説明

プロジェクタ

【課題】 輝度値を利用した信号処理を最小限としつつ、高輝度で自然なホワイトバランスを達成することができるプロジェクタを提供すること。
【解決手段】
各液晶パネル51b,51r,51gで変調された各色光LB,LR,LGすなわち像光は、クロスダイクロイックプリズム60で合成された後、投射レンズ70に入射する。投射レンズ70に入射した像光は、不図示のスクリーンに投影される。以上のプロジェクタ10の色分離光学系40等の組み立て時等において、反射ミラー42cの位置を調節することで、液晶パネル51gを照明する緑色光LGの照度を変化させることができるので、各液晶パネル51b,51r,51gを所望のバランスで照明することができる。よって、各液晶パネル51b,51r,51gを通過して合成され投射レンズ70によってスクリーン上に投影されるカラー画像のホワイトバランスを簡易に調整することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネル等の光変調装置を用いて画像を投射するプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプロジェクタに組み込まれる液晶パネル用の照明装置として、白色光源からの光源光を3色に分解し、そのうち赤色の照明光路上にリレー光学系を配置して、残りの緑色及び青色に対する光路長の差を補償するものが存在する(特許文献1、2、3参照)。
【0003】
また、別の液晶パネル用の照明装置として、白色光源からの光源光を3色に分解し、そのうち青色の照明光路上にリレー光学系を配置して、残りの2色に対する光路長の差を補償するものが存在する(特許文献4参照)。なお、このプロジェクタでは、リレー光学系を構成する3つのレンズのうち、中央のレンズを例えば光軸方向に移動可能にして、液晶パネルに対する照明領域の大きさを拡大・縮小できるようにし、B光の有効な活用を図っている。
【0004】
また、別の液晶パネル用の照明装置として、白色光源からの光源光を3色に分解し、そのうち緑色の照明光路上にリレー光学系等の導光手段を配置して、残りの2色に対する光路長の差を補償するものが存在する(特許文献5参照)。
【特許文献1】特開平10−171045号公報
【特許文献2】特開2003−287804号公報
【特許文献3】特開平11−242184号公報
【特許文献4】特開平11−64977号公報
【特許文献5】WO94/22042号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、赤色の照明光路上にリレー光学系を配置する照明装置では、光源として例えば高圧水銀ランプ等を用いている関係上、赤色が他の色に比較して相対的に弱くなり、ホワイトバランスを適切に調整できない場合がある。このような場合、液晶パネルに入力すべき画像信号の輝度値を調整する信号処理によってホワイトバランスを達成することも可能であるが、画像の明るさやコントラストを低下させてしまうという問題がある。
【0006】
また、青色光路に設けたレンズを光軸方向に移動可能にした照明装置では、比較的光量が不足し易い緑光の損失を少なくすることができ、照明光の無駄を防止することができるが、高圧水銀ランプ等の発光特性に起因するホワイトバランスの偏りを積極的に解消することができない。
【0007】
また、緑色の照明光路上にリレー光学系を配置する照明装置では、高圧水銀ランプ等の発光特性に起因して、ホワイトバランスが製品ごとに大きくばらつく場合が多く、液晶パネルに入力すべき画像信号の輝度値を大きく調整する信号処理が必要となる。
【0008】
そこで、本発明は、高圧水銀ランプ等のようなスペクトル特性に一定の傾向があるランプ光源を用いた場合にも、輝度値を利用した信号処理を最小限としつつ、高輝度で自然なホワイトバランスを達成することができるプロジェクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明に係るプロジェクタは、(a)照明光を射出する照明装置と、(b)照明装置から射出された照明光から第1から第3色光を分岐して、当該第1から第3色光を第1から第3光路にそれぞれ導く色分離光学系と、(c)第1から第3光路上にそれぞれ配置され、第1から第3色光によってそれぞれ照明される第1乃至第3光変調装置とを備えたプロジェクタであって、(d)照明装置から第3光変調装置までの距離が、照明装置から第1光変調装置までの距離及び照明装置から第2光変調装置までの距離よりも長く、(e)第3光路には、光入射側に配置される第1のレンズと、光射出側に配置される第2のレンズと、第1及び第2のレンズの間に配置される第3のレンズと、第3のレンズの第1のレンズ側に配置される光路折曲用の第1のミラーと、第3のレンズの第2のレンズ側に配置される光路折曲用の第2のミラーとを含むリレー光学系が設けられ、(f)第1及び第2のミラーの少なくとも一方を第3光路上に保持するとともに、当該第1及び第2のミラーの少なくとも一方を反射面に沿って光源像がより不鮮明となる方向に変位可能としたミラー支持部材を備える。なお、色分離光学系の第1及び第2のミラーは、ミラー支持部材によって例えば第3光路の光軸に対して45°の傾斜角で保持されており、この場合、第3光路は、第1及び第2のミラーの位置で90°折り曲げられる。
【0010】
上記プロジェクタでは、ミラー支持部材が、第1及び第2のミラーの少なくとも一方を、反射面に沿って光源像がより不鮮明となる方向に変位可能としており、当該一方のミラーの変位量を適当に調節することによって、照明光に部分的な「ケラレ」を生じさせることができる。すなわち、照明光を適当な光量だけ第3光路外に不要光として排出させることができる。この結果、第3光変調装置の画像形成領域上における照明光の照度をほぼ目標値に調整することができ、目標とするホワイトバランスを達成することができる。なお、第1及び第2のミラーの少なくとも一方を変位させる方向を、光源像がより不鮮明となる方向とすることにより、光源像がより鮮明となる部分で照明光にケラレを生じさせることができるので、第3光変調装置に入射する照明光の均一性はほとんど損なわれない。
【0011】
また、本発明の具体的側面又は態様では、上記プロジェクタにおいて、第1から第3色光が、それぞれ青色光、赤色光、及び緑色光である。この場合、緑色光用の第3光路上にリレー光学系を配置するので、緑色光のロスが生じ易いが、緑色光の光量が多いランプ光源では、自然なホワイトバランスを達成する上でむしろ有利な影響を与えることになる。また、この場合、緑色光は視感度が比較的高いので、ホワイトバランスに与える影響が大きいが、リレー光学系を構成する第1及び第2のミラーの少なくとも一方を変位可能としているので、緑色光の第3光変調装置の画像形成領域上における照度をほぼ目標値に調整することができる。
【0012】
また、本発明の別の具体的態様では、リレー光学系が、第3のレンズの近傍に光源像を形成し、ミラー支持部材が、第1及び第2のミラーの少なくとも一方を第3のレンズから離れる方向に変位させることによって、第3のレンズ側でケラレを生じさせる。この場合、第3のレンズの近傍に光源像が形成されることを利用して、少なくとも一方のミラーを第3のレンズから離れる方向に変位させることにより、第3光変調装置に入射する照明光の光量を簡易・確実に調整することができる。
【0013】
また、本発明の別の具体的態様では、第1及び第2のミラーのうち、第3のレンズの近傍に形成される光源像に対してより近いミラーを変位可能にする。この場合、光源像がより鮮明となる部分に対応するミラーで照明光にケラレを生じさせることができるので、第3光変調装置に入射する照明光の均一性をより高めることができる。
【0014】
また、本発明の別の具体的態様では、照明装置が、光源光を発生する光源装置と、照明装置からの光源光を均一化する均一化光学系とを備える。この場合、リレー光学系に入射する照明光を予め均一化することができるので、第3光変調装置を均一度の高い照明光で照明することができる。
【0015】
また、本発明の別の具体的態様では、均一化光学系が、2つのフライアイ光学系を含む。この場合、リレー光学系のうち例えば第3のレンズの近傍に、フライアイ光学系の光学要素の配列に対応する多数の光源像が形成されるが、このような多数の光源像の一部をミラーの移動でカットすることによって、第3光変調装置の画像形成領域上における効率的な照度調整が可能になる。
【0016】
また、本発明の別の具体的態様では、第1から第3色光を第1から第3光変調装置によって変調することによって得た各色の像光を合成する光合成光学系と、当該光合成光学系から射出される合成光を投射する投射光学系とをさらに備える。この場合、光合成光学系によって合成したカラー画像を投射光学系によって所望のサイズでスクリーン上に投射することができる。
【0017】
また、本発明の別の具体的態様では、ミラー支持部材が、第1及び第2のミラーの少なくとも一方を反射面の方向に沿って摺動可能に保持するガイド部材と、第1及び第2のミラーの少なくとも一方をガイド部材に沿って移動させる駆動部材とを備える。この場合、簡易かつ高精度で少なくとも一方のミラーを変位させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
図1は、本発明の一実施形態に係るプロジェクタを説明する図である。このプロジェクタ10は、光源光を発生する光源装置20と、光源装置20からの照明光を均一化する均一化光学系30と、均一化光学系30を経た照明光を赤・緑・青の3色に分割する色分離光学系40と、色分離光学系40から射出された各色の照明光によって照明される光変調部50と、光変調部50からの各色の変調光を合成するクロスダイクロイックプリズム60と、クロスダイクロイックプリズム60を経た像光をスクリーン(不図示)に投射する投射レンズ70とを備える。なお、以上のうち、光源装置20と均一化光学系30とは、照明光を射出する照明装置として機能する。
【0019】
ここで、光源装置20は、略点状の発光部を形成するランプ本体21と、ランプ本体21から射出される光源光をコリメートするパラボラ形状の凹面鏡22とを備える。このうち、ランプ本体21は、例えば高圧水銀ランプからなり、略白色の光源光を射出する。また、凹面鏡22は、ランプ本体21から放射される光線を反射して、平行光束として均一化光学系30に入射させる。なお、パラボラ形状の凹面鏡22に代えて、球面や楕円面など、パラボラ形状ではない凹面鏡を用いても良い。このような、凹面鏡を用いた場合は、凹面鏡22と均一化光学系30との間に平行化レンズを配置すれば、光源装置20から平行光束を射出することが可能となる。
【0020】
均一化光学系30は、波面分割用の一対のフライアイ光学系31,32と、波面分割光を重ね合わせるための重畳レンズ33と、照明光を所定の偏光成分に変換する偏光変換部材34とを備え、光源装置20と協働してケーラー照明を可能にする。一対のフライアイ光学系31,32は、マトリックス状に配置された複数の要素レンズからなり、これらの要素レンズによって、光源装置20からの照明光を分割して個別に集光・発散させる。偏光変換部材34は、フライアイ光学系31,32から射出した照明光を一種類の偏光光(例えば図1の紙面に垂直なS偏光成分のみ)に変換して次段光学系に供給する。重畳レンズ33は、偏光変換部材34を経た照明光を全体として適宜収束させて、光変調部50に設けた各色の光変調装置に対する重畳照明を可能にする。つまり、両フライアイ光学系31,32と重畳レンズ33とを経た照明光は、以下に詳述する色分離光学系40を経て、光変調部50を構成する各色の光変調装置すなわち各色の液晶パネル51b,51r,51gの画像形成領域を均一に重畳照明する。
【0021】
色分離光学系40は、第1及び第2ダイクロイックミラー41a,41bと、反射ミラー42a,42b,42cと、フィールドレンズ43r,43bと、第1〜第3レンズ45a,45b,45cとを備える。第1ダイクロイックミラー41aは、赤・緑・青(R・G・B)の3色のうち青色光LBを反射し、緑色光LGと赤色光LRとを透過させる。また、第2ダイクロイックミラー41bは、入射した緑色光LG及び赤色光LRのうち赤色光LRを反射し緑色光LGを透過させる。この色分離光学系40において、光源装置20から均一化光学系30を経て射出される照明光は、まず第1ダイクロイックミラー41aに入射する。第1ダイクロイックミラー41aで反射された青色光LBは、第1光路OP1に導かれ、反射ミラー42aを経て入射角度を調節するためのフィールドレンズ43bに入射する。また、第1ダイクロイックミラー41aを透過して第2ダイクロイックミラー41bで反射された赤色光LRは、第2光路OP2に導かれフィールドレンズ43rに入射する。さらに、第2ダイクロイックミラー41bを通過した緑色光LGは、第3光路OP3に導かれ、反射ミラー42b,42cを介してレンズ45a,45b,45cを通過する。これらの反射ミラー42b,42c及びレンズ45a,45b,45cからなるリレー光学系は、光源装置20から各色の液晶パネル51b,51r,51gまでの光路の距離が最も長い緑色用の第3光路OP3に配置されている。このリレー光学系は、第1のレンズ45aの像を、第2のレンズ45bを介して、ほぼそのまま第3のレンズ45cに伝達することにより、光の拡散等による光の利用効率の低下を防止している。このうち、反射ミラー42b,42cは、3光路OP3の光軸に対して45゜の傾斜角で傾いて配置されており、光路方向を90゜折り曲げることができる。なお、後に詳述するが、リレー光学系を構成する一方の反射ミラー42cは、その反射面に沿って中央のレンズ45bから離れる方向に移動可能となっている。
【0022】
光変調部50は、3色の照明光LB,LR,LGがそれぞれ入射する3つの液晶パネル51b,51r,51gと、各液晶パネル51b,51r,51gを挟むように配置される3組の偏光フィルタ52b,52r,52gとを備える。ここで、例えば青色光LB用の液晶パネル51bと、これを挟む一対の偏光フィルタ52b,52bとは、照明光を2次元的に輝度変調するための液晶ライトバルブを構成する。同様に、赤色光LR用の液晶パネル51rと、対応する偏光フィルタ52r,52rも、液晶ライトバルブを構成し、緑色光LG用の液晶パネル51gと、偏光フィルタ52g,52gも、液晶ライトバルブを構成する。
【0023】
光変調部50において、第1光路OP1に導かれた青色光LBは、フィールドレンズ43bを介して液晶パネル51bの被照射面に入射する。第2光路OP2に導かれた赤色光LRは、フィールドレンズ43rを介して液晶パネル51rの被照射面に入射する。第3光路OP3に導かれた緑色光LGは、レンズ45a,45b,45cを介して液晶パネル51gの被照射面に入射する。各液晶パネル51b,51r,51gは、入射した照明光の偏光方向の空間的分布を変化させるための非発光で透過型の光変調装置であり、各液晶パネル51b,51r,51gにそれぞれ入射した各色光LB,LR,LGは、各液晶パネル51b,51r,51gに電気的信号として入力された駆動信号或いは画像信号に応じて、画素単位で偏光状態が調整される。その際、偏光フィルタ52b,52r,52gによって、各液晶パネル51b,51r,51gに入射する照明光の偏光方向が調整されるとともに、各液晶パネル51b,51r,51gから射出される光から所定の偏光方向の変調光が取り出される。
【0024】
クロスダイクロイックプリズム60は、光合成光学系であり、B光反射用の反射膜(例えば誘電体多層膜)61と、緑色光反射用の反射膜(例えば誘電体多層膜)62とを直交させた状態で内蔵するものである。このクロスダイクロイックプリズム60は、液晶パネル51bからの青色光LBを反射膜61で反射して進行方向右側に射出させ、液晶パネル51rからの赤色光LRを反射膜61,62を介して直進・射出させ、液晶パネル51gからの緑色光LGを反射膜62で反射して進行方向左側に射出させる。このようにクロスダイクロイックプリズム60で合成された像光は、投射光学系である投射レンズ70を経て適当な拡大率でスクリーン(不図示)にカラー画像として投射される。
【0025】
図2は、図1に示すプロジェクタ10の第3光路OP3における光束の状態等を説明する展開図であり、より具体的には、色分離光学系40における緑色光LGのみの光量調整法を説明する図である。このうち、図2(a)は、当初の標準的な状態を示し、図2(b)は、リレー光学系のうち光量調整用の反射ミラー42cを変位させた状態を示す。
【0026】
図2(a)に示す状態では、均一化光学系30から射出され、レンズ45a,45b,45cを通過した緑色光LGによって、液晶パネル51gの画像形成領域が均一に照明される。なお、リレー光学系を構成する光路折曲用の反射ミラー42b,42cについては、結像状態を説明するため実物としての表示が省略されており、それぞれ反射面M1、M2として示されている。
【0027】
一方、図2(b)に示す状態でも、均一化光学系30から射出され、レンズ45a,45b,45cを通過した緑色光LGによって、液晶パネル51gの画像形成領域がほぼ均一に照明されるが、中央のレンズ45bの後段に設けた光量調整用の反射ミラー42cがその反射面M1に沿ってスライド移動し、レンズ45bから離れることにより、緑色光LGの光束が一部遮断される状態であるケラレが生じている。この結果、液晶パネル51gの画像形成領域が反射ミラー42cの移動量に応じた低い照度で照明されることになる。この際、緑色光LGの光束のケラレは、反射ミラー42cのうちレンズ45b側、すなわちレンズ45bの近傍に形成された二次光源の位置SPに近い部分で生じるので、液晶パネル51gの画像形成領域上における緑色光LGの照度分布は、ほぼ均一に維持される。
【0028】
一般に、緑色光LGは、視感度が比較的高いので、ホワイトバランスに与える影響が大きい。また、高圧水銀ランプからなるランプ本体21を備える光源装置20は、緑色光LGの相対的光量にバラツキが生じやすい。本実施形態では、反射ミラー42bのスライド移動を利用して液晶パネル51gの画像形成領域上における緑色光LGの照度を調整するようにしているので、プロジェクタ10のホワイトバランスを効率良く調整することが可能である。なお、高圧水銀ランプの場合、緑色光LGの光量が青色光LBや赤色光LRの光量に比較して多くなる傾向があるので、反射ミラー42bのスライド移動によって多少の光量損失が生じても、ホワイトバランスの調整にとって不利には働かない。
また、ホワイトバランスに影響を与える原因としては、ランプの相対的光量のバラツキの他、液晶パネル51gの特性のばらつきや、ダイクロイックミラー41a,41b及びクロスダイクロイックプリズムの波長選択特性のバラツキなども考えられるが、本実施形態のプロジェクタによれば、緑色光LGの光量にバラツキを生じさせる各種要因にかかわらず、プロジェクタ10のホワイトバランスをほぼ目標値に設定することができ、その際、画像の明るさやコントラストを犠牲にすることもない。
【0029】
なお、以上の説明では、中央のレンズ45bの前段の反射ミラー42bは固定されて移動しないものとしたが、反射ミラー42cの代わりに、或いは反射ミラー42cと共に、反射ミラー42bを移動させることもできる。この場合、反射ミラー42bをその反射面M1に沿って移動させてレンズ45bから離間させることにより、緑色光LGの光束が一部遮断される状態であるケラレを生じさせる。
【0030】
図3及び図4は、図2等に示す光量調整用の反射ミラー42cの動作を説明するための図である。図3(a)は、レンズ45bに最も近い位置における緑色光LGの分布を概念的に説明する図であり、図3(b)は、レンズ45bから最も遠い位置における緑色光LGの分布を概念的に説明する図である。また、図4(a)は、光量調整用の反射ミラー42cをレンズ45bから離間するように移動させる場合を示し、図4(b)は、反射ミラー42cをレンズ45bに近接させるように移動させる場合を示す。
【0031】
図3(a)に示すように、反射ミラー42cのうち第3光路OP3に沿って中央のレンズ45bに最も近い箇所では、ケーラー照明系の性質上、図1のフライアイ光学系31,32を構成する要素レンズの配列に対応するマトリックス状の配列で多数の2次光源像SSPが形成されている。また、図3(b)に示すように、反射ミラー42cのうち第3光路OP3に沿ってレンズ45bから最も遠い箇所では、図1のフライアイ光学系31,32を構成する要素レンズの輪郭に対応してぼやけた状態の多数のデフォーカス像DSPが部分的に重畳して形成されている。
【0032】
図4(a)に示すように、反射ミラー42cをレンズ45bから離間する方向に移動させた場合、反射ミラー42cの有効領域は、レンズ45bに近い部分でケラレを伴い、第3光路OP3の開口AP1は、2次光源像SSPのうち、端部側の1以上の列が全部又は一部除去されたものとなる。一方、図4(b)に示すように、反射ミラー42cをレンズ45bに近接する方向に移動させた場合、反射ミラー42cの有効領域は、レンズ45bから遠い部分でケラレを伴い、第3光路OP3の開口AP2は、デフォーカス像DSPの端部側の1以上の群が一部除去されたものとなる。以上の結果、図4(a)及び(b)に示す双方の場合において、第3光路OP3を通過する緑色光LGの光量が減少する。ただし、図4(a)に示す場合、2次光源像SSPの個数が減少するだけで、液晶パネル51gの画像形成領域上における緑色光LGの照度分布は、均一に維持される。一方、図4(b)に示す場合、デフォーカス像DSPが部分的に遮光されることによって、液晶パネル51gの画像形成領域上における緑色光LGの照度分布は、不均一化する。
【0033】
以上をまとめると、反射ミラー42cをレンズ45bから離間する方向に移動させた場合、緑色光LGのケラレが生じるが、液晶パネル51gの画像形成領域上における緑色光LGの照度分布が均一に維持される。一方、反射ミラー42cをレンズ45bに近接する方向に移動させた場合、緑色光LGのケラレが生じるだけでなく、液晶パネル51gの画像形成領域上における緑色光LGの照度分布が不均一化される。よって、緑色光LGの画像形成領域上における照度を調整する際には、反射ミラー42cをレンズ45bから離間する方向に移動させることが望ましい。なお、反射ミラー42cをレンズ45bから離間する方向に移動させる場合、2次光源像SSPが端部側から列単位で除去されるように反射ミラー42cをステップ移動させることが、緑色光LGの均一性を確保する上で有利である。この際、緑色光LGの画像形成領域上における照度が階段状に変化するが、その間を補うような照度の微調節は、液晶パネル51gに供給する画像信号の輝度値の電気信号処理によって代替的に可能になる。
【0034】
図5(a)及び(b)は、図2等に示す光量調整用の反射ミラー42cを支持しつつ変位させるための機構であるミラー支持部材を説明する正面図及び側面図である。
【0035】
ミラー支持部材90は、矩形の反射ミラー42cをその反射面の方向に沿って摺動可能に保持する上下一対のガイド部材91,92と、反射ミラー42cをガイド部材91,92に沿って移動させる駆動部材94とを備える。前者のガイド部材91,92は、ガイド溝91a,92aを有しており、これらガイド溝91a,92aに反射ミラー42cの上下端に形成した保護部材95が嵌合する。この結果、反射ミラー42cは、その反射面M2の方向に沿って姿勢を変えることなく摺動可能となる。なお、反射ミラー42cの裏面には、ばね部材96が押し付けられている。このばね部材96により、反射ミラー42cが前方に付勢され反射ミラー42cがガイド溝91a,92aに保持された状態でガタツクことを防止できる。後者の駆動部材94は、反射ミラー42cのコーナに固定された固定部94aと、固定部94aに連結された連結部94bと、連結部94bから延びるねじ部94cと、ねじ部94cをガイド部材91側で支持するステー94dと有する。連結部94bは、周囲に環状溝を設けた円柱状の部材であり、固定部94aに設けた開口に嵌合してねじ部94cとともにねじ部94cの軸まわりに回転する。固定部94aは、ねじ部94cと螺合するねじ孔を有しており、ねじ部94cのヘッド94fをねじ回すことによって、反射ミラー42cをステー94dすなわちガイド部材91に対して所望量だけ微動させることができるようになっている。つまり、ねじ部94cの適当な回転によって反射ミラー42cを第3光路OP3(図2参照)上の適当な位置に進退させることができ、緑色光LGのケラレすなわち遮光量を調節することができる。以上のような緑色光LGに関する光量調整は、例えばプロジェクタ10の組立段階で他の色光とのバランスをとりながら行われる。このような調整後に駆動部材94を例えば接着剤で固定することによって、反射ミラー42cは、ガイド部材91,92に対して恒久的に固定される。
【0036】
以下、本実施形態に係るプロジェクタ10の動作について説明する。光源装置20からの照明光は、均一化光学系30を経て均一化されその偏光方向が揃えられた後、色分離光学系40に設けた第1及び第2ダイクロイックミラー41a,41bによって色分割され、対応する液晶パネル51b,51r,51gに各色光LB,LR,LGとしてそれぞれ入射する。各液晶パネル51b,51r,51gは、外部からの画像信号によって変調されて2次元的屈折率分布を有しており、各色光LB,LR,LGを2次元空間的に画素単位で変調する。このように、各液晶パネル51b,51r,51gで変調された各色光LB,LR,LGすなわち像光は、クロスダイクロイックプリズム60で合成された後、投射レンズ70に入射する。投射レンズ70に入射した像光は、不図示のスクリーンに投影される。なお、本プロジェクタ10では、色分離光学系40等の組立時或いはその後において、反射ミラー42cの位置を調節することで、液晶パネル51gを照明する緑色光LGの画像形成領域上における照度を変化させることができる。つまり、熱的影響を受けやすいNDフィルタを用いることなく、各液晶パネル51b,51r,51gを所望のバランスで照明することができる。よって、各液晶パネル51b,51r,51gを通過して合成され投射レンズ70によってスクリーン上に投影されるカラー画像のホワイトバランスを簡易に調整することができる。
【0037】
なお、この発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0038】
上記実施形態のプロジェクタ10では、緑色光用の第3光路OP3に色分離光学系40のリレー光学系42b,42c,45a,45b,45cを配置しているが、その他の光路OP1,OP2にリレー光学系を配置することができる。この場合、その他の光路OP1,OP2に配置したリレー光学系の反射ミラーを射面に沿って移動させることにより、光源装置20から射出される照明光のホワイトバランスを適宜調整することができる。
【0039】
上記実施形態のプロジェクタ10では、光源装置20として高圧水銀ランプを用いているが、高圧水銀ランプの代わりに、メタルハライドランプ等他のランプを用いることもできる。この場合も、緑色光用の第3光路OP3やその他の光路OP1,OP2に配置される反射ミラー42c等を反射面に沿って移動させることにより、上記ランプ光源からの照明光のホワイトバランスを適宜調整することができる。
【0040】
また、色分離光学系40を構成する反射ミラー42cを微動・固定するためのミラー支持部材90の構造は、上記実施形態に限定されることなく、様々なものとすることができる。例えば、駆動部材94は省略することができ、ガイド部材91,92を利用して反射ミラー42cを適所に移動させた後、接着剤を利用してガイド部材91,92等に反射ミラー42cを直接固定することができる。
【0041】
また、上記実施形態では、光源装置20からの光を複数の部分光束に分割するため、2つのフライアイ光学系31,32を用いていたが、この発明は、このようなフライアイ光学系すなわちレンズアレイを用いないプロジェクタにも適用可能である。さらに、フライアイ光学系31,32をロッドインテグレータに置き換えることもできる。この場合、ロッドインテグレータ後段のリレー光学系のうち2次光源像が形成される位置近傍に配置されるレンズに隣接する反射ミラーを、当該レンズから離間するように移動させる。
【0042】
また、上記プロジェクタ10において、光源装置20からの光を特定方向の偏光とする偏光変換部材34を用いていたが、この発明は、このような偏光変換部材34を用いないプロジェクタにも適用可能である。
【0043】
また、上記実施形態では、透過型のプロジェクタに本発明を適用した場合の例について説明したが本発明は、反射型プロジェクタにも適用することが可能である。ここで、「透過型」とは、液晶パネル等を含むライトバルブが光を透過するタイプであることを意味しており、「反射型」とは、ライトバルブが光を反射するタイプであることを意味している。反射型プロジェクタの場合、ライトバルブは液晶パネルのみによって構成することが可能であり、一対の偏光板は不要である。なお、光変調装置は液晶パネル等に限られず、例えばマイクロミラーを用いた光変調装置であってもよい。
【0044】
また、プロジェクタとしては、投写面を観察する方向から画像投写を行う前面プロジェクタと、投写面を観察する方向とは反対側から画像投写を行う背面プロジェクタとがあるが、図1に示すプロジェクタの構成は、いずれにも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】実施形態に係るプロジェクタの光学系を説明する図である。
【図2】(a)は、プロジェクタの第3光路の光束を示し、(b)は、反射ミラーを変位させた状態を示す。
【図3】(a)は、中央のレンズに最も近い位置における緑色光の分布を示し、(b)は、中央のレンズから最も遠い位置における緑色光の分布を示す。
【図4】(a)は、反射ミラーをレンズから離間させる場合を示し、(b)は、反射ミラーをレンズに近接させる場合を示す。
【図5】(a)及び(b)は、ミラー支持部材を示す正面図及び側面図である。
【符号の説明】
【0046】
10…プロジェクタ、 20…光源装置、 30…均一化光学系、 31,32…フライアイ光学系、 33…重畳レンズ、 34…偏光変換部材、 40…色分離光学系、 41a,41b…第2ダイクロイックミラー、 42b,42c…反射ミラー、 42b,42c,45a,45b,45c…リレー光学系、 45a,45b,45c…レンズ、 50…光変調部、 51b,51r,51g…液晶パネル、 52b,52r,52g…偏光フィルタ、 60…クロスダイクロイックプリズム、 70…投射レンズ、 90…ミラー支持部材、 91,92…ガイド部材、 94…駆動部材、 AP1…開口、 AP2…開口、 DSP…デフォーカス像、 LB,LR,LG…各色光、 M1、M2…反射面、 OP1…第1光路、 OP2…第2光路、 OP3…第3光路、 SSP…2次光源像

【特許請求の範囲】
【請求項1】
照明光を射出する照明装置と、
前記照明装置から射出された照明光から第1から第3色光を分岐して、当該第1から第3色光を第1から第3光路にそれぞれ導く色分離光学系と、
前記第1から第3光路上にそれぞれ配置され、前記第1から第3色光によってそれぞれ照明される第1から第3光変調装置と、を備えたプロジェクタであって、
前記照明装置から前記第3光変調装置までの距離は、前記照明装置から前記第1光変調装置までの距離及び前記照明装置から前記第2光変調装置までの距離よりも長く、
前記第3光路には、光入射側に配置される第1のレンズと、光射出側に配置される第2のレンズと、前記第1及び第2のレンズの間に配置される第3のレンズと、前記第3のレンズの前記第1のレンズ側に配置される光路折曲用の第1のミラーと、前記第3のレンズの前記第2のレンズ側に配置される光路折曲用の第2のミラーとを含むリレー光学系が設けられ、
前記第1及び第2のミラーの少なくとも一方を前記第3光路上に保持するとともに、当該第1及び第2のミラーの少なくとも一方を反射面に沿って光源像がより不鮮明となる方向に変位可能としたミラー支持部材
を備えるプロジェクタ。
【請求項2】
前記第1から第3色光は、それぞれ青色光、赤色光、及び緑色光であることを特徴とする請求項1記載のプロジェクタ。
【請求項3】
前記リレー光学系は、前記第3のレンズの近傍に光源像を形成し、前記ミラー支持部材は、前記第1及び第2のミラーの少なくとも一方を前記第3のレンズから離れる方向に変位させることによって、当該第3のレンズ側でケラレを生じさせることを特徴とする請求項1及び請求項2のいずれか一項記載のプロジェクタ。
【請求項4】
前記第1及び第2のミラーのうち、前記第3のレンズの近傍に形成される光源像に対してより近いミラーを変位可能にすることを特徴とする請求項3記載のプロジェクタ。
【請求項5】
前記照明装置は、光源光を発生する光源装置と、照明装置からの光源光を均一化する均一化光学系とを備えることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか一項記載のプロジェクタ。
【請求項6】
前記均一化光学系は、2つのフライアイ光学系を含むことを特徴とする請求項5記載のプロジェクタ。
【請求項7】
前記第1から第3色光を前記第1から第3光変調装置によって変調することによって得た各色の像光を合成する光合成光学系と、当該光合成光学系から射出される合成光を投射する投射光学系とをさらに備える請求項1から請求項6のいずれか一項記載のプロジェクタ。
【請求項8】
前記ミラー支持部材は、前記第1及び第2のミラーの少なくとも一方を反射面の方向に沿って摺動可能に保持するガイド部材と、前記第1及び第2のミラーの少なくとも一方を前記ガイド部材に沿って移動させる駆動部材とを備えることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか一項記載のプロジェクタ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−78626(P2006−78626A)
【公開日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−260563(P2004−260563)
【出願日】平成16年9月8日(2004.9.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】