説明

プロジェクタ

【課題】筐体内への機構配置に影響をほとんど与えず、且つ、突出長さの調整が容易である姿勢調整機構を供えたプロジェクタを提供する。
【解決手段】プロジェクタ1の姿勢調整機構は、載置面13と対向する下部外装3の下面3aに設けられ、下面3aに対して斜めに形成された内摺動斜面926,927および外摺動斜面928,929を有する脚受部92(図4)と、下面3aから突出して13載置面と当接する接地部913を有する脚部91(図4)と、を有し、脚部91は、内摺動斜面926,927および外摺動斜面928,929に沿って移動し、接地部913の下面3aからの突出長さLを調整する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、筐体の傾きを調整する姿勢調整機構を備えたプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、プロジェクタは、スクリーンの適切な位置へ映像を拡大投射するために、筐体に設けられている脚部の突出長さを手動調節して、投射方向の補正を行っていた。この内、スクリーンの水平方向に対して、投射する映像の傾きを調整するために、突出長さが規定された固定脚部と、突出長さの調整が可能な調整脚部と、を用いて、筐体の傾きを補正する姿勢調整機構が知られている。この場合、調整脚部は、筐体の内部に筒状に形成され、筐体外部と連通した内筒側にねじ山を有するボスと、ボスのねじ山に螺合する軸部および軸部の筐体外部側に設けられた接地部からなる脚部と、を有している。調整脚部は、脚部の接地部を回転させると、回転の方向に応じて軸部がボスの内筒を進退する。従って、接地部の筐体からの突出長さは、接地部の回転に準じて調整される。
【0003】
さらに、調整脚部のボスの内筒には、略半球形状の突起が形成され、軸部には、突起と係合するための凹部が形成されている。この構成において、軸部が内筒を進退して、突起と凹部とが係合すると、クリック感が生じる。このクリック感が生じた時の接地部の突出長さは、固定脚部の突出量と同一となるように設定されている。そのため、筐体が固定脚部と調整脚部とにより水平な状態に保持されているか否かの判断を、容易に行える。このような調整脚部を備えたプロジェクタは、基準となる水平状態を、即時且つ簡単に再現することが可能である(例えば特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特開2005−234307号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、従来の技術では、プロジェクタを設置した状態のままで、脚部を回転させることは難しく、筐体の脚部側を大きく持ち上げて、脚部をしっかり摘んでから脚部を回転させ、突出長さを調整しなければならない、という課題があった。また、筐体の内部側に筒状のボスが立設されているため、ボスによって、筐体の内部スペースが一部占有されているため、プロジェクタを小型化してモバイル性を向上させる際などに、筐体内の機構配置が制限されてしまう、という課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の適用例または形態として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]本適用例にかかるプロジェクタは、光源部から射出された光束を画像信号に応じて変調して投射するための投射装置部を収容する筐体と、前記筐体を載置する載置面に対する前記筐体の傾きを調整して投射方向を変更するための姿勢調整機構と、を備えていて、前記姿勢調整機構は、前記載置面と対向する前記筐体の対向面に設けられ、前記対向面に対して傾斜して形成された摺動斜面を有する脚受部と、前記対向面から突出して前記載置面と当接する接地部を有する脚部と、を有し、前記脚部は、前記摺動斜面に沿って移動し、前記接地部の前記対向面からの突出長さを調整することを特徴とする。
【0008】
このプロジェクタによれば、筐体の対向面からの突出長さが調整可能な脚部を有する姿勢調整機構を備えていて、脚部の突出長さを変えることにより、筐体の傾き具合の調整が行える構成である。そのため、プロジェクタは、筐体の傾きに応じて投射方向を自在に変更でき、所望の位置に映像を投射することが可能である。この脚部の突出長さは、脚受部の摺動斜面に沿って脚部が移動することにより、調整される。つまり、摺動斜面は、対向面に対して斜めに形成されており、摺動斜面の斜面各部における対向面からの離反距離がそれぞれ異なっている。このような摺動面に沿って脚部が移動すれば、脚部の接地部は、脚部が位置する摺動斜面の離反距離に準じて、対向面からの突出長さが変わり、所望の突出長さに容易に設定される。この時、脚部の移動の方向は、対向面とほぼ平行であるため、脚部へ対向面とほぼ平行な操作力を付与するだけで良く、筐体を大きく持ち上げて脚部を摘んで回転させるような操作等が不要である。さらに、脚部は、筐体の外面へ突出して移動可能に取り付けられており、脚部を移動させる操作力を容易に付与することが可能である。また、脚受部の摺動斜面は、筐体の外面側である対向面からの最大の離反距離と最少の離反距離との差が、脚部の調整長さと同等以上であれば良い。この条件を満たせば、姿勢調整機構は、対向面と反対の筐体の内面側における構成に制約がほとんどないため、脚部および脚受部が筐体の内面側で占有するスペースを抑制することができ、筐体内への投射装置部の配置にほぼ制限が生じない。
【0009】
[適用例2]上記適用例にかかるプロジェクタにおいて、前記脚受部は、前記摺動斜面に沿って前記筐体に形成された貫通口を有し、前記摺動斜面は、前記筐体の外側に形成された第1の摺動斜面と、前記筐体の内側に形成された第2の摺動斜面と、を有し、前記脚部は、前記貫通口を貫通して設けられ、前記第1の摺動斜面に当接する第1の保持部と、前記第2の摺動斜面に当接する第2の保持部と、を有する保持部によって保持されることが好ましい。
【0010】
この構成によれば、筐体の外面側において、脚部の第1の保持部が脚受部の第1の摺動斜面と当接し、さらに、貫通口を介した筐体の内面側において、脚部の第2の保持部が脚受部の第2の摺動斜面と当接している。このように、脚部は、筐体の内外に設けられた第1および第2の摺動斜面を挟持するようにして当接しており、安定した状態に保持される。この場合、第1の保持部と第1の摺動斜面とが、互いに当接してプロジェクタの重量を支えている。また、脚部が安定して保持されているため、脚部を移動させる操作力が付与されると、第1の保持部と第1の摺動斜面および第2の保持部と第2の摺動斜面とが、軋むことなくスムーズに摺動する。そして、第1の摺動斜面と第2の摺動斜面との間隔を短く設定すれば、第2の摺動斜面が筐体の内面側に突起して占有するスペースを、極小に設定することが可能である。
【0011】
[適用例3]上記適用例にかかるプロジェクタにおいて、前記第2の摺動斜面と前記第2の保持部とは、前記脚部を所定位置へ位置決めするための位置決め部をそれぞれ有することが好ましい。
【0012】
この構成によれば、脚部が移動して、第2の摺動斜面および第2の保持部のそれぞれの位置決め部が係合すれば、その係合位置が予め設定した所定位置であると、容易に判断することが可能である。所定位置における脚部は、所定の突出長さに設定されている。姿勢調整機構は、位置決め部を有することにより、脚部の突出長さを調整してプロジェクタを使用した後であっても、第2の摺動斜面と第2の保持部とが係合するように、脚部が移動すれば、プロジェクタを一定の姿勢に戻すことが容易である。
【0013】
[適用例4]上記適用例にかかるプロジェクタにおいて、前記第2の保持部は、弾性部材であることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、脚部の第2の保持部は、弾性を有していて、第2の摺動斜面へ押圧を付与して当接している。そして、第2の保持部は、第1の摺動斜面と当接している第1の保持部と協働して、第1および第2の摺動斜面をほぼ一定の押圧力でもって挟持する。これにより、脚部は、脚部を移動させる操作力が付与されると、第2の保持部の弾性によって、挟持する第1および第2の摺動斜面とのバランスをとりつつ摺動し、滑らかに移動することが可能である。
【0015】
[適用例5]上記適用例にかかるプロジェクタにおいて、前記摺動斜面と前記保持部とは、前記貫通口を挟んで一対に形成されていることが好ましい。
【0016】
この構成によれば、第1の保持部と第1の摺動斜面とが当接し、さらに、第2の保持部と第2の摺動斜面とが当接して、脚部を脚受部に保持する構成が、貫通口の両側にそれぞれ形成されている。貫通口を貫通して設けられている脚部は、貫通口の両側からバランス良く保持されることにより、脚部の移動時において、脚受部や貫通口に対して一定の姿勢を保つことが可能である。そのため、脚部は、脚受部や貫通口とのバランスをとりつつ、より滑らかに且つ安定して移動することが可能である。
【0017】
[適用例6]上記適用例にかかるプロジェクタにおいて、前記脚部は、前記脚部を前記摺動斜面に沿って移動させる把持部を有し、前記把持部は、前記対向面と略平行に前記対向面の外縁まで延在していることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、脚部を移動させる場合に、移動させるための操作力は、把持部へ付与すれば良い。把持部は、対向面の外縁にまで延在しており、把持部の外縁部へ操作力を付与する操作は、筐体の形状等によって影響を受けることがない。そのため、脚部へ操作力を確実に付与することができ、これにより、脚部は、容易に移動することが可能である。また、把持部は、対向面の外縁に位置しており、プロジェクタの姿勢に関わらず、視認し易いため、脚受部に対する脚部の位置が所定位置であるか否か、の判断が容易に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、プロジェクタの具体的な実施形態について図面に従って説明する。本実施形態のプロジェクタは、光源部から射出された光束を画像信号に応じて変調して投射するための投射装置部等の機構部を収容する筐体を備え、筐体の姿勢の傾きを調整するための姿勢調整機構の構成に特徴を有している。
(実施形態)
【0020】
図1(a)は、本実施形態にかかるプロジェクタを正面上方から見た斜視図であり、図1(b)は、プロジェクタを正面下方から見た斜視図である。図1に示すように、プロジェクタ1は、略直方体形状の外観をなしていて、プロジェクタ1の機構部を収容する筐体である上部外装2と、下部外装3と、を有している。上部外装2は、プロジェクタ1の上部側に配置され、上面、正面、背面、右側面および左側面を形成している。上部外装2の上面には、背面側左方に位置し、光源部のランプを交換するために開閉可能な光源蓋2aと、上面の略中央部に位置し、プロジェクタ1を操作するための操作ボタン類を有する操作部2bと、正面側右方にあって開閉取っ手10aにより開閉自在にスライドして、開状態において投射部45からの光束の投射を可能にし、閉状態において塵埃等の投射部45への付着を防止するための投射部カバー10と、が設けられている。
【0021】
そして、下部外装3は、プロジェクタ1の正面、右側面、左側面、背面および下面を形成している。下部外装3の下面(対向面)3aには、投射部45の直下に、機構部を冷却する冷却空気を筐体の内部へ取り入れるための吸気口5が設けられ、左側面には、機構部を冷却した冷却空気を排気するための排気口6が設けられている。さらに、下面3aには、正面側中央に位置し、筐体の正面と背面とを結ぶ方向の傾きを調整して、投射部45から投射される光束の上下方向の煽りを調整する上下調整脚部7と、背面側右方に位置し、下面3aから所定の長さだけ突起している固定脚部8と、背面側左方に位置し、筐体の左右方向の傾きを調整して、投射部45から投射される光束の水平方向の傾きを調整する水平調整脚部9と、が設けられている。プロジェクタ1では、この水平調整脚部9が姿勢調整機構として機能し、固定脚部8と協働することによりプロジェクタ1の水平方向の傾きを調整する。また、下面3aの正面右側には、プロジェクタ1を無線制御するリモコンに対応する受信部11が設けられている。このプロジェクタ1は、光束が投射されるスクリーン等を見る側と同じ側に設置されるいわゆるフロントタイプのものである。
【0022】
次に、筐体の内部に収容されている機構部について説明する。図2は、プロジェクタの機構部の構成を示す斜視図である。図2に示すように、プロジェクタ1の機構部は、吸気口5(図1)から冷却空気を吸引して取り入れるための吸気ファン15と、吸気ファン15が取り込んだ冷却空気を機構部へ導くためのダクト17と、吸気ファン15に隣接し光束を投射する投射部45と、下部外装3の正面左方にあって一端が排気口6(6b)と対向して位置する電源部18と、電源部18の背面側に排気口6(6a)に対して斜めに対向して位置する排気ユニット16と、を有している。さらに、機構部は、排気ユニット16から投射部45にかけて上面側から見て略L字状に配置された光学ユニット(投射装置部)4(41,42,43,44,45)と、光学ユニット4の上方に設けられた回路基板20と、回路基板20の背面側に設けられ、外部機器とプロジェクタ1とを接続するための数種の端子を有するコネクタ部21と、スピーカ19と、を有している。
【0023】
プロジェクタ1の機構部の主部である光学ユニット4は、排気ユニット16の近傍にあり光源部を有するインテグレータ照明部41と、色分離部42と、リレー光学部43と、3枚の液晶パネル(不図示)を光学変調素子として有する光学変調部44と、光学変調部44に接続されている投射部45と、で構成されている。このような構成の光学ユニット4は、略L字状の支持体に収容されて、下部外装3の内側の底面3b(図4)に載置されている。
【0024】
ここで、光学ユニット4の機能について、簡単に説明する。インテグレータ照明部41は、光源部の光源ランプから光束を射出し、光学変調部44において、赤、緑、青の色光にそれぞれ対応して設けられている3枚の液晶パネルの画像形成領域を、光束がほぼ均一に照明するための光学系である。また、色分離部42は、インテグレータ照明部41から射出された光束を赤、緑、青の3色の色光に分離するための光学系である。次のリレー光学部43は、色分離部42で分離された色光の内、液晶パネルまでの経路の長い色光を導く機能を有する光学系であり、この場合赤色光がリレー光学部43へ導かれている。そして、光学変調部44は、3枚の液晶パネルによって、それぞれの色光を画像情報に応じて変調して光学像を形成し、さらに、クロスダイクロイックプリズムによって、色光毎に変調された光学像を合成してカラー画像を形成するための光学系である。このようにして形成されたカラー画像は、投射部45の投射レンズによって拡大して投射され、スクリーンに映像として映し出される。
【0025】
プロジェクタ1は、上下調整脚部7、水平調整脚部9によって光学ユニット4の投射部45から投射されるカラー画像を、スクリーンの適切な位置に調整する。上下調整脚部7を上下に移動させることにより煽り方向の調整を行い、水平調整脚部9によって画像の水平方向の傾きを調整する。以下では、プロジェクタ1の画像の水平方向の傾きを調整する姿勢調整機構の例である水平調整脚部9について説明する。図3は、水平調整脚部の突出長さの調整量を示す正面図である。図3に示すように、プロジェクタ1は、机上等の載置面13に設置されており、下部外装3の下面3aから突出する水平調整脚部9の突出長さLを変えることによって、プロジェクタ1の水平方向の傾きを調整できるようになっている。図3は、水平調整脚部9の突出長さLが、固定脚部8(図1)の固定された突出長さL1と同値に調整されている場合を示している。載置面13が水平であれば、プロジェクタ1は、載置面13に対して左右方向の傾きがなくなるため、突出長さL1となる水平調整脚部9の位置を基準位置とする。
【0026】
この状態から水平調整脚部9の突出長さLを調整して、突出長さL1より最も短い突出長さL2にすれば、プロジェクタ1は、載置面13に対して、水平調整脚部9の側を固定脚部8の側より低くして傾く。一方、水平調整脚部9の突出長さLを、突出長さL1より最も長い突出長さL3にすれば、プロジェクタ1は、載置面13に対して、水平調整脚部9の側を固定脚部8の側より高くして傾く。つまり、水平調整脚部9は、突出長さL2から突出長さL3までの範囲において、無段階に調整できる。そのため、プロジェクタ1は、左右方向の傾きをきめ細かく調整して、投射部45から投射される光束の水平方向の傾きを精緻に調整することができる。
【0027】
次に、水平調整脚部9について、さらに詳細に説明する。図4は、水平調整脚部の組立構成を示す斜視図である。また、図5(a)は、脚部の構成を示す断面図、図5(b)は、摺動腕部の機能を示す断面図である。水平調整脚部9は、図4に示すように、脚部91と、脚受部92と、弾性部材としての板ばね93と、を有している。
【0028】
まず、脚部91の構成について説明する。脚部91は、略楕円柱の形状をなす脚本体912と、略楕円の長軸方向の長さとほぼ同じ幅で脚本体912の一端側に設けられ、略楕円柱と直交して脚本体912の両側方向へ延在し、長く延在した側の先端部が脚本体912の他の端面側へL字状に折れ曲がった形状をなす把持部910と、脚本体912の他の端面の中央部に形成されたねじ固定穴915と、ねじ固定穴915に対して長軸方向の両側にそれぞれ立設された位置決め突起914と、を有している。この脚部91は、把持部910の側が下面3aに対して外部側に位置し、L字状部が脚本体912に対して下面3aの外縁側に位置するように脚受部92へ取り付けられる。また、把持部910の脚本体912近傍の両側部は、脚受部92と当接して摺動するための脚摺動面(第1の保持部)911である。さらに、脚部91は、脚本体912が把持部910を貫通しており、貫通した部分には、載置面13と当接するための接地部913(図5(a))が略半球状をなして設けられている。
【0029】
次に、脚受部92は、下部外装3の底面3bから下面3aの方向へ底面3bに対して傾斜した長方形の斜面であって、長方形の長辺が下部外装3の正面と背面を結ぶ方向に形成された斜面部920と、底面3bの内方向側に位置する長辺に沿って立設され、先端に斜面部920と同じ傾きの内摺動斜面(第2の摺動斜面)926を有する立設部921と、他方の長辺に沿って立設部921と同じ高さに立設され、先端に斜面部920と同じ傾きの内摺動斜面(第2の摺動斜面)927を有する立設部922と、立設部921と立設部922との間の斜面部920に形成された長楕円形の貫通口925と、を有している。この場合、内摺動斜面926,927は、下面3aを構成する。
【0030】
また、立設部921の下面3a側の斜面は、内摺動斜面926と同じ傾きの外摺動斜面(第1の摺動斜面)928(図5(a))であり、立設部922の下面3a側の斜面は、内摺動斜面927と同じ傾きの外摺動斜面(第1の摺動斜面)929(図6(b))である。さらに、内摺動斜面926,927には、脚部91の位置決めをするための凹部(位置決め部)923,924がそれぞれ設けられている。
【0031】
そして、板ばね93は、基部930と、基部930から内摺動斜面926と重なり合うように延びた摺動腕部(第2の保持部)931と、同じく基部930から内摺動斜面927と重なり合うように延びた摺動腕部(第2の保持部)932と、を有している。また、基部930は、脚部91のねじ固定穴915が形成された面へ基部930を固定する止めねじ916を挿入するための止めねじ孔935と、脚部91の位置決め突起914と係合し板ばね93の位置決めをするための位置決め孔936と、摺動腕部931に設けられ内摺動斜面926の凹部923と係合するV字状部(位置決め部)933と、摺動腕部932に設けられ内摺動斜面927の凹部924と係合するV字状部(位置決め部)934と、を有している。
【0032】
次に、このような構成の水平調整脚部9の組立について説明する。最初に、脚部91の脚本体912を下面3a側から貫通口925へ挿入する。この時、把持部910は、L字状部が下面3aの外縁側に位置し、把持し易いような配置になっている。次いで、板ばね93の位置決め孔936へ脚本体912の位置決め突起914を挿入し、止めねじ916によって板ばね93を固定する。この時、摺動腕部931が内摺動斜面926に重なる配置ではなく、内摺動斜面927に重なるように板ばね93を位置決めしても、V字状部933が凹部924と係合するように、V字状部933,934および凹部923,924が形成されている。また、これらV字状部933,934は、凹部923,924とそれぞれ同時に係合し、係合した位置において、脚部91が突出長さL1(図5(a))であるように配置されている。
【0033】
板ばね93が脚本体912へ取り付けられると、板ばね93の摺動腕部931が立設部921の内摺動斜面926と当接し、脚本体912の脚摺動面911が立設部921の外摺動斜面928(図5)と当接して、立設部921を挟持する。同様に、摺動腕部932と脚摺動面911とが立設部922を挟持する。これにより、脚部91は、摺動腕部931,932の弾性によって、両側がバランス良く保持されて脚受部92に取り付けられ、内摺動斜面926,927および外摺動斜面928,929に沿って安定した状態で移動することができる。この状態における立設部921と、立設部921を挟持する脚部91との詳細な構成を示す断面が、図5(a)に示されている。
【0034】
図5(a)に示すように、脚部91(図4)の脚本体912は、下面3aに対して直角方向へ突出している。一方、脚摺動面911と板ばね93(図4)の基部930を固定するための端面とは、下面3aに対して傾きをなす立設部921の外摺動斜面928および内摺動斜面926と同じ傾きである。なお、立設部922(図4)と脚部91との関係も同様である。このような構成の脚部91は、立設部921,922に沿ってスムーズに移動できると共に、移動したいずれの位置においても、下面3aから常に直角に突出しているため、プロジェクタ1を強度的に十分支持できることに加え、外観上の安定感も有している。さらに、脚部91および脚受部92は、水平調整脚部9として、下部外装3の底面3b方向への張り出し量を抑制した構成であり、光学ユニット4等の機構部の配置に影響をほとんど及ぼすことがない。
【0035】
次に、脚部91を突出長さL1となる所定位置へ位置決めするための構成について、図5(b)に示す立設部921と、摺動腕部931と、を例にして説明する。図5(b)の断面図は、立設部921の凹部923へ、摺動腕部931のV字状部933が係合した状態を示している。ここで、摺動腕部931の断面部937は、摺動腕部931が基部930と繋がっている部分を示していて、断面部937から腕状に延びた摺動腕部931は、ばね性を有し、立設部921へ押圧を付与している。従って、摺動腕部931のV字状部933が凹部923に係合すると、その位置でクリック感が生じ、突出長さL1の所定位置であるとの判断が容易に行えるようになっている。また、脚部91が所定位置から移動すると、V字状部933は、凹部923との係合状態から外れて、V字の先端部が立設部921と当接しつつ移動する。この時の摺動腕部931が二点鎖線で表されている。
【0036】
以上説明した構成の水平調整脚部9により調整されたプロジェクタ1の姿勢について、次に説明する。まず、水平調整脚部9が規定の突出長さL1である場合について説明する。図6(a)は、水平な載置面13に載置されたプロジェクタを示す正面図、図6(b)は、所定位置の水平調整脚部を示す斜視図である。図6(a)に示しているプロジェクタ1は、水平調整脚部9の接地部913が突出長さL1の場合であって、下面3aと載置面13とが平行に保持されて、基準となるべき水平状態に載置されている。即ち、プロジェクタ1は、図3および図5に示す状態である。
【0037】
水平調整脚部9の調整において、例えば、接地部913が突出長さL1以外に調整されたままのプロジェクタ1を水平状態にする場合について説明する。この場合、把持部910をプロジェクタ1の正面方向または背面方向へ操作する。把持部910の操作により、図5(a)に示すように、接地部913が突出長さL1となる位置の方向へ、脚本体912が内摺動斜面926および外摺動斜面928に沿って移動し、図5(b)に示すように、摺動腕部931のV字状部933が凹部923に係合して、クリック感が生じた位置において、接地部913が突出長さL1となる。なお、同時に、脚本体912が内摺動斜面927(図4)および外摺動斜面929(図6(b))に沿って移動し、摺動腕部932のV字状部934も凹部924に係合している。これにより、水平調整脚部9の接地部913を突出長さL1に設定して、載置面13と当接させることができる。
【0038】
このように把持部910を操作する際に、把持部910が下部外装3の外縁まで延在しているため、下部外装3を持ち上げたりせずに、把持する把持部910を視認できる。そのため、外部から、即、把持部910を摘んで操作でき、接地部913の移動を迅速に行える。また、把持部910の位置は、プロジェクタ1が載置面13に載置されている状態において、容易に確認することができる。また、水平調整脚部9が突出長さL1であるか否かについて、見ただけで概略の判断をすることができる。
【0039】
次に、水平調整脚部9において、接地部913の突出長さLを、突出長さL1以外へ変更する場合について説明する。図7(a)は、水平調整脚部の突出長さを短くして載置したプロジェクタを示す正面図、図7(b)は、突出長さを短くした水平調整脚部9を示す斜視図である。図7(a)において、載置面14aは、左側に傾斜した面となっている。水平調整脚部9は、図6(a)の状態に比べて、上部外装2および下部外装3の左側面の側を、載置面14aへさらに近づけた状態にして、プロジェクタ1の水平方向の傾きを調整する場合を示している。この場合、プロジェクタ1は、固定脚部8が突出長さL1のままであるが、水平調整脚部9の脚部91が突出長さL2であり、固定脚部8の突出長さL1より短くなっている。従って、プロジェクタ1は、載置面14aが傾斜していても、左側面の側が固定脚部8より低くすることにより水平状態とすることができる。
【0040】
水平調整脚部9の調整において、接地部913の突出長さLを、例えば、図6に示す突出長さL1の状態から図7に示す突出長さL2へ変更する場合について説明する。この場合、まず、把持部910を、プロジェクタ1の投射方向へ移動させる。把持部910の移動に伴い、図5(a)に示す脚本体912が、内摺動斜面926および外摺動斜面928に沿って、突出長さLが短くなる下部外装3の底面3b方向へ移動する。この時、図5(b)の二点鎖線で示すように、摺動腕部931のV字状部933が凹部923との係合から外れて、立設部921に沿って移動する。なお、同時に、脚本体912が内摺動斜面927(図4)および外摺動斜面929(図7(b))に沿って、突出長さLが短くなる下部外装3の底面3b方向へ移動し、摺動腕部932のV字状部934も凹部924との係合から外れる。これにより、接地部913は、突出長さL1より短い任意の長さに調整される。
【0041】
そして、脚本体912が貫通口925の正面側端部に当接するまで、把持部910を移動させれば、その位置において、接地部913は、突出長さL2となる。このように、接地部913の突出長さLを、突出長さL1から突出長さL2へ任意の長さに変更することにより、プロジェクタ1は、水平方向の傾きが調整され、投射部45から投射されるカラー画像を、スクリーンの水平方向と合致させて、拡大投射できる。
【0042】
同様に、水平調整脚部9において、接地部913の突出長さLを、突出長さL1またはL2からさらに長い突出長さL3へ変更する場合について説明する。図8(a)は、水平調整脚部の突出長さを長くして載置したプロジェクタを示す正面図、図8(b)は、突出長さを長くした水平調整脚部を示す斜視図である。図8(a)において、載置面14bは、右側に傾斜した面となっている。水平調整脚部9は、図6(a)の状態に比べて、上部外装2および下部外装3の左側面の側を、載置面14bからさらに離した状態にして、プロジェクタ1の水平方向の傾きを調整する場合を示している。この場合、プロジェクタ1は、固定脚部8が突出長さL1のままであるが、水平調整脚部9の脚部91が突出長さL3であり、固定脚部8の突出長さL1より長くなっている。従って、プロジェクタ1は、載置面14bが傾斜していても、左側面の側が固定脚部8より高くすることにより水平状態とすることができる。
【0043】
このように、水平調整脚部9を調整する場合、まず、把持部910を、プロジェクタ1の背面方向へ移動させる。把持部910の移動に伴い、図5(a)に示す脚本体912が、内摺動斜面926および外摺動斜面928に沿って、突出長さLが長くなる下部外装3の下面3a方向へ移動する。なお、同時に、脚本体912が内摺動斜面927(図4)および外摺動斜面929(図8(b))に沿って、突出長さLが長くなる下部外装3の底面3b方向へ移動する。これにより、接地部913は、突出長さL1より長い任意の長さに調整される。
【0044】
そして、脚本体912が貫通口925の背面側端部に当接するまで、把持部910を移動させれば、その位置において、接地部913は、突出長さL3となる。このように、接地部913の突出長さLを、突出長さL1またはL2から突出長さL3へ任意の長さに変更することにより、プロジェクタ1は、水平方向の傾きを、図7に示す方向と異なる方向へ調整でき、投射部45から投射されるカラー画像を、スクリーンの水平方向と合致させて、拡大投射できる。
【0045】
以下、実施形態の主な効果をまとめて記載する。
【0046】
プロジェクタ1は、水平調整脚部9の脚部91が、下部外装3に設けられた脚受部92の内摺動斜面926,927および外摺動斜面928,929に沿って移動することにより、脚部91が位置する斜面に応じて、脚部91の下部外装3の下面3aからの突出長さLを自在に調節できる。脚部91の移動は、脚部91へ下面3aとほぼ平行な操作力を付与するだけで良く、プロジェクタ1を大きく持ち上げる必要がないため、容易に行える。
【0047】
また、脚受部92は、下部外装3の底面3b側へは、張り出しておらず、下部外装3への光学ユニット4等の配置をほとんど制限しない構成である。そして、脚部91は、下面3aの外縁にまで延在して視認しやすい把持部910を有していて、下部外装3の形状等の影響を受けることなく、脚部91へ操作力を容易に付与できるようになっている。さらに、脚部91は、板ばね93の弾性によって、脚受部92の内摺動斜面926,927および外摺動斜面928,929をバランス良く挟持しているため、滑らかに摺動して、スムーズに移動することができる。
【0048】
また、水平調整脚部9は、脚部91の移動により、プロジェクタ1が基準となる水平位置になると、板ばね93のV字状部933,934と脚受部92の凹部923,924とが係合する構成であり、係合するとクリック感が生じる。これにより、プロジェクタ1が基準となる水平位置に調整されたことを、確実に判断することができる。
【0049】
また、プロジェクタ1は上記の実施形態に限定されるものではなく、次に挙げる変形例のような形態であっても、実施形態と同様な効果が得られる。
【0050】
立設部921,922の内摺動斜面926,927および外摺動斜面928,929と斜面部920とは、プロジェクタ1の背面側が下面3aの方向へ突出した斜面構成であるが、これに限定されるものではなく、プロジェクタ1の正面側が下面3aの方向へ突出した斜面構成であっても良い。斜面の傾斜方向に関わらず、脚部91の調整が同様に行える。
【0051】
また、立設部921,922および斜面部920の形成されている方向は、プロジェクタ1の正面と背面とを結ぶ方向に沿っているが、立設部921,922および斜面部920がプロジェクタ1の右側面と左側面とを結ぶ方向等に沿って形成された構成であっても良い。いずれの構成であっても、脚部91の調整が同様に行える。
【0052】
また、水平調整脚部9と協働してプロジェクタ1の水平方向の姿勢を保持する固定脚部8は、突出長さL1に固定された構成であるが、水平調整脚部9と同じ構成を有し、突出長さLが調整可能であっても良い。こうすれば、プロジェクタ1の水平方向の傾きを、より大きく調整することができる。
【0053】
プロジェクタ1は、光学変調部44として液晶パネルを用いているが、液晶パネル以外のマイクロミラー等のデバイスを用いても良い。この対応により、水平調整脚部9は、種々の光学変調部を有するプロジェクタにも備えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】(a)本実施形態にかかるプロジェクタを正面上方から見た斜視図、(b)プロジェクタを正面下方から見た斜視図。
【図2】プロジェクタの機構部の構成を示す斜視図。
【図3】水平調整脚部の突出長さの調整量を示す正面図。
【図4】水平調整脚部の組立構成を示す斜視図。
【図5】(a)脚部の構成を示す断面図、(b)摺動腕部の機能を示す断面図。
【図6】(a)水平に載置されたプロジェクタを示す正面図、(b)所定位置の水平調整脚部を示す斜視図。
【図7】(a)水平調整脚部の突出長さを短くして載置したプロジェクタを示す正面図、(b)突出長さを短くした水平調整脚部を示す斜視図。
【図8】(a)水平調整脚部の突出長さを長くして載置したプロジェクタを示す正面図、(b)突出長さを長くした水平調整脚部を示す斜視図。
【符号の説明】
【0055】
1…プロジェクタ、2…上部外装、3…下部外装、3a…下面、3b…底面、4…光学ユニット、7…上下調整脚部、8…固定脚部、9…水平調整脚部、13…載置面、14a,14b…載置面、91…脚部、92…脚受部、93…板ばね、910…把持部、911…脚摺動面、912…脚本体、913…接地部、914…位置決め突起、915…ねじ固定穴、916…止めねじ、920…斜面部、921,922…立設部、923,924…凹部、925…貫通口、926,927…内摺動斜面、928,929…外摺動斜面、930…基部、931,932…摺動腕部、933,934…V字状部、935…止めねじ孔、936…位置決め孔、L…突出長さ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源部から射出された光束を画像信号に応じて変調して投射するための投射装置部を収容する筐体と、前記筐体を載置する載置面に対する前記筐体の傾きを調整して投射方向を変更するための姿勢調整機構と、を備えたプロジェクタであって、
前記姿勢調整機構は、
前記載置面と対向する前記筐体の対向面に設けられ、前記対向面に対して傾斜して形成された摺動斜面を有する脚受部と、
前記対向面から突出して前記載置面と当接する接地部を有する脚部と、を有し、
前記脚部は、前記摺動斜面に沿って移動し、前記接地部の前記対向面からの突出長さを調整することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のプロジェクタにおいて、
前記脚受部は、
前記摺動斜面に沿って前記筐体に形成された貫通口を有し、
前記摺動斜面は、
前記筐体の外側に形成された第1の摺動斜面と、
前記筐体の内側に形成された第2の摺動斜面と、を有し、
前記脚部は、前記貫通口を貫通して設けられ、
前記第1の摺動斜面に当接する第1の保持部と、
前記第2の摺動斜面に当接する第2の保持部と、を有する保持部によって保持されることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項3】
請求項2に記載のプロジェクタにおいて、
前記第2の摺動斜面と前記第2の保持部とは、前記脚部を所定位置へ位置決めするための位置決め部をそれぞれ有することを特徴とするプロジェクタ。
【請求項4】
請求項3に記載のプロジェクタにおいて、
前記第2の保持部は、弾性部材であることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項に記載のプロジェクタにおいて、
前記摺動斜面と前記保持部とは、前記貫通口を挟んで一対に形成されていることを特徴とするプロジェクタ。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載のプロジェクタにおいて、
前記脚部は、前記脚部を前記摺動斜面に沿って移動させる把持部を有し、
前記把持部は、前記対向面と略平行に前記対向面の外縁まで延在していることを特徴とするプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−134065(P2009−134065A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309996(P2007−309996)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】