもよい。この場合には、光源駆動装置30に何らかの異常が発生して、光源駆動装置30が正常な点灯状態検知信号を出力できなくなった場合でも、消灯異常の検出が可能となる。なお、この場合には、点灯状態検知部34と制御部20とが消灯異常検出部に相当する。また、光源11の点灯状態を検知するための手段としては、光源電流に基づいて検知するものに限られず、例えば、光センサ等によって点灯状態を検知することも可能である。
【0064】
上記実施形態において、制御部20の指示に基づいて音声を出力する音声出力部35(図7参照)をさらに備えるようにすれば、制御部20は、消灯異常が検出された際に、異常の発生を音声で報知することも可能となる。この場合には、音声出力部35と制御部20とが報知部に相当する。なお、音声出力部35としては、所定の警報音を発するブザーを用いてもよいし、予め記憶部21に記憶されている音声情報に基づいた音声メッセージをスピーカから発生させる態様にしてもよい。後者の場合には、メッセージの内容によって、対処方法や注意事項等をも音声で報知することが可能となる。
【0065】
上記実施形態では、消灯異常が検出された際に、LED表示部23の点滅と、メッセージ画像Mwの重畳表示と、その背景(投写画像P)の点滅と、冷却ファン33の回転数の増大のすべてを行うようにしているが、いずれか1つのみを行うようにしてもよい。ただし、異常の発生をユーザに確実に認識させるためには、複数の手段を用いて報知することが望ましい。
【0066】
上記実施形態では、消灯異常が検出された際に、LED表示部23を赤色で点滅させるようにしているが、点滅に代えて点灯させるようにしてもよい。また、発光色は赤色に限られず、他の色にしてもよい。
【0067】
上記実施形態では、消灯異常が検出された際に、黒色無地の画像の投写と赤色無地の画像の投写とを周期的に切り換えることにより、投写画像Pを点滅させているが、色の組み合わせは上記(黒色と赤色)に限定されず、他の組み合わせであってもよい。また、上記実施形態では、メッセージ画像Mwの背景を点滅させているが、メッセージ画像Mwを点滅表示させるようにしてもよい。
【0068】
上記実施形態では、光変調装置として3つの液晶ライトバルブ12R,12G,12Bを用いた3板式のプロジェクタ1について説明したが、これに限定されない。例えば、各画素の中にそれぞれR光、G光、B光を透過可能なサブ画素を含んだ1つの液晶ライトバルブによって画像を形成する態様とすることも可能である。
【0069】
上記実施形態では、光変調装置として、透過型の液晶ライトバルブ12R,12G,12Bを用いているが、反射型の液晶ライトバルブ等、反射型の光変調装置を用いることも可能である。また、入射した光の射出方向を、画素としてのマイクロミラー毎に制御することにより、光源から射出した光を変調する微小ミラーアレイデバイス等を用いることもできる。
【0070】
上記実施形態では、光源11は、放電型の光源ランプ11aによって構成されているが、LED(Light Emitting Diode:発光ダイオード)光源等の固体光源や、その他の光源に適用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0071】
【図1】プロジェクタを示す斜視図であり、前面、上面、及び右側面を示す図。
【図2】プロジェクタを示す斜視図であり、背面、底面、及び右側面を示す図。
【図3】プロジェクタの回路構成を示すブロック図。
【図4】オフ操作時のプロジェクタの動作を説明するためのフローチャート。
【図5】メッセージ画像が重畳された投写画像を示す説明図。
【図6】変形例に係るプロジェクタの回路構成を示すブロック図。
【図7】変形例に係るプロジェクタの回路構成を示すブロック図。
【符号の説明】
【0072】
1…プロジェクタ、2…筐体、3a…吸気口、3b…排気口、10…画像投写部、11…光源、12R,12G,12B…液晶ライトバルブ、13…投写レンズ、14…ライトバルブ駆動部、20…制御部、21…記憶部、22…入力操作部、23…LED表示部、24…画像情報入力部、24a…入力端子、25…入力選択部、26…画像処理部、27…OSD処理部、28…電源端子、29…電源回路、30…光源駆動装置、31…温度検出部、32…ファン制御部、33…冷却ファン、34…点灯状態検知部、35…音声出力部、Mw…メッセージ画像、P…投写画像、S…投写面。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、
前記光源から射出された光を変調して画像を形成する光変調装置と、
前記光変調装置で形成された前記画像を投写する投写光学系と、
前記光源の消灯を指示するためのオフ操作を受け付ける入力操作部と、
前記光源の点灯及び消灯を行う光源駆動装置と、
前記入力操作部が受け付けた前記オフ操作に基づいて、前記光源駆動装置に前記光源を消灯させるための指示を行う制御部と、
前記制御部が前記指示を行った後も前記光源の点灯が継続する消灯異常を検出する消灯異常検出部と、
前記消灯異常検出部が前記消灯異常を検出した場合に異常の発生を報知する報知部と、
を備えたことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクタであって、
前記報知部は、前記消灯異常検出部が前記消灯異常を検出した場合に、異常の発生を報知するメッセージ画像を前記光変調装置に形成させ、前記投写光学系から投写させることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプロジェクタであって、
前記報知部は、前記消灯異常検出部が前記消灯異常を検出した場合に、前記投写光学系から投写される前記画像の色を周期的に切り換えることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載のプロジェクタであって、
前記光源及び前記光変調装置を含む装置本体を収容する筐体と、
前記筐体の内部を冷却する冷却ファンと、
をさらに備え、
前記報知部は、前記消灯異常検出部が前記消灯異常を検出した場合に、前記冷却ファンの回転数を増大させることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のプロジェクタであって、
前記報知部は、音声を出力する音声出力部を備え、前記消灯異常検出部が前記消灯異常を検出した場合に、前記音声出力部から所定の音声を出力させることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項6】
光源から射出された光を変調して投写するプロジェクタの制御方法であって、
前記光源の消灯を指示するためのオフ操作を受け付けるオフ操作入力ステップと、
前記オフ操作入力ステップで受け付けた前記オフ操作に基づいて、前記光源を駆動する光源駆動装置に対して前記光源を消灯させるための指示を行う消灯指示ステップと、
前記消灯指示ステップの後も前記光源の点灯が継続する消灯異常を検出する消灯異常検出ステップと、
前記消灯異常検出ステップで前記消灯異常が検出された場合に、異常の発生を報知する報知ステップと、
を備えたことを特徴とするプロジェクタの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−134070(P2010−134070A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−308260(P2008−308260)
【出願日】平成20年12月3日(2008.12.3)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】