説明

プロジェクタ

【課題】ミラーを3次元的に保持して位置調節可能とし、位置調節後、ミラーを簡単に固定できるようにする。
【解決手段】曲面ミラー26は対称軸45を中心とする軸対称非球面形状に形成された反射面42と球面状に突出した摺接面43と位置決め凸部44とを有する。摺接面43はベース部材に上向きに設けられた軸受座46の軸受穴47と嵌合する。軸受穴47は摺接面43と直径を同じくする球面状に抉られた凹部であって、その開口端48は摺接面43の一部と嵌合し、摺接面43と接して摺接面43を摺動自在に支持する。位置決め凸部44に圧縮コイルバネ50が装着され、カバー部材で押えられる。このとき位置決め凸部44の先端がカバー部材に形成された開口より突出し、曲面ミラー26の位置決め操作が可能となる。反射面42が位置調節された位置で位置決め凸部44と開口23の隙間に接着剤が塗布され、曲面ミラー26がベスト位置で固定される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像形成装置によって画像が付与された光をスクリーンに投写して前記画像を表示するプロジェクタに関し、特に光源からの光を前記画像形成装置に向けて反射させる曲面ミラーを備えたプロジェクタに関する。
【背景技術】
【0002】
プロジェクタは、光源装置から射出された照明光に、DMDやLCDなどの画像形成装置を用いて画像情報(画像信号)に応じた変調を施し、変調された光をスクリーン上に投写することにより画像表示を実現している。このようなプロジェクタの光学系は、複数の光学部品が組み合わされて構成されており、通常、1つの共通の基枠に組み込まれている。このようなプロジェクタには、通常、光の進行方向を変更するためのミラーが備えられているが、ミラーの角度が正確に設定されていないと、ミラーで反射された光が画像形成装置の有効領域からずれてしまうので、ミラーの角度は正確に設定されなければならない。
【0003】
このため、プロジェクタの中にはミラーの角度を調節できるようにしたものがある。例えば、周辺の3ヶ所を板バネとネジで挟持したミラーが下記特許文献1に記載されている。このミラーはネジを回すことでミラーの傾斜角度を調節する。下記特許文献2には、ミラーの光入射面に略平行で互いに直交する2軸回りにミラーを回転自在としたミラーの調整機構が示されている。また、下記特許文献3には、ミラーの裏面側に設けたコの字形の支持部材を2本の溝に嵌合させた状態でミラーの姿勢調節を行うプロジェクタのミラー調節装置が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−202409号公報
【特許文献2】特開2002−090876号公報
【特許文献3】特開2006−078567号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の超小型プロジェクタは少ないスペースに複数の光学部材を詰め込むので、ミラーの位置調節機構のための余裕スペースは殆どなく、その中でミラーの入射光軸・反射光軸あるいは照射範囲を正確に位置合わせしなければならない。前述の特許文献1〜3に記載の装置は、3点調節又は2軸調節であって調節個所が多く支持構造も複雑であり、超小型プロジェクタに採用するにはスペース的な困難性が高く、作業性も悪いといった問題があった。
【0006】
本発明は上記の問題を解決するためのものであり、大きなスペースを必要とすることなく、ミラーの位置調節時に3次元的な動きが可能となるようにミラーを保持するとともに、位置決めされた状態で簡単にミラーを固定することができるように構成されたプロジェクタを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるプロジェクタは、画像形成装置によって画像が付与された光をスクリーンに投写して前記画像を表示する投写光学系を備えたプロジェクタであって、前記投写光学系が収容される本体基部と、光源装置から出射された光を前記画像形成装置に向けて照射させる反射面と前記反射面外に球面状に突出した摺接面と前記反射面外に突出して前記反射面の位置決め時に操作されるとともに位置決め位置で前記本体基部に固定される位置決め凸部とを有する曲面ミラーと、前記本体基部に設けられ前記摺接面と接して前記摺接面を摺動自在に支持する軸受部と、前記曲面ミラーを付勢して前記摺接面を前記軸受部に押圧する付勢部材と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
前記付勢部材として圧縮コイルバネを用い、前記曲面ミラーと前記本体基部とで挟持されるように前記位置決め凸部に装着すると良い。前記軸受部は前記摺接面と同じ半径の球状凹部に形成すると良い。前記反射面を軸対称非球面形状に形成しても良い。前記曲面ミラーは前記反射面の中心と前記摺接面を形成する球の中心とが一致するように形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、大きなスペースを必要とせずに、ミラーを安定して保持しながらミラーの3次元的位置調節を行うことができ、調節後、簡単に固定することができるので、ミラーの調節作業に多くの時間を必要としない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】プロジェクタの構成を示す図である。
【図2】投写装置の構成を示す図である。
【図3】図2の模式図である。
【図4】曲面ミラーの構成を説明する図である。
【図5】別の曲面ミラーの構成を説明する図である。
【図6】別の曲面ミラーを一部断面で説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示されるように、プロジェクタ10は、投写装置11及び電源装置12が略直方体をした筐体13に収容され、画像光が出射される投射レンズ15が露呈するように設けられている。筐体13の上面にはスクリーン16(図3参照)に投写された画像のピントを調節するピント調節ダイヤル17、画像を拡大するズームダイヤル18、画像の明るさを調節する輝度調節ダイヤル19の3つの操作ダイヤルが操作可能に設けられ、筐体13の側面には投写する画像データが入力される外部入力端子20が設けられている。
【0012】
図2及び図3に示されるように、投写装置11は、枡型のベース部材(本体基部)21に複数の光学部材からなる投写光学系が収容され、カバー部材(本体基部)22で覆われている。前記投写光学系は、投射レンズ15の他に照明光を出射する光源装置30と、照明光を変調してスクリーン16に投写される画像を付与するDMD(画像形成装置)25と、光源装置30が出射した光をDMD25に向けて反射させる曲面ミラー26と、曲面ミラー26からの光をDMD25に向けて反射するとともにDMD25からの光を透過させて投射レンズ15に入射させる全反射プリズム27と、から構成される。
【0013】
光源装置30はR(赤)光を出射するLED31,G(緑)光を出射するLED32,B(青)光を出射するLED33と、夫々の光を集光させる集光レンズ34,35,39と、G光を反射させR光を透過させるダイクロイックミラー36,B光を反射させR光,G光を透過させるダイクロイックミラー37と、フライアイレンズ38とからなる。ベース部材21には、これらの光学部材の他に制御回路40が組み込まれ、制御回路40は、DMD25と光源装置30の同期制御や、筐体13に設けられた操作ダイヤル17〜19の操作信号に従って、投射レンズ15,DMD25,光源装置30を制御する。
【0014】
図4に示されるように、曲面ミラー26は、光源装置30からの光を全反射プリズム27に向けて反射させる反射面42と、反射面42外の下方に球面状に突出した摺接面43と、反射面42外の上方に突出して形成された位置決め凸部44とを有する。反射面42は対称軸45を中心とする軸対称非球面形状に形成される。摺接面43は枡型のベース部材21の底(本体基部の下部)に上向きに設けられた軸受座46の軸受穴(軸受部)47と嵌合する。軸受穴47は摺接面43と直径を同じくする球面状に抉られた凹部であって、その開口端48は摺接面43の一部と嵌合し、軸受穴47は摺接面43の全部とは嵌合しない。軸受穴47は摺接面43を摺動自在に支持する。
【0015】
軸受穴47と摺接面43とが嵌合するように軸受座46に曲面ミラー26を載せ、位置決め凸部44が中心に挿通されるように圧縮コイルバネ(付勢部材)50を位置決め凸部44に装着し、カバー部材22をベース部材21に固定する。位置決め凸部44の先端がカバー部材22に形成された開口23より突出し(図2参照)、曲面ミラー26の位置決め操作が可能となる。圧縮コイルバネ50はカバー部材(本体基部)22と曲面ミラー26とで挟持され、圧縮されて曲面ミラー26を下方に押圧する。摺接面43が軸受座46の軸受穴47に押しつけられ、曲面ミラー26がベース部材21とカバー部材22に位置調節自在に支持される。反射面42が位置調節された位置で位置決め凸部44と開口23の隙間に接着剤が塗布され、曲面ミラー26がベスト位置で固定される。
【0016】
次に、本発明による作用効果について説明する。投写装置11は、ベース部材21に、光源装置30を構成するLED(31〜33)、集光レンズ34,35,39、ダイクロイックミラー(36,37)、フライアイレンズ38、及び曲面ミラー26、全反射プリズム27、DMD25、投射レンズ15、制御回路40を組込み、カバー部材22を被せて固定する。組み上がった投写装置11を図示しない治具に載せる。図示しない治具は、天板の大部分が取り除かれた筐体13に投写装置11を除く全ての部材が組み込まれたものである。
【0017】
投写装置11は前記治具にセットされ、スクリーン16にテスト図柄が投写される。テスト図柄を見ながら開口23より突出した位置決め凸部44の先端部分が操作されて曲面ミラー26のベスト位置が求められる。曲面ミラー26を支持する摺接面43は球面状であるから位置決め凸部44を操作するだけで反射面42の向きを三次元的に制御することができ、簡単に反射面42のベスト位置を探すことができる。反射面42がベスト位置になったところで位置決め凸部44と開口23の隙間に接着剤が塗布され、曲面ミラー26がベスト位置で固定される。曲面ミラー26が固定された投写装置11は前記治具から取り外され、筐体13に組みつけられる。
【0018】
次に、別の実施形態について説明するが、前記実施形態と同じ部材及び同じ部位については同じ符号を付して説明を省略する。図5,6に示すように、曲面ミラー60は、光源装置30からの光を全反射プリズム27に向けて反射させる反射面42と、位置決め凸部44と、反射面42外の下方に突出する球面状の摺接面63とを有する。摺接面63はベース部材21の底(本体基部の下部)に上向きに設けられた軸受部66の軸受穴67と嵌合する。軸受穴67は摺接面63と直径を同じくする球面状に抉られた凹部であって、その開口端68は摺接面63の一部と嵌合し、摺接面63の全部とは嵌合しない。軸受穴67は摺接面63を摺動自在に支持する。
【0019】
摺接面63は、摺接面63を形成する球62の中心が対称軸45と直交する反射面42の中心61と一致するように形成される。これによって、位置決め凸部44が操作され摺接面63が軸受穴67に接触しながら曲面ミラー60の姿勢調整がなされるとき、反射面42の中心61は動かず、中心61を支点として反射面42の姿勢調整が行われることになり、反射面42による反射光の位置合わせを簡単かつ精度良く行うことができる。この場合、位置決め凸部44を反射面42の中心61に対して摺接面63とは反対の方向に延伸するように設けると操作性が良い。
【0020】
なお、軸受穴47,67は円筒形の穴でも良く、開口端48,68と摺接面43,63とが接した状態で曲面ミラー26,60の姿勢を調節できるようにすれば良い。開口端48,68が正多角形をした筒形の穴でも良いが、摺接面43,63と接するのは原理的には3点であるから正三角形が好ましい。曲面ミラー26,60は樹脂成形品であっても良いし、金属であっても良く、反射面42は金属蒸着または化学メッキあるいは鏡面研磨など曲面ミラー26,60の材質に合わせて適宜適したものを採用すると良い。
【0021】
本発明は公知の単板式液晶プロジェクタの光学系に適用しても良い。また、本発明によるプロジェクタは、投写装置11を携帯電話に収めたものであっても良い。電源装置12に代わって携帯電話の電源を用いれば良く、操作ダイヤル17〜19に代わって携帯電話の押し釦を用いると良い。あるいは、他の携帯端末に収容させても良い。
【符号の説明】
【0022】
10 プロジェクタ
11 投写装置
12 電源装置
13 筐体
15 投射レンズ(投写光学系の一部)
16 スクリーン
17 ピント調節ダイヤル(操作ダイヤル)
18 ズームダイヤル(操作ダイヤル)
19 輝度調節ダイヤル(操作ダイヤル)
20 外部入力端子
21 ベース部材(本体基部)
22 カバー部材(本体基部)
23 開口
25 DMD(画像形成装置)(投写光学系の一部)
26,60 曲面ミラー(投写光学系の一部)
27 全反射プリズム(投写光学系の一部)
30,53 光源装置(投写光学系の一部)
31 R(赤)光のLED
32 G(緑)光のLED
33 B(青)光のLED
34,35,39,54,55 集光レンズ
36 G光反射用のダイクロイックミラー
37 B光反射用のダイクロイックミラー
38 フライアイレンズ
40 制御回路
42 反射面
43 摺接面
44 位置決め凸部
45 対称軸(軸対称非球面を形成する対称軸)
46 軸受座
47 軸受穴(軸受部)
48 開口端
50 圧縮コイルバネ(付勢部材)
61 反射面42の中心
62 摺接面63を形成する球

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像形成装置によって画像が付与された光をスクリーンに投写して前記画像を表示する投写光学系を備えたプロジェクタにおいて、
前記投写光学系が収容される本体基部と、
光源装置から出射された光を前記画像形成装置に向けて照射させる反射面と、前記反射面外に球面状に突出した摺接面と、前記反射面外に突出して前記反射面の位置決め時に操作されるとともに位置決め位置で前記本体基部に固定される位置決め凸部と、を有する曲面ミラーと、
前記本体基部に設けられ、前記摺接面と接して前記摺接面を摺動自在に支持する軸受部と、
前記曲面ミラーを付勢して前記摺接面を前記軸受部に押圧する付勢部材と、
を備えたことを特徴とするプロジェクタ。
【請求項2】
前記付勢部材は前記位置決め凸部が挿通され、前記曲面ミラーと前記本体基部とで挟持された圧縮コイルバネであることを特徴とする請求項1記載のプロジェクタ。
【請求項3】
前記軸受部は、前記摺接面と同じ半径の球状凹部であることを特徴とする請求項1又は2記載のプロジェクタ。
【請求項4】
前記反射面は軸対称非球面形状に形成されたことを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のプロジェクタ。
【請求項5】
前記曲面ミラーは、前記反射面の中心と前記摺接面を形成する球の中心とが一致するように形成されたことを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載のプロジェクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−248062(P2011−248062A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−120581(P2010−120581)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】